説明

中空材料を用いた防音防振材

【課題】 極めて優れた防音性、防振性を有するとともに、製品重量を小さく構成することができ、原材料の節減、省資源化に寄与し、製造コスト、輸送コストを縮減できる防音防振材を提供する。
【解決手段】 開口部2b(或いは2c)まで連通した中空内部2aを有するチューブ材2を側方へ並列し、それらを連結してシート状に構成し、当該シートの一方の面、或いは、両面にプラスチックフィルム3を貼着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材として使用される防音防振材、各種機械(作業用機械、工業用機械、自動車等)の部品或いは付属品として使用される防音防振材、或いは、車道や鉄道に沿って設置される騒音防止用遮蔽板の内側に充填される防音防振材、道路及び鉄道等の路板に設置する防音防振材等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建物の床面や壁面を施工する際には、下層階或いは隣家等に対する防音、防振のために、フローリング材や壁板材の下地側に、防音防振材が配設されている。建材として使用される防音防振材は、これまでに様々な種類のものが製品化されているが、現在では、アスファルトや合成樹脂等からなる基材の中に、比重の大きな材料(例えば、鉄粉や鉛等)を混入させ、製品重量を大きくすることにより、騒音や振動の伝達を低減できるように構成された防音防振材が主流となっている。
【特許文献1】特開昭60−7963号公報
【特許文献2】特開昭60−164534号公報
【特許文献3】特開平8−150682号公報
【特許文献4】特開平9−234818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、製品重量を大きくした防音防振材は、当然のことながら搬送時、施工時におけるハンドリング、輸送効率、輸送コスト等の面で問題がある。また近年では、鉄粉等の金属材料や各種合成樹脂原材料の価格が上昇傾向にあるため、多くの原材料を使用した防音防振材は、製造コストが嵩み、利益率が低下しているという問題がある。
【0004】
本発明は、このような従来技術における問題を解決すべくなされたものであって、極めて優れた防音性、防振性を有するとともに、製品重量を小さく構成することができ、原材料の節減、省資源化に寄与し、製造コスト、輸送コストを縮減できる防音防振材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の防音防振材は、少なくとも一方の開口部まで連通した中空内部を有するチューブ材を多数組み合わせることによって構成したことを特徴としている。尚、チューブ材を側方へ並列し、それらを連結してシート状に構成することが好ましく、また、チューブ材によって形成したシートの一方の面、或いは、両面にフィルムを貼着することが好ましい。
【0006】
また、本発明の防音防振材は、織布のようにチューブ材を縦、横へ織り上げることによってシート状に構成してもよく、更に、不織布のようにチューブ材をランダムに交差させて重ね、接着剤を用いて或いは熱融着により、隣接するチューブ材同士を連結してシート状に構成してもよい。
【0007】
尚、チューブ材としては、直径が10μm〜10mmのものなどを使用することができるが、防音防振効果と材料コスト等とのバランスを考えると、直径が100μm〜2mmのチューブ材を使用することが好ましい。
【0008】
また、チューブ材を組み合わせてシート状に構成する場合、使用するチューブ材の使用量は、組み合わせた状態のチューブ材の総平面積が、形成されるシートの平面積の6〜7割程度となるように(即ち、各チューブ材の間に、形成されるシートの平面積の3〜4割程度の間隙が形成されるように)することが好ましい。チューブ材間に適切な大きさの間隙を形成することにより、音や振動の分散効率を向上させ、伝達される振動を効果的に減衰することができるからである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防音防振材は、音や振動の伝達を様々な方向へ分散させることができるとともに、部位によって伝達速度に多様な差を生じさせることができ、それらの相乗効果により、極めて高い防音、防振性を発揮することができる。
【0010】
その結果、全体の体積を小さく(薄く)構成することができ、原材料を節減でき、省資源化に寄与するとともに、製造コストを抑えることができる。また、重量を小さく構成することができるので、搬送時の負担を軽減でき、施工時のハンドリング性に優れている。更に、輸送効率が向上し、輸送コストも縮減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る「防音防振材」の斜視図である。この防音防振材1は、フローリング用の防音防振材(建物のフローリングの下地側に配置される「建材」として使用されるもの)であり、かかる用途に適合した形状、構造、寸法となっている。より具体的には、多数の細長いチューブ状の材料(チューブ材2)を、簾のように側方へ(長手方向と直交する方向へ)並列し、それらを連結してシート状に構成し、その一方の面にプラスチックフィルム3を貼着してなるものである。
【0012】
チューブ材2は、軟らかい合成樹脂によって形成されており、それぞれ直径(外径)が2mm、長さは91cmに設定されている。また、図示されているように、内部は中空となっており、両端は開放されている。この中空内部2aは、両端の開放された開口部2b,2cとそれぞれ連通している。つまり、中空内部2aは、一方の開口部2bから他方の開口部2cまで一貫している。
【0013】
一連のチューブ材2は、複数本の糸4(或いは単糸)を、各チューブ材2の上下を交互に入れかえるようにして編み込んでいくことにより連結されており、このため、隣接する各チューブ材2間には、一定の隙間(約1mm)が形成されている。
【0014】
本実施形態の防音防振材1は、上記のような形状、構造に係るものであるところ、極めて高い防音、防振性能を有しており、フローリング材の下地側に配設した場合、下層階(或いは上層階)に対する騒音や振動の伝達を効果的に低減することができる。
【0015】
この点について更に具体的に説明すると、本実施形態の防音防振材1は、上述の通り、一方の開口部2bから他方の開口部2cまで一貫した中空内部2aを有するチューブ材2を、側方へ多数連結してなるものであり、かかる構造のチューブ材2を用いることにより、音(振動)の伝達を様々な方向へ分散させることができるとともに、部位によって伝達速度に多様な差を生じさせることができ、それら(「伝達方向の分散」と「伝達速度の差」)の相乗効果により、極めて高い防音、防振性を発揮する。
【0016】
図2は、チューブ材2において音の伝達が様々な方向へ分散され、伝達速度に多様な差が生じる現象を簡略化して模式的に表した図であり、図2(1)は、長手方向に沿ったチューブ材2の垂直断面図、図2(2)は、長手方向と直交する方向に沿ったチューブ材2の垂直断面図である。図示されているように、上方の音源から音の振動Fがチューブ材2に伝わった場合、この振動Fは、チューブ材2を構成する合成樹脂部分2d(固体)、及び、中空内部2aの空気を介して、外側方向及び下方へ多岐的に分散して伝達されていくことになる。
【0017】
そして、振動が伝達される速度は、伝達を媒介する物質の密度の大きさによって異なり、密度が大きい固体の方が、気体よりも伝達速度は大きくなるため、合成樹脂部分2dを介して伝達される振動Fx,Fy,Fzの方が、中空内部2aの気体を介して伝達される振動Fa,Fb,Fcよりも速く伝達されることになり、部位によって伝達速度に多様な差が生じる。
【0018】
また、図2(1)に示すように、合成樹脂部分2dを介して長手方向へ向かって進行し、チューブ材2の端部まで達した振動Fx,Fyは、そこから更に分散されながら周辺の空気中に伝達されることになるが、空気中に伝達されるそれらの振動Fx',Fy'は、振動Fx,Fyよりも減衰することになる。またこれと同様に、中空内部2aの空気を介して長手方向へ進行し、チューブ材2の開口部2b,2cまで達した振動Fa,Fbも、そこから更に分散されながら周辺の空気中に伝達され(振動Fa',Fb')、減衰することになる。
【0019】
更に、図2(2)に示すように、合成樹脂部分2dを介して下方へ向かって進行する振動Fzは、チューブ材2の外周面から周辺の空気中に伝達されることになるが、周辺の空気中に伝達される振動Fz'は、振動Fzよりも減衰することになる。また、中空内部2aの空気を介して下方へ進行する振動Fcは、合成樹脂部分2d(及び、図1に示すプラスチックフィルム3)を介してチューブ材2の下側の空気中に伝達され(振動Fc')、減衰することになる。
【0020】
このように、図1の防音防振材1は、一貫した中空内部2aを有するチューブ材2を多数使用して構成することにより、音(振動)の伝達方向を多岐的に分散させることができるとともに、伝達部位によって伝達速度に多様な差を生じさせることができ、それらの相乗効果によって、極めて高い防音性、防振性を発揮する。
【0021】
その結果、本実施形態の防音防振材1は、全体の体積を小さく(薄く)構成することができ、原材料を節減でき、省資源化に寄与するとともに、製造コストを抑えることができる。また、重量を小さく構成することができるので、搬送時の負担を軽減でき、施工時のハンドリングも良好である。更に、輸送効率が向上し、輸送コストも縮減できる。
【0022】
尚、本実施形態においては、防音防振材1の構成要素として、直径2mmのチューブ材2が使用されているが、用途、適用対象等に応じて、直径が10μm〜10mm程度のチューブ材を使用することもできる。また、本実施形態においては、チューブ材2として合成樹脂製のものを使用しているが、その他の材料(天然ゴム、合成ゴム、金属、ガラス、セラミックス等)によって形成されたチューブ材を使用することもできる。また、減衰しようとする音や振動の周波数を考慮して、チューブ材の材料として適切な複合材料(例えば、金属と合成ゴム等からなるもの)を設計することにより、より広い周波数帯をカバーできる防音防振材を得ることができる。
【0023】
更に、チューブ材2のせん断面に表れる外形及び中空形状は、真円のほか、楕円、三角形、四角形、その他の多角形、或いは、不定形状であっても、内側に中空部分があり、かつ、その中空部分が一貫し、少なくとも一方の端部が開放されているものであれば、好適に使用することができる。
【0024】
また、本実施形態の防音防振材1は、多数のチューブ材2を連結してシート状に構成し、そのシートの一方の面にプラスチックフィルム3を貼着してなる構成となっているが、プラスチックフィルムは両面に貼着してもよく、また、プラスチックフィルムの貼着を省略してもよい。但し、少なくとも一方の面にプラスチックフィルムを貼着した方が、振動が周囲に分散しやすく、防音、防振効果は大きくなる。
【0025】
更に、チューブ材の連結方法は、必ずしも簾のように側方へ連結しなければならない訳ではなく、チューブ材を、織布のように縦、横へ織り上げることによってシート状になるように構成することもできるし、不織布のように、チューブ材をランダムに交差させて重ね、接着剤を用いて或いは熱融着により、隣接するチューブ材同士を連結してシート状に構成することもできる。また、チューブ材を簀の子状に連結することもできる。
【0026】
尚、ここではフローリング材の下側に配置する「建材」として使用される防音防振材について説明したが、本発明に係る防音防振材の用途は「建材」に限定されるものではなく、各種機械の部品或いは付属品として使用される防音防振材、或いは、車道や鉄道に沿って設置される騒音防止用遮蔽板の内側に充填される防音防振材、車道や鉄道等の路板に設置される防音防振材等、あらゆる用途のものに適用することができる。
【実施例】
【0027】
本発明の防音防振材は、発明者らが行った実験の結果、従来の重量型防音材よりも優れた防音性、防振性を有していることが実証された。以下、発明者らが行った実験の結果を、本発明の実施例として説明する。まず、実験に使用する材料として、本発明の第1の実施形態に係る防音防振材1(図1参照)と、従来の重量型防音材を2種類(「従来1」及び「従来2」)用意し、更に、一般的なフローリング材及び合板を用意した。これらの材料についての詳細は、表1の通りである。
【0028】
【表1】

【0029】
次に、これらの材料を適宜組み合わせることにより、本発明の防音防振材を使用した「試材」と、本発明の防音防振材を使用しない「比較例」をそれぞれ3種類ずつ(試材1〜3、比較例1〜3)製作した。より具体的に説明すると、試材1は、上層のフローリング材と下層の合板の間(中層)に、本発明の防音防振材を配置したものであり、試材2は、中層に厚さ4mmの従来の重量型防音材と、本発明の防音防振材とを配置したものであり、試材3は、中層に厚さ6mmの従来の重量型防音材と、本発明の防音防振材とを配置したものである。また、比較例1は、中層に厚さ4mmの従来の重量型防音材を配置したものであり、比較例2は、中層に厚さ6mmの従来の重量型防音材を配置したものである。比較例3は、上層のフローリング材と下層の合板のみによって構成したものである。
【0030】
そして、これらの試材1〜3、比較例1〜3のそれぞれについて、次のような消音試験を行った。試材或いは比較例を水平状態にして保持し、その上方において、振動周波数を変えながら衝撃音を6回発生させ、上層のフローリング材の表面、及び、最下層の合板の下側のそれぞれにおいて、音の大きさ(単位:dB)を計測した。尚、衝撃音の振動周波数は、63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hzとした。計測結果は、表2の通りである。
【0031】
【表2】

【0032】
上記の結果から、本発明に係る防音防振材を使用した試材1は、従来の重量型防音材を使用した比較例1、2よりも優れた防音性、防振性を有していることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る防音防振材1の斜視図。
【図2】図1に示したチューブ材2の垂直断面図。
【符号の説明】
【0034】
1:防音防振材、
2:チューブ材、
2a:中空内部、
2b,2c:開口部、
2d:合成樹脂部分、
3:プラスチックフィルム、
4:糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の開口部まで連通した中空内部を有するチューブ材を多数組み合わせることによって構成したことを特徴とする防音防振材。
【請求項2】
前記チューブ材を側方へ並列し、それらを連結してシート状に構成したことを特徴とする、請求項1に記載の防音防振材。
【請求項3】
前記チューブ材によって形成したシートの一方の面、或いは、両面にフィルムを貼着してなることを特徴とする、請求項2に記載の防音防振材。
【請求項4】
前記チューブ材を縦、横へ織り上げることによってシート状に構成したことを特徴とする、請求項1に記載の防音防振材。
【請求項5】
前記チューブ材をランダムに交差させて重ね、接着剤を用いて或いは熱融着により、隣接するチューブ材同士を連結してシート状に構成したことを特徴とする、請求項1に記載の防音防振材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−52101(P2007−52101A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235776(P2005−235776)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(501209520)協和産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】