説明

乗物の乗員を保護するためのインフレータブルバッグの引裂き強さ及びコーミング強さを改善するのに有用な、シリコーン組成物及び方法

本発明の大まかな分野はエアバッグの分野である。本発明は、インフレータブルバッグの分野において用いることが予定されるコーティングされた布地の引裂き強さ及びコーミング強さを、ポリオルガノシロキサン樹脂(V)及び炭酸カルシウムから成る添加剤を含むシリコーン組成物を用いて改善する方法に関する。前記組成物を布地支持体上にコーティングして硬化させた後に、硬化した支持体は、最適な接着及び皺寄り耐性を有するだけではなく、コーミング強さ及び引裂き強さの点でも良好な特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の大まかな分野は、シリコーンコーティング組成物の分野、特に重付加又はヒドロシリル化反応によって硬化して薄層としてのエラストマーを生成する2成分又は多成分タイプのものの分野である。これらの硬化した組成物はとりわけ、例えば様々なテキスタイル(織物)基材{例えば織られた、編まれた又は織られていない繊維質支持体(以下、「織、編又は不織繊維質支持体」と言う}の保護又は機械的強化のためのコーティングとして適合する。
【0002】
かかるシリコーンコーティングは一般的に、基材をコーティングし、次いでポリオルガノシロキサンの不飽和基(アルケニル基、例えばSi−Vi)に対するそれ自体の水素又は別のポリオルガノシロキサンの水素の重付加の結果として硬化させることによって、得られる。
【0003】
これらのシリコーン組成物は、「エアバッグ」とも称される乗物の乗員用の個体保護バッグ(袋)を製造するために用いられる柔軟な(織、編又は不織)材料のコーティングに主要な用途を見出している。
【0004】
これらの個体保護バッグ又は「エアバッグ」に関するさらなる詳細については、フランス国特許第2668106号明細書を特に参照することができる。
【0005】
本発明はまた、かかる保護バッグの製造におけるシリコーンの用途にも関する。
【背景技術】
【0006】
歴史的に、これらのバッグは、合成繊維[例えばポリアミド{Nylon(登録商標)}]のウエブの少なくとも1つの表面をクロロプレンのようなエラストマーの層でコーティングしたものによって形成される。かかる層又はかかる保護コーティングを存在させるのは、衝撃(衝突)の際に気体発生器によって放出される気体(例えば一酸化炭素、NOx)が極めて熱く、Nylon(登録商標)バッグを傷つけがちな白熱した粒子を含有するという事実によって強いられることである。
【0007】
かくして、内側のエラストマー製保護層は、高温及び機械的応力に対して特に耐性がなければならない。また、このエラストマー製コーティングは、エアバッグの壁を構成する合成布(織物)支持体に完全に接着する薄くて均一なフィルムの形にあることも重要である。
【0008】
クロロプレンが上述の目指される仕様のすべてを満たすわけではないことは明らかであるので、シリコーン組成物はこの用途において容易にクロロプレンに取って代わった。
【0009】
しかしながら、今度は別の制約が生じ、新たな解決策が必要となった。機械的及び熱的攻撃性がより強い気体発生器を使用することによって、エアバッグの縫製について追加の制約がもたらされる。これらに加えて、インフレータブルバッグ(膨らませることが可能な袋)の展開(広がり)に関する物理的制約があり、エラストマーでコーティングされた布が剥離したりこれらの縫い目が開いたりすることがある。その結果として、前記発生器から生じた熱い気体が縫い目を通って逃げ出す場所ができ、引裂きやコーミング(ほつれ)、さらにはある種のエアバッグの破裂の原因とさえなる弱い箇所がもたらされる。その結果として、エアバッグ製造業者は、その用途のために、最適な機械的特性、特に良好な引裂き強さ及びコーミング強さ(コーティングされた布がインフレータブルバッグの縫い目のコーミングに耐える能力)を有するシリコーンエラストマーコーティング組成物を求めている。特に、インフレータブルバッグの縫い目のコーミングによる制約は使用時のエアバッグが広がる間に観察されるものに匹敵するので、コーミング強さはこの業界にとってますます重要な基準となってきている。
【0010】
エアバッグにおいてシリコーンエラストマーでコーティングされた布を用いる際に遭遇する主な問題点の1つは、それらが良好なコーミング強さ及び良好な引裂き強さのいずれかを有するという事実にある。接着性及び薄さに関して良好な特性を維持しながら同時にこれら2つの特性の間の良好な折衷点を得ることが基本であり、これまでの広範な研究の焦点となっていた。さらに、エアバッグ製造業者はまた、特に脱コンテクスチャー(1cm当たりのヤーンの数の減少)された布を用いることによって製造費用を下げるための新たな解決策をも求めており、これもまたシリコーンエラストマーでコーティングされた布のコーミング強さ及び引裂き強さの調節を必要とする。
【0011】
従来技術のヨーロッパ特許公開第0533840A号公報及び米国特許第5296298号明細書には、エアバッグ用途のためのシリコーン組成物が記載されている。
【0012】
ヨーロッパ特許公開第0553840A号公報によれば、これらの既知のシリコーン組成物は、以下のものを含む:
(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を含有するポリジオルガノシロキサン、
(B)各分子中にケイ素に結合した水素原子を少なくとも2個含有するポリオルガノヒドロゲノシロキサン、
(C)白金族の金属触媒、
(D)エポキシ官能性有機ケイ素化合物から成る接着促進剤、
(E)無機充填剤(その重量は、ポリオルガノシロキサン(A)の量に対して規定される)、
(F)ポリオルガノシロキサン樹脂、及び随意としての
(G)硬化抑制剤として有用な化合物。
【0013】
しかしながら、この文献には、エアバッグ用の均質で粘着性のフィルムを得るための解決策が示されているだけであり、上に挙げた問題を解決することに関しては何も記載されていない。
【0014】
米国特許第5296298号明細書によれば、これらのシリコーン組成物は、以下のものを含む:
(A)1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を含有するポリジオルガノシロキサン、
(B)各分子中にケイ素に結合した水素原子を少なくとも2個含有するポリオルガノヒドロゲノシロキサン、
(C)メタクリル官能基を含有するシラン、
(D)エポキシアルコキシシラン、
(E)アルミニウムキレート、及び
(F)白金族の金属触媒。
【0015】
この文献においては、充填剤は単に随意成分として挙げられているだけであり、エアバッグ支持体に対する良好な接着性を示すシリコーンフィルムを得るための解決策が提供されているだけである。これらの組成物は、コーミング強さ及び引裂き強さ特性を調節することに関してのエアバッグ製造業者の新たな期待に適合しない。
【0016】
ヨーロッパ特許公開第0681014A号公報には、エアバッグの裏当てとして特に適用することができ、この目的のために特に耐火性及び耐熱性、機械的特性、老化挙動、接着性並びに表面均一性に関して良好な特性(より一層特定的にはテキスタイル基材に対する接着性が望まれる)を有するシリコーン組成物が記載されている。この文献の発明によって提唱される解決策は、以下のものを用いることから成る。
・次のものから構成される混合物から成るシリコーンコーティング組成物:
(1)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン、
(2)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン、
(3)白金族に属する少なくとも1種の金属から成る、触媒として有効量の少なくとも1種の触媒、
(4)接着促進剤、
(5)随意としての無機充填剤、
(6)随意としての少なくとも1種の硬化抑制剤、及び
(7)随意としての少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂。
【0017】
この組成物中、前記接着促進剤は、次の成分の少なくとも3成分組成物からもっぱら成る:
(4−1)1分子当たり少なくとも1個のC2〜C6アルケニル基を含有する少なくとも1種のアルコキシル化オルガノシラン、
(4−2)少なくとも1個のエポキシ基を含む少なくとも1種の有機ケイ素化合物、及び
(4−3)少なくとも1種の金属キレートM及び/又は一般式M(OJ)nの少なくとも1種の金属アルコキシド(ここで、nはMの原子価であり、Jは直鎖状又は分枝鎖状C1〜C8アルキルであり、MはTi、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al及びMgより成る群から選択される)。
【0018】
ヨーロッパ特許公開第0681014A号公報の実験の部には熱分解法シリカのような補強用充填剤が常に存在することに留意すべきである。これらの組成物は、コーミング強さ及び引裂き強さ特性の調節に関してエアバッグ製造業者の新たな期待に適合しない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第0553840A号公報
【特許文献2】米国特許第5296298号明細書
【特許文献3】ヨーロッパ特許公開第0681014A号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、従来技術の欠点の克服に向けられる。
【0020】
この見地において、本発明の1つの本質的な目的は、織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法を提供することにある。本発明に従う方法によって処理されたこれらの支持体は、特に、接着性、薄さ、軽量性並びに皺寄り及び摩耗耐性(「擦り」試験)に関して最適な特性を有するだけではなくて良好なコーミング強さ及び引裂き強さ特性をも有する乗物用のインフレータブル安全バッグ、即ちエアバッグの分野の用途にとって有用である。
【0021】
本発明の第2の目的は、重付加反応によって硬化させることができ、特に、硬化後に接着性、薄さ、軽量性並びに皺寄り及び摩耗耐性(「擦り」試験)に関して最適な特性を有するだけではなくて良好なコーミング強さ及び引裂き強さ特性をも有する乗物用のインフレータブル安全バッグ、即ちエアバッグの分野の用途にとって有用なシリコーンコーティング組成物を提供することにある。
【0022】
本発明の第3の目的は、重付加反応によって硬化させることができ、使用及び適用が容易であり且つ経済性も良好なエアバッグ用シリコーンコーティング組成物を提供することにある。
【0023】
最後に、本発明の別の目的は、コーティングのコストを下げて、シリコーンコーティングの使用分野を広げ、かくしてこれまではコスト上の理由で利用分野から除外されていた用途にこのタイプのコーティングの有利な特性を利用することを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
他にもあるが、これらの目的は、本発明によって達成される。本発明は、織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善するための方法から成り、この方法は、次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)次の成分を含む硬化性シリコーンコーティング組成物(A)を調製する工程:
・(a-1)又は(a-2):
[ここで、(a-1)は少なくとも1種の有機ペルオキシドを基剤とする触媒の作用によって硬化させることができる少なくとも1種のポリオルガノシロキサンに相当し;
(a-2)は次の(I)及び(II)を含み、重付加反応によって硬化させることができるポリオルガノシロキサンブレンドに相当する:
(I)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン、
(II)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン];
・(a-1)を用いる場合には少なくとも1種の有機ペルオキシドから成り、(a-2)を用いる場合には白金族の少なくとも1種の金属(又は化合物)から成る、有効量の硬化触媒;
・随意としての少なくとも1種の接着促進剤(IV);並びに
・前記結合強さ及び前記引裂き強さを改善するための、以下のものの混合物から成る添加剤系(B)(その成分は順次又は同時に添加される):
・・前記混合物の総重量に対して60重量%までの割合で存在し、随意に希釈剤としての役割を果たす少なくとも1種のポリオルガノシロキサンと混合された、少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂(V);及び
・・前記混合物の総重量に対して30重量%までの割合で存在する炭酸カルシウム(CaCO3);
(b)織、編又は不織繊維質支持体の1つ又は2つの面に工程(a)で調製したシリコーンコーティング組成物(A)を少なくとも10g/m2、好ましくは少なくとも20g/m2、より一層好ましくは少なくとも30g/m2の量で塗布する工程;並びに
(c)工程(b)において形成された付着物を210℃までであってよい温度に加熱することによって又は電磁放射線(特に赤外線)によって硬化させてエラストマーを形成させる工程。
【0025】
織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを調節する目的についての添加剤系(B)の重要性を示したのは、本出願人の功績である。炭酸カルシウムは、系(B)中で用いるために(加熱又は表面処理による)相溶化処理に付す必要がなく、従って単純な半補強用充填剤と同列に置くことはできない。樹脂(V)と炭酸カルシウムとの組合せが、実施に当たって相溶化処理を必要とせずに、特にエアバッグの用途のための織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さ特性においてこのような顕著な改善を最終的にもたらすということは、全く予知できなかった。
【0026】
この利点はシリコーンコーティングの硬度、機械的強度、表面均一性及び耐熱性といったその他の特性を犠牲にすることなく得られるので、このことはますます驚くべきことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
少なくとも1種の有機ペルオキシドを基剤とする触媒の作用によって硬化させることができるポリオルガノシロキサン(a-1)は、次式のシロキシ単位を含有する物質であるのが有利である:
【化1】

(ここで、記号R1は同一であっても異なっていてもよく、1〜12個、好ましくは1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に置換された炭化水素基を表わし、
aは1、2又は3である)。
【0028】
好ましくは、記号R1は以下のものから選択される:
・メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル及びドデシル基、
・シクロアルキル基、例えばシクロヘキシル、
・アルケニル基、例えばビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニル基、
・アリール基、例えばフェニル、トリル、及びβ−フェニルプロピルのようなアルアルキル、並びに
・上に挙げた基の1個以上の水素原子が1個以上のハロゲン原子、シアノ基又はシアノ基等価物で置換されたもの、例えばシアノメチル、トリフルオロプロピル又はシアノエチル。
【0029】
さらにより一層特定的には、ポリオルガノシロキサン(a-1)は、トリメチルシリル、ジメチルビニル、ジメチルヒドロキシシリル又はトリビニルシリル単位を鎖の末端基とする。
【0030】
1つの特に有利な具体例において、ポリオルガノシロキサン(a-1)は、1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を含有する。
【0031】
本発明に従って用いることができる有機ペルオキシドの中では、過酸化ベンゾイル、過酸化ビス(p−クロロベンゾイル)、過酸化ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、過安息香酸t−ブチル、t−ブチルクミルペルオキシド、上に挙げたペルオキシドのハロゲン化誘導体、例えばビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、1,6−ビス(p−トルイルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(ベンゾイルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(p−トルイルペルオキシカルボニルオキシ)ブタン及び1,6−ビス(2,4−ジメチルベンゾイルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサンを挙げることができる。
【0032】
本発明に従う方法の1つの好ましい具体例に従えば、用いられる硬化性シリコーンコーティング組成物(A)は、重付加反応によって硬化させることができるポリオルガノシロキサンを含む。この組成物(A)は、以下のものから構成される混合物を含む:
(a)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(I)、
(b)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(II)、
(c)触媒として有効量の、白金族に属する少なくとも1種の金属から成る少なくとも1種の触媒(III)、
(d)少なくとも1種の接着促進剤(IV)、
(e)前記コーミング強さ及び前記引裂き強さを改善するための、以下のものから構成される混合物から成る添加剤系(B)(その成分は順次又は同時に添加される):
・前記混合物の総重量に対して60重量%までの割合で存在し、随意に希釈剤としての役割を果たす少なくとも1種のポリオルガノシロキサンと混合された、少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂(V);及び
・前記混合物の総重量に対して30重量%までの割合で存在する炭酸カルシウム(CaCO3);
(f)随意としての少なくとも1種の硬化抑制剤(VI)、
(h)随意としての少なくとも1種の着色添加剤(VII)、並びに
(i)随意としての少なくとも1種の耐火性改善用添加剤(VIII)。
【0033】
本発明に従う方法の1つの好ましい態様に従えば、添加剤系(B)中の炭酸カルシウムの量は、前記混合物の総重量に対して4〜26重量%の範囲とし、より一層好ましくは10〜24重量%の範囲とする。
【0034】
これらの特定的な間隔の選択は、コーミング強さ及び引裂き強さ特性改善という課題の解決に関しての決定基準の1つである。
【0035】
別の重要な基準は、添加剤系(B)中にポリオルガノシロキサン樹脂(V)を混合物の総重量に対して60重量%まで、好ましくは40重量%まで、さらにより一層好ましくは11〜30重量%又は15〜25重量%の割合で存在させることである。
【0036】
また、最適な効果を得るためには混合物の総重量に対して5〜30重量%のポリオルガノシロキサン樹脂(V)及び5〜25重量%の炭酸カルシウムを含む添加剤系(B)を用いて本発明に従う方法を実施すれば充分であるということも見出した。
【0037】
樹脂(V)は、その構造中に少なくとも1個のアルケニル残基を含むのが好ましい。1つの好ましい態様に従えば、ポリオルガノシロキサン樹脂(V)は、式SiO4/2のシロキシ単位Qを含む。
【0038】
別の特定的な態様に従えば、ポリオルガノシロキサン樹脂(V)は、その構造中に0.1〜20重量%、好ましくは4重量%より多くのアルケニル基を含み、該構造はタイプMの同一の又は異なるシロキシ単位、タイプT及び/又はQの同一の又は異なるシロキシ単位並びに随意としてのタイプDのシロキシ単位を含有する。
【0039】
特に好ましい態様において、ポリオルガノシロキサン樹脂(V)は、タイプQのシロキシ単位を少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%含む。
【0040】
これらの樹脂(V)はよく知られており、商品として入手できる分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。これらは、溶液の形、好ましくはシロキサン溶液の形にある。これらは、それらの構造中に式R3SiO0.5(単位M)、R2SiO(単位D)、RSiO1.5(単位T)及びSiO2(単位Q)から選択される少なくとも2個の異なる単位を有し、これら単位の少なくとも1個は単位T又はQである。
【0041】
基Rは同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分枝鎖状C1〜C6アルキル基、C2〜C4アルケニル基、フェニル及び3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される。例えば、アルキル基Rとしてはメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びn−ヘキシル基を、そしてアルケニル基Rとしてはビニル基を挙げることができる。
【0042】
上記のタイプの樹脂(V)において、基Rの一部はアルケニル基であるものと理解されたい。
【0043】
分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーの例としては、樹脂MQ、樹脂MDQ、樹脂TD及び樹脂MDTを挙げることができ、単位M、D及び/又はTがアルケニル官能基を有することができる。特に好適な樹脂の例としては、0.2〜10重量%の範囲のビニル基重量含有率を有するビニルMDQ樹脂を挙げることができる。
【0044】
これは限定となるものではないが、接着促進剤(IV)はもっぱら以下のものを含むと考えることができる:
(IV.1)1分子当たり少なくとも1個のC2〜C6アルケニル基を含有する少なくとも1種のアルコキシル化オルガノシラン、
(IV.2)少なくとも1個のエポキシ基を含む少なくとも1種の有機ケイ素化合物、並びに
(IV.3)少なくとも1種の金属Mのキレート及び/又は一般式M(OJ)n(ここで、nはMの原子価であり、Jは直鎖状又は分枝鎖状C1〜C8アルキルであり、MはTi、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al及びMgより成る群から選択される)の金属アルコキシド。
【0045】
本発明の1つの好ましい態様に従えば、促進剤(IV)のアルコキシル化オルガノシラン(IV.1)は、次の一般式を有する物質から選択される:
【化2】

(ここで、R1、R2及びR3は同一の又は異なるであって、水素、直鎖状若しくは分枝鎖状C1〜C4アルキル又は随意に1個若しくはそれより多くのC1〜C3アルキルで置換されたフェニルを表わし、
Uは直鎖状又は分枝鎖状C1〜C4アルキレンであり、
Wは原子価結合であり、
4及びR5は同一の又は異なる基であって、直鎖状又は分枝鎖状C1〜C4アルキル基を表わし、
x'は0又は1であり、
xは0〜2である)。
【0046】
これは限定となるものではないが、ビニルトリメトキシシランが特に好適な化合物(IV.1)であると考えることができる。
【0047】
有機ケイ素化合物(IV.2)は、本発明に従えば、以下のものから選択することが構想される:
(a)次の一般式に相当する物質(IV.2a):
【化3】

{ここで、R6は直鎖状又は分枝鎖状C1〜C4アルキル基であり、
7は直鎖状又は分枝鎖状アルキル基であり、
yは0、1、2又は3であり、
Xは次式:
【化4】

(ここで、E及びDは同一の又は異なる基であって、直鎖状又は分枝鎖状C1〜C4アルキルから選択され、
zは0又は1であり、
8、R9及びR10は同一の又は異なる基であって、水素又は直鎖状若しくは分枝鎖状C1〜C4アルキルを表わし、
また、R8及びR9、又はR8及びR10は、それらが結合しているエポキシを形成する2個の炭素と一緒になって5〜7員アルキル環を形成することもできる)
で規定される};並びに
(b)下記の単位(i)及び(2i)を含むエポキシ官能性ポリジオルガノシロキサンから成る物質(IV.2b):
(i)次式の少なくとも1種のシロキシ単位:
【化5】

(ここで、Xは式(IV.2a)について上で規定した通りの基であり、
Gは触媒の活性に対して好ましくない作用を持たない一価の炭化水素基であり、1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個又はそれより多くのハロゲン原子で置換されたアルキル基及びアリール基から選択され、
pは1又は2であり、
qは0、1又は2であり、
p+qは1、2又は3である);及び
(2i)随意としての次式の少なくとも1種のシロキシ単位:
【化6】

(ここで、Gは上記と同じ意味を持ち、
rは0、1、2又は3である)。
【0048】
本発明に従うシリコーン組成物の接着促進剤(IV)の最後の化合物(IV.3)に関しては、好ましい物質は、キレート及び/又はアルコキシド(IV.3)の金属MがTi、Zr、Ge、Li及びMnから選択されるものである。チタンが特に好ましい。これは、例えばブトキシのようなアルコキシ基と組み合わせることができる。
【0049】
接着促進剤(IV)は、
・(IV.1)単独、
・(IV.2)単独、又は
・(IV.1)+(IV.2)
から構成されることができ、また、2つの好ましい具体例に従えば、
・(IV.1)+(IV.3)、又は
・(IV.2)+(IV.3)
から構成されることができ、最後に、特に好ましい具体例に従えば、(IV.1)+(IV.2)+(IV.3)から構成されることができる。
【0050】
本発明に従えば、接着促進剤を構成する有利な組合せは、次の通りである:
・ビニルトリメトキシシラン(VTMO)、
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)及び
・チタン酸ブチル。
【0051】
量的関係において、(IV.1)、(IV.2)及び(IV.3)の間の重量割合は、これら3種の合計に対する重量百分率として表わして、以下の通りにすることができる:
・(IV.1)が10%以上、好ましくは15〜70%の範囲、さらにより一層好ましくは25〜65%の範囲、
・(IV.2)が90%以下、好ましくは70〜15%の範囲、さらにより一層好ましくは65〜25%の範囲、そして
・(IV.3)が1%以上、好ましくは5〜25%の範囲、さらにより一層好ましくは8〜18%の範囲
(ここで、(IV.1)、(IV.2)及び(IV.3)のこれらの割合の合計は100%に等しいものとする)。
【0052】
より良好な接着特性のためには、(IV.2):(IV.1)の重量比を2:1〜0.5:1の範囲にするのが好ましく、より特定的には1:1の比が好ましい。
【0053】
有利には、接着促進剤(IV)は、組成物(A)の全成分に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、さらにより一層好ましくは1〜3重量%の割合で存在させる。
【0054】
ポリオルガノシロキサン(I)は、重付加反応による硬化の態様についての組成物(A)の必須成分の1つである。これは、以下のものを含む物質であるのが有利である:
(i)次式のシロキシ単位:
【化7】

(ここで、記号R1はアルケニル基、好ましくはビニル又はアリル基を表わし、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個又はそれより多くのハロゲン原子で置換されたアルキル基及びアリール基から選択される1価の炭化水素基であって触媒の活性に対して好ましくない作用を持たないものを表わし、
aは1又は2であり、bは0、1又は2であり、それらの合計a+bは1、2又は3である)
及び
(ii)随意としての次式の別のシロキシ単位:
【化8】

(ここで、Zは上記と同じ意味を持ち、
cは0、1、2又は3である)。
【0055】
このポリジオルガノシロキサン(I)は、少なくとも200mPa・sであって好ましくは200000mPa・s未満の粘度を有することができる。
【0056】
本明細書における粘度はすべて、既知の態様で25℃において測定した動的粘度に相当する。
【0057】
ポリオルガノシロキサン(I)は、式(I-1)の単位のみから形成されていてもよく、追加的に式(I-2)の単位を含有していてもよい。同様に、これは線状、分岐状、環状又は網状構造を有することができる。Zは一般的にはメチル、エチル及びフェニル基から選択されるが、基Zの少なくとも60モル%(又は数的関係において)はメチル基であるものとする。式(I-1)のシロキシ単位の例には、ビニルジメチルシロキシ、ビニルフェニルメチルシロキシ、ビニルメチルシロキシ及びビニルシロキシ単位がある。
【0058】
式(I-2)のシロキシ単位の例には、SiO4/2、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、ジフェニルシロキシ、メチルシロキシ及びフェニルシロキシ単位がある。ポリオルガノシロキサン(I)の例には、線状及び環状化合物、例えば、ジメチルビニルシリル末端基を含有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を含有する(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシリル末端基を含有する(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー及び環状メチルビニルポリシロキサンがある。
【0059】
有利には、ポリオルガノシロキサン(II)は、次式のシロキシ単位:
【化9】

(ここで、基Lは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ触媒の活性に対して好ましくない作用を持たない1価の炭化水素基であって、好ましくは1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個又はそれより多くのハロゲン原子で置換されたアルキル基、有利にはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基、並びにアリール基、有利にはキシリル、トリル又はフェニル基、から選択されるものを表わし、
dは1又は2であり、eは0、1又は2であり、それらの合計d+eは1、2又は3である)
を含み且つ随意としての別の単位の少なくとも一部が次の平均式:
【化10】

(ここで、基Lは上記と同じ意味を持ち、
gは0、1、2又は3である)
の単位であるものである。
【0060】
このポリオルガノシロキサン(II)の動的粘度は、少なくとも10mPa・s、好ましくは20〜1000mPa・sの範囲である。ポリオルガノシロキサン(II)は、式(II-1)の単位のみから形成されていてもよく、式(II-2)の単位をも含んでいてもよい。ポリオルガノシロキサン(II)は、線状、分岐状、環状又は網状構造を有することができる。基Lは、上記の基Zと同じ意味を有する。式(II-1)の単位の例には、H(CH3)2SiO1/2、HCH3SiO2/2及びH(C65)SiO2/2がある。
【0061】
式(II-2)の単位の例は、式(I-2)の単位について上に与えたものと同じである。
【0062】
ポリオルガノシロキサン(II)の例には、線状及び環状化合物、例えば
・ヒドロゲノジメチルシリル末端基を含有するジメチルポリシロキサン、
・トリメチルシリル末端基を含有する(ジメチル)(ヒドロゲノメチル)ポリシロキサン単位を含有するコポリマー、
・ヒドロゲノジメチルシリル末端基を含有する(ジメチル)(ヒドロゲノメチル)ポリシロキサン単位を含有するコポリマー、
・トリメチルシリル末端基を含有するヒドロゲノメチルポリシロキサン、
・環状ヒドロゲノメチルポリシロキサン
がある。
【0063】
化合物(II)は随意に、ヒドロゲノジメチルシリル末端基を含有するジメチルポリシロキサンと少なくとも3個のSiH(ヒドロゲノシロキシ)官能基を有するポリオルガノシロキサンとの混合物であってよい。
【0064】
ポリオルガノシロキサン(II)中のケイ素に結合した水素原子の数対ポリオルガノシロキサン(I)及び樹脂(V)のアルケニル飽和基を含有する基の総数の比は、0.4〜10の範囲、好ましくは0.6〜5の範囲とする。
【0065】
シリコーン重付加組成物のベースは、線状のポリオルガノシロキサン(I)及び(II)のみを含むもの、例えば米国特許第3220972号、同第3697473号及び同第4340709号の各明細書に記載されたものであってもよく、また、分岐状又は網状のポリオルガノシロキサン(I)及び(II)の両方を含むもの、例えば米国特許第3284406号及び同第3434366号の両明細書に記載されたものであってもよい。
【0066】
1つの特定的な具体例に従えば、以下のもの:
・式(I-2)においてcが2である単位から構成される鎖を含み且つ各末端を式(I-1)においてaが1であり且つbが2である単位でブロックされた少なくとも1種の線状ポリオルガノシロキサン(I);並びに、
・鎖中及び/又は鎖の末端に配置されたケイ素に結合した水素原子をその構造中に少なくとも3個含む少なくとも1種の線状ポリオルガノシロキサン(II);
を用い、そしてさらにより一層特定的には、
・式(I-2)においてcが2である単位から構成される鎖を含み且つ各末端を式(I-1)においてaが1であり且つbが2である単位でブロックされた少なくとも1種の線状ポリオルガノシロキサン(I);並びに、
・式(II-1)においてdが1であり且つeが1である単位及び随意としての式(II-2)においてgが2である単位から構成される鎖を含み且つその末端を式(II-1)においてdが1であり且つeが2である単位でブロックされた少なくとも1種の線状ポリオルガノシロキサン(I):
を用いる。
【0067】
触媒(III)もまたよく知られている。白金族の金属はプラチノイドの名称で知られているものであり、この用語には、白金に加えて、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが含まれる。白金及びロジウム化合物を用いるのが好ましい。特に、米国特許第3159601号、同第3159602号及び同第3220972号の各明細書並びにヨーロッパ特許公開第0057459A号、同第0188978A号及び同第0190530A号の各公報に記載された白金と有機物質との錯体、並びに米国特許第3419593号、同第3715334号、同第3377432号及び同第3814730号の各明細書に記載された白金とビニルオルガノシロキサンとの錯体を用いることができる。一般的に好ましい触媒は、白金である。この場合、白金金属の重量によって計算した触媒(III)の重量は、ポリオルガノシロキサン(I)及び(II)の総重量を基準として一般的に2〜400ppmの範囲、好ましくは5〜200ppmの範囲とする。
【0068】
有利には、本発明に従う方法は、少なくとも1種の付加反応遅延剤(VI)(硬化抑制剤)を含むシリコーン組成物(A)を用い、この付加反応遅延剤(VI)は、次の化合物から選択される:
・少なくとも1個のアルケニルで置換されたポリオルガノシロキサン(これは随意に環状の形態にあってもよく、テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい)、
・ピリジン、
・有機ホスフィン及びホスファイト、
・不飽和アミド、
・マレイン酸アルキル、及び
・アセチレン性アルコール。
【0069】
これらのアセチレン性アルコール(フランス国特許第1528464B号及び同第2372874A号の各明細書を参照されたい)は好ましいヒドロシリル化反応熱遮断剤の一部を構成し、次式を有する:
【化11】

(式中、R'は直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基又はフェニル基であり、
R''はH又は直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基又はフェニル基であり、
基R'、R''及び三重結合に対してα位の炭素原子が環を形成してもよく、
R'及びR''中に含有される炭素の総数は少なくとも5、好ましくは9〜20の範囲である)。
【0070】
前記アルコールは、沸点が250℃より高いものから選択するのが好ましい。例として、次のものを挙げることができる:
・1−エチニル−1−シクロヘキサノール;
・3−メチル−1−ドデシン−3−オール;
・3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール;
・1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;
・3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール;
・2−メチル−3−ブチン−2−オール;
・3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール。
これらのα−アセチレン性アルコールは、商業製品である。
【0071】
かかる遅延剤(VI)は、オルガノポリシロキサン(I)及び(II)の総重量に対して3000ppmまでの割合、好ましくは100〜1000ppmの割合で存在させる。
【0072】
本発明はまた、織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善するための、重付加反応によって硬化可能なシリコーンコーティング組成物にも関し、このコーティング組成物は、以下のものから構成される混合物から成る:
(a)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(I)、
(b)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(II)、
(c)触媒として有効量の、白金族に属する少なくとも1種の金属から成る少なくとも1種の触媒(III)、
(d)少なくとも1種の接着促進剤(IV)、
(e)前記コーミング強さ及び前記引裂き強さを改善するための、以下のものの混合物から成る添加剤系(B)(その成分は順次又は同時に添加される):
・前記混合物の総重量に対して60重量%までの割合で存在し、随意に希釈剤としての役割を果たす少なくとも1種のポリオルガノシロキサンと混合された、少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂(V);及び
・前記混合物の総重量に対して19重量%までの割合で存在する炭酸カルシウム(CaCO3);
(f)随意としての少なくとも1種の硬化抑制剤(VI)、
(h)随意としての少なくとも1種の着色添加剤(VII)、並びに
(i)随意としての少なくとも1種の耐火性改善用添加剤(VIII)。
【0073】
耐火性改善用添加剤(VIII)の例としては、(第2又は第3)アミノ基で置換されたフェニル基を含有する化合物を挙げることができる。かかる添加剤の例は、米国特許第5516938号明細書に見出される。かかる添加剤の有用な量は一般的に、組成物の総量に対して0.01〜1重量部の範囲である。
【0074】
この組成物(A)のその他の成分は、本発明に従う方法において規定した通りである。
【0075】
別の局面に従えば、本発明は、上記のシリコーンコーティング組成物の前駆体(2成分系(C))に関する。かかる前駆体系は、前記組成物を形成させるために互いに混合することが予定される2つの別個の部分A及びBの形を採り、これら部分A及びBの一方が触媒(III)とポリオルガノシロキサン種(I)又は(II)の一方のみとを含む。
【0076】
この前駆体系(C)のさらに別の特徴は、樹脂(V)を部分A若しくは部分B中に又は部分A及びBの両方に用いることができるということであり、そして、部分A及び部分Bの内のポリオルガノシロキサン(II)及び樹脂(V)を含有させた方の中に触媒(III)を存在させなければいけないということはない。
【0077】
促進剤系(IV-1)(IV-2)(IV-3)の場合、この前駆体系の別の特徴は、部分A及びBの内のポリオルガノシロキサン(II)を含有させた方が促進剤(IV)の化合物(IV-3)を含有しないこと、並びに部分A及びBの内の促進剤(IV)の化合物(IV-1)を含ませた方が触媒(III)を含まないことである。
【0078】
部分A及びB並びにそれらを一緒にした混合物の粘度は、成分の量を変化させること及び粘度が異なるポリオルガノシロキサンを選択することによって調節することができる。
【0079】
ひとたび互いに混合されたら、部分A及びBはそのまま使用できるシリコーン組成物を形成し、任意の好適なコーティング技術(例えばドクターブレード又はロール)によって支持体に塗布することができる。一般的に、25〜300μmの範囲、特に50〜200μmの範囲の硬化後最終塗布厚さが目指される。もしも支持体の表面が一様ではなかったらこれは不規則な付着をもたらすことがあるので、均一な厚さを有することは必要ではない。本発明に従う化合物は、熱によって及び/又は電磁放射線(加速電子放射線若しくは「電子ビーム」)によって硬化される。
【0080】
本発明に従う組成物は、柔軟な支持体、特に織、編又は不織繊維質テキスタイル{好ましくは合成繊維(有利にはポリエステル又はポリアミド)から作られた織、編又は不織支持体}を被覆又はコーティングするために用いることができる。
【0081】
本発明はまた、1つ又は2つの面が次のエラストマーによってコーティングされた織、編又は不織支持体にも向けられる:
(a)上記のシリコーンコーティング組成物(A)若しくは上記の2成分系(C)の部分A及びBを混合することによって得られる組成物を織、編又は不織繊維質支持体の1つ若しくは2つの面上に少なくと10g/m2の量で塗布し、そして
前の工程において形成された付着物を210℃までであってよい温度に加熱することによって若しくは電磁放射線(特に赤外線)によって硬化させてエラストマーを形成させることによって得ることができるエラストマー;又は
(b)上記の本発明に従う方法によって得ることができるエラストマー。
【0082】
本発明の1つの好ましい態様に従えば、繊維質支持体は、ISO規格9237に従って10リットル/dm2/分超の間隙率を有するオープンコンテキスチャー(広がった織り方)を有する布である。
【0083】
本発明の別の局面は、上記の本発明の手順に従ってコーティングされた支持体から形成される、乗物の乗員を保護するためのインフレータブルバッグに関する。
【0084】
本発明はまた、織、編又は不織繊維質支持体をコーティングするための本発明に従う2成分系(C)又は本発明に従う硬化性シリコーンコーティング組成物(A)の使用にも関する。好ましくは、これらの支持体は、乗物の乗員を保護するためのインフレータブルバッグを形成させることが予定される。1つの好ましい具体例において、前記支持体は、ISO規格9237に従って10リットル/dm2/分超の間隙率を有するオープンコンテキスチャーを有する布である。
【0085】
柔軟な支持体材料{特にテキスタイル(例えばポリアミド布)}の少なくとも1つの面の被覆又はコーティングは、特に衝撃の際の乗物の乗員の個体保護のためのインフレータブルバッグ、テントウエブ、パラシュートウエブ等のような工業用布の製造に有用である。
【0086】
この範疇において、本発明に従う組成物又は方法は、特にインフレータブルバッグの製造に慣用的に用いられる支持体のコーティング用だけではなく、オープンコンテキスチャーを有する支持体のコーティングにも特筆すべきものであることがわかった。「オープンコンテキスチャーを有する支持体」とは、ISO規格9237に従って10リットル/dm2/分超の間隙率を有する支持体を意味する。布の場合、オープンコンテキスチャーは特に、1cm当たりの経糸及び緯糸の数に相当すると規定することができ、それらの合計は特に36又はそれ未満である。
【0087】
本発明の範疇において特に推奨される布としては、コーティングされていない状態での重量が200g/m2未満、特に160g/m2又はそれ未満である布を一般的に挙げることができる。かくして、かかる布、特にポリアミド布であって16×16〜18×18ヤーン/cmを有するもの、例えばこれらの特徴を有する470dtex(デシテックス)の布を挙げることができる。
【0088】
また、工業用テキスタイル繊維{即ち、コーティングされた支持体又は布の用途に応じて特別な又は補強された特性を付与するために、標準的な繊維と比較して改善された特性(例えば改善された靭性)を示すテキスタイル繊維}から形成される基材(特に布)を用いることができるということも、注目されよう。
【0089】
オープンコンテキスチャーを有する支持体のコーティングについては、10000〜200000mPa・sの範囲、特に30000〜170000mPa・sの範囲、特に4000〜120000mPa・sの範囲の粘度を有するオイル(I)と、単位Qを含む樹脂(V)、特にかかる単位を少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%、特に5〜12重量%含む樹脂(V)とを含む組成物を用いるのが好ましい。
【0090】
かくして、本発明の主題は、このような柔軟な支持体、特にテキスタイル支持体であって、本発明に従ってコーティングされ、かくして上に示した特徴及び特性を有することができる前記支持体にもある。
【0091】
上に示した特性及び特徴のおかげで、上記のオープンコンテキスチャーの布、特にポリアミド又はポリエステル布であって、ひとたびコーティングされたら良好なコーミング強さ及び引裂き強さ並びに200g/m2又はそれ未満の重量を有し、さらにその上特に不透過性、熱保護、間隙性及び柔軟性に関して最適な特性をも有する前記布から、乗物の乗員の個体保護のためのインフレータブルバッグを作ることができる。これは、従来技術のコーティングされた布から作られたバッグと比較して、同等のコーティング厚さでもより軽量なインフレータブルバッグであって、より良好な性能品質を有し且つより安価であるものを製造することを可能にする。かくして、同等の重量について、コーティングの厚さを増大させ且つ不透過性及び熱保護を改善することが可能である。
【0092】
一般的に、懸案のコーティングは、柔軟な支持体材料の少なくとも1面への単一層の付着物(一次コーティング)に相当することができる。しかしながら、不透過性及び好ましい感触特徴に関して最良の可能な性能品質を保証する所望の厚さを全体として有するための、すでにコーティングされた支持体材料の少なくとも1面への第2層又は随意としての第3層の付着物(二次コーティング)に関することもできる。
【0093】
以下の本発明に従う組成物の調製例及び本発明の方法に従うポリアミド布用のコーティングとしての用途の例は、本発明をよりはっきり理解することを可能にし、その利点及び別の実施態様を浮き出させることを可能にするであろう。本発明に従う方法から得られる生成物の性能品質は、比較試験によって例証されるであろう。
【実施例】
【0094】
これらの実施例において、粘度は1982年5月のAFNOR規格NFT−76−106の指示に従ってブルックフィールド粘度計を用いて測定される。
【0095】
例1:
【0096】
(1)成分の定義:
【0097】
・ポリオルガノシロキサン(I): 鎖の各末端を(CH3)2ViSiO0.5単位でブロックされたポリジメチルシロキサンオイルであって、100000mPa・sの粘度を有し、オイル100g当たりにSi−Vi官能基を0.003含有するもの(以下においては高粘度オイル(I)と称される成分)。
【0098】
・ポリオルガノシロキサン(I-a):鎖の各末端を(CH3)2ViSiO0.5単位でブロックされたポリジメチルシロキサンオイルであって、10000mPa・sの粘度を有し、オイル100g当たりのSi−Vi残基を0.005含有するもの(以下においては低粘度オイル(I)と称される成分)。
【0099】
・以下において希釈剤(A)と称されるポリオルガノシロキサン:鎖の各末端を(CH3)2ViSiO0.5単位でブロックされたポリジメチルシロキサンオイルであって、60000mPa・sの粘度を有するもの。
【0100】
・以下において希釈剤(B)と称されるポリオルガノシロキサン:鎖の各末端を(CH3)2ViSiO0.5単位でブロックされたポリジメチルシロキサンオイルであって、3500mPa・sの粘度を有するもの。
【0101】
・ポリオルガノシロキサン(II): 鎖の各末端を(CH3)2HSiO0.5単位でブロックされたポリ(ジメチル)(ヒドロゲノメチル)シロキサンオイルであって、25mPa・sの粘度を有し、オイル100g当たりにSi−H官能基を合計0.7(鎖中に配置されたSi−H官能基0.6を含めて)含有するもの(以下においてはオイル(II)と称される成分)。
【0102】
・触媒(III):Karstedt触媒の名称で知られていて、白金金属10重量%を含有する有機金属錯体の形で導入される白金金属(以下においては触媒(III)の白金と称される成分)。
【0103】
・接着促進剤(IV):以下のものから成る混合物:
(IV-1)ビニルトリメトキシシラン(VTMO)、
(IV-2)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、及び
(IV-3)チタン酸ブチルTi(OBu)4(TBT)。
【0104】
・樹脂(V): 式MMViDDViQのポリオルガノシロキサンであって、(CH3)3SiO05単位27重量%、(CH3)2ViSiO0.5単位0.15重量%、(CH3)2SiO単位60重量%、(CH3)ViSiO単位2.4重量%及びSiO2単位9.6重量%から成り、ビニル基(Vi)0.8重量%を含有するもの。
【0105】
・抑制剤(VI):1−エチニル−1−シクロヘキサノール(ECH)。
【0106】
・炭酸カルシウム(1)、CaCO3(Albacar(登録商標)5970)、平均等価直径=2μmで、針状の形状にある沈降炭酸カルシウム{相溶化処理(熱又は表面機能化)に付していないもの}。
【0107】
・炭酸カルシウム(2)、CaCO3(Solvay社より販売されているSocal(登録商標)31)、平均等価直径=0.07μm。
【0108】
・炭酸カルシウム(3)、CaCO3(Omya社より販売されているBLR3(登録商標)31)平均等価直径=5.7μm。
【0109】
・充填剤(VII-C):Sifraco社より販売されている、平均粒子寸法約2.5μm、BET比表面積約3m2/gの粉砕石英。
【0110】
・充填剤(VII-D):シリカAEROSIL(登録商標)R812。
【0111】
(2)組成物の調製:
【0112】
(a)2成分前駆体からの組成物の調製:
2成分系の部分A100重量部及び部分B10重量部を室温において互いに混合することによって、組成物を得た(第I〜IV表中の2成分系I及びIIの組成を参照されたい)。
【0113】
(b)のり抜きされた6,6タイプのポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド−6,6)布(235デシテックスの番手、28.5×28.5ヤーン/cmのコンテキスチャーを有するもの)上にドクターブレード又はロールを用いて前記混合物をコーティングして(30〜36g/m2の塗布重量)層を形成させる(第I及びIII表の組成物について、異なる布のロットを用いて試験を実施した)。
【0114】
(c)得られた層をMathisオーブン中で180℃において80秒間硬化させてエラストマーを得る。試験結果を第V及びVI表に与える。
【0115】
組成物I−1〜I−8は本発明に従う組成物である。組成物C−1、C−2、C−3及びC−4は比較用である。
【0116】
【表1】

【0117】
第I表に記載した2成分系Iの部分A100重量部及び部分B10重量部を混合した後に、得られた組成物は、下記の炭酸カルシウム及び樹脂(V)重量含有率を有する(第II表を参照されたい)。
【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
第III表に記載した2成分系IIの部分A100重量部及び部分B10重量部を混合した後に、得られた組成物は、下記の炭酸カルシウム及び樹脂(V)重量含有率を有する(第IV表を参照されたい)。
【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
(1)皺寄り及び摩耗耐性試験(「擦り」試験)(ISO規格5981A)は、組成物の接着及び老化挙動を反映する。この試験は、最初にサンプルの両端を挟んで互いに対して交互方向の動きで駆動される2つのジョーを用いて布を剪断運動に付し、次に可動式支持体と接触させることによって摩擦に付すことから成る。
(2)コーミング強さの測定は、ASTM規格D6479の指示に従って行う。
(3)引裂き強さの測定は、ISO規格13937−2のプロトコルに従って行う。
【0125】
樹脂(V)と炭酸カルシウムAlbacar(登録商標)5970(即ち平均等価直径2μmで針状の形状にある炭酸カルシウム)とを組み合わせて用いた場合に、最良の結果が得られた。
【0126】
例2:
組成物C−1(比較例)及びI−2(本発明)について、例1の(2)(a)〜(c)に記載した手順を、代表的な市販品であるタイプ6,6のポリヘキサメチレンアジパミド(PA−6,6)タイプの布について、様々なエラストマー硬化条件で、繰り返す。結果を第VII表に与える。
【0127】
【表7】

【0128】
非常に様々な効果条件(時間及び温度)についての広範な布に対して、組成物I−2のコーミング強さにおける増分(利点)は有意である。
【0129】
例3:
【0130】
対照用組成物C−4
【0131】
(a)2成分系の部分A100重量部及び部分B10重量部を互いに混合することによって、対照用組成物C−4を調製する(下記の組成を参照されたい)。
【0132】
【表8】

【0133】
(b)コンテキスチャーが異なる布(第VIII表)上にコーティングされた組成物I−2(本発明)とC−4(比較例)との比較試験を行う。これを行うためには、各組成物をドクターブレードを用いて約50g/m2の量で塗布してコーティングして、布上に層を形成させる。
【0134】
(c)得られた層を通風オーブン中で180℃において80秒間硬化させてエラストマーを得る。結果を第IX表に与える。
【0135】
【表9】

【0136】
【表10】

【0137】
・TS=引裂き強さ(N)
・CS=コーミング強さ(N)
・擦り=摩耗耐性(擦り試験、サイクル数)
・摩擦係数(Ks):ISO規格8295に従う摩擦係数の測定。
【0138】
前記の結果は、組成物C−4で処理された470dtexの18×18布と組成物I−2で処理された470dtexの16×16布とが匹敵するコーミング強さを有し、コーティングされた布の引裂き強さの点で完全に許容できる性能品質を有するということを示している。
【0139】
さらに、最初は劣った引裂き強さ特性(178N)及び劣ったコーミング強さ特性(36N)故にエアバッグ用途には利用できないものだった13.5/13.5参照用未処理布が、本発明に従う方法によって処理された時に、エアバッグの分野における用途に完全に利用可能になる(引裂き強さ:311N/コーミング強さ:193N)ことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法であって、
(a)次の成分を含む硬化性シリコーンコーティング組成物(A)を調製する工程:
・(a-1)又は(a-2):
[ここで、(a-1)は少なくとも1種の有機ペルオキシドを基剤とする触媒の作用によって硬化させることができる少なくとも1種のポリオルガノシロキサンに相当し;
(a-2)は次の(I)及び(II)を含み、重付加反応によって硬化させることができるポリオルガノシロキサンブレンドに相当する:
(I)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン、
(II)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン];
・(a-1)を用いる場合には少なくとも1種の有機ペルオキシドから成り、(a-2)を用いる場合には白金族の少なくとも1種の金属(又は化合物)から成る、有効量の硬化触媒;
・随意としての少なくとも1種の接着促進剤(IV);並びに
・前記コーミング強さ及び前記引裂き強さを改善するための、以下のものの混合物から成る添加剤系(B)(その成分は順次又は同時に添加される):
・・前記混合物の総重量に対して60重量%までの割合で存在し、随意に希釈剤としての役割を果たす少なくとも1種のポリオルガノシロキサンと混合された、少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂(V);及び
・・前記混合物の総重量に対して30重量%までの割合で存在する炭酸カルシウム(CaCO3);
(b)織、編又は不織繊維質支持体の1つ又は2つの面に工程(a)で調製したシリコーンコーティング組成物(A)を少なくとも10g/m2の量で塗布する工程;並びに
(c)工程(b)において形成された付着物を210℃までであってよい温度に加熱することによって又は電磁放射線(特に赤外線)によって硬化させてエラストマーを形成させる工程:
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記硬化性シリコーンコーティング組成物(A)が
(a)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(I)、
(b)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(II)、
(c)触媒として有効量の、白金族に属する少なくとも1種の金属から成る少なくとも1種の触媒(III)、
(d)少なくとも1種の接着促進剤(IV)、
(e)前記コーミング強さ及び前記引裂き強さを改善するための、以下のものから構成される混合物から成る添加剤系(B)(その成分は順次又は同時に添加される):
・前記混合物の総重量に対して60重量%までの割合で存在し、随意に希釈剤としての役割を果たす少なくとも1種のポリオルガノシロキサンと混合された、少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂(V);及び
・前記混合物の総重量に対して30重量%までの割合で存在する炭酸カルシウム(CaCO3);
(f)随意としての少なくとも1種の硬化抑制剤(VI)、
(h)随意としての少なくとも1種の着色添加剤(VII)、並びに
(i)随意としての少なくとも1種の耐火性改善用添加剤(VIII)
から構成される混合物を含む、請求項1に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムを前記添加剤系(B)中の前記混合物の総重量に対して4〜26重量%の割合で存在させる、請求項1又は2に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムを前記添加剤系(B)中の前記混合物の総重量に対して10〜24重量%の割合で存在させる、請求項1又は2に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサン樹脂(V)を前記混合物の総重量に対して40重量%まで、好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは11〜30重量%の割合で前記添加剤系(B)中に存在させる、請求項1〜4のいずれかに記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項6】
前記硬化性シリコーンコーティング組成物(A)の接着促進剤(IV)が
(IV.1)1分子当たり少なくとも1個のC2〜C6アルケニル基を含有する少なくとも1種のアルコキシル化オルガノシラン、
(IV.2)少なくとも1個のエポキシ基を含む少なくとも1種の有機ケイ素化合物、並びに
(IV.3)少なくとも1種の金属Mのキレート及び/又は一般式M(OJ)n(ここで、nはMの原子価であり、Jは直鎖状又は分枝鎖状C1〜C8アルキルであり、MはTi、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al及びMgより成る群から選択される)の金属アルコキシド
をもっぱら含む、請求項2〜5のいずれかに記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項7】
前記添加剤系(B)のポリオルガノシロキサン樹脂(V)が式Si04/2のシロキシ単位Qを含む、請求項2〜6のいずれかに記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項8】
前記ポリオルガノシロキサン樹脂(V)がその構造中に0.1〜20重量%、好ましくは4重量%より多くのアルケニル基を含み、前記構造がタイプMの同一の又は異なるシロキシ単位、タイプT及び/又はQの同一の又は異なるシロキシ単位並びに随意としてのタイプDのシロキシ単位を含有する、請求項6に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項9】
前記ポリオルガノシロキサン樹脂(V)がタイプQのシロキシ単位を少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%含む、請求項7又は8に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項10】
前記ポリオルガノシロキサン(I)が
(i)次式のシロキシ単位:
【化1】

(ここで、記号R1はアルケニル基、好ましくはビニル又はアリル基を表わし、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個又はそれより多くのハロゲン原子で置換されたアルキル基及びアリール基から選択される1価の炭化水素基であって触媒の活性に対して好ましくない作用を持たないものを表わし、
aは1又は2であり、bは0、1又は2であり、それらの合計a+bは1、2又は3である)
及び
(ii)随意としての次式の別のシロキシ単位:
【化2】

(ここで、Zは上記と同じ意味を持ち、
cは0、1、2又は3である)
を含有する、請求項2〜9のいずれかに記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項11】
前記ポリオルガノシロキサン(II)が次式のシロキシ単位:
【化3】

(ここで、基Lは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ触媒の活性に対して好ましくない作用を持たない1価の炭化水素基であって、好ましくは1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個又はそれより多くのハロゲン原子で置換されたアルキル基、有利にはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基、並びにアリール基、有利にはキシリル、トリル又はフェニル基、から選択されるものを表わし、
dは1又は2であり、eは0、1又は2であり、それらの合計d+eは1、2又は3である)
を含み且つ随意としての別の単位の少なくとも一部が次の平均式:
【化4】

(ここで、基Lは上記と同じ意味を持ち、
gは0、1、2又は3である)
の単位である、請求項2〜10のいずれかに記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項12】
前記ポリオルガノシロキサン(I)及び(II)の割合が、(II)中のケイ素に結合した水素原子対(I)中のケイ素に結合したアルケニルのモル比が0.4〜10の範囲、好ましくは0.6〜5の範囲となるようなものである、請求項2〜11のいずれかに記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項13】
前記接着促進剤(IV)の前記アルコキシル化オルガノシラン(IV.1)が次の一般式:
【化5】

(ここで、R1、R2及びR3は同一の又は異なる基であって、水素、直鎖状若しくは分枝鎖状C1〜C4アルキル又は随意に1個若しくはそれより多くのC1〜C3アルキルで置換されたフェニルを表わし、
Uは直鎖状又は分枝鎖状C1〜C4アルキレンであり、
Wは原子価結合であり、
4及びR5は同一の又は異なる基であって、直鎖状又は分枝鎖状C1〜C4アルキル基を表わし、
x'は0又は1であり、
xは0〜2である)
に相当する、請求項6に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項14】
前記接着促進剤(IV)の前記有機ケイ素化合物(IV.2)が
(a)次の一般式に相当する物質(IV.2a):
【化6】

{ここで、R6は直鎖状又は分枝鎖状C1〜C4アルキル基であり、
7は直鎖状又は分枝鎖状アルキル基であり、
yは0、1、2又は3であり、
Xは次式:
【化7】

(ここで、E及びDは同一の又は異なる基であって、直鎖状又は分枝鎖状C1〜C4アルキルから選択され、
zは0又は1であり、
8、R9及びR10は同一の又は異なる基であって、水素又は直鎖状若しくは分枝鎖状C1〜C4アルキルを表わし、
また、R8及びR9、又はR8及びR10は、それらが結合しているエポキシを形成する2個の炭素と一緒になって5〜7員アルキル環を形成することもできる)
で規定される};並びに
(b)下記の単位(i)及び(2i)を含むエポキシ官能性ポリジオルガノシロキサンから成る物質(IV.2b):
(i)次式の少なくとも1種のシロキシ単位:
【化8】

(ここで、Xは式(IV.2a)について上で規定した通りの基であり、
Gは触媒の活性に対して好ましくない作用を持たない一価の炭化水素基であり、1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個又はそれより多くのハロゲン原子で置換されたアルキル基及びアリール基から選択され、
pは1又は2であり、
qは0、1又は2であり、
p+qは1、2又は3である);及び
(2i)随意としての次式の少なくとも1種のシロキシ単位:
【化9】

(ここで、Gは上記と同じ意味を持ち、
rは0、1、2又は3である):
から選択される、請求項6に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項15】
前記キレート及び/又はアルコキシド(IV.3)の金属MがTi、Zr、Ge、Li及びMnから選択される、請求項6に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項16】
前記接着促進剤(IV)が
・ビニルトリメトキシシラン(VTMO)((IV.1)を代表する)、
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)((IV.2)を代表する)、及び
・チタン酸ブチル((IV.3)を代表する)
の混合物を含む、請求項13、14又は15に記載の織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善する方法。
【請求項17】
織、編又は不織繊維質支持体のコーミング強さ及び引裂き強さを改善するための、重付加反応によって硬化可能なシリコーンコーティング組成物であって、
(a)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(I)、
(b)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(II)、
(c)触媒として有効量の、白金族に属する少なくとも1種の金属から成る少なくとも1種の触媒(III)、
(d)少なくとも1種の接着促進剤(IV)、
(e)前記コーミング強さ及び前記引裂き強さを改善するための、以下のものから構成される混合物から成る添加剤系(B)(その成分は順次又は同時に添加される):
・前記混合物の総重量に対して60重量%までの割合で存在し、随意に希釈剤としての役割を果たす少なくとも1種のポリオルガノシロキサンと混合された、少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂(V);及び
・前記混合物の総重量に対して19重量%までの割合で存在する炭酸カルシウム(CaCO3);
(f)随意としての少なくとも1種の硬化抑制剤(VI)、
(h)随意としての少なくとも1種の着色添加剤(VII)、並びに
(i)随意としての少なくとも1種の耐火性改善用添加剤(VIII)
から構成される混合物から成る、前記組成物。
【請求項18】
請求項17に記載のシリコーンコーティング組成物(A)の前駆体である2成分系(C)であって、
前記組成物を形成させるために互いに混合することが予定される2つの別個の部分A及びBを含み、
これら部分A及びBの一方が前記触媒(III)とポリオルガノシロキサン種(I)又は(II)の一方のみとを含む、前記2成分系。
【請求項19】
1つ又は2つの面が次のエラストマー:
(a)請求項17に記載のシリコーンコーティング組成物(A)若しくは請求項18に記載の2成分系(C)の部分A及びBを混合することによって得られる組成物を織、編若しくは不織繊維質支持体の1つ若しくは2つの面上に少なくと10g/m2の量で塗布し、そして
前の工程において形成された付着物を210℃までであってよい温度に加熱することによって若しくは電磁放射線(特に赤外線)によって硬化させてエラストマーを形成させることによって得ることができるエラストマー;又は
(b)請求項1〜16のいずれかに記載の方法によって得ることができるエラストマー:
によってコーティングされた、織、編又は不織支持体。
【請求項20】
前記繊維質支持体がISO規格9237に従って10リットル/dm2/分超の間隙率を有するオープンコンテキスチャーを有する布である、請求項19に記載の支持体。
【請求項21】
請求項19又は20に記載のコーティングされた支持体から形成される、乗物の乗員を保護するための膨張式バッグ。
【請求項22】
織、編又は不織繊維質支持体をコーティングするための、請求項18に記載の2成分系(B)又は請求項1〜17のいずれかに記載の硬化性シリコーンコーティング組成物(A)の使用。
【請求項23】
乗物の乗員を保護するための膨張式バッグを形成させることが予定される支持体をコーティングするための、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記支持体がISO規格9237に従って10リットル/dm2/分超の間隙率を有するオープンコンテキスチャーを有する布であることを特徴とする、請求項22又は23に記載の使用。

【公表番号】特表2007−514871(P2007−514871A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537365(P2006−537365)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002791
【国際公開番号】WO2005/045123
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【Fターム(参考)】