説明

不均一発泡体の製造方法

【課題】気泡径を微細な範囲に留めつつ気泡密度の高い領域も得られ、さらには、例えば3次元の気泡分布等、幅広いパターンの気泡分布を任意かつ容易に得られる不均一発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】放射線エネルギーの作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤と、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する分解発泡性化合物とを含有する発泡性組成物を成形体とする成形工程の後に、放射線エネルギー及び熱エネルギーを付与して発泡させる発泡工程を行う。成形体に付与する放射線エネルギー、熱エネルギー、成形体中の分解発泡性官能基濃度、酸発生剤または塩基発生剤の濃度のいずれか1以上を所定の不均一分布とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡径の大小や気泡密度の粗密が位置によって異なる不均一発泡体の製造方法に関する。詳しく述べれば、気泡径を微細な範囲に留めつつ気泡密度の高い領域も得られる不均一発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体が有する特性は多種にわたるため、様々な産業分野において利用されている(非特許文献1、非特許文献2)。具体的な発泡特性には、発色性、嵩高性、ドライ感、ふくらみ感、ソフト感、通気性、断熱性、低誘電率性、光散乱性、光反射性、隠蔽性、白色性、不透明性、波長選択的反射および透過性、軽量性、浮揚性、遮音性、吸音性、緩衝性、クッション性、吸収性、吸着性、貯蔵性、透過性、濾過性などがあげられ、その特性を活かして包装材料や建築材料、医療材料、電気機器材料、電子情報材料、自動車材料などに使用されている。
気泡径や気泡密度が均一に分布した均一発泡体は、発泡体中のどの部分をとってもみな同程度の発泡特性となる。これに対して、気泡径や気泡密度の分布(以下、総称して「気泡分布」という場合がある。)が位置によって異なる不均一発泡体では、発泡特性もその気泡分布に応じて異なる。そのため、均一発泡体では実現できない高度な機能性を有することが期待されている。
不均一発泡体としては、例えば、気泡分布が連続的あるいは段階的(不連続的)な勾配となった傾斜発泡体や、未発泡領域と発泡領域が交互に部分配置された部分発泡体などが挙げられる。
【0003】
不均一発泡体は、気泡径の大小や気泡密度の粗密が位置的に変化するよう、発泡状態を制御することによって得られる。従来から、種々の化学発泡法、物理発泡法を用いて、所望の気泡分布を有する不均一発泡体を得ることが試みられている。
【0004】
化学発泡法による不均一発泡体の製造方法としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載された製造方法が挙げられる。特許文献1では、ジアゾ化合物などの光発泡性化合物を含浸させたポリマーフィルムにアルゴンレーザの干渉光を照射することで、干渉縞の明部が発泡し、暗部が未発泡となる方法が開示されている。
また、特許文献2では、熱発泡性化合物と光重合性化合物を含む塗布層にフォトマスクを介して紫外線照射および加熱することで、非照射部で発泡し、照射部では重合による発泡抑制効果で未発泡となる方法が開示されている。
これらの方法では、露光強度を制御することにより、発泡状態の制御を行っている。
【0005】
物理発泡法としては、近年マイクロセルラープラスチックと呼ばれる材料が研究されている。マイクロセルラープラスチックとは、気泡径が0.1〜10μmと微細で、かつ、気泡密度も気泡数密度にして109〜1015個/cm3と高密度であることを特徴とする発泡体であり、マサチューセッツ工科大学のN.P.Suhらにより提案された(特許文献3)。
この発泡体は、熱可塑性プラスチックに二酸化炭素や窒素などの不活性ガスを高圧下もしくは超臨界状態下で含浸飽和(10重量%程度)させる工程(ガス飽和工程)と、その後に減圧および加熱して発泡させる工程(発泡工程)とを組み合わせて製造される。この発泡体の製造方法では、不活性ガスの含浸量を多くすることができるため、多数の微細気泡を形成させることが可能となる。
この製造方法で不均一発泡体を製造した例としては、特許文献4や特許文献5に開示された製造方法が挙げられる。特許文献4では、ガス飽和工程において不活性ガスの含浸濃度に勾配をつけている。また、特許文献5では、発泡工程においてガスを含浸したシートの表裏を異なる温度で加熱している。
【0006】
なお、本発明者らは、活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含み、さらに酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する化合物を含む発泡性組成物を提案した。この組成物によれば、微小気泡を有する発泡体が得られる(特許文献6)。
【非特許文献1】東レリサーチセンター、「発泡体・多孔質体技術と用途展開」、1996年
【非特許文献2】技術情報協会、「樹脂の発泡成形技術」、2001年
【特許文献1】特開平5−72727号公報
【特許文献2】特許第3422384号公報
【特許文献3】米国特許第4473665号公報
【特許文献4】特開平11−80408号公報
【特許文献5】特開2002−363324号公報
【特許文献6】特開2004−002812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、材料の軽薄短小化がめざましく進んできている中で、発泡体の気泡径に対する要求レベルは数μmオーダーからnmオーダーへと高度化している。また、発泡特性を効率よく発現させるためには、気泡密度を高くすることも重要となっている。したがって、気泡径を微細な範囲に留めつつ気泡密度の高い領域も得られる不均一発泡体の製造方法が望まれている。さらに、例えば3次元の気泡分布等、幅広いパターンの気泡分布を任意かつ容易に得られる不均一発泡体の製造方法も望まれている。しかし、以下に説明するように、上記従来の化学発泡法や物理発泡法では、これらの要求を満足することができなかった。
【0008】
まず、従来の化学発泡法では、化学発泡剤を多量に添加することで、気泡密度を高くすることが可能なように思われる。しかし、化学発泡剤の多量添加は、化学発泡剤による可塑効果を増長させベースポリマーを軟化させる。そのため、気泡が成長しやすくなり、巨大気泡が形成されてしまう。また、化学発泡剤の多量添加は、ベースポリマーの力学物性の低下や発泡体の強度低下という新たな弊害も招く。
したがって、実用上、化学発泡剤の添加量は制限されてしまい、気泡径を微細な範囲(とくに気泡径1μm以下)に留めつつ、気泡密度の高い領域を得ることは困難であった。
また、発泡状態の制御手段は実質的に露光強度の制御に限られるため、同一発泡体内でその気泡分布の方向を3次元に制御することは困難であった。
【0009】
また、物理発泡法では、高圧含浸したガスの一部分が発泡工程前にプラスチック表面から放散するガス抜け現象が起こる。そのため、気泡径1μm以下の気泡を高密度に形成することは実用的には困難であった。
さらに、気泡分布の変化方向も表層から内部への厚さ方向に限定されてしまう。したがって、同一発泡体内でその気泡分布の方向を3次元に制御可能にさせることは困難であった。
【0010】
また、特許文献6の組成物によれば、微小気泡の生成が可能であることがわかっていたものの、気泡分布を制御することについては全く検討されていなかった。そのため、この組成物により、気泡径を微細な範囲に留めたままで気泡密度の高い領域を有する不均一発泡体が得られるかどうかは、明らかでなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、気泡径を微細な範囲に留めつつ気泡密度の高い領域も得られ、さらには、例えば3次元の気泡分布等、幅広いパターンの気泡分布を任意かつ容易に得られる不均一発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の態様を含む
[1]放射線エネルギーの作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤と、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する分解発泡性化合物とを含有する発泡性組成物を成形体とする成形工程と、前記成形体に放射線エネルギー及び熱エネルギーを付与して発泡させる発泡工程とを備え、(a)前記成形体に付与する放射線エネルギー、(b)前記成形体に付与する熱エネルギー、(c)前記成形体中の分解発泡性官能基濃度、(d)前記成形体中の酸発生剤または塩基発生剤の濃度のいずれか1以上が、所定の不均一分布とされていることを特徴とする不均一発泡体の製造方法。
【0013】
[2]前記発泡工程が、前記成形体に放射線を照射する放射線照射工程と、該放射線照射工程後に前記成形体を加熱する加熱工程とを含む[1]に記載の不均一発泡体の製造方法。
【0014】
[3]前記成形体にフォトマスクを介して放射線を照射することにより、(a)前記成形体に付与する放射線エネルギーが、所定の不均一分布とされている[1]又は[2]に記載の不均一発泡体の製造方法。
[4]前記フォトマスクが、放射線を透過する基材に放射線を遮蔽するインクで印刷を施したものである[3]に記載の不均一発泡体の製造方法。
[5]前記フォトマスクが、放射線を遮蔽する基材に開口部を設けたものである[3]に記載の不均一発泡体の製造方法。
【0015】
[6]前記成形体の異なる面に、各々温度の異なる加熱体を接触させることにより、(b)前記成形体に付与する熱エネルギーが、所定の不均一分布とされている[1]から[5]の何れかに記載の不均一発泡体の製造方法。
【0016】
[7]分解発泡性官能基の含有率が異なる2種以上の発泡性組成物を積層することにより、(c)前記成形体中の分解発泡性官能基濃度が、所定の不均一分布とされている[1]から[6]の何れかに記載の不均一発泡体の製造方法。
【0017】
[8]酸発生剤または塩基発生剤の含有率が異なる2種以上の発泡性組成物を積層することにより、(d)前記成形体中の酸発生剤または塩基発生剤の濃度が、所定の不均一分布とされている[1]から[7]の何れかに記載の不均一発泡体の製造方法。
なお、本発明における「放射線」は、放射線崩壊によって発生する粒子線に限定されず、総ての電磁波および粒子線をさす、広義の放射線の意味である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の不均一発泡体の製造方法によれば、気泡径を微細な範囲に留めつつ気泡密度の高い領域も得られる。また、例えば3次元の気泡分布等、幅広いパターンの気泡分布も任意かつ容易に得られる。したがって、本発明によれば、同一発泡体内で発泡特性分布を付与された高機能性発泡体を容易が得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の不均一発泡体の製造方法は、放射線エネルギー及び熱エネルギーの作用により発泡構造を形成する発泡性組成物を原料とする。本発明の製造方法は、発泡性組成物の成形工程と、成形工程で得られる成形体に放射線エネルギー及び熱エネルギーを付与して発泡させる発泡工程とを備える。
本発明では、(a)前記成形体に付与する放射線エネルギー、(b)前記成形体に付与する熱エネルギー、(c)前記成形体中の分解発泡性官能基濃度、(d)前記成形体中の酸発生剤または塩基発生剤の濃度のいずれか1以上が、所定の不均一分布とされ、これにより、所望の気泡分布を有する不均一発泡体が得られるようになっている。
【0020】
<発泡性組成物>
本発明で用いる発泡組成物は、放射線エネルギー及び熱エネルギーの作用により発泡性が発現する組成物である。その発泡性組成物は、少なくとも次の2つの成分を含有する。
その一つは、放射線エネルギーの作用によって酸を発生する酸発生剤、または塩基を発生する塩基発生剤である。他の一つは、前記発生した酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性化合物を分解脱離する分解発泡性化合物である。
【0021】
(酸発生剤及び塩基発生剤)
本発明に使用する発泡性組成物に用いられる酸発生剤又は塩基発生剤には、一般的に化学増幅型フォトレジスト、及び光カチオン重合などに利用されている光酸発生剤や光塩基発生剤と呼ばれているものを用いることができる。
【0022】
本発明に好適な光酸発生剤としては、
(1)ジアゾニウム塩系化合物
(2)アンモニウム塩系化合物
(3)ヨードニウム塩系化合物
(4)スルホニウム塩系化合物
(5)オキソニウム塩系化合物
(6)ホスホニウム塩系化合物
などから選ばれた芳香族もしくは脂肪族オニウム化合物のPF6、AsF6、SbF6、CF3SO3塩を挙げることができる。その具体例を下記に列挙するが、これら例示したものに限定されるものではない。
【0023】
ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(p−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
ベンゾイルフェニルスルホニルジアゾメタン、
【0024】
トリフルオロメタンスルホネート、
トリメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウムヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウムトリフルオロメタンスルホネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
(2−オキソ−1−シクロヘキシル)(シクロヘキシル)メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
(2−オキソ−1−シクロヘキシル)(2−ノルボルニル)メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムパーフルオロメタンスルホネート、
ジフェニル−4−tert−ブチルフェニルスルホニウムパーフルオロオクタンスルホネート、
ジフェニル−4−メトキシフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホネート、
【0025】
ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトシレート、
ジフェニル−4−メトキシフェニルスルホニウムトシレート、
ジフェニル−4−イソプロピルフェニルスルホニウムトシレート
【0026】
ジフェニルヨードニウム、
ジフェニルヨードニウムトシレート、
ジフェニルヨードニウムクロライド、
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ジフェニルヨードニウムナイトレート、
ジフェニルヨードニウムパークロレート、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0027】
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート、
【0028】
2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリ(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−ナフチル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−ビフェニル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(4′−ヒドロキシ−4−ビフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(4′−メチル−4−ビフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(p−メトキシフェニルビニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
【0029】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリリウムトリフロオロメタンスルホネート、
トリメチルオキシニウムテトラフロオロボレート、
トリエチルオキシニウムテトラフロオロボレート、
N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、
N−ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、
(α−ベンゾイルベンジル)p−トルエンスルホネート、
(β−ベンゾイル−β−ヒドロキシフェネチル)p−トルエンスルホネート、
1,2,3−ベンゼントリイルトリスメタンスルホネート、
(2,6−ジニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
(2−ニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
(4−ニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
などが挙げられる。なかでも、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物が好ましい。
【0030】
また、前記オニウム化合物以外にも、活性エネルギー線照射によりスルホン酸を光発生するスルホン化物、例えば2−フェニルスルホニルアセトフェノン、活性エネルギー線照射によりハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、例えば、フェニルトリブロモメチルスルホン、及び1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、並びに活性エネルギー線照射により燐酸を光発生するフェロセニウム化合物、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)フェロセニウムヘキサフルオロフォスフェート、及びビス(ベンジル)フェロセニウムヘキサフルオロフォスフェートなどを用いることができる。
【0031】
さらには、下記に挙げる酸発生能を有するイミド化合物誘導体も使用できる。
N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフタルイミド。
【0032】
本発明に好適な光塩基発生剤としては、
(1)オキシムエステル系化合物
(2)アンモニウム系化合物
(3)ベンゾイン系化合物
(4)ジメトキシベンジルウレタン系化合物
(5)オルトニトロベンジルウレタン系化合物
などが挙げられ、これらは光エネルギーの照射により塩基としてアミンを発生する。その他にも、光の作用によりアンモニアやヒドロキシイオンを発生する塩基発生剤を用いてもよい。これらは、例えばN−(2−ニトロペンジルオキシカルボニル)ピペリジン、1,3−ビス〔N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)−4−ピペリジル〕プロパン、N,N′−ビス(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ジヘキシルアミン、及びO−ベンジルカルボニル−N−(1−フェニルエチリデン)ヒドロキシルアミンなどから選ぶことができる。さらには加熱により塩基が発生する化合物を上記光塩基発生剤と併用してもよい。
【0033】
また、光酸発生剤または光塩基発生剤が活性化する光エネルギーの波長領域をシフトまたは拡大するために、適宜光増感剤を併用してもよい。例えば、オニウム塩化合物に対する光増感剤には、アクリジンイエロー、ベンゾフラビン、アクリジンオレンジなどが挙げられる。
【0034】
必要な酸を生成しながらも酸発生剤または塩基発生剤の添加量や光エネルギーを最小限に抑制するために、酸増殖剤や塩基増殖剤(K.Ichimura et al.,Chemistry Letters,551−552(1995)や特開平8−248561号公報、特開2000−3302700 )を酸発生剤または塩基発生剤とともに用いることができる。酸増殖剤は、常温付近で熱力学的に安定であるが、酸によって分解し、自ら強酸を発生し、酸触媒反応を大幅に加速させる。この反応を利用することにより、酸または塩基の発生効率を向上させて、発泡生成速度や発泡構造をコントロールすることも可能である。
【0035】
(分解発泡性化合物)
本発明に使用する発泡性組成物に用いられる分解発泡性化合物(以下、分解性化合物と略す)は、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質(低沸点揮発性化合物)が分解脱離する化合物である。
低沸点とは、発泡時にガス化が可能な沸点、すなわち、発泡時の温度よりも低い沸点を有することを意味する。低沸点揮発性物質の沸点は、通常100℃以下であり、常温以下であることが好ましい。
低沸点揮発性物質としては、例えばイソブテン(沸点;−7℃) 、二酸化炭素(沸点;−79℃)、窒素(沸点;−196℃)などがあげられる。
【0036】
分解性化合物には、低沸点揮発性物質を発生し得る分解性官能基があらかじめ導入されていなければならない。
分解性官能基の内、酸と反応するものとしては、−O−tBuの構造式で示されるtert−ブチルオキシ基、−CO−O−tBuの構造式で示されるtert−ブチルオキシカルボニル基、−O−CO−O−tBu の構造式で示されるtert−ブチルカーボネート基、ケト酸およびケト酸エステル基などが挙げられる。このとき、−tBuは−C(CH3)3を示す。
酸と反応して、tert−ブチルオキシ基およびtert−ブチルオキシカルボニル基はイソブテンガスを、tert−ブチルカーボネート基はイソブテンガスと二酸化炭素を、ケト酸部位は二酸化炭素を、ケト酸エステルたとえばケト酸tert−ブチルオキシ基は二酸化炭素とイソブテンガスを発生する。
塩基と反応するものとしては、ウレタン基、カーボネート基などが挙げられる。塩基と反応して、ウレタン基、カーボネート基は二酸化炭素ガスを発生する。
【0037】
分解性化合物の形態は、モノマー、オリゴマー、高分子化合物(ポリマー)の何れであってもよい。分解性化合物は、以下のような化合物群に分類することができる。
(1)非硬化性低分子系の分解性化合物群
(2)硬化性低分子系の分解性化合物群
(3)高分子系の分解性化合物群
【0038】
(1)の非硬化性低分子系の分解性化合物群は、放射線エネルギーを付与しても、重合反応を生じない低分子系の分解性化合物群である。(2)の硬化性低分子系の分解性化合物群は、放射線エネルギーの付与により重合反応を生じて硬化するような化合物群であり、たとえばビニル基のような重合性基を含んでいる。また、(3)の高分子系の分解性化合物群は、すでに重合体となっている高分子化合物(ポリマー)である。
上記分解性化合物群は単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。(2)の硬化性低分子系の分解性化合物群、または(3)の高分子系の分解性化合物群を用いると、均一な微細気泡の形成が容易であり、強度的に優れた発泡体を得ることが可能であり好ましい。
以下に分解性化合物の具体例を列挙するが、これら例示したものに限定されるものではない。
【0039】
(1)−a、非硬化性低分子系の分解性化合物群(酸分解性)
1−tert−ブトキシ−2−エトキシエタン、
2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ナフタレン、
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、
2,2−ビス[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパンなど
(1)−b、非硬化性低分子系の分解性化合物群(塩基分解性)
N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)ピペリジンなど
【0040】
(2)−a、硬化性低分子系の分解性化合物群(酸分解性)
tert−ブチルアクリレート、
tert−ブチルメタクリレート、
tert−ブトキシカルボニルメチルアクリレート、
2−(tert−ブトキシカルボニル)エチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルエチル)フェニルアクリレート、
1−(tert−ブトキシカルボニルメチル)シクロヘキシルアクリレート、
4−tert−ブトキシカルボニル−8−ビニルカルボニルオキシ−トリシクロ
[5.2.1.02,6]デカン、
2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンジルアクリレート、
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルアクリレート、
6−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキシルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンジルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)ベンジルアクリレート、
(2−tert−ブトキシエチル)アクリレート、
(3−tert−ブトキシプロピル)アクリレート、
(1−tert−ブチルジオキシ−1−メチル)エチルアクリレート、
3,3−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)プロピルアクリレート、
4,4−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)ブチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシ)スチレン、
m−(tert−ブトキシ)スチレン、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、
m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、
アクリロイル酢酸、メタクロイル酢酸
tert−ブチルアクロイルアセテート、
tert−ブチルメタクロイルアセテートなど
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)マレイミド
【0041】
(2)−b、硬化性低分子系の分解性化合物群(塩基分解性)
4−[(1、1−ジメチル−2−シアノ)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−[(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−[(1、1−ジメチル−2−メトキシカルボニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−(2−シアノエトキシカルボニルオキシ)スチレン、
(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エチルメタクリレート、
(1、1−ジメチル−2−シアノ)エチルメタクリレートなど
【0042】
(3)−a、高分子系の分解性化合物群(酸分解性)
ポリ(tert−ブチルアクリレート)、
ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、
ポリ(tert−ブトキシカルボニルメチルアクリレート)、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニル)エチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルエチル)フェニルアクリレート]、
ポリ[1−(tert−ブトキシカルボニルメチル)シクロヘキシルアクリレート]、
ポリ{4−tert−ブトキシカルボニル−8−ビニルカルボニルオキシ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン}、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンジルアクリレート]、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルアクリレート]、
ポリ[6−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキシルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンジルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)ベンジルアクリレート]、
ポリ(2−tert−ブトキシエチルアクリレート)、
ポリ(3−tert−ブトキシプロピルアクリレート)、
ポリ[(1−tert−ブチルジオキシ−1−メチル)エチルアクリレート]、
ポリ[3,3−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)プロピルアクリレート]、
ポリ[4,4−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)ブチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシ)スチレン]、
ポリ[m−(tert−ブトキシ)スチレン]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリ[m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリアクリロイル酢酸、ポリメタクロイル酢酸、
ポリ[tert−ブチルアクロイルアセテート]、
ポリ[tert−ブチルメタクロイルアセテート]
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)マレイミド/スチレン共重合体など
【0043】
(3)−b、高分子系の分解性化合物群(塩基分解性)
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−シアノ)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−メトキシカルボニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ[p−(2−シアノエトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリ[(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エチルメタクリレート]、
ポリ[(1、1−ジメチル−2−シアノ)エチルメタクリレート]、
【0044】
分解性官能基を導入したポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、デンドリマーなどの有機系高分子化合物も酸分解性又は塩基分解性重合体系化合物として用いることができる。さらには、シリカなどの無機系化合物に分解性官能基を導入した酸分解性又は塩基分解性重合体系化合物も用いることができる。なかでも、分解性官能基は、カルボン酸基または水酸基、アミン基からなる群の中から選ばれる官能基を有する化合物群に導入されることが好ましい。
【0045】
発泡体の耐水性をあげるために、少なくとも一種類以上の疎水性官能基を含む化合物に分解発泡性官能基を導入した化合物を用いることもできる。疎水性官能基は、主に脂肪族基、脂肪環族基、芳香族基、ハロゲン基、ニトリル基からなる群の中から選ばれることが好ましい。
ただし、分解発泡性官能基は、主にカルボン酸基または水酸基、アミン基からなる群の中から選ばれる親水性官能基に導入されやすいので、分解性化合物としては、親水性官能基に分解発泡性官能基を導入した分解性ユニットと、疎水性官能基を含む疎水性ユニットからなる複合化合物が好ましい。特に、ビニル系の共重合体化合物であることが好ましい。
疎水性ユニットとしては、メチル(メタ)アクリレートやエチル(メタ)アクリレートなどの脂肪族(メタ)アクリレート群、スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物群、(メタ)アクリロニトリル化合物群、酢酸ビニル化合物群、塩化ビニル化合物群などが挙げられる。
【0046】
分解性ユニットと疎水性ユニットの複合化合物からなる分解性化合物の具体例を以下に示す。
tert−ブチルアクリレート/メチルアクリレート共重合体
tert−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体
tert−ブチルメタクリレート/メチルアクリレート共重合体
tert−ブチルメタアクリレート/メチルメタクリレート共重合体
tert−ブチルアクリレート/エチルアクリレート共重合体
tert−ブチルアクリレート/エチルメタクリレート共重合体
tert−ブチルメタクリレート/エチルアクリレート共重合体
tert−ブチルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体
tert−ブチルアクリレート/スチレン共重合体
tert−ブチルアクリレート/塩化ビニル共重合体
tert−ブチルアクリレート/アクリロニトリル共重合体
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン/スチレン共重合体
【0047】
また、分解性化合物中の分解性ユニットおよび疎水性ユニットは、一種単独でまたは2種以上併用することができる。共重合の形式は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などの任意の形式をとることができる。また、疎水性ユニットの共重合比は、分解性化合物全量に対して5〜95質量%であることが好ましく、分解性化合物の分解発泡性および発泡構造の環境保存性を勘案すると、20〜80質量%がより好ましい。
上記分解性化合物は、単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。 上記分解性化合物は、分解発泡性官能基が分解脱離して気泡形成ガスを発生した後に、少なくとも一種類以上の疎水性官能基を含む化合物となる。
【0048】
発泡体の耐水性をあげるために、発泡性組成物として、温度30℃相対湿度60%の環境雰囲気下においてJISK7209D法で測定した平衡吸水率が10%未満低の吸湿性化合物に分解発泡性官能基を導入した化合物を用いることもできる。分解発泡性官能基を導入しやすい構造を有する低吸湿性化合物としては、例えばp−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンなどが挙げられる。したがって、分解性化合物は、p−(tert−ブトキシ)スチレン、m−(tert−ブトキシ)スチレン、p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレンが挙げられる。これらは硬化性モノマーでも一種類以上を混合した重合体でもよい。
【0049】
また、吸水率が10%以上の高吸湿性化合物と、吸水率10%未満の低吸湿性化合物との組合わせからなる複合化合物に分解発泡性官能基を導入してもよい。ただし、複合化合物は、適切な組合わせにより10%未満の吸水率を有していることが好ましい。例えば、高吸湿性化合物であるアクリル酸と低吸湿性化合物であるp−ヒドロキシスチレンの共重合体(複合化合物)は、その共重合比がアクリル酸/p−ヒドロキシスチレン=90/10〜0/100であることが好ましい。
【0050】
高吸湿性化合物と低吸湿性化合物との組合わせからなる分解性化合物の具体的な例を以下に示す。
tert−ブチルアクリレート/p−(tert−ブトキシ)スチレン共重合体
tert−ブチルアクリレート/m−(tert−ブトキシ)スチレン共重合体
tert−ブチルアクリレート/p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体
tert−ブチルアクリレート/m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体
tert−ブチルメタクリレート/p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体
【0051】
さらには、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、デンドリマーからなる群の中から選ばれた低吸湿性高分子材料などに分解発泡性官能基を導入してもよい。
上記分解性化合物は、単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。 上記分解性化合物は、分解発泡性官能基が分解脱離して気泡形成ガスを発生した後に、低吸湿性化合物となる。
【0052】
(発泡性組成物)
本発明に使用する発泡性組成物には、酸発生剤または塩基発生剤と分解発泡性化合物以外に、成形体の骨格となる一般の樹脂を混合する必要がある場合がある。即ち、非硬化性低分子系の分解性化合物群を用いる場合は単独では成形できないので、下記の一般に用いられる樹脂と混合して用いる必要がある。一般の樹脂は、分解性化合物と混合した時に相溶でも非相溶でもどちらでもかまわない。
一般の樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系複合樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリロイル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルホン樹脂、塩化ビニル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂など一般に用いられる樹脂から適宜選択して用いることができる。また、分解性化合物から分解してガス化する低沸点揮発性物質を成形体内に内在させることを目的として、ガスバリヤ性樹脂を用いることもできる。ガスバリヤ性樹脂は、混合しても被覆または積層してもよく、低沸点揮発性物質を成形体内により内在させるには、成形体表面に被覆または積層するのが好ましい。
分解性発泡化合物のうち、硬化性低分子系の分解性化合物群および高分子系の分解性化合物群は単独で用いてもよいし、上記の一般に用いられる樹脂と混合して用いてもよい。
【0053】
上記一般の樹脂を用いる場合でも、そうでない場合でも、放射線エネルギーで硬化する他の不飽和有機化合物を併用することができる。併用化合物の例としては、
(1)脂肪族、脂環族、芳香族の1〜6価のアルコール及びポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレート類
(2)脂肪族、脂環族、芳香族の1〜6価のアルコールにアルキレンオキサイドを付加させて得られた化合物の(メタ)アクリレート類
(3)ポリ(メタ)アクリロイルアルキルリン酸エステル類
(4)多塩基酸とポリオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物
(5)イソシアネート、ポリオール、(メタ)アクリル酸の反応生成物
(6)エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物
(7)エポキシ化合物、ポリオール、(メタ)アクリル酸の反応生成物
(8)メラミンと(メタ)アクリル酸の反応生成物
等を挙げることができる。
【0054】
併用できる化合物の中で、硬化性モノマーや樹脂は、発泡体の強度や耐熱性といった物性の向上効果や発泡性の制御効果などが期待できる。また分解性化合物および併用化合物に硬化性モノマーを用いれば、無溶剤成形ができ、環境負荷の少ない製造方法を提供できる。たとえば特開平8−17257や、特開平9−102230ではこのような材料が用いられている。
併用化合物の具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、 2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロヘキシルアクリレート、イソボロニルアクリレート、イソボロニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、エチレンオキシド変性フェノキシアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ダイマー、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、アクリル酸−9,10−エポキシ化オレイル、マレイン酸エチレングリコールモノアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチレンアクリレート、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、3−メチル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸アクリレート、エタンジオールジアクリレート、エタンジオールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−ブチル−2−エチルプロパンジオールジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレンオキシド変性水添ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ポリオキシエチレンエピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ポリエチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることが出来るが、これらに限られるものではない。
【0055】
さらに、前記の併用活性エネルギー線硬化性不飽和有機化合物の一部または全部として、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する分子量が400〜5000程度の活性エネルギー線硬化性樹脂を組み合わせることもできる。このような硬化性樹脂として、例えば、ポリウレタン変性ポリエーテルポリ(メタ)アクリレートやポリウレタン変性ポリエステルポリ(メタ)アクリレートなどのポリウレタンポリ(メタ)アクリレートポリマー類を用いることが好ましい。
【0056】
(その他の成分)
本発明に使用する発泡性組成物は、必要により、酸発生剤又は塩基発生剤と分解性化合物以外の添加物を含ませることができる。添加物としは、無機系または有機系化合物充填剤、並びに各種界面活性剤などの分散剤、多価イソシアネート化合物、エポキシ化合物、有機金属化合物などの反応性化合物および酸化防止剤、シリコーンオイルや加工助剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、スリップ防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、光安定剤、滑剤、軟化剤、有色染料、その他の安定剤等を一種類以上含ませてもよい。
添加剤を用いることにより、成形性や発泡性、光学的物性(とくに白色顔料の場合)、電気および磁気的特性(とくにカーボン等の導電性粒子の場合)などの向上が期待できる。
【0057】
無機系化合物充填剤の具体例としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、シリカ等の顔料、ステアリン酸亜鉛のような金属石鹸、並びに各種界面活性剤などの分散剤、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、カオリン、珪酸白土、珪藻土、酸化亜鉛、酸化珪素、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、マイカ、アスベスト粉、ガラス粉、シラスバルーン、ゼオライトなどが遂げられる。有機系化合物充填剤としては、木粉、パルプ粉などのセルロース系粉末が挙げられる。
有機系化合物充填剤としては、例えば、木粉、パルプ粉などのセルロース系粉末、ポリマービーズなどが挙げられる。ポリマービーズとしては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂又はセルロース誘導体、ポリビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン及びポリカーボネート、架橋用モノマーなどから製造されたものが使用できる。
これらの充填剤は、2種類以上混合したものであってもよい。
【0058】
紫外線吸収剤の具体例としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれる。サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0059】
酸化防止剤の具体例としては、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
光安定剤の代表的なものとしては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0060】
軟化剤は、成形性または成形体の加工性を向上させる目的で使用でき、具体的には、エステル化合物類、アミド化合物類、側鎖を有する炭化水素重合体類、鉱油類、流動パラフィン類、ワックス類などが挙げられる。
軟化剤として用いるエステル化合物としては、アルコールとカルボン酸からなる構造のモノまたはポリエステルであれば特に制限はなく、ヒドロキシル基およびカルボニル基末端を分子内に残した化合物でも、エステル基の形で封鎖された化合物でもよい。具体的には、ステアリルステアレート、ソルビタントリステアレート、エポキシ大豆油、精製ひまし油、硬化ひまし油、脱水ひまし油、エポキシ大豆油、極度硬化油、トリメリット酸トリオクチル、エチレングリコールジオクタノエート、ペンタエリスリトールテトラオクタノエートなどが挙げられる。
アミド化合物としては、アミンとカルボン酸からなる構造のモノまたはポリアミド化合物であれば特に制限はなく、アミノ基およびカルボニル基末端を分子内に残した化合物でも、アミド基の形で封鎖された化合物でもよい。具体的には、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、トリメチレンビスオクチル酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、トリオクタトリメリット酸アミド、ジステアリル尿素、ブチレンビスステアリン酸アミド、キシリレンビスステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルフタル酸アミド、ジステアリルオクタデカ二酸アミド、イプシロンカプロラクタム、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0061】
側鎖を有する炭化水素重合体としては、ポリα−オレフィン類で、炭素数4以上の側鎖を有する通常オリゴマーに分類されるものが好ましい。具体的には、エチレン−プロピレンの共重合体やそのマレイン酸誘導体、イソブチレンの重合体、ブタジエン、イソプレンのオリゴマーおよびその水添物、1−ヘキセンの重合物、ポリスチレンの重合物およびこれらから誘導される誘導体、ヒドロキシポリブタジエンやその水添物、末端ヒドロキシポリブタジエン水添物などが挙げられる。
【0062】
本発明に使用する発泡性組成物は、一般的な混練機を用いて調製することができる。例えば、二本ロール、三本ロール、カウレスデゾルバー、ホモミキサー、サンドグラインダー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ニーダー、高速ミキサー、ホモジナイザーなどである。また超音波分散機などを使用することもできる。
【0063】
<成形工程>
発泡性組成物の成形工程は、発泡性組成物を所望の形状の成形体に成形する工程である。成形体の形状に特に限定はなく、発泡体の使用目的によって適宜決められる。一般的な形状としては、シート状物(フィルム状を含む)、ファイバー状物、ロッド状物などが挙げられる。シート状物においては、支持体を用いない独立のシートであっても支持体上に密着したシート層であってもよい。
本発明における成形工程は、形状を決定するための工程である。成形工程の段階における成形体は、固体でなく流動体であってもよい。例えば、特定の型に流し込んだ液状物も、本発明における成形体に含まれる。
【0064】
(シート状物の成形方法)
シート状物の成形方法は、特開2004−2812号公報や、特願2003−199521号公報に記載される方法を用いることができる。一般的には、溶融押出成形や射出成形、塗工成形、プレス成形が好ましい。これらは積層化も可能である。
また、バッチ式でも連続式でもかまわない。発泡組成物が溶液の場合は、溶剤の乾燥処理を加えてもよい。
【0065】
塗工成形の場合、支持体に塗工ヘッドを用いて発泡性組成物を塗工した後、発泡性組成物が溶剤等で希釈された溶液ならば、乾燥器にて溶剤分を除去し、支持体上に発泡性組成物からなるシート層を得る。このとき、支持体からシート層を剥離することで、発泡性組成物からなる単独のシート状物を得ることもできる。塗工方法には、バーコート法、エアードクターコート法、ブレードコート法、スクイズコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、トランスファーコート法、コンマコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、マルチロールコート法、ディップコート法、ロッドコート法、キスコート法、ゲートロールコート法、落下カーテンコート法、スライドコート法、ファウンテンコート法、およびスリットダイコート法などがあげられる。
【0066】
支持体の具体例としては、紙、合成紙、プラスチック樹脂シート、金属シート、金属蒸着シート等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、或は、互いに積層されていてもよい。プラスチック樹脂シートは、例えば、ポリスチレン樹脂シート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂シート、並びにポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂シート等の汎用プラスチックシートやポリイミド樹脂シート、ABS樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート等のエンジニアリングプラスチックシートなどが挙げられ、また金属シートを構成する金属としては、アルミニウムおよび銅などが挙げられる。金属蒸着シートとしては、アルミ蒸着シート・金蒸着シート・銀蒸着シートなどが挙げられる。
【0067】
押出成形の場合、スクリュー状の押出軸を用いた一般の押出成形法、ピストン状押出軸を用いたラム押出成形法などがあげられる。例えば、押出成形機から押出された発泡性組成物はダイから押出されロールなどを介してシート状物を得ることができる。
【0068】
(成形上の注意点)
発泡性組成物は、組成によって、例えば150℃以上の加熱により分解してしまう場合もある。そのため、発泡工程の前に正味の発泡性能を失わないよう留意する必要がある。
例えば、押出成形において、樹脂の溶融粘度まで加熱してしまうと発泡性能が損なわれる場合、塗工成形と同様に溶媒を用いて発泡性組成物の溶液を調整し、常温で成形する溶液キャスト法のような方法をとることもできる。
【0069】
<発泡工程>
発泡工程は、成形体に放射線エネルギーと熱エネルギーとを付与して発泡させる工程である。発泡工程は、成形体に放射線を照射する放射線照射工程と、成形体を加熱する加熱工程とを含み、放射線照射工程後に加熱工程が行われることが好ましい。放射線照射工程と加熱工程とを順次行うことにより、安定した発泡体が形成できる。これは、放射線照射工程で気泡核が生成し、加熱工程でその気泡核が成長するためであると考えられる。
なお、各工程は、連続的に行っても不連速的に行ってもよい。
【0070】
(放射線照射工程)
放射線照射工程で使用する放射線としては、電子線、紫外線、可視光線、γ線等の電離性放射線などが好ましい。これらの中では電子線又は紫外線を用いることが特に好ましい。
【0071】
電子線を照射する場合は、充分な透過力を得るために、加速電圧が30〜1000kV、より好ましくは30〜300kVである電子線加速器を用い、ワンパスの吸収線量を0.5〜20Mradにコントロールすることが好ましい(1rad=0.01Gy)。加速電圧、あるいは電子線照射量が上記範囲より低いと、電子線の透過力が不充分になり、成形体の内部まで充分に透過することができない。また、この範囲より大きすぎると、エネルギー効率が悪化するばかりでなく、得られた成形体の強度が不充分になり、それに含まれる樹脂及び添加剤の分解を生じ、得られる発泡体の品質が不満足なものになることがある。
【0072】
電子線加速器としては、例えば、エレクトロカーテンシステム、スキャンニングタイプ、ダブルスキャンニングタイプ等を用いることができる。電子線照射に際しては照射雰囲気の酸素濃度が高いと、酸もしくは塩基の発生、および/または硬化性分解性化合物の硬化が妨げられることがある。このため照射雰囲気の空気を、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスにより置換することが好ましい。照射雰囲気の酸素濃度は1000ppm以下であることが好ましく、さらに安定的な電子線エネルギーを得るため、500ppm以下に抑制されることがより好ましい。
【0073】
紫外線を照射する場合は、半導体・フォトレジスト分野や紫外線硬化分野などで一般的に使用されている紫外線ランプを用いることができる。一般的な紫外線ランプとしては、例えば、ハロゲンランプ、ハロゲンヒーターランプ、キセノンショートアークランプ、キセノンフラッシュランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、ディープUVランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、クリプトンアークランプ、エキシマランプなどがあり、近年では、極短波長(214nmにピーク)を発光するY線ランプもある。これらのランプには、オゾン発生の少ないオゾンレスタイプもある。これらの紫外線は、散乱光であっても、直進性の高い平行光であってもよい。
【0074】
気泡分布の位置制御を精度よく行うためには、放射線として平行光を用いることが好ましい。紫外線照射には、ArFエキシマーレーザー、KrFエキシマーレーザーや、非線形光学結晶を含む高調波ユニットを介したYAGレーザーなどに挙げられる種々のレーザーや、紫外発光ダイオードを用いることもできる。
紫外線ランプやレーザー、紫外発光ダイオードの発光波長は、発泡性組成物の発泡性を妨げないものであれば限定はないが、好ましくは、光酸発生剤または光塩基発生剤が酸または塩基を効率よく発生させられる発光波長がよい。すなわち、使用する光酸発生剤または光塩基発生剤の感光波長領域と重なる発光波長が好ましい。さらには、それら発生剤の感光波長領域における極大吸収波長または最大吸収波長と重なる発光波長が、発生効率が高くなるためより好ましい。紫外線のエネルギー照射強度は、発泡性組成物によって適宜決められる。
【0075】
種々の水銀ランプやメタルハライドランプなどに代表される照射強度が高い紫外線ランプを使用する場合は、生産性を高めることができ、その照射強度(ランプ出力)は30W/cm以上が好ましい。紫外線の積算照射光量(J/cm2)は、エネルギー照射強度に照射時間を積算したものであり、発泡組成物および所望の気泡分布によって適宜決められる。酸発生剤や塩基発生剤の吸光係数に応じて設定することもある。安定かつ連続的に製造する上では、1.0mJ/cm2〜20J/cm2の範囲が好ましい。
紫外線ランプを使用する場合は、照射強度が高いため、照射時間を短縮することができる。エキシマーランプやエキシマーレーザーを使用する場合は、その照射強度は弱いが、ほぼ単一光に近いため、発光波長が発生剤の感光波長に最適化したものであれば、より高い発生効率および発泡性が可能となる。照射光量を多くした場合、紫外線ランプによっては熱の発生が発泡性を妨げる場合がある。そのときは、コールドミラーなどの冷却処置を行なうことができる。
【0076】
(加熱工程)
加熱工程で用いることのできる加熱器に特に制限はないが、接触加熱、誘導加熱、抵抗加熱、誘電加熱(およびマイクロ波加熱)、赤外線加熱により加熱ができるもの等が例示できる。
具体的には、放射熱を利用した電気あるいはガス式の赤外線ドライヤーや、電磁誘導を利用したロールヒーター、油媒を利用したオイルヒーター、電熱ヒーター、およびこれらの熱風を利用した熱風ドライヤーなどが挙げられる。
成形体に加熱体を接触させて加熱する接触加熱では、金属ブロック、金属板、金属ロールなどの加熱体が使用できる。
接触加熱では加圧しながら加熱してもよい。この場合、プレス成形の際に使用する加熱プレス機を用いることができる。
【0077】
誘電加熱や赤外線加熱の場合,材料内部を直接加熱する内部加熱方式なので,熱風ドライヤーなどの外部加熱法よりも瞬時に均一な加熱を行うのに好ましい。誘電加熱の場合,周波数1MHzから300MHz(波長30m〜1m)の高周波エネルギーを用いる。6MHz〜40MHzの周波数が用いられることが多い。誘電加熱のうち特にマイクロ波加熱では周波数が300MHzから300GHz(波長が1m〜1mm)のマイクロ波をもちいるが、2450MHz、915MHz(電子レンジと同じ)を使うことが多い。
赤外線加熱の場合,赤外領域の波長0.76〜1000μmの電磁波を利用する。ヒータ表面温度および被加熱材料の赤外吸収スペクトルなどから、状況により選択される波長の最適帯は変化するが、好ましくは1.5〜25μm、さらに好ましくは2〜15μmの波長帯を用いることができる。
【0078】
さらに、一般の熱記録用プリンターに使用されている加熱方式も利用できる。例えば、電流を流すことで発熱する感熱ヘッドやレーザー熱転写が挙げられ、熱の書き込みによって同パターンの発泡体を得ることができる。高精細や高解像度を得るときは、感熱ヘッドよりもレーザー熱転写の方が好ましい。
【0079】
<不均一発泡体>
本発明により得られる発泡体は、気泡径や気泡密度の分布(上述のように、総称して「気泡分布」という場合がある。)が位置によって異なる不均一発泡体である。
【0080】
(気泡径)
本発明における「気泡径」は「気泡直径」の意味である。具体的には、発泡体断面の観察画像から画像解析した気泡直径を平均することにより求める。なお、平均は、断面画像の視野においてほぼその領域の中央付近から、気泡を100個以上測定されるような領域をサンプリングして求める。
気泡径は、分布の全範囲を通じて10μm以下であることが好ましく、さらに0.005〜10μmであることが好ましい。気泡径が0.005μmより小さいと発泡体ゆえの機能が発現され難いことがある。また、10μmより大きいと発泡体の表面の平滑性が不充分になる恐れがある。とくに厚さ100μm以下の薄物発泡体では外観不良となる場合が多いため、0.005〜1μmであることが特に好ましい。
【0081】
(気泡密度)
本発明における気泡密度は、アルキメデス法により直接求めた体積密度(気泡も含めた体積を含む単位体積あたりの密度;g/cm)や発泡倍率(発泡時の体積密度に対する未発泡時の体積密度の比;倍)、気泡数密度(未発泡の体積に対する気泡の個数;個/cm)などの単位体積換算表示で評価してもよいし、発泡体断面の観察画像から画像解析して求めた気泡占有面積率(%)や気泡数面密度(個/cm)などの単位面積換算表示で評価してもよい。本発明で得られる不均一発泡体では、同一発泡体中で位置により気泡密度が異なるため、測定に一定量の均一発泡体を必要とするアルキメデス法での単位体積換算表示よりも、断面画像からスポット的に測定が可能な単位面積換算表示で評価する方が好ましい。
気泡密度は、断面画像の視野においてほぼその領域の中央付近から、気泡を100個以上測定されるような領域をサンプリングして求める。
本発明の発泡体の気泡密度にとくに制限はないが、発泡体の機能を充分に発現させるためには、気泡数密度にして10個/cm以上の範囲であることが好ましい。この値を単位面積換算すると、例えば、気泡径1μmであれば、気泡占有面積率にして0.8%以上であることが好ましい。
【0082】
気泡径や気泡密度の不均一な分布の代表的形態としては、部分発泡や傾斜発泡が挙げられる。
(部分発泡)
部分発泡は、(1)未発泡領域と発泡領域に別れている形態、あるいは低発泡領域と高発泡領域に別れている形態である。部分発泡体の中でも特に、(2)未発泡領域と発泡領域が交互に存在する形態、あるいは低発泡領域と高発泡領域が交互に存在する形態を交互発泡とも言う。
図1に、非発泡領域Ia,Ic,Ieと均一発泡領域Ib,Idとが交互に部分配置された交互発泡体を示す。また、図2に、小さい気泡径からなる均一発泡領域IIb,IIfと、大きい気泡径からなる均一発泡領域IIdとが、各々の非発泡領域IIa,IIc,IIe,IIgの間に交互に部分配置された交互発泡体を示す。図1、図2において、Mは成形体のマトリクス、Bは気泡である(以下の図においても同じ)。図1、図2いずれの図の発泡体においても、各領域の幅は任意に変えることができる
【0083】
(傾斜発泡)
傾斜発泡としては、(3)発泡している領域において、気泡径または気泡密度が一方の端から他方の端(あるいは途中地点)に向って連続的に変化する形態、(4)発泡している領域において、気泡径または気泡密度が一方の端から他方の端(あるいは途中地点)に向って段階的に変化する形態、が挙げられる。
段階的に変化する状態としては、気泡分布が異なる2段階以上の領域、例えば、低発泡領域と高発泡領域に別れている状態、あるいは、低発泡領域、中発泡領域、高発泡領域の順に変化する状態、あるいは4段階以上に変化する状態などが挙げられる。
【0084】
図3に、気泡径が一方向に連続的に変化している傾斜発泡体を示す。図4に、気泡密度が一方向に連続的に変化している傾斜発泡体を示す。
このような分布の場合、連続的に変化している方向で3つの領域に3等分し、気泡径または気泡密度が最も小さい領域の平均的な気泡径をD1、平均的な気泡占有面積率をS1とし、気泡径または気泡密度の値が中間である領域の平均的な気泡径をD2、平均的な気泡占有面積率S2とし、気泡径または気泡密度が最も大きい領域の平均的な気泡径をD3、気泡占有面積率S3としたときに、D3/D1またはS3/S1の値が1.01以上、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。平均的な値とは、断面画像の視野においてほぼその領域の中央付近から、気泡を100個以上測定されるような領域を選択してサンプリングして測定した値である。
【0085】
また、図5に、気泡径が一方向に不連続的(段階的)に変化している傾斜発泡体を示す。また、図6に、気泡密度が一方向に不連続的(段階的)に変化している傾斜発泡体を示す。
このような分布の場合、気泡径または気泡密度が最も小さい領域(Va,VIa)の平均的な気泡径D1または平均的な気泡占有面積率S1に対して、気泡径または気泡密度が最も大きい領域(Vc,VIc)の平均的な気泡径D2または気泡占有面積率S2を比較したときに、D2/D1またはS2/S1の値が1.1以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。平均的な値とは、目視においてほぼその領域の中央付近から、気泡を100個以上測定されるような領域を選択してサンプリングして測定した値である。
【0086】
(その他の発泡形態)
その他の発泡形態として、(5)気泡径(D)または気泡密度(N)が、発泡体中の少なくとも一方向(x)において連続あるいは不連続な分布関数D=F(x)、N=F(x)をもつ形態が挙げられる。
(5)の発泡形態は、(1)または(2)と(3)または(4)の混在する形態や、(3)と(4)の中間あるいは混在する形態を含む。あるいは、全くランダムに未発泡または低発泡領域と高発泡領域が混在する形態も含む。
【0087】
以上の例において、気泡分布が変化する方向は限定されることはないが、例えばシート状発泡体の場合、シートの平面方向または厚さ方向の少なくとも一方向において変化している形態が好ましい。
なお、図1〜図6では、いずれも、気泡数と気泡密度とは、各々独立して変化するものとして説明したが、通常、両者は共に変化しやすく、気泡数が増加するときは気泡密度も増加し、気泡数が減少すると気泡密度も減少する傾向にある。
【0088】
<気泡分布の不均一化法>
所望の気泡分布は、(a)前記成形体に付与する放射線エネルギー、(b)前記成形体に付与する熱エネルギー、(c)前記成形体中の分解発泡性官能基濃度、(d)前記成形体中の酸発生剤または塩基発生剤の濃度のいずれか1以上を、所定の不均一分布とすることにより得られる。
【0089】
(放射線エネルギーの不均一化)
成形体に付与する放射線エネルギーを、所定の不均一分布とする手法を説明する。
例えば、図7に示すように、成形体1の厚さ方向に沿って放射線を照射すると、透過深度による放射線エネルギーの到達量の相違により、厚さ方向に沿って気泡分布が減少する傾斜発泡体を得ることができる。
【0090】
また、図8に示すように、フォトマスク2を使用して放射線を成形体1の所定の箇所にのみ照射し、部分発泡体を作成することもできる。描画パターンが含まれるフォトマスク2を使用した場合は、それらのパターンを転写した部分発泡体が得られる。パターンの種類は、デルタ状、ストライプ状、または蜂の巣状など、用途によって適宜設計すればよい。なお、部分発泡体は、電子線または紫外線照射の直接描画によっても得ることができる。
【0091】
また、図9に示すように、エネルギー透過性が階調パターンになっているフォトマスク2を使用して、成形体1に階調パターン放射線を照射し、傾斜発泡体を作成することもできる。階調パターンは連続的でも段階(不連続)的でも構わない。
【0092】
また、放射線の照射時間を変えることで気泡分布を変化させることも可能である。例えば、図10に示すように、放射線照射中に、三角形状の開口部3を設けたフォトマスク2を成形体1上でスライドさせると、三角形状の頂点側3aがスライドした方は照射時間が短く、底辺側3bは照射時間が長くなる。また、成形体1の方をスライドさせても同じ効果があることは自明である。このように照射時間に分布を生じさせることで、階調パターンのフォトマスクを用いたときと同様に、放射線エネルギーの分布をつくることができる。なお、開口部3の形状を変化させることにより、種々の分布を得ることができる。
【0093】
図8〜図9で用いたフォトマスク2の材質としては、クロムマスクやメタルマスク、銀塩ガラスマスク、銀塩フィルム、スクリーンマスクなどが使用できる。ガラスをイオンエッチングしたマスクや、集光機能を有する平面レンズの干渉縞を電子線描画したマスクなどが利用できる。波長300nm以下の紫外線を照射する場合は、フォトマスクの基材は石英ガラスを使用することが好ましい。本発明で得られた傾斜発泡体や部分発泡体を、フォトマスクとして利用しても構わない。
図10で用いたフォトマスク2の材質としては、酸発生剤に酸を、または塩基発生剤に塩基を発生させうる波長の放射線が透過しにくいものであることが好ましく、さらに、開口部を容易に形成できる材質であることが好ましい。例えば、板紙、金属板、樹脂シート、ガラス板などが挙げられる。
【0094】
フォトマスクを使用して照射する場合、密着照射、投影照射など方式が採用できる。フォトマスクのパターンを精度良く転写させるためには、照射する光が均一平行光であることが好ましい。
平行光を照射するための露光システムとしては、例えば、インテグレーターと放物鏡を利用した光学系、フレネルレンズを利用した光学系、ハニカムボードと拡散板を利用した光学系などが挙げられる(http://www.kuranami.co.jp/toku_guide01.htm参照)。
高い均一性を得るには、インテグレーターと放物鏡を利用した光学系が一般的に好ましく、この光学系に用いる光源としては、ショートアークランプが好ましい。ショートアークランプには、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、ナトリウムランプ、Y線ランプが挙げられる。発泡性組成物からなる成形体にフォトマスクを密着させた後、紫外線の平行光を照射して加熱発泡することで、数μm幅のライン&スペースパターンをもつ部分発泡が得られる。そのときのエッジも鮮明に転写することができる。
また、干渉縞を発生させた放射線を照射する方法も可能である。
【0095】
(熱エネルギーの不均一化)
熱エネルギーの分布は、加熱温度により調整することが好ましい。
例えば、図11に示すように、放射線エネルギーを付与した後の成形体1を加熱する際に、上面加熱温度Tと下面加熱温度Tとを異なるものとすれば、傾斜発泡体が得られる。ここで、T>Tであれば、上面側の方が下面側よりも、気泡数及び/又は気泡密度が大きくなる。
もちろん、平面方向に加熱温度を変えられる加熱器を用いると、平面方向にそった傾斜発泡体ができる。
【0096】
また、熱記録用プリンターを用いて、成形体1に印加する熱エネルギーを変えていくことで、図12に示す部分発泡体や図13に示す傾斜発泡体を作成することも可能である。
図12は、領域XIIb,XIId,XIIfに対して、熱記録用プリンターによる加熱を行うことによって得られる部分発泡体である。
図13は、図示右から左に向かって、付与する熱エネルギーが増加するように、熱記録用プリンターによる加熱を行うことによって得られる傾斜発泡体である。
【0097】
(発泡性組成物の不均一化)
成形体中の分解発泡性官能基濃度、及び/又は成形体中の酸発生剤(あるいは塩基発生剤)の濃度を分布は、組成の異なる複数の発泡性組成物を用いることによって調整することが好ましい。
具体的には以下のものが挙げられる。
1)分解性化合物及び/又は酸発生剤(あるいは塩基発生剤)の混合比が異なるシート状物を積層した独立シート。
2)分解性化合物及び/又は酸発生剤(あるいは塩基発生剤)の混合比が異なる塗料を支持体上に重ね塗工し積層したシート層。
3)分解性化合物及び/又は酸発生剤(あるいは塩基発生剤)の混合比が異なる塗料を支持体上に並列塗工したシート層。
4)発泡性組成物と非発泡性組成物のシート状物を積層した独立シート。
5)発泡性組成物の溶液と非発泡性組成物の塗料を支持体上に重ね塗工し積層したシート層。
6)発泡性組成物の溶液と非発泡性組成物の塗料を支持体上に並列塗工したシート層
【0098】
1)〜3)によれば、図14に示すように、発泡組成物の濃度(分解性化合物及び/又は酸発生剤の濃度)に対応する気泡分布を有する傾斜発泡体を作成することができる。また、4)〜6)によれば、図15に示すように、発泡組成物の濃度(分解性化合物及び/又は酸発生剤の濃度)に対応する気泡分布を有する部分発泡体を作成することができる。
【0099】
(3次元の気泡分布)
気泡分布の不均一化のための手法として上述した放射線エネルギーの不均一化、熱エネルギーの不均一化、及び発泡性組成物の不均一化の各手法は、各々他の手法と互いに独立して気泡分布に影響を与えることができる。したがって、これらの手法の2以上を組み合わせることにより、同一発泡体内でその気泡分布の方向を3次元に制御することが可能である。
【0100】
(気泡径または気泡密度)
上述のように、気泡数と気泡密度とは、共に変化しやすく、気泡数が増加するときは気泡密度も増加し、気泡数が減少すると気泡密度も減少する傾向にある。
しかし、発泡性組成物の組成を調整すること等により、何れか一方を重点的に変化させることも可能である。
たとえば、発泡性組成物のガラス転移点を高めにすることにより、気泡径を比較的小さく保ったままで、主として気泡密度を変化させることも可能である。また、3次元架橋性の発泡性組成物を用いることにより、気泡径を比較的小さく保ったままで、主として気泡密度を変化させることも可能である。
【実施例】
【0101】
本発明を下記実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」および「%」は各々「質量部」および「質量%」を表わす。
【0102】
<実施例1>
<発泡体シートの作製>
(1)塗布層の形成
分解性化合物であるtert−ブチルアクリレート(60重量%)とメチルメタクリレート(30重量%)とメタクリル酸(10重量%)の共重合体100部に対して、ヨードニウム塩系酸発生剤としてビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート(商標:BBI−109、ミドリ化学製)3部を混合し、これを酢酸エチルに溶解して固形分含有量:25%の溶液を調製し、これを塗布液として用いた。
この塗布液を、厚さ75μmの透明ポリエチレンテレフタレートこれを酢酸エチルに溶解して固形分含有量:25%の溶液を調製し、これを塗布液として用いた。この塗布液を、厚さ75μmの透明ポリエチレンテレフタレート(商標:ルミラー75−T60、パナック製)からなる支持体の片面上に、塗布用ギャップ幅300μmのアプリケーターバーを用いて塗工した。その後、すぐに、温度110℃の恒温乾燥機内に5分間放置して溶媒を蒸発除去した。薄膜状の無色透明な塗布層がポリエチレンテレフタレート支持体上に形成された。塗布層の厚さは40〜50μmの範囲内に調製した。
【0103】
(2)紫外線照射
前記工程(1)により形成された塗布層の上に、ライン&スペースパターンのクロムマスク(石英ガラス製)を密着させて、フォトマスク側から紫外線照射を行なった。ライン&スペースパターンは、紫外線を透過するライン(幅100μm)と、紫外線を完全透過しないライン(隙間;幅100μm)とが交互に並んでいるものを用いた。紫外線には、メタルハライドランプを光源として、照射線量2000mJ/cm2となるように照射した。照射後、クロムマスクを取り除いて得られた塗布層は、工程(1)後の塗布層と変わらず、無色透明なままであった。
【0104】
(3)熱処理による発泡
前記工程(2)によって得られた塗布層を支持体から剥離し、その単一フィルムを110℃の温度に保持した恒温器内で5分間加熱処理させた。加熱後のフィルムをマイクロスコープ(商標:KH−2700、HiRox製)で観察したところ、図16に示すように、紫外線照射部10が線幅100μmのライン状に白く発泡し、未照射部20が無色透明の未発泡部のままであることが確認できた。
【0105】
(4)発泡構造の評価
前記工程(3)によって得られたフィルムの紫外線照射部10における発泡構造を、走査電子顕微鏡(商標:S−510、日立製作所製)観察により確認した。断面観察は、前記フィルムを液体窒素中に浸して凍結割断した断面を金属蒸着処理した後、走査型電子顕微鏡(商標:S−510、日立製作所製)にて行なった。これを図17に示す。
発泡構造は、観察画像から算出した気泡径および気泡密度で評価を行なった。具体的には、観察画像(拡大倍率5000倍)から合計150個程度の気泡群が内在している区画を無作為に選び出し、それら気泡群とそれ以外のマトリックスとを2値化処理してから画像解析装置(商標:イメージアナライザーV10、TOYOBO製)を用いて気泡径および気泡密度について評価した。このとき、気泡径としては気泡直径の平均値(μm)を求め、気泡密度としては気泡占有面積率(%)を求めた。
その結果、線幅100μmのライン状に白く発泡した紫外線照射部10は、気泡径0.25μm、気泡占有面率28%となっていた。一方、無色透明な未照射部20に気泡は観察されなかった。このように、気泡径1μm以下の発泡領域をもつ部分発泡体を得ることができた。
【0106】
<実施例2>
実施例1と同様にして、気泡分布をもつ発泡体を作製した。但し、実施例1の工程(2)において、ライン&スペースパターンの代わりに直径3μmのドット状パターンのクロムマスクを用い、紫外線はY線ランプ(ピーク波長214nm)から取出された均一平行光を用いて、照射線量1J/cm2照射した。
得られた発泡体は、図18に示すように、直径3μmの紫外線照射部10が、ドット状に白く発泡していた。また、その発泡構造は実施例1と同様であった。一方、未照射部20は無色透明で、気泡は観察されなかった。このように、平行光を用いることで、数μmレベルの部分を発泡させた部分発泡を得ることができた。
【0107】
<実施例3>
実施例1と同様にして、気泡分布をもつ発泡体を作製した。但し、実施例1の工程(2)において、ライン&スペースパターンの代わりに連続的な階調パターンのフォトマスクを用いた。得られた発泡体は、図19に示すように、マスクの透過率が高い方から低い方にそって、徐々に白くなるように発泡した。発泡構造は、図20に示すように、白く変化していく中で代表的な5点(a〜e)について評価したところ、同一フィルム中で気泡径および気泡占有密度が徐々に増加していることが確認できた。具体的には、a〜e点までの各々の発泡構造は、(a)気泡径0.17μm、気泡占有面率4%(b)気泡径0.22μm、気泡占有面率9%(c)気泡径0.29μm、気泡占有面率16%(d)気泡径0.34μm、気泡占有面率22%(e)気泡径0.42μm、気泡占有面率32%となっていた(図21参照)。このように、気泡分布が連続的な勾配を有する傾斜発泡体を得ることができた。
【0108】
<実施例4>
実施例1の工程(1)において、塗布層の厚さが400μmとなるように積層塗工させた。この積層シートに、紫外線を1000mJ/cm2となるように照射した。紫外線ランプは、出力120w/cmのメタルハライドランプを用いた。照射後の積層シートを、温度が異なる2つの金属ロールの間に通して加熱処理を施し発泡させた。このとき、一方の金属ロールの温度を100℃、もう一方の金属ロールを130℃に調整させた。
その結果、温度が高いロールに接触した積層シート表面から、他方の表面(温度が低いロールに接触した積層シート表面)へ向かって、気泡径が0.1〜1μm、気泡占有面積率が4〜30%の勾配を有する傾斜発泡体を得ることができた。
【0109】
<実施例5>
tert−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートの共重合比が、tert−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート=80/20、60/40、40/60となる3種類の分解性化合物を用いて、前記順序どおりに積層させたシートを塗工により作成した。このとき、各層には分解性化合物100部に対してBBI−109が3部混合されている。各層の厚さは50μm厚となるように調整した。この積層シートに、紫外線を1000mJ/cm2となるように照射した。紫外線ランプは、出力120w/cmのメタルハライドランプを用いた。照射後に、110℃2分加熱することで発泡させた。
その結果、tert−ブチルアクリレートの共重合比が少ない層から多い層に向かって、気泡径と気泡占有面積率が増大した、厚さ方向に段階的に気泡分布が変化する傾斜発泡体を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明により、従来法では得ることができなかった気泡分布を任意に変化させた発泡体を容易に提供することが可能となる。また、気泡分布に伴い、発泡特性分布も生じた高機能性発泡体を提供することができ、包装材料や建築材料、医療材料、電気機器材料、電子情報材料、自動車材料などさまざまな分野に大きな寄与を与える。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】交互発泡を模式的に示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)の断面における左右位置と気泡径との関係を示すグラフである。
【図2】交互発泡を模式的に示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)の断面における左右位置と気泡径との関係を示すグラフである。
【図3】連続的な傾斜発泡を模式的に示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)の断面における左右位置と気泡径との関係を示すグラフである。
【図4】連続的な傾斜発泡を模式的に示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)の断面における左右位置と気泡密度との関係を示すグラフである。
【図5】段階的な傾斜発泡を模式的に示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)の断面における左右位置と気泡径との関係を示すグラフである。
【図6】段階的な傾斜発泡を模式的に示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)の断面における左右位置と気泡密度との関係を示すグラフである。
【図7】透過深度による放射線エネルギーの到達量の相違を利用した傾斜発泡体の調製方法の説明図である。
【図8】フォトマスクを利用した部分発泡体の調製方法の説明図である。
【図9】フォトマスクを利用した傾斜発泡体の調製方法の説明図である。
【図10】フォトマスクのスライドによる照射時間調整を利用した傾斜発泡体の調製方法の説明図である
【図11】表裏の加熱温度差を利用した傾斜発泡体の模式図である。
【図12】熱記録用プリンターを利用した部分発泡体の模式図である。
【図13】熱記録用プリンターを利用した傾斜発泡体の模式図である。
【図14】組成の異なる複数の発泡性組成物を利用した傾斜発泡体の模式図である。
【図15】組成の異なる複数の発泡性組成物を利用した部分発泡体の模式図である。
【図16】実施例1で得られた発泡体の写真である。
【図17】実施例1で得られた発泡体の紫外線照射部における発泡構造を示す写真である。
【図18】実施例2で得られた発泡体の写真である。
【図19】実施例3で得られた発泡体の写真である。
【図20】実施例3で得られた発泡体のa〜e点における発泡構造を示す写真である。
【図21】実施例3で得られた発泡体のa〜e点における気泡径と気泡占有面率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0112】
1・・・成形体、2・・・フォトマスク、3・・・開口部、
M・・・マトリクス、B・・・気泡



【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線エネルギーの作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤と、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する分解発泡性化合物とを含有する発泡性組成物を成形体とする成形工程と、
前記成形体に放射線エネルギー及び熱エネルギーを付与して発泡させる発泡工程とを備え、
(a)前記成形体に付与する放射線エネルギー、(b)前記成形体に付与する熱エネルギー、(c)前記成形体中の分解発泡性官能基濃度、(d)前記成形体中の酸発生剤または塩基発生剤の濃度のいずれか1以上が、所定の不均一分布とされていることを特徴とする不均一発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記発泡工程が、前記成形体に放射線を照射する放射線照射工程と、該放射線照射工程後に前記成形体を加熱する加熱工程とを含む請求項1に記載の不均一発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記成形体にフォトマスクを介して放射線を照射することにより、(a)前記成形体に付与する放射線エネルギーが、所定の不均一分布とされている請求項1又は請求項2に記載の不均一発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記フォトマスクが、放射線を透過する基材に放射線を遮蔽するインクで印刷を施したものである請求項3に記載の不均一発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記フォトマスクが、放射線を遮蔽する基材に開口部を設けたものである請求項3に記載の不均一発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記成形体の異なる面に、各々温度の異なる加熱体を接触させることにより、(b)前記成形体に付与する熱エネルギーが、所定の不均一分布とされている請求項1から請求項5の何れかに記載の不均一発泡体の製造方法。
【請求項7】
分解発泡性官能基の含有率が異なる2種以上の発泡性組成物を積層することにより、(c)前記成形体中の分解発泡性官能基濃度が、所定の不均一分布とされている請求項1から請求項6の何れかに記載の不均一発泡体の製造方法。
【請求項8】
酸発生剤または塩基発生剤の含有率が異なる2種以上の発泡性組成物を積層することにより、(d)前記成形体中の酸発生剤または塩基発生剤の濃度が、所定の不均一分布とされている請求項1から請求項7の何れかに記載の不均一発泡体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−124499(P2006−124499A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313890(P2004−313890)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】