説明

乗員姿勢認識装置

【課題】シートに着座している乗員へ、その姿勢を正すように報知できる乗員姿勢認識装置の提供を課題とする。
【解決手段】車室12内に設置され、シートクッション22に着座した乗員Pのシートクッション22の車体前方側端部22Aから膝関節Pk位置までの距離D2を測定する測定手段18と、シートバック24の傾斜角度αを検出する検出手段26と、測定手段18による測定結果と検出手段26による検出結果から、水平面に対する乗員Pの骨盤Pwの傾斜角度θを推定する推定手段28と、推定手段28による推定結果が境界値を超えているか否かを判断する判断手段32と、判断手段32により推定結果が境界値を超えていないと判断されたときに、乗員Pに対して姿勢を正すように報知する報知手段34と、を備えた乗員姿勢認識装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員に姿勢を正すことを認識させる乗員姿勢認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに着座している乗員の姿勢を判定する装置は、従来から種々知られている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。これは、主にエアバッグが備えられている車両において、シートに乗員が着座しているか否かを判定したり、その乗員が大人であるか、子供であるかなどを判定するのに使用されている。つまり、例えば助手席に乗員がいない場合や子供や幼児が乗っている場合には、エアバッグを作動させないようにすることに使用されている。
【0003】
したがって、例えばシートに着座する乗員の姿勢が悪くても(例えばシートクッションの車体前方側端部付近に着座して乗員の骨盤が大きく後傾していても)、エアバッグが作動することがあるが、この場合には、乗員に対して、シートベルトによる腹部傷害が発生しやすくなるなどの不具合がある。このように、従来の乗員姿勢判定装置には、シートに着座している乗員へ、その姿勢を正すように促す作用はなく、未だ改善の余地がある。
【特許文献1】特開2001−74575号公報
【特許文献2】特開2002−257620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、シートに着座している乗員へ、その姿勢を正すように報知できる乗員姿勢認識装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の乗員姿勢認識装置は、車室内に設置され、シートクッションに着座した乗員の該シートクッションの車体前方側端部から膝関節位置までの距離を測定する測定手段と、シートバックの傾斜角度を検出する検出手段と、前記測定手段による測定結果と前記検出手段による検出結果から、水平面に対する乗員の骨盤の傾斜角度を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果が境界値を超えているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記推定結果が前記境界値を超えていないと判断されたときに、乗員に対して姿勢を正すように報知する報知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、シートに着座している乗員の骨盤の傾斜角度を推定し、その傾斜角度が境界値を超えていない場合には、乗員の姿勢が悪いと判断して、その姿勢を正すように報知することができる。したがって、シートベルトによる腹部傷害の発生を極力低減することができる。
【0007】
また、本発明に係る請求項2に記載の乗員姿勢認識装置は、シートクッションに埋設され、該シートクッションに着座した乗員の座圧分布を計測する計測手段と、シートバックの傾斜角度を検出する検出手段と、前記計測手段による計測結果と前記検出手段による検出結果から、水平面に対する乗員の骨盤の傾斜角度を推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果が境界値を超えているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記推定結果が前記境界値を超えていないと判断されたときに、乗員に対して姿勢を正すように報知する報知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、シートに着座している乗員の骨盤の傾斜角度を推定し、その傾斜角度が境界値を超えていない場合には、乗員の姿勢が悪いと判断して、その姿勢を正すように報知することができる。したがって、シートベルトによる腹部傷害の発生を極力低減することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の乗員姿勢認識装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗員姿勢認識装置において、前記報知手段が、警報音発生装置、振動発生装置、音声発生装置の少なくとも何れか1つで構成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、シートに着座している乗員へ、その姿勢を正すように報知することが適切にできる。
【0011】
また、請求項4に記載の乗員姿勢認識装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の乗員姿勢認識装置において、前記報知手段が、前記シートクッションの内部に、車幅方向を長手方向として車体前後方向に複数並設された膨張・収縮部材で構成され、前記複数の膨張・収縮部材は、車体前方側から車体後方側へ、時間差を持って順に膨張・収縮を繰り返す構成とされていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、シートに着座している乗員へ、その姿勢を正すように報知することができるとともに、ある程度強制的に、その姿勢を正すことができる。
【0013】
また、請求項5に記載の乗員姿勢認識装置は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の乗員姿勢認識装置において、前記報知手段が、前記シートバックの内部に、車幅方向を長手方向として車体上下方向に複数並設された膨張・収縮部材で構成され、前記複数の膨張・収縮部材は、車体下方側から車体上方側へ、時間差を持って順に膨張・収縮を繰り返す構成とされていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、シートに着座している乗員へ、その姿勢を正すように報知することができるとともに、ある程度強制的に、その姿勢を正すことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、シートに着座している乗員へ、その姿勢を正すように報知できる乗員姿勢認識装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。図1は乗員姿勢認識装置の第1実施例を備えた車両の概略側面図であり、図2は膝関節位置と骨盤角度の関係を示すグラフである。なお、図において、矢印FRで示されている方向は車体前方向であり、矢印UPで示されている方向は車体上方向である。
【0017】
図1で示すように、車両10の車室12内、例えばルーフパネル14の車体前方側には、シート20のシートクッション22に着座した乗員Pのシートクッション22の車体前方側端部22Aから膝関節Pk位置までの距離D2を測定する測定手段としてのカメラ18が設置されている。そして、このカメラ18で撮影された画像により距離D2を算出する制御装置30が、車両10に搭載されている。
【0018】
なお、シートクッション22の車体前後方向の長さD1は、予め制御装置30に登録(記憶)されている。また、カメラ18を設置する位置は、ルーフパネル14に限定されるものではなく、乗員Pの膝関節Pk位置を測定(撮影)できる位置であれば、例えばダッシュボード16等に設置してもよい。また、膝関節Pk位置を測定する測定手段としては、カメラ18に限定されるものではなく、例えばレーザー変位計(図示省略)などを用いることも可能である。
【0019】
また、車両10の車室12内、例えばシートバック24の回動中心軸上には、シートバック24の傾斜角度αを検出する検出手段しての角度センサー26が配設されている。そして、カメラ18で測定した乗員Pの膝関節Pkの位置と、角度センサー26で検出したシートバック24の傾斜角度αから、水平面に対する乗員Pの骨盤Pwの傾斜角度θを推定する推定手段28が、制御装置30に設けられている。なお、この制御装置30には、上記推定手段28による推定結果が境界値(図2参照)を超えているか否かを判断する判断手段32も設けられている。
【0020】
また、この車両10の車室12内には、上記判断手段32により推定結果が境界値を超えていないと判断されたときには、乗員Pに姿勢を正すように報知する報知手段34が備えられている。この報知手段34としては、例えば車室12内へ警報音を発生する警報音発生装置や、車室12内の乗員Pへ深く着座するように指示する音声を発生させる音声発生装置、或いはシートクッション22やシートバック24に埋設されたバイブレーター(図示省略)を振動させる振動発生装置などが考えられるが、これらのうち、少なくとも1つで構成されていればよい。
【0021】
以上のような構成とされた第1実施例の乗員姿勢認識装置において、次にその作用について、図2、図3を基に説明する。図3で示すように、まずイグニッションスイッチをONにすると(S1)、カメラ18が作動して、シートクッション22の車体前方側端部22Aの位置が測定(計測)され(S2)、そこから乗員Pの膝関節Pk位置までの距離D2が測定(計測)される(S3)。なお、シートクッション22の車体前後方向の長さD1は、予め制御装置30に登録(記憶)されており、これによって、シートクッション22の車体後方側端部22Bから膝関節Pk位置までの距離D1+D2が得られる(S4)。
【0022】
次いで、シートバック24の傾斜角度αが角度センサー26により検出(計測)される(S5)。そして、これら距離D1+D2、傾斜角度αから、乗員Pの骨盤Pwの傾斜角度θが推定手段28により推定され(S6)、その骨盤Pwの傾斜角度θが境界値を超えているか否かが判断手段32により判断される(S7)。
【0023】
ここで、距離D1+D2とシートバック24の傾斜角度αと骨盤Pwの傾斜角度θには、図2のグラフで示すような相関関係があることが実験の結果から判明している。すなわち、距離D1+D2と骨盤Pwの傾斜角度θは、シートバック24の傾斜角度αを介して1対1で対応し、距離D1+D2から骨盤Pwの傾斜角度θを求めることが可能となっている。
【0024】
具体的に説明すると、シートバック24の傾斜角度αが小さいとき、つまり、シートバック24がリクライニングされて寝ているとき、図2で示すグラフL1が選択される。すると、距離D1+D2がグラフL1と交わる点X1における骨盤Pwの傾斜角度θ1は小さくなり、境界値を超えない。したがって、シートベルト(図示省略)による腹部傷害が発生しやすく、危険性が高い(危険大)と判断され、報知手段34により、警報音、振動、音声等が車室12内の乗員Pに対して出される(S8)。これにより、乗員Pが自主的にその姿勢を正すことを期待する。
【0025】
一方、シートバック24の傾斜角度αが大きいとき、つまり、シートバック24が起きているとき、図2で示すグラフL3が選択される。すると、距離D1+D2がグラフL3と交わる点X3における骨盤Pwの傾斜角度θ3は大きくなり、境界値を超える。したがって、この場合は、シートベルトによる腹部傷害が発生し難く、危険性が低い(危険小)と判断されるため、警報音、振動、音声等が車室12内へ出されることはなく(報知手段34が作動せず)、再び膝関節Pk位置が測定されるようになる。
【0026】
なお、グラフL2は、グラフL1とグラフL3の中間位置にシートバック24を倒したときであり、距離D1+D2がグラフL2と交わる点X2における骨盤Pwの傾斜角度θ2は比較的小さく、境界値を超えない。したがって、この場合も、シートベルトによる腹部傷害が発生しやすく、危険性がある程度高い(危険やや大)と判断され、報知手段34により、警報音、振動、音声等が車室12内の乗員Pに対して出されることになる。そして、このときも、乗員Pが自主的にその姿勢を正すことを期待する。
【0027】
また、この車両10に、ニーエアバッグやクッションエアバッグ等が装備されている場合で、骨盤Pwの傾斜角度θが境界値を超えているときには、それらニーエアバッグやクッションエアバッグを展開させなくても、乗員Pに腹部傷害が発生する可能性が低く(又は無く)、乗員Pの膝がダッシュボード16に衝突する可能性が低い(又は無い)ため、図4で示すように、それらニーエアバッグやクッションエアバッグ等を展開させない(又は抑制する)電気信号を出すように、制御装置30により制御してもよい(S9)。
【0028】
また、報知手段34としては、例えば図5、図6で示すような構成にしてもよい。すなわち、シートクッション22及びシートバック24の少なくとも一方の内部(図5(A)では両方の内部)の表面近くに、車幅方向を長手方向とした空気袋のような膨張・収縮部材36を、シートクッション22の場合は車体前後方向に、シートバック24の場合は車体上下方向に、それぞれ複数並べて設ける。
【0029】
そして、各膨張・収縮部材36に対して独立してエアーを供給、吸引可能な(各膨張・収縮部材36の圧力を独立して増減可能な)アクチュエーター38を、シートクッション22側及びシートバック24側にそれぞれ設けて、各膨張・収縮部材36に接続し、更に、その2つのアクチュエーター38を制御装置30に接続する。そして更に、図6のグラフで示すようなタイミングで、各膨張・収縮部材36に対してエアーを供給、吸引する(圧力を増減する)。
【0030】
図6で示すようなタイミングで、各膨張・収縮部材36にアクチュエーター38からエアーが供給され、かつ、各膨張・収縮部材36からアクチュエーター38によりエアーが吸引されると、図5(B)で示すように、シートクッション22の場合では、車体前方側の膨張・収縮部材36から車体後方側の膨張・収縮部材36へ順番に時間差を持って、各膨張・収縮部材36が膨張・収縮を繰り返すことができる。
【0031】
したがって、シートクッション22の表面は、膨張・収縮部材36により、車体前方向から車体後方向へ波打つことになり、乗員Pはシートクッション22の車体後方側へ移動するように(深く着座するように)誘われることになる。つまり、このような構成にすると、ある程度強制的に乗員Pの姿勢を正すことが可能となるため、乗員Pが自主的に姿勢を正さない場合に効果的となる。
【0032】
なお、シートバック24の場合も、同様にして、車体下方側の膨張・収縮部材36から車体上方側の膨張・収縮部材36へ順番に時間差を持って、各膨張・収縮部材36が膨張・収縮を繰り返すことができ、これによって、シートバック24の表面は、車体下方向から車体上方向へ波打つことになる。したがって、上記と同様に、乗員Pはシートクッション22の車体後方側へ移動するように(深く着座するように)誘われることになり、ある程度強制的に乗員Pの姿勢を正すことが可能となるため、乗員Pが自主的に姿勢を正さない場合に効果的となる。
【0033】
次に、乗員姿勢認識装置の第2実施例について説明する。なお、上記第1実施例と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明(作用も含む)は省略する。図7で示すように、この第2実施例の乗員姿勢認識装置では、測定手段としてのカメラ18の代わりに、シートクッション22の表面側に、シートクッション22に着座した乗員Pの座圧分布を計測する計測手段としての座圧センサー40(又は荷重計でもよい)が、所定間隔を隔てて複数(図示のものは4個)埋設されている。
【0034】
そして、この座圧センサー40は制御装置30に接続され、計測した座圧分布のうち、最も圧力が高い圧力中心位置が計測されるようになっており、この計測結果とシートバック24の傾斜角度αから、水平面に対する乗員Pの骨盤Pwの傾斜角度θが、推定手段28により推定されるようになっている。なお、これ以外の構成は、上記第1実施例と同様なので、その詳細な説明は省略する。
【0035】
以上のような構成とされた第2実施例の乗員姿勢認識装置において、次にその作用について、図8、図9を基に説明する。図9で示すように、まずイグニッションスイッチをONにすると(S1)、座圧センサー40が作動して、シートクッション22における座圧分布が計測され、シートクッション22の車体後方側端部22Bから、最も圧力が高い圧力中心位置までの距離Dが計測される(S2)。
【0036】
次いで、シートバック24の傾斜角度αが角度センサー26により検出(計測)される(S3)。そして、これら距離D、傾斜角度αから、乗員Pの骨盤Pwの傾斜角度θが推定手段28により推定され(S4)、その骨盤Pwの傾斜角度θが境界値を超えているか否かが判断手段32により判断される(S5)。
【0037】
ここで、距離Dとシートバック24の傾斜角度αと骨盤Pwの傾斜角度θには、図8のグラフで示すような相関関係があることが実験の結果から判明している。すなわち、距離Dと骨盤Pwの傾斜角度θは、シートバック24の傾斜角度αを介して1対1で対応し、距離Dから骨盤Pwの傾斜角度θを求めることが可能となっている。
【0038】
具体的に説明すると、シートバック24の傾斜角度αが小さいとき、つまり、シートバック24がリクライニングされて寝ているとき、図8で示すグラフL4が選択される。すると、距離DがグラフL4と交わる点X4における骨盤Pwの傾斜角度θ4は小さくなり、境界値を超えない。したがって、シートベルト(図示省略)による腹部傷害が発生しやすく、危険性が高い(危険大)と判断され、報知手段34により、警報音、振動、音声等が車室12内の乗員Pに対して出される(S6)。これにより、乗員Pが自主的にその姿勢を正すことを期待する。
【0039】
一方、シートバック24の傾斜角度αが大きいとき、つまり、シートバック24が起きているとき、図8で示すグラフL6が選択される。すると、距離DがグラフL6と交わる点X6における骨盤Pwの傾斜角度θ6は大きくなり、境界値を超える。したがって、この場合は、シートベルトによる腹部傷害が発生し難く、危険性が低い(危険小)と判断されるため、警報音、振動、音声等が車室12内へ出されることはなく(報知手段34が作動せず)、再び座圧分布が計測され、その圧力中心位置が計測されるようになる。
【0040】
なお、グラフL5は、グラフL4とグラフL6の中間位置にシートバック24を倒したときであり、距離DがグラフL5と交わる点X5における骨盤Pwの傾斜角度θ5は比較的小さく、境界値を超えない。したがって、この場合も、シートベルトによる腹部傷害が発生しやすく、危険性がある程度高い(危険やや大)と判断され、報知手段34により、警報音、振動、音声等が車室12内の乗員Pに対して出されることになる。そして、このときも、乗員Pが自主的にその姿勢を正すことを期待する。
【0041】
また、この車両10に、ニーエアバッグやクッションエアバッグ等が装備されている場合で、骨盤Pwの傾斜角度θが境界値を超えているときには、それらニーエアバッグやクッションエアバッグを展開させなくても、乗員Pに腹部傷害が発生する可能性が低く(又は無く)、乗員Pの膝がダッシュボード16に衝突する可能性が低い(又は無い)ため、図10で示すように、それらニーエアバッグやクッションエアバッグ等を展開させない(又は抑制する)電気信号を出すように、制御装置30により制御してもよい(S7)。また、この第2実施例においても、図5、図6で示したような報知手段34(膨張・収縮部材36)を用いるようにしてもよい。
【0042】
以上、本発明に係る乗員姿勢認識装置によれば、上記第1実施例のように、乗員Pの膝関節Pkの位置をセンシングし、実験に基づく膝関節Pkの位置と骨盤Pwの傾斜角度θとの相関関係から、その骨盤Pwの傾斜角度θを推定するか、又は、上記第2実施例のように、乗員Pの座圧分布をセンシングし、実験に基づく圧力中心位置(最大圧力位置)と骨盤Pwの傾斜角度θとの相関関係から、その骨盤Pwの傾斜角度θを推定することにより、シートベルトによる腹部傷害の発生しやすい姿勢を検出(予想)することができる。
【0043】
そして、その腹部傷害が発生する可能性があるときには、警告(警報音、振動、音声等)を出すことにより、乗員Pに自主的な姿勢変更を促したり、機械的手段(膨張・収縮部材36)により、乗員Pの姿勢をある程度強制的に正すことができる。したがって、その腹部傷害の発生を極力低減することができる。なお、本発明に係る乗員姿勢認識装置は、図示の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】乗員姿勢認識装置の第1実施例を備えた車両の概略側面図
【図2】膝関節位置と骨盤角度の関係を示すグラフ
【図3】乗員姿勢認識装置の第1実施例の作用を説明するフローチャート
【図4】乗員姿勢認識装置の第1実施例の別の作用を説明するフローチャート
【図5】(A)報知手段の一例を示す概略側面図、(B)膨張・収縮部材の膨張・収縮を時系列的に示す説明図
【図6】膨張・収縮部材にエアーを注入するタイミングを示すグラフ
【図7】乗員姿勢認識装置の第2実施例を備えた車両の概略側面図
【図8】シートクッションの最大圧力位置と骨盤角度の関係を示すグラフ
【図9】乗員姿勢認識装置の第2実施例の作用を説明するフローチャート
【図10】乗員姿勢認識装置の第2実施例の別の作用を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0045】
10 車両
12 車室
14 ルーフパネル
16 ダッシュボード
18 カメラ(測定手段)
20 シート
22 シートクッション
24 シートバック
26 角度センサー(検出手段)
28 推定手段
30 制御装置
32 判断手段
34 報知手段
36 膨張・収縮部材
38 アクチュエーター
40 座圧センサー(計測手段)
P 乗員
Pk 膝関節
Pw 骨盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設置され、シートクッションに着座した乗員の該シートクッションの車体前方側端部から膝関節位置までの距離を測定する測定手段と、
シートバックの傾斜角度を検出する検出手段と、
前記測定手段による測定結果と前記検出手段による検出結果から、水平面に対する乗員の骨盤の傾斜角度を推定する推定手段と、
前記推定手段による推定結果が境界値を超えているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記推定結果が前記境界値を超えていないと判断されたときに、乗員に対して姿勢を正すように報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする乗員姿勢認識装置。
【請求項2】
シートクッションに埋設され、該シートクッションに着座した乗員の座圧分布を計測する計測手段と、
シートバックの傾斜角度を検出する検出手段と、
前記計測手段による計測結果と前記検出手段による検出結果から、水平面に対する乗員の骨盤の傾斜角度を推定する推定手段と、
前記推定手段による推定結果が境界値を超えているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記推定結果が前記境界値を超えていないと判断されたときに、乗員に対して姿勢を正すように報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする乗員姿勢認識装置。
【請求項3】
前記報知手段は、警報音発生装置、振動発生装置、音声発生装置の少なくとも何れか1つで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗員姿勢認識装置。
【請求項4】
前記報知手段は、前記シートクッションの内部に、車幅方向を長手方向として車体前後方向に複数並設された膨張・収縮部材で構成され、前記複数の膨張・収縮部材は、車体前方側から車体後方側へ、時間差を持って順に膨張・収縮を繰り返す構成とされていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の乗員姿勢認識装置。
【請求項5】
前記報知手段は、前記シートバックの内部に、車幅方向を長手方向として車体上下方向に複数並設された膨張・収縮部材で構成され、前記複数の膨張・収縮部材は、車体下方側から車体上方側へ、時間差を持って順に膨張・収縮を繰り返す構成とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の乗員姿勢認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−137355(P2009−137355A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313707(P2007−313707)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】