説明

不正使用防止機能を備えた無線端末

【課題】無線端末の不正使用を防止するために機能停止した無線端末を、パソコンを使用して容易に再使用状態に復元することを困難にした無線端末を提供する。
【解決手段】ハードウェアの一部として組み込まれたファームウェアの一部又は全部を、外部からの命令(コマンド)によって消去することによって、容易に再起動できないように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正使用防止機能を備えた無線端末に関し、詳細には、盗難時等に無線端末に記憶された個人情報の漏洩防止や無線端末の無断使用等を防止する機能を備えた無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯無線機や携帯電話機等の普及が著しく、また、記憶容量の大きなメモリが安価に提供されるようになったので、住所録や電話番号等の個人情報を記憶して携帯することが多くなった。更に、携帯無線機にクレジットカード機能や、各種会員証情報を持たせてキャッシュレスでのショッピングが可能になっている。
このような個人情報や財産的有価情報を備えた携帯機器が盗難され、あるいは紛失して悪意の第三者の手に渡ると個人情報の漏洩、不正利用等、甚大な損害を受ける虞がある。
その防止のため従来から各種の工夫がなされている。例えば、携帯電話機ではロック機能を備え、電源投入の際、表示器に予め設定したパスワードの入力を要求する画面を表示し、所定回数以内で正しいパスワードが入力されない場合は、携帯電話機の機能を停止させるようになっている。しかし、電源を投入した状態で盗難や紛失により第三者の手に渡ると、電源を遮断するまでは、パスワードを入力することなく携帯電話回線の無断使用が可能であり、内部に保存された個人情報等が漏洩する虞がある。また、電源投入時にその都度パスワードを入力する煩わしさを排除するために、特許文献1では、外部から電話回線を使用してDTMFのようなトーン信号によってロック機能を起動させるように構成したものが提案されており、特許文献2には、携帯電話機に不正使用検出手段を備え、不正使用中であることが検出されると、予め設定した相手先に自動的に通信回線を接続し、接続した通信相手先から、当該不正使用中の携帯電話機を遠隔制御によって機能をロックし、あるいは記憶されている秘密データを消去するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−164219号公報
【特許文献2】特開2006−340074公報
【特許文献3】特開2007−142970公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2記載の方法では、無線端末をパーソナルコンピュータ(PC)に接続し、コンピュータ処理技術を使用して必要な操作を行えば、比較的容易に再び機能を回復することが可能であり、確実に不正使用を防止することが困難であった。特に、再設定を行うためのアプリケーション(ソフトウェア)は比較的容易に入手できる場合が多いので、盗難された無線機の不正使用の可能性が高い。また、携帯電話機のように通信回線を交換回線制御装置等によって管理可能な場合は回線接続を禁止すればよいが、業務用無線端末のように回線接続禁止処理が困難な場合は、無線端末の不正使用を確実に防止し得ないことがあった。
本発明は、このような従来の無線端末の不正使用や内部に記憶された個人情報等の漏洩を防止する際の不具合を除去するためになされたものであって、不正使用時に機能停止した状態を、容易に再使用状態に復元することを防止することが可能な無線端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の不正使用防止機能を備えた無線端末は、少なくとも、無線送受信部と、この無線送受信部を制御する制御部と、電源部と、表示部と、入力部と、を備えた無線端末において、上記制御部は、ハードウェアの一部として組み込まれた制御プログラムを含むファームウェアと、外部から所定のコマンドと予め設定されたパスワード等の特殊符号が供給された際、上記特殊符号の真贋を判断する手段と、その特殊符号が真性と判断された場合、上記コマンドに従って、少なくとも上記ファームウェアの一部又は全部を消去する手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項2記載の不正使用防止機能を備えた無線端末は、少なくとも、無線送受信部と、該無線送受信部を制御する制御部と、電源部と、表示部と、入力部とを、備えた無線端末において、上記制御部は、ハードウェアの一部として組み込まれた制御プログラムを含むファームウェアを備え、電源投入時、又は/及び、電源投入状態では所定時間経過する毎に、上記表示部にパスワード入力を要求する表示を行い、所定時間に正しいパスワードの入力がなされない場合は、少なくとも上記ファームウェアの一部又は全部を消去するように構成したことを特徴とする。
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の不正使用防止機能を備えた無線端末において、電源投入時、及び/又は、電源投入状態においては所定期間毎に、上記表示部にパスワードの入力を要求する旨を表示するとともに、所定時間以上パスワードの入力が行われない場合、又は、所定回数以上パスワードの入力が間違って行われた場合、その無線端末の所要の機能を停止し、不正使用中である旨のデータを予め設定した通信相手に送信する機能を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上述したように、無線端末の制御部に備えた、ハードウェアの一部として組み込まれた制御プログラムを含むファームウェアの一部又は全部を、外部から、ファームウェアを消去する命令(コマンド)と予め設定された特殊符号(パスワード)が供給された際、このパスワードが予め設定したものと比較することによって真贋を判断した上でコマンドに従って、少なくとも前記ファームウェアを消去するように構成したものである。ファームウェアは、一般的に復元が困難であり、容易に無線端末の機能を復元することができないので、無線端末の不正使用を阻止することが可能であり、無線端末に記憶された個人情報等の漏洩防止にも効果がある。
また、盗難や紛失が直ちに分かるような状況、例えば、業務用車両に搭載された無線端末のように、車両と一体に管理される場合は、盗難が比較的迅速に判明するので、直ちに、ファームウェア消去処理を実行して不正使用を防止可能であり、電源投入時のパスワード入力等の煩わしい操作を省くことも差し支えないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る不正使用防止機能を備えた無線端末の一実施例を示す概要ブロック図。
【図2】本発明に係る不正使用防止機能を備えた無線端末の制御例を示すフローチャート。
【図3】本発明に係る不正使用防止機能を備えた無線端末の制御例を示すフローチャート。
【図4】本発明に係る不正使用防止機能を備えた無線端末の他の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0009】
図1は、本発明に係る無線端末の一実施例を示す概要ブロック図である。
この例に示す無線端末10は、無線送受信部及び必要な周辺回路を含む通信処理部11と、マイクロホンやスピーカを含む音声入出力部12、液晶表示器やタッチ入力機能を備えた表示部13、必要な情報を入力するキー入力部14、電池や場合によっては充電器を含む電源部15、無線端末全体の制御を行う制御部16を備えている。更に、制御部16には、マスクROM等のメモリを含むCPU17、制御に必要な設定データを格納したEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)18、電気的に消去可能なフラッシュROM19を備え、フラッシュROM19には、ユニークデータをファームウェアとして含む制御プログラムが格納されている。なお、通信処理部11の(図示を省略した)無線送受信部にはアンテナ(ANT)20が接続できるようになっている。
この構成において無線機としての動作や各部の役割については、例えば特許文献3に詳しく説明されているので説明を省略し、本発明に関連する部分についてのみ説明する。
【0010】
先ず、無線端末に電源を投入した際の起動処理では、CPU17は電源投入を受けて、フラッシュROM19の予め設定されたアドレスにファームウェアとして構成されたユニークデータが書かれているか否かをチェックし、ユニークデータが書かれていることが判明すれば、フラッシュROM19に必要な制御プログラムが書かれていると判断し、そのプログラムを実行する。また、ユニークデータが見つからない場合は、CPU17内のマスクROMに格納されているIPL(Initial Program Loader)を起動して、端末PC等から制御プログラムをダウンロードし、フラッシュROM19に格納することによって正常な起動が可能となる。
本発明の無線端末は、このような構成において、更に、以下に説明するように、上述したフラッシュROM19に格納するユニークデータを外部から無線回線を介して消去する機能を備えている。
【0011】
即ち、図2は、本発明の無線端末の制御例を示すフローチャートである。処理がスタートすると、必要に応じて無線管理センタ等から無線基地局を介してファームウェア(Firmware)消去コマンドが送られてきたとき、これを受信する(S1)。ファームウェア消去コマンドには、無線端末のシリアル番号とパスワードがセットとして含まれているので、これらが無線端末に記憶されているものと一致するか否かを判断する(S2、S3)。夫々において一致しない場合は、自局無線端末に対するコマンドではないと判断して処理を終了する(S2、S3、No)が、両者が共に一致する場合は(S2、S3、Yes)EEPROM18の設定データと、フラッシュROM19内のユニークデータとを消去(S4、S5)した後、強制的に無線端末の電源を遮断する(S6)。
このように無線端末を起動する上で不可欠なファームウェアとして記憶されているユニークデータや設定データを消去すれば、再び、それらがインストールされない限り、無線端末を起動することができない。なお、このようなファームウェアが消去されると、所要の処理を行って復元完了するまで無線端末として機能しなくなるので、悪意の第三者が妨害行為としてファームウェア消去コマンドを送信することを防ぐために、ファームウェアを消去する際にはパスワードの一致を確認するのが好ましい。
【0012】
図3は、上述したようにファームウェアとして組み込まれたユニークデータや設定データが消去された無線端末に、電源が供給された場合の動作の一例を示すフローチャートである。このフローにおいて、電源投入されると、コンピュータを起動する際のBoot起動ステップ(S10)後のユニークデータ検出処理(S11)において、ユニークデータが消去されているのでファームウェア起動(S12)が不可能となる。ローダー(S13)により、ファームウェアを再びインストールすることで、無線端末として機能することが可能となる。
従来のように、比較的容易に入手できるアプリケーションソフトウェアと異なり、ファームウェアは一般には入手が困難であるので、容易に無線端末の機能を回復させることができない。従って、盗難や紛失した無線端末の不正使用を防止し、また、内部に記憶された個人情報等の漏洩を防止することができる。
【0013】
図4は、本発明の無線端末の変形例を示すフローチャートである。
この例では、実際に無線端末が電源投入された状態で紛失や盗難により、第三者に渡った場合にも対処できるようにした制御例を示したものである。
先ず、無線端末に電源を投入すると(S21)、表示部13に「パスワードを入力してください。3回以上間違えると機能が停止します」と表示して使用者に、予め設定されているパスワードの入力を要求する(S22)。このとき仮にパスワードを知らない第三者が当該無線端末を手にしていれば3回以上間違ったパスワードを入力することになる(S23、No乃至S24、No)。その場合は、予め設定した無線システムの管理センタ等に対し不正使用中である旨の情報(データ)を自動的に送信する(S25)。この情報を受けた管理センタでは、送られた情報からシリアル番号を検出するとともに、必要に応じて、ファームウェア消去コマンドとシリアル番号及びパスワードを返信する。この情報を無線端末が受信すると(S26)、既に説明したように、シリアル番号とパスワードを確認後、ファームウェアとして組み込まれたユニークデータや設定データを消去する(S27)。
【0014】
一方、上記ステップS21の電源投入時のパスワード入力判断(S23)の結果、正しいパスワードが入力されたと判断され(S23、Yes)、無線端末は、既に説明したように、ユニークデータ及び設定データが書き込まれていることを確認した場合は、正常に起動して使用可能状態になる。その後、例えば、数時間毎に、若しくは一日に一回等の所定周期で、パスワードの入力を要求し(S28、S22、S23)、上記S23とS24の例と同様に不正使用と判断した場合は、上述したS23乃至S27を実行してファームウェアを消去する。また、S28の所定時間経過途中において、無線端末の紛失や盗難に気がついた無線端末の使用者が管理センタ等に連絡した場合、管理センタから該当する無線端末に対してファームウェア消去指令を送信すると(S29)、このコマンドを受信した無線端末は、上記ステップS27に移行して、同様にファームウェアを消去する(S29、Yes)。
この例によれば、無線端末が電源投入された状態で紛失し、あるいは盗難に遭遇した場合であっても、所定周期でパスワード入力を要求するので、そのときの使用者が正規の使用者であるか否かを判断可能である。従って、正しいパスワードが入力されない場合は、ファームウェアを消去するように構成し、又は、制御したので、少なくとも所定期間以上にわたり無線端末を不正に使用することを防止可能である。また、所定周期途中であっても、管理センタからの強制的なファームウェア消去処理が可能であるので、迅速な不正使用防止、秘密情報の漏洩防止が可能である。
なお、この例において、パスワードの入力回数を3回にしたが、この例に限らず適宜回数は設定できる。また、パスワード入力回数のみによる不正使用判断では、パスワード入力操作を行わない限り、不正使用と判断できないので、一定時間入力されない場合も不正使用であると判断して同様のファームウェア消去処理を行うのが望ましいであろう。
【0015】
以上、本発明に関して実施例を説明したが、これらの例に限ることなく種々変形や、他の手段との組合せが可能である。
例えば、携帯電話機や携帯型無線端末に限らず、無線、有線LANを含む通信機能を備えた電子機器に広く適用可能である。特に、大容量のメモリを備えた電子機器には、情報漏洩の防止に極めて有用であろう。
また、変形例として、無線端末の所在を知る手段としてGPSによる位置検出機能を備えた無線端末であれば、ファームウェア消去後においても、所定周期でGPSによる位置検出データを管理センタに送信するように構成することも、無線端末を見つけ出す上で有用であろう。その場合は、そのための機能のみは維持するようにファームウェアの消去を行うか、別途、GPS位置検出処理とデータ送信機能を維持するファームウェア(プログラム)を用意しておく必要があろう。
更に、本発明の無線端末に関する不正使用防止手段を処理方法として、コンピュータが処理可能なプログラムとして構築すれば、CPUやDSP、メモリを備えた無線端末にプログラムやデータをインストールすることによって、本発明を実施することも可能であろう。
【符号の説明】
【0016】
10 無線端末、11 通信処理部(無線送受信部)、12 音声入出力部、13 表示部、14 キー入力部、15 電源部、16 制御部、17 CPU、18 EEPROM、19 フラッシュROM、20 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、無線送受信部と、該無線送受信部を制御する制御部と、電源部と、表示部と、入力部と、を備えた無線端末において、前記制御部は、ハードウェアの一部として組み込まれた制御プログラム含むファームウェアと、外部から所定のコマンドと予め設定された特殊符号が供給された際、前記特殊符号の真贋を判断する手段と、前記特殊符号が真性と判断された場合、前記コマンドに従って、少なくとも前記ファームウェアの一部又は全部を消去する手段と、を備えたことを特徴とする不正使用防止機能を備えた無線端末。
【請求項2】
少なくとも、無線送受信部と、該無線送受信部を制御する制御部と、電源部と、表示部と、入力部を備えた無線端末において、前記制御部は、ハードウェアの一部として組み込まれた制御プログラムを含むファームウェアを備え、電源投入時又は/及び、電源投入状態では所定時間経過する毎に、前記表示部にパスワード入力を要求する表示を行い、所定時間に正しいパスワードの入力がなされない場合は、少なくとも前記ファームウェアの一部又は全部を消去するように構成したことを特徴とする不正使用防止機能を備えた無線端末。
【請求項3】
請求項1又は2記載の不正使用防止機能を備えた無線端末において、電源投入時、及び/又は、電源投入状態においては所定期間毎に、前記表示部にパスワードの入力を要求する旨を表示するとともに、所定時間以上パスワードの入力が行われない場合、又は、所定回数以上パスワードの入力が間違って行われた場合、当該無線端末の所要の機能を停止し、不正使用中である旨のデータを予め設定した通信相手に送信する機能を備えたことを特徴とする不正使用防止機能を備えた無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−55166(P2011−55166A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201000(P2009−201000)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【出願人】(595120530)株式会社ケンウッド・エンジニアリング (22)
【Fターム(参考)】