説明

不飽和ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いた塗装方法

【課題】 表面乾燥性及び基材との付着性を両立することが可能な不飽和ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】(I)不飽和ポリエステル樹脂、(II)水酸基を含有する重合性不飽和化合物及び式(1):


(上記式(1)において、R1は、炭素数が2〜12のアルキレン基、nは0〜2の整数
を表し、nが2のとき、繰り返し単位中の各R1は、同一であっても異なっていてもよく
、R1の合計炭素原子数は4〜24であり、R2はメチル基又は水素原子である。)で表される重合性不飽和化合物(III)を含有し、成分(I)が25〜85重量%、成分(II)
が5〜65重量%、成分(III)が10〜70重量%の範囲にある不飽和ポリエステル樹
脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性、乾燥性、耐水性に優れた不飽和ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に不飽和ポリエステル樹脂は、他の樹脂に比べ比較的安価であり、また常温でも短時間で硬化するため作業性にすぐれ、さらに主原料の選択によって種々のすぐれた物理的及び化学的特性を有するため、例えば自動車等の車両等の補修用パテ塗料、木工用塗料、成形物、シーリング材など各種用途に広く使用されている。これらの用途に使用されている不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(1)常温で速やかに硬化し、表面乾燥性にすぐれていること、(2)基材との付着性にすぐれていること等の性能が要求される。特に前記(1)常温での表面乾燥性は作業性の重要な要素となっている。
【0003】
従来、このような不飽和ポリエステル樹脂の反応性希釈剤として、硬化性や物性の面から、スチレンモノマーが用いられていたが、近年、その臭気の点からスチレンモノマーの使用が規制されつつある。そこで、硬化性や物性を低下させずにスチレンモノマーに替えてヒドロキシアルキルメタクリレートを反応性希釈剤として用いた不飽和ポリエステル樹脂組成物が特許文献1に記載されている。該組成物によれば、臭気が低く、硬化性安全性に優れ、表面乾燥性に優れるものの、基材との付着性が不十分な場合があった。
【特許文献1】特開2002−332316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、表面乾燥性及び基材との付着性を両立することが可能な不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、不飽和ポリエステル樹脂に反応性希釈剤として特定の重合性不飽和モノマーを含んでなる不飽和ポリエステル樹脂組成物により本発明に到達した。即ち本発明は、
1.(I)不飽和ポリエステル樹脂、(II)水酸基を含有する重合性不飽和化合物及び(III)下記式(1)で表される重合性不飽和化合物を含有する不飽和ポリエステル樹脂組
成物、
【0006】
【化1】

【0007】
(上記式(1)において、R1は、炭素数が2〜12のアルキレン基、nは0〜2の整数
を表し、nが2のとき、繰り返し単位中の各R1は、同一であっても異なっていてもよく
、R1の合計炭素原子数は4〜24であり、R2はメチル基又は水素原子である。)、
2.不飽和ポリエステル樹脂(I)、水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)の配合割合が、成分(I)、(II)及び(III)の合計重量を基準にして、成分(I)が25〜85重量%、成分(II)が5〜65重
量%、成分(III)が10〜70重量%であることを特徴とする1項に記載の不飽和ポリ
エステル樹脂組成物、
3.不飽和ポリエステル樹脂(I)が、環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位を全構造単位の合計モル数に基づいて1〜40モル%含有する1項または2項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、
4.不飽和ポリエステル樹脂(I)が、ビスフェノール類から誘導される単位を全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜10モル%含有する1項ないし3項のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、
5.不飽和ポリエステル樹脂(I)が、多価アルコールのアリルエーテル単位を全構造単位の合計モル数に基づいて5〜50モル%含有する1項ないし4項のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、
【0008】
6.不飽和ポリエステル樹脂(I)が、環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位、ビスフェノール類から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を同一分子内に含有する1項ないし5項のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、7.不飽和ポリエステル樹脂(I)が、環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を含有する不飽和ポリエステル樹脂(I−1)と、環状脂肪族不飽和多塩基酸以外の多塩基酸から誘導される単位、ビスフェノール類から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を含有する不飽和ポリエステル樹脂(I−2)を含む樹脂混合物である1項ないし6項のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、
8.
不飽和ポリエステル樹脂(I)が、多価アルコールのアリルエーテル単位、テレフタル酸単位、及びエチレングリコール単位を同一分子内に含有する1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、
9.さらに防錆剤を含有する1項ないし8項のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、
10.防錆剤が、モリブデン酸塩系、リンモリブデン酸塩系、メタホウ酸塩系、シアナミド亜鉛カルシウム系から選ばれる少なくとも1種の防錆顔料である9項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、
11.さらに式(2)で表される芳香族アミンを含有する1項ないし10項のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物、
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜5の置換していてもよいアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、R5は水素原子、炭
素数1〜20の置換していてもよいアルキル基、又はアリール基を表す。)、
12.1項ないし11項のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含有する塗料組成物、
13.1項ないし11項のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含有するパテ組成物、
14.基材面に、12項または13項に記載の組成物を塗布し、上塗り塗装することを特徴とする塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物によれば、良好な塗装環境を確保しつつ、表面乾燥性や耐水性に優れ、しかも基材面への付着性にも優れた塗膜を形成することが可能である。本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、自動車、鉄道車両、産業機器、木工類用などの補修用パテに特に有用であり、またこれに限らず建築物や家具類のひび割れの補修、目地止めやライニング材、さらにFRP成形品、レジコン、注型品等の各種用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、(I)不飽和ポリエステル樹脂、(II)水酸基を含有する重合性不飽和化合物及び(III)上記式(1)で表される重合性不飽和化合物を含有する不飽和ポリエステ
ル樹脂組成物である。
【0013】
不飽和ポリエステル樹脂(I)
本発明の組成物に用いられる不飽和ポリエステル樹脂(I)としては、多塩基酸と多価アルコールを含む成分をエステル化反応することにより得られる従来公知の樹脂が制限なく使用できる。
多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸の不飽和多塩基酸;フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステルなどの飽和多塩基酸;等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上併用して使用できる。
【0014】
本発明においては、硬化性の点から多塩基酸として不飽和多塩基酸を含有することが望ましい。
また、表面乾燥性をより向上できる点から、不飽和多塩基酸として、環状脂肪族不飽和多塩基酸を含有することが望ましい。
かかる環状脂肪族不飽和多塩基酸としては、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、特にメチルテトラヒドロ無水フタル酸が好適である。
【0015】
該環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位は、全構造単位の合計モル数に基づいて1〜40モル%、好ましくは5〜35モル%含有することが望ましい。
多価アルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネ
オペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ビスフェノール類又はビスフェノール類とアルキレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4´−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併用して使用できる。
【0016】
本発明において、不飽和ポリエステル樹脂(I)は、ビスフェノール類から誘導される単位を含有していることが望ましい。かかるビスフェノール類の導入方法としては、多価アルコールとして、ビスフェノール類又は該ビスフェノール類とアルキレンオキシドの付加物を使用する方法を挙げることができる。ビスフェノール類としてはビスフェノールA、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFが挙げられ、アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。中でもビスフェノールAとプロピレンオキシドとの付加反応物が好適である。
【0017】
上記ビスフェノール類から誘導される単位としては全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜10モル%、好ましくは1〜8モル%含有することが望ましい。
また、本発明においては、上記不飽和ポリエステル樹脂(I)の製造において、表面乾燥性を更に向上できる点から、多価アルコールのアリルエーテルを含有してもよい。該多価アルコールのアリルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1、2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1、3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上併用して使用できる。
【0018】
本発明においては、不飽和ポリエステル樹脂(I)が、多価アルコールのアリルエーテル単位を全構造単位の合計モル数に基づいて5〜50モル%、好ましくは7〜40モル%含有することが望ましい。
本発明においては、特に上記不飽和ポリエステル樹脂(I)が、環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位、ビスフェノール類から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を同一分子内に含有するものであること、或いは、環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を含有する不飽和ポリエステル樹脂(I−1)と、環状脂肪族不飽和多塩基酸以外の多塩基酸から誘導される単位、ビスフェノール類から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を含有する不飽和ポリエステル樹脂(I−2)を含む樹脂混合物であることが望ましい。
【0019】
また、上記不飽和ポリエステル樹脂(I)が、多価アルコールのアリルエーテル単位、テレフタル酸単位、及びエチレングリコール単位を同一分子内に含有するものであってもよい。この場合において、形成塗膜の硬化性、表面乾燥性の点から、多価アルコールのアリルエーテル単位を全構造単位の合計モル数に基づいて5〜50モル%、好ましくは10〜35モル%、耐水性や密着性の点から、テレフタル酸単位を全構造単位の合計モル数に基づいて1〜30モル%、好ましくは3〜20モル%、エチレングリコール単位を全構造単位の合計モル数に基づいて3〜60モル%、好ましくは5〜40モル%含有することが望ましい。
【0020】
上記不飽和ポリエステル樹脂において、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位については、アリルエーテル基の反応を抑制する温度下での縮合反応とする点から、特にビスヒドロキシエチルテレフタレートを多価アルコール製造原料として用いることによって、両方の構成単位を容易に一段階で導入することが可能である。ビスヒドロキシエチルテレフタレートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)の分解再生物を用いることも可能である。
【0021】
本発明において上記不飽和ポリエステル樹脂(I)は必要に応じて脂肪酸により変性されていてもよい。該脂肪酸としては、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸が好適であり、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸・ゴマ油脂肪酸・ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上併用して使用できる。
【0022】
上記不飽和ポリエステル樹脂(I)は、定法によって製造することができ、例えば、前記多塩基酸と多価アルコールを含む成分を窒素雰囲気下で縮合反応させることにより得られる。縮合反応時の加熱温度は、140〜250℃、好ましくは160〜200℃の範囲内であることがゲル化防止の点から望ましい。得られた不飽和ポリエステル樹脂(I)の重量平均分子量は、500〜20,000、好ましくは1,000〜5,000の範囲内であることが、乾燥性、耐水性、付着性等の点から望ましい。
【0023】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0024】
水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)
本発明において、水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)は、反応性希釈剤として配合されるものであり、1分子中に1個の水酸基と1個の重合性不飽和基を有する化合物が包含され、具体的には例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのC2〜C8ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記C2〜C8ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体などの水酸基を有する(メタ)アクリレート;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも表面乾燥性が良好なことから、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特にヒドロキシエチルメタクリレートが好適である。
【0025】
式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)
本発明において、下記式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)は、反応性希釈
剤として配合されるものであり、該化合物(III)により組成物から形成される塗膜の付
着性を向上させることができるものである。
【0026】
【化3】

【0027】
(上記式(1)において、R1は、炭素数が2〜12のアルキレン基、nは0〜2の整数
を表し、nが2のとき、繰り返し単位中の各R1は、同一であっても異なっていてもよく
、R1の合計炭素原子数は4〜24であり、R2はメチル基又は水素原子である。)。
上記化合物(III)の具体例としては、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート
、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート等が挙げられる。
【0028】
不飽和ポリエステル樹脂組成物
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上記不飽和ポリエステル樹脂(I)、水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び上記重合性不飽和化合物(III)を含有し、
不飽和ポリエステル樹脂(I)、水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び重合性不飽和化合物(III)の配合割合が、成分(I)、(II)及び(III)の合計重量を基準にして、成分(I)が25〜85重量%、好ましくは30〜80重量%、成分(II)が5〜65重量%、好ましくは7〜57重量%、成分(III)が10〜70重量%、好ましくは
13〜63重量%であることが望ましい。
【0029】
成分(I)が25重量%未満では乾燥性、硬化性が不十分であり、一方85重量%を超えると高粘度になり塗装作業性が低下することがある。成分(II)が5重量%未満では表面乾燥性が不十分であり、一方65重量%を超えると基材との付着性が低下することがある。成分(III)が10重量%未満では基材との付着性が不十分であり、一方70重量%
を超えると表面乾燥性が低下することがある。
本発明の樹脂組成物は、上記不飽和ポリエステル樹脂(I)、水酸基含有重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)を必須として含有する
ものであり、さらに必要に応じて硬化促進剤、顔料などを配合することができる。
【0030】
上記硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等のナフテン酸塩、オクテン酸コバルト、オクテン酸マンガン、オクテン酸亜鉛、オクテン酸バナジウム等のオクテン酸塩、等の有機金属化合物;3級アミン類;4級アンモニウム塩;などが挙げられる。これらは1種又は2種以上併用して使用できる。その使用量は、不飽和ポリエステル樹脂(I)および水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)の合計重量に対して0.01〜5重
量%の範囲内が適している。
【0031】
上記顔料としては、例えばタルク、マイカ、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、石英、ガラスなどの体質顔料;チタン白、ベンガラ、カーボンブラック、鉄黒などの着色顔料が挙げられ、さらにガラスバルーン、プラスチックバルーンなども含むことができる。これらは1種又は2種以上併用して使用できる。該顔料の使用量は、パテ用途での研磨作業性や仕上り性の面から、不飽和ポリエステル樹脂(I)および水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)の合計100重量部に対し70〜500重量部、好ましくは80〜200重量部の
範囲内が好適である。
【0032】
本発明では、形成膜の耐水性向上の点から、防錆剤を配合することが望ましい。該防錆剤としては、例えばリン酸亜鉛、リン酸カルシウム等のリン酸塩系;トリポリリン酸二水素アルミニウム等のポリリン酸系;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム等のモリブデン酸塩系、リンモリブデン酸アルミニウム等のリンモリブデン酸塩系;ホウ酸塩系;メタホウ酸バリウム等のメタホウ酸塩系;シアナミド亜鉛カルシウム系;カルシウム、亜鉛、コバルト、鉛、ストロンチウム、バリウム等のカチオンを多孔質シリカ粒子に結合させた変性シリカ、カチオンをイオン交換によって結合させることによるイオン交換シリカ;ピロリン酸アルミニウム系などの防錆顔料や、さらに、1−(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸、(2−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸ジ−(C12−C14アルキルアンモニウム塩などのベンゾチアゾール系化合物;4−メチル−γオキソ−ベンゼンブタン酸とN−エチルモルフォリンとの付加反応物、4−メチル−γオキソ−ベンゼンブタン酸とジルコニウムとの付加反応物などのケトカルボン酸系などの有機防錆剤が挙げられ、これらは1種又は2種以上併用して使用できる。これらのうち、防錆剤としては、特にモリブデン酸塩系、リンモリブデン酸塩系、メタホウ酸塩系、シアナミド亜鉛カルシウム系から選ばれる少なくとも1種の防錆顔料であることが、特に鋼板面においての耐水付着性を向上させる点等から好適である。
【0033】
上記防錆剤の配合量は、研磨作業性や仕上り性、硬化性や乾燥性、ヘラ付け性、耐熱黄変性等の面から、不飽和ポリエステル樹脂(I)、水酸基含有重合性不飽和化合物(II)及び重合性不飽和化合物(III)の合計重量に対して、3〜50重量%、好ましくは5〜
45重量%の範囲内が好適である。
また、本発明の樹脂組成物には、硬化速度を調整するために硬化助促進剤や重合禁止剤が含むことができる。該硬化助促進剤としては、例えば下記式(2)で表される芳香族アミンが好適である。
【0034】
【化4】

【0035】
(式中、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜5の置換していてもよいアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、R5は水素原子、炭
素数1〜20の置換していてもよいアルキル基、又はアリール基を表す。)。
上記式(2)で表される芳香族アミンの具体例としては、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−ジメチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ安息香酸エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2-ジメチルアミノ安息香酸、2−ジ
メチルアミノ安息香酸エチル、2−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、2−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル
等が挙げられる。これらの中でも硬化性が良好であり、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む塗膜の上に塗装した上塗り塗膜の黄変が少ないことから、ジメチルアミノ基を有するアミン、特に4−ジメチルアミノ安息香酸が適している。
【0036】
また、上記以外のアミン類、例えばアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−
(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類も硬化助促進剤として使用できる。
【0037】
該硬化助促進剤は、単独で使用してもよいし2種以上の組み合わせで使用しても良い。該硬化助促進剤は、不飽和ポリエステル樹脂(I)、水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)の合計重量に対して0.0
1〜2.0重量%、好ましくは0.05〜1.5重量%の範囲内であることが好適である。
【0038】
重合禁止剤としては、例えばトリハイドロベンゼン、トリハイドロキノン、14−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができ、単独で又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0039】
上記重合禁止剤を配合する場合、その使用量としては、不飽和ポリエステル樹脂(I)および水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)の合計重量に対して、0.002〜1.5重量%、好ましくは0.01〜
1.0重量%の範囲内とすることができる。
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、ラジカル硬化剤を例えば使用直前に混合配合されることが望ましい。該ラジカル硬化剤としては、例えば有機過酸化物等が挙げられ、具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の従来公知のものが使用され、これらは単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。ラジカル硬化剤の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂(I)、水酸基含有重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)の合計重量に対して、0.1〜6重量%、好ましくは0.5
〜5重量%の範囲内が好ましい。
【0040】
本発明においては、水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)以外の重合性不飽和化合物を反応性希釈剤として配合する
こともできる。かかる重合性不飽和化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9
−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル)プロパン、ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどの1価又は多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等;エチレングリコールジマレート、プロピレングリコールジイタコネートなど;4−(メタ)アクリロイルオキシメトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸などの4−(メタ)アクリロイルオキシル基含有芳香族ポリカルボン酸及びその酸無水物;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルフタレート等のアリル化合物;(メタ)アクリル酸とビスフェノールAのグリシジルエーテルとの付加反応生成物等のエポキシ(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリジメチルシリコンジ(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上併用して使用できる。
【0041】
また、本発明の組成物に影響を与えない範囲であれば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物を使用することもできる。
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、さらに必要に応じて、例えば有機溶剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、強化材、減粘剤等の粘度調節剤、顔料分散剤、改質用樹脂、チキソ剤、チキソ助剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、パラフィン等の空気遮断剤、アルデヒド捕捉剤等を配合することが可能である。
【0042】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、塗料組成物及び/又はパテ組成物として用いることでき、その塗布は従来公知の方法で行うことができる。塗布された塗膜は、常温又は強制乾燥をすることにより塗膜内部まで硬化することができる。
本発明方法は、基材面に、上記不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む塗料組成物又は上記不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むパテ組成物を塗布し、上塗り塗装することを特徴とする塗装方法である。
【0043】
基材面としては、鉄、亜鉛、アルミなどの金属面やその化学処理面、プラスチック、木など、さらにこれらに塗装された旧塗膜面などが挙げられ、被塗面が損傷部の場合には、該損傷部を中心に必要によりその周囲までサンディングを行っておくのが適当である。
また、上記塗料組成物又はパテ組成物による塗膜に対して上塗り塗装を行ってもよく、該上塗り塗料としてはアクリルラッカー、アクリルメラミン樹脂系塗料、ウレタン硬化型塗料、アクリルウレタン樹脂系塗料、酸−エポキシ硬化型塗料、フッ素樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、アルキド樹脂メラミン樹脂系塗料、ポリエステルメラミン樹脂系塗料などの通常使用されている有機溶剤系、水系、粉体等の塗料が特に制限なく使用できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
不飽和ポリエステル樹脂の製造
製造例1
温度コントローラー、還流冷却器、攪拌装置を備えた2Lのガラスフラスコに、フマル酸2モル(232g)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸1.8モル(299g)、ビスフェノールAとプロピレンオキシドの1対4モル付加物0.4モル(184g)、ジエチレングリコール3.2モル(339g)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.
4モル(102g)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル0.8モル(171g)、パラベンゾキノン0.7gを仕込み、180℃に昇温して脱水縮合反応を行い、酸価が35mgKOH/gになったところで加熱を停止し、100℃まで冷却し、不飽和ポリエステル樹脂(E−1)を得た。該樹脂の重量平均分子量は、3000であった。
【0045】
製造例2
製造例1と同じ装置を用いて、フマル酸2モル(232g)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸1.8モル(299g)、ジエチレングリコール3.6モル(382g)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.4モル(102g)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル0.8モル(171g)、パラベンゾキノン0.7gを仕込み、180℃に昇温して脱水縮合反応を行い、酸価が35mgKOH/gになったところで加熱を停止し、100℃まで冷却し、不飽和ポリエステル樹脂(E−2)を得た。該樹脂の重量平均分子量は、2500であった。
【0046】
製造例3
製造例1と同じ装置を用いて、フマル酸3.8モル(441g)、ビスフェノールAとプロピレンオキシドの1対4モル付加物0.4モル(184g)、ジエチレングリコール3.2モル(339g)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.4モル(102g)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル0.8モル(171g)、パラベンゾキノン0.7gを仕込み、180℃に昇温して脱水縮合反応を行い、酸価が35mgKOH/gになったところで加熱を停止し、100℃まで冷却し、不飽和ポリエステル樹脂(E−3)を得た。該樹脂の重量平均分子量は、2800であった。
【0047】
製造例4
製造例1と同じ装置を用いて、フマル酸2モル(232g)、ネオペンチルグリコール0.6モル(76g)、ビスヒドロキシエチルテレフタレート0.3モル(76g)、トリメチロールプロパン0.7モル(96g)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル1.1モル(282g)、パラベンゾキノン0.4gを仕込み、180℃に昇温して脱水縮合反応を行い、酸価が35mgKOH/gになったところで加熱を停止し、100℃まで冷却し、不飽和ポリエステル樹脂(E−4)溶液を得た。該不飽和ポリエステル樹脂(E−4)の重量平均分子量は3000であった。
【0048】
製造例5
製造例1と同じ装置を用いて、フマル酸1.1モル(128g)、無水フタル酸0.9モル(133g)、ジエチレングリコール1.1モル(117g)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル1.1モル(282g)、パラベンゾキノン0.4gを仕込み、180℃に昇温して脱水縮合反応を行い、酸価が35mgKOH/gになったところで加熱を停止し、100℃まで冷却し、不飽和ポリエステル樹脂(E−5)溶液を得た。該不飽和ポリエステル樹脂(E−5)の重量平均分子量は3000であった。
【0049】
不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造
実施例1〜21及び比較例1〜2
下記表1の配合組成となるように各組成物を配合し、均一となるように攪拌し、各不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。尚、表中の各不飽和ポリエステル樹脂の量は固形分表示である。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例22〜78及び比較例3〜4
パテ組成物の製造
上記実施例1〜21及び比較例1〜2で得られた各不飽和ポリエステル樹脂組成物(T−1)〜(T−23)100部に、「ニッカナフテックスコバルト5%T」(商品名、日本化学産業社製、ナフテン酸コバルト)又は「ニッカオクチックスコバルト12%T」(商品名、日本化学産業社製、オクテン酸コバルト)、ハイドロキノン、「CR−95」(商品名、石原産業社製、酸化チタン)、「クラウンタルクDR」(商品名、松村産業社製、タルク)および「BUSAN 11−M1」(商品名、堺化学社製、メタホウ酸バリウム)又は「LFボウセイ ZK−S2」(商品名、キクチカラー社製、シアナミド亜鉛カルシウム)を表2に示した組成比に配合したものを300ml採取し、高速混練機「T.K.ハイビスミックスfmodel.1」(特殊機化工業(株)社製)で20分間混合分散させ、各パテ組成物を得た。
【0052】
試験塗板の作成
「SPCC−SB」(日本テストパネル(株)製、軟鋼板)の表面を耐水ペーパー#180で軽く研磨し、これを基材面とした。上記で得られた各パテ組成物に、「LUC共通硬化剤」(商品名、主成分:シクロヘキサノンパーオキサイド、関西ペイント社製)を2%各々添加し、均一に混合したものを各基材面上にヘラで塗布し、ならして2mm厚に塗布した。
【0053】
評価試験
上記で得た各パテ組成物について下記評価方法、基準にて試験を行った。その結果を表2に示した。
(*1)乾燥性:各試験塗板を室温(20℃)で30分放置後、各試験塗板の表面のタック及び内部の硬化を指触にて調べた。(○:良好、×:表面にタックあり、内部も硬化不良)。
(*2)ポットライフ:硬化剤を配合してからの常温(20℃)放置でのゲル化時間。値が大きい程良好である。
【0054】
塗装板の作成
上記試験塗板を室温(20℃)で6時間放置乾燥させた後、該塗面を#400耐水ペ−パ−で軽く研磨し、「レタンPG80ホワイトベース」(商品名、アクリルウレタン樹脂系上塗り塗料、関西ペイント(株)社製)を乾燥膜厚50μmになるようスプレ−塗装し、60℃で30分間乾燥させて各塗装板を得た。
【0055】
上記で得られた各塗装板を下記評価方法、基準にて試験した。結果を表2にあわせて示す。
(*3)付着性1:各塗装板を40℃の温水に10日間没水後、中央部より90度角に折り曲げて、該折り曲げ部の塗膜の状態を観察した(○:良好、×:塗膜が剥離している)。
(*4)付着性2:各塗装板を80℃の温水に1日間没水後、中央部より90度角に折り曲げて、該折り曲げ部の塗膜の状態を観察した(○:良好、△:一部塗膜が剥離している
、×:塗膜が剥離している)。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)不飽和ポリエステル樹脂、(II)水酸基を含有する重合性不飽和化合物及び(III
)下記式(1)で表される重合性不飽和化合物を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【化1】

(上記式(1)において、R1は、炭素数が2〜12のアルキレン基、nは0〜2の整数
を表し、nが2のとき、繰り返し単位中の各R1は、同一であっても異なっていてもよく
、R1の合計炭素原子数は4〜24であり、R2はメチル基又は水素原子である。)
【請求項2】
不飽和ポリエステル樹脂(I)、水酸基を含有する重合性不飽和化合物(II)及び式(1)で表される重合性不飽和化合物(III)の配合割合が、成分(I)、(II)及び(III)の合計重量を基準にして、成分(I)が25〜85重量%、成分(II)が5〜65重量%、成分(III)が10〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和ポリ
エステル樹脂組成物。
【請求項3】
不飽和ポリエステル樹脂(I)が、環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位を全構造単位の合計モル数に基づいて1〜40モル%含有する請求項1または2に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
不飽和ポリエステル樹脂(I)が、ビスフェノール類から誘導される単位を全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜10モル%含有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
不飽和ポリエステル樹脂(I)が、多価アルコールのアリルエーテル単位を全構造単位の合計モル数に基づいて5〜50モル%含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
不飽和ポリエステル樹脂(I)が、環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位、ビスフェノール類から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を同一分子内に含有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
不飽和ポリエステル樹脂(I)が、環状脂肪族不飽和多塩基酸から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を含有する不飽和ポリエステル樹脂(I−1)と、環状脂肪族不飽和多塩基酸以外の多塩基酸から誘導される単位、ビスフェノール類から誘導される単位及び多価アルコールのアリルエーテル単位を含有する不飽和ポリエステル樹脂(I−2)を含む樹脂混合物である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
不飽和ポリエステル樹脂(I)が、多価アルコールのアリルエーテル単位、テレフタル酸単位、及びエチレングリコール単位を同一分子内に含有する請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
さらに防錆剤を含有する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
防錆剤が、モリブデン酸塩系、リンモリブデン酸塩系、メタホウ酸塩系、シアナミド亜鉛カルシウム系から選ばれる少なくとも1種の防錆顔料である請求項9記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
さらに式(2)で表される芳香族アミンを含有する請求項1ないし10のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【化2】

(式中、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜5の置換していてもよいアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、R5は水素原子、炭
素数1〜20の置換していてもよいアルキル基、又はアリール基を表す。)
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含有する塗料組成物。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含有するパテ組成物。
【請求項14】
基材面に、請求項12または13に記載の組成物を塗布し、上塗り塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2006−206863(P2006−206863A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149347(P2005−149347)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】