説明

中空FRPの製造方法

【課題】中子に、強化繊維基材を該中子の翼弦長方向に巻付けたプリフォームを用いて中空構造の翼形状を持つFRP部材をRTM成形で作成する際に、注入樹脂圧力による中子の寸法変動が引き起こすヒケや樹脂リッチといった外観不良、マトリックス樹脂の中子内部への浸透による重量増、界面との剥離による強度低下の無く、安定して製造できる方法を提供すること。
【解決手段】断面の少なくとも一部に直線部を有する翼形状の中空構造の中子に、強化繊維基材を該中子の翼弦長方向に巻付けたプリフォームを作成する際に、下記式を満たすように巻き付け張力を制御したプリフォームを作成し、該プリフォームに内圧を付与しながら、RTM成形する。 100*{X−(Y+Z)}/Z=A(A≦0)・・・(1) 0.3≦|A|<0.7 ・・・(2)式中X:強化繊維を巻き付けた後の翼弦長寸法Y:巻付けた強化繊維基材の厚みZ:中子単体の翼弦長寸法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はRTM(Resin Transfer Molding)成形法における中空構造の翼形状を持つ強化繊維プラスチック製部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用途を始めとして比較的軽量で高剛性のものが得られるという理由で、強化繊維基材としてガラス繊維や炭素繊維を用いた強化繊維プラスチック製部材(以降FRPと記す)が注目されるようになってきた。
【0003】
FRPの製造方法としてはオートクレーブ成形法、プレス成形法、RTM(Resin Transfer Molding)成形法(以降RTM成形法と記す)などが広く知られおり、中でもRTM成形法は成形精度、量産性に優れた成形方法といえる。
【0004】
例えば自動車のリアスポイラや送風機など軽量性、高剛性、高品位性が必要とされる翼形状を持つ部材をRTM成形法にて成形する場合、例えば発泡ポリウレタン等の軽量な弾性材料の中子に強化繊維を巻付けたプリフォーム、または上下分割された強化繊維で中子を包み込んだプリフォームを成形型内にセットし、型内に熱硬化性樹脂を注入し、成形型の温度で樹脂を硬化させる事により製造できる事が知られている。(特許文献1、特許文献2参照)。しかし、強化繊維と中子との複合構造にでは、成形体の剛性は向上しているものの、注入樹脂圧力による中子の寸法変動が引き起こすヒケと呼ばれる表面の凹み、マトリックス樹脂の中子内部への浸透による重量増、界面での剥離による強度低下など潜在的な問題点が多く残されている。そこで、軽量性、高剛性、高品位性といった要素を損なう事無く、FRP中に中子の無い、または残らない、中空構造の翼形状を持つFRP製部材をRTM成形法で製造できる技術が必要となってくる。
【特許文献1】特開平2―92524号公報
【特許文献2】特開平7−1607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、中子に、強化繊維基材を該中子の翼弦長方向に巻付けたプリフォームを用いて中空構造の翼形状を持つFRP部材をRTM成形で作成する際に、注入樹脂圧力による中子の寸法変動が引き起こすヒケや樹脂リッチといった外観不良、マトリックス樹脂の中子内部への浸透による重量増、界面との剥離による強度低下の無く、安定して製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(1)断面の少なくとも一部に直線部を有する翼形状の中空構造の中子に、強化繊維基材を該中子の翼弦長方向に巻付けたプリフォームを作成する際に、下記式を満たすように巻き付け張力を制御し作成し、該プリフォームに内圧を付与しながら、RTM成形することを特徴としたFRPの製造方法。
【0007】
100*{X−(Y+Z)}/Z=A(A≦0)・・・(1)
0.3≦|A|<0.7 ・・・(2)
式中
X:強化繊維を巻き付けた後の翼弦長寸法
Y:巻付けた強化繊維基材の厚み
Z:中子単体の翼弦長寸法
(2)強化繊維基材の引っ張り弾性率が50GPa以上の強化繊維を使用する前記(1)に記載のFRPの製造方法。
(3)中子材料の曲げ弾性率が300〜10,000MPaの範囲である前記(1)または(2)のいずれかに記載のFRP製造方法
(4)板厚が0.6〜4.0mmの中子である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のFRPの製造方法。
(5)RTM成形後、FRP体内から中子を除去する前記(1)〜(4)のいずれかに記載のFRP製造方法
(6)中子の材料がマトリックス樹脂との離型性を有するものである前記(1)〜(5)のいずれかに記載のFRP製造方法
(7)少なくとも一つの開口部を有する中子を用いる事を特徴とした前記(1)〜(6)のいずれかに記載のFRP製造方法。
(8)熱可塑性樹脂材料の中子を使用することを特徴とした前記(1)〜(7)のいずれかに記載のFRP製造方法。
(9)ブロー成形の中子を使用する事を特徴とした前記(1)〜(8)のいずれかに記載のFRP製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のRTM成形法に比べて軽量で、安定的に強度を発現し、かつ高品位性を得られる中空構造の翼形状を持つFRP部材が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
本発明におけるFRPとは、強化繊維により強化されている樹脂を指し、強化繊維基材としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、あるいはアラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維が挙げられる。FRPのマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、さらには、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂も使用可能である。
【0011】
特に、本発明に係わるRTM成形法で使用する樹脂としては、粘度が低く強化繊維基材への含浸が容易な熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂を形成するRIM(Reaction Injection Molding)用モノマーが好適である。その中でもFRPの熱収縮を低減させ、クラックの発生を抑えることができるという点から、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、ゴム成分などを配合した変性エポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、また熱可塑性樹脂としてはナイロン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などが好ましい。
【0012】
本発明に係わる中空構造の翼形状を持つ中空の中子の材質としては、ポリプロピレンやポリエチレン、ABS、ナイロンなどの熱可塑性樹脂、天然ゴム、シリコンゴム、ネオプレンゴム等が挙げられるが、マトリックス樹脂との離型性を有する(極性がない)ポリプロピレンが好ましい。中子の成形法としては、ブロー成形や回転成形で成形された中空構造体や、フィルムを融着して袋状にした中空構造体、ディッピングにより風船状に形状を有したゴム製中空構造体等が挙げられる。中でも、複雑な曲面形状や、凹凸の激しい形状にも対応可能で、環境面に対してもリサイクルが容易なブロー成形で成形された中空構造体が好ましい。
【0013】
本発明で使用する成形型は、例えば上型と下型から構成されるものを用いる。かかる型を用いた場合、上型が金型昇降装置で上方に配置されている間に、下型へ強化繊維基材を配設する。この強化繊維基材は、賦形型によって、下型に納まり易いように製品形状に賦形されたプリフォームとして予め作製されている。この成形型の材質としては、FRP、鋳鋼、構造用炭素鋼、アルミニウム合金、亜鉛合金、ニッケル電鋳、銅電鋳などが挙げられる。量産には、剛性、耐熱性、耐久性の面から構造用炭素鋼が好適である。

図1は、本発明の一実施態様に係る中空構造の翼形状を持つFRP製部材の製造方法を実施するための成形システムを示している。図1において、2は、上型と下型からなる成形金型を示しており、その上型が金型昇降装置1に取り付けられている。金型昇降装置1は、油圧ポンプ10、油圧シリンダー11を備えた油圧ユニット9を有しており、上型の作動、加圧が油圧により制御されるようになっている。
【0014】
成形金型2は、図2に示すように例えばアンダーカット部を有する成形体の場合、下型の一部に分割型18を配設することもできる。その分割型で生じる型のパーティング部に意匠層基材を挟圧した状態でRTM成形を行い、基材の乱れを防止して意匠層全体に高品位を獲得することもできる。
【0015】
そして、成形金型2には、注入口8aに繋がる樹脂注入流路13、排出口8bに繋がる排出路14が接続されている。樹脂注入流路13、排出路14は各々注入バルブ22a、排出バルブ22bを介して注入口8a、排出口8bに接続する。注入バルブ22a、排出バルブ22bの開閉作動およびその作動タイミングは、制御装置22cからの指令に基づいて行われる。
【0016】
樹脂注入時の樹脂注入流路13、排出路14の途中に設置する注入バルブ22aや排出バルブ22bは、バイスグリップ等により、直接作業者により流路を挟むことで全域開閉や口径を変化させることができる。例えば図2に示すように、上型16と下型17からなる成形金型の上型16側へと接続された樹脂注入流路13、排出路14の途中に、バイスグリップ21を設けることができる。
【0017】
樹脂注入流路13には樹脂注入装置3が接続されている。樹脂注入装置3は、主剤タンク5、硬化剤タンク6にそれぞれ主剤、硬化剤を収容し、それぞれのタンクは加温できる機構を備えているとともに、真空ポンプ24により真空脱泡できるようになっている。樹脂注入時にはそれぞれのタンクから加圧装置23により樹脂を樹脂注入流路13に向かって押し流す。逆止弁12を介して設けられた加圧装置23にはシリンジポンプを用いており、シリンジを同時に押し出すことで定量性も確保することが、2液混合により硬化する樹脂には好ましい。主剤、硬化剤は混合ユニット4で混合され、樹脂注入流路13に至る。排出路14には、真空ポンプ7aあるいは加圧ポンプ7bへの樹脂の流入を防ぐために、樹脂トラップ15が介装されている。
【0018】
樹脂注入流路13の材料は十分な流量の確保と樹脂との適合性(温度や耐溶剤性、耐圧)を考慮する必要がある。チューブには口径5〜30mmのものを用い、樹脂の注入圧力に耐えるために1.0MPa以上の耐圧性、樹脂硬化時の温度に耐えるために100℃以上の耐熱性が必要となり、厚みが2mm程度の“テフロン(登録商標)”などのフッ素樹脂製チューブが好適である。ただし、“テフロン(登録商標)”以外にも、比較的安価なポリエチレン、ナイロン等のプラスチック製のチューブやスチール、アルミ等の金属管であってもよい。
【0019】
排出路14の材料は、樹脂注入流路13と同様に十分な流量の確保と樹脂との適合性(温度や耐溶剤性、耐圧)を考慮する必要がある。排出路14としてはスチール、アルミ等の金属管、あるいはポリエチレン、ナイロン、 “テフロン(登録商標)”等のプラスチック製のチューブが挙げられるが、直径5〜10mm、厚み1〜2mmの “テフロン(登録商標)”製チューブが作業性の面からより好適である。
【0020】
樹脂の加圧は、前述の如きシリンジポンプなどによる加圧方法によれば定量性も得られる。樹脂の注入圧Piは0.1〜1.0MPaの範囲で用いるのが好ましい。ここで樹脂の注入圧Piとは、加圧装置23により加圧される最大圧力を指し、図1の注入樹脂の圧力計31で表示させる圧力を表す。最終的に樹脂が型内の基材に完全に含浸され排出路14まで到達したら排出路14を閉じ、その後暫くしてから樹脂注入流路13も閉じて樹脂注入を終了する。成形金型2は、例えば温調機25、26によって加温されており、これにより樹脂を硬化させる。なお、型内樹脂圧Pmとは、型内樹脂の圧力計32の圧力を表す。従って、注入圧Piとの関係は Pm≦Piとなり、樹脂が成形金型内を流動しているときは Pm<Piとなる。樹脂が完全に型内に充填され、排出バルブ22bが閉鎖されて樹脂流動が停止した状態で、且つ樹脂注入ポンプより樹脂圧が掛かっているときに始めてPm=Piとなる。 本発明の一実施形態として、中空構造の翼形状を持つ構造体に係わる成形方法に関し、以下に説明する。

先ず、中空構造の翼形状をもつFRP製部材のRTM成形に用いる成形金型2を図6、図7に示す。上型42、下型43からなる成形金型2は、樹脂を注入する注入口46aと型内を真空吸引する吸引排出口46bが設けられ、中空構造の中子内部に気体等の圧力をかける圧空口41が設けられた構造である。Aは注入樹脂、Bは、型内からの空気や余剰樹脂の吸引、Cは中空中子への供給圧縮空気(圧空)をそれぞれ示している。 中空翼構の翼形状を持つFRP部材を成形する場合、以下の工程を順次実施していく。
(1)図5に示すような中空構造の翼形状を持つ中子34に、強化繊維基材36、40を該中子の翼弦長方向に巻付けたプリフォーム33を作成する際に、下記式を満たすように巻き付け張力を制御し作成し、該プリフォームを作成する。
【0021】
100*{X−(Y+Z)}/Z=A(A≦0)・・・(1)
0.3≦|A|<0.7 ・・・(2)
式中
X:強化繊維を巻き付けた後の翼弦長寸法
Y:巻付けた強化繊維基材の厚み
Z:中子単体の翼弦長寸法
(2)次に、図6に示すように、上記プリフォーム33を下型のキャビティ(プリフォームとほぼ同一形状)に配置する。
(3)上型42をプレス機等で下降させ、図7のように下型に押圧して成形金型内を密閉させる。その状態で、樹脂注入用チューブを注入口46aに、吸引排出用チューブを吸引排出口46bに繋ぐ。また、圧空封入用チューブを中空中子34に設けた圧空口41に繋ぐ。
(4)その後、中空中子34内に上記圧空口41より所定の圧力をなす圧空を封入し、中空中子34を膨張させる。
(5)膨張した中空中子34によって、該中空中子の外周に配置された強化繊維基材36,40が成形金型のキャビティ面に押圧させる。
(6)次に、注入口46aを閉鎖した状態で吸引排出口46bより真空吸引して、成形金型内を減圧し続ける。
(7)その状態で、注入口46aを開放し、図1に示す樹脂注入装置3より加圧された樹脂を注入する。
(8)注入口46aより注入された樹脂は一旦樹脂注入用ランナー44に貯蔵された後、吸引用ランナー45に向かって流動する。その間に注入樹脂は強化繊維基材36,39に含浸する。
(9)その後、注入された加圧樹脂が吸引排出口46bより流出し始めたら、該吸引排出口46bを図2に示すバイスグリップ21などにより閉鎖する。
(10)そして、樹脂注入装置を稼働しながら上記注入口46aより樹脂圧(静圧)を掛けながら、吸引排出口46bを閉鎖したままの状態で所定の時間保持する。
(11)成形金型は、当初[工程(2)]より所定の温度に加熱しておき、上記工程(10)で樹脂を硬化させる。

(12)次に、下型43から上型42を僅かであるが上昇させた後、中子34に圧空口41から真空圧を掛け(数秒でよい)、中子を収縮変形させることによって中空構造を持つ翼形状のFRP成形体を下型43から離型させる。
それによって、脱型用冶工具等によるFRP成形体の傷付きを防止し、且つ脱型に要する時間を短縮することが可能となる。
(13)そして、上型42を完全に上昇させた後、中空構造の翼形状を持つFRP成形品を下型43より脱型させる。
【実施例】
【0022】
下に、本発明の実施例に基づいて、より具体的に説明する。実施例では以下の強化繊維基材、樹脂、中子を使用した。
(1)基材
東レ(株)製炭素繊維織物CO6343(織り組織:T300平織り,織物目付:約300g/m、機幅1000mm)
(2)樹脂
“エピコート(登録商標)”828/TR−C35H=100/10
但し、“エピコート(登録商標)”828: ジャパン エポキシ レジン(株)製エポキシ樹脂、
TR−C35H:東レ(株)製、イミダゾール誘導体(3)中子:長さ1200mm、幅250mmの中空翼断面形状のポリプロピレン製ブロ−成形体(平均厚み:約1.7mm)。
<実施例1>
図3〜図5にプリフォームの製造方法を示す。図3に示すように、効率的に強化繊維プリフォームを製造するために独自で考案した基材巻き付けシステム47を用いて、予め翼弦長寸法を測定しておいた中子34の周囲に、原反35から巻きだした基材36を貼り付け、中子を回転させながら2回巻きつける。その後、熱融着性のテープ37をアイロン38で貼り付け、テープを除熱させた後もう1回基材を巻き付ける(計3回の巻き付け)。図4に示すように、予め中子の変形量を見込んで算出された6kgfの重り39を、中子と原反の間にのせ基材に張力をしっかりかけた状態で、熱融着テープ上37にあたる部分に、3回目に巻き付けた基材の上からアイロン38で熱をかけ基材同士を接着させ、接着部の直ぐ近くで原反を切る。
【0023】
その後、翼弦長寸法を確認し、下式を満たす範囲にあるかを確認する。
【0024】
100*{X−(Y+Z)}/Z=A(A≦0)・・・(1)
0.3≦|A|<0.7 ・・・(2)
式中
X:強化繊維を巻き付けた後の翼弦長寸法
Y:巻付けた強化繊維基材の厚み
Z:中子単体の翼弦長寸法
寸法確認後、図5に示すように予め所定寸法にカットされた基材36と同質の基材40を、巻き付け始めと巻き終わりがプリフォーム内に残らないようコの字型に1回巻き付け、強化繊維プリフォーム33を作製した。

上記強化繊維プリフォーム33を図1に示す成形金型2(上型42,下型43で構成)内にセットした。詳しくは、図6の下型43に該強化繊維プリフォーム33をセットして上型42を下降して型締めした後、図7に示す樹脂注入口46a、吸引排出口46b及び圧空口41にチューブを接続(図は省略)した。
【0025】
次に、中空中子34に0.5MPaに加圧された圧空を封入して保持した。成形金型2は上下型(42、43)共に温水加熱機である温調機26に接続されており、型温が95℃に保持されるようにセットした。また、この成形金型2は樹脂トラップ15を介して真空ポンプ7aに連通しており、上記型締めの後、排出バルブ22bの開放により型内を真空吸引させた。
【0026】
次に、排出バルブ22bを閉鎖した後、主剤、硬化剤を個別に真空脱泡した後混合された樹脂aを、注入口46aに連通する注入バルブ22aを開放して樹脂注入装置3から型内に樹脂圧Pi=0.5MPaで注入した。注入開始後、約1分で樹脂aの余剰分が少量該排出バルブ22b側に流出してきた。それから、30秒間排出バルブ22bを閉鎖し、次いで20秒間排出バルブ22bを開放した。そして、この排出バルブ22bの閉鎖と開放を3回繰り返し、最後に排出バルブ22bを閉じ、15秒後次いで注入バルブ22aも閉鎖した。その後、そのままの状態を15分間保持し、樹脂aを硬化させた。硬化中は圧空口41以外のチューブは外し、チューブ内部の樹脂は洗浄しておく。
【0027】
硬化後、中空構造FRP成形体中の中空中子34の圧力を大気開放した。そして、成形金型2の上型42を上昇させ、約15mm浮かせた状態で停止した。次に中空中子34を真空圧引きしそのまま保持させたところ、中空構造FRP成形体が成形金型2より離型した。
【0028】
この後、上型42を完全に上昇させ、中空中子34と共に中空構造FRP成形体を成形金型2より取り出した。
【0029】
そして、中空中子34と共に中空構造FRP成形体を十分除熱したところで、中空中子34を開口部から引き抜くことができた。
【0030】
該成形体は軽量で、一様な中空断面を有し、非常に高品位の表面を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、中空構造の翼形状を持つFRP成形体、特に軽量性、強化繊維織物の織り目をみせる意匠性が要求されるものに利用できる。用途としては、風車翼、自動車用スポイラー、その他一般産業用中空部材などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施態様に係るRTM成形システムの系統図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る成形金型の概略斜視図である。
【図3】本発明の一例を示す基材巻き付けシステムによる強化繊維プリフォームの製造方法である。
【図4】本発明の一例を示す基材巻き付けシステムによる強化繊維プリフォームの製造方法である。
【図5】本発明の一例を示す強化繊維プリフォームの断面図である。
【図6】図5に示す強化繊維プリフォームの成形金型への配置図である。
【図7】図5における強化繊維プリフォーム配置後の型締め状態図である。
【符号の説明】
【0033】
1 金型昇降装置
2 成形金型
3 樹脂注入装置
4 混合ユニット
5 主剤タンク
6 硬化剤タンク
7a 真空ポンプ
7b 加圧ポンプ
8a 注入口
8b 排出口
9 油圧ユニット
10 油圧ポンプ
11 油圧シリンダー
12 逆止弁
13 樹脂注入流路
14 排出路
15 樹脂トラップ
16 上型
17 下型
18 分割型
21 バイスグリップ
22a 注入バルブ
22b 排出バルブ
22c 制御装置
23 加圧装置
24 真空ポンプ
25、26 温調機
31 注入樹脂の圧力計
32 型内樹脂の圧力計
33 強化繊維プリフォーム
34 中空中子
35 原反
36、40 強化繊維基材
37 熱融着テープ
38 アイロン
39 重り
41 圧空口
42 上型
43 下型
44 樹脂注入用ランナー
45 吸引排出用ランナー
46a注入口
46b吸引排出口
47 基材巻き付けシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面の少なくとも一部に直線部を有する翼形状の中空構造の中子に、強化繊維基材を該中子の翼弦長方向に巻付けたプリフォームを作成する際に、下記式を満たすように巻き付け張力を制御したプリフォームを作成し、該プリフォームに内圧を付与しながら、RTM成形することを特徴とするFRPの製造方法。
100*{X−(Y+Z)}/Z=A(A≦0)・・・(1)
0.3≦|A|<0.7 ・・・(2)
式中
X:強化繊維を巻き付けた後の翼弦長寸法
Y:巻付けた強化繊維基材の厚み
Z:中子単体の翼弦長寸法
【請求項2】
強化繊維基材の引っ張り弾性率が50GPa以上の強化繊維を使用する請求項1に記載のFRPの製造方法。
【請求項3】
中子材料の曲げ弾性率が300〜10,000MPaの範囲である請求項1または2のいずれかに記載のFRP製造方法。
【請求項4】
板厚が0.6〜4.0mmの中子である請求項1〜3のいずれかに記載のFRPの製造方法。
【請求項5】
内圧成形後、FRP体内から中子を除去する請求項1〜4のいずれかに記載のFRP製造方法
【請求項6】
中子の材料がマトリックス樹脂との離型性を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載のFRP製造方法。
【請求項7】
少なくとも一つの開口部を有する中子を用いる事を特徴とした請求項1〜6のいずれかに記載のFRP製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂材料の中子を使用することを特徴とした請求項1〜7のいずれかに記載のFRP製造方法。
【請求項9】
ブロー成形の中子を使用する事を特徴とした請求項1〜8のいずれかに記載のFRP製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−90810(P2007−90810A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286339(P2005−286339)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】