説明

乗用作業機

【課題】本発明は、旋回時の操作の煩わしさを排除して、旋回に係る操作性を大幅に高めることができる乗用作業機を提供することを課題とする。
【解決手段】乗用作業機としての乗用芝刈り機10は、操舵ハンドル21が所定の角度を超えて転舵されたか否かを検出する舵角センサ31を備え、車速制御レバー28が、予め定めた車速を超えた範囲に設定されたか否かを検出するレバー位置検出センサ29を備え、レバー位置検出センサ29から車速が予め定めた車速を超えた範囲に設定されているとの位置情報および舵角センサ31から舵角が所定の角度を超えた範囲に設定されているとの転舵情報の情報を受けたときにエンジン12の回転速度を絞る減速制御を実施する制御部33が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用作業機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪を備えた機体に、運転者が座るシートと、運転者が操舵する操舵ハンドルと、車速を設定する車速制御レバーと、車輪を駆動するエンジンとを備えている乗用作業機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−95145公報(図2)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図4は従来の技術の基本構成を説明する図であり、乗用作業機としての芝刈り機100は、機体101に操舵ハンドル102により操舵される操向輪としての前輪103、103およびエンジン105により駆動される後輪104、104とが設けられ、機体101の下部に設けエンジンより駆動される回転刃を回転させながら、機体101の上面に設けたシート106に乗員が着座し、機体101を走行させながら芝刈り作業を行うというものである。
【0004】
ところで、特許文献1の技術では、旋回時に、車両の速度を下げるために、車両速度設定用のシフトレバーを高速モードから低速モードへ操作し、エンジン105の回転速度を下げる操作を行う。また、旋回終了後に、車両の速度を上げる操作を行う。かかる減速操作および加速操作は、手動操作により行うものであり、煩わしいものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、旋回時の操作の煩わしさを排除して、旋回に係る操作性を大幅に高めることができる乗用作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車輪を備えた機体に、運転者が座るシートと、運転者が操舵する操舵ハンドルと、車速を設定する車速制御レバーと、車輪を駆動するエンジンとを備えている乗用作業機において、この乗用作業機は、操舵ハンドルが所定の角度を超えて転舵されたか否かを検出する舵角センサを備え、車速制御レバーが、予め定めた車速を超えた範囲に設定されたか否かを検出するレバー位置検出センサを備え、このレバー位置検出センサから車速が予め定めた車速を超えた範囲に設定されているとの位置情報および舵角センサから舵角が所定の角度を超えた範囲に設定されているとの転舵情報の2つの情報を受けたときにエンジンの回転速度を絞る減速制御を実施する制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、乗用作業機は、操舵ハンドルが所定の角度を超えて転舵されたか否かを検出する舵角センサを備え、車速制御レバーが、予め定めた車速を超えた範囲に設定されたか否かを検出するレバー位置検出センサを備えている。
【0008】
乗用作業機の速度が予め定めた車速を超えたという情報を受け、操舵ハンドルが所定角度を超えて転舵されたという情報を受けたときに、エンジンの回転速度を減速させ、所定の速度にすることができる。
【0009】
従来、乗用作業機を旋回させる場合には、一旦、車両速度設定用の車速制御レバーとしてのシフトレバーを操作して、エンジンの回転速度を下げていた。
【0010】
この点、本発明では、レバー位置検出センサおよび舵角センサから情報を受けて、エンジンの回転速度を減速して所定の速度にする制御部を備えているので、旋回時に、乗員が、シフトレバーをシフトする操作を行う必要はない。
【0011】
旋回時に、シフトレバーをシフトする操作を伴わないため、旋回に係る操作は、操舵ハンドルによる操舵のみで済む。旋回操作は簡便なものになるので、旋回に係る操作性を大幅に高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る乗用作業機の右側面図であり、乗用作業機としての乗用芝刈り機10は、機体11と、この機体11に搭載した駆動源としてのエンジン12と、機体11の前部に設けた操舵輪としての前輪13と、機体の後部に設けエンジン12によって駆動される後輪14と、機体11の下部に設け芝を刈る作業部としての回転刃15と、この回転刃15の周囲を覆うとともに刈り取られた芝を後方に導く回転刃ハウジング16と、この回転刃ハウジング16の後端部に配置し刈り取られた芝を貯めるグラスバッグ17と、を主要な構成要素とし、乗員Mがシート18に着座して芝刈り作業を行うようにしたものである。
図中、19は回転刃ハウジング16を昇降可能に支持する支持リンク、20はグラスダクト、21は操舵ハンドル、23は足載せである。
【0013】
すなわち、乗用芝刈り機10は、車輪としての前輪13および後輪14を備えた機体11に、運転者が座るシート18と、運転者が操舵する操舵ハンドル21と、車速を設定する車速制御レバー28と、作業部としての芝を刈る回転刃15と、この回転刃15および車輪を駆動するエンジン12とを備えた車両である。車輪は、前輪13と後輪14とからなる。
【0014】
図2は本発明に係る乗用作業機のセンサ配置を示す図であり、乗用作業機としての乗用芝刈り機10には、エンジン12により駆動され芝を刈る回転刃15が回転刃クラッチ機構25を介して設けられ、この回転刃クラッチ機構25には、回転刃クラッチの断接状態を把握する回転刃クラッチセンサ27が設けられ、高速モード、中速モードおよび低速モードの3つの位置にシフト可能な車速制御レバー28が設けられ、この車速制御レバー28が高速モードの位置に設定されていることを検出するレバー位置検出センサ29が設けられ、操舵ハンドル21が所定の角度を超えて転舵されたか否かを検出する舵角センサ31が設けられている。
【0015】
エンジン12には、このエンジン12に供給する燃料の量を調整するスロットル弁35、およびこのスロットル弁35の開き量を調整するスロットル弁制御モータ36とが一体的に備えられ、制御部33によりスロットル弁制御が行われるようにし、所定の回転速度に制御をすることで、車両の速度を減速制御できるようにした。
38はエンジンスイッチ、39はエンジン12の回転速度を検出するエンジン回転センサである。
【0016】
また、エンジン12の回転速度が所定回転速度を超えた速度であるとのエンジン回転センサ39の情報、レバー位置検出センサ29から車速が予め定めた車速を超えた範囲に設定されているとの位置情報および舵角センサ31から舵角が所定の角度を超えた範囲に設定されているとの転舵情報の3つの情報を受けたときにエンジン12の回転速度を絞る減速制御を実施する制御部33が設けられている。
【0017】
図3は本発明に係る乗用作業機の動作フロー図であり、図1〜図2に基づき説明を行う。ST××は、ステップ番号を示す。
以下説明において、エンジン12が始動されたという前提で説明する。エンジン12が始動されると、すぐにこのフローは開始される。
【0018】
ST01でエンジン回転センサ39の情報をもとに、エンジン12の回転速度が所定の回転速度(高速)に達しているか否かを判断する。エンジン12の回転速度が、所定の回転速度に達しているとのエンジン回転センサ39の情報を受けていないときは終了し、エンジン12の回転速度が、所定の回転速度に達しているときは、ST02に進む。
【0019】
ST02で車速制御レバー28が、車速を超えた範囲に設定されているか否かを判断する。本実施例では、車速を超えた範囲とは、車速制御レバー28の設定位置が、高速モードの位置にあることをいう。
【0020】
車速制御レバー28が、高速モードの位置にないとのレバー位置検出センサ29の情報を受けたとき(レバー位置検出センサ29がオフのとき)は終了する。
車速制御レバー28が、高速モードの位置にあるとのレバー位置検出センサ29の情報を受けたとき(レバー位置検出センサ29がオンのとき)は、ST03に進む。
【0021】
ST03で操舵ハンドル21の舵角が所定の舵角θ1以上にあるか否かを判断する。操舵ハンドル21の舵角が、所定の舵角θ1に達していない(舵角センサ31がオフ)との情報を受けたときは、終了する。
【0022】
操舵ハンドル21の舵角が、所定の舵角θ1以上である(舵角センサ31がオン)との情報を受けたときは、エンジン12の回転速度を所定の速度に減速する(ST04)。以上で、本発明に係る乗用作業機の速度制御の1サイクルが終了する。
【0023】
乗用作業機(乗用芝刈り機10)の速度が予め定めた車速を超えたという情報を受け、操舵ハンドル21が所定角度を超えて転舵されたという情報を受けたときに、エンジン12の回転速度を減速させ、所定の速度にすることができる。
【0024】
従来、乗用芝刈り機10を旋回させる場合には、一旦、車両速度設定用の車速制御レバー28を操作して、エンジン12の回転速度を下げていた。
【0025】
この点、本発明では、レバー位置検出センサ29および舵角センサ31から情報を受けて、エンジン12の回転速度を減速して所定の速度にする制御部33を備えているので、旋回時に、乗員が、車速制御レバー28をシフトする操作を行う必要はない。
【0026】
旋回時に、車速制御レバー28をシフトする操作を伴わないため、旋回に係る操作は、操舵ハンドル21による操舵のみで済む。旋回操作は簡便なものになるので、旋回に係る操作性を大幅に高めることが可能となる。
尚、本実施例において、乗用作業機は、乗用芝刈り機であるが、乗用芝刈り機に限定されず、耕耘機、除雪機などを含む他の乗用作業機に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、レバー位置検出センサおよび舵角センサを備えた乗用作業機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る乗用作業機の右側面図である。
【図2】本発明に係る乗用作業機のセンサ配置を示す図である。
【図3】本発明に係る乗用作業機の動作フロー図である。
【図4】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
10…乗用芝刈り機、11…機体、12…エンジン、13…車輪(前輪)、14…車輪(後輪)、15…回転刃、18…シート、21…操舵ハンドル、28…車速制御レバー、29…レバー位置検出センサ、31…舵角センサ、33…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を備えた機体に、運転者が座るシートと、運転者が操舵する操舵ハンドルと、車速を設定する車速制御レバーと、前記車輪を駆動するエンジンとを備えている乗用作業機において、
この乗用作業機は、前記操舵ハンドルが所定の角度を超えて転舵されたか否かを検出する舵角センサを備え、
前記車速制御レバーが、予め定めた車速を超えた範囲に設定されたか否かを検出するレバー位置検出センサを備え、
このレバー位置検出センサから車速が予め定めた車速を超えた範囲に設定されているとの位置情報および前記舵角センサから舵角が所定の角度を超えた範囲に設定されているとの転舵情報の2つの情報を受けたときに前記エンジンの回転速度を絞る減速制御を実施する制御部を備えていることを特徴とする乗用作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−298283(P2009−298283A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154691(P2008−154691)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】