乗用型草刈機
【課題】 草刈り装置30を車体下部に連結したままにしても、車体上方から点検や修理しやすい乗用型草刈機を提供する。
【解決手段】 運転部床12aの後端側と、運転座席11下方の縦構造板50の下端側とを連結してある。運転部床12a及び縦構造板50は、運転部床12aの前端側に配置した車体横向き軸芯Pまわりで一体に上下揺動操作されることにより、運転部床下及び運転座席下方を開放した上昇開き状態と、運転部床下及び運転座席下方を閉じた下降閉じ状態とに切り換わる。
【解決手段】 運転部床12aの後端側と、運転座席11下方の縦構造板50の下端側とを連結してある。運転部床12a及び縦構造板50は、運転部床12aの前端側に配置した車体横向き軸芯Pまわりで一体に上下揺動操作されることにより、運転部床下及び運転座席下方を開放した上昇開き状態と、運転部床下及び運転座席下方を閉じた下降閉じ状態とに切り換わる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用運転部を備えた自走車体の車体下部に草刈り装置を連結した乗用型草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の乗用型草刈機として、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
特許文献1に示されるものは、運転座席24などが装備された乗用運転部を備え、この乗用運転部のデッキ55がデッキ前端側に位置するヒンジ57を介して揺動開閉自在に支持されたものである。
【0003】
【特許文献1】USP 6,854,252(第4欄、図1,2,3,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術事項を採用すれば、運転部床としてのデッキを開き操作することにより、運転部床下が開放され、草刈り装置を車体に連結したままにしても、車体上方から床配置用スペースを介して草刈り装置上部などを点検や修理することが可能なものを得ることができた。
【0005】
ところが、従来の技術事項を採用しても、たとえば草刈り装置の後部が運転座席下方に位置するものの場合、床配置用スペースからは草刈り装置後部まで手や工具が届かないとか届きにくく、まだ改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、草刈り装置が開放される広さの面からも、開放操作の面からもより有利に点検や修理などの作業を行うことができる乗用型草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明にあっては、乗用運転部を備えた自走車体の車体下部に草刈り装置を連結した乗用型草刈機において、
前記乗用運転部の運転部床と、運転座席下方に車体上下向きに位置して運転部居住空間を形成する縦構造板とを、床下及び運転座席下方を開放した開き状態と、床下及び運転座席下方を閉じた閉じ状態とに一体揺動自在に支持させてある。
【0008】
すなわち、運転部床と縦構造板を一体に揺動させて開き状態と閉じ状態に切換えることができ、運転部床及び縦構造板を開き状態に切り換えると、運転部床下も運転座席下方も開放されて草刈り装置が床配置用スペースを介して車体上方側に開放され、かつ、縦構造板配置用スペースを介しても車体上方側に開放され、車体上方から両スペースを介して草刈り装置の広範囲にわたって手や工具を届かせたり作用させたりすることができる。
【0009】
従って、本第1発明によると、草刈り装置を車体に連結したままにしても、殊に草刈り装置が運転座席下方まで位置する場合であっても、車体上方から床配置用スペース及び縦構造板配置用スペースの両スペースを介して草刈り装置の広範囲にわたって手や工具を届かせたり作用させたりして楽に点検や修理などの作業を行うことができる。しかも、運転部床と縦構造板を一体に開放して床下及び運転座席下方を操作簡単に開放し、この開放操作の面からも楽に作業を行うことができる。
【0010】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記縦構造板の裏面側に物品収納ポケットを設けてある。
【0011】
すなわち、工具、取扱い説明書などの物品を物品収納ポケットに収納すれば、縦構造板の裏側に格納されて乗り降りや運転操作などの障害にならなくなり、かつ、縦構造板によって雨水などで濡れないようにカバーされた状態になる。
【0012】
従って、本第2発明によると、工具、取扱い説明書などの物品を乗り降りや運転操作などの障害にならないように、かつ、雨水などで濡れないように有利に格納することができる。しかも、縦構造板をカバーに利用して構造簡単に得ることができる。
【0013】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において、前記縦構造板の上端部に、縦構造板の裏面側に折れ曲がった折れ曲り端部を前記物品収納ポケットの開口の上方まで突出した状態で設けてある。
【0014】
すなわち、縦構造板を湾曲など変形しにくいように折れ曲り端部によって補強することができる。物品が物品収納ポケットから抜け出そうとしても折れ曲り端部に当たり、折れ曲り端部が物品の抜け出しを防止するようにすることができる。
【0015】
従って、本第3発明によると、縦構造板を折れ曲り端部によって補強することができるのみならず、折れ曲り端部を抜け出し防止手段に利用して構造の簡略化を図りながら、収納物品の抜け出しを回避することができる。
【0016】
本第4発明にあっては、本第1又は第2発明の構成において、前記運転部床及び前記縦構造板が、運転部床の前端側に位置した車体横向き軸芯まわりで上下揺動開閉自在に支持されている。
【0017】
すなわち、運転部床及び縦構造板が車体横向き軸芯まわりで車体前方側に揺動開放し、運転部床の固定部分やペダルなどに当たって受け止め支持されることによって開き状態を保持するようにすることができる。この場合、物品収納ポケットの開口が下向きになっても、収納物品が縦構造板の折り曲げ端部に当たり、折り曲げ端部が収納物品を受け止め支持して収納物品の物品収納ポケットからの抜け出しを防止するようにすることができる。
【0018】
従って、本第4発明によると、運転部床及び縦構造板を床部分やペダルなどに受け止め支持させるだけで構造簡単に開き状態に保持することができるのみならず、縦構造板の折り曲げ端部を支持手段に利用した簡単な構造によって物品収納ポケットの収納物品の抜け出しを防止することができる。
【0019】
本第5発明にあっては、本第4発明の構成において、前記乗用運転部に駐車ブレーキペダルを設け、前記運転部床及び前記縦構造板が、開き状態で前記駐車ブレーキペダルを覆うように支持されている。
【0020】
すなわち、草刈り装置を点検や修理するなどの作業を行う際、自走車体の駐車ブレーキを掛けておくと、運転部床及び縦構造板を開いて床下及び運転座席下方を開放すると、運転部床及び縦構造板が駐車ブレーキペダルを覆う。これにより、駐車ブレーキペダルを解除されないように運転部床及び縦構造板によってカバーしながら作業を行うことができる。
【0021】
従って、本第5発明によると、運転部床及び縦構造板を駐車ブレーキペダルの覆い手段に利用した簡単な構造によって駐車ブレーキを入り状態に維持しながら点検や修理などの作業を行うことができる。
【0022】
本第6発明にあっては、本第4又は第5発明の構成において、前記乗用運転部に前記草刈り装置を下降操作する下降ペダルを設け、前記運転部床及び前記縦構造板が、開き状態で前記下降ペダルを覆うように支持されている。
【0023】
すなわち、草刈り装置を点検や修理するなどの作業を行う際、運転部床及び縦構造板を開いて床下及び運転座席下方を開放すると、運転部床及び縦構造板が下降ペダルを覆う。これにより、草刈り装置を上昇状態にして作業する場合であっても、下降ペダルを操作されないように運転部床及び縦構造板によってカバーしながら作業を行うことができる。
【0024】
従って、本第6発明によると、運転部床及び縦構造板を下降ペダルの覆い手段に利用した簡単な構造によって草刈り装置を上昇状態に維持しながら点検や修理などの作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、左右一対のキャスタ輪型の遊転自在な前車輪1、左右一対の駆動自在な後車輪2、車体フレーム3の後端部に設けたエンジン4が装備された原動部5、この原動部5の前方側近くに位置する運転座席11が装備された乗用運転部10、前記運転座席11の後側近くに位置する転倒保護枠6を備えた自走車体の車体フレーム3の前後輪間にリンク機構20を介して草刈り装置30を連結し、前記エンジン4の出力を前記左右後輪2が支持されているミッションケース7に位置する動力取り出し軸7aから回転軸8を介して草刈り装置30に伝達するように構成して、乗用型草刈機を構成してある。
【0026】
この草刈機は、芝刈りや草刈り作業を行うものであり、運転座席11の下方に位置する油圧式の昇降シリンダ9を操作すると、この昇降シリンダ9がリンク機構20を車体フレーム3に対して昇降操作することにより、草刈り装置30を刈り刃ハウジング31の前後側に位置するゲージ輪32が地面上に接地した下降作業状態と、前記ゲージ輪32が地面上から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。草刈り装置30を下降作業状態にして自走車体を走行させると、草刈り装置30は、刈り刃ハウジング31の内部の複数箇所で刈り刃ハウジング上下向きの軸芯まわりで回動駆動される刈り刃33によって芝や草刈り処理を行い、刈り草や刈り芝を各刈り刃33の回転によって発生する風によって刈り刃ハウジング31の横一端側に搬送して排出口31aから刈り刃ハウジング31の外部に排出していく。
【0027】
自走車体についてさらに詳述すると、図1,2,4などに示すように、自走車体の乗用運転部10は、左右の後輪フェンダー2aの間に配置した前記運転座席11、この運転座席11の前方下方で車体フレーム3に支持させた運転部床12、この運転部床12の後端側と運転座席11の間に車体上下向きに位置して運転部床12の上面側に運転部居住空間を形成する縦構造板50、前記運転部床12の両横側に乗降ステップ13aを運転部床12の配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さで設けて形成した乗降口13を備えて構成してある。
【0028】
前記運転部10の前記運転座席11の両横側方に操縦レバー14を設け、前記運転座席11の横一側方にアクセルレバー15及び作業クラッチレバー16を設け、前記運転部床12の前端側にブレーキペダル17a、駐車ブレーキペダル17b、上昇ペダル18、下降ペダル19を設けてある。
【0029】
アクセルレバー15は、前記エンジン4のアクセル操作を行うものである。作業クラッチレバー16は、エンジン4から草刈り装置30への伝動を入り切りするように前記ミッションケース7に設けた作業クラッチ(図示せず)を入り切り操作して草刈り装置30を駆動及び停止操作するものである。ブレーキペダル17aは、前記ミッションケース7に設けた走行用ブレーキ(図示せず)を操作して左右後輪2にブレーキを掛けるものである。駐車ブレーキペダル17bは、前記走行用ブレーキを入り状態に保持操作して、左右後輪2に駐車ブレーキを掛けるものである。
【0030】
駐車ブレーキについてさらに詳述する。
図5に示す如くブレーキペダル17aを踏み込み操作しながら駐車ブレーキペダル17bを車体前方側にリターンばね45に抗して踏み込み操作する。すると、駐車ブレーキペダル17bに一体揺動自在に設けてあるフックアーム46が車体後方側に揺動してフックアーム46のフック部46aがブレーキペダル17bのペダルアームに一体揺動自在に設けてある係止片47に係合し、駐車ブレーキペダル17bがリターンばね45に抗して踏み込み状態に保持されてブレーキペダル17aを踏み込み状態に保持する。これによって走行用ブレーキが入り状態に保持されて左右後輪2に駐車ブレーキが掛かる。この状態で駐車ブレーキペダル17bを車体後方側に少し踏み込み操作すると、フックアーム46が車体前方側に揺動して、フックアーム46のフック部46aが係止片47を押し下げ操作しながら車体前方側に揺動して係止片47から外れ、図4に示す如く駐車ブレーキペダル17bがリターンばね45のために非操作状態に復帰し、ブレーキペダル17がリターンばねのために非操作状態に復帰して走行用ブレーキを切り状態に切換え操作し、左右後輪2の駐車ブレーキが解除される。
【0031】
左右の操縦レバー14は、前記エンジン4からの駆動力を前記左右後輪2,2に各別に伝達するように前記ミッションケース7に設けた一対の静油圧式無段変速装置(図示せず)の変速操作部に各別に連動させてあり、左側の操縦レバー14を車体前後方向に揺動操作して左後輪2の静油圧式無段変速装置を変速操作し、右側の操縦レバー14を車体前後方向に揺動操作して右後輪2の静油圧式無段変速装置を変速操作し、これによって左右後輪2,2を共に前進や後進側に同一の駆動速度で駆動することによって自走車体が前進や後進側に直進走行し、左右後輪2,2の駆動速度や駆動方向を相違させることによって自走車体が左や右向きに旋回走行するようになっている。
【0032】
図3,4に示すように、前記上昇ペダル18は、運転部床12の下方で左右の車体メインフレーム3aに回転自在に支持されている車体横向きのペダル支軸42に中間部が相対回転自在に支持された一つのペダルアーム43の前記ペダル支軸42から車体後方向きに延出している後アーム部分43aに支持され、前記下降ペダル19は、前記ペダルアーム43の前記ペダル支軸42から車体前方向きに延出している前アーム部分43bに支持されている。前記ペダルアーム43をペダル支軸42に連結している取り付け部材44は、ペダル支軸43に相対回動自在に支持され、かつ連動ロッド41を介し、前記ミッションケース7の前部に位置する昇降バルブ(図示せず)の操作部(図示せず)に連動されている。
【0033】
つまり、下降ペダル19を踏み込み操作することにより、昇降バルブが昇降シリンダ9を短縮側に操作し、草刈り装置30が昇降シリンダ9によって下降操作され、上昇ペダル18を踏み込み操作することにより、昇降バルブが昇降シリンダ9を伸長側に操作し、草刈り装置30が昇降シリンダ9によって上昇操作される。上昇ペダル18及び下降ペダル19の踏み込み操作を解除することにより、上昇ペダル18も下降ペダル19も昇降バルブが中立状態に自ずと復帰するように備えている中立復帰力によって非操作状態に自ずと復帰し、これとともに昇降バルブが中立状態に復帰して昇降シリンダ9を停止操作し、草刈り装置30の昇降が停止する。
【0034】
図3,4,7などに示すように、前記運転部床12の前記上昇ペダル18が挿通するペダル孔12cを備えた後床部12aを、上昇ペダル18よりも車体前方側で、下降ペダル18、ブレーキペダル17a、駐車ブレーキペダル17bよりも車体後方側に配置した車体横向きの分割線Bで前床部12bと分割した状態に構成するとともに、後床部12aと前記縦構造板50を、後床部12aの後端側と縦構造板50の下端側とで連結された一体の構造体に構成してある。後床部12aの前端側を車体フレーム3の車体横向き軸芯Pまわりで回動自在に連結してあり、後床部12aと縦構造板50は、前記車体横向き軸芯Pまわりで一体に車体フレーム3に対して上下揺動自在に支持されている。また、後床部12aと縦構造板50は、車体横向き軸芯Pまわりで上下揺動されることにより、図4,6に示す如く後床部12aの後端側の車体横方向での複数箇所が車体フレーム3に固定のクッションゴム51,52に受け止め支持され、後構造板50の上端部に後構造板50の裏面側に突出するように折れ曲り成形して設けてある折れ曲り端部50aが座席支持フレーム3bの前端部の上側に被さって運転部床下及び運転座席下方を閉じた下降閉じ状態と、図5に示す如く後床部12aが車体フレーム3から上方に離れ、後構造板50が座席支持フレーム3bから前方上方に離れて運転部床下及び運転座席下方を開放した上昇開き状態と切り換わるように構成してある。
【0035】
図5に示すように、後床部12a及び縦構造板50は、上昇開き状態に上昇操作された状態では、前記下降ペダル19、踏み込み状態や非操作状態にある前記ブレーキペダル17a及び駐車ブレーキペダル17bの上方近くに位置して各ペダル19,17a,17bを覆い、かつ、縦構造板50の表面側に位置する固定ハンドル55で前記前床部12bに当たったり、縦構造板50の表面側でブレーキペダル17aに当たったりして上昇開き状態に保持された状態になるように構成してある。
【0036】
図6,7に示すように、前記クッションゴム51,52のうち、後床部12aの車体横方向での中間部に支持作用するセンターゴム51は、後床部12aが単に乗るだけの平坦面で後床部12aを受け止め支持するように構成してある。前記クッションゴム51,52のうち、前記センターゴム51よりも車体横外側に位置するサイドクッションゴム52は、後床部12aの裏面側に固定されている屈曲丸棒53を左右一対の挟持片52aによって挟持して後床部12a及び縦構造板50が下降閉じ状態から浮き上がることを抑制するように構成してある。
【0037】
図4,7などに示すように、前記縦構造板50の裏面側に箱形に成形した折り曲げ板金を付設して形成した物品収納ポケット54を設けてある。この物品収納ポケット54は、縦構造板50の前記折り曲げ端部50aが物品収納ポケット54の車体上方向きの出し入れ開口54aの上方まで突出して、この出し入れ開口54aの上方が折り曲げ端部50aによって覆われた状態になるように構成してある。
【0038】
つまり、物品収納ポケット54に工具や取扱い説明書などを収容することにより、その収容物品を乗り降りや運転操作などの障害にならないように縦構造板50の裏側に格納しておくことができ、かつ、雨水などで濡れないように縦構造板50によってカバーしながら格納しておくことができる。
【0039】
草刈り装置30の刈り刃ハウジング31の上面側に前記回転軸8による駆動力を入力するように、かつ、この駆動力を複数の刈り刃33に伝達するように設けてある駆動機構34(図2参照)を点検や修理するなどの作業を行うに当たり、草刈り装置30を車体に連結したままにしても、縦構造板50の前記固定ハンドル55を車体前方に引き上げ操作することにより、後床部12a及び縦構造板50が上昇開き状態に上昇して運転部床下及び運転座席下方が開放され、車体上方から後床部配置用スペース及び縦構造板配置用スペースを介して草刈り装置30の上面側に手や工具を届かせたり作用させたりして作業を行うことができる。このとき、左右後輪2に駐車ブレーキを掛けてあっても、駐車ブレーキペダル17bが操作されないように後床部12a及び縦構造板50によって覆われており、駐車ブレーキペダル17bが操作されて駐車ブレーキが解除されることを回避しながら作業をすることができる。また、下降ペダル19も操作されないように後床部12a及び縦構造板50によって覆われており、下降ペダル19が操作されて草刈り装置30が下降することを回避しながら作業をすることができる。また、このとき、物品収納ポケット54の出入れ開口54aが下向きになっても、収納物品が縦構造板50の折り曲げ端部50aに当たって支持され、収納物品が抜け出ることを折り曲げ端部50aによって防止することができる。
【0040】
図8,9などに示すように、左右前輪1を支持する前車軸フレーム60の中間部を、車体フレーム3に固定された車軸支持体61の前後一対の支持板61aに連結軸62を介して回動自在に連結してあり、前車軸フレーム60は、連結軸62のローリング軸芯Rまわりで車体フレーム3に対して上下揺動して左右車輪1が前記ローリング軸芯Rまわりで自走車体に対してローリングすることを許容するようになっている。
【0041】
図8などに示すように、前記車軸支持体61の前記前後一対の支持板61aの前記連結軸62よりも車体横方向での一端側に位置する部位の上部に一対のローリング規制ピン孔63を設け、前記前後一対の支持板61aの前記連結軸62の両横側に位置する部位にローリングロックピン孔64を設けてある。
【0042】
すなわち、図8,9、図11(a)に示すように、前記各ローリング規制ピン孔63に脱着自在な丸軸ピン65を装着し、丸軸ピン65に脱着自在に装着するように構成したベータピン66と、丸軸ピン65の折れ曲げ端部65aとによって丸軸ピン65の外れ止めを行っておく。すると、前車軸フレーム60がローリング軸芯Rまわりで上下揺動するに伴い、ローリング軸芯Rに対して丸軸ピン存在側とは反対側では、車軸支持体61の前記前記一対の支持板61aの上端部を連結している連結板61bが前車軸フレーム60に上方から当接し、ローリング軸芯Rに対して連結板存在側とは反対側では、前記丸軸ピン65が前車軸フレーム60に上方から当接し、前車軸フレーム60が車体フレーム3に対して平行姿勢から上下揺動する揺動角が連結板61b及び丸軸ピン65によって規制される。
【0043】
これにより、走行地面の凹凸に前車輪1が入り込んだり乗り上がったりしても、左右前輪1がローリング軸芯Rまわりで車体に対してローリングし、自走車体を車体横方向で水平又はそれに近い状態に維持しながら走行することができる。このとき、左右前輪1は、前車軸フレーム60の連結板61bや丸軸ピン65に対する当接によって設定される設定角度内でローリングするようにローリング角規制された状態でローリングする。
【0044】
図10、図11(b)に示すように、前記各ローリングロックピン孔64に、前記ローリング規制ピン孔63から抜き外した丸軸ピン65を装着するとともに、丸軸ピン65に装着した前記ベータピン66と、丸軸ピン65の折れ曲げ端部65aとによって丸軸ピン65の外れ止めを行っておく。すると、各丸軸ピン65が前車軸フレーム60を車軸支持体61に揺動不能に固定する。
【0045】
これにより、走行地面の凹凸に前車輪1が入り込んだり乗り上がったりしても左右前輪1がローリングしないように左右前輪1をローリングロック状態にしながら走行することができる。
【0046】
図8,9などに示すように、前車軸フレーム60にシリンダブラケット70を一体揺動自在に設け、このシリンダブラケット70の長孔70aに摺動自在に係入した連結ピン71にシリンダチューブが連結されたネジシリンダ72のロッドを、車体フレーム3に回動自在に連結されたシリンダブラケット73に相対回動自在に支持させてある。図3などに示すように、前記前車軸フレーム60の両端部、及び各前車輪1の前輪支持フオーク74に前輪ロックピン孔75を設けてある。図8に示すように、前記車軸支持体61の前記一対の支持板61aの前記連結軸62よりも車体横方向での一端側に落下止めピン孔76を設けてある。シリンダブラケット70の長孔70aは、シリンダブラケット70が前車軸フレーム60と共に揺動することを許容し、左右前輪1のローリングを可能にするものである。
【0047】
すなわち、図8(b)、図11(c)に示すように、前車軸フレーム一端側における前車軸フレーム60の前記前輪ロックピン孔75と前輪支持フォーク74の前輪ロックピン孔75にわたり、前記ローリング規制ピン孔63や前記ローリングロックピン孔64から抜き外した丸軸ピン65を装着して、前車輪1を前車軸フレーム60に車体横向き姿勢でロックされた状態にし、ネジシリンダ72に折り畳み自在に装着された操作ハンドル77を車体フレーム3が有するハンドルホルダー78(図3,9参照)から取り外し、ネジシリンダ72から車体横外側向きに延出した使用姿勢にして回転操作することにより、ネジシリンダ72のロッドを回転操作してネジシリンダ72を伸長側に駆動する。すると、ネジシリンダ72の駆動力により、車軸フレーム60が前記前車輪1を接地部材にしてローリング軸芯Rまわりで車体フレーム3に対して揺動操作され、前車輪1を反力部材にして車体フレーム3の前端側を押し上げ操作する。図11(c)に示すように、このとき、前車軸フレーム他端側における前車軸フレーム60の前記前輪ロックピン孔75と前輪支持フォーク74の前輪ロックピン孔75にわたり、前記ローリング規制ピン孔63や前記ローリングロックピン孔64から抜き外した丸軸ピン65を装着して、前車輪1を前車軸フレーム60に斜め向き姿勢でロックされた状態にしておくことにより、この前車輪1が車体フレーム3に干渉せずに上昇していく。すると、自走車体が前上がり状態の傾斜姿勢になり、草刈り装置30の刈り刃ハウジング31を底面側が車体前方向きになった立ち姿勢にし、車体前方から点検や修理などの作業を行うことが可能になる。前車軸フレーム60による車体前端側の持ち上げが完了すると、図8(b)に示すように、それまで上昇側前車輪の方に装着していた丸軸ピン65を前車軸フレーム60及び前輪支持フオーク74から抜き外して車軸支持体61の前記落下止めピン孔76に装着する。すると、この丸軸ピン65が前車軸フレーム60を下方から受け止めて揺動しないように車軸支持体61にロックし、車体前端が車体荷重のために下降することを防止しながら点検や修理などの作業を行うことができる。
【0048】
上記した如く前記各丸軸ピン65を、ローリング規制ピン孔63、ローリングロックピン孔64、落下止めピン孔76、前輪ロックピン孔75に付け替えて、前車輪1のローリング規制及びローリングロック、車体の落下止め、前車輪1の前車軸フレーム60に対する姿勢決めのそれぞれに使用することができるように、ローリング規制ピン孔63、ローリングロックピン孔64、落下止めピン孔76、前輪ロックピン孔75の仕様を同一にしてある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】乗用型草刈機全体の側面図
【図2】乗用型草刈機全体の平面図
【図3】運転部、前輪支持部の平面図
【図4】運転部床及び縦構造板の閉じ状態での断面図
【図5】運転部床及び縦構造板の開き状態での断面図
【図6】縦構造板の正面図
【図7】運転部床及び縦構造板の取り外し状態での斜視図
【図8】(a)は、前車軸フレームの前輪ローリング許容状態での正面図、(b)は、前車軸フレームの車体持ち上げ状態での正面図
【図9】丸軸ピンのローリング規制ピン孔に装着された状態での側面図
【図10】丸軸ピンのローリングロックピン孔に装着された状態での側面図
【図11】(a)は、前車軸フレームの前輪ローリング許容状態での平面図、(b)は、前車軸フレームのローリングロック状態での平面図、(c)は、前車軸フレームの車体持ち上げ状態での平面図
【符号の説明】
【0050】
10 乗用運転部
12a 運転部床
17b 駐車ブレーキペダル
19 下降ペダル
50 縦構造板
50a 折れ曲り端部
54 物品収納ポケット
P 運転部床揺動軸芯
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用運転部を備えた自走車体の車体下部に草刈り装置を連結した乗用型草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の乗用型草刈機として、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
特許文献1に示されるものは、運転座席24などが装備された乗用運転部を備え、この乗用運転部のデッキ55がデッキ前端側に位置するヒンジ57を介して揺動開閉自在に支持されたものである。
【0003】
【特許文献1】USP 6,854,252(第4欄、図1,2,3,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術事項を採用すれば、運転部床としてのデッキを開き操作することにより、運転部床下が開放され、草刈り装置を車体に連結したままにしても、車体上方から床配置用スペースを介して草刈り装置上部などを点検や修理することが可能なものを得ることができた。
【0005】
ところが、従来の技術事項を採用しても、たとえば草刈り装置の後部が運転座席下方に位置するものの場合、床配置用スペースからは草刈り装置後部まで手や工具が届かないとか届きにくく、まだ改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、草刈り装置が開放される広さの面からも、開放操作の面からもより有利に点検や修理などの作業を行うことができる乗用型草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明にあっては、乗用運転部を備えた自走車体の車体下部に草刈り装置を連結した乗用型草刈機において、
前記乗用運転部の運転部床と、運転座席下方に車体上下向きに位置して運転部居住空間を形成する縦構造板とを、床下及び運転座席下方を開放した開き状態と、床下及び運転座席下方を閉じた閉じ状態とに一体揺動自在に支持させてある。
【0008】
すなわち、運転部床と縦構造板を一体に揺動させて開き状態と閉じ状態に切換えることができ、運転部床及び縦構造板を開き状態に切り換えると、運転部床下も運転座席下方も開放されて草刈り装置が床配置用スペースを介して車体上方側に開放され、かつ、縦構造板配置用スペースを介しても車体上方側に開放され、車体上方から両スペースを介して草刈り装置の広範囲にわたって手や工具を届かせたり作用させたりすることができる。
【0009】
従って、本第1発明によると、草刈り装置を車体に連結したままにしても、殊に草刈り装置が運転座席下方まで位置する場合であっても、車体上方から床配置用スペース及び縦構造板配置用スペースの両スペースを介して草刈り装置の広範囲にわたって手や工具を届かせたり作用させたりして楽に点検や修理などの作業を行うことができる。しかも、運転部床と縦構造板を一体に開放して床下及び運転座席下方を操作簡単に開放し、この開放操作の面からも楽に作業を行うことができる。
【0010】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記縦構造板の裏面側に物品収納ポケットを設けてある。
【0011】
すなわち、工具、取扱い説明書などの物品を物品収納ポケットに収納すれば、縦構造板の裏側に格納されて乗り降りや運転操作などの障害にならなくなり、かつ、縦構造板によって雨水などで濡れないようにカバーされた状態になる。
【0012】
従って、本第2発明によると、工具、取扱い説明書などの物品を乗り降りや運転操作などの障害にならないように、かつ、雨水などで濡れないように有利に格納することができる。しかも、縦構造板をカバーに利用して構造簡単に得ることができる。
【0013】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において、前記縦構造板の上端部に、縦構造板の裏面側に折れ曲がった折れ曲り端部を前記物品収納ポケットの開口の上方まで突出した状態で設けてある。
【0014】
すなわち、縦構造板を湾曲など変形しにくいように折れ曲り端部によって補強することができる。物品が物品収納ポケットから抜け出そうとしても折れ曲り端部に当たり、折れ曲り端部が物品の抜け出しを防止するようにすることができる。
【0015】
従って、本第3発明によると、縦構造板を折れ曲り端部によって補強することができるのみならず、折れ曲り端部を抜け出し防止手段に利用して構造の簡略化を図りながら、収納物品の抜け出しを回避することができる。
【0016】
本第4発明にあっては、本第1又は第2発明の構成において、前記運転部床及び前記縦構造板が、運転部床の前端側に位置した車体横向き軸芯まわりで上下揺動開閉自在に支持されている。
【0017】
すなわち、運転部床及び縦構造板が車体横向き軸芯まわりで車体前方側に揺動開放し、運転部床の固定部分やペダルなどに当たって受け止め支持されることによって開き状態を保持するようにすることができる。この場合、物品収納ポケットの開口が下向きになっても、収納物品が縦構造板の折り曲げ端部に当たり、折り曲げ端部が収納物品を受け止め支持して収納物品の物品収納ポケットからの抜け出しを防止するようにすることができる。
【0018】
従って、本第4発明によると、運転部床及び縦構造板を床部分やペダルなどに受け止め支持させるだけで構造簡単に開き状態に保持することができるのみならず、縦構造板の折り曲げ端部を支持手段に利用した簡単な構造によって物品収納ポケットの収納物品の抜け出しを防止することができる。
【0019】
本第5発明にあっては、本第4発明の構成において、前記乗用運転部に駐車ブレーキペダルを設け、前記運転部床及び前記縦構造板が、開き状態で前記駐車ブレーキペダルを覆うように支持されている。
【0020】
すなわち、草刈り装置を点検や修理するなどの作業を行う際、自走車体の駐車ブレーキを掛けておくと、運転部床及び縦構造板を開いて床下及び運転座席下方を開放すると、運転部床及び縦構造板が駐車ブレーキペダルを覆う。これにより、駐車ブレーキペダルを解除されないように運転部床及び縦構造板によってカバーしながら作業を行うことができる。
【0021】
従って、本第5発明によると、運転部床及び縦構造板を駐車ブレーキペダルの覆い手段に利用した簡単な構造によって駐車ブレーキを入り状態に維持しながら点検や修理などの作業を行うことができる。
【0022】
本第6発明にあっては、本第4又は第5発明の構成において、前記乗用運転部に前記草刈り装置を下降操作する下降ペダルを設け、前記運転部床及び前記縦構造板が、開き状態で前記下降ペダルを覆うように支持されている。
【0023】
すなわち、草刈り装置を点検や修理するなどの作業を行う際、運転部床及び縦構造板を開いて床下及び運転座席下方を開放すると、運転部床及び縦構造板が下降ペダルを覆う。これにより、草刈り装置を上昇状態にして作業する場合であっても、下降ペダルを操作されないように運転部床及び縦構造板によってカバーしながら作業を行うことができる。
【0024】
従って、本第6発明によると、運転部床及び縦構造板を下降ペダルの覆い手段に利用した簡単な構造によって草刈り装置を上昇状態に維持しながら点検や修理などの作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、左右一対のキャスタ輪型の遊転自在な前車輪1、左右一対の駆動自在な後車輪2、車体フレーム3の後端部に設けたエンジン4が装備された原動部5、この原動部5の前方側近くに位置する運転座席11が装備された乗用運転部10、前記運転座席11の後側近くに位置する転倒保護枠6を備えた自走車体の車体フレーム3の前後輪間にリンク機構20を介して草刈り装置30を連結し、前記エンジン4の出力を前記左右後輪2が支持されているミッションケース7に位置する動力取り出し軸7aから回転軸8を介して草刈り装置30に伝達するように構成して、乗用型草刈機を構成してある。
【0026】
この草刈機は、芝刈りや草刈り作業を行うものであり、運転座席11の下方に位置する油圧式の昇降シリンダ9を操作すると、この昇降シリンダ9がリンク機構20を車体フレーム3に対して昇降操作することにより、草刈り装置30を刈り刃ハウジング31の前後側に位置するゲージ輪32が地面上に接地した下降作業状態と、前記ゲージ輪32が地面上から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。草刈り装置30を下降作業状態にして自走車体を走行させると、草刈り装置30は、刈り刃ハウジング31の内部の複数箇所で刈り刃ハウジング上下向きの軸芯まわりで回動駆動される刈り刃33によって芝や草刈り処理を行い、刈り草や刈り芝を各刈り刃33の回転によって発生する風によって刈り刃ハウジング31の横一端側に搬送して排出口31aから刈り刃ハウジング31の外部に排出していく。
【0027】
自走車体についてさらに詳述すると、図1,2,4などに示すように、自走車体の乗用運転部10は、左右の後輪フェンダー2aの間に配置した前記運転座席11、この運転座席11の前方下方で車体フレーム3に支持させた運転部床12、この運転部床12の後端側と運転座席11の間に車体上下向きに位置して運転部床12の上面側に運転部居住空間を形成する縦構造板50、前記運転部床12の両横側に乗降ステップ13aを運転部床12の配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さで設けて形成した乗降口13を備えて構成してある。
【0028】
前記運転部10の前記運転座席11の両横側方に操縦レバー14を設け、前記運転座席11の横一側方にアクセルレバー15及び作業クラッチレバー16を設け、前記運転部床12の前端側にブレーキペダル17a、駐車ブレーキペダル17b、上昇ペダル18、下降ペダル19を設けてある。
【0029】
アクセルレバー15は、前記エンジン4のアクセル操作を行うものである。作業クラッチレバー16は、エンジン4から草刈り装置30への伝動を入り切りするように前記ミッションケース7に設けた作業クラッチ(図示せず)を入り切り操作して草刈り装置30を駆動及び停止操作するものである。ブレーキペダル17aは、前記ミッションケース7に設けた走行用ブレーキ(図示せず)を操作して左右後輪2にブレーキを掛けるものである。駐車ブレーキペダル17bは、前記走行用ブレーキを入り状態に保持操作して、左右後輪2に駐車ブレーキを掛けるものである。
【0030】
駐車ブレーキについてさらに詳述する。
図5に示す如くブレーキペダル17aを踏み込み操作しながら駐車ブレーキペダル17bを車体前方側にリターンばね45に抗して踏み込み操作する。すると、駐車ブレーキペダル17bに一体揺動自在に設けてあるフックアーム46が車体後方側に揺動してフックアーム46のフック部46aがブレーキペダル17bのペダルアームに一体揺動自在に設けてある係止片47に係合し、駐車ブレーキペダル17bがリターンばね45に抗して踏み込み状態に保持されてブレーキペダル17aを踏み込み状態に保持する。これによって走行用ブレーキが入り状態に保持されて左右後輪2に駐車ブレーキが掛かる。この状態で駐車ブレーキペダル17bを車体後方側に少し踏み込み操作すると、フックアーム46が車体前方側に揺動して、フックアーム46のフック部46aが係止片47を押し下げ操作しながら車体前方側に揺動して係止片47から外れ、図4に示す如く駐車ブレーキペダル17bがリターンばね45のために非操作状態に復帰し、ブレーキペダル17がリターンばねのために非操作状態に復帰して走行用ブレーキを切り状態に切換え操作し、左右後輪2の駐車ブレーキが解除される。
【0031】
左右の操縦レバー14は、前記エンジン4からの駆動力を前記左右後輪2,2に各別に伝達するように前記ミッションケース7に設けた一対の静油圧式無段変速装置(図示せず)の変速操作部に各別に連動させてあり、左側の操縦レバー14を車体前後方向に揺動操作して左後輪2の静油圧式無段変速装置を変速操作し、右側の操縦レバー14を車体前後方向に揺動操作して右後輪2の静油圧式無段変速装置を変速操作し、これによって左右後輪2,2を共に前進や後進側に同一の駆動速度で駆動することによって自走車体が前進や後進側に直進走行し、左右後輪2,2の駆動速度や駆動方向を相違させることによって自走車体が左や右向きに旋回走行するようになっている。
【0032】
図3,4に示すように、前記上昇ペダル18は、運転部床12の下方で左右の車体メインフレーム3aに回転自在に支持されている車体横向きのペダル支軸42に中間部が相対回転自在に支持された一つのペダルアーム43の前記ペダル支軸42から車体後方向きに延出している後アーム部分43aに支持され、前記下降ペダル19は、前記ペダルアーム43の前記ペダル支軸42から車体前方向きに延出している前アーム部分43bに支持されている。前記ペダルアーム43をペダル支軸42に連結している取り付け部材44は、ペダル支軸43に相対回動自在に支持され、かつ連動ロッド41を介し、前記ミッションケース7の前部に位置する昇降バルブ(図示せず)の操作部(図示せず)に連動されている。
【0033】
つまり、下降ペダル19を踏み込み操作することにより、昇降バルブが昇降シリンダ9を短縮側に操作し、草刈り装置30が昇降シリンダ9によって下降操作され、上昇ペダル18を踏み込み操作することにより、昇降バルブが昇降シリンダ9を伸長側に操作し、草刈り装置30が昇降シリンダ9によって上昇操作される。上昇ペダル18及び下降ペダル19の踏み込み操作を解除することにより、上昇ペダル18も下降ペダル19も昇降バルブが中立状態に自ずと復帰するように備えている中立復帰力によって非操作状態に自ずと復帰し、これとともに昇降バルブが中立状態に復帰して昇降シリンダ9を停止操作し、草刈り装置30の昇降が停止する。
【0034】
図3,4,7などに示すように、前記運転部床12の前記上昇ペダル18が挿通するペダル孔12cを備えた後床部12aを、上昇ペダル18よりも車体前方側で、下降ペダル18、ブレーキペダル17a、駐車ブレーキペダル17bよりも車体後方側に配置した車体横向きの分割線Bで前床部12bと分割した状態に構成するとともに、後床部12aと前記縦構造板50を、後床部12aの後端側と縦構造板50の下端側とで連結された一体の構造体に構成してある。後床部12aの前端側を車体フレーム3の車体横向き軸芯Pまわりで回動自在に連結してあり、後床部12aと縦構造板50は、前記車体横向き軸芯Pまわりで一体に車体フレーム3に対して上下揺動自在に支持されている。また、後床部12aと縦構造板50は、車体横向き軸芯Pまわりで上下揺動されることにより、図4,6に示す如く後床部12aの後端側の車体横方向での複数箇所が車体フレーム3に固定のクッションゴム51,52に受け止め支持され、後構造板50の上端部に後構造板50の裏面側に突出するように折れ曲り成形して設けてある折れ曲り端部50aが座席支持フレーム3bの前端部の上側に被さって運転部床下及び運転座席下方を閉じた下降閉じ状態と、図5に示す如く後床部12aが車体フレーム3から上方に離れ、後構造板50が座席支持フレーム3bから前方上方に離れて運転部床下及び運転座席下方を開放した上昇開き状態と切り換わるように構成してある。
【0035】
図5に示すように、後床部12a及び縦構造板50は、上昇開き状態に上昇操作された状態では、前記下降ペダル19、踏み込み状態や非操作状態にある前記ブレーキペダル17a及び駐車ブレーキペダル17bの上方近くに位置して各ペダル19,17a,17bを覆い、かつ、縦構造板50の表面側に位置する固定ハンドル55で前記前床部12bに当たったり、縦構造板50の表面側でブレーキペダル17aに当たったりして上昇開き状態に保持された状態になるように構成してある。
【0036】
図6,7に示すように、前記クッションゴム51,52のうち、後床部12aの車体横方向での中間部に支持作用するセンターゴム51は、後床部12aが単に乗るだけの平坦面で後床部12aを受け止め支持するように構成してある。前記クッションゴム51,52のうち、前記センターゴム51よりも車体横外側に位置するサイドクッションゴム52は、後床部12aの裏面側に固定されている屈曲丸棒53を左右一対の挟持片52aによって挟持して後床部12a及び縦構造板50が下降閉じ状態から浮き上がることを抑制するように構成してある。
【0037】
図4,7などに示すように、前記縦構造板50の裏面側に箱形に成形した折り曲げ板金を付設して形成した物品収納ポケット54を設けてある。この物品収納ポケット54は、縦構造板50の前記折り曲げ端部50aが物品収納ポケット54の車体上方向きの出し入れ開口54aの上方まで突出して、この出し入れ開口54aの上方が折り曲げ端部50aによって覆われた状態になるように構成してある。
【0038】
つまり、物品収納ポケット54に工具や取扱い説明書などを収容することにより、その収容物品を乗り降りや運転操作などの障害にならないように縦構造板50の裏側に格納しておくことができ、かつ、雨水などで濡れないように縦構造板50によってカバーしながら格納しておくことができる。
【0039】
草刈り装置30の刈り刃ハウジング31の上面側に前記回転軸8による駆動力を入力するように、かつ、この駆動力を複数の刈り刃33に伝達するように設けてある駆動機構34(図2参照)を点検や修理するなどの作業を行うに当たり、草刈り装置30を車体に連結したままにしても、縦構造板50の前記固定ハンドル55を車体前方に引き上げ操作することにより、後床部12a及び縦構造板50が上昇開き状態に上昇して運転部床下及び運転座席下方が開放され、車体上方から後床部配置用スペース及び縦構造板配置用スペースを介して草刈り装置30の上面側に手や工具を届かせたり作用させたりして作業を行うことができる。このとき、左右後輪2に駐車ブレーキを掛けてあっても、駐車ブレーキペダル17bが操作されないように後床部12a及び縦構造板50によって覆われており、駐車ブレーキペダル17bが操作されて駐車ブレーキが解除されることを回避しながら作業をすることができる。また、下降ペダル19も操作されないように後床部12a及び縦構造板50によって覆われており、下降ペダル19が操作されて草刈り装置30が下降することを回避しながら作業をすることができる。また、このとき、物品収納ポケット54の出入れ開口54aが下向きになっても、収納物品が縦構造板50の折り曲げ端部50aに当たって支持され、収納物品が抜け出ることを折り曲げ端部50aによって防止することができる。
【0040】
図8,9などに示すように、左右前輪1を支持する前車軸フレーム60の中間部を、車体フレーム3に固定された車軸支持体61の前後一対の支持板61aに連結軸62を介して回動自在に連結してあり、前車軸フレーム60は、連結軸62のローリング軸芯Rまわりで車体フレーム3に対して上下揺動して左右車輪1が前記ローリング軸芯Rまわりで自走車体に対してローリングすることを許容するようになっている。
【0041】
図8などに示すように、前記車軸支持体61の前記前後一対の支持板61aの前記連結軸62よりも車体横方向での一端側に位置する部位の上部に一対のローリング規制ピン孔63を設け、前記前後一対の支持板61aの前記連結軸62の両横側に位置する部位にローリングロックピン孔64を設けてある。
【0042】
すなわち、図8,9、図11(a)に示すように、前記各ローリング規制ピン孔63に脱着自在な丸軸ピン65を装着し、丸軸ピン65に脱着自在に装着するように構成したベータピン66と、丸軸ピン65の折れ曲げ端部65aとによって丸軸ピン65の外れ止めを行っておく。すると、前車軸フレーム60がローリング軸芯Rまわりで上下揺動するに伴い、ローリング軸芯Rに対して丸軸ピン存在側とは反対側では、車軸支持体61の前記前記一対の支持板61aの上端部を連結している連結板61bが前車軸フレーム60に上方から当接し、ローリング軸芯Rに対して連結板存在側とは反対側では、前記丸軸ピン65が前車軸フレーム60に上方から当接し、前車軸フレーム60が車体フレーム3に対して平行姿勢から上下揺動する揺動角が連結板61b及び丸軸ピン65によって規制される。
【0043】
これにより、走行地面の凹凸に前車輪1が入り込んだり乗り上がったりしても、左右前輪1がローリング軸芯Rまわりで車体に対してローリングし、自走車体を車体横方向で水平又はそれに近い状態に維持しながら走行することができる。このとき、左右前輪1は、前車軸フレーム60の連結板61bや丸軸ピン65に対する当接によって設定される設定角度内でローリングするようにローリング角規制された状態でローリングする。
【0044】
図10、図11(b)に示すように、前記各ローリングロックピン孔64に、前記ローリング規制ピン孔63から抜き外した丸軸ピン65を装着するとともに、丸軸ピン65に装着した前記ベータピン66と、丸軸ピン65の折れ曲げ端部65aとによって丸軸ピン65の外れ止めを行っておく。すると、各丸軸ピン65が前車軸フレーム60を車軸支持体61に揺動不能に固定する。
【0045】
これにより、走行地面の凹凸に前車輪1が入り込んだり乗り上がったりしても左右前輪1がローリングしないように左右前輪1をローリングロック状態にしながら走行することができる。
【0046】
図8,9などに示すように、前車軸フレーム60にシリンダブラケット70を一体揺動自在に設け、このシリンダブラケット70の長孔70aに摺動自在に係入した連結ピン71にシリンダチューブが連結されたネジシリンダ72のロッドを、車体フレーム3に回動自在に連結されたシリンダブラケット73に相対回動自在に支持させてある。図3などに示すように、前記前車軸フレーム60の両端部、及び各前車輪1の前輪支持フオーク74に前輪ロックピン孔75を設けてある。図8に示すように、前記車軸支持体61の前記一対の支持板61aの前記連結軸62よりも車体横方向での一端側に落下止めピン孔76を設けてある。シリンダブラケット70の長孔70aは、シリンダブラケット70が前車軸フレーム60と共に揺動することを許容し、左右前輪1のローリングを可能にするものである。
【0047】
すなわち、図8(b)、図11(c)に示すように、前車軸フレーム一端側における前車軸フレーム60の前記前輪ロックピン孔75と前輪支持フォーク74の前輪ロックピン孔75にわたり、前記ローリング規制ピン孔63や前記ローリングロックピン孔64から抜き外した丸軸ピン65を装着して、前車輪1を前車軸フレーム60に車体横向き姿勢でロックされた状態にし、ネジシリンダ72に折り畳み自在に装着された操作ハンドル77を車体フレーム3が有するハンドルホルダー78(図3,9参照)から取り外し、ネジシリンダ72から車体横外側向きに延出した使用姿勢にして回転操作することにより、ネジシリンダ72のロッドを回転操作してネジシリンダ72を伸長側に駆動する。すると、ネジシリンダ72の駆動力により、車軸フレーム60が前記前車輪1を接地部材にしてローリング軸芯Rまわりで車体フレーム3に対して揺動操作され、前車輪1を反力部材にして車体フレーム3の前端側を押し上げ操作する。図11(c)に示すように、このとき、前車軸フレーム他端側における前車軸フレーム60の前記前輪ロックピン孔75と前輪支持フォーク74の前輪ロックピン孔75にわたり、前記ローリング規制ピン孔63や前記ローリングロックピン孔64から抜き外した丸軸ピン65を装着して、前車輪1を前車軸フレーム60に斜め向き姿勢でロックされた状態にしておくことにより、この前車輪1が車体フレーム3に干渉せずに上昇していく。すると、自走車体が前上がり状態の傾斜姿勢になり、草刈り装置30の刈り刃ハウジング31を底面側が車体前方向きになった立ち姿勢にし、車体前方から点検や修理などの作業を行うことが可能になる。前車軸フレーム60による車体前端側の持ち上げが完了すると、図8(b)に示すように、それまで上昇側前車輪の方に装着していた丸軸ピン65を前車軸フレーム60及び前輪支持フオーク74から抜き外して車軸支持体61の前記落下止めピン孔76に装着する。すると、この丸軸ピン65が前車軸フレーム60を下方から受け止めて揺動しないように車軸支持体61にロックし、車体前端が車体荷重のために下降することを防止しながら点検や修理などの作業を行うことができる。
【0048】
上記した如く前記各丸軸ピン65を、ローリング規制ピン孔63、ローリングロックピン孔64、落下止めピン孔76、前輪ロックピン孔75に付け替えて、前車輪1のローリング規制及びローリングロック、車体の落下止め、前車輪1の前車軸フレーム60に対する姿勢決めのそれぞれに使用することができるように、ローリング規制ピン孔63、ローリングロックピン孔64、落下止めピン孔76、前輪ロックピン孔75の仕様を同一にしてある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】乗用型草刈機全体の側面図
【図2】乗用型草刈機全体の平面図
【図3】運転部、前輪支持部の平面図
【図4】運転部床及び縦構造板の閉じ状態での断面図
【図5】運転部床及び縦構造板の開き状態での断面図
【図6】縦構造板の正面図
【図7】運転部床及び縦構造板の取り外し状態での斜視図
【図8】(a)は、前車軸フレームの前輪ローリング許容状態での正面図、(b)は、前車軸フレームの車体持ち上げ状態での正面図
【図9】丸軸ピンのローリング規制ピン孔に装着された状態での側面図
【図10】丸軸ピンのローリングロックピン孔に装着された状態での側面図
【図11】(a)は、前車軸フレームの前輪ローリング許容状態での平面図、(b)は、前車軸フレームのローリングロック状態での平面図、(c)は、前車軸フレームの車体持ち上げ状態での平面図
【符号の説明】
【0050】
10 乗用運転部
12a 運転部床
17b 駐車ブレーキペダル
19 下降ペダル
50 縦構造板
50a 折れ曲り端部
54 物品収納ポケット
P 運転部床揺動軸芯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用運転部を備えた自走車体の車体下部に草刈り装置を連結した乗用型草刈機であって、
前記乗用運転部の運転部床と、運転座席下方に車体上下向きに位置して運転部居住空間を形成する縦構造板とを、床下及び運転座席下方を開放した開き状態と、床下及び運転座席下方を閉じた閉じ状態とに一体揺動自在に支持させてある乗用型草刈機。
【請求項2】
前記縦構造板の裏面側に物品収納ポケットを設けてある請求項1記載の乗用型草刈機。
【請求項3】
前記縦構造板の上端部に、縦構造板の裏面側に折れ曲がった折れ曲り端部を前記物品収納ポケットの開口の上方まで突出した状態で設けてある請求項2記載の乗用型草刈機。
【請求項4】
前記運転部床及び前記縦構造板が、運転部床の前端側に位置した車体横向き軸芯まわりで上下揺動開閉自在に支持されている請求項1又は2記載の乗用型草刈機。
【請求項5】
前記乗用運転部に駐車ブレーキペダルを設け、
前記運転部床及び前記縦構造板が、開き状態で前記駐車ブレーキペダルを覆うように支持されている請求項4記載の乗用型草刈機。
【請求項6】
前記乗用運転部に前記草刈り装置を下降操作する下降ペダルを設け、
前記運転部床及び前記縦構造板が、開き状態で前記下降ペダルを覆うように支持されている請求項4又は5記載の乗用型草刈機。
【請求項1】
乗用運転部を備えた自走車体の車体下部に草刈り装置を連結した乗用型草刈機であって、
前記乗用運転部の運転部床と、運転座席下方に車体上下向きに位置して運転部居住空間を形成する縦構造板とを、床下及び運転座席下方を開放した開き状態と、床下及び運転座席下方を閉じた閉じ状態とに一体揺動自在に支持させてある乗用型草刈機。
【請求項2】
前記縦構造板の裏面側に物品収納ポケットを設けてある請求項1記載の乗用型草刈機。
【請求項3】
前記縦構造板の上端部に、縦構造板の裏面側に折れ曲がった折れ曲り端部を前記物品収納ポケットの開口の上方まで突出した状態で設けてある請求項2記載の乗用型草刈機。
【請求項4】
前記運転部床及び前記縦構造板が、運転部床の前端側に位置した車体横向き軸芯まわりで上下揺動開閉自在に支持されている請求項1又は2記載の乗用型草刈機。
【請求項5】
前記乗用運転部に駐車ブレーキペダルを設け、
前記運転部床及び前記縦構造板が、開き状態で前記駐車ブレーキペダルを覆うように支持されている請求項4記載の乗用型草刈機。
【請求項6】
前記乗用運転部に前記草刈り装置を下降操作する下降ペダルを設け、
前記運転部床及び前記縦構造板が、開き状態で前記下降ペダルを覆うように支持されている請求項4又は5記載の乗用型草刈機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−196863(P2007−196863A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18102(P2006−18102)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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