説明

不燃性積層不織布

【課題】 本発明は、強伸度の低下や柔軟性の劣化等が生じずとも、不燃特性を有する不織布を提供する。
【解決手段】 吸水性繊維を少なくとも50質量%含む吸水性不織ウェブと非吸水性繊維によって構成される非吸水性不織ウェブとが積層された積層不織布であり、ホウ素化合物が積層不織布に対して固形分として4〜20質量%付着している不燃性積層不織布。前記不燃性積層不織布が、吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとが積層してなる積層不織布をホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液に浸漬後、乾燥させることにより得られたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性の不織布に関するものである。
【0002】
繊維業界において、燃焼特性に関しては、難燃性という技術概念により評価し、このような難燃性という評価法での合格というレベルよりも格段に更に高いレベルでの燃焼特性、すなわち「燃焼しない」という特性を持つ不織布に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から繊維製品を燃えにくくするために特許文献1に記載のようにリン有機化合物を共重合したポリエステル繊維を用いること等が知られている。ここで得られる繊維製品は、着火性(着火するまでの時間)によって難燃性を評価するものであり、着火するまでに時間が長い程、難燃性が高いというものであるが、そもそも燃えないというレベルのものではない。
【0004】
一方、難燃特性ではなく不燃特性を実現するもの(薬剤)として、特定のホウ素化合物の水溶液や、特定のホウ素化合物の水溶液を含浸させた繊維構造体が提案されている(特許文献2、3)。
【特許文献1】特開平8−266754号
【特許文献2】特開2005−112700号
【特許文献3】特開2006−299466号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献2記載の薬剤を不織布に適用して、不燃性不織布を得ようとした。ところが、特定の素材からなる不織布に適用しようとすると、大量の薬剤を付着させなければ不燃性といい難いことがわかった。また、大量の薬剤が付着することにより、不織布本来が有する強伸度の低下し、柔軟性や表面形態が著しく損なわれた。
【0006】
そこで、本発明は、強伸度の低下や柔軟性の劣化等が生じずとも、不燃特性を有する不織布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決できないかを検討したところ、吸水性を有する繊維は薬剤の付着量が少量であっても不燃性を示し、かつ吸水性を有しない繊維と併用することによって、不燃特性を有する不織布が得られるとともに、実用程度の強伸度を保持できかつ不織布が有する柔軟性を維持することができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、吸水性繊維を少なくとも50質量%含む吸水性不織ウェブと非吸水性繊維によって構成される非吸水性不織ウェブとが積層された積層不織布であり、ホウ素化合物が積層不織布に対して固形分として4〜20質量%付着していることを特徴とする不燃性積層不織布を要旨とするものである。
【0009】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の積層不織布は、吸水性を有する吸水性繊維と吸水性に乏しい非吸水性繊維とにより構成されている。本発明に用いる吸水性繊維とは、公定水分率が8%以上の繊維をいい、例えば、天然繊維として、コットン、麻、絹等が挙げられる。また、再生繊維として、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸されたレーヨンであるリヨセル等が挙げられる。本発明においては、中でもセルロース系の繊維であるコットン、レーヨン、リヨセルの少なくともいずれか1種を用いることが好ましい。一方、本発明に用いる非吸水性繊維とは、公定水分率が8%未満の繊維といい、主としてポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維等が挙げられるが、中でもポリエステル系繊維を好ましく用いることができる。上記した非吸水性繊維の中でも、ポリエステル系繊維は着火しにくいという性質を有し、また、機械的強度にも優れるからである。なお、吸水性繊維および非吸水性繊維の繊維形態は、短繊維であっても長繊維であってもよい。
【0011】
吸水性不織ウェブは、上記した吸水性繊維を少なくとも50質量%以上含んでいる。吸水性不織ウェブが吸水性繊維を50質量%以上含んでいることにより、ホウ素化合物の付着量が本発明で特定するような少量であっても優れた不燃特性を付与することができる。吸水性不織ウェブが吸水性繊維以外の他の繊維を含む場合、他の繊維としては、上記した非吸水性を目的に応じて適宜選択して混綿すればよい。
【0012】
本発明の積層不織布は、吸水性繊維を少なくとも50質量%含む吸水性不織ウェブと非吸水性繊維によって構成される非吸水性不織ウェブとが積層されることにより構成される。吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとの積層手段としては、例えば、熱接着による方法が挙げられる。吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとを積層した後、熱風処理機に通すことにより、非吸水性繊維を構成する熱可塑性重合体の少なくとも一部を溶融または軟化させて、両不織ウェブの境界面を熱接着すればよい。また、吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとを積層した後、熱エンボスロールや熱カレンダーロールを通ることにより、非吸水性繊維を構成する熱可塑性重合体に熱と圧力を与えて、熱可塑性重合体の少なくとも一部を溶融または軟化させて、両不織ウェブの境界面を熱接着すればよい。別の積層手段としては、交絡による方法が挙げられる。交絡手段としては、ニードルパンチ処理や水流交絡処理による方法を適用するとよい。すなわち、吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとを積層した後、ニードルパンチ処理あるいは水流交絡処理を施すことにより、両不織ウェブの少なくとも境界面に存在する構成繊維同士を絡合させて交絡一体化する。
【0013】
積層不織布を構成する吸水性不織ウェブおよび非吸水性不織ウェブは、いずれも上記した構成繊維が多数堆積してなるものである。それぞれの不織ウェブは、積層して一体化する前は、構成繊維が多数堆積した状態で個々の繊維同士が結合されてなく単に堆積しただけのものであっても、また、構成繊維が多数堆積し、個々の繊維同士は、上記した交絡手段により交絡一体化したものであっても、また、不織ウェブ中にポリエステル系繊維等の熱可塑性合成繊維を含む場合に、この熱可塑性合成繊維が溶融あるいは軟化することによって構成繊維同士を熱接着して一体化したものであってもよい。
【0014】
吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとの積層比(質量比)は、本発明の目的が達成される範囲であれば、得られる積層不織布の風合いや機械的強度を考慮して適宜選択すればよく、積層比は30〜80:70〜20(吸水性不織ウェブ:非吸水性不織ウェブ)がよい。吸水性不織ウェブの比率が30質量%以上とすることのより、優れた不燃性を良好に付与することができ、一方、非吸水性不織ウェブの比率を20質量%以上とすることにより、積層不織布は実用的な強伸度を有し、柔軟性を損なうことなく良好に保持することができる。
【0015】
本発明の積層不織布は、吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブが積層されたものであるが、吸水性不織ウェブ/非吸水性不織ウェブの2層が積層してなるものであっても、吸水性不織ウェブ/非吸水性不織ウェブ/吸水性不織ウェブの3層が積層してなるものでもよい。本発明の積層不織布が不燃特性を発揮するためには、少なくとも片側表面が吸水性不織ウェブにて構成された積層形態であることを要する。
【0016】
積層不織布中に占める吸水性繊維の質量比率は30質量%以上であることが好ましい。吸水性繊維の積層不織布中に占める割合(質量比)を30質量%以上とすることにより、ホウ素化合物の付着量を本発明で特定するような少量であっても優れた不燃特性を付与することができる。
【0017】
本発明では、吸水性繊維と非吸水性繊維とを併用することにより、不燃性の薬剤の付着量を多くしなくとも、不燃特性を有しながら、実用的な強伸度を保持し、柔軟性を維持できる。この理由は定かではないが、本発明者は以下のように推定する。すなわち、吸水性繊維は、繊維が有する吸水性能により、不燃性薬剤である水溶液を吸水し、かつ有効成分を繊維内に保持することが可能と考えられることから、少ない付着量でも不燃特性を有するが、一方、有効成分が付着することにより繊維としての機械的特性に劣化が生ずると考える。一方、非吸水性繊維は、吸水性に乏しいことから、少ない付着量では有効成分を繊維内に保持することが困難となり、不燃特性が発揮されにくいが、付着量が少ないために繊維としては劣化が生じにくいと考える。さらに、その理由は定かではないが、不燃特性を発揮できる積層不織布における有効成分の付着量は、積層不織布を構成する繊維のうち不燃特性を発揮できる繊維(本発明における吸水性繊維)の付着量によって決定される。したがって、少ない付着量でも不燃特性を発揮できる吸水性繊維と機械的強度の劣化が生じにくい非吸水性繊維とを併用して不織布とすることにより、不燃性の薬剤の付着量が少なくとも、不燃特性を有し、かつ不織布としての強伸度や柔軟性を有する不燃性不織布を得ることができたものである。
【0018】
本発明の不燃性積層不織布は、ホウ素化合物が、吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとが積層してなる積層不織布に対して(対繊維質量比率)、固形分として4〜20質量%付着している。ホウ素化合物の付着量を4質量%以上とすることにより十分な不燃効果を奏する積層不織布を得ることができ、一方、付着量を20質量%以下とすることにより、実用的な強伸度を有し、かつ柔軟性を有する積層不織布を得ることができる。なお、さらに柔軟性が優れ、かつ柔らかで肌触り性を保持した表面形態を有する不織布を得るためには、ホウ素化合物の付着量は4〜10質量%であることが好ましい。
【0019】
本発明の不燃性積層不織布に付着してなるホウ素化合物とは、吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとが積層してなる積層不織布に、ホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液を付与した後、水分を乾燥させることによって積層不織布に付着させたものである。あるいは、吸水性不織ウェブに、ホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液を付与した後、水分を乾燥させることによって、吸水性不織ウェブに付着させたものである。後者の場合、本発明の不燃性積層不織布を得るには、所定量のホウ素化合物が付着した吸水性不織ウェブ(不燃性不織ウェブ)と非吸水性不織ウェブとを積層して、積層一体化処理を施せばよい。ホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液とは、いわゆる水ガラスであり、発泡性水ガラスとして知られ、市場にて入手できるトラストライフ社製「ファイアレス B リキッド」(登録商標)を用いればよい。
【0020】
ホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液を付与した後、水分を乾燥させることによって積層不織布に付着させたホウ素化合物は、100℃前後に加熱されると激しく発泡して発泡スチロール様のガラス発泡体となるものである。すなわち、ホウ素化合物が付着した積層不織布は、火炎等にさらされた場合、100℃前後に昇温したときに、ホウ素化合物が激しく発泡し、積層不織布の表面はガラスでできた泡が多数集結したガラス発泡体で覆われることになり、このガラス発泡体が空気を遮断するため、積層不織布は酸素が絶たれた状態となり、燃焼することが不可能な状態となって完全な不燃化効果が得られるものである。
【0021】
本発明の不燃性積層不織布は、吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとが積層した積層不織布をホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液に浸漬後、乾燥させることにより所定量のホウ素化合物を付着させることにより得られる。あるいは、吸水性不織ウェブをホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液に浸漬後、乾燥させることにより所定量のホウ素化合物を吸水性不織ウェブ(不燃性不織ウェブ)に付着させ、次いで、不燃性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとを積層し一体化することにより得られる。所定量のホウ素化合物を付着させるには、ホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液に積層不織布あるいは吸水性不織ウェブを浸漬し、水溶液を含浸させ、次いで一対のローラー間等に通して、所定量の水分を絞る取ることにより、積層不織布中に付着させるホウ素化合物を調整すればよい。
【0022】
ホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液を含浸させ、所定量の水分を絞り取った後、乾燥工程を通すことにより余分の水分を除去すればよいが、乾燥工程での乾燥温度は180℃以下に設定することが好ましく、より好ましくは150℃以下、さらには110℃以下に設定することが好ましい。乾燥温度を低く設定することにより、得られる不燃性積層不織布の強力保持率や伸度保持率が高くなり、柔軟性をより保持することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の不燃性積層不織布は、吸水性繊維と非吸水性繊維とによって構成された不織布であり、特定量のホウ素化合物が付着している。本発明においては、吸水性繊維と非吸水性繊維とを併用することにより、不燃性の薬剤の付着量を多くしなくとも、不燃特性を有しながら、実用的な強伸度を保持し、柔軟性を維持できる。したがって、従来不織布が使用されていた分野において、良好に用いることが可能である。すなわち、シーツ,ベッドカバー,布団カバー,枕カバー,ふとん側地,ふとん中綿などの寝装具、カーテン,壁紙,カーペット,障子紙,シャワーカーテン,換気フィルターなどの建装具、ソファ,椅子などの家具類の表皮材、自動車・車輌・飛行機・船舶などの座席シートの表皮材、自動車・車輌・飛行機・船舶等の天井材,カーマットなどの内装材、防湿シート,防水シート,断熱材,アコーディオンカーテンなどの建材(建築材料)等に良好に用いることができる。また、不燃性の薬剤の使用量が少量のためコストダウンにもなる。
【実施例】
【0024】
次に実施例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(1)引張強力(N/5cm幅);JIS L 1906に準じて、東洋ボールドウイン社製テンシロンRTM−500型を用いて、幅50mm、長さ200mmの試験片を、把持間隔100mm、引張速度100mm/分の条件で測定し、試料10点の平均値を求め、引張強力とした。なお、引張強力については、不織布のMD方向(機械方向)について測定した。
(2)引張伸度(%/5cm幅):JIS L 1906に準じて、東洋ボールドウイン社製テンシロンRTM−500型を用いて、幅50mm、長さ200mmの試験片を、把持間隔100mm、引張速度100mm/分の条件で測定し、試料10点の平均値を求め、引張伸度とした。なお、引張強力については、不織布のMD方向(機械方向)について測定した。
(3)強力保持率(%):ホウ素化合物を付着後の不燃性積層不織布の引張強力の値を付着前(未処理)の積層不織布の引張強力の値で除した値に100を乗じたもの。
(4)伸度保持率:ホウ素化合物を付着後の不燃性積層不織布の引張伸度の値を付着前(未処理)の積層不織布の引張伸度の値で除した値に100を乗じたもの。
(5)柔軟性:手触りによって柔軟性を評価した。
【0025】
実施例1
コットン晒し綿(平均繊維長25mm)を用意し、ランダムカード機にて目付60g/m2のカードウエブを作成した。このカードウエブに水流交絡処理を施した。すなわち、移動する100メッシュの金属製ネット上にカードウェブを載置し、孔径0.6mmの噴射孔が一列に配されたオリフィスヘッドを用い、このウエブの上方50mmの位置より噴射圧70kg/cm2Gの高圧液体流を噴射し交絡処理を行った。交絡処理後、余剰の水分を公知の水分除去装置であるマングルにより除去し、引き続きサクションバンド方式の乾燥機を用いて90℃で乾燥処理を行い、吸水性不織ウェブとした。
【0026】
一方、共重合ポリエステル(融点180℃;エチレンテレフタレート単位にイソフタル酸を共重合してなる共重合ポリエステル)からなる長繊維不織布(目付30g/m2)を用意した。長繊維不織布は、熱エンボス加工により部分的に熱圧着部が形成されてなるものであり、長繊維不織布を構成する長繊維の単糸繊度は3.3デシテックスである。
【0027】
次いで、用意した不織ウェブを、吸水性不織ウェブ/非吸水性不織ウェブ/吸水性不織ウェブの順に積層し、一対の熱ロール間に通して、熱接着により一体化した積層不織布を得た。熱ロールは、設定温度は両ロール共190℃とし、ロール間隙0.1mm、処理速度は1.7m/秒とした。
【0028】
得られた積層不織布を、ホウ酸イオン縮合体のナトリウム塩を主成分とする水溶液(トラストライフ社製「ファイアレス B リキッド(登録商標)」)と等量の水で希釈した水溶液に浸漬させた後、二本のゴムローラー間に通しながら余分な水溶液を絞り出して(絞り率90%)、ホウ酸ナトリウム重合体を生地に均一に付着後、引き続きサクションバンド方式の乾燥機を用いて110℃×2分で乾燥処理を行った。
【0029】
ホウ素化合物の有効付着量は、対繊維質量比率にて4質量%(固形分)付着した。
【0030】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところ、一瞬着火したが直ぐに火は自己消化し、燃えなかった。
【0031】
また、強伸度、柔軟さが十分に保持されたものであった。強力保持率は93%であり、伸度保持率は91%であった。
【0032】
実施例2
実施例1において、ホウ酸イオン縮合体のナトリウム塩を主成分とする水溶液に浸漬後、絞り率を160%として、積層不織布に付着させるホウ素化合物の付着量を10質量%(固形分)としたこと以外は、実施例1と同様にして不燃性積層不織布を得た。
【0033】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところ、一瞬着火しようであるが直ぐに火は自己消化し、燃えなかった。
【0034】
また、強度、柔軟さは十分に保持されたものであった。強力保持率は84%であり、伸度保持率は22%であった。
【0035】
実施例3
実施例1において、ホウ酸イオン縮合体のナトリウム塩を主成分とする水溶液に浸漬後、絞り率を350%として、積層不織布に付着させるホウ素化合物の付着量を20質量%(固形分)としたこと以外は、実施例1と同様にして不燃性積層不織布を得た。
【0036】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところ、一瞬着火したようだったが直ぐに火は自己消化し、燃えなかった。
【0037】
また、強度、柔軟さは十分に保持されたものであった。強力保持率は68%であり、伸度保持率は19%であった。
【0038】
実施例4
実施例1において、吸水性不織ウェブの目付を25g/m2、非吸水性不織ウェブの目付を100g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして不燃性積層不織布を得た。
【0039】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところが、3秒程度着火したが直ぐに火は自己消化し、燃えなかった。
【0040】
また、強伸度、柔軟さが十分に保持されたものであった。強力保持率は98%であり、伸度保持率は94%であった。
【0041】
実施例5
実施例1において、コットン晒し綿に代えて、リヨセル(繊維長25mm、単糸繊度1.7デシテックス)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして不燃性積層不織布を得た。
【0042】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところが、一瞬着火したが火は自己消化し、燃えなかった。
【0043】
また、強伸度、柔軟さが十分に保持されたものであった。強力保持率は73%であり、伸度保持率は87%であった。
【0044】
実施例6
実施例1において、共重合ポリエステルからなる長繊維不織布に替えて、ポリ乳酸(融点170℃)からなる長繊維不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして不燃性積層不織布を得た。なお、長繊維不織布は、熱エンボス加工により部分的に熱圧着部が形成されてなるものであり、長繊維不織布を構成する長繊維の単糸繊度は3.3デシテックスである。
【0045】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところが、一瞬着火したが直ぐに火は自己消化し、燃えなかった。
【0046】
また、強伸度、柔軟さが十分に保持されたものであった。強力保持率は95%であり、伸度保持率は93%であった。なお、ポリ乳酸は、自然界において微生物により二酸化炭素と水に分解されるものであるので実施例6で得られた不燃性積層不織布は、使用後、廃棄する際には、焼却することなく、微生物の存在下で、完全に分解させることができるため、自然環境を汚染することがないという効果を奏することができるものであった。
【0047】
実施例7
実施例1において、吸水性不織ウェブとして、実施例1で用いたと同様のコットン晒し綿と共重合ポリエステル(融点180℃;エチレンテレフタレート単位にイソフタル酸を共重合してなる共重合ポリエステル)からなる短繊維(単糸繊度3.3デシテックス、繊維長25mm)とを80:20(質量比)の割合で混綿したカードウエブを作成し、このカードウエブに実施例1と同様にして水流交絡処理を施したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして不燃性積層不織布を得た。
【0048】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところが、3秒程度着火したが直ぐに火は自己消化し、燃えなかった。
【0049】
また、強伸度、柔軟さが十分に保持されたものであった。強力保持率は95%であり、伸度保持率は92%であった。
【0050】
実施例8
実施例1において、吸水性不織ウェブとして、実施例1で用いたと同様のコットン晒し綿と共重合ポリエステル(融点180℃;エチレンテレフタレート単位にイソフタル酸を共重合してなる共重合ポリエステル)からなる短繊維(単糸繊度3.3デシテックス、繊維長25mm)とを50:50(質量比)の割合で混綿した目付40g/m2のカードウエブを作成し、このカードウエブに実施例1と同様にして水流交絡処理を施したものを用いたこと、非吸水性不織ウェブとして、実施例1と用いたものと同様の長繊維不織布で目付20g/m2のものを用いたこと、吸水性不織ウェブ/非吸水性不織ウェブの2層積層により積層不織布を得たこと以外は、実施例1と同様にして不燃性積層不織布を得た。
【0051】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところが、一瞬着火したが直ぐに火は自己消化し、燃えなかった。
【0052】
また、強伸度、柔軟さが十分に保持されたものであった。強力保持率は94%であり、伸度保持率は93%であった。
【0053】
比較例1
実施例1において、ホウ酸イオン縮合体のナトリウム塩を主成分とする水溶液に浸漬後、絞り率を67.5%として、積層不織布に付着させるホウ素化合物の付着量を3質量%(固形分)としたこと以外は、実施例1と同様にして積層不織布を得た。
【0054】
得られた積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところ、炎を上げて燃えた。不燃性を有するものではなかった。なお、強伸度等の性能評価は行わなかった。
【0055】
比較例2
実施例1において、ホウ酸イオン縮合体のナトリウム塩を主成分とする水溶液に浸漬後、絞り率を430%として、積層不織布に付着させるホウ素化合物の付着量を25質量%(固形分)としたこと以外は、実施例1と同様にして不燃性積層不織布を得た。
【0056】
得られた不燃性積層不織布を、市販のガスライターで直下炎に晒して燃焼テストをしてみたところ、一瞬着火したようだったが直ぐに火は自己消化し、燃えなかった。
【0057】
また、強伸度、柔軟さは保持されたものではなかった。強力保持率は46%であり、伸度保持率は12%であった。
【0058】
得られた実施例1〜7、比較例1、2の評価を表1に示した。
【0059】
【表1】


次に、得られた積層不織布(実施例1〜4、比較例2)の柔軟性を定量的に評価するために、以下の方法によって風合い測定を行った。結果を表2に示す。
(風合い評価)
JIS L 1096 剛軟性 8.19.5E法(ハンドルオメーター法)の記載に準じて、20cm(MD方向)×1.5cm(CD方向)の試料片を3枚用意し、幅を30mmに設定したスロットに、試料片のMD方向(長手方向)が直角となるように試料を設置して測定した。1枚の試料につき表裏異なる箇所を測定し、その合計値を求めて、3枚の平均値を剛軟性の値とした。
【0060】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性繊維を少なくとも50質量%含む吸水性不織ウェブと非吸水性繊維によって構成される非吸水性不織ウェブとが積層された積層不織布であり、ホウ素化合物が積層不織布に対して固形分として4〜20質量%付着していることを特徴とする不燃性積層不織布。
【請求項2】
請求項1記載の不燃性積層不織布が、吸水性不織ウェブと非吸水性不織ウェブとが積層してなる積層不織布をホウ酸イオン縮重合体塩の水溶液に浸漬後、乾燥させることにより得られたものであることを特徴とする請求項1記載の不燃性積層不織布。
【請求項3】
請求項1記載の不燃性積層不織布が、吸水性繊維を少なくとも50質量%含む吸水性不織ウェブをホウ酸イオン縮合重合体塩の水溶液に浸漬後、乾燥させて得た不然性不織ウェブに、非吸水性不織ウェブを積層し一体化することにより得られたものであることを特徴とする請求項1記載の不燃性積層不織布。
【請求項4】
吸水性繊維が、コットン、リヨセルあるいはレーヨンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の不燃性積層不織布。
【請求項5】
非吸水性繊維が、ポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の不燃性積層不織布。
【請求項6】
積層不織布中に占める吸水性繊維の質量比率は、30質量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の不燃性積層不織布。


【公開番号】特開2009−858(P2009−858A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162547(P2007−162547)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】