説明

両親媒性ブロックコポリマー強化熱硬化樹脂

(1)エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はそれらの混合物からなる群から選ばれた熱硬化性樹脂及び(2)前記熱硬化性樹脂中に分散された両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物;それから製造される繊維強化プラスチック(FRP)、被覆及び複合材料;並びにこれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のような熱硬化性樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)、被覆及び複合材料;並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂は耐熱性及び耐薬品性で知られている。これらは良好な機械的性質も示すが、靭性を欠き、非常に脆い傾向がある。このことは、それらの架橋結合密度又はTgが増加する場合に特に言えることである。
【0003】
エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂を、それらに種々のエラストマー材料を組み入れることによって補強又は強化する試みがなされている。強化(toughened)エポキシ樹脂の例は特許文献1〜12に開示されている。
【0004】
エポキシ及びエラストマーブレンド技術の要約は、非特許文献1に記載されている。主に、エポキシ化合物を強化しようとする試みは、カルボキシルを末端とするブタジエン−アクリロニトリルコポリマーのような液体ゴムの使用を中心としてきた。いくつかのアミン硬化系においては、ゴムは別れた(distinct)粒子中に分離する。しかし、相容性及び最適な硬化特性を保証するためには、ゴムは最初にエポキシ樹脂で前処理しなければならず、このようなゴムは樹脂に対して潜在的な反応性を示さない。
【0005】
従来の技術は、適切なゴム粒子形態を開発し且つ強化効果を得るためには、特殊な硬化条件に従うことを必要とする。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,923,922号
【特許文献2】米国特許第4,221,697号
【特許文献3】米国特許第4,117,038号
【特許文献4】米国特許第3,856,883号
【特許文献5】米国特許第3,496,250号
【特許文献6】米国特許第4,082,895号
【特許文献7】米国特許第3,496,250号
【特許文献8】米国特許第3,316,195号
【特許文献9】米国特許第3,499,949号
【特許文献10】米国特許第3,509,086号
【特許文献11】ヨーロッパ特許出願第78,527号(1983年11月5日公開)
【特許文献12】特開昭55−018401号
【0007】
【非特許文献1】Rubber−Modified Thermoset Resins,American Chemical Society(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱硬化性の樹脂ブレンドの性能を硬化スケジュールから独立させることができ、従って、より頑丈な被覆を可能にする技術を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、(1)エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はそれらの混合物からなる群から選ばれた熱硬化性樹脂及び(2)エポキシ樹脂、エポキシビニル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はそれらの混合物中に分散された両親媒性ブロックコポリマーを含んでなる組成物である。
【0010】
第2の態様において、本発明は、(a)両親媒性ブロックコポリマーが分散された、エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びそれらの混合物からなる群から選ばれた硬化された熱硬化性樹脂並びに(b)硬化前にマトリックス樹脂中に埋め込まれた補強用繊維を含んでなる複合材料である。
【0011】
第3の態様において、本発明は、第1の態様の組成物、好ましくはエポキシ樹脂からの組成物並びに適当な顔料、触媒及び添加剤を含んでなる粉体被覆である。
【0012】
第4の態様において、本発明は、(1)両親媒性ブロックコポリマーを少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はそれらの混合物とブレンドし;(2)強化用繊維に、(1)において得られたブレンドを含浸させ;(3)含浸繊維を少なくとも2層をレイアップして積層物を形成し;そして(4)前記積層物を、エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はそれらの混合物を硬化させるのに充分な温度及び時間で加熱することによって、硬化し、補強され、強化されたエポキシ樹脂、エポキシビニル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を含有する積層体を得ることを含んでなる、硬化し、補強され、強化されたエポキシ樹脂、エポキシビニル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂を含有する積層体の製造方法である。
【0013】
第5の態様において、本発明は、
(1)補強用基材を、熱可塑性樹脂様粘着付与剤と、前記粘着付与剤が前記基材に粘着するが依然として熱可塑性であり且つ更に反応できるように前記粘着付与剤のガラス転移温度より高い温度で接触させて、プレフォームを生成させ;そして
(2)工程(1)において生成された1つ又はそれ以上の前記プレフォームと、両親媒性ブロックコポリマー及び少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はそれらの混合物のブレンドを含むマトリックス樹脂とを、前記粘着付与剤及びマトリックス樹脂が硬化されるような条件下で接触させて、複合材料を形成せしめる
ことを含んでなる、熱硬化性樹脂から、好ましくはエポキシビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂から複合材料を製造する方法である。
【0014】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明及び添付した「特許請求の範囲」から明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において有用なエポキシ樹脂としては、種々のエポキシ化合物が挙げられる。典型的には、エポキシ化合物は、ポリエポキシドとも称されるエポキシ樹脂である。本発明において有用なポリエポキシドは、モノマー(例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ノボラック系エポキシ樹脂及びトリス−エポキシ樹脂)、より高分子量の改良型樹脂(advanced resin)(例えばビスフェノールAで改良されたビスフェノールAのジグリシジルエーテル)又はホモポリマー若しくはコポリマーへ重合された不飽和モノエポキシド(例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなど)であることができる。最も望ましくは、エポキシ化合物は分子当たり平均して少なくとも1個の側鎖又は末端1,2−エポキシ基(即ち隣接エポキシ基)を含む。
【0016】
有用なポリエポキシドの例としては、多価アルコール及び多価フェノールの両者のポリグリシジルエーテル;ポリグリシジルアミン、ポリグリシジルアミド、ポリグリシジルイミド、ポリグリシジルヒダントイン、ポリグリシジルチオエーテル、エポキシ化脂肪酸又は乾性油、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化ジ−不飽和酸エステル、エポキシ化不飽和ポリエステル及びこれらの混合物が挙げられる。多価フェノールから製造された多数のポリエポキシドには、例えば米国特許第4,431,782号に開示されたものがある。ポリエポキシドは、一価、二価及び三価フェノールから製造することができ、ノボラック樹脂を含むことができる。ポリエポキシドは、エポキシ化シクロオレフィン;並びにアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル及びアリルグリシジルエーテルのポリマー及びコポリマーであるポリマーポリエポキシドを含むことができる。適当なポリエポキシドは、米国特許第3,804,735号;第3,892,819号;第3,948,698号;第4,014,771号及び第4,119,609号;並びにLee及びNeville,Handbook of Epoxy Resins,Chapter 2,McGraw Hill,N.Y.(1967)に開示されている。
【0017】
本発明はポリエポキシド全般に適用できるが、好ましいポリエポキシドは、エポキシド基当たりの重量が150〜2,000である多価アルコール又は多価フェノールのグリシジルポリエーテルである。これらのポリエポキシドは、通常、少なくとも2モルのエピハロヒドリン又はグリセロールジハロヒドリンを1モルの多価アルコール又は多価フェノール及び前記ハロヒドリンと結合するのに充分な量の苛性アルカリと反応させることによって製造される。生成物は、1個より多いエポキシド基、即ち、1より大きい1,2−エポキシ当量によって特徴づけられる。
【0018】
本発明において有用なポリエポキシドは、脂環式ジエンから得られたエポキシドであることもできる。これらのポリエポキシドは、熱によって、カチオンによって又は光開始によって(例えば紫外線開始硬化)硬化させることができる。いくつかの脂環式エポキシド、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート;1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン;ビス(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イルメチルヘキサン二酸エステル;3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートメチルエステル;及びそれらの混合物がThe Dow Chemical Companyによって製造販売されている。
【0019】
ポリエポキシドはブチル及びそれより高級の脂肪族グリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル又はクレジルグリシジルエーテルのような微量のモノエポキシドを反応性希釈剤として含むこともできる。このような反応性希釈剤は、一般に、使用粘度(working viscosity)を低下させるために及び配合物により良好な湿潤性を与えるために、ポリエポキシド配合物に添加される。当業界で知られているように、モノエポキシドはポリエポキシド配合物の化学量論に影響を与え、その変化に合わせるために、硬化剤の量及び他のパラメーターを調整する。
【0020】
本発明の実施において使用できるエポキシビニルエステル樹脂は、米国特許第6,329,475号に記載されている。好ましいエポキシビニルエステル樹脂は、The Dow Chemical Companyによって(登録商標)DERAKANEとして供給されるものである。特に好ましいのは、約45%のモノマースチレンを含む、DERAKANE 411−45エポキシビニルエステル樹脂として知られる汎用樹脂である。使用できる他のDERAKANEエポキシビニルエステル樹脂としては、例えば、約50%のモノマースチレンを含むDERAKANE 411−C−50エポキシビニルエステル樹脂;約36%のモノマースチレンを含むDERAKANE 470−36エポキシビニルエステル樹脂;約30%のモノマースチレンを含むDERAKANE 470−30エポキシビニルエステル樹脂;約40%のモノマースチレンを含む臭素化ビニルエステル樹脂である、DERAKANE 510−A−40エポキシビニルエステル樹脂;約45%のモノマースチレンを含むDERAKANE 790エポキシビニルエステル樹脂;約40%のモノマースチレンを含む流動化エポキシビニルエステル樹脂である、DERAKANE 8084エポキシビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0021】
本発明の実施において使用できる不飽和ポリエステル樹脂はよく知られている。これらは、ポリマー主鎖に沿った反復単位として、カルボン酸エステル基及び炭素−炭素二重結合を含む。これらは通常、(a)不飽和を与えるためのエチレン性不飽和ジカルボン酸若しくはポリカルボン酸又はそれらの無水物、(b)樹脂を改質するための飽和ジカルボン酸及び(c)ジオール又はポリオールの縮合によって製造される。不飽和ポリエステルは一般式:
(R−O−C(=O)−R’−C(=O)−O)x(R−O−C(=O)−CH=CH−C(=O)−O)y
[式中、R及びR’はそれぞれ、ジオール及び飽和酸中のアルキレン基又はアリーレン基であり、x及びyは、組成物及び縮合条件に依存する変数である]
を有する。
【0022】
不飽和ポリエステルの製造に用いられる典型的なジカルボン酸若しくはポリカルボン酸又はそれらの無水物としては、フタル酸、イソフタル酸若しくはテレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸、アリルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、クエン酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、テトラヒドロフタル酸、チオジグリコール酸が挙げられる。これらの酸及び無水物は独立して又は一緒に使用できる。
【0023】
不飽和ポリエステルの製造に使用される典型的な二価又は多価化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、2−ブテン−1,4−ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールジオキシエチルエーテル、ビスフェノールジオキシプロピルエーテル及びネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0024】
粘度を低下させるため及び熱硬化製品を生成させるために、種々の反応性希釈剤又はモノマーを不飽和ポリエステルに添加することができる。一般に、反応性希釈剤又はモノマーは、硬化性組成物中に存在するする全ての補強用粒子の重量を除いた硬化性組成物の総重量に基づき、100重量部当たり10〜25重量部、好ましくは10〜20重量部の量で使用される。このような反応性モノマーの具体例としては以下のものが挙げられる。スチレン、クロロスチレン類;メチルスチレン類、例えばs−メチルスチレン及びp−メチルスチレン;ビニルベンジルクロリド、ジビニルベンゼン、インデン、アリルスチレン、アリルベンゼン;不飽和エステル、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル並びにアクリル酸及びメタクリル酸の他の低級脂肪族エステル;酢酸アリル、フタル酸ジアリル、コハク酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、燐酸トリアリル及びジエチレングリコールビス(アリルカーボネート);燐酸トリアリル及び他のアリルエステル;ビニルトルエン、クロロエンド酸ジアリル(diallyl chloroendate)、テトラクロロフタル酸ジアリル、エチレングリコールジエタクリレート;及びアミド、例えばアクリルアミド;塩化ビニル;並びにそれらの混合物。これらの例の中では、スチレンが好ましい。
【0025】
硬化触媒も不飽和ポリエステル、エポキシビニルエステル樹脂若しくはそれらの混合物又は少なくとも1つの成分が不飽和ポリエステル若しくはエポキシビニルエステル樹脂である他の混合物に添加することができる。このような硬化触媒の例としては、遊離基開始剤、例えばアゾイソブチロニトリルを含むアゾ化合物並びに有機ペルオキシド、例えば、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオクトエート、ベンゾイルペルオキシド;メチルエチルケトンペルオキシド、アセト酢酸ペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンヒドロペルオキシド及びジクミルペルオキシドが挙げられる。メチルエチルケトンペルオキシド及びベンゾイルペルオキシドが好ましい。好ましくは、触媒は、硬化性組成物中に存在する全ての補強用粒子の重量を除いた硬化性組成物の総重量に基づき、0.03〜2.5重量部の量で使用される。
【0026】
本発明の実施において使用できる両親媒性(amphiphilic)ブロックコポリマーとしては、ポリ(イソプレン−ブロック−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PI−b−PEO)、ポリ(エチレンプロピレン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PEP−b−PEO)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PB−b−PEO)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド−b−イソプレンブロックコポリマー(PI−b−PEO−PI)及びポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド−メチルメタクリレート)ブロックコポリマー(PI−b−PEO−b−PMMA)が挙げられるが、これらに限定するものではない。更に、好ましい両親媒性ブロックコポリマーとしては、PEOが任意の適当な親水性ポリマーで置き換えられた前記ブロックコポリマーが挙げられる。本発明において有用な最も好ましい両親媒性ブロックコポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(エチレン−altプロピレン)(PEO−PEP)である。
【0027】
本発明の実施において使用する両親媒性ブロックコポリマーの量は、被覆中のポリマーの当量及び組成物から製造される製品の所望の性質を含む種々の要因によって決まる。一般に、使用される両親媒性ブロックコポリマーの量は、樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%、最も好ましくは2.5〜5重量%である。
【0028】
本発明のエポキシ組成物は、種々の工業的用途又は他のエポキシ用途、例えば、被覆、複合材料、電気用積層体のような積層体、ガラス繊維サイジング及び被覆中の光沢低下助剤、封入剤に使用できる。
【0029】
被覆
工業用被覆は、基材に適用される表面保護被覆(ペイント被覆)であり、典型的には装飾用の連続フィルムの形成及び基材の保護のために硬化又は架橋される。保護被覆は通常、有機ポリマー結合剤、顔料及び種々のペイント添加剤を含み、ポリマー結合剤は顔料用の流体ビヒクルとして働き、流体ペイント被覆にレオロジー特性を与える。硬化又は架橋時に、ポリマー結合剤は硬化し、顔料に対する結合剤の役割を果たし、乾燥ペイントフィルムを基材に付着させる。顔料は有機又は無機であることができ、耐久性及び硬度の他に不透明度及び色に機能的な影響を与える。保護被覆の製造は、ポリマー結合剤の製造、成分材料の混合、ポリマー結合剤中の顔料の粉砕及び商業規格への可能な減粘(thinning)を含む。
【0030】
本発明の組成物並びに適当な顔料、触媒及び添加剤を含むエポキシ粉体ペイントを得ることができる。これらの粉体ペイント及びそれらからの被覆は、非常に高く評価される性質の、驚異的に良好な組合せを有する。ポリマー、架橋剤、触媒及び他の成分の選択及び量に応じて、例えば良好な流動性、良好な耐薬品性、高い光沢度、高い耐引掻き性、良好な機械的性質、良好な屋外耐久性及び良好な色安定性を得ることができる。
【0031】
複合材料
複合材料の製造方法は知られており、例えば、米国特許第5,427,726号に記載されている。
【0032】
一般に、複合材料は、本発明の組成物から、
(1)補強用基材を粘着付与剤と、前記粘着付与剤が前記基材に粘着するが依然として熱可塑性であり且つ更に反応できるように前記粘着付与剤のガラス転移温度より高い温度で接触させて、プレフォームを製造し;そして
(2)工程(1)において製造された1つ又はそれ以上の前記プレフォームと、両親媒性ブロックコポリマー及び少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂のブレンドを含むマトリックス樹脂とを、前記粘着付与剤及びマトリックス樹脂が硬化されるような条件下で接触させて、複合材料を形成せしめる
ことによって製造できる。
【0033】
本明細書中で使用する用語「粘着付与剤(tackifier)」は、樹脂を硬化させる温度より低いガラス転移温度及び/又は融点を有する樹脂のような、熱可塑性を示す樹脂を意味する。粘着付与剤はまた、熱可塑性様樹脂であることもできる。「熱可塑性様(thermoplastic−like)」樹脂は、樹脂が熱成形性であるようなガラス転移温度及び/又は融点のような熱可塑性を示す熱硬化性樹脂である。ガラス転移温度又は融点は、樹脂を完全に硬化させることなく熱成形できるように、熱可塑性様樹脂がゆっくりと硬化するか又は全く硬化しないように充分に低くなければならない。
【0034】
本発明の実施においてプレフォームの製造に使用できる粘着付与剤は、プレフォームを使用するその後の成形プロセスにおいて使用される化合物とも相容性である樹脂材料である。適当な粘着付与剤としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリシアネートエステル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂及びこれらの組合せが挙げられる。
【0035】
積層体
電気用積層体は、基材に本発明のエポキシ組成物を含浸させた後、その組成物を硬化させることによって製造できる。
【0036】
本発明の組成物を含浸させることができる基材としては、セルロース系基材、例えばクラフト紙及びリンター紙、ガラス基材、例えばガラス布、ガラス不織布並びにガラス混合紙が挙げられる。
【0037】
セルロース系の紙を用いる場合には、樹脂組成物の含浸前に、セルロース紙をメラミン樹脂などで処理するのが好ましい。
【0038】
ガラス基材を用いる場合には、ガラス基材をビニルシランのようなカップリング剤で予め処理するのが好ましい。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂組成物(A段階)は、120℃〜260℃の温度の熱に暴露することによって硬化されて、C段階樹脂(完全に硬化された樹脂又は達成可能な最大硬化度まで硬化された積層体)となる。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、本発明を説明するために示すものであるので、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。特に断らない限り、全ての部及び%は重量基準である。
【0041】
実施例1
複合材料へのエポキシビニルエステル中ブロックコポリマーの使用
ブレンドの製造:
DERAKANE(登録商標)MOMENTUM(登録商標)411−350ビニルエステル樹脂(120g)を、8オンスのねじ口びん中に注いだ。PEO−PEPブロックコポリマー(6及び3g)を添加して、それぞれ5%及び2.5%の配合濃度を得た(前記登録商標は、The Dow Chemical Companyの登録商標)。びんを閉じ、混合物を約8〜10時間にわたってローラーコンベヤー上で室温で攪拌した。赤外線加熱ランプ下でこの操作を行うと、混合プロセスが促進されて、時間が2〜3時間に短縮されるであろう。混合物は、メチルエチルケトンペルオキシドで触媒し、遠心分離によってガス抜きし、次いで二つ割り金型中に注いだ。この金型は、混合操作前に組み立てた。この金型は、金属ベースプレート、適当な厚さを与えるための額縁及びカバープレートを含む。完全な硬化後の注型品の容易な除去を助けるために、接触面としてDURAFOILを用いた。一連のメカニカルファスナーを用いて、金型装置全体を所定の位置に保持した。硬化サイクルは、24時間の室温硬化、その後の、100℃で3時間の後硬化を含む。完全な硬化後に、サンプルを室温までゆっくりと冷却し、金型装置を分解して、透明な注型品を取り出した。得られた注型品は厚さが約3.2mmであった。
【0042】
DMTA(動的機械熱分析)のために、概略で幅12mm及び長さ25mmの長方形のサンプルを切り取った。これらの実験は、固体長方形サンプル固定金具を用いて、Rheometrics ARESレオメーター上で実行した。最初にサンプルを−110℃まで冷却し、次いで220℃まで3℃/分の一定した温度傾斜(ramp)を適用することによって、固定周波数(1Hz)ねじれモード実験を実施した。完全な硬化が起こったことを確認するために、且つまた、第1走査の間に主転移に変化が起こったどうかを観察するために、必ず第2走査を実施した。サーボ液圧Instronテストフレーム上で幅25mm及び高さ25mmのコンパクト引張試験片について破壊試験を実施した。シェブロンノッチを最初に機械によって付け、続いて、シェブロンノッチ中に慎重にカミソリの刃を挿入することによってスタータークラックを作成した。次いで、サンプルを、ASTM D5045試験基準に従って把持し、試験した。最後に、破壊後、サンプルを破面のフォレンジック・スタディー(forensic study)に供して、表面の及びバルク中の形態を調べた。表Iは、この特別な系で収集された主要な物理的機械的データを記載している。図1は、完全に硬化されたDERAKANE 411−350プラックにおいて生じたブロックコポリマーの形態を示している。
【0043】
同様な結果が、不飽和ポリエステルを用いた場合に得られ、同様な靭性の改善が、対応する配合レベルで見られた。例えば2.5%のPEO−PEP配合量においては、KICの26%の改善を観察できた。表中に示されるように、サンプルは全て完全硬化後に透明性を持続した。
【0044】
実施例2
UV硬化エポキシ被覆中へのブロックコポリマーの使用
UV硬化エポキシ被覆は、Irgacure 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド)、Irgacure 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパンノン)及びXZ 92478.00(Tgが40℃の二官能価固体エポキシアクリレート)を含んでなる標準黒色UV硬化粉体被覆であった。この粉体被覆は、PRIZM 24mm押出機中で成分を溶融ブレンドし、溶融ブレンドをチルドロールフレーカー中で再凝固させ、次いで、得られたフレークをHosokawa ACM−2粉砕機中で粉砕することによって製造した。
【0045】
UV硬化エポキシ被覆の改質方法
上で製造された粉体被覆9.5gをアルミニウムパンに加えた。粉体がすっかり溶融されるまで、このアルミニウムパンを150℃のホットプレート上に置いた。アルミニウムパンを分析スケール中に置き、アルミニウムパンにPEO−PEPブロックコポリマーの0.5gのサンプルを加えた。アルミニウムパンをホットプレート上に戻し、溶融粉体を、低速モーターに取り付けられたコーンスピンドルによって5分間攪拌した。サンプルを、再凝固するまで冷却し、次いで小型実験室用粉砕機(コーヒーグラインダー)中で微粉に粉砕した。
【0046】
吹き付け
改質された及び未改質のUV硬化エポキシ被覆組成物のサンプルを、錫メッキプレート全体に、75kVに設定されたNordson Sure Coatスプレーガンで静電吹付した。サンプルを、溶融/流動及び基材の被覆のために対流式オーブン中に130℃において2分間入れた。次いで、それらを紫外線に供した(ガリウムドープ水銀球(V型),300W/in,5ft/分)。最後に、錫層をアマルガムにし且つフィルムを剥離するために金属水銀を用いて、錫メッキプレートから独立フィルムをはぎ取った。
【0047】
図2に示すように、ガラス転移温度(Tg)は依然として126℃であり、25℃におけるガラス状態の弾性率は40%低下した。この低下は、わずかであるが、被覆の可撓性を著しく改善する。Tg後のゴム状態の貯蔵弾性率の曲線から観察されるように、架橋結合密度の変化は起こっていない。図3は、TEMによって、完全に硬化されたフィルム中のブロックコポリマーの形態を示す。動的機械的スペクトル分析法は、ガラス転移Tgの低下がないことを示している。
【0048】
透過電子顕微鏡法(TEM)は、よく知られた顕微鏡検査技術であり、例えば、米国特許第6,287,992号に記載されている。
【0049】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】完全に硬化されたDERAKANE 411−350ビニルエステル樹脂プラック中において生じたブロックコポリマーの形態を示す。
【図2】、引張−引張モードでRSAIII DMTAを用いて測定した、硬化薄膜に対するブロックコポリマー添加の粘弾性応答を示す。
【図3】TEM(透過電子顕微鏡法)によって、完全に硬化したフィルム中のブロックコポリマーの形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はそれらの混合物からなる群から選ばれた熱硬化性樹脂及び(2)前記熱硬化性樹脂中に分散された両親媒性ブロックコポリマーを含んでなる組成物。
【請求項2】
前記両親媒性ブロックコポリマーがポリ(イソプレン−ブロック−エチレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンプロピレン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド−b−イソプレンブロックコポリマー、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド−メチルメタクリレート)ブロックコポリマー及びポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(エチレン−altプロピレン)ブロックコポリマーからなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記両親媒性ブロックコポリマーがポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(エチレン−altプロピレン)である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記両親媒性ブロックコポリマーが、組成物の重量に基づき、0.1〜30重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が多価アルコール及び多価フェノールの両者のポリグリシジルエーテル;ポリグリシジルアミン、ポリグリシジルアミド、ポリグリシジルイミド、ポリグリシジルヒダントイン、ポリグリシジルチオエーテル、エポキシ化脂肪酸又は乾性油、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化ジ−不飽和酸エステル、エポキシ化不飽和ポリエステル及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂がエポキシド基当たりの重量が150〜2,000である多価アルコール又は多価フェノールのグリシジルポリエーテルからなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、2−(3’、4’−エポキシシクロヘキシル)―5,1”−スピロ−3”、4”−エポキシシクロヘキサン−1,3−ジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートメチルエステル及びビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートからなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記エポキシビニルエステル樹脂が45%のモノマースチレンを含むエポキシビニルエステル樹脂;50%のモノマースチレンを含むエポキシビニルエステル樹脂;36%のモノマースチレンを含むエポキシビニルエステル樹脂;30%のモノマースチレンを含むエポキシビニルエステル樹脂;40%のモノマースチレンを含む臭素化ビニルエステル樹脂;45%のモノマースチレンを含むエポキシビニルエステル樹脂及び40%のモノマースチレンを含む流動化エポキシビニルエステル樹脂からなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記不飽和ポリエステル樹脂が一般式:
(R−O−C(=O)−R’−C(=O)−O)x(R−O−C(=O)−CH=CH−C(=O)−O)y
[式中、R及びR’は、それぞれ、ジオール及び飽和酸中のアルキレン基又はアリーレン基であり、x及びyは組成物及び縮合条件によって異なる変数である]
を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記飽和ポリエステル樹脂が(a)不飽和を与えるためのエチレン性不飽和ジカルボン酸若しくはポリカルボン酸又はそれらの無水物、(b)樹脂を改質するための飽和ジカルボン酸及び(c)ジオール又はポリオールの縮合によって製造される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
(a)ポリエチレンオキシド−ポリエチレンプロピレン(PEO−PEP)ジ−ブロックコポリマーが分散された、エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はそれらの混合物からなる群から選ばれた硬化された熱硬化性樹脂;並びに(b)硬化前に前記熱硬化性樹脂中に埋め込まれた補強用繊維を含んでなる複合材料。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物並びに顔料、触媒及び添加剤を含んでなる粉体被覆組成物。
【請求項13】
(1)ポリエチレンオキシド−ポリエチレンプロピレン(PEO−PEP)ジ−ブロックコポリマーを少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂とブレンドし;(2)補強用繊維に、(1)で得られたブレンドを含浸させ;(3)含浸繊維の少なくとも2層をレイアップして積層物を形成し;そして(4)前記積層物を、エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂を硬化させるのに充分な温度及び時間で加熱することによって、硬化し、補強され、強化されたエポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂を含有する積層体を得ることを含んでなる、硬化し、補強され、強化されたエポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂を含有する積層体の製造方法。
【請求項14】
(1)補強用基材を粘着付与剤と、前記粘着付与剤が前記基材に粘着するが依然として熱可塑性であり且つ更に反応できるように前記粘着付与剤のガラス転移温度より高い温度で接触させて、プレフォームを生成させ;そして
(2)工程(1)において生成された1つ又はそれ以上の前記プレフォームと、ポリエチレンオキシド−ポリエチレンプロピレン(PEO−PEP)ジ−ブロックコポリマーと少なくとも1種の硬化性エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂とのブレンドを含んでなるマトリックス樹脂とを、前記粘着付与剤及びマトリックス樹脂が硬化されるような条件下で接触させて、複合材料を形成せしめる
ことを含んでなる複合材料の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を含んでなる被覆。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を含んでなる複合材料。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物を含んでなる電気用積層体。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を含んでなるガラス繊維サイジング。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物を含んでなる光沢低下助剤。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を含んでなる封入剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−530771(P2007−530771A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506259(P2007−506259)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009764
【国際公開番号】WO2005/097893
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【出願人】(505450663)ユニバーシティ オブ ミネソタ (3)
【Fターム(参考)】