説明

不審者検知装置

【課題】押込強盗等の不審者を高い精度で検知できる不審者検知装置を提供する。
【解決手段】所定領域内の画像を順次取得する撮像部と、画像から検出した人物像ごとに画像上にて追跡し各人物像の位置情報を順次出力する追跡部と、不審者の存在を検知する検知部と、不審者の存在を検知すると警報出力する出力部とを有する不審者検知装置において、検知部は、追跡部にて複数の人物像を検出しているならば、当該複数の人物像のうち第一の人物像と他の第二の人物像との相対的な位置関係である相対位置を算出する相対位置算出手段と、相対位置が所定時間にわたって略一定であるとき不審者が存在しているとする判定手段とを有することを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視画像から人物像を追跡し、当該人物像の行動パターン等から不審者であるか否かを検知する不審者検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不審者検知装置は、特定領域を撮影する監視カメラと、当該監視カメラで撮影した画像を経時的に解析する画像解析部と、当該画像解析部による解析結果に基づいて不審行動を検知することにより、ATM等における不審者を検知する用途に利用されている。例えば、特許文献1には、ATM周辺領域における人物像の移動軌跡や人数等を解析することにより、ATMへのいたずらや他の利用者の覗き見等といった不審な行動を示す不審者を検知する不審者検知装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−075802
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の不審者検知装置は、開店中の店舗や通常業務を行っている事務所では、複数の従業員や顧客が部屋の中を自由に動き回わることになる。このような状況においては、従業員や顧客の通常行われる行動と、強盗等により脅されたときのような非常時における行動とを判別することが困難である。このため、従業員や顧客の通常時の行動を非常時の行動と誤って判定し非常通報をしてしまうことが多発する恐れがある。同様に、オープンなスペースである街角等においても、不特定多数の人々が自由に往来するため、ストーカー等の不審者と通常の往来者とを区別することが難しかった。
【0005】
ところで、押込強盗時等の非常時においては、賊は従業員を刃物等で脅迫しつつ金庫の解錠を強要するため、従業員と一定の位置関係を保つ傾向がある。同じように、ストーカーも、尾行対象者と一定の位置関係を保ちつつ行動する傾向がある。
【0006】
そこで本発明は、上記のような不審者と利用者との特殊な位置関係に着目し、複数人が監視領域に存在していたとしてもその中から位置関係が略一定となる人物等を検出することにより、誤報の発生を抑えて高い精度で押込強盗等の不審者を検知することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、所定領域内の画像を順次取得する撮像部と、画像から検出した人物像ごとに画像上にて追跡し各人物像の位置情報を順次出力する追跡部と、不審者の存在を検知する検知部と、不審者の存在を検知すると警報出力する出力部とを有する不審者検知装置において、検知部は、追跡部にて複数の人物像を検出しているならば、複数の人物像のうち第一の人物像と他の第二の人物像との相対的な位置関係である相対位置を算出する相対位置算出手段と、前記相対位置が所定時間にわたって略一定であるとき不審者が存在しているとする判定手段とを有することを特徴とする不審者検知装置を提供する。
【0008】
上記構成により、本発明は、撮像部により取得した画像に基づいて検出及び追跡された複数の人物像について、各人物像間の相対位置が所定時間にわたって略一定となっていると、不審者が存在しているとして警告出力することができる。これにより、例えば、賊と凶器等により脅されている従業員とが一定距離を保ちつつ行動している押込強盗や、対象者を一定距離を保ちながらこっそり尾行しているストーカー等を検知することができる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様は、所定領域が重要物を保管する保管庫を含んでおり、予め画像上で設定された保管庫を操作可能な領域である至近領域が保存されている領域記憶部を更に有し、前記判定手段は、前記第一の人物像が前記領域記憶部の前記至近領域内に存在しているとき不審者が存在しているとする。
かかる構成により、撮像部により取得した画像に基づいて検出及び追跡された複数の人物像について、各人物像間の相対位置が所定時間にわたって略一定となっており、少なくともそのうちの一人が保管庫近辺の所定領域に存在する場合は、不審者が存在しているとして警告出力することができる。これにより、例えば、凶器等により脅している従業員と一定距離を保ちつつ金庫等の保管庫へ移動し、当該従業員に対して保管庫を解錠させるよう強要している押込強盗を検知することができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様は、判定手段は、第一の人物像および第二の人物像の画像上の位置が、所定時間にわたって略一定であるとき不審者が存在しているとする。
かかる構成により、撮像部により取得した画像に基づいて検出及び追跡された複数の人物像について、各人物像間の相対位置が所定時間にわたって略一定となっており、それらの人物像が画像上で所定時間略一定であるとき、不審者が存在しているとして警告出力することができる。これにより、例えば、従業員との距離を一定に保ちつつ凶器等により、金庫を開放させるべく従業員を脅している状況や、従業員と一定距離を保ちつつ、当該従業員をロープなどにより拘束している状況などを検出できるので、押込強盗を検知することができる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様は、追跡部にて追跡している前記人物像と関連付けて当該人物像の顔画像を取得し、当該顔画像中の顔部位が検出できないことにより、当該顔部位が隠蔽されているか否かを判定する顔隠蔽判定部を更に有し、顔隠蔽判定部にて前記第二の人物像の顔部位が隠蔽されていると判定されたならば不審者が存在していると判定する。
かかる構成により、撮像部により取得した画像に基づいて検出及び追跡された複数の人物像について、各人物像間の相対位置が所定時間にわたって略一定となっており、そのうち一方の人物像について顔部位が隠蔽されているとき、不審者が存在しているとして警告出力することができる。一般的に、他の人物と一定距離を保ちつつ行動し、更に顔を隠蔽している人物は、凶器等により脅している押込強盗である疑いが強いと判定できる。したがって、押込強盗を高い精度で検知できる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様は、追跡部にて追跡している人物像と関連付けて当該人物像の顔画像を取得し、当該顔画像と予め登録された顔画像とを比較することにより、当該人物像が前記保管庫を解錠する資格を有する人物であるか否かを認証する認証部を更に有し、認証部にて第一の人物像を認証でき、第二の人物像を認証できないならば不審者が存在していると判定する。
かかる構成により、撮像部により取得した画像に基づいて検出及び追跡された複数の人物像について、各人物像間の相対位置が所定時間にわたって略一定となっており、そのうち一方の人物像が保管庫近辺に存在して解錠資格を有する人物であると認証でき、もう一方の人物像が認証できないとき、不審者が存在しているとして警告出力することができる。一般的に、金庫等の保管庫の解錠操作は、規則等により解錠資格を有しない者の前で行わない運用となっている場合が多い。したがって、解錠資格を有して保管庫近辺に存在する人物と一定距離を保ちつつ行動している解錠資格を有さない人物は、解錠を強要している押込強盗や、暗証番号を盗み見している内部犯行者である疑いが強いため、これらの不審人物を高い精度で検知できる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様は、センサーにより監視領域内への侵入者を検出して異常を外部の装置に通報する警備装置に接続され、予め設定された所定時刻から当該警備装置からの警備開始信号を受信するまでの時間帯にのみ、不審者が存在しているか否かを判定する。
かかる構成により、例えば、営業時間の終了から警備装置により警備が開始されるまでの間の事務所内における従業員が少なくなる時間帯にのみ、不審者の検知を行うことができる。これにより、従業員の移動による誤報を低減することができ、運用負荷を低減することができる。また、押込強盗が発生しやすい時間帯にのみ集中的に監視することができるため効率的な監視運用を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明の不審者検知装置は、押込強盗等の不審者を高い精度で検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例に係る不審者検知装置の構成と配置イメージを模式的に示した図
【図2】管理装置の構成を示すブロック図
【図3】制御部の処理を示すブロック図
【図4】顔判定情報を示す図
【図5】移動軌跡情報を示す図
【図6】移動属性情報を示す図
【図7】不審者判定情報を示す図
【図8】制御部における処理を示すフローチャート
【図9】移動属性情報の算出処理を示すフローチャート
【図10】相対距離演算処理を示すフローチャート
【図11】不審者異常と判定される典型的なケースを示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態として、重要監視物である金庫が設置された金庫室を監視空間とし、監視空間の撮像画像から不審者である押込強盗の存在を検知する場合の実施例について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、不審者検知装置1の全体構成および配置について模式的に示した図である。不審者検知装置1は、管理装置2、人物追跡カメラ3、顔検出カメラ4によって構成される。
【0018】
管理装置2は、金庫室を備えた建物内の事務室や警備室等に設置され、管理装置2に接続された人物追跡カメラ3及び顔検出カメラ4から送信された画像に基づいて不審者検知処理を行う。また、管理装置2は、不審者の検知時に、事務室等に所在する管理者や警備員等に音声や画像表示によって警報出力することにより、不審者の存在を報知する。さらに、管理装置2は、警備装置8に接続され、不審者の検知時に警備装置8に異常信号を送信する。
【0019】
人物追跡カメラ3は、金庫10前面の真上の天井部に金庫室を俯瞰して設置され、監視空間を所定時間おきに撮影し、監視画像を管理装置2に順次送信する。監視画像が撮像される時間間隔は例えば1/5秒である。以下、この時間間隔で刻まれる時間の単位を時刻と称する。
監視画像として撮像される範囲には、一点鎖線で図示された領域11,12が含まれる。これらの領域は、管理装置2にて監視画像上の一部領域として予め設定され、管理装置2による不審者検知処理において参照される。なお、領域11は、金庫10の利用者が金庫10の錠に対して操作可能な操作領域である。具体的には、操作領域11は金庫10を中心とする半径1.5m相当の領域に設定される。また、領域12は、押込強盗に係る賊の不審行動を判定する際に利用する重点監視領域である。具体的には、重点監視領域12は金庫10を中心とする半径5m相当の領域に設定される。重点監視領域12は、操作領域11を内包するよう設定される。好適には、重点監視領域12は出入口を含まないように設定される。
【0020】
顔検出カメラ4は、金庫10背後の壁面に設置され、金庫10に正対する人物を正面から所定時間おきに撮像して正面画像を取得し、管理装置2に送信する。
【0021】
なお、管理装置2と接続されている警備装置8は、金庫室を備えた建物内の事務室や警備室等に設置されている。警備装置8は、管理装置2からの異常信号を受信すると、公衆電話回線などの広域通信ネットワークを介して警備センタ装置9に当該異常を送信し、遠隔地にある警備センタに常駐する警備員に対して異常の発生を報知する。また、警備装置8は、赤外線センサー、マグネットセンサー等のセンサー(図示せず)と接続され、警備中において当該センサーにより侵入者を検知した場合、警備センタ装置9に異常信号を送信することにより、警備センタに常駐する警備員に対して異常の発生を通知する。また、警備装置8は、警備の開始時及び終了時に警備開始信号及び警備終了信号を管理装置2へ送信する。
【0022】
図2は、管理装置2の構成を示している。管理装置2は、コンピュータ機能を有しており、記憶部21、制御部22、入力部23、出力部24及び通信部25を備えている。
【0023】
通信部25は、LANやUSB等の通信インタフェースであり、人物追跡カメラ3、顔検出カメラ4及び警備装置8と双方向通信を行う。
【0024】
入力部23は、キーボードやマウス、タッチパネル、可搬記憶媒体の読み取り装置等の情報入力デバイスである。管理者等は、入力部23を用いて、管理装置2に対して様々な設定情報や操作情報等を入力することができる。
【0025】
出力部24は、制御部22による処理結果を外部機器等に出力するためのインタフェースである。出力部24は、例えばスピーカやブザー等の音響出力機器と接続され、制御部22からの指示により、当該音響出力機器に対して警告音の鳴動を実行させる異常信号を出力する。また、出力部24は、例えばディスプレイ等の表示出力機器と接続され、制御部22からの指示により、当該表示出力機器に対して警告メッセージを表示出力する。管理者等は、警告出力として出力部24からの表示出力や音声出力を確認することにより、監視領域内に不審者が存在することを検知することができる。なお、管理者等は、表示出力を確認することにより、不審者検知装置1の設定情報、監視領域における監視画像や正面画像等を確認することもできる。
また、出力部24は、外部の警備装置8に対して異常信号を送信する通信インタフェースを含んでもよい。これにより、制御部22の処理によって異常が検知された場合に、管理装置2は、異常の検知を知らせる信号を外部の監視センタなどに通知することができる。なお、この場合、出力部24は、通信部25と共通のインタフェース装置であってもよい。
【0026】
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の情報記憶装置である。記憶部21は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部22との間でこれらの情報を入出力する。各種データには、領域情報210、認証情報211、顔判定情報212、移動軌跡情報213、移動属性情報214、不審者判定情報215及び記録画像情報216が含まれる。
【0027】
領域情報210は、監視画像の座標系で表現された操作領域11及び重点監視領域12の情報である。例えば、操作領域11及び重点監視領域12を金庫10を中心とした円として規定される場合、領域情報210には、各領域と対応する円の中心座標と半径のデータが記憶される。
【0028】
認証情報211は、予め金庫10の解錠が許可されている1又は複数の人物(以下、権限者という)それぞれについて、例えば顔の特徴を表す特徴量など、権限者を他の人物と区別して特定するための情報である。
【0029】
顔判定情報212は、顔検出カメラ4にて取得した正面画像を解析し、当該正面画像に含まれる人物像の顔領域が含まれていた場合、当該顔領域内の画像(以下、顔画像という)について顔隠蔽されているか否か、及び権限者として認証されているか否かを時系列に保存した情報である。顔判定情報212の具体例としては、図4に示されるように、正面画像が取得された時刻と、正面画像内に顔領域が含まれていた場合に当該顔画像に付与される一意の識別子である顔IDと、当該顔画像が隠蔽されているか否かを示す顔隠蔽状態と、当該顔画像が権限者として認証されているか否かを示す認証結果と、を対応付けるテーブルとして制御部22により記憶部21に保存される。
【0030】
移動軌跡情報213は、人物追跡カメラ3にて取得した監視画像を解析し、当該監視画像に含まれる人物像の監視画像上における座標を時系列に保存することにより、当該人物像の移動軌跡を追跡できるよう生成された情報である。移動軌跡情報213の具体例としては、図5に示されるように、監視画像が取得された時刻と、当該監視画像内に人物像が含まれていた場合に当該人物像に付与される一意の識別子である像IDと、当該人物像の重心の監視画像上における座標と、当該人物像と同じ(又は略一致する)時刻において顔検出カメラ4にて取得された正面画像内の顔画像について関連付けられた顔判定情報212の顔IDと、を対応付けるテーブルとして制御部22により記憶部21に保存される。なお、像IDは、後述するように、制御部22にて過去時刻における監視画像内の人物像と現在時刻における人物像との関連を解析され、過去時刻における人物像と現在時刻における人物像とが同一であると判定されれば共通する像IDが付与され、過去時刻における人物像と現在時刻における人物像とが同一でないと判定されれば新規の像IDが付与される。
【0031】
移動属性情報214は、人物追跡カメラ3にて取得した監視画像を解析し、当該監視画像に含まれる各人物像に対して付与された属性の情報である。移動属性情報214の具体例としては、図6に示されるように、監視画像が取得された時刻と、当該時刻に存在する人物像の像IDと、各人物像について相対位置を算出する対象となる他の人物像(以下、相対位置算出対象という)の像IDと、当該人物像と相対位置算出対象との間における相対位置が略一定となっている時間(以下、相対位置維持時間という)と、各人物像の所在する監視画像における領域(以下、所在領域という)と、各人物像の画像上の位置にて停止している時間(以下、継続停止時間という)と、を対応付けるテーブルとして制御部22により記憶部21に保存される。
【0032】
不審者判定情報215は、不審者を検知する際に参照する判定条件情報である。不審者判定情報215の具体例としては、図7に示されるように、不審者異常の種類と、相対位置維持時間、所在領域、継続停止時間、顔隠蔽状態及び認証結果からなる当該不審者異常の判定条件との組み合わせとして表せる。不審者判定情報215は、本実施例に係る不審者検知装置1を設置する環境に合わせて、予め管理者等により入力部23から設定される。
【0033】
記録画像情報216は、人物追跡カメラ3にて取得した監視画像と、顔検出カメラ4にて取得した正面画像とを時系列に保存した画像情報である。
【0034】
制御部22は、例えばCPUやDSP等の演算装置であって、記憶部21に記憶されるプログラムに従って各種の情報処理を実行する。本実施例では、制御部22は、人物追跡カメラ3によって取得した監視画像及び顔検出カメラ4によって取得した正面画像を解析して、異常を検知した場合に当該異常の内容に応じた信号を出力部24に出力する処理を行う。また、入力部23からの設定情報や操作情報等の入力情報を記憶部21に保存する処理を行う。
【0035】
以下、本実施例において制御部22が実行する処理の具体例について説明する。
制御部22は、機能的に、図3に示すように、顔領域検出手段220と、顔隠蔽判定手段221と、認証手段222と、人物像抽出手段223と、追跡手段224と、移動属性算出手段225と、不審者判定手段226と、を含んで構成される。これらの機能は、制御部22が記憶部21に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0036】
顔領域検出手段220は、顔検出カメラ4によって所定時間おきに撮像された正面画像から背景差分法によって人物などの動きのある画像領域を抽出し、その画像領域の中から人物像の顔を示す顔領域を検出する。すなわち、予め人が誰もいない状態を撮像して得られる正面画像を背景画像として記憶部21に記憶しておき、当該背景画像と正面画像とを比較して人物などの動きのある画像領域を抽出する。そして、動きのある当該画像領域のうち、所定の条件を満足する形状や所定値以上の大きさを有する画像領域を、人物像の顔領域として検出する。ここで、正面画像の中から顔領域を検出する方法としては、例えば特開2005−92262号公報に記載された方法を用いることができる。
正面画像の中から1又は複数の顔領域を検出した場合、顔領域検出手段220は、それぞれの顔画像に対して一意の顔IDを付与する。そして、当該顔画像、顔ID及び顔画像に関する情報(正面画像内における顔画像の位置情報やサイズ情報等)を、顔画像が検出された時刻に対応付けて記憶部21に保存する。
【0037】
顔隠蔽判定手段221は、顔領域検出手段220にて検出した顔画像を解析し、当該顔画像について目出し帽、サングラス、マスク等により顔部位を隠蔽しているか否かを判定する顔隠蔽判定処理を行う。顔隠蔽判定処理では、顔隠蔽判定手段221は、顔画像の画像特徴に基づき顔らしさの度合いを算出し、また、顔画像と目出し帽等で隠蔽されている場合の画像との類似度を算出する。そして、これらの顔らしさの度合いや類似度に基づいて顔部位が隠蔽されているか否かを判定する。この顔隠蔽しているか否かの判定方法としては、例えば特開2005−92262号公報に記載された方法を用いることができる。
顔領域検出手段220にて検出した顔画像について隠蔽されているか否かを判定した場合、顔隠蔽判定手段221は、記憶部21の顔判定情報212に、当該顔画像が検出された時刻における顔IDに対応付けて、顔隠蔽の有無を保存する。
【0038】
認証手段222は、顔領域検出手段220にて検出した顔画像に基づいて、正面画像に撮像された人物が権限者であるか否かを認証する認証処理を行う。認証処理では、認証手段222は、顔領域検出手段220にて検出した顔画像を解析して得られる解析結果と、記憶部21に記憶された認証情報211とを照合することにより、当該人物像が権限者であるか否か判定する。この顔画像と認証情報211との照合方法としては、例えば特開2007−299186号公報に記載された方法を用いることができる。
認証手段222は、顔領域検出手段220にて検出した顔画像について認証した場合、記憶部21の顔判定情報212に、当該顔画像の顔IDに対応付けて、認証結果を保存する。
【0039】
人物像抽出手段223は、人物追跡カメラ3によって所定時間おきに撮像された監視画像のそれぞれについて、当該監視画像の中から、1又は複数の人物像を抽出する。具体的には、例えば人物像抽出手段223は、予め人が誰もいない状態の監視空間を撮像して得られた監視画像を背景画像として記憶部21に記憶しておき、当該背景画像と監視画像とを比較して差分画素を抽出する。そして、互いに隣接する差分画素を含んで構成される差分画素群のうち、所定の条件を満足する形状や所定値以上の大きさを有する差分画素群を、人を表す人物像として抽出する。また、人物像抽出手段223は、上記方法のほか、エッジ検出などの各種の画像処理を組み合わせて人物像を抽出してもよい。人物像抽出手段223によって抽出された人物像に関する情報(例えば人物像の位置や色ヒストグラム等の画像特徴に関する量)は、記憶部21に記憶され、後述する追跡手段224による人物像の追跡処理に用いられる。
【0040】
追跡手段224は、人物追跡カメラ3が所定時間おきに取得した各監視画像について、人物像抽出手段223が人物像を抽出するごとに、人物像の追跡処理を行う。人物像の追跡処理では、追跡手段224は、新たに撮像された監視画像から人物像抽出手段223によって抽出された各人物像を、過去時刻において抽出されて記憶部21に記憶されている人物像と比較することによって、当該人物像に対応する人物の監視空間内における移動経路を記憶部21の移動軌跡情報213に保存する。具体的には、追跡手段224は、新たな監視画像から抽出された各人物像に関する情報(例えば人物像の位置や画像特徴に関する量)を、前回撮像され記憶部21に保存されている監視画像から抽出された人物像に関する情報と比較することによって、同じ人物を表す人物像同士を関連付ける。そして、同一人物を表す人物像として互いに関連付けられた人物像について同一の像IDを付与し、時系列に従って撮像された各監視画像上の座標を、像IDと対応付けて記憶部21の移動軌跡情報213に保存する。
【0041】
また、追跡手段224は、人物像抽出手段223にて抽出された人物像と顔領域検出手段220にて検出された顔画像とを関連付ける人物像特定処理を行う。人物像特定処理では、追跡手段224は、記憶部21にある顔画像に関する情報(正面画像内における顔画像の位置情報やサイズ情報等)に基づいて、監視画像内において当該顔画像に対応する人物像が存在すると推定される範囲を算出し、人物像抽出手段223によって抽出された人物像の中から当該推定範囲内に含まれる所定条件に合致した人物像を特定する。この監視画像内の人物像と正面画像内の顔画像と関連付ける人物像特定処理の方法としては、例えば特開2009−223429号公報に記載された方法を用いることができる。
人物像特定処理を行うと、追跡手段224は、記憶部21の移動軌跡情報213に対して像IDごとに対応付けられた顔画像の顔IDを保存する。こうして、顔判定情報212と移動軌跡情報213とを関連付けることができ、追跡している人物像毎に顔隠蔽の有無と認証結果について把握することができる。
【0042】
移動属性算出手段225は、追跡手段224にて追跡された人物像毎に、他の人物像(相対位置算出対象)との間の相対位置を算出し、当該相対位置が略一定となっている時間(相対位置維持時間)を計測する。計測した相対位置維持時間は、記憶部21の移動属性情報214に、相対位置維持時間を測定した時刻における相対位置を算出した人物像の像IDと相対位置算出対象の像IDとの組み合わせに対応付けて保存される。なお、相対位置を算出し、相対位置維持時間を計測する処理の具体例については、後述する。
【0043】
また、移動属性算出手段225は、記憶部21の領域情報210と人物像の位置(座標)に基づいて、追跡手段224にて追跡された人物像毎に所在領域を判定する。すなわち、人物像の重心が操作領域11の内側に所在するならば所在領域を「操作領域」と、人物像の重心が操作領域11の外側で重点監視領域12の内側に所在するならば所在領域を「重点監視領域」と、人物像の重心が重点監視領域12の外側に所在するならば所在領域「外」と判定する。移動属性算出手段225は、記憶部21の移動属性情報214に、判定した人物像の所在領域を、所在領域を求めた時刻における当該人物像の像IDに対応付けて保存する。
【0044】
また、移動属性算出手段225は、追跡手段224にて追跡された人物像毎に、当該人物像の継続停止時間を算出する。継続停止時間は、人物像が監視画像上の位置において略一定となっている状態が継続した時間である。なお、人物像が監視画像上の位置において略一定となっているか否かについては、現在時刻における人物像の座標と一つ過去時刻における人物像の座標とに基づいて、過去時刻から現在時刻までの移動距離を算出することにより判定される。追跡手段224にて追跡された人物像毎に継続停止時間を算出すると、移動属性算出手段225は、記憶部21の移動属性情報214に、継続停止時間を算出した時刻における像IDに対応付けて保存する。
【0045】
不審者判定手段226は、記憶部21の移動属性情報214と顔判定情報212とに基づいて、不審者判定情報215に定めた条件に合致しているか否かを判定することにより、押込強盗等の不審者が存在しているか否かを判定する。そして、不審者が存在していると判定した場合、不審者判定手段226は、出力部24に対して警告出力を行わせる。なお、不審者判定手段226における判定処理の具体例については、後述する。
【0046】
以下、本実施例に係る管理装置2の制御部22が実行する処理の流れの一例について、図8〜図10のフローチャートに基づいて説明する。
図8は、制御部22における不審者検知処理を示すフローチャートである。
【0047】
動作に先立ち、管理者等により管理装置2の入力部23を用いて領域情報210の設定等の各種初期設定が行なわれている。また、金庫室が無人であることを確認した管理者が管理装置2を起動すると、制御部22の人物像抽出手段223及び顔領域検出手段220は、起動後の所定時間に撮像された監視画像及び正面画像を用いてそれぞれの背景画像を生成し、記憶部21に記憶させる。上記の初期化が終わると人物追跡カメラ3及び顔検出カメラ4から新たな監視画像及び正面画像が入力されるたびにステップS10〜S32の不審者検知処理が繰り返される。
【0048】
なお、管理装置2は、管理者等により予め設定された時間や警備装置8からの警備開始信号/警備終了信号の受信に基づいて、不審者検知処理の開始や終了を制御してもよい。例えば、管理者により予め営業終了時刻が設定され、当該営業終了時刻から警備装置8による警備が開始されるまでの時間帯にのみ、不審者検知処理を行ってもよい。これにより、営業時間の終了により事務所内における従業員が少なくなる時間帯にのみ、不審者の検知処理を行うことになるため、従業員の移動による誤報を低減することができ、運用負荷を低減することができる。また、押込強盗が発生しやすい時間帯にのみ集中的に監視することができるため効率的な監視運用を行うことができる。
【0049】
図8に示すように、まず制御部22は、人物追跡カメラ3が取得した新たな監視画像と、顔検出カメラ4が取得した新たな正面画像とを取得し、記憶部21の記録画像情報216に時刻と対応付けて保存する(S10)。そして、制御部22の人物像抽出手段223は、S10で取得した監視画像を背景画像と比較して、人物像の抽出を行う(S12)。さらに、制御部22は、S12の処理で1以上の人物像が抽出されたか否か判定する(S14)。人物像が抽出されなかった場合(S14−No)、S10で取得した監視画像及び正面画像を新たな背景画像として記憶部21に記憶して(S16)、S10に戻って次の監視画像及び正面画像に対する処理を行う。ここで、人物像が抽出されなかった場合に背景画像を更新するのは、時間の経過によって背景画像に変化が生じる場合に対応するためである。
【0050】
一方、S14において1以上の人物像が抽出されたと判定された場合(S14−Yes)、制御部22の顔領域検出手段220は、S10で取得した正面画像を背景画像と比較して人物などの動きのある画像領域を抽出し、その画像領域の中から顔領域を検出する(S18)。
【0051】
そして、制御部22は、S18の処理で1以上の顔領域が検出されたか否か判定する(S20)。顔領域が検出されたと判定された場合(S20−Yes)、各々の顔画像に対して、顔隠蔽判定手段221により前述した顔隠蔽判定処理が行われ、認証手段222により前述した認証処理が行われる(S22)。
【0052】
S20において顔領域が検出されないと判定された場合(S20−No)、制御部22の追跡手段224は、前述した人物像の追跡処理を行う(S24)。また、S20にて顔画像が検出されたと判定され(S20−Yes)、当該顔画像についてS22にて顔隠蔽判定処理と認証処理が行われた場合、制御部22の追跡手段224は、前述した人物像の追跡処理及と人物像特定処理を行う(S24)。
【0053】
続いて、制御部22の移動属性算出手段225は、S12にて抽出された人物像のそれぞれについて、移動属性情報214を算出する処理を行う(S26)。この移動属性情報214の算出処理の詳細については、後述する。
【0054】
続いて、制御部22の不審者判定手段226は、不審者の判定処理を行う。すなわち、S26にて算出された移動属性情報214とS22にて算出されS24にて人物像に関連付けられた顔判定情報212とを、不審者判定情報215の判定条件に合致しているか否かを判定することにより、不審者異常が発生したか否かを判定する。
【0055】
例えば、追跡手段224にて追跡されている複数の人物像について、特定の人物像間の相対位置維持時間が、予め設定されている閾値時間(以下、第一の閾値という)と比較し、当該第一の閾値以上であれば「第一の不審者異常」であると判定する。第一の不審者異常は、従業員を凶器等により脅して一定距離を保ちつつ行動している押込強盗が存在している疑いがあることを示す異常状態である。
【0056】
また、第一の不審者異常であると判定されている人物像のうち、少なくとも一方の人物像の所在領域が操作領域11であるならば「第二の不審者異常」であると判定する。第二の不審者異常は、従業員を凶器等により脅して一定距離を保ちつつ金庫等の保管庫へ移動し、当該従業員に対して保管庫を解錠させるよう強要している押込強盗が存在している疑いがあることを示す異常状態である。
【0057】
また、第二の不審者異常であると判定されている人物像の継続停止時間が、予め設定されている閾値時間(以下、第二の閾値という)と比較し、当該第二の閾値以上であれば「第三の不審者異常」であると判定する。第三の不審者異常は、従業員を凶器等により脅して一定距離を保ちつつ、当該従業員に対して保管庫の解錠操作を強要し、貴重品等を取り出させようとしている押込強盗が存在している疑いがあることを示す異常状態である。
【0058】
また、第二の不審者異常であると判定されている人物像の少なくとも一方の顔隠蔽状態が「顔隠蔽有」であれば、「第四の不審者異常」であると判定する。第四の不審者異常は、従業員を凶器等により脅して一定距離を保ちつつ行動している顔を隠蔽した押込強盗が存在している疑いがあることを示す異常状態である。
【0059】
また、第二の不審者異常であると判定されている各人物像についての認証結果を参照し、操作領域11に所在する人物像が権限者(認証OK)であり、もう一方の人物像が権限者以外(認証NG)であれば、「第五の不審者異常」であると判定する。第五の不審者異常は、金庫10を解錠仕様とする権限者と一定距離を保ちつつ解錠を強要している押込強盗や、暗証番号を盗み見している内部犯行者が存在する疑いがあることを示す異常状態である。
【0060】
また、第一の不審者異常であると判定されている人物像の継続停止時間が、第二の閾値以上であれば「第六の不審者異常」であると判定する。第六の不審者異常は、従業員を凶器等により脅して一定距離を保ちつつ、当該従業員をロープなどにより拘束していたり、当該従業員から暗証番号等を聞き出そうとしている押込強盗が存在している疑いがあることを示す異常状態である。
【0061】
続いて、制御部22は、S28の処理で不審者異常が判定されたか否かを判定する(S30)。S28にて不審者異常が判定されない場合(S30−No)、S10に戻って次の監視画像及び正面画像に対する処理を行う。一方、S28にて不審者異常が判定され場合(S30−Yes)、制御部22の不審者判定手段226は、出力部24に対して不審者異常の種類の情報を含む警告信号を出力する。
【0062】
出力部24は、制御部22の不審者判定手段226から警告信号を受信すると、警告出力処理を行う(S32)。
警告出力処理では、出力部24は、不審者判定手段226からの警告信号に含まれる不審者異常の種類に応じた警告出力を行う。例えば、出力部24に接続されたスピーカから不審者異常の種類に対応する警告音を鳴動させると共に、出力部24に接続されたディスプレイに当該不審者異常の種類を警告メッセージとして出力する。管理者等は、これらの警告音や警告メッセージを確認することにより、監視領域内に不審者が存在することを検知することができる。また、出力部24は、通信部25を介して警備装置8に当該不審者異常を通知する。これにより、管理装置2は、警備装置8を介して警備センタ装置9に不審者異常を通知することができ、外部の監視センタで常駐監視している警備員に対して異常を通知することができる。
【0063】
S32で警告出力処理が行われると、制御部22は、S10に戻って新たな監視画像及び正面画像に対する処理が繰り返される。
【0064】
次に、上述した図8のフローにおけるS26の移動属性情報の算出処理の具体例について、図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0065】
図9に示すように、まず制御部22の移動属性算出手段225は、追跡手段224にて追跡している人物像(以下、追跡対象という)の全てについて、移動属性情報214の各属性値を算出したか否かを判定する(S260)。
【0066】
全ての追跡対象について、移動属性情報214の各属性値を算出した場合(S260−Yes)、移動属性情報の算出処理を終了し、S28へ進む。全ての追跡対象について、移動属性情報214の各属性値を算出していない場合(S260−No)、未処理の追跡対象の中から一つの追跡対象を選択し、当該追跡対象を移動属性情報214の各属性値の算出処理対象(以下、着目対象という)として、記憶部21に一時的に保存する(S262)。
【0067】
続いて、移動属性算出手段225は、着目対象と他の追跡対象との相対位置を算出し、当該相対位置が略一定となっている時間を示す相対位置維持時間を算出する相対位置演算処理を行う(S264)。この相対位置演算処理の詳細については、後述する。
【0068】
続いて、移動属性算出手段225は、着目対象の所在領域を求める所在領域算出処理を行う(S266)。所在領域算出処理では、移動属性算出手段225は、領域情報210を参照し、着目対象の座標から着目対象がどの領域に存在しているかを算出する。そして、算出した所在領域を、移動属性情報214に、算出した時刻における当該着目対象の像IDに対応付けて保存する。
【0069】
続いて、移動属性算出手段225は、着目対象について継続停止時間の算出処理を行う(S268)。継続停止時間の算出処理では、追跡手段224にて着目対象に関連付けられた一つ過去時刻における人物像からの移動距離を求める。そして、当該移動距離が予め定めた閾値以下である場合に、当該人物像は停止していると判定する。そして、停止していると判定された着目対象について、初めて停止が判定された時刻からの経過時刻を算出し、移動属性情報214の継続停止時間に、算出した時刻における当該着目対象の像IDに対応付けて保存する。
【0070】
S268で継続停止時間の算出処理が行われると、移動属性算出手段225は、S260に戻って次の着目対象に対する処理が繰り返される。
【0071】
次に、上述した図10のフローにおけるS264の相対距離演算処理の具体例について、図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0072】
図10に示すように、まず制御部22の移動属性算出手段225は、着目対象以外の全ての追跡対象について、相対位置演算処理を行ったか否かを判定する(S2641)。着目対象以外の全ての追跡対象について、相対位置演算処理を行った場合(S2641−Yes)、相対距離演算処理を終了し、S266へ進む。着目対照以外の全ての相対位置算出対象について、相対位置演算処理を行っていない場合(S2641−No)、未処理の追跡対象の中から一つの追跡対象を選択し、当該追跡対象を着目対象との相対位置を算出する対象(相対位置算出対象)として記憶部21に一時的に保存する(S2642)。
【0073】
続いて、移動属性算出手段225は、着目対象と相対位置算出対象との相対位置を算出する(S2643)。ここで、着目対象と相対位置算出対象との相対位置は、同じ時刻における着目対象と相対位置算出対象との画像上の距離であり、着目対象の座標と相対位置算出対象の座標とに基づいて算出される。相対位置を算出すると、移動属性算出手段225は、当該相対位置を記憶部21に時刻に対応付けて保存する。
【0074】
続いて、移動属性算出手段225は、着目対象と相対位置算出対象との一つ過去時刻の相対位置を記憶部21から読み出し、当該一つ過去時刻における相対位置と現在時刻における相対位置とを比較することにより、相対位置が変化したか否かを判定する(S2644)。すなわち、一つ過去時刻における相対位置と現在の時刻における相対位置との差の絶対値を求め、当該差の絶対値が予め定めた閾値以下である場合に、相対位置が変化していないと判定する。一方、当該差の絶対値が予め定めた閾値よりも大きい場合、相対位置が変化したと判定する。
【0075】
S2644にて、相対位置が変化したと判定した場合(S2644−Yes)、相対位置維持時間のリセット処理が行われる(S2646)。相対位置維持時間のリセット処理では、移動属性算出手段225は、移動属性情報214に対して着目対象と相対位置算出対象とに対応付けて、相対位置維持時間を“0”として保存する(S2646)。
【0076】
一方、S2644にて、相対位置が変化していないと判定した場合(S2644−No)、相対位置維持時間の加算処理が行われる(S2645)。相対位置維持時間の加算処理では、移動属性算出手段225は、着目対象と相対位置算出対象の組合せに対応する一つ過去時刻の相対位置維持時間を読み出す。そして、当該一つ過去時刻の相対位置維持時間に“1”を加算した値を、現在時刻の相対位置維持時間として移動属性情報214に保存する。
【0077】
S2645にて相対位置維持時間の加算処理が行われた場合、又はS2646にて相対位置維持時間のリセット処理が行われた場合、移動属性算出手段225は、S2641に戻って次の相対位置算出対象に対する処理が繰り返される。
【0078】
次に、本実施例に係る不審者検知装置1の具体的動作を不審者異常と判定される例を用いて説明する。図12は制御部22の不審者判定手段226により不審者異常と判定される典型的なケースを示した図である。
【0079】
図12(a)は、時刻tから時刻t+3における監視画像100を時系列で並べた図である。本ケースにおいて、図12(a)中における人物像Aは、押込強盗によって脅されている従業員(権限者)の人物像である。また、人物像Bは、従業員である人物像Aをナイフ等の凶器で脅しながら金庫10まで移動させている顔隠蔽した押込強盗の人物像である。また、人物像Cは、見渡しの良い位置にて周囲を警戒している人物像Bと共に押し入った押込強盗の人物像であることを想定している。
【0080】
図12(b)は、時刻tから時刻t+3における軌跡画像110を時系列で並べた図である。軌跡画像110は、監視画像100の画像上の位置と合致するように描画された画像に対して、領域情報210の重点監視領域12と操作領域11とを重ね合わせて描画され、さらに移動軌跡情報213に記憶されている像IDごとの現在時刻までの移動軌跡をプロットされた画像である。
【0081】
なお、本ケースでは、管理者等により予め第一の閾値を“3”時刻間隔と、第二の閾値を“3”時刻間隔と設定されていることとする。
【0082】
まず、時刻tの時刻の状態について説明する。時刻tでは、S10にて新たに取得された監視画像100から、S12にて人物像抽出手段223により人物像A、B及びCが抽出される。なお、この段階では、人物像A、B及びCにあたる人物は、顔検出カメラ4の顔検出範囲外にいることとする。そのため、S18にて各人物像の顔領域が検出されず、S22における顔隠蔽判定処理と認証処理が行われない。続いて、人物像A、B及びCは、S24の追跡処理にて過去時刻における人物像A、B及びCと関連付けられる。続いて、S266にて人物像AとBの所在領域が「重点監視領域」であると判定される。この時刻の段階では、人物像A、B及びCのいずれもが、不審者判定情報215のいずれの種類の不審者異常の判定条件にも合致しないため、S28にて不審者異常であると判定されない。
【0083】
次に、時刻t+1の時刻の状態について説明する。時刻t+1では、S10にて新たに取得された監視画像100から、S12にて人物像抽出手段223により人物像A、B及びCが抽出される。この段階では、人物像A、B及びCにあたる人物は、顔検出カメラ4の顔検出範囲外にいることとする。そのため、S18にて各人物像の顔領域が検出されず、S22における顔隠蔽判定処理と認証処理が行われない。
【0084】
続いて、人物像A、B及びCは、S24の追跡処理にて過去時刻における人物像A、B及びCと関連付けられる。続いて、S2644にて人物像Aと人物像Bとの相対位置が一つ過去時刻における相対位置と略一定であると判定され、S2645にて人物像Aと人物像Bとの間の相対位置維持時間の加算処理がなされる。これにより、人物像Aと人物像Bとの間の相対位置維持時間は“1”となる。続いて、S266にて人物像AとBの所在領域が「重点監視領域」であると判定される。続いて、S268にて人物像Cが停止していると判定され、継続停止時間は“1”となる。この時刻の段階では、人物像A、B及びCのいずれもが、不審者判定情報215のいずれの種類の不審者異常の判定条件にも合致しないため、S28にて不審者異常であると判定されない。
【0085】
次に、時刻t+2の時刻の状態について説明する。時刻t+2では、S10にて新たに取得された監視画像100から、S12にて人物像抽出手段223により人物像A、B及びCが抽出される。この段階では、人物像A及び人物像Bにあたる人物は、顔検出カメラ4の顔検出範囲内に所在していることとする。そのため、S18にて人物像A及び人物像Bにあたる人物の顔領域が検出され、各顔画像に対してS22にて顔隠蔽判定処理と認証処理が行われる。人物像Aにあたる人物は権限者であるため認証処理にて「認証OK」と判定され、人物像Bにあたる人物は顔隠蔽しているため顔隠蔽判定処理にて「顔隠蔽有」と判定される。
【0086】
続いて、人物像A、B及びCは、S24の追跡処理にて過去時刻における人物像A、B及びCと関連付けられる。また、S24の人物像特定処理にて、S22にて行われた顔隠蔽判定処理と認証処理の結果を、人物像に関連付けられる。続いて、S2644にて人物像Aと人物像Bとの相対位置が一つ過去時刻における相対位置と略一定であると判定され、S2645にて人物像Aと人物像Bとの間の相対位置維持時間の加算処理がなされる。これにより、人物像Aと人物像Bとの間の相対位置維持時間は“2”となる。続いて、S266にて人物像Aの所在領域が「操作領域」、人物像Bの所在領域が「重点監視領域」であると判定される。続いて、S268にて人物像Cが停止していると判定され、継続停止時間は“2”となる。この時刻の段階では、人物像A、B及びCのいずれもが、不審者判定情報215のいずれの種類の不審者異常の判定条件にも合致しないため、S28にて不審者異常であると判定されない。
【0087】
次に、時刻t+3の時刻の状態について説明する。時刻t+3では、S10にて新たに取得された監視画像100から、S12にて人物像抽出手段223により人物像A、B及びCが抽出される。この時刻の段階では、時刻t+2における人物像A、B及びCの位置関係から変化がない。そのため、この時刻の段階においても、人物像Aにあたる人物は認証処理にて「認証OK」と判定され、人物像Bにあたる人物は顔隠蔽判定処理にて「顔隠蔽有」と判定される。
【0088】
また、S2644にて人物像Aと人物像Bとの相対位置が一つ過去時刻における相対位置と略一定であると判定され、S2645にて人物像Aと人物像Bとの間の相対位置維持時間の加算処理がなされる。これにより、人物像Aと人物像Bとの間の相対位置維持時間は“3”となる。続いて、S266にて人物像Aの所在領域が「操作領域」、人物像Bの所在領域が「重点監視領域」であると判定される。続いて、S268にて人物像A及びBの継続停止時間は“1”となり、人物像Cの継続停止時間は“3”となる。
【0089】
この時刻の段階では、人物像Aと人物像Bとの間の相対位置維持時間が第一の閾値以上となるため、「第一の不審者異常」であると判断される。また、人物像Aの所在領域が操作領域11であるため、「第二の不審者異常」であるとも判断される。また、人物像Bにあたる人物は、顔隠蔽有と判定されているため「第四の不審者異常」であるとも判断される。また、操作領域にいる人物像Aは認証処理により権限者であると判定され、人物像Bは権限者以外であると判定されているため、「第五の不審者異常」であるとも判断される。
【0090】
以上に本発明の実施の形態について説明した。
本実施の形態では、不審者検知装置1が、本発明の不審者検知装置として機能している。また、人物追跡カメラ3が、本発明の撮像部として機能している。また、追跡手段224が、本発明の追跡部として機能している。また、制御部22が、本発明の検知部として機能している。また、移動属性算出手段225が、本発明の相対位置算出手段として機能している。また、不審者判定手段226が、本発明の判定手段として機能している。また、顔領域検出手段220、顔隠蔽判定手段221および追跡手段224が、本発明の顔隠蔽判定部として機能している。また、顔領域検出手段220、認証手段222および追跡手段224が、本発明の認証部として機能している。また、警備装置8が、本発明の警備装置として機能している。
【0091】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施例で実施されてもよいものである。また、実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0092】
上記実施例では、図7に示した不審者判定情報215の判定条件に基づいて不審者異常を判定したが、これに限らず、様々な条件を組み合わせることにより多種多様の不審者異常を判定しても良い。例えば、第二の不審者異常であると判定されている各人物像について、操作領域11に所在する人物像が権限者(認証OK)であり、もう一方の人物像が権限者以外(認証NG)であり、かつ、顔隠蔽有であれば、「第七の不審者異常」であると判定してもよい。これにより、権限者の近くに所在する者が、従業員ではなく、押込強盗の疑いがより強いと判断することができる。
【0093】
また、押込強盗が従業員をロープ等で縛り上げて、身体的な自由を奪おうとしている状態を検出したい場合は、人物像抽出手段223に二人の人物像の手部分の動きが一方の人物を拘束するような動きであることを検出し、検出結果を不審者判定手段226に出力する機能を更に持たせてもよい。そして、不審者判定手段は、人物像抽出手段223からの人物を拘束するような動きを検出すると、不審者異常の発生と判定する。
【0094】
上記実施例では、管理装置2は、不審者異常の判定時に、警備装置8を介して警備センタ装置9に当該異常を通知しているが、これに限らず、不審者異常時における監視画像100、正面画像及び軌跡画像110等を警備センタに送信しても良い。これにより、警備センタに常駐する警備員は、これらの画像を確認することにより、より正確に異常状態を認識することができる。
【0095】
上記実施例では、顔隠蔽判定手段221及び認証手段222は、顔領域検出手段220にて検出された各時刻における全ての顔画像に対して、顔隠蔽判定処理及び認証処理を行っているが、これに限定されるものではない。すなわち、上記実施例に、顔領域検出手段220にて検出された顔画像を追跡する顔画像追跡処理を追加することにより、過去時刻において一度、顔隠蔽判定処理または認証処理がなされたならば、後の時刻においては、顔画像追跡処理により同一の顔画像と判断された顔画像に対しては、これらの認証処理を省略することができるようにしてもよい。これにより、全ての時刻における顔画像に対して顔隠蔽判定処理及び認証処理を行う必要がなくなり、計算量を軽減することができる。
【符号の説明】
【0096】
1・・・不審者検知装置
2・・・管理装置
3・・・人物追跡カメラ
4・・・顔検出カメラ
8・・・警備装置
9・・・警備センタ装置
10・・・金庫
11・・・操作領域
12・・・重点監視領域
21・・・記憶部
22・・・制御部
23・・・入力部
24・・・出力部
25・・・通信部
210・・・領域情報
211・・・認証情報
212・・・顔判定情報
213・・・移動軌跡情報
214・・・移動属性情報
215・・・不審者判定情報
216・・・記録画像情報
220・・・顔領域検出手段
221・・・顔隠蔽判定手段
222・・・認証手段
223・・・人物像抽出手段
224・・・追跡手段
225・・・移動属性算出手段
226・・・不審者判定手段
100・・・監視画像
110・・・軌跡画像
A、B、C・・・人物像




【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域内の画像を順次取得する撮像部と、前記画像から検出した人物像ごとに画像上にて追跡し各人物像の位置情報を順次出力する追跡部と、不審者の存在を検知する検知部と、不審者の存在を検知すると警報出力する出力部とを有する不審者検知装置において、
前記検知部は、
前記追跡部にて複数の人物像を検出している場合、当該複数の人物像のうち第一の人物像と他の第二の人物像との相対的な位置関係である相対位置を算出する相対位置算出手段と、
前記相対位置が所定時間にわたって略一定であるとき不審者が存在している判定とする判定手段とを有することを特徴とする不審者検知装置。
【請求項2】
前記所定領域は、重要物を保管する保管庫を含んでおり、
予め画像上で設定された前記保管庫を操作可能な領域である至近領域が保存されている領域記憶部を更に有し、
前記判定手段は、前記第一の人物像が前記領域記憶部の前記至近領域内に存在しているとき不審者が存在しているとする請求項1に記載の不審者検知装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第一の人物像および前記第二の人物像の画像上の位置が、所定時間にわたって略一定であるとき不審者が存在しているとする請求項1または請求項2に記載の不審者検知装置。
【請求項4】
前記追跡部にて追跡している前記人物像と関連付けて当該人物像の顔画像を取得し、当該顔画像中の顔部位が検出できないことにより、当該顔部位が隠蔽されているか否かを判定する顔隠蔽判定部を更に有し、
前記判定手段は、前記顔隠蔽判定部にて前記第二の人物像の顔部位が隠蔽されていると判定された場合、不審者が存在しているとする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の不審者検知装置。
【請求項5】
前記追跡部にて追跡している前記人物像と関連付けて当該人物像の顔画像を取得し、当該顔画像と予め登録された顔画像とを比較することにより、当該人物像が前記保管庫を解錠する資格を有する人物であるか否かを認証する認証部を更に有し、
前記判定手段は、前記認証部にて前記第一の人物像を認証でき、前記第二の人物像を認証できない場合、不審者が存在しているとする請求項2から請求項4の何れか1項に記載の不審者検知装置。
【請求項6】
前記判定手段は、センサーにより監視領域内への侵入者を検出して異常を外部の装置に通報する警備装置に接続され、予め設定された所定時刻から当該警備装置からの警備開始信号を受信するまでの時間帯にのみ、不審者が存在しているか否かを検知する請求項1から請求項5の何れか1項に記載の不審者検知装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−227647(P2011−227647A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95868(P2010−95868)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】