説明

中継送受信装置

【課題】受信品質を確保するとともに、チャネルのトラフィック負荷を小さくすることが可能な中継送受信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る中継送受信装置は、基地局1からの信号から、プリアンブル信号51、通信データ信号53それぞれを検知すべきタイミングを出力するゲート制御回路151を備える。そして、ゲート制御回路151から出力されたタイミングに基づいて、基地局1からの信号から、プリアンブル信号51、通信データ信号53の受信レベルをチャネルごとに検知する基地局側受信レベル検知回路112を備える。そして、プリアンブル信号51の受信レベルが一定値以上となるチャネルのうち、通信データ信号53の受信レベルが最も小さい一のチャネルを選択するチャネル選択回路161を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局と基地局との間で行われる無線送受信を中継する中継送受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中継送受信装置は、基地局と移動局との間に設置され、双方向の信号を中継するときに、それら信号を適正な利得(以下、中継利得と記すこともある)で増幅する。信号を自動的に増幅する動作は、AGC(Automatic Gain Control)動作と呼ばれる。例えば、ゾーン縮小や、通話品質劣化が生じる屋内などのシャドウィング領域に移動局があっても、中継送受信装置が、基地局と移動局との間の信号を適正な利得で増幅することにより、基地局と移動局とは互いに良好な通信を行うことができる。中継送受信装置における中継用のチャネルを選択する方法については、様々な発明がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発明では、受信電界強度と干渉状態に基づいて、スループットが向上するチャネル選択方法が記載されている。また、特許文献2に記載の発明では、受信チャネルに所望の送信信号が含まれているか否かの判定に応じて、受信チャネルの順番を変更している。
【0004】
従来の中継送受信装置では、基地局からの信号の受信に用いる受信チャネルを選択する際、チャネルの昇順、または、降順(例えば、周波数の昇順、または、降順)などの固定の順番で、受信信号の受信レベル(電力レベル)をスキャニングする。そして、受信レベルや受信CINRが最も大きい一つのチャネルを、中継用のチャネルとして選択する。受信した複数のチャネルのうち、チャネルの受信レベルが同じ値になった場合には、同レベル時のチャネル間の昇順/降順等の優先順位に従って、一つのチャネルを選択する。
【0005】
【特許文献1】特開2006−254326号公報
【特許文献2】特許2008−118195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のチャネル選択方法では、多くの中継送受信装置が、特定のチャネルを偏って選択する傾向にある。特に、広帯域無線アクセスシステムのようにチャネル数が2〜3しかない場合や、FFR技術等の適用により全ての基地局が同一チャネルを使用している場合では、上述のチャネルスキャン方式では、決まったチャネルしか選択されない可能性が高くなる。その結果、多くの中継送受信装置が、特定のチャネルだけを集中して選択するため、その特定のチャネルのトラフィック負荷が大きくなる。これにより、中継送受信装置は、中継されるべき全ての移動端末を収容できなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、受信品質を確保するとともに、チャネルのトラフィック負荷を小さくすることが可能な中継送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る中継送受信装置は、基地局からの第1,第2の信号が付加された信号をチャネルごとに受信する中継送受信装置であって、前記信号から、前記第1,第2の信号それぞれを検知すべきタイミングを出力するゲート制御部を備える。そして、前記ゲート制御部から出力された前記タイミングに基づいて、前記信号から前記第1,第2の信号の受信レベルを前記チャネルごとに検知する受信レベル検知部を備える。そして、前記受信レベル検知部で検知された前記第1の信号の受信レベルが一定値以上となる前記チャネルのうち、前記受信レベル検知部で検知された前記第2の信号の受信レベルが最も小さい一のチャネルを選択するチャネル選択部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の中継送受信装置によれば、第1の信号の受信レベルが一定値以上となるチャネルのうち、第2の信号の受信レベルが最も小さい一のチャネルを選択する。そのため、受信品質を確保するとともに、チャネルのトラフィック負荷を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態に係る中継送受信装置を備える移動体通信システムの構成を示す図である。図に示すように、移動体通信システムは、基地局1と、移動端末2,3と、中継送受信装置(以下、レピータと記すこともある)10とを備える。移動端末2は、基地局1配下の移動端末である。中継送受信装置10は、シャドウィングが生じている領域(シャドウィング領域)4にある移動端末3と、基地局1との間で行われる無線送受信を中継する。
【0011】
レピータ10は、基地局1から送信される周波数f1またはf2(f1≠f2)の電波信号を受信し(下り受信)、2つの周波数のうちのいずれか一方の周波数の信号を、例えば、別の周波数f3に変換して移動端末3に送信する(下り送信)。また、レピータ10は、移動端末3から送信される周波数f3の信号を受信し(上り受信)、その信号を、上述のいずれか一方の周波数に変換して基地局1に送信する(上り送信)。ダウンリンク(下り回線)では下り受信と下り送信とを行い、アップリンク(上り回線)では、上り受信と上り送信とを行う。
【0012】
図2は、本実施の形態に係るレピータ10の構成を示す図である。図に示すように、レピータ10は、基地局(端末)側アンテナ11(21)と、基地局(端末)側アンテナフィルタ101(201)と、基地局(端末)側TDDスイッチ102(202)と、基地局(端末)側LNA103(203)と、基地局(端末)側ダウンコンバータ104(204)と、基地局(端末)側受信AGCアンプ105(205)と、基地局(端末)側HPA106(206)と、基地局(端末)側アップコンバータ107(207)と、基地局(端末)側送信ベースバンドアンプ108(208)と、基地局(端末)側局部発振回路(シンセサイザ)109(209)と、隣接チャネル除去フィルタ111(211)と、基地局(端末)側受信レベル検知回路112(212)と、基地局(端末)側AGC制御回路113(213)と、ゲート制御回路151と、チャネル選択回路161と、フレーム同期制御回路301とを備える。
【0013】
フレーム同期制御回路301は、基地局1からの信号に基づいてフレーム同期を制御する。本実施の形態に係るフレーム同期制御回路301は、基地局1からの信号からタイミングを検知して、そのタイミングに基づいて、上述した基地局(端末)側TDDスイッチ102(202)を制御することにより、アップリンク/ダウンリンクの切り替えを行う。この方式は、TDD(Time Division Duplex)方式と呼ばれる。
【0014】
基地局(端末)側アンテナ11(21)で受信した外部からの信号は、基地局(端末)側アンテナフィルタ101(201)から基地局(端末)側LNA103(203)を経た後、基地局(端末)側ダウンコンバータ104(204)により、ベースバンド信号にダウンコンバートされる。これらダウンコンバータは、直交検波器とも呼ばれる。基地局(端末)側ダウンコンバータ104(204)からの信号は、基地局(端末)側受信AGCアンプ105(205)に出力される。基地局(端末)側受信AGCアンプ105(205)は、基地局側(端末)側アンテナ11(21)で受信した信号を利得可変に増幅する。
【0015】
隣接チャネル除去フィルタ111(211)は、基地局(端末)側受信AGCアンプ105(205)で増幅された信号のうち、所望の信号の隣接チャネル成分を抑圧する。端末(基地局)側アップコンバータ207(107)は、隣接チャネル除去フィルタ111(211)からの端末(基地局)側送信ベースバンドアンプ208(108)を介した信号を、送信周波数にアップコンバートする。端末(基地局)側アップコンバータ207(107)から出力された信号は、端末(基地局)側HPA206(106)を介して、端末(基地局)側アンテナ21(11)から外部に送信される。
【0016】
端末側受信レベル検知回路212は、移動端末3からの信号の受信レベルを検知する。端末側AGC制御回路213は、端末側受信レベル検知回路212が検知した受信レベルを、移動端末3からの受信電界強度情報として、端末側受信AGCアンプ205の制御に用いる。
【0017】
図3は、基地局側アンテナ11で受信される信号を示す図である。基地局側アンテナ11は、図3の信号を、左側から右側の順に信号を送受信する。下り回線のサブフレーム(DLサブフレーム)信号50は、基地局1から送信される信号であり、上り回線のサブフレーム(ULサブフレーム)信号60は、移動局3から送信される信号である。DLサブフレーム信号50とULサブフレーム信号60との間には、送受信切替えのための保護時間(TDDガードタイム)が設けられる。
【0018】
DLサブフレーム信号50は、本実施の形態では、プリアンブル信号51と、MAP信号52と、通信データ信号53とからなる。本実施の形態に係る中継送受信装置10は、基地局1からの第1の信号と、第2の信号とが付加された信号であるDLサブフレーム信号50をチャネルごとに受信する。本実施の形態では、第1の信号は、下り回線のサブフレーム信号50のプリアンブル信号51を含み、第2の信号は、下り回線のサブフレーム信号50の通信データ信号53を含む。プリアンブル信号51は、フレームの始まりを知らせるための信号である。MAP信号52は、位置登録、認証などの移動管理制御を行うためのプロトコルについての信号である。通信データ信号53は、通信しようとするデータについての信号である。
【0019】
図2に係る中継送受信装置10が備えるゲート制御部であるゲート制御回路151は、基地局1からのDLサブフレーム信号50から、プリアンブル信号51、および、通信データ信号53それぞれを検知すべきタイミングを出力する。本実施の形態では、ゲート制御回路151は、フレーム同期部301が出力するタイミング情報に基づいて、これら信号を検知すべきタイミングを出力する。
【0020】
本実施の形態に係る受信レベル検知部である基地局側受信レベル検知回路112は、ゲート制御回路151から出力されたタイミングに基づいて、基地局1からの信号からプリアンブル信号51、および、通信データ信号53の受信レベルをチャネルごとに検知する。基地局側AGC制御回路113は、基地局側受信レベル検知回路112が検知したプリアンブル信号51の受信レベルを、基地局1からの受信電界強度情報として、基地局側受信AGCアンプ105の制御に用いる。
【0021】
本実施の形態に係るチャネル選択部であるチャネル選択回路161は、基地局側局部発振回路109の周波数をスキャンする。そして、本実施の形態に係るチャネル選択回路161は、基地局側受信レベル検知回路112で検知されたプリアンブル信号51の受信レベルが一定値以上となるチャネルのうち、基地局側受信レベル検知回路112で検知された通信データ信号53の受信レベルが最も小さい一のチャネルを選択する。
【0022】
基地局側受信レベル検知回路112が、プリアンブル信号51の受信レベルと、通信データ信号53の受信レベルとを同時に測定することが可能であれば、チャネル選択回路161は、1回のスキャンで一のチャネルを選択してもよい。そうでなければ、チャネル選択回路161は、最初のスキャンで、プリアンブル信号51の受信レベルが一定値以上となるチャネルを選択し、次のスキャンで、当該選択したチャネルのうち、通信データ信号53の受信レベルが最も低い一のチャネルを選択してもよい。
【0023】
以上のような本実施の形態に係る中継送受信装置10では、プリアンブル信号51の受信レベルが一定値以上となるチャネルを選択する。これにより、受信品質を確保されたチャネルを選択することができる。また、本実施の形態に係る中継送受信装置10では、それらチャネルのうち、通信データ信号53の受信レベルが最も小さい一のチャネルを、中継用のチャネルとして選択する。一般に、OFDM/OFDMAシステムの場合、無線信号として送信されるデータ量と、サブキャリアの送信数は比例するので、データ量が小さいときには、その無線信号の受信レベルは小さくなる。そのため、通信データ信号53の受信レベルが最も小さい一のチャネルを選択すれば、トラフィック負荷が小さいチャネルを選択することになる。こうして、本実施の形態に係る中継送受信装置10は、このような選択を行うため、受信品質を確保するとともに、チャネルのトラフィック負荷を小さくすることができる。
【0024】
以上の中継送受信装置10では、図3に係るDLサブフレーム信号50のプリアンブル信号51および通信データ信号53に基づいて、一のチャネルを選択した。しかし、これに限ったものではなく、次のような中継送受信装置10であってもよい。中継開始時には、ULサブフレーム信号60は、基地局側アンテナ11から受信される。それを利用して、中継送受信装置10は、基地局1からのプリアンブル信号51、通信データ信号53が付加された信号と、移動端末3からの第3の信号である上り回線のサブフレーム信号60とを、基地局側アンテナ11においてチャネルごとに受信する。ゲート制御回路151は、基地局1からのDLサブフレーム信号50および移動端末3からのULサブフレーム信号60から、プリアンブル信号51、通信データ信号53、ULサブフレーム信号60それぞれを検知すべきタイミングを出力する。
【0025】
基地局側受信レベル検知回路112は、ゲート制御回路151から出力されたタイミングに基づいて、基地局1および移動端末3からの信号から、プリアンブル信号51、通信データ信号53、ULサブフレーム信号60の受信レベルをチャネルごとに検知する。チャネル選択回路161は、基地局側受信レベル検知回路112で検知されたプリアンブル信号51の受信レベルが一定値以上となるチャネルのうち、基地局側受信レベル検知回路112で検知された通信データ信号53の受信レベル、および、ULサブフレーム信号60の受信レベルの双方が最も小さい一のチャネルを選択する。例えば、通信データ信号53の受信レベルと、ULサブフレーム信号60の受信レベルとの和が最も小さく、かつ、それらの受信レベル同士の差が最も小さいチャネルを選択する。
【0026】
このような中継送受信装置によれば、上述した中継送受信装置よりも確実に、トラフィック負荷の小さいチャネルを中継用のチャネルとして選択することができる。
【0027】
なお、上述の中継送受信装置、および、ここで説明した中継送受信装置のいずれにおいても、ゲート制御回路151、および、基地局側受信レベル検知回路112、および、チャネル選択回路161を定期的に動作させることが好ましい。仮に、このように動作する構成にした場合には、トラフィック負荷の小さいチャネルを定期的に選択し直すため、固定的な伝送負荷の偏りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1に係る移動体通信システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る中継送受信装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る中継送受信装置が受信する信号を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 基地局、2,3 移動端末、4 シャドウィング領域、10 中継送受信装置、11 基地局側アンテナ、21 端末側アンテナ、50 DLサブフレーム信号、51 プリアンブル信号、52 MAP信号、53 通信データ信号、60 ULサブフレーム信号、101 基地局側アンテナフィルタ、102 基地局側TDDスイッチ、103 基地局側LNA、104 基地局側ダウンコンバータ、105 基地局側受信AGCアンプ、106 基地局側HPA、107 基地局側アップコンバータ、108 基地局側送信ベースバンドアンプ、109 基地局側局部発振回路、111,211 隣接チャネル除去フィルタ、112 基地局側受信レベル検知回路、113 基地局側AGC制御回路、151 ゲート制御回路、161 チャネル選択回路、201 端末側アンテナフィルタ、202 端末側TDDスイッチ、203 端末側LNA、204 端末側ダウンコンバータ、205 端末側受信AGCアンプ、206 端末側HPA,207 端末側アップコンバータ、208 端末側送信ベースバンドアンプ、209 端末側局部発振回路、212 端末側受信レベル検知回路、213 端末側AGC制御回路、301 フレーム同期制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局からの第1,第2の信号が付加された信号をチャネルごとに受信する中継送受信装置であって、
前記信号から、前記第1,第2の信号それぞれを検知すべきタイミングを出力するゲート制御部と、
前記ゲート制御部から出力された前記タイミングに基づいて、前記信号から前記第1,第2の信号の受信レベルを前記チャネルごとに検知する受信レベル検知部と、
前記受信レベル検知部で検知された前記第1の信号の受信レベルが一定値以上となる前記チャネルのうち、前記受信レベル検知部で検知された前記第2の信号の受信レベルが最も小さい一のチャネルを選択するチャネル選択部とを備える、
中継送受信装置。
【請求項2】
基地局からの第1,第2の信号が付加された信号と、移動局からの第3の信号とをチャネルごとに受信する中継送受信装置であって、
前記信号および前記第3の信号から、前記第1〜第3の信号それぞれを検知すべきタイミングを出力するゲート制御部と、
前記ゲート制御部から出力された前記タイミングに基づいて、前記信号および前記第3の信号から前記第1〜第3の信号の受信レベルを前記チャネルごとに検知する受信レベル検知部と、
前記受信レベル検知部で検知された前記第1の信号の受信レベルが一定値以上となる前記チャネルのうち、前記受信レベル検知部で検知された前記第2の信号の受信レベル、および、前記第3の信号の受信レベルの双方が最も小さい一のチャネルを選択するチャネル選択部とを備える、
中継送受信装置。
【請求項3】
前記第1の信号は、下り回線のサブフレーム信号のプリアンブル信号を含む、
請求項1または請求項2に記載の中継送受信装置。
【請求項4】
前記第2の信号は、下り回線のサブフレーム信号の通信データ信号を含む、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の中継送受信装置。
【請求項5】
前記第3の信号は、上り回線のサブフレーム信号を含む、
請求項2に記載の中継送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−93540(P2010−93540A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261495(P2008−261495)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】