説明

中継局送信機の系統切替え制御方法

【課題】Rb発振器の周波数ずれを検知するだけでなく、送信変換器及び受信変換器の周波数ずれも検知することができる中継局送信機の系統切替え制御方法の実現。
【解決手段】2系統の送信機の一方の出力信号を切替え送信する中継局送信機において、1号、2号系の各Rb発振器の周波数偏差を検出し、検出した周波数偏差状態に応じ、1号系から2号(1号)系への切替え制御、1号(2号)系の送信変換器又は受信変換器をフリーラン動作とさせる制御、1号及び2号系の送信変換器(受信変換器)をフリーラン動作とさせる制御の内、対応する制御を行う中継局送信機の系統切替え制御方法である。また、1号系、2号系送信機の各送信変換器、受信変換器の周波数偏差状態に応じ、対応する制御を行う中継局送信機の系統切替え制御方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主に地上デジタル中継局送受信装置において、送信機の周波数精度が規格内であるか否かを判断し、送信機の1号、2号の系統を切替える制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な中継局送信機の系統を図3に示す。従来、送信機の1号、2号の系統を切替える制御動作では、Rb発振器8−1,8−2から出力される周波数異常で送信機の1号、2号の系統を切替える手段がある。また、送信変換器4−1,4−2、受信変換器2−1,2−2内のPLLのアンロックにより1号、2号の系統を切替える手段がある。
この従来の切替え制御動作では、例えば、Rb発振器8−1,8−2の1号、2号とも周波数異常となった場合、1号系、2号系共に異常のため、切替動作は行わない。従って、送信変換器4−1,4−2、受信変換器2−1,2−2の1号系、2号系共に、周波数のずれた10MHzに同期をかけていることになる。
また、送信変換器4−1,4−2、受信変換器2−1,2−2内のPLLがアンロックとなった場合、このアンロックの状態では、送・受信変換器がPLLの引き込み範囲に入るか否かは判断できるが、周波数が規格内であるか否かを判断することはできない(ずれているか否かは分からない)ものである。
【特許文献1】特開2003−110467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術ではRb発振器の周波数ずれは検知できるが、送・受信変換器の周波数ずれは判断できない。また、Rb発振器が1号系、2号系共に周波数ずれを起こした場合であっても、送・受信変換器のPLLの引き込み範囲内であれば周波数はアンロックとならないため、ずれた周波数でロック状態となるといった問題があった。
本発明はこれらの欠点を除去し、Rb発振器の周波数ずれを検知するだけでなく、送信変換器及び受信変換器の周波数ずれも検知することができる中継局送信機の系統切替え制御方法の実現を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記目的を達成するため、1号、2号の2系統の中継局送信機を備え、該1号系、2号系の送信機のいずれか一方の出力信号を切替え送信する中継局送信機において、上記1号系、2号系送信機の各Rb発振器の周波数偏差を検出し、該検出した周波数偏差状態に応じ、1号(2号)系から2号(1号)系への切替え制御、1号(2号)系の送信変換器または受信変換器をフリーラン動作とさせる制御、1号及び2号系の送信変換器(受信変換器)をフリーラン動作とさせる制御の内、対応する制御を行う中継局送信機の系統切替え制御方法である。
また、上記1号系、2号系送信機の各送信変換器、受信変換器の周波数偏差を検出し、該検出した周波数偏差状態に応じ、1号(2号)系から2号(1号)系への切替え制御、1号(2号)系から2号(1号)系へ切替えると共に1号(2号)系の送信変換器または受信変換器をフリーラン動作とさせる制御、所定の周波数偏差が発生している装置をフリーラン動作とさせる制御の内、対応する制御を行う中継局送信機の系統切替え制御方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、従来のシステムよりも格段に周波数偏差に対して正確な制御動作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図1、図2を用いて本発明の中継局送信機における系統切替え制御方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の中継局送信機の系統を示すブロック図で、11は入力フィルタ、12−1,12−2は受信変換器、13−1,13−2はIF遅延装置、14−1,14−2は送信変換器、15−1,15−2は1.5W PA(電力増幅器)、16はPA切替制御器、17は出力フィルタ、18−1,18−2はRb発振器である。図2は、本発明のRb発振器18−1における周波数異常1,2を検出、報知する手段の一実施例を示すブロック図で、18−1−1はGPS受信部、18−1−2は周波数計測部、18−1−3は定位相雑音回路、18−1−4はRb発振部、18−1−5はOR回路である。なお、Rb発振器18−2も同様の構成である。
ここで、送信機の1号、2号の系統を切替える場合の通常の制御動作は、従来と同様、PA切替制御器16において、Rb発振器18−1,18−2から出力される周波数異常で送信機の1号、2号の系統を切替える。また、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2内のPLLのアンロックにより1号、2号の系統を切替える。
このような切替え制御動作では、例えば、Rb発振器18−1,18−2の1号、2号とも周波数異常となった場合、1号系、2号系共に異常のため、切替動作は行われず、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2の1号系、2号系共に、周波数のずれた10MHzに同期をかけていることになる。また、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2内のPLLがアンロックとなった場合、このアンロックの状態では、送・受信変換器の周波数が規格内であるか否かを判断することはできない(ずれているか否かは分からない)。
【0007】
そこで本発明では、図1、図2に示すように、Rb発振器18−1,18−2に、例えば、下記に示すようなRb発振器の周波数異常1,2を検出する手段を設ける。 なお、図2には、Rb発振器18−1のみの構成しか図示していないが、Rb発振器18−2についても同様の構成、動作である。
まず、Rb発振器18−1(18−2)における周波数異常1の検出は、周波数計測部18−1−2において、GPS受信部18−1−1からのGPS信号(例えば、1pps信号)を基準として、例えば、地上デジタルTVチャンネルの最高周波数である62chの局発信号と周波数偏差仕様値(±0.2Hz、±0.4Hzまたは±400Hz)から算出する。
(1)仕様値が±0.2Hzの場合、
62chの局発周波数=804.2928571(MHz)であるので、Rb発振器の周波数異常1のしきい値を約0.00025ppmとする。
(2)仕様値が±0.4Hzの場合、
同様にして、約0.00050ppmとする。
(3)仕様値が±400Hzの場合、
同様にして、約0.5ppmとする。
ここで、上記(1)(2)(3)において、それぞれのしきい値を超えた場合、Rb発振器18−1(18−2)が周波数異常1であることを検出する。
【0008】
次に、Rb発振器18−1,18−2における周波数異常2の検出は、例えば、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2内のPLLロック範囲と周波数偏差から算出する。
現状、送信変換器、受信変換器の局発信号は水晶のVCOをRb発振器に同期をかけて(PLL)使用するが、水晶の周波数可変範囲はおよそ5KHzある。62chで考えた場合、PLLの引き込み範囲は、
引き込み範囲=5kHz/804.2928571Mhz≒6.2ppmとなる。
従って、Rb発振器の周波数が6.2ppmずれても(62Hzずれても)、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2のPLLはアンロックとはならないことになる。
一方、送信変換器、受信変換器で用いている水晶のVCOはフリーラン動作で周波数安定度は0.5ppm程度である。 即ち、Rb発振器が0.5ppmよりずれた場合には、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2のPLL動作を止めて、フリーラン動作させたほうが周波数ずれは少ないことになる。
【0009】
従って、例えば、Rb発振器18−1,18−2における周波数異常2のしきい値を、0.5ppmに設定し、下記のような制御を行うことで、周波数ずれを極力抑えることが可能となる。
1)1号(2号)Rb発振器18−1(18−2)が周波数異常1を発生させた場合は、PA切替制御器16等により、1号(2号)系から2号(1号)系へ切替える。
2)1号(2号)Rb発振器18−1(18−2)が周波数異常2を発生させた場合は、PA切替制御器16等により、1号(2号)送信変換器14−1(14−2)、受信変換器12−1(12−2)をフリーラン動作とさせるよう制御する。
3)1号,2号Rb発振器18−1,18−2共に周波数異常2を発生させた場合は、PA切替制御器16等により、1号,2号送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2をフリーラン動作とさせるよう制御する。
【0010】
次に、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2における周波数異常3,4について述べる。
送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2は、現状では周波数ずれを等価的にPLLのロック・アンロックにより検出している。これは前述したように、VCOの可変範囲によりPLLの引き込み範囲が決まるため、VCOの可変範囲を仕様内に狭めることで対応できるが、現実的には難しい。
従って、本発明では、Rb発振器18−1における周波数計測部18−1−2とOR回路18−1−5と同様の構成を有する、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2に、前述の1pps信号を取り込ませ(1pps信号は例えばGPS受信部18−1−1内蔵のRb発振器からもらえばよい)、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2自らが1pps信号と局発信号を比較することで、PLLの引き込み範囲内であっても局発周波数が仕様範囲内であるか否かを検出し、即ち周波数異常3を出力することが可能である。
ここで、Rb発振器18−1と同様にして考えると、送信変換器、受信変換器における周波数異常3のしきい値は、
(1)仕様が±0.2Hzの場合、 0.00025ppm
(2)仕様が±0.4Hzの場合、 0.0005ppm
(3)仕様が±400Hzの場合、 0.5ppm
とすればよい。
【0011】
また、送信変換器、受信変換器における周波数異常4についても、Rb発振器18−1,18−2における周波数異常2と同様にして、しきい値を0.5ppmとすればよい。
従って、送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2における周波数異常3,4の制御動作としては、下記のような制御を行うことで、周波数ずれを極力抑えることが可能となる。
1)1号(2号)送信変換器14−1(14−2)、又は受信変換器12−1(12−2)が周波数異常3を発生させた場合、PA切替制御器16等により、1号(2号)系から2号(1号)系へ切替える。
2)1号(2号)送信変換器14−1(14−2)、又は受信変換器12−1(12−2)が周波数異常4を発生させた場合、PA切替制御器16等により、1号(2号)系から2号(1号)系へ切替えると共に、1号(2号)送信変換器14−1(14−2)、又は受信変換器12−1(12−2)をフリーランモードに制御する。
3)1号、2号送信変換器14−1,14−2、受信変換器12−1,12−2が共に周波数異常4を発生させた場合、PA切替制御器16等により、周波数異常4を発生させている装置に対してフリーランモードに制御する。
ここで、フリーランモードからPLLモードへの復帰は、リセット等を用いれば良い。
以上の様な中継局送信機における系統切替え制御動作を行うことにより、従来のシステムより格段に周波数偏差に対して正確な制御動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の中継局送信機における系統切替え制御構成の一実施例を示すブロック図
【図2】本発明のRb発振器における周波数異常検出構成の一実施例を示すブロック図
【図3】従来の中継局送信機における系統切替え制御構成の一例を示すブロック図
【符号の説明】
【0013】
12−1,12−2:受信変換器、14−1,14−2:送信変換器、15−1,15−2:1.5W PA、16:PA切替制御器、18−1,18−2:Rb発振器、18−1−2:周波数計測部、18−1−4:Rb発振部、18−1−5:OR回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1号、2号の2系統の中継局送信機を備え、該1号系、2号系の送信機のいずれか一方の出力信号を切替え送信する中継局送信機において、
上記1号系、2号系送信機の各Rb発振器の周波数偏差を検出し、該検出した周波数偏差状態に応じ、1号(2号)系から2号(1号)系への切替え制御、1号(2号)系の送信変換器または受信変換器をフリーラン動作とさせる制御、1号及び2号系の送信変換器(受信変換器)をフリーラン動作とさせる制御の内、対応する制御を行うことを特徴とする中継局送信機の系統切替え制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の中継局送信機の系統切替え制御方法において、
上記1号系、2号系送信機の各送信変換器、受信変換器の周波数偏差を検出し、該検出した周波数偏差状態に応じ、1号(2号)系から2号(1号)系への切替え制御、1号(2号)系から2号(1号)系へ切替えると共に1号(2号)系の送信変換器または受信変換器をフリーラン動作とさせる制御、所定の周波数偏差が発生している装置をフリーラン動作とさせる制御の内、対応する制御を行うことを特徴とする中継局送信機の系統切替え制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−55510(P2009−55510A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222217(P2007−222217)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】