乗員保護装置
【課題】シートに着座した乗員と車両の側部との間でエアバッグを迅速且つ確実に展開する空間を確保できるようにする。
【解決手段】制御コンピュータ28は、側部衝突予測器27から取り込んだ受信情報に基づいて、車両の側方の物体までの距離や、車両の側方の物体と車両との間における相対速度を算出すると共に、この算出結果に基づいて側部衝突発生の可能性の有無を判断する。側部衝突の可能性が有る場合、制御コンピュータ28は、電動モータ18を正転させる。これにより、アームレスト14が図1(b)に実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動する。退き位置にあるアームレスト14は、エアバッグの展開領域(E1,E2)外にある。
【解決手段】制御コンピュータ28は、側部衝突予測器27から取り込んだ受信情報に基づいて、車両の側方の物体までの距離や、車両の側方の物体と車両との間における相対速度を算出すると共に、この算出結果に基づいて側部衝突発生の可能性の有無を判断する。側部衝突の可能性が有る場合、制御コンピュータ28は、電動モータ18を正転させる。これにより、アームレスト14が図1(b)に実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動する。退き位置にあるアームレスト14は、エアバッグの展開領域(E1,E2)外にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに着座した乗員を車両における側部衝突から保護する乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに着座した乗員とサイドドアとの間でエアバッグを膨張して展開させるエアバッグ装置は、車両の側部衝突から乗員を保護する。しかし、サイドドアにアームレストを固定した車両では、アームレストがエアバッグの展開に与える影響を考慮して形状や位置を設定することとなり、デザイン上の制約を受けている。
【0003】
これを解決する手段として、特許文献1に開示の装置では、アームレストが前後方向へスライド可能に設けられており、シートにはエアバッグ装置が設けられている。エアバッグが膨張すると、膨張するエアバッグがアームレストを前方へ押して移動させる。アームレストが通常の位置から前方へ移動するため、エアバッグは、アームレストの影響を抑制されて膨張し、展開する。
【0004】
特許文献2に開示の装置では、側部衝突を予測する手段によって側部衝突が予測されたときには、ドアトリムの上部に設けられた保護手段が作動される。保護手段は、可動パネルをパンタグラフ機構によって駆動する構成であり、側部衝突が予測されたときには、アームレストよりも上にある可動パネルがサイドドアに設けられたアームレストから遠ざけられる。これにより、乗員の腕部がアームレストに置かれていた場合には、乗員の腕部がサイドドアから遠ざけられる。又、特許文献2では、横加速度センサが採用されており、サイドエアバッグ装置がサイドドアに設けられている。横加速度センサによって側部衝突が検出されたときには、サイドドアに設けられたサイドエアバッグ装置が作動され、乗員の胸部や頭部が保護される。
【0005】
特許文献3に開示の装置では、アームレストが使用位置から下方へ移動可能に設けられており、側部衝突が発生したときにはアームレストが使用位置から下方へ移動される。アームレストは、駆動装置(強制降下装置)によって強制的に下方へ移動される。
【特許文献1】特開平9−315258号公報
【特許文献2】特開2001−206176号公報
【特許文献3】特開2005−231471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示の装置では、エアバッグの膨張力をアームレストを動かす駆動力として利用し、アームレストを前方へ移動させるため、エアバッグの展開の迅速性と、乗員の保護に必要なエアバッグの反力とを確保するためには、より大きな膨張力を必要とすることとなる。
【0007】
特許文献3に開示の装置では、駆動装置(強制降下装置)によってアームレストを強制的に下方へ移動させるため、アームレストを下方へ移動させた後にエアバッグを展開させる場合には、エアバッグの展開の迅速性が損なわれる可能性はない。しかし、側部衝突が発生してからアームレストを移動させるため、エアバッグと同程度の速さで使用位置から下方へアームレストを移動させる必要があり、アームレストの高速移動の実現化が困難であると考えられる。
【0008】
特許文献2に開示の装置では、側部衝突が予測されたときには可動パネルがアームレストから遠ざけられるが、移動された可動パネルがその位置にとどまる構成であり、サイドドアと乗員との間でエアバッグを展開させる空間が確保されない。
【0009】
本発明は、アームレストを有した車両においても、シートに着座した乗員と車両の側部との間でエアバッグを迅速且つ確実に展開する空間を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両における側部衝突を予測する側部衝突予測手段と、車両側部と車両のシートに着座した乗員との間でエアバッグを膨張させるエアバッグ装置とを備えた車両における乗員保護装置を対象とし、請求項1の発明は、前記シートに着座した乗員と前記車両側部との間に設けられたアームレストと、前記エアバッグの展開領域内にある前記アームレストの占有割合が低減するように、前記アームレストの使用位置から前記アームレストを退かせる退かせ手段とを備え、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記退かせ手段が前記アームレストを前記使用位置から退かせることを特徴とする。
【0011】
側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、アームレストがエアバッグ装置とは別の退かせ手段の作動によって使用位置から退かせられ、エアバッグの展開領域内にあるアームレストの占有部分が低減する。従って、シートに着座した乗員と車両の側部との間でエアバッグを迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0012】
好適な例では、前記退かせ手段は、前記使用位置から前記エアバッグの展開領域外へ前記アームレストを退かせる。
アームレストがエアバッグの展開領域外へ出てしまうため、シートに着座した乗員と車両の側部との間でのエアバッグの迅速且つ適正な展開がアームレストによって妨げられる可能性はなくなる。
【0013】
好適な例では、前記退かせ手段は、前記アームレストを下方へ移動させる。
乗員の腕がアームレストに載っている場合、アームレストが下方へ移動すると、乗員の腕がアームレストから外れやすい。乗員の腕がアームレストから外れると、エアバッグを迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0014】
好適な例では、前記退かせ手段は、下方へ、且つ前記シートに着座した乗員の腰部の高さ位置に前記アームレストを移動させる。
側部衝突が発生した場合、乗員の腰部の高さ位置に移動されたアームレストは、乗員の腰部保護に寄与する。
【0015】
好適な例では、前記退かせ手段は、下方へ、且つ前記シートの座部の高さ位置に前記アームレストを移動させる。
側部衝突が発生した場合、シートの座部の高さ位置に移動されたアームレストは、車両側部の内側への変形を抑制することに寄与する。
【0016】
好適な例では、前記アームレストは、車両のサイドドアに設けられており、退かせ手段によって下方へ移動される前記アームレストの下方にはドアポケットが設けられており、前記ドアポケットを前記サイドドア内へ移動させるための移動手段が設けられており、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記移動手段は、前記ドアポケットを前記サイドドア内へ移動させる。
【0017】
ドアポケットがサイドドア内へ移動させられるため、ドアポケットがアームレストを下方へ移動させるときの妨げとなることはない。
好適な例では、前記退かせ手段は、前記移動手段を兼ねており、前記ドアポケットは、前記アームレストの下方への移動に連動して、前記サイドドア内へ移動される。
【0018】
退かせ手段に移動手段を兼ねさせた構成は、コストに関して有利である。
好適な例では、前記退かせ手段は、前記アームレストを上方へ移動させる。
乗員の腕がアームレストに載っている場合、アームレストが上方へ移動すると、乗員の腕も上方へ移動する。従って、エアバッグを迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0019】
好適な例では、前記退かせ手段は、前記アームレストを平行移動させる。
アームレストを平行移動させる構成は、使用位置から退き位置へアームレストを移動させる上で信頼性の高い簡便な構成である。
【0020】
好適な例では、前記退かせ手段は、前記アームレストを支持する平行4節リンク機構を含み、前記アームレストは、前記平行4節リンク機構の平行移動リンクに連結されている。
【0021】
平行4節リンク機構は、アームレストを平行移動させる機構として好適である。
好適な例では、前記アームレストは、車両のサイドドアに設けられており、前記平行4節リンク機構は、前記サイドドアと交差する方向に前記アームレストを平行移動させる。
【0022】
アームレストの下方にドアポケットがある場合、ドアポケットとシートの座部との間にアームレストを移動させるように構成することが可能となる。
好適な例では、前記アームレストの下方にドアポケットが設けられており、前記アームレストは、前記サイドドア側から車室内側へ向かいつつ下動されるようになっており、前記ドアポケットは、前記アームレストの下動に連動して下動される。
【0023】
アームレストの下動に連動してドアポケットを下動させる構成は、ドアポケットとシートの座部との間のスペースに余裕がない場合にも、ドアポケットとシートの座部との間にアームレストを移動させることを可能にする。
【0024】
好適な例では、前記アームレストは、前記車両側部の一部であるセンターピラーに設けられており、前記退かせ手段は、車両のサイドドアの開閉に連動するように前記アームレストを使用位置と退き位置とに切り換え配置する連動制御手段であり、前記連動制御手段は、前記サイドドアの開状態から閉状態への移行に応じて前記アームレストを退き位置から使用位置へ切り換え配置すると共に、前記サイドドアの閉状態から開状態への移行に応じて前記アームレストを使用位置から退き位置へ切り換え配置し、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記連動制御手段は、前記アームレストを使用位置から退き位置へ切り換え配置する。
【0025】
サイドドアが開かれるとき、及び側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、アームレストが使用位置から退き位置へ切り換え配置される。アームレストの退き位置を乗り降りする際の妨げにならない場所に設定すれば、サイドドアが開かれたときには、アームレストが乗り降りする際の妨げにならない場所に配置される。
【0026】
好適な例では、前記退き位置は、前記センターピラーに対応する位置である。
センターピラーに対応する位置に退き位置を設定した構成は、乗員の乗り降りの容易性に関して好ましい。
【0027】
好適な例では、前記退かせ手段は、その作動後にその作動前の初期状態に復帰可能な可逆装置であり、前記退かせ手段がその作動後にその作動前の初期状態に復帰したときには、前記アームレストは、使用位置に復帰する。
【0028】
退かせ手段が作動されたとしても、側部衝突が起きない限り、退かせ手段を初期状態に復帰させて使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の乗員保護装置は、シートに着座した乗員と車両の側部との間でエアバッグを迅速且つ確実に展開する空間を確保できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1(a)は、車両の前側から見た図である。図1(a)に示すように、車両の右側のサイドドア11のフレームを構成するインナーパネル12にはドアトリム13が固定されており、ドアトリム13にはアームレスト14が車両の前後方向へ移動可能に設けられている。サイドドア11のフレームを構成するアウターパネル16とインナーパネル12との間には上下に移動可能に設けられた窓ガラス15が配置されている。
【0031】
図2は、車両の前側から見た図である。図2に示すように、インナーパネル12とドアトリム13との間の空間部には傘歯車17が配設されている。傘歯車17は、支軸171に回転可能に支持されており、支軸171は、インナーパネル12とドアトリム13とに架け渡されて支持されている。傘歯車17にはピニオンギヤ20が一体形成されている。
【0032】
支軸171の下方におけるインナーパネル12の一部121は、ドアトリム13側に向けて切り起こされており、この切り起こし部121には電動モータ18が支持されている。電動モータ18の出力軸181は、上方に向けられており、出力軸181の先端部には傘歯車19が止着されている。傘歯車19は、傘歯車17に噛合されており、電動モータ18の正逆回転によって傘歯車17が正逆転される。
【0033】
図1(b)は、車両の上から見た図である。図1(b)に示すように、アームレスト14は、ドアトリム13から車室内側へ張り出す腕載せ部21と、腕載せ部21に連結して固定された平板形状の基部22とを備えている。基部22は、ドアトリム13に対向しており、ドアトリム13に対向する基部22の対向面には車両の前後方向に長い被ガイド部221が一体形成されている。ドアトリム13には車両の前後方向に長いガイド孔23が形成されている。ガイド孔23は、ドアトリム13の側方に向けて開口しており、被ガイド部221は、ガイド孔23を貫通してドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部に突出している。被ガイド部221は、ガイド孔23に沿って車両の前後方向へスライド可能に案内されるようになっている。
【0034】
図4は、車両の下側から見た図である。図4に示すように、ドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部に突出する被ガイド部221の突出端部にはラックギヤ222が一体形成されている。ラックギヤ222の歯列の方向は、車両の前後方向であり、ラックギヤ222は、ピニオンギヤ20に噛合されている。傘歯車17が正逆転すると、傘歯車17の回転がピニオンギヤ20を介してラックギヤ222へ伝えられ、ラックギヤ222がピニオンギヤ20に噛合しながら車両の前後方向に往復動する。これにより、アームレスト14が車両の前後方向に往復動する。
【0035】
アームレスト14の往復動範囲は、図1(b)に実線で示す使用位置と、鎖線で示す退き位置との間である。
図3は、車両の右側から見た図である。図3に示すように、サイドドア11に対応するシート24は、座部241と背もたれ部242とからなる。背もたれ部242にはサイドエアバッグ装置25が内蔵されている。サイドエアバッグ装置25は、ガス発生源としてのインフレータ251と、エアバッグ252と、インフレータ251及びエアバッグ252を収容するケース253とから構成されている。ケース253は、背もたれ部242を構成するフレーム(図示略)に取り付けられている。インフレータ251が作動されると、インフレータ251から高圧ガスがエアバッグ252へ送られる。これにより、エアバッグ252がシート24に着座した乗員Mとサイドドア11との間で膨張展開する。詳述すると、エアバッグ252は、図1(b)及び図4に実線で示す使用位置にあるアームレスト14に対応するサイドドア11の内側部と、シート24に着座した乗員Mとの間で膨張展開する。エアバッグ252は、乗員Mの主として胸を車両の側部衝突から保護する。
【0036】
図1(a)に示す鎖線E1内の領域、及び図1(b)に示す鎖線E2内の領域は、膨張展開するエアバッグ252が存在する可能性があると見なされる展開領域である。以下においては、エアバッグ252の展開領域を展開領域(E1,E2)と記す。
【0037】
図1(a)に示すように、サイドドア11には横加速度検出器26及び側部衝突予測器27が設けられている。横加速度検出器26は、車両の側方からサイドドア11に加えられる衝撃(車両の側部衝撃)を横加速度(車両の車幅方向の加速度)として検出する。側部衝突予測器27は、超音波あるいは電波を発信し、車両の側方の物体から反射した超音波あるいは電波を受信する。
【0038】
横加速度検出器26によって検出された横加速度情報、及び側部衝突予測器27によって検出された受信情報は、制御コンピュータ28へ送られる。制御コンピュータ28は、横加速度検出器26から得られる横加速度情報に基づいて、サイドエアバッグ装置25の作動(エアバッグ252の膨張展開)を制御する。又、制御コンピュータ28は、側部衝突予測器27から得られる受信情報に基づいて、車両の側方の物体までの距離や、車両の側方の物体と車両との間における相対速度を算出し、この算出結果に基づいて電動モータ18の作動を制御する。
【0039】
図5は、制御コンピュータ28によって遂行される乗員保護制御プログラムを表すフローチャートである。以下、乗員保護制御をフローチャートに基づいて説明する。なお、通常時においては、アームレスト14は、図1(b)に実線で示す使用位置にある。使用位置にあるアームレスト14の一部は、展開領域(E1,E2)内にある。
【0040】
制御コンピュータ28は、側部衝突予測器27から得られる受信情報を取り込む(ステップS1)。制御コンピュータ28は、取り込んだ受信情報に基づいて、車両の側方の物体までの距離や、車両の側方の物体と車両との間における相対速度を算出すると共に、この算出結果に基づいて側部衝突発生の可能性の有無を判断する(ステップS2)。側部衝突の可能性が無い場合(ステップS2においてNO)、制御コンピュータ28は、ステップS1へ移行する。側部衝突の可能性が有る場合(ステップS2においてYES)、制御コンピュータ28は、電動モータ18を正転(図2に示すように出力軸181を矢印Q1の方向に回転する方向)させる(ステップS3)。傘歯車19は、車両の上から見て、右回りに回転し、傘歯車17及びピニオンギヤ20は、車両の左側から見て左回りに回転する。これにより、ラックギヤ222が車両の後側から前側に向けて移動し、アームレスト14が図1(b)に実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動する。退き位置にあるアームレスト14は、展開領域(E1,E2)外にある。
【0041】
ステップS3の処理後、制御コンピュータ28は、横加速度検出器26から得られる横加速度情報を取り込む(ステップS4)。制御コンピュータ28は、取り込んだ横加速度情報に基づいて、側部衝突発生の有無を判断する(ステップS5)。側部衝突が発生したとの判断が行われた場合(ステップS5においてYES)、制御コンピュータ28は、サイドエアバッグ装置25を作動させる(ステップS6)。これにより、エアバッグ252が前方へ伸長しながら膨張展開する。アームレスト14は、使用位置から退き位置へ退かせられており、エアバッグ252は、アームレスト14の使用位置に対応するドアトリム13の部分と乗員Mとの間で膨張展開する。
【0042】
側部衝突が発生していないとの判断が行われた場合(ステップS5においてNO)、制御コンピュータ28は、側部衝突が発生していないとの判断が行われてから所定時間経過したか否かを判断する(ステップS7)。所定時間が経過していない場合(ステップS7においてNO)、制御コンピュータ28は、ステップS5へ移行する。所定時間が経過している場合(ステップS7においてYES)、制御コンピュータ28は、電動モータ18を逆転(図2に示す矢印Q1とは逆の回転方向)させる(ステップS8)。これにより、アームレスト14が図1(b)に鎖線で示す退き位置から実線で示す使用位置へ復帰する。
【0043】
ステップS8の処理後、制御コンピュータ28は、ステップS1へ移行する。
横加速度検出器26及び制御コンピュータ28は、車両における側部衝突を検出する側部衝突検出手段を構成する。側部衝突予測器27及び制御コンピュータ28は、車両における側部衝突を予測する側部衝突予測手段を構成する。電動モータ18、傘歯車17,19、ピニオンギヤ20及びラックギヤ222は、乗員Mから遠ざけるように使用位置から退き位置へアームレスト14を退かせる退かせ手段を構成する。この退かせ手段は、その作動後にその作動前の初期状態に復帰可能な可逆装置である。
【0044】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)側部衝突発生の可能性があるとの予測が行われたときには、アームレスト14が電動モータ18の作動によって使用位置から退き位置へ退かせられる。退き位置にあるアームレスト14は、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)外にあり、側部衝突発生の可能性有りという予測の判断がなされた後には、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)内にはアームレスト14の占有部分は無い。従って、シート24に着座した乗員Mとサイドドア11(車両の側部)との間でエアバッグ252を迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0045】
(2)制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りとの予測の判断を行なったにも関わらず、側部衝突が発生しなかった場合には、電動モータ18が逆転されてアームレスト14が退き位置から使用位置へ復帰される。つまり、側部衝突が起きない限り、側部衝突発生の可能性有りとの予測毎に、電動モータ18によってアームレスト14を使用位置から退き位置へ移動させることができる。
【0046】
次に、図6(a),(b)の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図6(a)は、車両の前側から見た図であり、図6(b)は、車両の下側から見た図である。
【0047】
第2の実施形態では、第1の実施形態における傘歯車17の代わりに、円板形状の歯車29が用いられており、歯車29にはピニオンギヤ20Aが一体形成されている。ピニオンギヤ20Aは、ラックギヤ222に噛合されている。アウターパネル16側からインナーパネル12側へ向けて垂立状態に切り起こし形成された切り起こし部121Aには電動モータ18Aが取り付けられている。電動モータ18Aの出力軸181がドアトリム13側からインナーパネル12側に向かう方向に向けられている。出力軸181にはピニオンギヤ30が止着されており、ピニオンギヤ30は、歯車29に噛合されている。電動モータ18Aの回転は、ピニオンギヤ30、歯車29及びピニオンギヤ20Aを介してラックギヤ222に伝えられる。
【0048】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18Aが正転〔図6(a)に示すように出力軸181を矢印Q2の方向へ回転する方向〕される。ピニオンギヤ30は、車両の右側から見て左回りに回転し、歯車29及びピニオンギヤ20Aは、車両の右側から見て右回りに回転する。これにより、ラックギヤ222が車両の後側から前側に向けて移動し、アームレスト14が乗員Mから遠ざかるように図6(b)の実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動される。電動モータ18Aが逆転されると、退き位置にあるアームレスト14が使用位置へ復帰する。
【0049】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、図7(a),(b)の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図7(a)は、車両の前側から見た図であり、図7(b)は、車両の上側から見た図である。
【0050】
第3の実施形態では、アームレスト14Bを構成する基部22Bの下部には垂立部223が形成されている。ドアトリム13には前後方向に長いガイド孔23Bが形成されている、ガイド孔23Bは、下方に向けて開口しており、垂立部223がガイド孔23Bに通されている。ドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部へガイド孔23Bから突出する垂立部223の上部にはラックギヤ222Bが一体形成されている。電動モータ18の出力軸181にはピニオンギヤ31が止着されており、ピニオンギヤ31にはラックギヤ222Bが噛合されている。電動モータ18の回転は、ピニオンギヤ31を介してラックギヤ222Bに伝えられる。
【0051】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図7(b)に示すように出力軸181を矢印Q3の方向へ回転する方向〕される。ピニオンギヤ31は、車両の上から見て右回りに回転する。これにより、ラックギヤ222Bが車両の後側から前側に向けて移動し、アームレスト14Bが図7(b)の実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q3とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14Bが使用位置へ復帰する。
【0052】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、図8(a),(b)の第4の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図8(a),(b)は、車両の前側から見た図である。
【0053】
第4の実施形態では、ドアトリム13にドアポケット32が一体形成されており、アームレスト14Cがドアポケット32の直上に設けられている。アームレスト14Cを構成する基部22Cには筒部224がドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部へ突出するように一体形成されており、筒部224の筒内には雌ネジ225が形成されている。筒部224は、インナーパネル12側からアウターパネル16側へ(車外側の車幅方向へ)向かい、且つ下方へ向かう方向(斜め下方)に向けられている。インナーパネル12には切り起こし部121Cがアウターパネル16側に向けて切り起こし形成されており、切り起こし部121Cには電動モータ18が装着されている。電動モータ18の出力軸は、ネジ軸182になっており、ネジ軸182は、筒部224の雌ネジ225に螺合されている。電動モータ18の回転は、ネジ軸182及び雌ネジ225を介して筒部224に伝えられる。電動モータ18が正逆回転すると、雌ネジ225がネジ軸182に噛合しながら筒部224が斜めに上下動する。
【0054】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図8(a)に示すように矢印Q4の方向へ回転する方向〕され、ネジ軸182は、車両の上側から見て左回りに回転する。これにより、アームレスト14Cがインナーパネル12に固定されたドアトリム13から離脱するようにネジ軸182の軸方向に沿って車外側の斜め下方に向けて移動する。つまり、アームレスト14Cは、図8(a)に示す使用位置から図8(b)に示す退き位置へ移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q4とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14Cが使用位置へ復帰する。なお、ネジ軸182は、右ネジ型であるが、左ネジ型のネジ軸を用いてもよい。この場合、左ネジ型のネジ軸を車両の上側から見て右回りに回転すれば、アームレスト14Cがネジ軸182の軸方向に沿って車外側の斜め下方に向けて移動する。
【0055】
第4の実施形態では、アームレスト14Cの直下にドアポケット32がある場合にも、ドアポケット32に妨げられることなくドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部へアームレスト14Cを退かせることができる。従って、第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
次に、図9(a),(b)の第5の実施形態を説明する。第1,4の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図9(a),(b)は、車両の前側から見た図である。
第5の実施形態では、インナーパネル12に切り起こし形成された切り起こし部121Dには、電動モータ18が装着されていると共に、一対のリンク33,34が支軸35,36を介して回動可能に連結されている。アームレスト14Dを構成する基部22Dには連結片226が形成されており、連結片226にはリンク33,34が支軸37,38を介して回動可能に連結されている。一対のリンク33,34、切り起こし部121D、基部22D及び支軸35,36,37,38は、平行4節リンク機構Rを構成する。リンク33の支軸35側の端部にはセクター歯車部331が形成されている。セクター歯車部331は、電動モータ18の出力軸181に止着されたピニオンギヤ30に噛合されている。電動モータ18の回転は、ピニオンギヤ30及びセクター歯車部331を介して平行4節リンク機構Rに伝えられる。電動モータ18の回転に伴い、平行4節リンク機構Rを構成する平行移動リンクとしての連結片226が平行移動する。
【0057】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図9(a)に示すように矢印Q5の方向へ回転する方向〕され、ピニオンギヤ30が車両の前側から見て左回りに回転する。これにより、リンク33,34が支軸35,36を中心にして矢印Q6,Q7で示す方向〔車両の前側から見て右回りの回転方向〕へ回転される。これにより、アームレスト14Dがインナーパネル12に固定されたドアトリム13から離脱するように車内側の斜め下方へ移動する。つまり、アームレスト14Dは、図9(a)に示す使用位置から図9(b)に示す退き位置へ平行移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q5とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14Dが使用位置へ復帰する。アームレスト14Dの退き位置は、シート24〔図1(a)及び図3参照〕に着座した乗員の腰部K〔図1(a)及び図3参照〕の高さ位置に設定されている。
【0058】
第5の実施形態では、アームレスト14Dの直下にドアポケット32がある場合にも、ドアトリム13側から座部241側へ移動しながら下方へ移動する方向(斜め下方)へアームレスト14Dを退かせることができる。従って、側部衝突発生の可能性有りという予測が行なわれた場合には、アームレスト14Dの少なくとも一部は、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)外へ退かせることができる。平行4節リンク機構Rは、使用位置から退き位置へアームレストを移動させる上で信頼性の高い簡便な構成である。
【0059】
側部衝突が発生した場合、乗員Mの腰部Kの高さ位置に移動されたアームレスト14Dは、乗員の保護に寄与する。
次に、図10(a),(b)の第6の実施形態を説明する。第5の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図10(a),(b)は、車両の前側から見た図である。
【0060】
第6の実施形態では、ドアポケット32Eがドアトリム13とは別体に形成されている。ドアポケット32Eには上下方向に長い連結片321が形成されており、インナーパネル12には切り起こし部121Eが形成されている。切り起こし部121Eには連結片321の下部が支軸39を介して回動可能に連結されている。リンク33にはリンク40が支軸41を介して回動可能に連結されており、連結片321の上部にはリンク40が支軸42を介して回動可能に連結されている。電動モータ18の回転は、ピニオンギヤ30及びセクター歯車部331を介して平行4節リンク機構Rに伝えられると共に、リンク33,40及び連結片321を介してドアポケット32Eに伝えられる。
【0061】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図10(a)に示すように矢印Q5の方向へ回転する方向〕され、ピニオンギヤ30が車両の前側から見て左回りに回転する。これにより、リンク33,34が支軸35,36を中心にして矢印Q6,Q7で示す方向〔車両の前側から見て右回りの回転方向〕へ回転される。これにより、アームレスト14Dがインナーパネル12に固定されたドアトリム13から離脱するように車内側の斜め下方へ移動する。つまり、アームレスト14Dは、図10(a)に示す使用位置から図10(b)に示す退き位置へ移動される。同時に、ドアポケット32Eが支軸39を中心にして車内側の斜め下方へ傾動され、ドアポケット32Eは、図10(a)に示す使用位置から図10(b)に示す退き位置へ移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q5とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14D及びドアポケット32Eが使用位置へ復帰する。アームレスト14Dの退き位置は、シート24の座部241の高さ位置に設定されている。平行4節リンク機構R及びリンク40は、ドアポケット32Eをサイドドア11内へ移動させる移動手段を構成する。
【0062】
第6の実施形態では、アームレスト14Dの直下にあるドアポケット32Eが平行4節リンク機構R及びアームレスト14Dに連動して斜め下方へ移動する。従って、ドアトリム13側から車室内側へ移動しながら下方へ(斜め下方へ)アームレスト14Dを退かせたときのアームレスト14Dの退き位置を第5の実施形態の場合よりも更に下方に設定することができる。つまり、アームレスト14Dが退き位置にあるときには、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)内にあるアームレスト14Dの占有割合が第5の実施形態の場合よりも更に低減する。従って、エアバッグ252を迅速且つ確実に展開する空間が第5の実施形態の場合よりも更に大きく確保される。
【0063】
サイドドア11(車両側部)が車室内側へ変形するような側部衝突が発生した場合、シート24の座部241の高さ位置に移動されたアームレスト14Dは、座部241の側部に当接してサイドドア11の車室内側への変形を抑制する。
【0064】
次に、図11(a),(b)及び図12(a),(b)の第7の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図11(a),(b)は、車両の左側から見た図であり、図12(a)は、車両の上から見た図であり、図12(b)は、車両の下から見た図である。
【0065】
図11(a)に示すように、アームレスト14Fは、骨格部43と共にセンターピラーPを構成するピラーガーニッシュ44に設けられている。アームレスト14Fは、下方に開口部を有する箱形状の腕載せ部141と、前記開口部を塞ぐ蓋部142とを備えている。
【0066】
図12(a)に示すように、骨格部43の内側壁431とピラーガーニッシュ44の内側壁441との間の空間部には円板形状の歯車45が配設されている。歯車45に一体形成された支軸451は、骨格部43の内側壁431とピラーガーニッシュ44の内側壁441とに回転可能に支持されている。骨格部43の内側壁431の内側には電動モータ46が装着されている。電動モータ46の出力軸461は、内側壁431を貫通して、内側壁431と内側壁441との間の空間部に突出しており、この出力軸461の突出端部にはピニオンギヤ47が止着されている。ピニオンギヤ47は、歯車45に噛合されている。
【0067】
ピラーガーニッシュ44の内側壁441に対向するアームレスト14Fの外側壁143には被ガイド孔48が形成されている。図11(a)に示すように、被ガイド孔48は、円弧の長孔形状である。腕載せ部141内において被ガイド孔48の周縁には環状の被ガイド片50が形成されており、被ガイド片50の上部には円弧形状のラックギヤ51が形成されている。
【0068】
図12(b)に示すように、支軸451は、被ガイド孔48を通ってアームレスト14Fの腕載せ部141の内部に突出しており、腕載せ部141内の支軸451の突出端部にはピニオンギヤ49が止着されている。ピニオンギヤ49は、ラックギヤ51に噛合されている。
【0069】
図12(a)に示すように、ピラーガーニッシュ44の内側壁441には支軸52が止着されている。支軸52は、被ガイド孔48を通ってアームレスト14Fの腕載せ部141の内部に突出しており、腕載せ部141内の支軸52の突出端部にはガイドローラ53が回転可能に支持されている。腕載せ部141内の支軸451にはガイドローラ54が回転可能に支持されている。ガイドローラ53,54は、被ガイド片50の上下の内周面上を相対的に転動可能である。
【0070】
電動モータ46の回転は、ピニオンギヤ47、歯車45、支軸451及びピニオンギヤ49を介してラックギヤ51に伝えられる。電動モータ46が正転〔図12(a)に示すように矢印Q8の方向へ回転する方向〕すると、ピニオンギヤ47が車両の左側から見て左回りに回転し、歯車45及びピニオンギヤ49が車両の左側から見て右回りに回転する。これにより、ラックギヤ51がピニオンギヤ49に噛合しながら図12(b)の左側から右側へ〔車両の前側から後側へ〕移動し、アームレスト14Fが図12(b)の左側から右側へ〔車両の前側から後側へ〕移動する。電動モータ46が逆転〔矢印Q8とは逆の回転方向〕すると、ラックギヤ51がピニオンギヤ49に噛合しながら図12(b)の右側から左側へ移動し、アームレスト14Fが図12(b)の右側から左側へ移動する。
【0071】
図12(a)に示すように、サイドドア11には開閉検出器56が設けられている。開閉検出器56は、サイドドア11の開閉状態を検出する。開閉検出器56によって検出された開閉情報は、制御コンピュータ28へ送られる。開閉検出器56がサイドドア11の閉状態を検出すると、制御コンピュータ28は、アームレスト14Fが使用位置にあるように、電動モータ46を制御する。開閉検出器56がサイドドア11の開状態を検出すると、制御コンピュータ28は、アームレスト14Fが退き位置にあるように、電動モータ46を制御する。つまり、開閉検出器56がサイドドア11の閉状態から開状態への移行を検出すると、制御コンピュータ28は、電動モータ46を正転させ、アームレスト14Fが使用位置から退き位置へ移動される。開閉検出器56がサイドドア11の開状態から閉状態への移行を検出すると、制御コンピュータ28は、電動モータ46を逆転させ、アームレスト14Fが退き位置から使用位置へ移動する。
【0072】
制御コンピュータ28、開閉検出器56及び電動モータ46は、サイドドア11の開閉に連動するようにアームレスト14Fを使用位置と退き位置とに切り換え配置する連動制御手段を構成する。
【0073】
又、制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ46が正転され、アームレスト14Fが図11(a)に示す使用位置から図11(b)に示す退き位置へ移動される。電動モータ46が逆転されると、退き位置にあるアームレスト14Fが使用位置へ復帰する。
【0074】
アームレスト14Fが退き位置にあるときには、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)内にあるアームレスト14Fの占有割合が低減する。従って、エアバッグ252は、迅速且つ適正に展開する。又、アームレスト14Fの退き位置は、車両側部の一部であるセンターピラーPに対応する位置という乗り降りする際の妨げにならない場所に設定されているため、乗員は、アームレスト14Fに妨げられることなく容易に乗り降りできる。
【0075】
次に、図13(a),(b)の第8の実施形態を説明する。第4の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図13(a)は、車両の前側から見た図であり、図13(b)は、車両の左側から見た図である。
【0076】
第8の実施形態では、ドアトリム13に一対のガイド溝59,60が形成されており、アームレスト14Gには被ガイドローラ61,62がガイド溝59,60内を転動可能に取り付けられている。電動モータ18がインナーパネル12に形成された一対の切り起こし部121Gに支軸57,58を介して傾動可能に支持されている。電動モータ18のネジ軸182は、筒部224Gの雌ネジ225Gに螺合されている。電動モータ18の回転は、ネジ軸182及び雌ネジ225Gを介して筒部224Gに伝えられる。電動モータ18が正逆回転すると、雌ネジ225Gがネジ軸182Gに噛合しながら上下動し、アームレスト14Gが被ガイドローラ61,62とガイド溝59,60との間のガイド作用によって上下に案内される。このとき、電動モータ18及びアームレスト14Gは、支軸57,58を中心にして若干傾動する。
【0077】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図13(a)に示すように矢印Q9の方向へ回転する方向〕され、ネジ軸182が車両の上から見て右回りに回転される。これにより、ネジ軸182及び筒部224Gが支軸57,58を中心にして車外側へ傾動しながら、筒部224Gが上動する。これにより、アームレスト14Gがドアポケット32から上方へ離れてゆくように図13(a)に実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q9とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14Gが使用位置へ復帰する。
【0078】
乗員Mの腕がアームレスト14Gに載っている場合、アームレスト14Gが上方へ移動すると、乗員Mの腕も上方へ移動する。従って、エアバッグを迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0079】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
(1)第1〜第8の実施形態において、電動モータを正転させる押しボタンスイッチと、電動モータを逆転させる押しボタンスイッチとを設け、これらの押しボタンスイッチの操作によってアームレストを使用位置と退き位置との間の任意の位置に配置できるようにしてもよい。
【0080】
(2)第1〜第4の実施形態において、回転式の電動モータの代わりに、リニアアクチュエータ(例えばリニアモータ、流体圧シリンダ等)を用いてアームレストを使用位置と退き位置との一方から他方へ切り換え配置できるようにしてもよい。
【0081】
(3)アームレストを支持する支持状態からアームレストを支持不能な不支持状態へ切り換え可能な支持手段を備えた退かせ手段を構成してもよい。側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、支持手段は、支持状態から不支持状態へ切り換えられ、支持状態から不支持状態へ切り換えられる。支持手段としては、例えばリニアソレノイド、流体圧シリンダ等のリニアアクチュエータが可能である。リニアアクチュエータの出力軸によってアームレストを支持し、アームレストを支持する位置から出力軸を退避させるようにすれば、アームレストが落下する。
【0082】
(4)シートの背もたれ部にアームレストを設けた構成に本発明を適用してもよい。
(5)エアバッグは、アームレストの移動領域を考慮した上で、乗員の胸の保護のみならず、乗員の肩、腹、腰あるいは頭部の中から保護する部位を任意に選択して胸と共に側部衝突から保護するものであってもよい。
【0083】
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
〔1〕前記エアバッグの展開領域は、アームレストの使用位置に重なるように設定されている請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1実施形態を示し、(a)は正断面図。(b)は、平断面図。
【図2】部分拡大正断面図。
【図3】サイドエアバッグ装置を示す側面図。
【図4】図2のA−A線断面図。
【図5】乗員保護制御プログラムを表すフローチャート。
【図6】第2実施形態を示し、(a)は部分拡大正断面図。(b)は、図6(a)のB−B線断面図。
【図7】第3実施形態を示し、(a)は部分拡大正断面図。(b)は、図7(a)のC−C線断面図。
【図8】第4実施形態を示し、(a),(b)は部分拡大正断面図。
【図9】第5実施形態を示し、(a),(b)は部分拡大正断面図。
【図10】第6実施形態を示し、(a),(b)は部分拡大正断面図。
【図11】第7実施形態を示し、(a),(b)は側面図。
【図12】(a)は、図11(a)のD−D線断面図。(b)は、図11(a)のE−E線断面図。
【図13】第8実施形態を示し、(a)は、部分拡大正断面図。(b)は、側断面図。
【符号の説明】
【0085】
11…車両側部としてのサイドドア。14,14B,14C,14D,14F,14G…アームレスト。18,18A,46…退かせ手段を構成する電動モータ。226…平行移動リンクとしての連結片。24…シート。241…座部。25…サイドエアバッグ装置。251…ガス発生源としてのインフレータ。252…エアバッグ。27…制御コンピュータ28と共に側部衝突予測手段を構成する側部衝突予測器。32,32E…ドアポケット。40…平行4節リンク機構と共にドアポケットの移動手段を構成するリンク。46…制御コンピュータ28と共に連動制御手段を構成する電動モータ。56…制御コンピュータ28と共に連動制御手段を構成する開閉検出器。R…平行4節リンク機構。P…センターピラー。E1,E2…展開領域。M…乗員。K…腰部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに着座した乗員を車両における側部衝突から保護する乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに着座した乗員とサイドドアとの間でエアバッグを膨張して展開させるエアバッグ装置は、車両の側部衝突から乗員を保護する。しかし、サイドドアにアームレストを固定した車両では、アームレストがエアバッグの展開に与える影響を考慮して形状や位置を設定することとなり、デザイン上の制約を受けている。
【0003】
これを解決する手段として、特許文献1に開示の装置では、アームレストが前後方向へスライド可能に設けられており、シートにはエアバッグ装置が設けられている。エアバッグが膨張すると、膨張するエアバッグがアームレストを前方へ押して移動させる。アームレストが通常の位置から前方へ移動するため、エアバッグは、アームレストの影響を抑制されて膨張し、展開する。
【0004】
特許文献2に開示の装置では、側部衝突を予測する手段によって側部衝突が予測されたときには、ドアトリムの上部に設けられた保護手段が作動される。保護手段は、可動パネルをパンタグラフ機構によって駆動する構成であり、側部衝突が予測されたときには、アームレストよりも上にある可動パネルがサイドドアに設けられたアームレストから遠ざけられる。これにより、乗員の腕部がアームレストに置かれていた場合には、乗員の腕部がサイドドアから遠ざけられる。又、特許文献2では、横加速度センサが採用されており、サイドエアバッグ装置がサイドドアに設けられている。横加速度センサによって側部衝突が検出されたときには、サイドドアに設けられたサイドエアバッグ装置が作動され、乗員の胸部や頭部が保護される。
【0005】
特許文献3に開示の装置では、アームレストが使用位置から下方へ移動可能に設けられており、側部衝突が発生したときにはアームレストが使用位置から下方へ移動される。アームレストは、駆動装置(強制降下装置)によって強制的に下方へ移動される。
【特許文献1】特開平9−315258号公報
【特許文献2】特開2001−206176号公報
【特許文献3】特開2005−231471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示の装置では、エアバッグの膨張力をアームレストを動かす駆動力として利用し、アームレストを前方へ移動させるため、エアバッグの展開の迅速性と、乗員の保護に必要なエアバッグの反力とを確保するためには、より大きな膨張力を必要とすることとなる。
【0007】
特許文献3に開示の装置では、駆動装置(強制降下装置)によってアームレストを強制的に下方へ移動させるため、アームレストを下方へ移動させた後にエアバッグを展開させる場合には、エアバッグの展開の迅速性が損なわれる可能性はない。しかし、側部衝突が発生してからアームレストを移動させるため、エアバッグと同程度の速さで使用位置から下方へアームレストを移動させる必要があり、アームレストの高速移動の実現化が困難であると考えられる。
【0008】
特許文献2に開示の装置では、側部衝突が予測されたときには可動パネルがアームレストから遠ざけられるが、移動された可動パネルがその位置にとどまる構成であり、サイドドアと乗員との間でエアバッグを展開させる空間が確保されない。
【0009】
本発明は、アームレストを有した車両においても、シートに着座した乗員と車両の側部との間でエアバッグを迅速且つ確実に展開する空間を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両における側部衝突を予測する側部衝突予測手段と、車両側部と車両のシートに着座した乗員との間でエアバッグを膨張させるエアバッグ装置とを備えた車両における乗員保護装置を対象とし、請求項1の発明は、前記シートに着座した乗員と前記車両側部との間に設けられたアームレストと、前記エアバッグの展開領域内にある前記アームレストの占有割合が低減するように、前記アームレストの使用位置から前記アームレストを退かせる退かせ手段とを備え、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記退かせ手段が前記アームレストを前記使用位置から退かせることを特徴とする。
【0011】
側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、アームレストがエアバッグ装置とは別の退かせ手段の作動によって使用位置から退かせられ、エアバッグの展開領域内にあるアームレストの占有部分が低減する。従って、シートに着座した乗員と車両の側部との間でエアバッグを迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0012】
好適な例では、前記退かせ手段は、前記使用位置から前記エアバッグの展開領域外へ前記アームレストを退かせる。
アームレストがエアバッグの展開領域外へ出てしまうため、シートに着座した乗員と車両の側部との間でのエアバッグの迅速且つ適正な展開がアームレストによって妨げられる可能性はなくなる。
【0013】
好適な例では、前記退かせ手段は、前記アームレストを下方へ移動させる。
乗員の腕がアームレストに載っている場合、アームレストが下方へ移動すると、乗員の腕がアームレストから外れやすい。乗員の腕がアームレストから外れると、エアバッグを迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0014】
好適な例では、前記退かせ手段は、下方へ、且つ前記シートに着座した乗員の腰部の高さ位置に前記アームレストを移動させる。
側部衝突が発生した場合、乗員の腰部の高さ位置に移動されたアームレストは、乗員の腰部保護に寄与する。
【0015】
好適な例では、前記退かせ手段は、下方へ、且つ前記シートの座部の高さ位置に前記アームレストを移動させる。
側部衝突が発生した場合、シートの座部の高さ位置に移動されたアームレストは、車両側部の内側への変形を抑制することに寄与する。
【0016】
好適な例では、前記アームレストは、車両のサイドドアに設けられており、退かせ手段によって下方へ移動される前記アームレストの下方にはドアポケットが設けられており、前記ドアポケットを前記サイドドア内へ移動させるための移動手段が設けられており、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記移動手段は、前記ドアポケットを前記サイドドア内へ移動させる。
【0017】
ドアポケットがサイドドア内へ移動させられるため、ドアポケットがアームレストを下方へ移動させるときの妨げとなることはない。
好適な例では、前記退かせ手段は、前記移動手段を兼ねており、前記ドアポケットは、前記アームレストの下方への移動に連動して、前記サイドドア内へ移動される。
【0018】
退かせ手段に移動手段を兼ねさせた構成は、コストに関して有利である。
好適な例では、前記退かせ手段は、前記アームレストを上方へ移動させる。
乗員の腕がアームレストに載っている場合、アームレストが上方へ移動すると、乗員の腕も上方へ移動する。従って、エアバッグを迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0019】
好適な例では、前記退かせ手段は、前記アームレストを平行移動させる。
アームレストを平行移動させる構成は、使用位置から退き位置へアームレストを移動させる上で信頼性の高い簡便な構成である。
【0020】
好適な例では、前記退かせ手段は、前記アームレストを支持する平行4節リンク機構を含み、前記アームレストは、前記平行4節リンク機構の平行移動リンクに連結されている。
【0021】
平行4節リンク機構は、アームレストを平行移動させる機構として好適である。
好適な例では、前記アームレストは、車両のサイドドアに設けられており、前記平行4節リンク機構は、前記サイドドアと交差する方向に前記アームレストを平行移動させる。
【0022】
アームレストの下方にドアポケットがある場合、ドアポケットとシートの座部との間にアームレストを移動させるように構成することが可能となる。
好適な例では、前記アームレストの下方にドアポケットが設けられており、前記アームレストは、前記サイドドア側から車室内側へ向かいつつ下動されるようになっており、前記ドアポケットは、前記アームレストの下動に連動して下動される。
【0023】
アームレストの下動に連動してドアポケットを下動させる構成は、ドアポケットとシートの座部との間のスペースに余裕がない場合にも、ドアポケットとシートの座部との間にアームレストを移動させることを可能にする。
【0024】
好適な例では、前記アームレストは、前記車両側部の一部であるセンターピラーに設けられており、前記退かせ手段は、車両のサイドドアの開閉に連動するように前記アームレストを使用位置と退き位置とに切り換え配置する連動制御手段であり、前記連動制御手段は、前記サイドドアの開状態から閉状態への移行に応じて前記アームレストを退き位置から使用位置へ切り換え配置すると共に、前記サイドドアの閉状態から開状態への移行に応じて前記アームレストを使用位置から退き位置へ切り換え配置し、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記連動制御手段は、前記アームレストを使用位置から退き位置へ切り換え配置する。
【0025】
サイドドアが開かれるとき、及び側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、アームレストが使用位置から退き位置へ切り換え配置される。アームレストの退き位置を乗り降りする際の妨げにならない場所に設定すれば、サイドドアが開かれたときには、アームレストが乗り降りする際の妨げにならない場所に配置される。
【0026】
好適な例では、前記退き位置は、前記センターピラーに対応する位置である。
センターピラーに対応する位置に退き位置を設定した構成は、乗員の乗り降りの容易性に関して好ましい。
【0027】
好適な例では、前記退かせ手段は、その作動後にその作動前の初期状態に復帰可能な可逆装置であり、前記退かせ手段がその作動後にその作動前の初期状態に復帰したときには、前記アームレストは、使用位置に復帰する。
【0028】
退かせ手段が作動されたとしても、側部衝突が起きない限り、退かせ手段を初期状態に復帰させて使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の乗員保護装置は、シートに着座した乗員と車両の側部との間でエアバッグを迅速且つ確実に展開する空間を確保できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1(a)は、車両の前側から見た図である。図1(a)に示すように、車両の右側のサイドドア11のフレームを構成するインナーパネル12にはドアトリム13が固定されており、ドアトリム13にはアームレスト14が車両の前後方向へ移動可能に設けられている。サイドドア11のフレームを構成するアウターパネル16とインナーパネル12との間には上下に移動可能に設けられた窓ガラス15が配置されている。
【0031】
図2は、車両の前側から見た図である。図2に示すように、インナーパネル12とドアトリム13との間の空間部には傘歯車17が配設されている。傘歯車17は、支軸171に回転可能に支持されており、支軸171は、インナーパネル12とドアトリム13とに架け渡されて支持されている。傘歯車17にはピニオンギヤ20が一体形成されている。
【0032】
支軸171の下方におけるインナーパネル12の一部121は、ドアトリム13側に向けて切り起こされており、この切り起こし部121には電動モータ18が支持されている。電動モータ18の出力軸181は、上方に向けられており、出力軸181の先端部には傘歯車19が止着されている。傘歯車19は、傘歯車17に噛合されており、電動モータ18の正逆回転によって傘歯車17が正逆転される。
【0033】
図1(b)は、車両の上から見た図である。図1(b)に示すように、アームレスト14は、ドアトリム13から車室内側へ張り出す腕載せ部21と、腕載せ部21に連結して固定された平板形状の基部22とを備えている。基部22は、ドアトリム13に対向しており、ドアトリム13に対向する基部22の対向面には車両の前後方向に長い被ガイド部221が一体形成されている。ドアトリム13には車両の前後方向に長いガイド孔23が形成されている。ガイド孔23は、ドアトリム13の側方に向けて開口しており、被ガイド部221は、ガイド孔23を貫通してドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部に突出している。被ガイド部221は、ガイド孔23に沿って車両の前後方向へスライド可能に案内されるようになっている。
【0034】
図4は、車両の下側から見た図である。図4に示すように、ドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部に突出する被ガイド部221の突出端部にはラックギヤ222が一体形成されている。ラックギヤ222の歯列の方向は、車両の前後方向であり、ラックギヤ222は、ピニオンギヤ20に噛合されている。傘歯車17が正逆転すると、傘歯車17の回転がピニオンギヤ20を介してラックギヤ222へ伝えられ、ラックギヤ222がピニオンギヤ20に噛合しながら車両の前後方向に往復動する。これにより、アームレスト14が車両の前後方向に往復動する。
【0035】
アームレスト14の往復動範囲は、図1(b)に実線で示す使用位置と、鎖線で示す退き位置との間である。
図3は、車両の右側から見た図である。図3に示すように、サイドドア11に対応するシート24は、座部241と背もたれ部242とからなる。背もたれ部242にはサイドエアバッグ装置25が内蔵されている。サイドエアバッグ装置25は、ガス発生源としてのインフレータ251と、エアバッグ252と、インフレータ251及びエアバッグ252を収容するケース253とから構成されている。ケース253は、背もたれ部242を構成するフレーム(図示略)に取り付けられている。インフレータ251が作動されると、インフレータ251から高圧ガスがエアバッグ252へ送られる。これにより、エアバッグ252がシート24に着座した乗員Mとサイドドア11との間で膨張展開する。詳述すると、エアバッグ252は、図1(b)及び図4に実線で示す使用位置にあるアームレスト14に対応するサイドドア11の内側部と、シート24に着座した乗員Mとの間で膨張展開する。エアバッグ252は、乗員Mの主として胸を車両の側部衝突から保護する。
【0036】
図1(a)に示す鎖線E1内の領域、及び図1(b)に示す鎖線E2内の領域は、膨張展開するエアバッグ252が存在する可能性があると見なされる展開領域である。以下においては、エアバッグ252の展開領域を展開領域(E1,E2)と記す。
【0037】
図1(a)に示すように、サイドドア11には横加速度検出器26及び側部衝突予測器27が設けられている。横加速度検出器26は、車両の側方からサイドドア11に加えられる衝撃(車両の側部衝撃)を横加速度(車両の車幅方向の加速度)として検出する。側部衝突予測器27は、超音波あるいは電波を発信し、車両の側方の物体から反射した超音波あるいは電波を受信する。
【0038】
横加速度検出器26によって検出された横加速度情報、及び側部衝突予測器27によって検出された受信情報は、制御コンピュータ28へ送られる。制御コンピュータ28は、横加速度検出器26から得られる横加速度情報に基づいて、サイドエアバッグ装置25の作動(エアバッグ252の膨張展開)を制御する。又、制御コンピュータ28は、側部衝突予測器27から得られる受信情報に基づいて、車両の側方の物体までの距離や、車両の側方の物体と車両との間における相対速度を算出し、この算出結果に基づいて電動モータ18の作動を制御する。
【0039】
図5は、制御コンピュータ28によって遂行される乗員保護制御プログラムを表すフローチャートである。以下、乗員保護制御をフローチャートに基づいて説明する。なお、通常時においては、アームレスト14は、図1(b)に実線で示す使用位置にある。使用位置にあるアームレスト14の一部は、展開領域(E1,E2)内にある。
【0040】
制御コンピュータ28は、側部衝突予測器27から得られる受信情報を取り込む(ステップS1)。制御コンピュータ28は、取り込んだ受信情報に基づいて、車両の側方の物体までの距離や、車両の側方の物体と車両との間における相対速度を算出すると共に、この算出結果に基づいて側部衝突発生の可能性の有無を判断する(ステップS2)。側部衝突の可能性が無い場合(ステップS2においてNO)、制御コンピュータ28は、ステップS1へ移行する。側部衝突の可能性が有る場合(ステップS2においてYES)、制御コンピュータ28は、電動モータ18を正転(図2に示すように出力軸181を矢印Q1の方向に回転する方向)させる(ステップS3)。傘歯車19は、車両の上から見て、右回りに回転し、傘歯車17及びピニオンギヤ20は、車両の左側から見て左回りに回転する。これにより、ラックギヤ222が車両の後側から前側に向けて移動し、アームレスト14が図1(b)に実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動する。退き位置にあるアームレスト14は、展開領域(E1,E2)外にある。
【0041】
ステップS3の処理後、制御コンピュータ28は、横加速度検出器26から得られる横加速度情報を取り込む(ステップS4)。制御コンピュータ28は、取り込んだ横加速度情報に基づいて、側部衝突発生の有無を判断する(ステップS5)。側部衝突が発生したとの判断が行われた場合(ステップS5においてYES)、制御コンピュータ28は、サイドエアバッグ装置25を作動させる(ステップS6)。これにより、エアバッグ252が前方へ伸長しながら膨張展開する。アームレスト14は、使用位置から退き位置へ退かせられており、エアバッグ252は、アームレスト14の使用位置に対応するドアトリム13の部分と乗員Mとの間で膨張展開する。
【0042】
側部衝突が発生していないとの判断が行われた場合(ステップS5においてNO)、制御コンピュータ28は、側部衝突が発生していないとの判断が行われてから所定時間経過したか否かを判断する(ステップS7)。所定時間が経過していない場合(ステップS7においてNO)、制御コンピュータ28は、ステップS5へ移行する。所定時間が経過している場合(ステップS7においてYES)、制御コンピュータ28は、電動モータ18を逆転(図2に示す矢印Q1とは逆の回転方向)させる(ステップS8)。これにより、アームレスト14が図1(b)に鎖線で示す退き位置から実線で示す使用位置へ復帰する。
【0043】
ステップS8の処理後、制御コンピュータ28は、ステップS1へ移行する。
横加速度検出器26及び制御コンピュータ28は、車両における側部衝突を検出する側部衝突検出手段を構成する。側部衝突予測器27及び制御コンピュータ28は、車両における側部衝突を予測する側部衝突予測手段を構成する。電動モータ18、傘歯車17,19、ピニオンギヤ20及びラックギヤ222は、乗員Mから遠ざけるように使用位置から退き位置へアームレスト14を退かせる退かせ手段を構成する。この退かせ手段は、その作動後にその作動前の初期状態に復帰可能な可逆装置である。
【0044】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)側部衝突発生の可能性があるとの予測が行われたときには、アームレスト14が電動モータ18の作動によって使用位置から退き位置へ退かせられる。退き位置にあるアームレスト14は、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)外にあり、側部衝突発生の可能性有りという予測の判断がなされた後には、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)内にはアームレスト14の占有部分は無い。従って、シート24に着座した乗員Mとサイドドア11(車両の側部)との間でエアバッグ252を迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0045】
(2)制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りとの予測の判断を行なったにも関わらず、側部衝突が発生しなかった場合には、電動モータ18が逆転されてアームレスト14が退き位置から使用位置へ復帰される。つまり、側部衝突が起きない限り、側部衝突発生の可能性有りとの予測毎に、電動モータ18によってアームレスト14を使用位置から退き位置へ移動させることができる。
【0046】
次に、図6(a),(b)の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図6(a)は、車両の前側から見た図であり、図6(b)は、車両の下側から見た図である。
【0047】
第2の実施形態では、第1の実施形態における傘歯車17の代わりに、円板形状の歯車29が用いられており、歯車29にはピニオンギヤ20Aが一体形成されている。ピニオンギヤ20Aは、ラックギヤ222に噛合されている。アウターパネル16側からインナーパネル12側へ向けて垂立状態に切り起こし形成された切り起こし部121Aには電動モータ18Aが取り付けられている。電動モータ18Aの出力軸181がドアトリム13側からインナーパネル12側に向かう方向に向けられている。出力軸181にはピニオンギヤ30が止着されており、ピニオンギヤ30は、歯車29に噛合されている。電動モータ18Aの回転は、ピニオンギヤ30、歯車29及びピニオンギヤ20Aを介してラックギヤ222に伝えられる。
【0048】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18Aが正転〔図6(a)に示すように出力軸181を矢印Q2の方向へ回転する方向〕される。ピニオンギヤ30は、車両の右側から見て左回りに回転し、歯車29及びピニオンギヤ20Aは、車両の右側から見て右回りに回転する。これにより、ラックギヤ222が車両の後側から前側に向けて移動し、アームレスト14が乗員Mから遠ざかるように図6(b)の実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動される。電動モータ18Aが逆転されると、退き位置にあるアームレスト14が使用位置へ復帰する。
【0049】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、図7(a),(b)の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図7(a)は、車両の前側から見た図であり、図7(b)は、車両の上側から見た図である。
【0050】
第3の実施形態では、アームレスト14Bを構成する基部22Bの下部には垂立部223が形成されている。ドアトリム13には前後方向に長いガイド孔23Bが形成されている、ガイド孔23Bは、下方に向けて開口しており、垂立部223がガイド孔23Bに通されている。ドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部へガイド孔23Bから突出する垂立部223の上部にはラックギヤ222Bが一体形成されている。電動モータ18の出力軸181にはピニオンギヤ31が止着されており、ピニオンギヤ31にはラックギヤ222Bが噛合されている。電動モータ18の回転は、ピニオンギヤ31を介してラックギヤ222Bに伝えられる。
【0051】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図7(b)に示すように出力軸181を矢印Q3の方向へ回転する方向〕される。ピニオンギヤ31は、車両の上から見て右回りに回転する。これにより、ラックギヤ222Bが車両の後側から前側に向けて移動し、アームレスト14Bが図7(b)の実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q3とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14Bが使用位置へ復帰する。
【0052】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、図8(a),(b)の第4の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図8(a),(b)は、車両の前側から見た図である。
【0053】
第4の実施形態では、ドアトリム13にドアポケット32が一体形成されており、アームレスト14Cがドアポケット32の直上に設けられている。アームレスト14Cを構成する基部22Cには筒部224がドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部へ突出するように一体形成されており、筒部224の筒内には雌ネジ225が形成されている。筒部224は、インナーパネル12側からアウターパネル16側へ(車外側の車幅方向へ)向かい、且つ下方へ向かう方向(斜め下方)に向けられている。インナーパネル12には切り起こし部121Cがアウターパネル16側に向けて切り起こし形成されており、切り起こし部121Cには電動モータ18が装着されている。電動モータ18の出力軸は、ネジ軸182になっており、ネジ軸182は、筒部224の雌ネジ225に螺合されている。電動モータ18の回転は、ネジ軸182及び雌ネジ225を介して筒部224に伝えられる。電動モータ18が正逆回転すると、雌ネジ225がネジ軸182に噛合しながら筒部224が斜めに上下動する。
【0054】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図8(a)に示すように矢印Q4の方向へ回転する方向〕され、ネジ軸182は、車両の上側から見て左回りに回転する。これにより、アームレスト14Cがインナーパネル12に固定されたドアトリム13から離脱するようにネジ軸182の軸方向に沿って車外側の斜め下方に向けて移動する。つまり、アームレスト14Cは、図8(a)に示す使用位置から図8(b)に示す退き位置へ移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q4とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14Cが使用位置へ復帰する。なお、ネジ軸182は、右ネジ型であるが、左ネジ型のネジ軸を用いてもよい。この場合、左ネジ型のネジ軸を車両の上側から見て右回りに回転すれば、アームレスト14Cがネジ軸182の軸方向に沿って車外側の斜め下方に向けて移動する。
【0055】
第4の実施形態では、アームレスト14Cの直下にドアポケット32がある場合にも、ドアポケット32に妨げられることなくドアトリム13とインナーパネル12との間の空間部へアームレスト14Cを退かせることができる。従って、第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
次に、図9(a),(b)の第5の実施形態を説明する。第1,4の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図9(a),(b)は、車両の前側から見た図である。
第5の実施形態では、インナーパネル12に切り起こし形成された切り起こし部121Dには、電動モータ18が装着されていると共に、一対のリンク33,34が支軸35,36を介して回動可能に連結されている。アームレスト14Dを構成する基部22Dには連結片226が形成されており、連結片226にはリンク33,34が支軸37,38を介して回動可能に連結されている。一対のリンク33,34、切り起こし部121D、基部22D及び支軸35,36,37,38は、平行4節リンク機構Rを構成する。リンク33の支軸35側の端部にはセクター歯車部331が形成されている。セクター歯車部331は、電動モータ18の出力軸181に止着されたピニオンギヤ30に噛合されている。電動モータ18の回転は、ピニオンギヤ30及びセクター歯車部331を介して平行4節リンク機構Rに伝えられる。電動モータ18の回転に伴い、平行4節リンク機構Rを構成する平行移動リンクとしての連結片226が平行移動する。
【0057】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図9(a)に示すように矢印Q5の方向へ回転する方向〕され、ピニオンギヤ30が車両の前側から見て左回りに回転する。これにより、リンク33,34が支軸35,36を中心にして矢印Q6,Q7で示す方向〔車両の前側から見て右回りの回転方向〕へ回転される。これにより、アームレスト14Dがインナーパネル12に固定されたドアトリム13から離脱するように車内側の斜め下方へ移動する。つまり、アームレスト14Dは、図9(a)に示す使用位置から図9(b)に示す退き位置へ平行移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q5とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14Dが使用位置へ復帰する。アームレスト14Dの退き位置は、シート24〔図1(a)及び図3参照〕に着座した乗員の腰部K〔図1(a)及び図3参照〕の高さ位置に設定されている。
【0058】
第5の実施形態では、アームレスト14Dの直下にドアポケット32がある場合にも、ドアトリム13側から座部241側へ移動しながら下方へ移動する方向(斜め下方)へアームレスト14Dを退かせることができる。従って、側部衝突発生の可能性有りという予測が行なわれた場合には、アームレスト14Dの少なくとも一部は、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)外へ退かせることができる。平行4節リンク機構Rは、使用位置から退き位置へアームレストを移動させる上で信頼性の高い簡便な構成である。
【0059】
側部衝突が発生した場合、乗員Mの腰部Kの高さ位置に移動されたアームレスト14Dは、乗員の保護に寄与する。
次に、図10(a),(b)の第6の実施形態を説明する。第5の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図10(a),(b)は、車両の前側から見た図である。
【0060】
第6の実施形態では、ドアポケット32Eがドアトリム13とは別体に形成されている。ドアポケット32Eには上下方向に長い連結片321が形成されており、インナーパネル12には切り起こし部121Eが形成されている。切り起こし部121Eには連結片321の下部が支軸39を介して回動可能に連結されている。リンク33にはリンク40が支軸41を介して回動可能に連結されており、連結片321の上部にはリンク40が支軸42を介して回動可能に連結されている。電動モータ18の回転は、ピニオンギヤ30及びセクター歯車部331を介して平行4節リンク機構Rに伝えられると共に、リンク33,40及び連結片321を介してドアポケット32Eに伝えられる。
【0061】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図10(a)に示すように矢印Q5の方向へ回転する方向〕され、ピニオンギヤ30が車両の前側から見て左回りに回転する。これにより、リンク33,34が支軸35,36を中心にして矢印Q6,Q7で示す方向〔車両の前側から見て右回りの回転方向〕へ回転される。これにより、アームレスト14Dがインナーパネル12に固定されたドアトリム13から離脱するように車内側の斜め下方へ移動する。つまり、アームレスト14Dは、図10(a)に示す使用位置から図10(b)に示す退き位置へ移動される。同時に、ドアポケット32Eが支軸39を中心にして車内側の斜め下方へ傾動され、ドアポケット32Eは、図10(a)に示す使用位置から図10(b)に示す退き位置へ移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q5とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14D及びドアポケット32Eが使用位置へ復帰する。アームレスト14Dの退き位置は、シート24の座部241の高さ位置に設定されている。平行4節リンク機構R及びリンク40は、ドアポケット32Eをサイドドア11内へ移動させる移動手段を構成する。
【0062】
第6の実施形態では、アームレスト14Dの直下にあるドアポケット32Eが平行4節リンク機構R及びアームレスト14Dに連動して斜め下方へ移動する。従って、ドアトリム13側から車室内側へ移動しながら下方へ(斜め下方へ)アームレスト14Dを退かせたときのアームレスト14Dの退き位置を第5の実施形態の場合よりも更に下方に設定することができる。つまり、アームレスト14Dが退き位置にあるときには、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)内にあるアームレスト14Dの占有割合が第5の実施形態の場合よりも更に低減する。従って、エアバッグ252を迅速且つ確実に展開する空間が第5の実施形態の場合よりも更に大きく確保される。
【0063】
サイドドア11(車両側部)が車室内側へ変形するような側部衝突が発生した場合、シート24の座部241の高さ位置に移動されたアームレスト14Dは、座部241の側部に当接してサイドドア11の車室内側への変形を抑制する。
【0064】
次に、図11(a),(b)及び図12(a),(b)の第7の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図11(a),(b)は、車両の左側から見た図であり、図12(a)は、車両の上から見た図であり、図12(b)は、車両の下から見た図である。
【0065】
図11(a)に示すように、アームレスト14Fは、骨格部43と共にセンターピラーPを構成するピラーガーニッシュ44に設けられている。アームレスト14Fは、下方に開口部を有する箱形状の腕載せ部141と、前記開口部を塞ぐ蓋部142とを備えている。
【0066】
図12(a)に示すように、骨格部43の内側壁431とピラーガーニッシュ44の内側壁441との間の空間部には円板形状の歯車45が配設されている。歯車45に一体形成された支軸451は、骨格部43の内側壁431とピラーガーニッシュ44の内側壁441とに回転可能に支持されている。骨格部43の内側壁431の内側には電動モータ46が装着されている。電動モータ46の出力軸461は、内側壁431を貫通して、内側壁431と内側壁441との間の空間部に突出しており、この出力軸461の突出端部にはピニオンギヤ47が止着されている。ピニオンギヤ47は、歯車45に噛合されている。
【0067】
ピラーガーニッシュ44の内側壁441に対向するアームレスト14Fの外側壁143には被ガイド孔48が形成されている。図11(a)に示すように、被ガイド孔48は、円弧の長孔形状である。腕載せ部141内において被ガイド孔48の周縁には環状の被ガイド片50が形成されており、被ガイド片50の上部には円弧形状のラックギヤ51が形成されている。
【0068】
図12(b)に示すように、支軸451は、被ガイド孔48を通ってアームレスト14Fの腕載せ部141の内部に突出しており、腕載せ部141内の支軸451の突出端部にはピニオンギヤ49が止着されている。ピニオンギヤ49は、ラックギヤ51に噛合されている。
【0069】
図12(a)に示すように、ピラーガーニッシュ44の内側壁441には支軸52が止着されている。支軸52は、被ガイド孔48を通ってアームレスト14Fの腕載せ部141の内部に突出しており、腕載せ部141内の支軸52の突出端部にはガイドローラ53が回転可能に支持されている。腕載せ部141内の支軸451にはガイドローラ54が回転可能に支持されている。ガイドローラ53,54は、被ガイド片50の上下の内周面上を相対的に転動可能である。
【0070】
電動モータ46の回転は、ピニオンギヤ47、歯車45、支軸451及びピニオンギヤ49を介してラックギヤ51に伝えられる。電動モータ46が正転〔図12(a)に示すように矢印Q8の方向へ回転する方向〕すると、ピニオンギヤ47が車両の左側から見て左回りに回転し、歯車45及びピニオンギヤ49が車両の左側から見て右回りに回転する。これにより、ラックギヤ51がピニオンギヤ49に噛合しながら図12(b)の左側から右側へ〔車両の前側から後側へ〕移動し、アームレスト14Fが図12(b)の左側から右側へ〔車両の前側から後側へ〕移動する。電動モータ46が逆転〔矢印Q8とは逆の回転方向〕すると、ラックギヤ51がピニオンギヤ49に噛合しながら図12(b)の右側から左側へ移動し、アームレスト14Fが図12(b)の右側から左側へ移動する。
【0071】
図12(a)に示すように、サイドドア11には開閉検出器56が設けられている。開閉検出器56は、サイドドア11の開閉状態を検出する。開閉検出器56によって検出された開閉情報は、制御コンピュータ28へ送られる。開閉検出器56がサイドドア11の閉状態を検出すると、制御コンピュータ28は、アームレスト14Fが使用位置にあるように、電動モータ46を制御する。開閉検出器56がサイドドア11の開状態を検出すると、制御コンピュータ28は、アームレスト14Fが退き位置にあるように、電動モータ46を制御する。つまり、開閉検出器56がサイドドア11の閉状態から開状態への移行を検出すると、制御コンピュータ28は、電動モータ46を正転させ、アームレスト14Fが使用位置から退き位置へ移動される。開閉検出器56がサイドドア11の開状態から閉状態への移行を検出すると、制御コンピュータ28は、電動モータ46を逆転させ、アームレスト14Fが退き位置から使用位置へ移動する。
【0072】
制御コンピュータ28、開閉検出器56及び電動モータ46は、サイドドア11の開閉に連動するようにアームレスト14Fを使用位置と退き位置とに切り換え配置する連動制御手段を構成する。
【0073】
又、制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ46が正転され、アームレスト14Fが図11(a)に示す使用位置から図11(b)に示す退き位置へ移動される。電動モータ46が逆転されると、退き位置にあるアームレスト14Fが使用位置へ復帰する。
【0074】
アームレスト14Fが退き位置にあるときには、エアバッグ252の展開領域(E1,E2)内にあるアームレスト14Fの占有割合が低減する。従って、エアバッグ252は、迅速且つ適正に展開する。又、アームレスト14Fの退き位置は、車両側部の一部であるセンターピラーPに対応する位置という乗り降りする際の妨げにならない場所に設定されているため、乗員は、アームレスト14Fに妨げられることなく容易に乗り降りできる。
【0075】
次に、図13(a),(b)の第8の実施形態を説明する。第4の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。図13(a)は、車両の前側から見た図であり、図13(b)は、車両の左側から見た図である。
【0076】
第8の実施形態では、ドアトリム13に一対のガイド溝59,60が形成されており、アームレスト14Gには被ガイドローラ61,62がガイド溝59,60内を転動可能に取り付けられている。電動モータ18がインナーパネル12に形成された一対の切り起こし部121Gに支軸57,58を介して傾動可能に支持されている。電動モータ18のネジ軸182は、筒部224Gの雌ネジ225Gに螺合されている。電動モータ18の回転は、ネジ軸182及び雌ネジ225Gを介して筒部224Gに伝えられる。電動モータ18が正逆回転すると、雌ネジ225Gがネジ軸182Gに噛合しながら上下動し、アームレスト14Gが被ガイドローラ61,62とガイド溝59,60との間のガイド作用によって上下に案内される。このとき、電動モータ18及びアームレスト14Gは、支軸57,58を中心にして若干傾動する。
【0077】
制御コンピュータ28が側部衝突発生の可能性有りという予測を行なうと、電動モータ18が正転〔図13(a)に示すように矢印Q9の方向へ回転する方向〕され、ネジ軸182が車両の上から見て右回りに回転される。これにより、ネジ軸182及び筒部224Gが支軸57,58を中心にして車外側へ傾動しながら、筒部224Gが上動する。これにより、アームレスト14Gがドアポケット32から上方へ離れてゆくように図13(a)に実線で示す使用位置から鎖線で示す退き位置へ移動される。電動モータ18が逆転〔矢印Q9とは逆の回転方向〕されると、退き位置にあるアームレスト14Gが使用位置へ復帰する。
【0078】
乗員Mの腕がアームレスト14Gに載っている場合、アームレスト14Gが上方へ移動すると、乗員Mの腕も上方へ移動する。従って、エアバッグを迅速且つ確実に展開する空間が確保される。
【0079】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
(1)第1〜第8の実施形態において、電動モータを正転させる押しボタンスイッチと、電動モータを逆転させる押しボタンスイッチとを設け、これらの押しボタンスイッチの操作によってアームレストを使用位置と退き位置との間の任意の位置に配置できるようにしてもよい。
【0080】
(2)第1〜第4の実施形態において、回転式の電動モータの代わりに、リニアアクチュエータ(例えばリニアモータ、流体圧シリンダ等)を用いてアームレストを使用位置と退き位置との一方から他方へ切り換え配置できるようにしてもよい。
【0081】
(3)アームレストを支持する支持状態からアームレストを支持不能な不支持状態へ切り換え可能な支持手段を備えた退かせ手段を構成してもよい。側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、支持手段は、支持状態から不支持状態へ切り換えられ、支持状態から不支持状態へ切り換えられる。支持手段としては、例えばリニアソレノイド、流体圧シリンダ等のリニアアクチュエータが可能である。リニアアクチュエータの出力軸によってアームレストを支持し、アームレストを支持する位置から出力軸を退避させるようにすれば、アームレストが落下する。
【0082】
(4)シートの背もたれ部にアームレストを設けた構成に本発明を適用してもよい。
(5)エアバッグは、アームレストの移動領域を考慮した上で、乗員の胸の保護のみならず、乗員の肩、腹、腰あるいは頭部の中から保護する部位を任意に選択して胸と共に側部衝突から保護するものであってもよい。
【0083】
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
〔1〕前記エアバッグの展開領域は、アームレストの使用位置に重なるように設定されている請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1実施形態を示し、(a)は正断面図。(b)は、平断面図。
【図2】部分拡大正断面図。
【図3】サイドエアバッグ装置を示す側面図。
【図4】図2のA−A線断面図。
【図5】乗員保護制御プログラムを表すフローチャート。
【図6】第2実施形態を示し、(a)は部分拡大正断面図。(b)は、図6(a)のB−B線断面図。
【図7】第3実施形態を示し、(a)は部分拡大正断面図。(b)は、図7(a)のC−C線断面図。
【図8】第4実施形態を示し、(a),(b)は部分拡大正断面図。
【図9】第5実施形態を示し、(a),(b)は部分拡大正断面図。
【図10】第6実施形態を示し、(a),(b)は部分拡大正断面図。
【図11】第7実施形態を示し、(a),(b)は側面図。
【図12】(a)は、図11(a)のD−D線断面図。(b)は、図11(a)のE−E線断面図。
【図13】第8実施形態を示し、(a)は、部分拡大正断面図。(b)は、側断面図。
【符号の説明】
【0085】
11…車両側部としてのサイドドア。14,14B,14C,14D,14F,14G…アームレスト。18,18A,46…退かせ手段を構成する電動モータ。226…平行移動リンクとしての連結片。24…シート。241…座部。25…サイドエアバッグ装置。251…ガス発生源としてのインフレータ。252…エアバッグ。27…制御コンピュータ28と共に側部衝突予測手段を構成する側部衝突予測器。32,32E…ドアポケット。40…平行4節リンク機構と共にドアポケットの移動手段を構成するリンク。46…制御コンピュータ28と共に連動制御手段を構成する電動モータ。56…制御コンピュータ28と共に連動制御手段を構成する開閉検出器。R…平行4節リンク機構。P…センターピラー。E1,E2…展開領域。M…乗員。K…腰部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生源から発生するガスにより膨張して展開されるエアバッグを有するエアバッグ装置と、車両における側部衝突を予測する側部衝突予測手段とが備えられており、前記エアバッグは、車両側部と車両のシートに着座した乗員との間で膨張する車両における乗員保護装置において、
前記シートに着座した乗員と前記車両側部との間に設けられたアームレストと、
前記エアバッグの展開領域内にある前記アームレストの占有割合が低減するように、前記アームレストの使用位置から前記アームレストを退かせる退かせ手段とを備え、
前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記退かせ手段は、前記アームレストを前記使用位置から退かせることを特徴とする車両における乗員保護装置。
【請求項2】
前記退かせ手段は、前記使用位置から前記エアバッグの展開領域外へ前記アームレストを退かせることを特徴とする請求項1に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項3】
前記退かせ手段は、前記アームレストを下方へ移動させることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項4】
前記退かせ手段は、前記シートに着座した乗員の腰部の高さ位置に前記アームレストを移動させることを特徴とする請求項3に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項5】
前記退かせ手段は、前記シートの座部の高さ位置に前記アームレストを移動させることを特徴とする請求項3に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項6】
前記アームレストは、車両のサイドドアに設けられており、前記アームレストの下方にはドアポケットが設けられており、前記ドアポケットを前記サイドドア内へ移動させるための移動手段が設けられており、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記移動手段は、前記ドアポケットを前記サイドドア内へ移動させることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項7】
前記退かせ手段は、前記移動手段を兼ねており、前記ドアポケットは、前記アームレストの下方への移動に連動して、前記サイドドア内へ移動されることを特徴とする請求項7に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項8】
前記退かせ手段は、前記アームレストを上方へ移動させることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項9】
前記退かせ手段は、前記アームレストを平行移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項10】
前記退かせ手段は、前記アームレストを支持する平行4節リンク機構を含み、前記アームレストは、前記平行4節リンク機構の平行移動リンクに連結されていることを特徴とする請求項9に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項11】
前記アームレストは、車両のサイドドアに設けられており、前記平行4節リンク機構は、前記サイドドアと交差する方向に前記アームレストを平行移動させることを特徴とする請求項10に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項12】
前記アームレストの下方にドアポケットが設けられており、前記アームレストは、前記サイドドア側から車室内側へ向かいつつ下動されるようになっており、前記ドアポケットは、前記アームレストの下動に連動して下動されることを特徴とする請求項11に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項13】
前記アームレストは、前記車両側部の一部であるセンターピラーに設けられており、前記退かせ手段は、車両のサイドドアの開閉に連動するように前記アームレストを使用位置と退き位置とに切り換え配置する連動制御手段であり、前記連動制御手段は、前記サイドドアの開状態から閉状態への移行に応じて前記アームレストを退き位置から使用位置へ切り換え配置すると共に、前記サイドドアの閉状態から開状態への移行に応じて前記アームレストを使用位置から退き位置へ切り換え配置し、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記連動制御手段は、前記アームレストを使用位置から退き位置へ切り換え配置することを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項14】
前記退き位置は、前記センターピラーに対応する位置であることを特徴とする請求項13に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項15】
前記退かせ手段は、その作動後にその作動前の初期状態に復帰可能な可逆装置であり、前記退かせ手段がその作動後にその作動前の初期状態に復帰したときには、前記アームレストは、使用位置に復帰することを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項1】
ガス発生源から発生するガスにより膨張して展開されるエアバッグを有するエアバッグ装置と、車両における側部衝突を予測する側部衝突予測手段とが備えられており、前記エアバッグは、車両側部と車両のシートに着座した乗員との間で膨張する車両における乗員保護装置において、
前記シートに着座した乗員と前記車両側部との間に設けられたアームレストと、
前記エアバッグの展開領域内にある前記アームレストの占有割合が低減するように、前記アームレストの使用位置から前記アームレストを退かせる退かせ手段とを備え、
前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記退かせ手段は、前記アームレストを前記使用位置から退かせることを特徴とする車両における乗員保護装置。
【請求項2】
前記退かせ手段は、前記使用位置から前記エアバッグの展開領域外へ前記アームレストを退かせることを特徴とする請求項1に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項3】
前記退かせ手段は、前記アームレストを下方へ移動させることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項4】
前記退かせ手段は、前記シートに着座した乗員の腰部の高さ位置に前記アームレストを移動させることを特徴とする請求項3に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項5】
前記退かせ手段は、前記シートの座部の高さ位置に前記アームレストを移動させることを特徴とする請求項3に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項6】
前記アームレストは、車両のサイドドアに設けられており、前記アームレストの下方にはドアポケットが設けられており、前記ドアポケットを前記サイドドア内へ移動させるための移動手段が設けられており、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記移動手段は、前記ドアポケットを前記サイドドア内へ移動させることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項7】
前記退かせ手段は、前記移動手段を兼ねており、前記ドアポケットは、前記アームレストの下方への移動に連動して、前記サイドドア内へ移動されることを特徴とする請求項7に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項8】
前記退かせ手段は、前記アームレストを上方へ移動させることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項9】
前記退かせ手段は、前記アームレストを平行移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項10】
前記退かせ手段は、前記アームレストを支持する平行4節リンク機構を含み、前記アームレストは、前記平行4節リンク機構の平行移動リンクに連結されていることを特徴とする請求項9に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項11】
前記アームレストは、車両のサイドドアに設けられており、前記平行4節リンク機構は、前記サイドドアと交差する方向に前記アームレストを平行移動させることを特徴とする請求項10に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項12】
前記アームレストの下方にドアポケットが設けられており、前記アームレストは、前記サイドドア側から車室内側へ向かいつつ下動されるようになっており、前記ドアポケットは、前記アームレストの下動に連動して下動されることを特徴とする請求項11に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項13】
前記アームレストは、前記車両側部の一部であるセンターピラーに設けられており、前記退かせ手段は、車両のサイドドアの開閉に連動するように前記アームレストを使用位置と退き位置とに切り換え配置する連動制御手段であり、前記連動制御手段は、前記サイドドアの開状態から閉状態への移行に応じて前記アームレストを退き位置から使用位置へ切り換え配置すると共に、前記サイドドアの閉状態から開状態への移行に応じて前記アームレストを使用位置から退き位置へ切り換え配置し、前記側部衝突予測手段が側部衝突を予測したときには、前記連動制御手段は、前記アームレストを使用位置から退き位置へ切り換え配置することを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項14】
前記退き位置は、前記センターピラーに対応する位置であることを特徴とする請求項13に記載の車両における乗員保護装置。
【請求項15】
前記退かせ手段は、その作動後にその作動前の初期状態に復帰可能な可逆装置であり、前記退かせ手段がその作動後にその作動前の初期状態に復帰したときには、前記アームレストは、使用位置に復帰することを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の車両における乗員保護装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−253671(P2007−253671A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78087(P2006−78087)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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