説明

両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法

【解決手段】 式(1)
【化1】


(R1、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3は炭素数2〜10の1価炭化水素基。)
で示されるシリル基保護アリルアミンと、式(2)
【化2】


で示されるSi−H基含有有機ケイ素化合物とを白金触媒存在下反応させ、式(4)
【化3】


で示される化合物を得、その後脱保護して式(5)
【化4】


で示される両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物を得る。
【効果】 本発明によれば、異性体を含まない高純度の両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物を高収率で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体絶縁膜、液晶配向膜等に使用されるポリイミドの変性剤や、ポリウレタン、ポリアミドの変性剤として有用な、両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法としては、アリルアミンと両末端Si−H基含有シラン化合物とを白金触媒存在下ヒドロシリル化反応させて製造する方法が知られている(非特許文献1:Izv.Acad.Nauk SSSR Ser.Khim.,2249(1969))。しかしながら、この方法では反応が非常に遅く、製造に非常に長時間を要してしまうこと、また、多くの副反応を伴うため、収率が低く、かつ高純度の目的物が得られないという問題点がある。
【0003】
上記問題点を改善する方法として、N−トリメチルシリルアリルアミンと両末端Si−H基含有シラン化合物とをヒドロシリル化反応させた後、脱保護を行う方法(非特許文献2:J.Org.Chem.,24,119,(1959)、非特許文献3:Dokl.Akad.Nauk SSSR,179,600(1968))、アリルアミンとベンズアルデヒドとの脱水反応により得られるN−ベンジリデンアリルアミンと、両末端Si−H基含有シラン化合物とをヒドロシリル化反応させた後、脱保護を行う方法(特許文献1:特公平7−55953号公報)、N,N−ビストリメチルシリルアリルアミンと両末端Si−H基含有シラン化合物とをヒドロシリル化反応させた後、脱保護を行う方法(特許文献2:特開平11−322766号公報)がある。
【0004】
しかしながら、N−トリメチルシリルアリルアミンを原料として用いる方法では、ヒドロシリル化反応の際に末端ではなく内部に付加した異性体が多く生成し、純度が低下してしまうという問題点がある。また、両末端Si−H基含有シラン化合物としてテトラメチルジシロキサン等のシロキサン化合物を用いる場合には、水やアルコールで脱保護する際、脱保護により生成したトリメチルアルコキシシラン、トリメチルシラノールと目的とするシロキサンとの間の平衡化反応により、3−アミノプロピルペンタメチルジシロキサンが副生し、収率が低下するという問題点がある。
【0005】
N−ベンジリデンアリルアミンを用いる方法では、アリル基へのヒドロシリル化以外に、イミノ基へのヒドロシリル化反応も起こり、収率の低下を招くという問題点がある。
また、N,N−ビストリメチルシリルアリルアミンを原料として用いる方法では、原料のN,N−ビストリメチルシリルアリルアミンが、アリルアミンに2つのシリル基を導入しなければならないため製造が困難であり、また非常に高価であるという問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特公平7−55953号公報
【特許文献2】特開平11−322766号公報
【非特許文献1】Izv.Acad.Nauk SSSR Ser.Khim.,2249(1969)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,24,119,(1959)
【非特許文献3】Dokl.Akad.Nauk SSSR,179,600(1968)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、異性体が少ない高品質な両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物の工業的に有効な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、アリルアミンの1つのN−H基を、トリメチルシリル基より嵩高いシリル基で保護したアリルアミンを原料として両末端Si−H基含有有機ケイ素化合物とヒドロシリル化反応を行い、その後脱保護することにより、異性体が少ない高品質な両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物が得られること、また目的とする両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物がシロキサン化合物の場合、脱保護の際生成するアルコキシシラン、シラノール化合物が嵩高いシリル基を有しているため、目的とする両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物との間の平衡化反応が起こらず、収率の低下を招かないことを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3は炭素数2〜10の1価炭化水素基である。)
で示されるシリル基で保護されたアリルアミンと、下記一般式(2)
【化2】

[式中、Aは下記一般式(3)
【化3】

(式中、nは0〜100の整数である。)
で示される結合、又は炭素数1〜10の2価炭化水素基である。]
で示されるSi−H基含有有機ケイ素化合物とを白金触媒存在下で反応させ、下記一般式(4)
【化4】

(式中、R1、R2、R3、Aは上記と同様である。)
で示される化合物を得、その後脱保護することを特徴とする下記一般式(5)
【化5】

(式中、Aは上記と同様である。)
で示される両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アリルアミンの1つのN−H基を、トリメチルシリル基より嵩高いシリル基で保護したアリルアミンを原料として用いることにより、異性体を含まない高純度の両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法は下記の2つの反応工程からなるものである。
【0012】
【化6】

【0013】
ここで、R1、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基、好ましくは直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基である。また、R3は炭素数2〜10の1価炭化水素基、好ましくは直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基である。
【0014】
上記R1、R2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、テキシル基、オクチル基等が例示され、R3のアルキル基としては、メチル基を除いて上記と同様のものが挙げられる。
【0015】
また、Aは下記一般式(3)
【化7】

(式中、nは0〜100、好ましくは0〜10の整数である。)
で示される結合、又は炭素数1〜10の2価炭化水素基である。この場合、2価の炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、アルキレン基とアリーレン基とが結合した基等が挙げられる。なお、環状アルキレン基は、ノルボルニレン基等の橋かけを有するものであってもよい。
【0016】
上記ヒドロシリル化工程は、下記一般式(1)
【化8】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3は炭素数2〜10の1価炭化水素基である。)
で示されるシリル基で保護されたアリルアミンと、下記一般式(2)
【化9】

[式中、Aは下記一般式(3)
【化10】

(式中、nは0〜100の整数である。)
で示される結合、又は炭素数1〜10の2価炭化水素基である。]
で示される両末端Si−H基含有有機ケイ素化合物とを白金触媒存在下で反応させ、下記一般式(4)
【化11】

(式中、R1、R2、R3、Aは上記と同様である。)
で示される化合物とするものである。
【0017】
上記反応で用いられる上記一般式(1)で示されるシリル基で保護されたアリルアミンとしては、具体的にはエチルジメチルシリルアリルアミン、ジエチルメチルシリルアリルアミン、トリエチルシリルアリルアミン、t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、テキシルジメチルシリルアリルアミン、トリイソプロピルシリルアリルアミン、トリイソブチルシリルアリルアミン、t−ブチルジフェニルシリルアリルアミン、トリフェニルシリルアリルアミン、シクロヘキシルジメチルシリルアリルアミン、シクロヘキシルジエチルシリルアリルアミン等が例示される。中でも、トリエチルシリルアリルアミン、t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、テキシルジメチルシリルアリルアミン、トリイソプロピルシリルアリルアミン、トリイソブチルシリルアリルアミンが好ましい。
【0018】
上記一般式(1)で示されるシリル基で保護されたアリルアミンは、例えばアリルアミンと下記一般式(6)
123SiCl (6)
(式中、R1、R2、R3は上記と同様である。)
で示されるクロロシラン化合物とを反応させることにより製造できる。
【0019】
上記一般式(2)で示される両末端Si−H基含有有機ケイ素化合物としては、具体的には1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルシリル)シクロヘキサン、2,5−ビス(ジメチルシリル)ノルボルナン等が例示される。
【0020】
上記反応で用いられるシリル基で保護されたアリルアミンとSi−H基含有有機ケイ素化合物との配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、シリル基で保護されたアリルアミン1モルに対し、Si−H基含有有機ケイ素化合物0.2〜1モル、特に0.3〜0.6モルの範囲が好ましい。
【0021】
また、上記反応で用いられる白金触媒としては、具体的には塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金等が例示される。
【0022】
白金触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、シリル基で保護されたアリルアミン1モルに対し、0.000001〜0.01モル、特に0.00001〜0.001モルの範囲が好ましい。
【0023】
脱保護工程は、両末端シリル保護アミノ基含有有機ケイ素化合物の窒素原子上のシリル基を脱離させ、両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物とするものである。
【0024】
脱保護反応は水を用いて加水分解するか、又はアルコールを用いて加アルコール分解するか、あるいは水−アルコール系にて加水分解と加アルコール分解を同時に行うことにより実施できる。加アルコール分解反応に用いられるアルコールとしては、具体的にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン等が例示される。
【0025】
脱保護反応に用いられる水及び/又はアルコールの使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、シリル基で保護されたアリルアミン1モルに対し0.5〜100モル、特に0.8〜10モルの範囲が好ましい。
【0026】
脱保護反応は無触媒でも進行するが、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等の触媒を添加して行ってもよい。
【0027】
なお、上記ヒドロシリル化反応、脱保護反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
また、上記ヒドロシリル化反応、脱保護反応の反応温度は特に限定されないが、0〜150℃、特に10〜120℃が好ましい。反応時間も特に限定されないが、1〜20時間、特に1〜15時間が好ましい。反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
[合成例1] N−トリエチルシリルアリルアミンの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、アリルアミン314.1g(5.5mol)及びトルエン375mlを仕込んだ。トリエチルクロロシラン376.8g(2.5mol)を20〜40℃で2時間で滴下し、その後室温で1時間撹拌を行った。20%水酸化ナトリウム水溶液560gを加え、生じた塩を溶解し、水層を除いた後有機層を蒸留した。N−トリエチルシリルアリルアミンを沸点85〜86℃/3kPaの留分として341.6g得た(収率80%)。
【0031】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−トリエチルシリルアリルアミン34.3g(0.2mol)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.02mmol(白金原子換算)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン13.4g(0.1mol)を2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後、25℃でメタノール9.6g(0.3mol)を添加し、そのまま25℃で撹拌を行った。1時間後、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、トリエチルシリル基はすべて脱保護され、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとトリエチルメトキシシランに変換されていた。また、シロキサン平衡化反応で生成すると考えられる1−(3−アミノプロピル)−1,1−ジメチル−3,3,3−トリエチルジシロキサンは全く生成していなかった。反応液を蒸留し、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを沸点81−82℃/0.13kPaの留分として21.9g得た(収率89%)。得られた化合物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、異性体である1−(2−アミノプロピル)−3−(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンは生成していないことが確認された。
【0032】
[実施例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−トリエチルシリルアリルアミン17.1g(0.1mol)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.01mmol(白金原子換算)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン10.4g(0.05mol)を2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後、25℃でメタノール4.8g(0.15mol)を添加しそのまま25℃で撹拌を行った。1時間後、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、トリエチルシリル基はすべて脱保護され、1,5−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンとトリエチルメトキシシランに変換されていた。また、シロキサン平衡化反応で生成すると考えられる1−(3−アミノプロピル)−1,1−ジメチル−3,3,3−トリエチルジシロキサン等は全く生成していなかった。反応液を蒸留し、1,5−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンを沸点108−110℃/0.067kPaの留分として13.7g得た(収率85%)。
【0033】
[実施例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−トリエチルシリルアリルアミン51.4g(0.3mol)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.03mmol(白金原子換算)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン29.2g(0.15mol)を4時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後、25℃でメタノール14.4g(0.45mol)を添加しそのまま25℃で撹拌を行った。1時間後、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、トリエチルシリル基はすべて脱保護され、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンとトリエチルメトキシシランに変換されていた。反応液を蒸留し、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンを沸点150−158℃/0.024kPaの留分として37.0g得た(収率80%)。得られた化合物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンの異性体は生成していないことが確認された。
【0034】
[合成例2] N−トリイソプロピルシリルアリルアミンの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、アリルアミン376.9g(6.6mol)及びトルエン450mlを仕込んだ。トリイソプロピルクロロシラン578.4g(3.0mol)を20〜40℃で2時間で滴下し、その後70℃で6時間撹拌を行った。室温まで冷却後、20%水酸化ナトリウム水溶液650gを加え、生じた塩を溶解し、水層を除いた後有機層を蒸留した。N−トリイソプロピルシリルアリルアミンを沸点74〜75℃/0.2kPaの留分として557.2g得た(収率87%)。
【0035】
[実施例4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−トリイソプロピルシリルアリルアミン42.7g(0.2mol)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.02mmol(白金原子換算)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン13.4g(0.1mol)を4時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後、メタンスルホン酸0.01gを添加し、60℃でメタノール19.2g(0.6mol)を添加しそのまま60℃で撹拌を行った。6時間後、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、トリイソプロピルシリル基はすべて脱保護され、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとトリイソプロピルメトキシシランに変換されていた。また、シロキサン平衡化反応で生成すると考えられる1−(3−アミノプロピル)−1,1−ジメチル−3,3,3−トリイソプロピルジシロキサンは全く生成していなかった。反応液を蒸留し、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを沸点81−82℃/0.13kPaの留分として22.5g得た(収率91%)。得られた化合物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、異性体である1−(2−アミノプロピル)−3−(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンは生成していないことが確認された。
【0036】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−トリメチルシリルアリルアミン25.9g(0.2mol)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.02mmol(白金原子換算)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン13.4g(0.1mol)を2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後、25℃でメタノール9.6g(0.3mol)を添加し、そのまま25℃で撹拌を行った。1時間後、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、トリメチルシリル基はすべて脱保護され、反応は完結したが、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとトリメチルメトキシシラン以外に、シロキサン平衡化反応による3−アミノプロピルペンタメチルジシロキサンが大量に生成していた。また、異性体である1−(2−アミノプロピル)−3−(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが、目的とする1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンに対して7%含まれていることが確認された。
【0037】
[比較例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−トリメチルシリルアリルアミン25.9g(0.2mol)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.02mmol(白金原子換算)仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン19.4g(0.1mol)を4時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後、25℃でメタノール9.6g(0.3mol)を添加し、そのまま25℃で撹拌を行った。1時間後、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、反応は完結したが、異性体である1−(2−アミノプロピルジメチルシリル)−4−(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンが、目的とする1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンに対して9%含まれていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3は炭素数2〜10の1価炭化水素基である。)
で示されるシリル基で保護されたアリルアミンと、下記一般式(2)
【化2】

[式中、Aは下記一般式(3)
【化3】

(式中、nは0〜100の整数である。)
で示される結合、又は炭素数1〜10の2価炭化水素基である。]
で示されるSi−H基含有有機ケイ素化合物とを白金触媒存在下で反応させ、下記一般式(4)
【化4】

(式中、R1、R2、R3、Aは上記と同様である。)
で示される化合物を得、その後脱保護することを特徴とする下記一般式(5)
【化5】

(式中、Aは上記と同様である。)
で示される両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項2】
シリル基で保護されたアリルアミンが、トリエチルシリルアリルアミン、t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、テキシルジメチルシリルアリルアミン、トリイソプロピルシリルアリルアミン又はトリイソブチルシリルアリルアミンである請求項1記載の両末端アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−36697(P2006−36697A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219509(P2004−219509)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】