説明

両面接着加飾シート

【課題】IMD法を利用して熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾する過程においても、熱可塑性エラストマーと接着する接着剤が劣化し難い両面接着加飾シートを提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマーと接着する、水酸基を有するポリマーを含む第1接着剤からなる第1接着層1、グラビアインキ用結合剤を含むバリア層8、2液硬化型ウレタン樹脂を含む図柄層2、及び成形樹脂と接着する第2接着剤からなる第2接着層3を有する、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾するために使用される両面接着加飾シート9。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマーと硬質樹脂を結合及び加飾するために使用される両面接着加飾シートに関し、特に、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾するために使用される両面接着加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
相互の接着性に乏しい2種類の樹脂を結合及び加飾して2色成形品を製造する場合、両面接着加飾シートを用いて一方の樹脂からなる成形品ともう一方の樹脂からなる成形品を貼り合わせる方法が考えられる(特許文献1)。
【0003】
図2は、両面接着加飾シートの層構造の一例を示す断面図である。両面接着加飾シート4は、第1樹脂と接着する第1接着剤からなる第1接着層1、図柄層2、及び第2樹脂と接着する第2接着剤からなる第2接着層3を有している。図柄層2は、一般に、グラビア印刷インキを用いて形成される。
【0004】
そして、両面接着加飾シートの製造、保管及び取扱いを容易にするために、第1接着層1の面上には剥離可能に接着された剥離シート7が備えられている。一般に、剥離シート7は基体シート5及び離型層6を有している。離型層6は、一般に、メラミン樹脂を含む離型剤から形成される。
【0005】
また、2色成形品の製造方法として、樹脂の型内成形同時加飾法(IMD法)を利用して、それぞれの樹脂を射出成形すると同時に両面接着加飾シートの各面に接着させる方法も考えられる。
【0006】
図3〜図5は、両面接着加飾シートを用いて2色成形品を射出成形し、金型内同時加飾する方法の一例を示す工程図である。まず、図3(a)に示されるように、第1キャビティ型11の内部に剥離シート7及び両面接着加飾シート4を送り込み、キャビティ面に離型シート7側の面を沿わせ、コア型12を閉じて、1次成形空間13を形成する。次いで、図3(b)に示されるように、コア型12の第2樹脂射出口14から第2樹脂を射出して、両面接着加飾シートに接着した第2樹脂成形部15を形成する。
【0007】
尚、このとき、両面接着加飾シート4には溶融した第2樹脂の熱が印加されることになる。そのため、両面接着加飾シート4の図柄層(非表示)は熱によって損傷又は乱れ易く、インキ飛び、と称される欠陥を発生し易く、耐熱性に優れている必要がある。
【0008】
一般に、グラビア印刷インキの結合剤には2液硬化型ウレタン樹脂、塩化酢酸ビニル樹脂及びアクリル樹脂等が使用される。2液硬化型ウレタン樹脂に比べて塩化酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂は耐熱性に劣る。それゆえ、IMD法に使用する両面接着加飾シートでは、その図柄は、実質的に2液硬化型ウレタン樹脂から形成されている。
【0009】
第2樹脂成形部15が冷却した後、図4(c)に示されるように、剥離シート7と接していた第1キャビティ型11を開き、図4(d)に示されるように、剥離シート7を除去する。
【0010】
図5(e)に示されるように、コア型12に対して第2キャビティ型16を閉じて、2次成形空間17を形成する。次いで、図5(f)に示されるように、第2キャビティ型16の第1樹脂射出口18から第1樹脂を射出して第1樹脂成形部19を形成する。第1樹脂成形部19が冷却した後、第2キャビティ型16又はコア型12を開き、形成された2色成形品を取り出す。
【0011】
図6は2色成形品の構造の一例を示す断面図である。この2色成形品は第1樹脂からなる第1樹脂成形部19及び第2樹脂からなる第2樹脂成形部15が両面接着加飾シート4によって結合されている。また、両面接着加飾シートは図柄を有しており、この2色成形品は両面接着加飾シート4によって装飾されている。
【0012】
つまり、第1樹脂成形部又は第2樹脂成形部は透明性を有し、両面接着加飾シート4の図柄は観者に認識される。ある一形態においては、第1樹脂成形部は透明性を有し、2色成形品の外側ないし表側、即ち観者が観賞する側を構成する。
【0013】
ところで、最近では、消費者のニーズが多様化しており、2色成形品にも様々な種類の材料特性及び外観デザインが要求されるようになっている。その一例として、エラストマーと硬質樹脂を組み合わせた2色成形品が挙げられる。硬質な樹脂部材の表面を弾性にして耐衝撃性が付与されたり、エラストマー特有の質感がデザインに利用されるのである。
【0014】
つまり、例えば図6の2色成形品において、第1樹脂成形部19としてエラストマーを使用し、第2樹脂成形部として硬質樹脂を使用する場合である。かかる2色成形品は図3〜図5に例示した2色成形品の製造方法において、第1樹脂として熱可塑性エラストマーを使用し、第1接着剤として熱可塑性エラストマーと接着する接着剤を使用した両面接着加飾シートを使用して、製造される。そして、熱可塑性エラストマーと接着する接着剤は知られている。
【0015】
しかし、熱可塑性エラストマーと接着する接着剤は劣化し易く、図2に示されるような層構造を有し、IMD法に使用する両面接着加飾シート4において、単に第1接着剤層1として、熱可塑性エラストマーと接着する公知の接着剤を使用したのでは、次の問題が発生することが、明らかになった。
【0016】
即ち、図4(c)〜図4(d)に示されるように、第2樹脂成形部15を形成した後、剥離シート7を除去する際に、剥離シート7が両面接着加飾シート4に強固に固着しており、剥離が困難になる。また、剥離シート7を剥離した後は両面接着加飾シート4の熱可塑性エラストマーに対する接着力が低下し、得られた2色成形品から熱可塑性エラストマーの樹脂成形部が剥離し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−44189
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、IMD法を利用して熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾する過程においても、熱可塑性エラストマーと接着する接着剤が劣化し難い両面接着加飾シートを提供することにある。
【0019】
本発明者らは、従来の両面接着加飾シートにおいて、熱可塑性エラストマーと接着する接着剤が劣化する原因が、隣接する図柄層にあると考えた。IMD法に用いる図柄は2液硬化型ウレタン樹脂から形成され、図柄層には、低分子の反応性成分、例えばイソシアネート化合物が未反応のまま残存している可能性があるからである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、熱可塑性エラストマーと接着する、水酸基を有するポリマーを含む第1接着剤からなる第1接着層、グラビアインキ用結合剤を含むバリア層、2液硬化型ウレタン樹脂を含む図柄層、及び成形樹脂と接着する第2接着剤からなる第2接着層を有する、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾するために使用される両面接着加飾シートを提供する。
【0021】
ある一形態においては、前記第1接着剤に含まれるポリマーがポリヒドロキシエーテル、ポリビニルアルコール及びフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0022】
ある一形態においては、前記第2接着剤が塩化酢酸ビニル、アクリル及びウレタンからなる群から選択される少なくとも一つのポリマーを含む。
【0023】
ある一形態においては、前記バリア層に含まれるグラビアインキ用結合剤がアクリル、塩化酢酸ビニル及びエポキシからなる群から選択される少なくとも一つのポリマーを含む。
【0024】
ある一形態においては、前記第1接着層の面に剥離可能に接着された剥離シートを更に有する。
【0025】
ある一形態においては、前記成形樹脂は射出成形されると同時に第2接着層に接着される。
【0026】
また、本発明は、2色成形用射出成形装置の金型に、上記いずれかの両面接着加飾シートを設置する工程;
成形樹脂を射出成形し、同時に両面接着加飾シートの第2接着層の面に接着させる工程;
両面接着加飾シートから剥離シートを除去する工程;
熱可塑性エラストマーを射出成形し、同時に両面接着加飾シートの第1接着層の面に接着させる工程;及び
2色成形用射出成形装置の金型から2色成形品を取り出す工程;
を包含する、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾する方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の両面接着加飾シートは、IMD法を利用して熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾する場合でも、熱可塑性エラストマーと接着する接着剤が劣化し難い。それゆえ、2色成形品を製造する過程で第2樹脂成形部を形成した後に剥離シートの剥離が困難にならず、また、製造された2色成形品において熱可塑性エラストマーの樹脂成形部が剥離し易くなることもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態である両面接着加飾シートの層構造を示す断面図である。
【図2】両面接着加飾シートの層構造の一例を示す断面図である。
【図3】両面接着加飾シートを用いて2色成形品を射出成形し、金型内同時加飾する方法の一例を示す工程図である。
【図4】両面接着加飾シートを用いて2色成形品を射出成形し、金型内同時加飾する方法の一例を示す工程図である。
【図5】両面接着加飾シートを用いて2色成形品を射出成形し、金型内同時加飾する方法の一例を示す工程図である。
【図6】2色成形品の構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
両面接着加飾シート
本発明の両面接着加飾シートは、好ましくは、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾するために使用される。
【0030】
ここでいう熱可塑性エラストマーとは弾性熱可塑性樹脂、好ましくは射出成形可能な弾性熱可塑性樹脂をいう。好ましい熱可塑性エラストマーは、例えば、デュロメーターA硬度(JIS K 6253)が常温で20〜100、好ましくは50〜100、より好ましくは70〜95である。また、好ましい熱可塑性エラストマーは、例えば、JIS K 6251に規定されている引張り破断伸びが101〜1200%、好ましくは120〜900%である。
【0031】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、アクリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー(ポリアミドを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルを軟質相とする共重合体)、ポリエステル系エラストマー(ポリアルキレンアリレートを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体)、ポリウレタン系エラストマー(短鎖グリコールのポリウレタンを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体、例えば、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマーなど)、ポリスチレン系エラストマー(ポリスチレンブロックを硬質相とし、ジエン重合体ブロック又はその水素添加ブロックを軟質相とするブロック共重合体)、ポリオレフィン系エラストマー(ポリスチレン又はポリプロピレンを硬質相とし、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムを軟質相とするエラストマー、結晶化度の異なる硬質相と軟質相とで構成されたオレフィン系エラストマーなど)、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが含まれる。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリエステル系樹脂およびポリウレタン系樹脂の項で述べた(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類(特にポリオキシエチレングリコール)などが使用でき、脂肪族ポリエステルとしては、ポリウレタン系樹脂の項で述べたポリエステルジオールなどが使用できる。これらの熱可塑性エラストマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
好ましい熱可塑性エラストマーには、アクリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが含まれる。
【0033】
ここでいう成形樹脂とは、熱可塑性エラストマー以外の硬質熱可塑性樹脂であって、ガラス転移温度が200℃〜300℃の射出成形可能な硬質熱可塑性樹脂をいう。
【0034】
成形樹脂としては、例えば、アクリルスチレン樹脂、アクリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらの樹脂のアロイが含まれる。
【0035】
好ましい成形樹脂には、アクリル、PC、ABS、PC/ABS樹脂が含まれる。
【0036】
図1は本発明の一実施形態である両面接着加飾シートの構造を示す断面図である。この両面接着加飾シート9は、熱可塑性エラストマーと接着する第1接着剤からなる第1接着層1、バリア層8、2液硬化型ウレタン樹脂を含む図柄層2、及び成形樹脂と接着する第2接着剤からなる第2接着層3を有する。また、第1接着層1の面上には剥離可能に接着された剥離シート7が備えられている。剥離シート7は基体シート5及び離型層6を有している。
【0037】
第1接着層1を構成する第1接着剤は、従来から熱可塑性エラストマーを接着する用途に使用されてきた種類の接着剤から、グラビア印刷法によって接着層を形成することが可能なものを選択して使用する。水酸基含有部分を有するポリマーを含む接着剤は熱可塑性エラストマーに対する接着性に優れ、好ましい。より好ましい第1接着剤はポリヒドロキシエーテル、ポリビニルアルコール及びフェノールからなる群から選択される少なくとも一つの部分を含むポリマーを含むものである。
【0038】
かかる接着剤は市販されており、例えば、ロード・ファー・イースト・インコーポレイテッド社製「ケムロック(Chemlok)210」(商品名)、「ケムロック(Chemlok)219」(商品名)等が挙げられる。
【0039】
第1接着層は剥離シートの離型性を有する面に、第1接着剤を含む溶液を塗布及び乾燥させて形成される。第1接着剤層の形成にはグラビア印刷法を用いることが好ましい。均一な層を簡便な操作によって形成することができるからである。
【0040】
第1接着層1の厚みは、0.5μm〜10μm、好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜3μmである。接着層の厚みが0.5μm未満であると十分な接着力が得られず、一方、10μmを越えると乾燥不足のため、タックが発生し、ブロキングの懸念がある。
【0041】
バリア層8は、図柄層2又は第2接着層3から第1接着層に反応性成分が移動するのを防止する層である。図柄層2に含まれる反応性成分としては、2液硬化型ウレタン樹脂に含まれる比較的低分子の反応性成分、例えばイソシアネート化合物が考えられる。
【0042】
このような反応性成分が第1接着層1に移動すると、経時的に又は加熱下で第1接着剤の官能基、例えば、水酸基と反応して、接着剤が劣化しうる。また、このような反応性成分が離型層6にまで達すると、上記接着層1の官能基及び離型層6の官能基、例えば、水酸基と反応して、離型層6が接着層1に固着されうる。
【0043】
そこで、本発明の両面接着加飾シートでは、第1接着層と図柄層の間にバリア層8を形成して、図柄層2又は第2接着層3から第1接着層に反応性成分が移動するのを防止する。バリア層の成分は、反応性成分を含まず、グラビア印刷法によって層が形成されるポリマー又は樹脂であれば特に限定されない。例えば、従来からグラビアインキ用結合剤として使用されてきた一液型樹脂が好適である。
【0044】
バリア層を構成するのに好ましい樹脂の具体例は、アクリル樹脂、塩化酢酸ビニル樹脂及びエポキシ樹脂等の一液型樹脂が挙げられる。中でもより好ましいものは、アクリル樹脂である。これらの樹脂は、グラビア印刷溶媒であるMEKに溶解する程度の分子量を有している。例えば、アクリル樹脂であれば数平均分子量(Mn)が10000〜150000、塩化酢酸ビニル樹脂であれば数平均分子量(Mn)が10000〜40000のものが好ましい。また、バリア層を構成する樹脂のガラス転移温度は、40〜100℃、好ましくは60〜90℃である。
【0045】
バリア層には着色剤を含有させて、着色層として機能させてもよい。着色層としての機能とは、被接着物品の地色を隠蔽して被接着物品を着色する機能をいう。
【0046】
着色剤としては、顔料又は染料が挙げられる。着色層の着色剤は加飾シートを着色する用途に従来から使用される種類のものが用いられる。好ましい着色剤の具体例は、(1)インジゴ、アリザリン、カーサミン、アントシアニン、フラボノイド、シコニンなどの植物色素、(2)アゾ、キサンテン、トリフェニルメタンなどの食用色素、(3)黄土、緑土などの天然無機顔料、(4)アクリル系、ウレタン系などの無機顔料、(5)炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミニウムレーキ、マダーレーキ、コチニールレーキ、(6)金属薄膜細片などが挙げられる。
【0047】
バリア層8の厚みは、1〜50μm、好ましくは2〜40μm、より好ましくは3〜10μmである。バリア層の厚みが1μm未満であると十分なバリア効果が得られず、一方、50μmを越えると、シート全体の柔軟性が損なわれ、成形時にバリが生じる等の成形特性が損なわれる。
【0048】
図柄層2は、文字又は図柄を形成して被接着物を装飾するための層である。図柄層2は図柄に応じて両面接着加飾シートの面の一部に形成される。図柄層は着色剤及び結合剤を含んでいる。図柄層に含まれる着色剤はバリア層に含ませてよいものと同様である。図柄層に含まれる結合剤は、上述の通り耐熱性に優れている必要があり、実質的には2液硬化型ウレタン樹脂である。2液硬化型ウレタン樹脂を使用する場合、図柄層は、形成した後に加熱して、2液硬化型ウレタン樹脂を硬化させる必要がある。
【0049】
第2接着層3を構成する第2接着剤は、従来から成形樹脂を接着する用途に使用されてきた種類のものから、グラビア印刷法によって接着層を形成することが可能なものを選択して使用する。具体的には、第2接着剤には、アクリル樹脂、塩化酢酸ビニル樹脂等が含まれる。
【0050】
第2接着層3の厚みは、0.5μm〜50μm、好ましくは2〜40μm、より好ましくは3〜10μmである。接着層の厚みが0.5μm未満であると十分な接着力が得られず、一方、50μmを越えると、シート全体の柔軟性が損なわれ、成形時にバリが生じる等の成形特性が損なわれる。
【0051】
剥離シート
剥離シート7は成形樹脂成形部を第2接着層に固定した後、エラストマー成形部を第1接着層に固定する前に剥離される部材をいう。
【0052】
剥離シート7を構成する基体シート5は、接着層や図柄層をシート上に支持する用途に従来から使用されるシート材料又はフィルム材料である。フィルム材料は合成樹脂からなるシート材料をいう。合成樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及び、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。
【0053】
また基体シートとしては、上記の合成樹脂から形成された単層シート、単層シートを2以上積層した積層シート(各単層シートの材料組成は上記群から選択された合成樹脂を使用していれば同一であっても異なっていてもよい)、上記の合成樹脂を用いた共重合シートなどが挙げられる。
【0054】
基体シートの厚みは、5〜500μmであることが好ましい。基体シートの厚みが5μm以上であると、被装飾物品に転写シートを固定する場合に、転写シートを金型に配置する時のハンドリング性をより十分に確保できる。また、基体シートの厚みが500μm以下であると、適度な剛性を得ることができハンドリング性をより十分に確保できるようになる。
【0055】
離型層6は、剥離シートの剥離面全体に両面接着加飾シートに対する離型性を付与する層である。
【0056】
離型層6を形成するためのインキ又は塗料は、有機溶媒、結合剤として熱硬化性樹脂を含む組成物を用いるとよい。熱硬化性樹脂の例としては、尿素、メラミン、グアナミン、アニリンのようなアミノ基を持った不乾性油変性アルキッドに、ホルムアルデヒドを付加縮合させて得られる樹脂を5〜40重量%配合した樹脂組成物、又はメラミンと尿素の混合物をホルムアルデヒドと共縮合反応させて得られる樹脂、エポキシ樹脂とメラミン樹脂の混合物である樹脂などが挙げられる。
【0057】
離型層6の厚みは0.1μm〜30μmとする。離型層6の厚みが0.1μm未満であると、剥離シートが転写層から剥離し難くなり、30μmを超えると転写熱が上手く逃げず、転写層のインキが流動する。好ましい離型層32の厚みは0.3〜20μmであり、より好ましくは1〜10μmである。
【0058】
熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾する方法
本発明の両面接着加飾シートを用いて熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾する方法の一例を、次に説明する。
【0059】
まず、2色成形用射出成形装置の金型に、本発明の両面接着加飾シートを設置する。図3(a)を用いて説明すると、第1キャビティ型11の内部に剥離シート7及び両面接着加飾シートを送り込み、キャビティ面に離型シート7側の面を沿わせ、コア型12を閉じて、1次成形空間13を形成する。
【0060】
次に、成形樹脂を射出成形し、同時に両面接着加飾シートの第2接着層の面に接着させる。図3(b)を用いて説明すると、コア型12の第2樹脂射出口14から成形樹脂を射出して、両面接着加飾シートに接着した成形樹脂成形部を形成する。
【0061】
次に、両面接着加飾シートから剥離シートを除去する。図4(c)及び(d)を用いて説明すると、剥離シート7に接していた第1キャビティ型11を開き、剥離シート7を剥離する。
【0062】
次に、熱可塑性エラストマーを射出成形し、同時に両面接着加飾シートの第1接着層の面に接着させる。図5(e)及び(f)を用いて説明すると、コア型12に対して第2キャビティ型16を閉じて2次成形空間17を形成し、第2キャビティ型16の第1樹脂射出口18から熱可塑性エラストマーを射出して、両面接着加飾シートに接着した熱可塑性エラストマー成形部を形成する。
【0063】
最後に、2色成形用射出成形装置の金型から2色成形品を取り出す。図6を用いて説明すると、熱可塑性エラストマー成形部が冷却した後、第2キャビティ型16又はコア型12を開き、形成された2色成形品を取り出す。
【0064】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、実施例中「部」又は「%」で表される量は特に断りなき限り固形分重量基準である。
【実施例】
【0065】
実施例1
基体シートとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフイルムを準備した。この基体シートの一方の面に、メラミン樹脂系離型剤を、厚み0.5μmとなるようにグラビア印刷法で印刷して、離型層を形成した。
【0066】
離型層の面に、ロード・ファー・イースト・インコーポレイテッド社製「ケムロック(Chemlok)210」(商品名)を20%含有するMEK溶液を、厚み2μmとなるようにグラビア印刷法で印刷して、第1接着層を形成した。
【0067】
第1接着層の面に、三菱レイヨン製アクリル樹脂「BR−75」を20%含有するMEK溶液を、厚み3μmとなるようにグラビア印刷法で印刷して、バリア層を形成した。
【0068】
バリア層の面に、大日精化社製グラビア印刷用ウレタンインキ「ハイラミック」10重量部に対して大日精化製グラビア印刷用ウレタンインキ用硬化剤「NT−ハイラミック ハードナー」1重量部添加したものを20%含有するMEK溶液を、厚み3μmとなるようにグラビア印刷法でパターン状に印刷して、図柄層を形成した。次いで、ここまでの積層シートを160℃で0.5分間加熱して図柄層を硬化させた。
【0069】
その上に、日信化学工業製塩化酢酸ビニル樹脂「ソルバインA」を20%含有するMEK溶液を、厚み3μmとなるようにグラビア印刷法で印刷して、第2接着層を形成して、両面接着加飾シートを得た。
【0070】
2色成形用射出装置に、得られた両面接着加飾シート、成形樹脂としてPC/ABS樹脂(帝人化成社製「TN3715(白)」)、及び熱可塑性エラストマーとしてエステル系樹脂(三菱化学社製「A1606C」)を使用して、上述の方法により、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾した。方法の最中、成形樹脂成形部を形成した後、熱可塑性エラストマーを成形する前の工程において、基体シートは、両面接着加飾シートから容易に剥離した。
【0071】
このとき、基体シートのみが両面接着加飾シートから剥離し、剥離した後の基体シートにはバリア層、絵柄層の付着は観察できなかった。
【0072】
なお上記剥離は、丸型バン式テンションゲージ 0.3N(株式会社 大場計器製作所社製)を用いて30Nの力で基体シートを引張ることにより行った。
【0073】
実施例2
基体シートとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフイルムを準備した。この基体シートの一方の面に、メラミン樹脂系離型剤を、厚み0.5μmとなるようにグラビア印刷法で印刷して、離型層を形成した。
離型層の面に、ロード・ファー・イースト・インコーポレイテッド社製「ケムロック(Chemlok)210」(商品名)を20%含有するMEK溶液を、厚み2μmとなるようにグラビア印刷法で印刷して、第1接着層を形成した。
【0074】
第1接着層の面に、日信化学工業製塩化酢酸ビニル樹脂「ソルバインA」を20%含有するMEK溶液を、厚み3μmとなるようにグラビア印刷法で印刷して、バリア層を形成した。
【0075】
バリア層の面に、大日精化社製グラビア印刷用ウレタンインキ「ハイラミック」10重量部に対して大日精化製グラビア印刷用ウレタンインキ用硬化剤「NT−ハイラミック ハードナー」1重量部添加したものを20%含有するMEK溶液を、厚み3μmとなるようにグラビア印刷法でパターン状に印刷して、図柄層を形成した。次いで、ここまでの積層シートを160℃で0.5分間加熱して図柄層を硬化させた。
【0076】
その上に、第1接着層の面に、三菱レイヨン製アクリル樹脂「BR−75」を20%含有するMEK溶液を、厚み3μmとなるようにグラビア印刷法で印刷して、第2接着層を形成して、両面接着加飾シートを得た。
【0077】
2色成形用射出装置に、得られた両面接着加飾シート、成形樹脂としてアクリル樹脂(三菱レイヨン社製「アクリペットMD」)、及び熱可塑性エラストマーとしてエステル系樹脂(三菱化学社製「A1606C」)を使用して、上述の方法により、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾した。方法の最中、成形樹脂成形部を形成した後、熱可塑性エラストマーを成形する前の工程において、剥離シートは両面接着加飾シートから容易に剥離した。
【0078】
このとき、基体シートのみが両面接着加飾シートから剥離し、剥離した後の基体シートにはバリア層、絵柄層の付着は観察できなかった。なお上記剥離は、丸型バン式テンションゲージ 0.3N(株式会社 大場計器製作所社製)を用いて30Nの力で基体シートを引張ることにより行った。
【0079】
比較例
バリア層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして両面接着加飾シートを得た。そして、得られた両面接着加飾シートを使用すること以外は実施例1と同様にして2色成形品を形成した。方法の最中、成形樹脂成形部を形成した後、熱可塑性エラストマーを成形する前の工程において、基体シートは両面接着加飾シートに固着し、剥離することができなかった。
【0080】
なお上記剥離は、丸型バン式テンションゲージ 0.3N(株式会社 大場計器製作所社製)を用いて30Nの力で基体シートを引張ることにより行った。
【符号の説明】
【0081】
1…第1接着層、
2…図柄層、
3…第2接着層、
4、9…両面接着加飾シート、
5…基体シート、
6…離型層、
7…剥離シート、
8…バリア層、
11…第1キャビティ型、
12…コア型、
13…1次成形空間、
14…第2樹脂射出口、
15…第2樹脂成形部、
16…第2キャビティ型、
17…2次成形空間、
18…第1樹脂射出口、
19…第1樹脂成形部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーと接着する、水酸基を有するポリマーを含む第1接着剤からなる第1接着層、グラビアインキ用結合剤を含むバリア層、2液硬化型ウレタン樹脂を含む図柄層、及び成形樹脂と接着する第2接着剤からなる第2接着層を有する、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾するために使用される両面接着加飾シート。
【請求項2】
前記第1接着剤に含まれるポリマーがポリヒドロキシエーテル、ポリビニルアルコール及びフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1記載の両面接着加飾シート。
【請求項3】
前記第2接着剤が塩化酢酸ビニル、アクリル及びウレタンからなる群から選択される少なくとも一つのポリマーを含む請求項1又は2記載の両面接着加飾シート。
【請求項4】
前記バリア層に含まれるグラビアインキ用結合剤がアクリル、塩化酢酸ビニル及びエポキシからなる群から選択される少なくとも一つのポリマーを含む請求項1〜3のいずれか記載の両面接着加飾シート。
【請求項5】
前記第1接着層の面に剥離可能に接着された剥離シートを更に有する請求項1〜4のいずれか記載の両面接着加飾シート。
【請求項6】
前記成形樹脂は射出成形されると同時に第2接着層に接着される請求項1〜5のいずれか記載の両面接着加飾シート。
【請求項7】
2色成形用射出成形装置の金型に、請求項5記載の両面接着加飾シートを設置する工程;
成形樹脂を射出成形し、同時に両面接着加飾シートの第2接着層の面に接着させる工程;
両面接着加飾シートから剥離シートを除去する工程;
熱可塑性エラストマーを射出成形し、同時に両面接着加飾シートの第1接着層の面に接着させる工程;及び
2色成形用射出成形装置の金型から2色成形品を取り出す工程;
を包含する、熱可塑性エラストマーと成形樹脂を結合及び加飾する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−208041(P2011−208041A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77770(P2010−77770)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】