説明

乗物用シート

【課題】快適性が向上され得るシートを提供する。
【解決手段】乗物用シート1であって、シートバック11と、シートバック11に設けられるダクト2を有する。ダクト2は、空気が供給され得る入口2d2と、入口2d2側から分岐して第一吹出し口2a2と連通される第一連通管2aと、入口2d2側から分岐して第二吹出し口2b2と連通される第二連通管2bを有する。ダクト2には、第一連通管2aと第二連通管2bを流れる空気に熱を供給または空気から熱を吸収して第一吹出し口2a2から吹出される空気と第二吹出し口2b2から吹出される空気に温度差を生じさせ得る熱装置3が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの乗物に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバックと、そのシートバックに設けられたダクトを備えるシートが知られている。特許文献1に記載されたダクトの下側には送風機が設けられ、ダクト内には暖房要素が設けられる。したがって送風機が空気をダクトに供給し、空気が暖房要素によって加熱され、加熱された空気がダクトの吹出し口から乗員の首近傍に吹出される。特許文献2に記載されたシートバックにはファンと、ファンから延出する複数のダクトが設けられる。したがってファンが空気を各ダクトに供給し、空気が各ダクトの吹出し口から吹出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−523478号公報
【特許文献2】特開2002−187471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に記載のシートは、一つの吹出し口のみを有している。特許文献2に記載のシートは、複数の吹出し口を有するものの、複数の吹出し口から吹出される空気は雰囲気と同じ温度である。そのため複数の吹出し口を有し、かつ複数の吹出し口から異なる温度の空気が吹出され、これにより快適性が向上され得るシートの要望が従来ある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える乗物用シートであることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、シート本体と、シート本体に設けられるダクトを有する。ダクトは、空気が供給され得る入口と、入口側から分岐して第一吹出し口と連通される第一連通管と、入口側から分岐して第二吹出し口と連通される第二連通管を有する。ダクトには、第一連通管と第二連通管の少なくとも一つ内を流れる空気に熱を供給または前記空気から熱を吸収して第一吹出し口から吹出される空気と第二吹出し口から吹出される空気に温度差を生じさせ得る熱装置が設けられている。
【0006】
したがって第一吹出し口から吹出される空気と第二吹出し口から吹出される空気は、熱装置によって温度差が生じる。しかも熱装置は、シート本体に設けられている。そのため乗物本体に設けられた空調装置などに比べて熱装置が第一吹出し口と第二吹出し口の近傍に位置する。そのため熱効率良くかつ確実に第一吹出し口と第二吹出し口から吹出される空気に温度差が形成され得る。これにより乗員の各部位に対応する好適な温度に調整された空気が各位置から吹出され得る。かくしてシートの快適性が向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】シートの一部断面側面図である。
【図2】他の構成におけるシートの一部断面側面図である。
【図3】ヒータの断面斜視図である。
【図4】他の構成におけるシートの一部断面側面図である。
【図5】他の構成におけるヒータの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一つの実施の形態を図1にしたがって説明する。シート1は、車両などの乗物に搭載される乗物用シートであって、シートクッション10とシートバック11とヘッドレスト12を有する。シートバック11は、シートクッション10の後部に取付けられて起立する。ヘッドレスト12は、シートバック11の上部に取付けられる。
【0009】
シートバック(シート本体)11は、フレーム13とパッド14と空調装置1aを有する。フレーム13は、シートクッション10の後部に角度調整可能に取付けられる。パッド14は、発砲ウレタン等の弾性材料から形成されており、フレーム13に装着される。パッド14には表皮部材15が取付けられ、表皮部材15によってパッド14の前面と外周部が覆われる。パッド14の裏側には裏部材16が取付けられ、裏部材16によってパッド14の裏面が覆われ、パッド14と裏部材16の間に隙間が形成される。
【0010】
空調装置1aは、図1に示すようにダクト2と熱装置3と送風装置4を有する。送風装置4は、ハウジング4aと、ハウジング4aに回転可能に取付けられるファン4bと、ファン4bを回転させるモータ4cを有する。ハウジング4aは、フレーム13に取付けられる。ハウジング4aの前部には、ハウジング4a内への空気の供給を許容する開口部4a1が形成される。ハウジング4aの上部には、ダクト2が接続される接続部4a2が設けられる。
【0011】
ダクト2は、ゴムなどの弾性部材から形成され、図1に示すようにベース管2dと第一連通管2aと第二連通管2bを一体に有する。ベース管2dは、中空状であって、送風装置4に連通するベース通路2d1を構成する。ベース管2dは、下部に送風装置4に接続される入口2d2を有する。ベース管2dの上部には、分岐管2cが設けられる。分岐管2cは、ベース通路2d1を複数(例えば二つ)の流路に仕切る仕切り部2c1を有する。
【0012】
第一連通管2aは、中空状であって、ベース通路2d1から分岐する第一連通路2a1を構成する。第一連通路2a1は、ベース通路2d1から上方に延出して、第一連通管2aの端部に形成された第一吹出し口2a2に連通する。第一連通管2aは、パッド14と表皮部材15を貫通して、シートバック11の上面に開口する。第一吹出し口2a2から吹出された空気は、シートバック11の上面から吹出される。
【0013】
第一連通管2aの上端部には、図1に示すように吹出し管5が接続される。吹出し管5は、第一連通管2aに接続される接続部5a1と、前方に開口する吹出し口5a2を有する。したがって第一連通管2aと吹出し管5を経た空気は、シート1に着座する使用者の首後部に吹き付けられ得る。
【0014】
第二連通管2bは、中空状であって、ベース通路2d1から分岐する第二連通路2b1を構成する。第二連通路2b1は、ベース通路2d1から前上方に延出して、第二連通管2bの端部に形成された第二吹出し口2b2に連通する。第二連通管2bは、パッド14を貫通する。第二吹出し口2b2は、表皮部材15の裏面に開口し、かつシートバック11の前方に向いている。第二吹出し口2b2から吹出された空気は、表皮部材15を通って、シート1に着座する使用者の肩部あるいは背中の一部に向けて吹出される。
【0015】
熱装置3は、図1に示すように吸熱部3aと放熱部3bを有する。熱装置3は、ペルチエ効果を奏する熱交換器等であって、所定方向に電流を流すことで、吸熱部3aが熱を吸収し、放熱部3bが熱を放出する。熱装置3は、分岐管2cに設けられており、吸熱部3aが第一連通路2a1側に対向し、放熱部3bが第二連通路2b1側に対向する。
【0016】
ファン4bを回転させると、裏部材16と表皮部材15の隙間17からシートバック11内に空気が入る。ファン4bは、空気をダクト2のベース通路2d1に供給し、空気は、ベース通路2d1から分岐路2c1によって分岐される。第一連通路2a1側に流れた空気は、吸熱部3aの上を流れて、吸熱部3aによって熱が吸収され、冷却される。冷却された空気は、第一連通路2a1を経て第一吹出し口2a2から吹出される。第二連通路2b1側に流れた空気は、放熱部3bの上を流れて、放熱部3bによって熱が供給され、加熱される。加熱された空気は、第二連通路2b1を経て第二吹出し口2b2から吹出される。
【0017】
気温の低い冬の場合は、上記するように熱装置3と送風装置4をONにする。一方、気温の高い夏の場合は、熱装置3をOFFにして、送風装置4をONにする。これにより雰囲気と同じ温度の空気が第一吹出し口2a2と第二吹出し口2b2から吹出され得る。かくしてシート1に着座する使用者に風が供給される。
【0018】
以上のようにシート1は、シート本体(シートバック11)に設けられるダクト2を有する。ダクト2は、空気が供給され得る入口2d2と、入口2d2側から分岐して第一吹出し口2a2と連通される第一連通管2aと、入口2d2側から分岐して第二吹出し口2b2と連通される第二連通管2bを有する。ダクト2には、第一連通管2aと第二連通管2bを流れる空気に熱を供給または空気から熱を吸収して第一吹出し口2a2から吹出される空気と第二吹出し口2b2から吹出される空気に温度差を生じさせ得る熱装置3が設けられている。
【0019】
したがって第一吹出し口2a2から吹出される空気と第二吹出し口2b2から吹出される空気は、熱装置3によって温度差が生じ得る。しかも熱装置3は、シート本体(シートバック11)に設けられている。そのため乗物本体に設けられた空調装置などに比べて熱装置3が第一吹出し口2a2と第二吹出し口2b2の近傍に位置する。そのため熱効率良くかつ確実に第一吹出し口2a2と第二吹出し口2b2から吹出される空気に温度差が形成され得る。これにより乗員の各部位に対応する好適な温度に調整された空気が各位置から吹出され得る。かくしてシート1の快適性が向上され得る。
【0020】
また熱装置3は、熱交換器であって、第一連通管2aに流れる空気から熱を吸収する吸熱部3aと、第二連通管2bに流れる空気に熱を放出する放熱部3bを有する。したがって第一連通管2aを流れる空気は、吸熱部3aによって冷却される。一方、第二連通管2bを流れる空気は、放熱部3bによって加熱される。これにより第一吹出し口2a2と第二吹出し口2b2から吹出される空気に温度差が形成される。また熱装置3による二つの作用、すなわち吸熱部3aによる吸熱と、放熱部3bによる放熱がいずれも空気の温度差の形成に利用されている。そのため熱装置3による排熱が無くなりまたは少なくなる。これにより熱装置3による空気の温度差形成におけるエネルギー効率が向上する。
【0021】
また図1に示すように第一吹出し口2a2が第二吹出し口2b2よりも上方に設けられ、第一吹出し口2a2から吹出される空気の温度が第二吹出し口2b2から吹出される空気の温度よりも低い。したがって第一吹出し口2a2から吹出された温度の低い空気は、その下側の第二吹出し口2b2から吹出された温度の高い空気によって下方へ移動することが規制される。逆に、第二吹出し口2b2から吹出された温度の高い空気は、その上側の第一吹出し口2a2から吹出された温度の低い空気によって上方へ移動することが規制される。そのため吹出された空気の温度が所定の高さに留まる。これによりシート本体周りの空気に温度差を形成し得る。かくしてシート1の快適性が向上され得る。
【0022】
図1に示すように熱装置3によって冷却された空気は、第一吹出し口2a2から吹出されてシート1に着座する使用者の首近傍に吹き付けられる。そのため使用者の頭が暖められ過ぎることで頭がぼうっとする現象が防止され得る。一方、熱装置3によって加熱された空気は、第二吹出し口2b2から吹出されて使用者の肩近傍の背中に吹き付けられる。そのため頭をぼうっとさせることなく、使用者の体を暖めることができる。
【0023】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、空調装置1aが図1に示す熱装置3に代えて、図2,3に示す熱装置6を有していても良い。熱装置6は、電流を流すことで、熱を発生する発熱体であって、図3に示すようにハウジング6aとヒートシンク6bと熱線6cを有する。
【0024】
ハウジング6aは、図3に示すように筒状であって、軸方向の両端部が開口している。ヒートシンク6bは、複数のフィンを有しており、下面に熱線6cが当接される。熱線6cは、ニクロム線などであって、電流を流すことでジュール熱を発生する。熱線6cから発生した熱は、ヒートシンク6bに伝わり、ヒートシンク6bとハウジング6aの隙間6dを通る空気にヒートシンク6bから熱が供給され、空気が加熱される。
【0025】
熱装置6は、図2に示すように第二連通管2b内に設けられる。ファン4bを回転させると、ファン4bがダクト2のベース通路2d1に空気を供給する。ベース通路2d1から分岐して第一連通路2a1に流れた空気は、第一吹出し口2a2から吹出される。ベース通路2d1から分岐して第二連通路2b1に流れた空気は、熱装置6によって加熱される。加熱された空気は、第二吹出し口2b2から吹出される。
【0026】
気温の低い冬の場合は、上記するように熱装置6と送風装置4をONにする。一方、気温の高い夏の場合は、熱装置6をOFFにして、送風装置4をONにする。これにより雰囲気と同じ温度の空気が第一吹出し口2a2と第二吹出し口2b2から吹出され得る。かくしてシート1に着座する使用者に風が供給される。
【0027】
また空調装置1aは、図1に示す熱装置3に代えて、図4,5に示す熱装置7を有していても良い。熱装置7は、発熱体であって、図5に示すようにハウジング7aとヒートシンク7bと熱線7cを有する。
【0028】
ハウジング7aは、図5に示すように筒状であって、軸方向の両端部が開口している。ヒートシンク7bは、第一間隔7dで設置される複数のフィンと、第一間隔7dよりも狭い第二間隔7eで設置される複数のフィンを有する。熱装置7は、図4に示すようにベース管2dに設けられ、第一間隔7dのフィンが第一連通管2a側に設置され、第二間隔7eのフィンが第二連通管2b側に設置される。
【0029】
そのため熱装置7を空気が通ると空気内において温度差が形成される。温度の低い空気は、第一連通管2aを通って第一吹出し口2a2から吹出されやすい。一方、温度の高い空気は、第二連通管2bを通って第二吹出し口2b2から吹出されやすい。その結果、第一吹出し口2a2から吹出される空気と第二吹出し口2b2から吹出される空気との間に温度差が形成される。
【0030】
図1,2,4に示す空調装置1aは、シートバック11に設けられている。しかし空調装置1aがシートクッション(シート本体)10に設けられても良い。図1,2,4に示すダクト2は、パッド14と別部材によって構成されている。しかしダクトがその全部またはその一部がパッドによって構成されても良い。
【0031】
図1に示す熱装置3は、ペルチエ効果を奏する熱交換器である。しかし熱装置が吸熱部と放熱部を有する他の熱交換器であっても良い。また図2,4に示す熱装置6,7は、発熱体として図3,5に示す熱線6c,7cを有する。しかし熱装置が発熱体としてPTC(面状発熱体)を有していても良い。また図2に示す熱装置6は、熱は発生する発熱体である。しかし熱装置が熱を吸収する吸熱体であって、第一連通管2a内などに設けられても良い。
【0032】
図1,2,4に示す送風装置4は、シート本体(シートバック11)内に設けられている。しかし送風装置がシート本体の外、例えば乗物本体に設けられ、該送風装置からダクトに空気が供給されても良い。
【0033】
図1,2,4に示す第一吹出し口2a2は、シートバック11の上面から上方に空気を吹出す。しかし第一吹出し口がシートクッションの前面または側面から空気を吹出し、好ましくは第二吹出し口よりも上方の位置にて空気を吹出しても良い。
【0034】
図4に示す熱装置7は、フィンの間隔によって熱装置7を通過する空気に温度差を形成する。しかし熱装置7が部分的に温度が調整され得る発熱体、あるいは部分的に吸熱量が調整され得る吸熱体を有する。これにより熱装置7を通った空気に温度差が形成されても良い。
【0035】
あるいは熱装置7をベース管2d内において第二連通管2b側に位置させて、第一連通管2a側に隙間を形成しても良い。これにより温度の高い空気が第一連通管2aを通って第一吹出し口2a2から吹出されやすく、温度の低い空気が第二連通管2bを通って第二吹出し口2b2から吹出されやすい。その結果、第一吹出し口2a2から吹出される空気と第二吹出し口2b2から吹出される空気との間に温度差が形成される。
【符号の説明】
【0036】
1…シート
1a…空調装置
2…ダクト
2a…第一連通管
2a2…第一吹出し口
2b…第二連通管
2b2…第二吹出し口
2c…分岐管
2d…ベース管
2d2…入口
3,6,7…熱装置
3a…吸熱部
3b…放熱部
4…送風装置
5…吹出し管
10…シートクッション
11…シートバック(シート本体)
12…ヘッドレスト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
シート本体と、前記シート本体に設けられるダクトを有し、
前記ダクトは、空気が供給され得る入口と、前記入口側から分岐して第一吹出し口と連通される第一連通管と、前記入口側から分岐して第二吹出し口と連通される第二連通管を有し、
前記ダクトには、前記第一連通管と前記第二連通管の少なくとも一つ内を流れる空気に熱を供給または前記空気から熱を吸収して前記第一吹出し口から吹出される空気と前記第二吹出し口から吹出される空気に温度差を生じさせ得る熱装置が設けられていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記熱装置は、熱交換器であって、前記第一連通管に流れる空気から熱を吸収する吸熱部と、前記第二連通管に流れる空気に熱を放出する放熱部を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗物用シートであって、
前記第一吹出し口が前記第二吹出し口よりも上方に設けられ、前記第一吹出し口から吹出される空気の温度が前記第二吹出し口から吹出される空気の温度よりも低いことを特徴とする乗物用シート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−156993(P2011−156993A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21003(P2010−21003)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】