説明

乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置及びハンドレール駆動力診断方法

【課題】ハンドレール駆動力の異常の有無を容易かつ迅速に診断することができる乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置及びハンドレール駆動力診断方法の提供。
【解決手段】診断を開始する診断開始指令手段15と、ハンドレール速度を計測するハンドレール速度計測手段17と、駆動モータ1のトルクを計測する駆動モータトルク計測手段18と、ハンドレール8に負荷を加えるハンドレール負荷手段14と、計測指令を出すと共に、負荷が加えられた状態及び無負荷状態におけるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクから偏差を算出する偏差算出手段と、ハンドレール速度の偏差が所定値以上、且つ駆動モータ1のトルクの偏差が所定値以上のとき、ハンドレール駆動力が正常であり、ハンドレール速度の偏差が所定値以上、且つ駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満のとき、ハンドレール駆動力が異常であると判定する診断制御手段19とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドレール駆動力の異常の有無を診断し、ハンドレール駆動力を適切な状態に維持できる乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置及びハンドレール駆動力診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、乗客コンベアは、駆動モータの動力を減速機へ伝達する駆動装置と、無端状に連結され、駆動装置によって駆動されて循環移動する踏段と、この踏段の側方に立設される欄干に設けられたガイドレールに案内され、踏段と同期するように走行するハンドレールとを備えている。また、乗客コンベアは、ハンドレール速度を検出するハンドレール速度検出器と、設定された速度で踏段及びハンドレールの走行を維持するために乗客負荷の変動に応じて駆動モータのトルク指令値を可変制御する駆動モータトルク制御装置とを備えている。
【0003】
このように、踏段とハンドレールが同期して走行することによって踏段上の乗客を安全に運ぶ乗客コンベアには、ハンドレール駆動力が適切な状態に維持されている必要があるので、ハンドレール駆動力の異常の有無を診断するハンドレール駆動力診断装置が設けられている。この乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置の従来技術の1つとして、踏段の速度を検出する踏段速度検出器と、ハンドレール速度検出器の出力信号を用いてハンドレールの平均速度を算出するハンドレール平均速度算出手段と、踏段速度検出器の出力信号を用いてハンドレール速度の算出と同じタイミングの踏段速度を算出する踏段速度算出手段と、駆動トルク制御装置、すなわち駆動モータトルク制御装置の情報から駆動モータの回転数を判定するモータ回転数算出手段と、モータ回転数と踏段速度の差分からベルトスリップ率を算出するベルトスリップ率算出手段と、ベルトスリップ率が所定値以下の正常値である場合に、ハンドレール平均速度と踏段速度を比較し、その速度差が所定値以下であれば、ハンドレール駆動力が正常と診断する診断手段とを備えた乗客コンベアのハンドレール駆動力監視装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の従来技術として、ハンドレール速度検出装置、すなわちハンドレール速度検出器の出力信号を用いてハンドレール速度を算出するハンドレール速度算出手段と、上昇運転の場合と下降運転の場合のハンドレール速度差を算出するハンドレール速度算出手段と、このハンドレール速度差算出手段で算出されたハンドレール速度差からガイドレールとハンドレールの接触摺動によって発生するハンドレール走行抵抗を算出するハンドレール走行抵抗算出手段とを備えた乗客コンベアのハンドレール駆動力監視装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−29540号公報
【特許文献2】特開2010−6485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された従来技術の乗客コンベアのハンドレール駆動力監視装置では、ハンドレール平均速度算出手段によってハンドレール速度を算出し、算出されたハンドレール速度のデータを基に、ハンドレール速度振幅算出手段によって速度データの最小値と最大値を抽出して速度振幅値の演算を行う。このとき、ハンドレール速度の平均速度を算出するために、ハンドレールをおおよそ2周〜10周程度走行させる必要があるので、ハンドレール駆動力の診断に時間がかかることが懸念されている。また、特許文献1に開示された従来技術の乗客コンベアのハンドレール駆動力監視装置は、ハンドレール速度の平均速度及び速度振幅値の演算に加え、踏段速度算出手段によって踏段速度を算出すると共に、モータ回転数算出手段によって駆動モータの回転数を算出した上で、これらの算出された駆動モータの回転数と踏段速度の差分からベルト伝達のスリップ率を算出しなければならないので、計算過程が多く、演算処理が複雑である。
【0007】
また、特許文献2に開示された従来技術の乗客コンベアのハンドレール駆動力監視装置では、ハンドレール走行抵抗の算出は、上昇運転と下降運転のハンドレール速度差、あるいはモータトルク差を算出して演算されるので、ハンドレールを上昇運転及び下降運転させる必要があり、上述の特許文献1に開示された乗客コンベアのハンドレール駆動力監視装置の場合と同様に、ハンドレール駆動力の診断に時間がかかる問題がある。さらに、ハンドレールの走行抵抗の算出についても、計算過程が多く、演算処理が複雑である。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、ハンドレール駆動力の異常の有無を容易かつ迅速に診断することができる乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置及びハンドレール駆動力診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置は、駆動モータの動力を減速機へ伝達する駆動装置と、無端状に連結され、前記駆動装置によって駆動されて循環移動する踏段と、この踏段の側方に立設される欄干に設けられたガイドレールに案内され、前記踏段と同期するように走行するハンドレールと、このハンドレールのハンドレール速度を検出するハンドレール速度検出器と、設定された速度で前記踏段及び前記ハンドレールの走行を維持するために乗客負荷の変動に応じて前記駆動モータのトルク指令値を可変制御する駆動モータトルク制御装置とを備え、ハンドレール駆動力の異常の有無を診断する乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置において、ハンドレール駆動力の診断を開始する診断開始指令手段と、前記ハンドレール速度検出器の信号を用いて前記ハンドレール速度を計測するハンドレール速度計測手段と、前記ハンドレール速度の計測と同じタイミングで前記駆動モータのトルクを計測する駆動モータトルク計測手段と、前記ハンドレールに負荷を加えるハンドレール負荷手段と、前記診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段へ計測指令を出すと共に、前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷が加えられた状態において前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測される前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクと、無負荷状態において前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測される前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクとの偏差を算出する偏差算出手段と、この偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値以上である場合、ハンドレール駆動力が正常であると判定し、前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、ハンドレール駆動力が異常であると判定する診断制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、ハンドレール駆動力の診断を開始する場合には、診断開始指令手段によって診断開始指令が出力され、ハンドレール速度計測手段がハンドレール速度検出器の信号を基にハンドレール速度を計測すると共に、駆動モータトルク計測手段がハンドレール速度の計測と同じタイミングで駆動モータのトルクを計測する。このとき、ハンドレール速度の計測と駆動モータのトルクの計測は、ハンドレール負荷手段によってハンドレールに負荷が加えられた状態のとき、及びハンドレールに負荷が加えられていない状態においてそれぞれ行われる。
【0011】
ハンドレール速度の計測と駆動モータのトルクの計測がそれぞれ行われると、偏差算出手段は、ハンドレール負荷手段によってハンドレールに負荷が加えられた状態におけるハンドレール速度及び駆動モータのトルクと、無負荷状態におけるハンドレール速度及び駆動モータのトルクとの偏差を算出する。ここで、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上である場合には、ハンドレール速度が落ちており、ハンドレール負荷手段によってハンドレール駆動力の診断に必要な負荷が適切にハンドレールに加わっている状態にある。この状態において、偏差算出手段によって算出された駆動モータのトルクが所定値未満である場合には、ハンドレール速度が落ちてハンドレール速度の偏差が適切な範囲内であるにも拘らず、駆動モータのトルクが上がらずに上記トルクが所定値未満であるので、ハンドレールに滑り(スリップ)が発生しており、ハンドレール負荷手段によってハンドレールに加えた負荷が駆動モータへ適切にかかっていない状態にある。すなわち、ハンドレール駆動力に異常が生じている状態にある。
【0012】
従って、診断制御手段が、ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ駆動モータのトルクの偏差が所定値以上である場合に、ハンドレール駆動力が正常であると判定し、ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合に、ハンドレール駆動力が異常であると判定することにより、煩雑な判定処理を必要とせず、ハンドレール駆動力の異常の有無を客観的に判断することができる。このように、ハンドレールの駆動状態を、乗客コンベアが制御するシステムの機能を用いて、ハンドレールに負荷が加わった状態におけるハンドレール速度及び駆動モータのトルクと、無負荷状態におけるハンドレール速度及び駆動モータのトルクとの偏差を算出して判定することにより、ハンドレール駆動力の異常の有無を容易かつ迅速に診断することができる。
【0013】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置は、前記発明において、前記診断制御手段は、前記診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、前記踏段の速度及び前記ハンドレール速度を低速度に変更する指令を前記駆動モータトルク制御装置へ入力する速度変更入力手段を有することを特徴としている。このように構成すると、診断制御手段によるハンドレール駆動力の診断において、速度変更入力手段によってハンドレール速度を低速度に変更することにより、ハンドレール駆動力の診断においてハンドレール速度の上昇に伴って生じ易くなるハンドレールの滑り(スリップ)を抑えることができるので、駆動モータトルク計測手段の計測精度を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置は、前記発明において、前記診断制御手段は、前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、前記ハンドレールへの負荷不足による診断条件不良と判定する診断条件不良判定手段を有することを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満である場合には、ハンドレール負荷手段によってハンドレールに加えた負荷が小さく、ハンドレール速度が低下していない状態となっている。従って、診断制御手段の診断条件不良判定手段が、ハンドレール駆動力の診断においてハンドレール負荷手段による負荷が駆動モータのトルクに適切に掛かっていないハンドレールの負荷不足による診断条件不良と判定することにより、診断条件不良状態にあるときに診断制御手段がハンドレール駆動力の診断を中止、あるいは再度、ハンドレール負荷手段を調整して診断することができる。これにより、診断制御手段のハンドレール駆動力の診断精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置は、前記発明において、前記診断制御手段によって判定された判定結果を報知あるいは表示する診断結果報知手段を備えたことを特徴としている。このように構成すると、ハンドレール駆動力の診断を行う点検者が診断結果報知手段によってハンドレール駆動力の診断における判定結果を容易に知ることができ、判定結果に応じて迅速な対応を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置は、前記発明において、前記踏段上における乗客の有無を判定する乗客負荷有無判定手段と、この乗客負荷有無判定手段によって前記踏段上に乗客がいないことを判定した場合、ハンドレール駆動力の診断を中止せず、前記乗客負荷有無判定手段によって前記踏段上に乗客がいることを判定した場合、ハンドレール駆動力の診断を中止する診断中止手段とを備え、前記ハンドレール負荷手段は、前記乗客負荷有無判定手段によって前記踏段上に乗客がいないことを判定した場合、前記ハンドレールに自動で負荷を加えるハンドレール自動負荷手段から成っていることを特徴としている。
【0018】
このように構成した本発明は、乗客負荷有無判定手段によって踏段上に乗客がいるかどうかを判断し、踏段上に乗客がいないときに限ってハンドレール駆動力の診断を行うように診断中止手段で制限することにより、ハンドレール駆動力の診断において踏段上の乗客がハンドレール速度及び駆動モータトルク計測手段に影響を与えることがないので、診断制御手段がハンドレール駆動力を適切に診断することができる。また、踏段上に乗客がいない場合には、ハンドレール自動負荷手段によって自動的にハンドレールに負荷が加えられ、診断制御手段がハンドレール駆動力の診断を行うことができるので、ハンドレール駆動力の診断における高い利便性を確保することができる。
【0019】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置は、前記発明において、前記診断制御手段によって判定された判定結果を格納する診断結果格納手段と、通信回線を介して接続され、前記診断結果格納手段に格納された前記判定結果を監視する監視センターと、この監視センターに前記判定結果を伝送する伝送手段とを備えたことを特徴としている。このように構成すると、監視センターにいる監視員が、伝送手段によって伝送されるハンドレール駆動力の診断の判定結果を確認できるので、ハンドレール駆動力の異常に対応できる担当者に指示すること等によって適切な処理を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法は、駆動モータの動力を減速機へ伝達する駆動装置と、無端状に連結され、前記駆動装置によって駆動されて循環移動する踏段と、この踏段の側方に立設される欄干に設けられたガイドレールに案内され、前記踏段と同期するように走行するハンドレールと、このハンドレールのハンドレール速度を検出するハンドレール速度検出器と、設定された速度で前記踏段及び前記ハンドレールの走行を維持するために乗客負荷の変動に応じて前記駆動モータのトルク指令値を可変制御する駆動モータトルク制御装置と、ハンドレール駆動力の診断を開始する診断開始指令手段と、前記ハンドレール速度検出器の信号を用いて前記ハンドレール速度を計測するハンドレール速度計測手段と、前記ハンドレール速度の計測と同じタイミングで前記駆動モータのトルクを計測する駆動モータトルク計測手段と、前記ハンドレールに負荷を加えるハンドレール負荷手段と、前記診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段へ計測指令を出すと共に、前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷が加えられた状態において前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測される前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクと、無負荷状態において前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測される前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクとの偏差を算出する偏差算出手段と、この偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値以上である場合、前記ハンドレール駆動力が正常であると判定し、前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、前記ハンドレール駆動力が異常であると判定する診断制御手段とを備え、前記ハンドレール駆動力の異常の有無を診断する乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置に用いる乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法において、前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷を加える第1手順と、前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷が加わった状態において、前記ハンドレール速度計測手段によって前記ハンドレール速度を計測すると共に、無負荷状態において、前記ハンドレール速度計測手段によって前記ハンドレール速度を計測する第2手順と、前記ハンドレール速度の計測と同じタイミングで前記駆動モータトルク計測手段によって前記駆動モータのトルクを計測する第3手順と、前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクの偏差を用いて、前記診断制御手段が、前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記駆動モータのトルクの偏差が所定値以上である場合、ハンドレール駆動力が正常であると判定し、前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、ハンドレール駆動力が異常であると判定する第4手順とを含むことを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法は、前記発明において、前記診断制御手段は、前記診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、前記踏段及び前記ハンドレール速度を低速度に変更する指令を前記駆動モータトルク制御装置へ入力する速度変更入力手段を有し、前記第2手順は、前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷が加わった状態において、前記ハンドレール速度計測手段によって前記ハンドレール速度を計測する場合、前記診断制御手段は、前記速度変更入力手段によって前記踏段及び前記ハンドレール速度を設定された通常の速度よりも低速度に変更して計測を行うことを特徴としている。
【0022】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法は、前記発明において、前記診断制御手段は、前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、前記ハンドレールへの負荷不足による診断条件不良と判定する診断条件不良判定手段を有し、前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクの偏差を用いて、前記診断制御手段が、前記ハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つ前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、前記診断条件不良判定手段によって前記ハンドレールへの負荷不足による診断条件不良と判定する第5手順を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置及びハンドレール駆動力診断方法によれば、偏差算出手段が、診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、ハンドレール速度計測手段及び駆動モータトルク計測手段へ計測指令を出すと共に、ハンドレール負荷手段によってハンドレールに負荷が加えられた状態においてハンドレール速度計測手段及び駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータのトルクと、無負荷状態においてハンドレール速度計測手段及び駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータのトルクとの偏差を算出する。そして、診断制御手段が、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ偏差算出手段によって算出された駆動モータのトルクの偏差が所定値以上である場合、ハンドレール駆動力が正常であると判定し、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ偏差算出手段によって算出された駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、ハンドレール駆動力が異常であると判定することにより、ハンドレール駆動力の異常の有無を容易かつ迅速に診断することができる。このように、煩雑な判定処理を必要とすることなくハンドレール駆動力の診断を実施できるので、従来よりも安価で汎用性の高いハンドレール駆動力の診断を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置の第1実施形態が備えられるエレベータの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態の構成を示す図である。
【図3】図2に示す本発明の第1実施形態の動作を説明する図である。
【図4】本発明の第1実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が正常状態のときの図である。
【図5】本発明の第1実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が異常状態のときの図である。
【図6】本発明の第1実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が診断条件不良状態のときの図である。
【図7】本発明の第2実施形態の構成を示す図である。
【図8】図7に示す本発明の第2実施形態の動作を説明する図である。
【図9】本発明の第2実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が正常状態のときの図である。
【図10】本発明の第2実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が異常状態のときの図である。
【図11】本発明の第2実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が診断条件不良状態のときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置及びハンドレール駆動力診断方法を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0026】
[ハンドレール駆動力診断装置の第1実施形態]
本発明に係る乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置の第1実施形態は、例えば図1に示すエスカレーターに備えられる。本発明の第1実施形態は、図1に示すように駆動モータ1の動力を減速機3へ伝達する駆動装置30と、無端状に連結され、駆動装置30によって駆動されて循環移動する踏段6と、この踏段6の側方に立設される欄干31に設けられた図示しないガイドレールに案内され、踏段6と同期するように走行するハンドレール8と、このハンドレール8のハンドレール速度を検出するハンドレール速度検出器13と、設定された速度で踏段6及びハンドレール8の走行を維持するために乗客負荷の変動に応じて駆動モータ1のトルク指令値を可変制御する駆動モータトルク制御装置4とを備えている。なお、駆動モータ1は、ベルト2を介して減速機3に連結されている。
【0027】
本発明の第1実施形態は、減速機3に連結されるドライビングチェーン5と、このドライビングチェーン5によって連結され、踏段6を軸支する踏段チェーン7と、ハンドレール8を駆動するハンドレール駆動装置9と、このハンドレール駆動装置9へ動力を伝達するハンドレール駆動チェーン10とを備えており、減速機3の回転に同期して踏段6とハンドレール8が回転するようになっている。また、ハンドレール駆動装置9は、ハンドレール8に摺接して回転する駆動ローラー11を有している。
【0028】
ここで、ハンドレール8は、駆動ローラー11による摩擦駆動で減速機3に基本的に同期するが、駆動ローラー11のローラー面とハンドレール8との接触面積は小さいので、雨水やハンドレール8の摩耗等によってハンドレール8と駆動ローラー11との間に生じる摩擦力が小さくなった場合には、減速機3に対して少し遅れることがある。そこで、本発明の第1実施形態は、踏段6の速度を検出する踏段速度検出器12と、上述したようにハンドレール速度を検出するハンドレール速度検出器13を備えており、摩擦体に滑り(スリップ)が発生した場合には、速やかに速度異常が検出されるので、エスカレーターは安全に停止制御される。
【0029】
図2に示すように、本発明の第1実施形態は、ハンドレール駆動力の診断を開始する診断開始指令手段15と、ハンドレール速度検出器13の信号を用いてハンドレール速度を計測するハンドレール速度計測手段17と、ハンドレール速度の計測と同じタイミングで駆動モータ1のトルクを計測する駆動モータトルク計測手段18と、ハンドレール8に負荷を加えるハンドレール負荷手段14とを備えている。ここで、本発明の第1実施形態では、ハンドレール負荷手段14は、例えば点検者16が直接ハンドレール8に負荷を加える負荷手段を用いている。具体的には、点検者16がハンドレール8を手で把持すること等により、ハンドレール8に負荷を加えている。
【0030】
また、本発明の第1実施形態は、診断開始指令手段15により診断開始指令が与えられた際に、ハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18へ計測指令を出すと共に、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に負荷が加えられた状態においてハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクと、無負荷状態においてハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクとの偏差を算出する図示しない偏差算出手段とを備えている。
【0031】
さらに、本発明の第1実施形態は、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値以上である場合、ハンドレール駆動力が正常であると判定し、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合、ハンドレール駆動力が異常であると判定する診断制御手段19とを備えている。
【0032】
この診断制御手段19は、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つ偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合、ハンドレール8への負荷不足による診断条件不良と判定する図示しない診断条件不良判定手段を有している。また、診断制御手段19は、診断開始指令手段15により診断開始指令が与えられた際に、踏段6の速度及びハンドレール速度を低速度に変更する指令を駆動モータトルク制御装置4へ入力する図示しない速度変更入力手段を有している。
【0033】
本発明の第1実施形態は、診断制御手段19によって判定された判定結果を報知あるいは表示する表示モニターやスピーカー等の診断結果報知手段21を備えている。さらに、本発明の第1実施形態は、診断制御手段19によって判定された判定結果を格納する診断結果格納手段20と、図示しない電話回線等の通信回線を介して接続され、診断結果格納手段20に格納された判定結果を監視する監視センター22と、この監視センター22に判定結果を伝送する伝送手段23とを備えている。
【0034】
このように構成した第1実施形態に係るハンドレール駆動力診断装置にあっては例えば以下の手順のようにしてハンドレール駆動力の診断が行われる。
【0035】
図3は図2に示す本発明の第1実施形態の動作を説明する図、図4は本発明の第1実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が正常状態のときの図、図5は本発明の第1実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が異常状態のときの図、図6は本発明の第1実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータのトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が診断条件不良状態のときの図である。
【0036】
図3に示すように、本発明の第1実施形態では、点検者16によって診断開始指令が入力されたことを契機に診断を開始する(手順(以下、Sと記す)1)。ここで、診断開始指令とは、診断開始指令手段15で示す図示しない切替スイッチが操作されること等により、発せられるものである。次に、診断開始指令が発せられると、診断制御手段19は、変更速度入力手段によって駆動モータトルク制御装置4へ速度変更を指令し、ハンドレール8及び踏段6の速度を低速モードに切替え、エスカレーターを低速モードで稼働する(S2)。
【0037】
次に、ハンドレール速度計測手段17は、ハンドレール速度を所定時間が経過するまで計測する(S4)。一方、駆動モータトルク計測手段18は、ハンドレール速度の計測と同じタイミングで駆動モータ1のトルクを所定時間が経過するまで計測する(S3)。このとき、ハンドレール速度計測手段17と駆動モータトルク計測手段18による計測は、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に負荷が加わった状態、及び無負荷状態においてそれぞれ行われる。すなわち、本発明の第1実施形態におけるハンドレール駆動力の診断は、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に負荷を加え、この状態において、ハンドレール速度計測手段17によってハンドレール速度を計測すると共に、無負荷状態において、ハンドレール速度計測手段17によってハンドレール速度を計測する。一方、ハンドレール速度の計測と同じタイミングで駆動モータトルク計測手段18によって駆動モータ1のトルクを計測する。
【0038】
そして、ハンドレール速度及び駆動モータトルク制御装置4が正常に計測された場合には、エスカレーターを停止させてハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクの計測結果が診断制御手段19へ入力される(S5)。ここで、ハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクが所定時間内に計測されなかった場合には、計測不良として、S5と同様にエスカレーターを停止させる(S6、7)。そして、診断結果報知手段21が、ハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクの計測が不良のため再計測が必要であることを点検者16へ報知する(S8)。
【0039】
次に、S5においてハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクの計測結果が診断制御手段19に入力されると、偏差算出手段は、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に負荷が加えられた状態においてハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクと、無負荷状態においてハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクとの偏差を算出する(S9、10)。
【0040】
そして、診断制御手段19は、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり(S11)、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値以上である場合(S12)、ハンドレール駆動力が正常であると判定する(S13)。また、診断制御手段19は、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり(S11)、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合(S12)、ハンドレール駆動力が異常であると判定する(S14)。また、診断制御手段19の診断条件不良判定手段は、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満であり(S11)、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合(S25)、ハンドレール8への負荷不足による診断条件不良と判定する(S17)。また、診断制御手段19の診断条件不良判定手段は、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満であり(S11)、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値以上である場合(S25)、計測不良として処理する(S6)。
【0041】
ここで図4に示すように、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上である場合には、ハンドレール速度が落ちており、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール駆動力の診断に必要な負荷が適切にハンドレール8に加わっている状態にある。この状態において、S9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクが所定値以上である場合には、駆動モータ1のトルクが上がっており、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に加えた負荷が駆動モータ1へ適切に掛かっている状態にある。すなわち、ハンドレール駆動力が正常な状態にある。
【0042】
一方、図5に示すように、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクが所定値未満である場合には、ハンドレール速度が落ちてハンドレール速度の偏差が適切な範囲内であるにも拘らず、駆動モータ1のトルクが上がらずにトルクが所定値未満であるので、ハンドレール8に滑り(スリップ)が発生しており、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に加えた負荷が駆動モータ1へ適切にかかっていない状態にある。すなわち、ハンドレール駆動力に異常が生じている状態にある。
【0043】
また、図6に示すように、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合には、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に加えた負荷が小さく、ハンドレール速度が低下していない状態となっている。この状態にある場合には、ハンドレール8への負荷不足により、ハンドレール負荷手段14が駆動モータ1のトルクに影響を与えていないとして、ハンドレール駆動力の診断において診断条件不良状態としている。
【0044】
ここで、ハンドレール負荷手段14によって負荷が加えられた状態においては、ハンドレール速度が小さくなる。従って、図4〜6に示すように、偏差算出手段が、ハンドレール負荷手段14によって負荷が加えられた状態におけるハンドレール速度から無負荷状態におけるハンドレール速度を引いて偏差を求めた場合には、ハンドレール速度の偏差は負の値となっている。この場合には、診断制御手段19の処理では、ハンドレール速度の偏差は絶対値をとるようにしている。
【0045】
次に、S11〜14、17、25によってハンドレール駆動力の診断結果が得られると、診断結果は診断結果格納手段20に格納され(S18)、診断結果報知手段21によって点検者16へ報知される(S8)。そして、診断結果は伝送手段23によって監視センター22へ伝送され(S19)、診断処理を終了する(S20)。
【0046】
このように構成したハンドレール駆動力診断装置の第1実施形態及びハンドレール駆動力診断方法の第1実施形態によれば、S9、10において偏差算出手段が、診断開始指令手段15により診断開始指令が与えられた際に、ハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18へ計測指令を出すと共に、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に負荷が加えられた状態においてハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクと、無負荷状態においてハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクとの偏差を算出する。そして、診断制御手段19が、S11、12のように、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値以上である場合、S13においてハンドレール駆動力が正常であると判定し、S11、12のように、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合、S14においてハンドレール駆動力が異常であると判定することにより、煩雑な判定処理を必要とせず、ハンドレール駆動力の異常の有無を客観的に判断することができる。このように、ハンドレールの駆動状態を、エスカレーターが制御するシステムの機能を用いて、ハンドレール8に負荷が加わった状態におけるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクと、無負荷状態におけるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクとの偏差を算出して判定することにより、ハンドレール駆動力の異常の有無を容易かつ迅速に診断することができ、安価で汎用性の高いハンドレール駆動力の診断を実現することができる。
【0047】
また、本発明のハンドレール駆動力診断装置の第1実施形態は、診断制御手段19は、S1において診断開始指令手段15により診断開始指令が与えられた際に、S2において速度変更入力手段によって踏段6の速度及びハンドレール速度を低速度に変更する指令を駆動モータトルク制御装置4へ入力することにより、ハンドレール駆動力の診断においてハンドレール速度の上昇に伴って生じ易くなるハンドレール8の滑り(スリップ)を抑えることができるので、駆動モータトルク計測手段18の計測精度を向上させることができる。
【0048】
また、本発明のハンドレール駆動力診断装置の第1実施形態は、診断制御手段19の診断条件不良判定手段は、S11、12のように、偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つ偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合、S17においてハンドレール8への負荷不足による診断条件不良と判定するので、ハンドレール負荷手段14によってハンドレール8に加えた負荷が小さく、ハンドレール速度が低下していない状態のときに診断制御手段19がハンドレール駆動力の診断を中止、あるいは再度、ハンドレール負荷手段14を調整して診断することができる。これにより、診断制御手段19のハンドレール駆動力の診断精度を向上させることができる。
【0049】
また、本発明のハンドレール駆動力診断装置の第1実施形態は、S13、14、17において診断制御手段19によって判定された判定結果を報知あるいは表示する表示モニターやスピーカー等の診断結果報知手段21を備えているので、ハンドレール駆動力の診断を行う点検者16が診断結果報知手段21によってハンドレール駆動力の診断における判定結果を容易に知ることができ、判定結果に応じて迅速な対応を行うことができる。
【0050】
また、本発明のハンドレール駆動力診断装置の第1実施形態は、診断制御手段19によって判定された判定結果を格納する診断結果格納手段20と、電話回線等の通信回線を介して接続され、診断結果格納手段20に格納された上述の判定結果を監視する監視センター22と、この監視センター22に上述の判定結果を伝送する伝送手段23とを備えることにより、監視センター22にいる図示しない監視員が伝送手段23によって伝送されるハンドレール駆動力の診断の判定結果を確認できるので、点検者16にアドバイスや指示をすること等によって適切な処理を行うことができる。
【0051】
[ハンドレール駆動力診断装置の第2実施形態]
図7は本発明の第2実施形態の構成を示す図である。
【0052】
図7に示すように、本発明に係るハンドレール駆動力診断装置の第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、踏段6上における乗客の有無を判定する乗客負荷有無判定手段101と、この乗客負荷有無判定手段101によって踏段6上に乗客がいないことを判定した場合、ハンドレール駆動力の診断を中止せず、乗客負荷有無判定手段101によって踏段6上に乗客がいることを判定した場合、ハンドレール駆動力の診断を中止する図示しない診断中止手段とを備えている。また、本発明の第2実施形態では、ハンドレール負荷手段14は、乗客負荷有無判定手段101によって踏段6上に乗客がいないことを判定した場合、ハンドレール8に自動で負荷を加えるハンドレール自動負荷手段102から成っている。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0053】
乗客負荷有無判定手段101は、例えば踏段6上の乗客を撮影するカメラ103を有し、このカメラ103によって撮影された映像から乗客の有無を判定するようになっている。また、ハンドレール自動負荷手段102は、例えばハンドレール8の走行軌道上に設置され、ハンドレール8に押し付けられて転動する図示しないプーリと、このプーリに回転トルクを加える図示しないモータと、このモータのトルクを制御する図示しないトルク制御装置とから成っている。
【0054】
このように構成した第2実施形態に係るハンドレール駆動力診断装置にあっては例えば以下の手順のようにしてハンドレール駆動力の診断が行われる。
【0055】
図8は図7に示す本発明の第2実施形態の動作を説明する図、図9は本発明の第2実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータトルク制御装置のトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が正常状態のときの図、図10は本発明の第2実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータトルク制御装置のトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が異常状態のときの図である。図11は本発明の第2実施形態に備えられる偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差及び駆動モータトルク制御装置のトルクの偏差を示す図であり、ハンドレール駆動力が診断条件不良状態のときの図である。
【0056】
図8に示すように、本発明の第2実施形態では、ハンドレール駆動力の診断を開始する場合、駆動モータトルク制御装置4は、駆動モータ1のトルク又は駆動モータ1のモータ回転数からエスカレーターが通常稼働中であるかどうかを判断する(S101)。ここで、駆動モータトルク制御装置4が、エスカレーターが通常稼働中でないと判断した場合には、ハンドレール駆動力の診断を開始しない。一方、S101において駆動モータトルク制御装置4が、エスカレーターが通常稼働中であると判断した場合には、乗客負荷有無判定手段101がカメラ103によって撮影された映像から乗客の有無を判定する(S102)。このとき、乗客負荷有無判定手段101が、踏段6上に乗客がいると判定した場合、診断中止手段がハンドレール駆動力の診断を中止する。一方、S102において乗客負荷有無判定手段101が、踏段6上に乗客がいないと判定した場合、診断中止手段によってハンドレール駆動力の診断を中止せずに、診断を開始するために診断開始指令手段15が診断開始指令を発する。
【0057】
次に、診断開始指令が発せられると、診断制御手段19は、変更速度入力手段によって駆動モータトルク制御装置4へ速度変更を指令し、ハンドレール8及び踏段6の速度を低速モードに切替え、エスカレーターを低速モードで稼働する(S103)。そして、ハンドレール自動負荷手段102がハンドレール8に負荷を加え、診断制御手段19による診断処理を開始する(S104)。
【0058】
次に、ハンドレール速度計測手段17は、ハンドレール速度を所定時間が経過するまで計測する(S4)。一方、駆動モータトルク計測手段18は、ハンドレール速度の計測と同じタイミングで駆動モータ1のトルクを所定時間が経過するまで計測する(S3)。このとき、ハンドレール速度計測手段17と駆動モータトルク計測手段18による計測は、ハンドレール自動負荷手段102によってハンドレール8に負荷が加わった状態、及び無負荷状態においてそれぞれ行われる。すなわち、本発明の第2実施形態におけるハンドレール駆動力の診断は、ハンドレール自動負荷手段102によってハンドレール8に負荷を加え、この状態において、ハンドレール速度計測手段17によってハンドレール速度を計測すると共に、無負荷状態において、ハンドレール速度計測手段17によってハンドレール速度を計測する。一方、ハンドレール速度の計測と同じタイミングで駆動モータトルク計測手段18によって駆動モータ1のトルクを計測する。
【0059】
次に、ハンドレール速度及び駆動モータトルク制御装置4が正常に計測された場合には、ハンドレール自動負荷手段102がハンドレール8に加えていた負荷を解除する。そして、変更速度入力手段によるハンドレール8及び踏段6の速度の低速モードを解除し、エスカレーターを通常稼働させてハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクの計測結果を診断制御手段19に入力する(S105)。ここで、ハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクが所定時間内に計測されなかった場合には、計測不良として、S105と同様にハンドレール自動負荷手段102がハンドレール8に加えていた負荷を解除する(S106、107)。そして、変更速度入力手段によってハンドレール8及び踏段6の速度の低速モードを解除し、エスカレーターを通常稼働させる(S108)。そして、表示モニターやスピーカー等の診断結果報知手段21が、ハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクの計測が不良のため再計測が必要であることを点検者16へ報知する(S109)。
【0060】
次に、S105においてハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクの計測結果が診断制御手段19に入力されると、偏差算出手段は、ハンドレール自動負荷手段102によってハンドレール8に負荷が加えられた状態においてハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクと、無負荷状態においてハンドレール速度計測手段17及び駆動モータトルク計測手段18によってそれぞれ計測されるハンドレール速度及び駆動モータ1のトルクとの偏差を算出する(S9、10)。
【0061】
そして、診断制御手段19は、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり(S11)、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値以上である場合(S12)、ハンドレール駆動力が正常であると判定する(S13)。また、診断制御手段19は、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり(S11)、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合(S12)、ハンドレール駆動力が異常であると判定する(S14)。また、診断制御手段19の診断条件不良判定手段は、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満であり(S11)、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合(S25)、ハンドレール8への負荷不足による診断条件不良と判定する(S17)。また、診断制御手段19の診断条件不良判定手段は、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満であり(S11)、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値以上である場合(S25)、計測不良として処理する(S106)。
【0062】
ここで図9に示すように、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上である場合には、ハンドレール速度が落ちており、ハンドレール自動負荷手段102によってハンドレール駆動力の診断に必要な負荷が適切にハンドレール8に加わっている状態にある。この状態で、S9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクが所定値以上である場合には、駆動モータ1のトルクが上がっており、ハンドレール自動負荷手段102によってハンドレール8に加えた負荷が駆動モータ1へ適切に掛かっている状態にある。すなわち、ハンドレール駆動力が正常な状態にある。
【0063】
一方、図10に示すように、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクが所定値未満である場合には、ハンドレール速度が落ちてハンドレール速度の偏差が適切な範囲内であるにも拘らず、駆動モータ1のトルクが上がらずにトルクが所定値未満であるので、ハンドレール8に滑り(スリップ)が発生しており、ハンドレール自動負荷手段102によってハンドレール8に加えた負荷が駆動モータ1へ適切にかかっていない状態にある。すなわち、ハンドレール駆動力に異常が生じている状態にある。
【0064】
また、図11に示すように、S10において偏差算出手段によって算出されたハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つS9において偏差算出手段によって算出された駆動モータ1のトルクの偏差が所定値未満である場合には、ハンドレール自動負荷手段102によってハンドレール8に加えた負荷が小さく、ハンドレール速度が低下していない状態となっている。この状態にある場合には、ハンドレール8への負荷不足により、ハンドレール自動負荷手段102が駆動モータ1のトルクに影響を与えていないとして、ハンドレール駆動力の診断において診断条件不良状態としている。
【0065】
ここで、ハンドレール自動負荷手段102によって負荷が加えられた状態においては、ハンドレール速度が小さくなる。従って、図9〜11に示すように、偏差算出手段が、ハンドレール自動負荷手段102によって負荷が加えられた状態におけるハンドレール速度から無負荷状態におけるハンドレール速度を引いて偏差を求めた場合には、ハンドレール速度の偏差は負の値となっている。この場合には、診断制御手段19の処理では、第1実施形態における処理と同様にハンドレール速度の偏差は絶対値をとるようにしている。
【0066】
次に、S11〜14、17によってハンドレール駆動力の診断結果が得られると、診断結果は診断結果格納手段20に格納され(S18)、診断結果報知手段21によって点検者16へ報知される(S109)。そして、診断結果は伝送手段23によって監視センター22へ伝送され(S19)、診断処理を終了する(S20)。
【0067】
このように構成したハンドレール駆動力診断装置の第2実施形態及びハンドレール駆動力診断方法の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる他、S102において乗客負荷有無判定手段101がカメラ103によって踏段6上に乗客がいるかどうかを判断し、踏段6上に乗客がいないときに限ってハンドレール駆動力の診断を行うように診断中止手段で制限することにより、ハンドレール駆動力の診断において踏段6上の乗客がハンドレール速度及び駆動モータトルク計測手段に影響を与えることがないので、診断制御手段19はハンドレール駆動力を適切に診断することができる。
【0068】
また、S102において乗客負荷有無判定手段101が踏段6上に乗客がいないと判断した場合には、S104においてハンドレール自動負荷手段102によって自動的にハンドレール8に負荷が加えられ、診断制御手段19がハンドレール駆動力の診断を行うことができるので、ハンドレール駆動力の診断における高い利便性を確保することができる。このように、本発明の第2実施形態では、乗客がエスカレーターを利用していない診断運転可能な状況において、ハンドレール駆動力の診断を自動又は遠隔で行うことができるので、エスカレーターのメンテナンスが必要なときに迅速にハンドレール駆動力の診断を行うことができる。
【0069】
なお、上述したハンドレール駆動力診断装置の第2実施形態では、乗客負荷有無判定手段101は、踏段6上の乗客を撮影するカメラ103を有し、このカメラ103によって撮影された映像から乗客の有無を判定する場合について説明したが、乗客負荷有無判定手段101は、カメラ103の代わりに、駆動モータトルク計測手段18による計測において駆動モータ1のトルクが、例えば予め定められた値以上のときに、踏段6上に乗客がいると判定し、駆動モータトルク計測手段18による計測において駆動モータ1のトルクが、例えば予め定められた値未満のときに、踏段6上に乗客がいないと判定しても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 駆動モータ
3 減速機
4 駆動モータトルク制御装置
6 踏段
8 ハンドレール
9 ハンドレール駆動装置
12 踏段速度検出器
13 ハンドレール速度検出器
14 ハンドレール負荷手段
15 診断開始指令手段
16 点検者
17 ハンドレール速度計測手段
18 駆動モータトルク計測手段
19 診断制御手段
20 診断結果格納手段
21 診断結果報知手段
22 監視センター
23 伝送手段
30 駆動装置
31 欄干
101 乗客負荷有無判定手段
102 ハンドレール自動負荷手段
103 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータの動力を減速機へ伝達する駆動装置と、無端状に連結され、前記駆動装置によって駆動されて循環移動する踏段と、この踏段の側方に立設される欄干に設けられたガイドレールに案内され、前記踏段と同期するように走行するハンドレールと、このハンドレールのハンドレール速度を検出するハンドレール速度検出器と、設定された速度で前記踏段及び前記ハンドレールの走行を維持するために乗客負荷の変動に応じて前記駆動モータのトルク指令値を可変制御する駆動モータトルク制御装置とを備え、ハンドレール駆動力の異常の有無を診断する乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置において、
ハンドレール駆動力の診断を開始する診断開始指令手段と、
前記ハンドレール速度検出器の信号を用いて前記ハンドレール速度を計測するハンドレール速度計測手段と、
前記ハンドレール速度の計測と同じタイミングで前記駆動モータのトルクを計測する駆動モータトルク計測手段と、
前記ハンドレールに負荷を加えるハンドレール負荷手段と、
前記診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段へ計測指令を出すと共に、前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷が加えられた状態において前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測される前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクと、無負荷状態において前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測される前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクとの偏差を算出する偏差算出手段と、
この偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値以上である場合、ハンドレール駆動力が正常であると判定し、前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、ハンドレール駆動力が異常であると判定する診断制御手段とを備えたことを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置において、
前記診断制御手段は、前記診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、前記踏段の速度及び前記ハンドレール速度を低速度に変更する指令を前記駆動モータトルク制御装置へ入力する速度変更入力手段を有することを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置において、
前記診断制御手段は、
前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、前記ハンドレールへの負荷不足による診断条件不良と判定する診断条件不良判定手段を有することを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置において、
前記診断制御手段によって判定された判定結果を報知あるいは表示する診断結果報知手段を備えたことを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置において、
前記踏段上における乗客の有無を判定する乗客負荷有無判定手段と、
この乗客負荷有無判定手段によって前記踏段上に乗客がいないことを判定した場合、ハンドレール駆動力の診断を中止せず、前記乗客負荷有無判定手段によって前記踏段上に乗客がいることを判定した場合、ハンドレール駆動力の診断を中止する診断中止手段とを備え、
前記ハンドレール負荷手段は、
前記乗客負荷有無判定手段によって前記踏段上に乗客がいないことを判定した場合、前記ハンドレールに自動で負荷を加えるハンドレール自動負荷手段から成っていることを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置において、
前記診断制御手段によって判定された判定結果を格納する診断結果格納手段と、
通信回線を介して接続され、前記診断結果格納手段に格納された前記判定結果を監視する監視センターと、
この監視センターに前記判定結果を伝送する伝送手段とを備えたことを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置。
【請求項7】
駆動モータの動力を減速機へ伝達する駆動装置と、無端状に連結され、前記駆動装置によって駆動されて循環移動する踏段と、この踏段の側方に立設される欄干に設けられたガイドレールに案内され、前記踏段と同期するように走行するハンドレールと、このハンドレールのハンドレール速度を検出するハンドレール速度検出器と、設定された速度で前記踏段及び前記ハンドレールの走行を維持するために乗客負荷の変動に応じて前記駆動モータのトルク指令値を可変制御する駆動モータトルク制御装置と、ハンドレール駆動力の診断を開始する診断開始指令手段と、前記ハンドレール速度検出器の信号を用いて前記ハンドレール速度を計測するハンドレール速度計測手段と、前記ハンドレール速度の計測と同じタイミングで前記駆動モータのトルクを計測する駆動モータトルク計測手段と、前記ハンドレールに負荷を加えるハンドレール負荷手段と、前記診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段へ計測指令を出すと共に、前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷が加えられた状態において前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測される前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクと、無負荷状態において前記ハンドレール速度計測手段及び前記駆動モータトルク計測手段によってそれぞれ計測される前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクとの偏差を算出する偏差算出手段と、この偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値以上である場合、前記ハンドレール駆動力が正常であると判定し、前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、前記ハンドレール駆動力が異常であると判定する診断制御手段とを備え、前記ハンドレール駆動力の異常の有無を診断する乗客コンベアのハンドレール駆動力診断装置に用いる乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法において、
前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷を加える第1手順と、
前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷が加わった状態において、前記ハンドレール速度計測手段によって前記ハンドレール速度を計測すると共に、無負荷状態において、前記ハンドレール速度計測手段によって前記ハンドレール速度を計測する第2手順と、
前記ハンドレール速度の計測と同じタイミングで前記駆動モータトルク計測手段によって前記駆動モータのトルクを計測する第3手順と、
前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクの偏差を用いて、前記診断制御手段が、前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記駆動モータのトルクの偏差が所定値以上である場合、ハンドレール駆動力が正常であると判定し、前記ハンドレール速度の偏差が所定値以上であり、且つ前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、ハンドレール駆動力が異常であると判定する第4手順とを含むことを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法。
【請求項8】
請求項7に記載の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法において、
前記診断制御手段は、
前記診断開始指令手段により診断開始指令が与えられた際に、前記踏段及び前記ハンドレール速度を低速度に変更する指令を前記駆動モータトルク制御装置へ入力する速度変更入力手段を有し、
前記第2手順は、
前記ハンドレール負荷手段によって前記ハンドレールに負荷が加わった状態において、前記ハンドレール速度計測手段によって前記ハンドレール速度を計測する場合、前記診断制御手段は、前記速度変更入力手段によって前記踏段及び前記ハンドレール速度を設定された通常の速度よりも低速度に変更して計測を行うことを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法。
【請求項9】
請求項8に記載の乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法において、
前記診断制御手段は、
前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つ前記偏差算出手段によって算出された前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、前記ハンドレールへの負荷不足による診断条件不良と判定する診断条件不良判定手段を有し、
前記偏差算出手段によって算出された前記ハンドレール速度及び前記駆動モータのトルクの偏差を用いて、前記診断制御手段が、前記ハンドレール速度の偏差が所定値未満であり、且つ前記駆動モータのトルクの偏差が所定値未満である場合、前記診断条件不良判定手段によって前記ハンドレールへの負荷不足による診断条件不良と判定する第5手順を含むことを特徴とする乗客コンベアのハンドレール駆動力診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−56722(P2012−56722A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202121(P2010−202121)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】