説明

不織布含浸化粧料

【課題】肌への密着性が高く、ズレ落ちにくく、使用性に優れ、かつ、きしみ感、べたつき感がなく、ハリ感、しっとり感の向上といった使用感に優れた不織布含浸化粧料の提供。
【解決手段】親水性繊維と疎水性繊維から構成された不織布に組成物が含浸されてなる不織布含浸化粧料であって、前記組成物が、
(A)ジグリセリン、並びに
(B)単糖類〜六糖類、これらの糖アルコール及びアルキルグルコシドからなる群から選択される1種又は2種以上
を含有し、(A)と(B)の質量比(A/B)が1/7〜7/1であることを特徴とする不織布含浸化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布含浸化粧料に関し、更に詳細には、所定の組成物を含浸させた不織布を貼り付け等により、皮膚に密着させて使用する不織布含浸化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の変化により、乾燥肌タイプの女性が増え、保湿効果や、乾燥に伴う目や口周りの小ジワを予防/改善できる製剤のニーズが強く求められてきている。これらのニーズに対し、使用方法が簡便で、かつ効果的に肌へ保湿等の効果を発揮することが期待される不織布含浸化粧料が利用されている。
従来、これらの不織布含浸化粧料の不織布には綿を主成分とした不織布が利用されている。綿は吸収性が高く、化粧料を含浸させるのに適したものであるが、含浸させた化粧料が肌から垂れ落ちる、貼り付け時にヨレやヘタリが生じて肌へ密着させにくい、使用中に不織布が肌からズレやすいという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1には、水溶性高分子と多価アルコールを主成分として含有する化粧料組成物を不織布に含浸させることで、綿100%の不織布を利用した場合でも、化粧料が垂れ落ちにくく、使用時の密着性が高く、ズレたりしない、使用性が良好な不織布含浸化粧料が提案されている。しかしながら、特許文献1では、組成物は垂れ落ちしにくいものの、長時間装着すると、不織布が肌から部分的に浮き、密着感が低下する、水溶性高分子によるべたつき感が強く感じられ、使用感が悪いという問題があった。
特許文献2には、特定の開孔面積を有する親水性繊維を肌接触面に60質量%以上用い、内面に熱溶融性繊維を用いて表面を凹凸形状としたシートを利用することで、肌あたりが良好で、利用時にヨレやヘタリが生じにくいことが開示されている。
また、特許文献3には、親水性繊維を40重量%以上含有する肌接触層と、親水性繊維を40重量%未満含有する基材層を有する化粧料含浸用シートを利用することで、肌感触が良く、使用時のヨレやヘタリが生じにくいことが開示されている。
しかしながら、特許文献2、3では、使用時のヨレやヘタレは改善されるが、熱溶融性繊維等の疎水性繊維を用いているため、組成物の吸収性が悪く、含浸化粧料の保持性が減少し、化粧効果が低下する。また、不織布に含浸化粧料が均一に保持されず、肌への付着にムラが生じるという問題もあった。さらに、綿などの天然繊維のみでできた不織布よりも肌あたりが硬いため、長時間の装着には好ましくないという問題がある。肌あたりを向上させるために、水溶性高分子を多量に配合させるなどの方法もあるが、前述のように長時間の装着や、べたつき感に問題が残った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−279429号公報
【特許文献2】特許第4215705号公報
【特許文献3】特開2002−65497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、肌への密着性が高く、ズレ落ちにくく、使用性に優れ、かつ、きしみ感、べたつき感がなく、ハリ感、しっとり感の向上といった使用感に優れた不織布含浸化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、親水性繊維と疎水性繊維から構成された不織布に、ジグリセリンと、単糖類〜六糖類、これらの糖アルコール又はアルキルグルコシドを特定比で組み合わせた組成物を含浸させて不織布含浸化粧料とすることにより、肌への密着性が高く、ズレ落ちにくいといった使用性と、きしみ感、べたつき感がなく、ハリ感、しっとり感の向上といった使用感の両立が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、親水性繊維と疎水性繊維から構成された不織布に組成物が含浸されてなる不織布含浸化粧料であって、前記組成物が、
(A)ジグリセリン、並びに
(B)単糖〜六糖、これらの糖アルコール及びアルキルグルコシドからなる群から選択される1種又は2種以上
を含有し、(A)と(B)の質量比(A/B)が1/7〜7/1であることを特徴とする不織布含浸化粧料を提供するものである。
また、本発明は、親水性繊維と疎水性繊維から構成された不織布と組成物との組み合せからなり、使用時に組成物を不織布に含浸させて皮膚に適用する不織布含浸化粧料であって、前記組成物が、
(A)ジグリセリン、並びに
(B)単糖〜六糖、これらの糖アルコール及びアルキルグルコシドからなる群から選択される1種又は2種以上
を含有し、(A)と(B)の質量比(A/B)が1/7〜7/1であることを特徴とする不織布含浸化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、構造が複雑な立体型不織布を利用した際でも、含浸組成物が均一に不織布に吸収保持され、肌からズレ落ちにくく、高い密着感が得られ、さらにきしみ感、べたつき感がなく、ハリ感、しっとり感といった使用感が良好な不織布含浸化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例で用いた不織布形状を示す図面である。
【図2】本発明の実施例で用いた不織布含浸化粧料の利用形態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、「不織布含浸化粧料」とは、支持体となる「不織布」に所定の組成物(以下、含浸組成物という。)が含浸された形態の化粧料で、これを皮膚に密着させることにより使用されるものである。
また、本発明の不織布含浸化粧料には、不織布と含浸組成物との組み合せからなり、使用時に含浸組成物を不織布に含浸させて皮膚に適用するためのセット又はキットも含まれる。
【0011】
本発明の不織布含浸化粧料に用いられる含浸組成物は、(A)ジグリセリンと、(B)単糖〜六糖、これらの糖アルコール及びアルキルグルコシドからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する。
【0012】
本発明に用いる(A)ジグリセリン(分子式:C383)は、多価アルコールの1種であり、肌にハリ感やしっとり感を付与する作用を有する。
【0013】
本発明に用いられる(A)ジグリセリンの含浸組成物総量に対する含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。組成物中へのジグリセリンの含有量が当該範囲内であれば、ハリ感、しっとり感が良好で、肌へのきしみ感やべたつき感がなく使用性において好ましい。
【0014】
本発明に用いる単糖類〜六糖類の構成糖の数は、1〜6であり、これらはD体、L体のいずれであってもよく、またその混合物であっても良く、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0015】
単糖類としては、エリツルロース、エリトロース、トレオース、アラビノース、キシロース、リキソース、リボース、キシルロース、リブロース、ガラクトース、グルコース、タロース、マンノース、ソルボース、タガトース、プシコース、フルクトース、アピオース、ハマメロース等が挙げられる。二糖類としては、キシロビオース、アガロビオース、カラビオース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、セロビオース、トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース、イヌロビオース、ビシアノース、イソプリメベロース、サンブビオース、プリメベロース、ソラビオース、メリビオース、ラクトース、リコビオース、エピセロビオース、スクロース、ツラノース、マルツロース、ラクツロース、エピゲンチビオース、ロビノビオース、シラノビオース、ルチノース等が挙げられる。三糖類としては、グルコシルトレハロース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレンジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロースなどが挙げられる。四糖類としては、マルトシルトレハロース、マルトテトラオース、スタキオースなどが挙げられる。五糖類としては、マルトトリオシルトレハロース、マルトペンタオース、ベルバスコースなどが挙げられる。六糖類としてはマルトヘキサオースなどが挙げられる。
【0016】
好ましい単糖類〜六糖類は、グルコース、キシロビオース、トレハロース、グルコシルトレハロース、ラフィノースであり、より好ましくはキシロビオース、グルコシルトレハロースである。
【0017】
前記糖アルコールとしては、前記単糖類〜六糖類のアルドース又はケトースのカルボニル基が還元されたものである。構成糖の数は、1〜6であるが、好ましくは1〜3である。これらはD体、L体のいずれであってもよく、またその混合物であっても良く、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0018】
前記糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ガラクチトール、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、パラチニット、マルチトール、ラクチトール、イソマルトース、マルトトリイトール、マルトテトライトール、マルトペンタイトール、マルトヘキサトリイトール等が挙げられる。
【0019】
好ましい糖アルコールは、キシリトール、ソルビトール、マルチトールであり、より好ましくはソルビトール、マルチトールである。
【0020】
また、前記単糖類〜六糖類又はこれらの糖アルコールは、水酸基が少なくとも1つを除いて、アシル化、エーテル化、アルキレンオキサイド付加、アセタノール化等の適当な有機残基による修飾がなされたものであっても良い。
【0021】
本発明で用いるアルキルグルコシドは下記一般式(1)又は(2)で表される。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、Rは、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を示す。)
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立して−O−(C24O)r−(C36O)s−R6又は−O−(C36O)s−(C24O)r−R6(R6は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、rは0〜20の整数、sは0〜20の整数であり、r+s≧1である)を示す。)
【0026】
本発明のアルキルグルコシドの一般式(1)におけるRは、炭素数が1〜6の直鎖または分岐のアルキル基であり、好ましくは炭素数が1〜3の直鎖または分岐のアルキル基である。
【0027】
本発明のアルキルグルコシドの一般式(2)におけるR1は、炭素数が1〜6の直鎖または分岐のアルキル基であり、好ましくは炭素数が1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であり、R2〜R5は、それぞれ独立して−O−(C24O)r−(C36O)s−R6又は−O−(C36O)s−(C24O)r−R6(R6は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、rは0〜20の整数、sは0〜20の整数であり、r+s≧1である)のいずれかであり、R2〜R5の各ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン数(r+s)の合計は5〜25が好ましくより好ましくは10〜20である。
【0028】
本発明のアルキルグルコシドはα−グルコシド、β−グルコシドのどちらの異性体であってもよく、また、α、βの混合物であってもよい。また、グルコースはD−グルコース、L−グルコースのどちらの異性体であってもよく、D、Lの混合物であってもよい。
【0029】
本発明のアルキルグルコシドとして、好ましくはメチルグルコシド、エチルグルコシド、プロピルグルコシド、イソプロピルグルコシド、ブチルグルコシド、イソブチルグルコシド、tert−ブチルグルコシド、ペンチルグルコシド、ヘキシルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンエチルグルコシド、ポリオキシエチレンプロピルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンエチルグルコシド、ポリオキシプロピレンプロピルグルコシド等が挙げられ、より好ましくはメチルグルコシド、エチルグルコシド、プロピルグルコシド、イソプロピルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンプロピルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンプロピルグルコシドである。
【0030】
これらアルキルグルコシドは、広く市販されており、ポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基を付加したアルキルグルコシドも、ポリオキシエチレンメチルグルコシドとしてグルカムE−10、E−20(アマコール社製)、NIKKOL BMG−10、BMG−20(日光ケミカルズ社製)、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドとしてグルカムP−10、P−20(アマコール社製)などが市販されている。
【0031】
本発明に用いられる前記(B)単糖〜六糖類、これらの糖アルコール、及びアルキルグルコシドの含浸組成物総量に対する含有量は、0.5質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜6質量%である。当該範囲内であれば、ハリ感が良好で、べたつき感がなく使用性において好ましい。
【0032】
本発明に用いられる(A)ジグリセリンと、(B)単糖類〜六糖類、これらの糖アルコール、及びアルキルグルコシドからなる群から選択される1種以上の含浸組成物中の含有比は、質量比(A/B)として1/7〜7/1であり、好ましくは1/5〜5/1である。当該範囲外であると、べたつき感が強く感じられ、十分なハリ感も得られない。
【0033】
本発明に用いる(A)ジグリセリンと、(B)単糖類〜六糖類、これらの糖アルコール、及びアルキルグルコシドからなる群から選択される1種以上の含浸組成物総量に対する含有量は、2〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。当該範囲内であれば、ハリ感、しっとり感に優れ、好ましい。
【0034】
さらに本発明の含浸組成物には、(C)多糖類又はその誘導体を含有することができる。尚、本発明における多糖類とは、加水分解によって10分子以上の単糖類を生じる多糖類である。多糖類又はその誘導体としては、グアーガム、ローカストビーンガム、クイーンスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、キサンタンガム、デキストリン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の天然多糖類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化セルロース、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコール、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等の合成あるいは半合成多糖類が挙げられる。
【0035】
本発明に用いられる前記(C)多糖類又はその誘導体の含浸組成物総量に対する含有量は、0.001〜0.3質量%が好ましく、さらに0.005〜0.2質量%であることが好ましい。当該範囲内であれば、不織布の肌への密着感が良好となり、使用感も良好になる。
【0036】
本発明の含浸組成物には、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲であれば、通常化粧料、医薬品、医薬部外品等に配合される各種の界面活性剤、油性成分、シリコーン化合物、高級アルコール、低級アルコール、紫外線吸収剤、フッ素化合物、樹脂、増粘剤、防菌防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等の成分を使用することができる。
【0037】
本発明に用いる不織布は、親水性繊維と疎水性繊維とから構成されるものであり、親水性繊維と疎水性繊維との質量比は、(親水性繊維/疎水性繊維)=70/30〜30/70が好ましく、60/40〜40/60がより好ましく、55/45〜45/55がさらに好ましい。前記親水性繊維と前記疎水性繊維との割合が当該範囲内で本発明の含浸組成物を適用した場合には、使用時の不織布のヨレやヘタリがなく、使用中・使用後のハリ感、しっとり感、きしみ感のなさ、べたつき感のなさの点で優れるため、好ましい。
【0038】
前記親水性繊維としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、綿、パルプ、麻等の天然セルロース系繊維、パルプより得られるビスコースレーヨン、銅アンモニウムレーヨン、溶剤紡糸されたレーヨンであるリオセル、テンセル等の再生セルロース系繊維、キチン、アルギン酸繊維、コラーゲン繊維等の再生繊維などが挙げられる。これらのうち、肌への密着性の点から、綿、再生セルロース系繊維が特に好ましい。
【0039】
前記疎水性繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維が挙げられる。これらのうち、単一の不織布を変形又は複数の不織布を圧着させることで立体的な形状に加工させることが容易な加熱によって溶融し、相互に接着性を発現する繊維である熱融着性繊維を用いることが好ましい。
【0040】
熱融着性繊維として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系単一繊維、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン−ポリエステルなどからなる鞘部分が相対的に低融点とされる芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン、ポリプロピレン/ポリエチレンからなる各成分の一部が表面に露出している分割型複合繊維、ポリエチレンテレフタレート/エチレン−プロピレン共重合体からなる一方の成分の熱収縮により分割する熱分割型複合繊維などを用いることができる。
【0041】
前記親水性繊維及び前記疎水性繊維は、それぞれ1種単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0042】
前記不織布の目付量(単位面積あたりの質量)は、30〜120g/m2が好ましく、さらに50〜90g/m2が好ましい。不織布の目付量が当該範囲内にあれば、肌への密着性が高く、使用性にも優れ、好ましい。
【0043】
前記不織布の層構造は、特に制限はなく、1層であっても、2層以上の層構造であってもよい。また、前記不織布の製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法を使用することができ、例えば、スパンボンド、メルトブロー、サーマルボンド、ケミカルボンド、スパンレース、ニードルパンチ等の方法が利用できる。
【0044】
前記不織布の形状は、正方形、長方形や円形等の他、予め目、鼻、口部分に穴や切り込みをもうけ、略顔型として顔全体を覆う形状や、顔全体を覆う形状だけでなく、顔半面(顔正中線から左右半分)、顔面下部(鼻から下の頬、口周り、顎を含む)など顔の一部を覆う形状など、特に制限なく、各種の形状をとることができる。
【0045】
また、本発明の不織布は、親水性繊維と疎水性繊維を組み合せて用いていることから、ある程度の強度を有し、顔、体の各部形状に沿うような立体的な形状とすることが可能で、高い密着感とハリ感が得られ、かつ、形状が崩れにくく、ヨレやヘタリが生じにくく、使用性も良い。
【0046】
不織布を立体形状とする作成方法として、立体フェイスマスクの作成を例として以下に説明する。まず、図1に示すように、顔の額中央から顎先を通る正中線における、額〜鼻〜口〜顎先〜首の各部の凹凸をもとに、一定の身幅を取って不織布を凹凸形状に切断し(正中線端)、さらに顔側面の肌領域形状(前記正中線端から額〜こめかみ〜顎のえら〜首の各部まで)を覆うように、一定の身幅を取って不織布を切断し(顔外周端)、側面から見た顔形状に近似した形状の不織布1を形成する。この際に、目に対応する箇所に楕円状の開口部3を形成、又は半円状の切り込み部を形成し、口に対応する箇所に半楕円形状の切りかけ部5を形成する。また、密着性を高めるため、目頭・目尻に対応する箇所に開口部3両端から伸びる切り込み部6、小鼻に対応箇所に小鼻の形状に沿う切り込み部4や、下顎に対応する箇所に下顎の形状に沿う切り込み部7を適宜設けることが好ましい。
次に、切断した不織布2枚を、ぞれぞれの対向する箇所を重ね合わせ、正中線端に沿うそれぞれの端部(多数の矩形部2)を熱融着することで、立体フェイスマスクを作成することができる。
この立体フェイスマスクは、図2に記載されるように熱融着していない端部から、内側が互いに離れるように拡げることで、ヨレやヘタレが生じずに容易に顔面に沿う立体形状とすることができる。
【0047】
本発明の不織布含浸化粧料は、不織布に含浸組成物を含浸させることにより得ることができる。含浸組成物の不織布への含浸量は、前記不織布100質量部に対して、500〜2000質量部、700〜1500質量部であることが好ましい。不織布に対する含浸組成物の含浸量が当該範囲内であれば、不織布から含浸組成物の垂れ落ち、不織布のよれ等がなく、好ましい。また、含浸方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不織布に含浸組成物を滴下又は噴霧する方法や、不織布を含浸組成物中に浸漬する方法が挙げられる。含浸後は、含浸組成物中の成分の揮発を防止するため、密封性の良いアルミパウチ等で不織布含浸化粧料を包装して提供することが好ましい。
【0048】
また、不織布と含浸組成物とを組み合せてセット又はキットとし、使用時に含浸組成物を不織布に含浸させて皮膚に適用する形態としてもよい。この場合、不織布と含浸組成物を、別個の包装形態として供給することが好ましい。使用時の含浸組成物の含浸量は前記と同様である。
【0049】
本発明の不織布含浸化粧料の用途としては、特に制限なく利用できるが、医薬品、医薬部外品、化粧料として好ましく利用でき、具体的には美容効果、保湿効果を目的に、一定時間肌上に貼り付けて利用する。
【0050】
本発明の不織布含浸化粧料に含浸させる含浸組成物の剤型としては、特に制限なく利用できるが、水性組成物又は水中油型乳化組成物が好適に利用できる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
説明にあたり、以下の実施例で用いた不織布(立体フェイスマスク)につき、説明する。
【0052】
不織布(立体フェイスマスク)の作成
不織布としては、親水性繊維として綿を、疎水性繊維としてポリエチレン(鞘)/ポリエチレンテレフタレート(芯)の複合繊維を用い、それらを親水性繊維/疎水性繊維=50/50(質量比)、目付量が60g/m2であるスパンレース不織布を用いた。
まず、図1に記載する顔を側面から見た凹凸に沿う形状1に不織布を切断する。ここで、顔に貼り付け時に目に対応する箇所には楕円形状の開口部3を形成し、口に対応する箇所には半楕円形状の切り欠け部5を設けてある。また、不織布の肌への密着性を高まるため、小鼻に該当する箇所、目頭・目尻に該当する箇所及び下顎に該当する箇所には切れ込み部3、4、6、7を形成してある。
前記形状に切断した不織布2枚(左顔側面用、右側顔面用)を、ぞれぞれ対向するよう重ね合わせる。そして、顔の正中線に沿うそれぞれの端部(図1における多数の矩形部2)を熱融着することで、立体フェイスマスク1を作成した。立体フェイスマスク1は、図2に記載されるように熱融着していない端部から、内側が互いに離れるように拡げることで、顔面に沿う立体形状とし、顔面に貼り付けて利用した。
【0053】
実施例1〜17、比較例1〜10
下記表1に記載した配合組成の含浸組成物を下記の製法にて調製し、不織布含浸化粧料を得た。得られた不織布含浸化粧料について、下記評価方法により、評価を行った。評価結果を合わせて表1及び表2に示す。
【0054】
(評価方法)
女性専門パネラーを評価項目ごとに25名用意し、洗顔後の顔面に、下記の不織布含浸化粧料を女性専門パネラーの顔面に15分間貼り付けして使用してもらい、不織布含浸化粧料をはずし、肌に残った含浸組成物をなじませ終わった後で、官能特性についてアンケートを行った。アンケートは、「使用中のハリ感」、「使用後のハリ感」、「使用後のしっとり感」、「使用後のきしみ感のなさ」、「使用後のべたつき感のなさ」の5項目に関して行い、さらに「ハリ感」、「しっとり感」については使用翌日にもアンケートを行った。そして、下記の評価基準に基づき、評価を行った。
【0055】
(ハリ感の評価基準)
◎:20名以上が、ハリ感が感じられると評価した。
○:15名以上20名未満が、ハリ感が感じられると評価した。
△:10名以上15名未満が、ハリ感が感じられると評価した。
×:10名未満が、ハリ感が感じられると評価した。
【0056】
(しっとり感の評価基準)
◎:20名以上が、しっとり感が感じられると評価した。
○:15名以上20名未満が、しっとり感が感じられると評価した。
△:10名以上15名未満が、しっとり感が感じられると評価した。
×:10名未満が、しっとり感が感じられると評価した。
【0057】
(きしみ感のなさの評価基準)
◎:20名以上が、きしみ感が感じられないと評価した
○:15名以上20名未満が、きしみ感が感じられないと評価した
△:10名以上15名未満が、きしみ感が感じられないと評価した
×:10名未満が、きしみ感が感じられないと評価した
【0058】
(べたつき感のなさの評価基準)
◎:20名以上が、べたつき感が感じられないと評価した
○:15名以上20名未満が、べたつき感が感じられないと評価した
△:10名以上15名未満が、べたつき感が感じられないと評価した
×:10名未満が、べたつき感が感じられないと評価した
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
(注1)ジグリセリン801(阪本薬品工業社製)
(注2)Tornare(林原生物科学研究所社製)
(注3)マルビット液(林原生物科学研究所社製)
(注4)アクアグルコシド(長谷川香料社製)
(注5)グルカムE−20(アマコール社製)
(注6)キシロビオースミクスチャー(北海道糖業社製)
(注7)ケルトロール(ケルコ社製)
(注8)ヒアルロン酸FCH(FCH−120)(紀文フードケミファ社製)
【0062】
(製造方法)
(A)成分1に、成分2〜11を溶解し、均一に混合し、含浸組成物を得た。
(B)含浸組成物を、立体型フェイスマスク全体にまんべんなく含浸し、適量含ませ、不織布含浸化粧料を得た。
【0063】
本発明の不織布含浸化粧料では、構造が複雑な立体形状を取る不織布(立体フェイスマスク)を利用した際でも、含浸組成物がすみずみまで均一に不織布に吸収保持され、肌からズレ落ちしにくく、かつ高い密着感が認められた。特にほうれい線近傍の複雑な顔形状においても、本発明の不織布含浸化粧料はきちんと密着し、パネラー評価においても、きしみ感、べたつき感がなく、ハリ感、しっとり感においてきわめて良好な評価が得られた。
【0064】
尚、前記実施例1〜17の含浸組成物を綿100%の不織布に含浸させ、不織布含浸化粧料とした場合には、不織布を立体的な形状にすることができず、使用中及び使用後のハリ感が劣った。また、ポリエステル系繊維不織布では、含浸組成物が不織布に十分に保持されなかった。
【0065】
以下に本発明の不織布含浸化粧料の処方例を挙げる。いずれも肌への密着性が高く、ズレ落ちにくく、優れたハリ感、しっとり感、きしみ感のなさ、べたつき感のなさを有し、使用性及び使用感の良い不織布含浸化粧料である。
【0066】
処方例1 (保湿用ローションマスク)
成分 配合量(質量%)
1.ジグリセリン(注1) 2.0
2.ジプロピレングリコール 8.0
3.キサンタンガム(注7) 0.15
4.カルボキシビニルポリマー(注9) 0.2
5.マルビット液(注3) 1.0
6.濃グリセリン 5.0
7.ポリオキシエチレンメチルグルコシド(注5) 1.0
8.ポリエチレングリコール4000(注10) 0.7
9.水酸化カリウム 適量
10.エデト酸2ナトリウム 適量
11.メチルパラベン 適量
12.酵母エキス(注11) 0.1
13.オリーブ葉エキス(注12) 0.2
14.アンズ果汁(注13) 0.1
15.N−メチル−L−セリン 0.5
16.香料 微量
17.精製水 残量
【0067】
(注9)シンタレンK(3V SIGMA社製)
(注10)ポリエチレングリコール4000(日本油脂製)
(注11)ディスムチンBTJ(ペンタファーム社製)
(注12)オリーブ葉抽出液BG(丸善製薬社製)
(注13)アプリコットエキスK(エスペリス社製)
【0068】
(製造方法)
(A)成分17に、成分1〜16を溶解し、均一に混合し、含浸組成物を得た。
(B)含浸組成物を、前記立体フェイスマスク全体にまんべんなく含浸し、適量含ませ、不織布含浸化粧料を得た。
【0069】
処方例2 (保湿用ローションマスク)
成分 配合量(質量%)
1.ジグリセリン(注1) 1.0
2.ジプロピレングリコール 12.0
3.ヒアルロン酸ナトリウム(注8) 0.1
4.カルボキシビニルポリマー(注9) 0.1
5.エチルグルコシド(注4) 1.0
6.濃グリセリン 3.0
7.アルカリゲネスレータスB−16ポリマー(注14) 0.01
8.ポリエチレングリコール1000(注15) 0.5
9.水酸化カリウム 適量
10.エデト酸2ナトリウム 適量
11.メチルパラベン 適量
12.フェノキシエタノール 適量
13.γ−アミノ酪酸(注16) 0.1
14.チャ実エキス(注17) 0.02
15.ツバキエキス(注18) 0.02
16.ジュズダマエキス(注19) 0.1
17.ユキノシタエキス(注20) 0.1
18.チンピエキス(注21) 0.1
19.香料 微量
20.精製水 残量
【0070】
(注14)アルカラン(興人社製)
(注15)ポリエチレングリコール1000(日本油脂製)
(注16)BIO GABA (協和発酵社製)
(注17)茶の実抽出物(丸善製薬社製)
(注18)ツバキ種子抽出物(丸善製薬社製)
(注19)ヨクイニン抽出液BG−S(丸善製薬社製)
(注20)ユキノシタエキス(一丸ファルコス社製)
(注21)チンピ抽出液BG40(丸善製薬社製)
【0071】
(製造方法)
(A)成分20に、成分1〜19を溶解し、均一に混合し、含浸組成物を得た。
(B)含浸組成物を、前記立体型フェイスマスク全体にまんべんなく含浸し、適量含ませ、不織布含浸化粧料を得た。
【0072】
尚、上記の実施例及び処方例において使用した香料の組成は表3に示す。
【0073】
【表3】

【符号の説明】
【0074】
1 側面から見た顔形状に切断した不織布
2 熱融着部
3 開口部(目)
4 切り込み部(小鼻)
5 切り欠け部(口)
6 切り込み部(目頭・目尻)
7 切り込み部(下顎)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性繊維と疎水性繊維から構成された不織布に組成物が含浸されてなる不織布含浸化粧料であって、前記組成物が、
(A)ジグリセリン、並びに
(B)単糖類〜六糖類、これらの糖アルコール及びアルキルグルコシドからなる群から選択される1種又は2種以上
を含有し、(A)と(B)の質量比(A/B)が1/7〜7/1であることを特徴とする不織布含浸化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)と成分(B)の組成物総量に対する含有量が、2〜20質量%である請求項1に記載の不織布含浸化粧料。
【請求項3】
前記(B)成分が、マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、トレハロース、これらの誘導体、エチルグルコシド及び、ポリオキシエチレンメチルグルコシドからなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の不織布含浸化粧料。
【請求項4】
親水性繊維と疎水性繊維から構成された不織布と組成物との組み合せからなり、使用時に組成物を不織布に含浸させて皮膚に適用する不織布含浸化粧料であって、前記組成物が、
(A)ジグリセリン、並びに
(B)単糖類〜六糖類、これらの糖アルコール及びアルキルグルコシドからなる群から選択される1種又は2種以上
を含有し、(A)と(B)の質量比(A/B)が1/7〜7/1であることを特徴とする不織布含浸化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−105665(P2011−105665A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263556(P2009−263556)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】