説明

不快臭成分及び苦味成分の除去方法、キラヤ抽出物の製造方法、並びにキラヤ抽出物

【課題】キラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分の除去方法、不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物の製造方法、並びに不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物を提供する。
【解決手段】水、又は水10質量部に対して低級脂肪族アルコール40質量部以下を混合した混合溶媒にキラヤ抽出物を溶解させたキラヤ抽出物溶液を、細孔の最頻度半径が30〜120Åの多孔性吸着樹脂に接触させる。また、このようにして処理した後のキラヤ抽出物溶液からキラヤ抽出物を回収することで、キラヤサポニンを有意に含み、かつ不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、飲食品、化粧料等の構成成分として利用可能なキラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分を除去する方法、不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物の製造方法、並びに不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品、医薬部外品、食品添加物、化粧料構成成分等、様々な分野で化学合成品よりも安全性の点で優れている天然物を利用しようとする傾向が強まっており、それに伴い植物体に含まれる有用成分の研究が進められ、様々な植物体からの抽出物が多くの用途に提供されるようになっている。
【0003】
植物抽出物の中でも界面活性作用を有することが知られているキラヤ抽出物は、その界面活性成分を高濃度にして界面活性作用を高めることが検討されている(特許文献1,2参照)。また、この界面活性作用を利用した、飲食物や化粧料等に添加する保存料(特許文献3参照)、水溶性製剤(特許文献4,5参照)等が知られている。しかしながら、キラヤを抽出処理に付することにより、キラヤ抽出物に特有の不快臭及び苦味の原因となる成分も抽出されてしまうため、その対策が問題になっている。従来、植物抽出物に含まれる不快臭成分を除去する方法としては、紫トウモロコシ色素抽出液に含まれる香気成分を除去する方法が提案されている(特許文献6参照)。
【特許文献1】特開昭59−155398号公報
【特許文献2】特開昭60−190224号公報
【特許文献3】特開昭61−65802号公報
【特許文献4】特開昭61−266496号公報
【特許文献5】特開昭63−233761号公報
【特許文献6】特開2002−47432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医薬品、飲食品、化粧料等の用途に利用可能なキラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分の除去方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このようにして不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1に、本発明の不快臭成分及び苦味成分の除去方法は、水、又は水10質量部に対して低級脂肪族アルコール40質量部以下を混合した混合溶媒にキラヤ抽出物を溶解させたキラヤ抽出物溶液を、細孔の最頻度半径が30〜120Åの多孔性吸着樹脂に接触させることを特徴とする(請求項1)。これにより、キラヤ抽出物から不快臭成分及び苦味成分を効果的に除去することができる。
【0006】
上記発明(請求項1)においては、前記キラヤ抽出物溶液を前記多孔性吸着樹脂に接触させた後のキラヤ抽出物に含まれるキラヤサポニンが、前記キラヤ抽出物溶液に含まれるキラヤサポニンの75質量%(固形物換算)以上であることが好ましい(請求項2)。また、上記発明(請求項1,2)においては、前記低級脂肪族アルコールが、エタノールであることが好ましい(請求項3)。
【0007】
第2に、本発明の不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物の製造方法は、上記発明(請求項1〜3)の方法により処理し、前記多孔性吸着樹脂に接触させた後のキラヤ抽出物溶液からキラヤ抽出物を回収することを特徴とする(請求項4)。
【0008】
第3に、本発明のキラヤ抽出物は、キラヤサポニンを45質量%(固形分換算)以上含有し、不快臭成分及び苦味成分が除去されたことを特徴とする(請求項5)。上記発明(請求項5)においては、不快臭成分及び苦味成分が、上記発明(請求項1〜3)の方法により除去されたことが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医薬品、飲食品、化粧料等の用途に利用可能なキラヤ抽出物に含まれる有効成分の損失を抑制しつつ、当該抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分を効率的に除去することができる。また、本発明によれば、不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の不快臭成分及び苦味成分の除去方法においては、まず、処理対象物であるキラヤ抽出物を、水、又は10質量部の水に対して40質量部以下の低級脂肪族アルコールを混合した混合溶媒(以下「処理溶媒」という。)に溶解させる。キラヤ抽出物は、処理溶媒に完全に溶解していなくてもよく、一部が溶解せずに分散状態となっていてもよい。分散状態であったとしても、キラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分の大部分は処理溶媒に溶解するので、本発明による処理が可能である。
【0011】
ここで、本発明においてキラヤ抽出物には、キラヤを抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、又は当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物のいずれもが含まれる。
【0012】
処理対象物であるキラヤ抽出物は、抽出原料であるキラヤ(学名:Quillaja Saponaria Molina)から、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって得ることができる。抽出原料であるキラヤは、南米のチリ、ペルー、ボリビア等に自生するバラ科シャボンノキ属に属する常緑高木であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、樹皮部、幹部、葉部、枝部、根部等が挙げられ、これらのうち樹皮部を使用するのが好ましい。
【0013】
抽出処理は、例えば、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を溶出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより行うことができ、これにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、又は該抽出液の乾燥物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥等の処理を施してもよい。
【0014】
抽出溶媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0015】
このようにして得られたキラヤ抽出物を溶解させる処理溶媒に含まれ得る低級脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、これらのうち、安全性も考慮すると、エタノールを使用することが好ましい。
【0016】
処理溶媒として水と低級脂肪族アルコールとの混合溶媒を使用する場合、その混合比は、水10質量部に対して低級脂肪族アルコール40質量部以下であり、水10質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。混合溶媒の混合比が、水10質量部に対して低級脂肪族アルコール40質量部を超えると、キラヤ抽出物から不快臭成分及び苦味成分を除去することが困難になるおそれがある。
【0017】
なお、キラヤ抽出物を得るために使用した抽出溶媒が上記処理溶媒(水、又は水と低級脂肪族アルコールとの混合溶媒)と同一組成のものであれば、キラヤを抽出原料として得られる抽出液をそのまま使用すればよく、この場合、抽出処理により得られたキラヤ抽出液から抽出溶媒を留去する必要はない。
【0018】
次に、キラヤ抽出物を処理溶媒に溶解させたキラヤ抽出物溶液を、細孔の最頻度半径が30〜120Åの多孔性吸着樹脂に接触させる。これにより、キラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分が多孔性吸着樹脂の細孔内に拡散し、吸着される。
【0019】
多孔性吸着樹脂としては、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの三次元的共重合体又はそのベンゼン環の一部の水素原子を臭素で置換して疎水性を高めた共重合体であって、イオン交換基を有しないものを使用することができる。
【0020】
多孔性吸着樹脂の細孔の最頻度半径は、30〜120Åである。多孔性吸着樹脂の細孔の最頻度半径が30Å未満であると、多孔性吸着樹脂の細孔内に不快臭成分及び苦味成分が拡散されず、不快臭成分及び苦味成分を除去することができなくなり、細孔の最頻度半径が120Åを超えると、キラヤ抽出物に含まれるサポニン等も不快臭成分及び苦味成分とともに多孔性吸着樹脂に吸着されてしまう。上記多孔性吸着樹脂としては、例えば、ダイヤイオンHP21、セパビーズSP825、セパビーズSP850等の芳香族系合成吸着樹脂;セパビーズSP207等の置換芳香族系合成吸着樹脂(いずれも三菱化学社製)等を使用することができる。
【0021】
キラヤ抽出物溶液を多孔性吸着樹脂に接触させる方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、多孔性吸着樹脂が充填されたカラムにキラヤ抽出物溶液を通液してもよいし、回分式の処理槽にキラヤ抽出物溶液と多孔性吸着樹脂とを入れて攪拌してもよい。
【0022】
多孔性吸着樹脂が充填されたカラムにキラヤ抽出物溶液を通液する場合、空間速度(SV)を0.3〜3.0/hとして通液することが好ましい。空間速度が上記範囲内であれば、キラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分をより効果的に多孔性吸着樹脂に吸着させることができる。
【0023】
カラムを用いて多孔性吸着樹脂とキラヤ抽出物とを接触させる場合、当該処理に用いる多孔性吸着樹脂は、あらかじめキラヤ抽出物を溶解させた処理溶媒と同一組成の溶媒に接触させ、多孔性吸着樹脂の細孔を当該溶媒で満たしておくことが好ましい。これにより、キラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分をより効果的に多孔性吸着樹脂に吸着させることができる。
【0024】
回分式の処理槽を用いてキラヤ抽出物溶液と多孔性吸着樹脂とを接触させる場合、キラヤ抽出物溶液と多孔性吸着樹脂との接触時間は、0.5〜5.0時間であることが好ましい。接触時間が上記範囲内であれば、キラヤ抽出物から不快臭成分及び苦味成分をより効果的に多孔性吸着樹脂に吸着させて除去することができる。
【0025】
最後に、多孔性吸着樹脂に接触させたキラヤ抽出物溶液から、キラヤ抽出物を回収する。多孔性吸着樹脂に接触させたキラヤ抽出物溶液からキラヤ抽出物を回収する方法は、特に限定されることなく、常法により行うことができる。例えば、当該キラヤ抽出物溶液を濃縮し、得られた濃縮液から溶媒を留去し、乾燥することにより、キラヤ抽出物を回収することができる。このようにして回収されたキラヤ抽出物は、不快臭成分及び苦味成分が除去されたものである。
【0026】
以上のように処理することで、キラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物を得ることができる。キラヤ抽出物溶液を多孔性吸着樹脂に接触させた後のキラヤ抽出物に含まれるキラヤサポニンは、キラヤ抽出物溶液を多孔性吸着樹脂に接触させる前のキラヤ抽出物に含まれるキラヤサポニンの75質量%(固形分換算)以上であることが好ましい。75質量%未満であると、キラヤサポニンの回収率が悪く、作業効率が低下するおそれがある。
【0027】
このようにして得られたキラヤ抽出物は、キラヤサポニンを45質量%(固形分換算)以上含んでおり、不快臭成分及び苦味成分が有意に除去されたものである。
【0028】
このようにして得られたキラヤ抽出物に含まれるキラヤサポニンは、界面活性作用を有しており、その作用を利用して、医薬品、飲食品、化粧料等にキラヤ抽出物を配合することができる。このようにして得られたキラヤ抽出物は、キラヤ抽出物に特有の不快臭及び苦味を有しておらず、上記作用を発揮し得るキラヤサポニンを有意に含むため、医薬品、飲食品、化粧料等に配合するのに有用である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0030】
〔実施例1〜2,比較例1〜2〕
チリ産のキラヤ樹皮4kgに水40Lを加えて2時間還流抽出し、濾過した。抽出残渣に水40Lを加えてさらに1時間還流抽出し、得られた各抽出液をあわせて減圧下に濃縮して濃縮液4kgを得た。得られた濃縮液は、1kgあたり固形分252g及びサポニン41gを含有し、不快臭及び苦味を有するものであった。
【0031】
得られた濃縮液を1kgずつに4分し、それぞれの濃縮液に、表1に示すエタノール濃度のエタノールと水との混合溶媒を加え、溶媒中のエタノール濃度の異なる4種類の吸着樹脂処理液(固形分濃度:5.5質量%)を調製し、それぞれの吸着樹脂処理液を下記の吸着樹脂処理に付した。
【0032】
吸着樹脂処理条件は、多孔性吸着樹脂(製品名:ダイヤイオンHP−21,三菱化学社製,最頻度半径:80Å)1Lを内径10cmのカラムに充填し、吸着樹脂処理液の溶媒と同一組成の溶媒でカラム内を満たした。このカラムに吸着樹脂処理液をSV=0.3/hで通液し、その後、吸着樹脂処理液の溶媒と同一組成の溶媒3Lでカラムを洗浄した。
【0033】
吸着樹脂処理にてカラムを通過した吸着樹脂処理液を、全量が約2kgになるまで濃縮し、得られた濃縮液に含まれる固形分及びサポニンを定量するとともに、得られた濃縮液について不快臭に関する官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
〔実施例3〜4,比較例3〜4〕
チリ産のキラヤ樹皮4kgに水40Lを加えて2時間還流抽出し、濾過した。抽出残渣に水40Lを加えてさらに1時間還流抽出し、得られた各抽出液をあわせて減圧下に濃縮して濃縮液4kgを得た。得られた濃縮液は、1kgあたり固形分249g及びサポニン39gを含有し、不快臭及び苦味を有するものであった。
【0035】
得られた濃縮液を1kgずつに4分し、それぞれの濃縮液に、表1に示すエタノール濃度のエタノールと水との混合溶媒を加え、溶媒中のエタノール濃度の異なる4種類の吸着樹脂処理液(固形分濃度:5.5質量%)を調製し、それぞれの吸着樹脂処理液を下記の吸着樹脂処理に付した。
【0036】
吸着樹脂処理は、多孔性吸着樹脂(製品名:セパビーズSP−825,三菱化学社製,最頻度半径:57Å)1Lを内径10cmのカラムに充填し、吸着樹脂処理液の溶媒と同一組成の溶媒でカラム内を満たした。このカラムに吸着樹脂処理液をSV=0.5/hで通液し、その後、吸着樹脂処理液の溶媒と同一組成の溶媒3Lでカラムを洗浄した。
【0037】
吸着樹脂処理にてカラムを通過した吸着樹脂処理液を、全量が約2kgになるまで濃縮し、得られた濃縮液に含まれる固形分及びサポニンを定量するとともに、得られた濃縮液について不快臭に関する官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
〔比較例5〜8〕
実施例1で得られた濃縮液について、吸着樹脂をダイヤイオンHP−20(三菱化学社製,最頻度半径260Å)に変更したほかは実施例1と同様に処理して、不快臭に関する官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
〔比較例9〜12〕
実施例1で得られた濃縮液について、吸着樹脂を平均粒径50μm(中心細孔半径:4.7Å)の活性炭(商品名:太閤活性炭FC,フタムラ化学社製)に変更したほかは実施例1と同様に処理して、不快臭に関する官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示すように、実施例1〜4の方法によりキラヤ抽出物を処理すると、キラヤ抽出物中に含まれる不快臭成分を効率よく除去することができるとともに、キラヤ抽出物に含まれるサポニンの回収率も良好であることが確認された。一方、比較例1〜8の方法によりキラヤ抽出物を処理すると、キラヤ抽出物に含まれるサポニンの回収率は良好であるものの、不快臭成分の除去率が低かった。また、比較例9〜12の方法によりキラヤ抽出物を処理すると、不快臭成分を効率よく除去できるものの、サポニンの回収率が低かった。
【0042】
〔官能比較試験〕
実施例1,3及び比較例1,3の方法で得られたキラヤ抽出物について、下記の配合の飲食品を製造し、当該飲食品での二重盲検法による官能比較試験を5人のパネラーで行った。
【0043】
[官能比較試験例1]
下記の配合にて常法により混合茶飲料を製造し、当該混合茶飲料について官能比較試験を行った。官能比較試験は、におい、苦味及び総合について「かなり良い:5点,良い:4点,普通:3点,悪い:2点,かなり悪い:1点」を基準に評点をつけることにより行った。結果を表2に示す。
キラヤ抽出物(実施例1,比較例1) 0.1g
ウーロン茶 1.0g
ハトムギ茶 2.0g
黄杞茶 2.0g
ハブソウ 3.0g
精製水 90.0g
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示すように、実施例1に係るキラヤ抽出物は、比較例1に係るキラヤ抽出物に比して、におい、苦味、総合のすべての項目において良い評価を得た。このことから、実施例1の方法により、キラヤ抽出物から不快臭成分及び苦味成分を除去できることが確認された。
【0046】
[官能比較試験例2]
下記の配合にて常法によりコーンスープを製造し、115℃で90分間レトルト殺菌し、冷却後に官能比較試験を行った。官能比較試験は、におい、苦味及び総合について「かなり良い:5点,良い:4点,普通:3点,悪い:2点,かなり悪い:1点」を基準に評点をつけることにより行った。結果を表3に示す。
キラヤ抽出物(実施例3,比較例3) 0.2g
コーン(缶詰) 50.0g
牛乳 38.0g
バター 10.0g
塩 2.0g
【0047】
【表3】

【0048】
表3に示すように、実施例3に係るキラヤ抽出物は、比較例3に係るキラヤ抽出物に比して、におい、苦味、総合のすべての項目において良い評価を得た。このことから、実施例3の方法により、キラヤ抽出物から不快臭成分及び苦味成分を除去できることが確認された。
【0049】
[官能比較試験例3]
下記の配合にて常法により乳化して食品添加物を製造し、炭酸水に0.3質量%の濃度で当該食品添加物を添加した炭酸飲料水について官能評価試験を行った。官能比較試験は、におい、苦味及び総合について「かなり良い:5点,良い:4点,普通:3点,悪い:2点,かなり悪い:1点」を基準に評点をつけることにより行った。結果を表4に示す。
キラヤ抽出物(実施例1,比較例1) 5.0g
レモンオイル 5.0g
ソルビトール 70.0g
精製水 20.0g
【0050】
【表4】

【0051】
表4に示すように、実施例1に係るキラヤ抽出物は、比較例1に係るキラヤ抽出物に比して、におい、苦味、総合のすべての項目において良い評価を得た。このことから、実施例1の方法により、キラヤ抽出物から不快臭成分及び苦味成分を除去できることが確認された。
【0052】
[官能比較試験例4]
下記の原料を用いて常法により乳化して食品添加物を製造し、0.5質量%の濃度で当該食品添加物を添加した醤油について官能比較試験を行った。官能比較試験は、におい、苦味及び総合について「かなり良い:5点,良い:4点,普通:3点,悪い:2点,かなり悪い:1点」を基準に評点をつけることにより行った。結果を表5に示す。
キラヤ抽出物(実施例3,比較例3) 10.0g
パプリカオレオレジン 10.0g
グリセリン 60.0g
精製水 20.0g
【0053】
【表5】

【0054】
表5に示すように、実施例3に係るキラヤ抽出物は、比較例3に係るキラヤ抽出物に比して、におい、苦味、総合のすべての項目において良い評価を得た。このことから、実施例3の方法により、キラヤ抽出物から不快臭成分及び苦味成分を除去できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の不快臭成分及び苦味成分の除去方法は、キラヤ抽出物に含まれる不快臭成分及び苦味成分の除去に有用であり、当該除去方法により処理して得られたキラヤ抽出物は、医薬品、飲食品、化粧料等の原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、又は水10質量部に対して低級脂肪族アルコール40質量部以下を混合した混合溶媒にキラヤ抽出物を溶解させたキラヤ抽出物溶液を、細孔の最頻度半径が30〜120Åの多孔性吸着樹脂に接触させることを特徴とする不快臭成分及び苦味成分の除去方法。
【請求項2】
前記キラヤ抽出物溶液を前記多孔性吸着樹脂に接触させた後のキラヤ抽出物に含まれるキラヤサポニンが、前記キラヤ抽出物溶液に含まれるキラヤサポニンの75質量%(固形物換算)以上であることを特徴とする請求項1に記載の不快臭成分及び苦味成分の除去方法。
【請求項3】
前記低級脂肪族アルコールが、エタノールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の不快臭成分及び苦味成分の除去方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により処理し、前記多孔性吸着樹脂に接触させた後のキラヤ抽出物溶液からキラヤ抽出物を回収することを特徴とする不快臭成分及び苦味成分が除去されたキラヤ抽出物の製造方法。
【請求項5】
キラヤサポニンを45質量%(固形分換算)以上含有し、不快臭成分及び苦味成分が除去されたことを特徴とするキラヤ抽出物。
【請求項6】
前記不快臭成分及び苦味成分が、請求項1〜3のいずれかに記載の方法により除去されたことを特徴とする請求項5に記載のキラヤ抽出物。

【公開番号】特開2007−143413(P2007−143413A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338548(P2005−338548)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】