説明

乳化組成物

【課題】水分を長時間皮膚に残留させ、皮膚の状態を改善する乳化組成物の提供。
【解決手段】(A)水酸基を2個以上有する有機化合物であって、無機性値が220〜450、有機性値が300〜1000である有機化合物0.001〜10質量%、(B)水酸基を1個有する有機化合物であって、無機性値が100〜200、有機性値が280〜700である有機化合物0.001〜10質量%、(C)一般式(2)で表される化合物0.001〜10質量%


、(D)ポリオキシエチレン基を有するHLB10以上の非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤及びスフィンゴシン塩類から選ばれる1種以上の化合物0.00012〜10質量%、(E)2単糖又は3単糖0.018〜15質量%、(F)水を含有する乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚上に長時間水分を残留させる乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
α−ゲルは、水和型の結晶構造であり、ラメラ構造を有する。皮膚最外層の角層に存在する角層細胞間脂質も、その大半がこのα−ゲル構造をとっている。そして、皮膚に対して、外部からの物質の侵入、内部からの水分蒸散を抑制すると同時に、そのもの自身が水分を保持することで、皮膚の柔軟性やなめらかな外観を保つ機能を有している。皮膚中において、角層は、水分を結合水の形で約33%保持しており、角層細胞間脂質は、うち約13%の結合水(ここで、結合水とは、構成分子に束縛された水と定義する)を保持していることが報告されている(非特許文献1)。
例えば、特許文献1には、セラミド類等を含有する乳化組成物が、α−ゲル構造を形成し、保湿効果が高いことが記載されている。このようなα−ゲルで皮膚表面を覆った場合、角層細胞間脂質と同様、乾燥時において、水分を多く含有でき、潤い感を持続できることが期待される。
【0003】
一方、グリセリンやアミノ酸等の低分子化合物、ヒアルロン酸等の高分子化合物などは、保湿性が高いとされている化合物である。しかしながら、単一成分の水溶液が保持できる水分量は結合水量程度であり、製剤の水分保持能として十分満足できるものではなかった。また、前記のようなα−ゲルは、水分保持能が期待されるが、α−ゲルを構成する固体脂成分は、重い使用感であり、水分保持能をより高めるために、α−ゲル構成成分を単に増量したのでは、べたつき感がでるなど、良好な使用感が得られない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】芋川玄繭,油化学,44,10,p.51−66(1995)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−22997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、α−ゲルが形成するラメラ構造の層間に、結合水および自由水(ラメラ層間に保持されているが、ラメラ構造構成成分に束縛されていない水)を保持し、水分を長時間皮膚に残留させ、皮膚の状態を改善する乳化組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、水分保持能が高まる設計のα−ゲルに対し、2単糖又は3単糖を組み合わせることで、α−ゲルの水分保持能をさらに増加させることができ、水分を長時間皮膚に残留させ、皮膚の状態を改善する乳化組成物が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)水酸基を2個以上有する有機化合物であって、無機性値が220〜450、有機性値が300〜1000である有機化合物 0.001〜10質量%、
(B)水酸基を1個有する有機化合物であって、無機性値が100〜200、有機性値が280〜700である有機化合物 0.001〜10質量%、
(C)一般式(2):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基若しくはアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示し;Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Zがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R4はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;R5は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい、総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)で表される化合物 0.001〜10質量%、
(D)ポリオキシエチレン基を有するHLB10以上の非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤及びスフィンゴシン塩類から選ばれる1種以上の化合物
0.00012〜10質量%、
(E)2単糖又は3単糖 0.018〜15質量%、
(F)水
を含有する乳化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乳化組成物は、成分(A)、(B)及び(C)を主成分とする規則性の高い均一なα型構造を形成し、乳化組成物の水分保持能がより高く、水分を長時間皮膚に残留させることができ、皮膚の状態を改善することができる。皮膚に塗布したときには、優れた浸透感や、潤いの持続感を得ることができる。更には、皮膚表面に柔軟性のあるラメラ状の皮膜を形成することができ、層間に水分を保持し、皮膚保護効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例及び比較例において、残存水分量測定に使用したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[成分(A)]
本発明で用いる成分(A)は、水酸基を2個以上有する有機化合物であって、無機性値が220〜450、有機性値が300〜1000である有機化合物である。成分(A)のより好ましいものとしては、後述する各成分とラメラ構造形成性の観点から、無機性値が220〜340、有機性値が380〜840である有機化合物で、更には、無機性値が250〜340、有機性値が380〜700である有機化合物である。
本発明において、無機性値、有機性値とは、有機概念図(藤田穆、有機化合物の予測と有機概念図、化学の領域Vol.11,No.10(1957)719−725)に基づき求められる無機性値及び有機性値の値をいう。
【0014】
成分(A)としては、次の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Z1は、グリセリン、ソルビタン、ソルビトール又はショ糖残基で2個以上のヒドロキシル基を有する構造を示し、Y1は、エステル結合基又はエーテル結合基を示し、Rは、炭素数14〜22の炭化水素基を示し、nは1〜2の数を示す)
【0017】
式中、Rで示される炭素数14〜22の炭化水素基としては、直鎖炭化水素基が好ましく、例えば、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の直鎖アルキル基;パルミトイル基、オレイル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビトールモノ脂肪酸エステル、ソルビトールジ脂肪酸エステル、ショ糖モノ脂肪酸エステル、グリセリンモノアルキルエーテル等が挙げられる。
成分(A)としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノアルキルエーテル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル及びソルビタンジ脂肪酸エステルが好ましい。中でも、モノパルミチン酸グリセリル(無機性値260、有機性値380)、モノステアリン酸グリセリル(無機性値260、有機性値420)、モノベヘン酸グリセリル(無機性値260、有機性値500)、モノセチルグリセリルエーテル(無機性値220、有機性値380)、モノステアリルグリセリルエーテル(無機性値220、有機性値420)、モノステアリン酸ソルビタン(無機性値445、有機性値480)、ジステアリン酸ソルビタン(無機性値340、有機性値840)が好ましく、後述するラメラ状の皮膜の形成性、保水性が向上する観点から、モノベヘン酸グリセリル又はモノセチルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0018】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.001〜10質量%含有され、好ましくは0.05〜7質量%、更に0.1〜3質量%含有されるのが、水分保持能が高まるのでより好ましい。
【0019】
[成分(B)]
本発明で用いる成分(B)は、水酸基を1個有する有機化合物であって、無機性値が100〜200、有機性値が280〜700である有機化合物である。成分(B)のより好ましいものとしては、成分(A)及び後述する各成分とラメラ構造形成性の観点から、無機性値が100〜182、有機性値が300〜520である有機化合物である。
具体的には、炭素数14〜22の高級アルコール、ステロール類から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0020】
高級アルコールは、炭素数14〜22、より好ましくは炭素数16〜18のもので、例えば、ミリスチルアルコール(無機性値100、有機性値280)、セタノール(無機性値100、有機性値320)、ステアリルアルコール(無機性値100、有機性値360)、ベヘニルアルコール(無機性値100、有機性値440)、オレイルアルコール(無機性値102、有機性値360)等が挙げられる。
これらのうち、直鎖アルキル基を有するものが好ましく、更に、セタノール、ステアリルアルコールが好ましい。
【0021】
また、ステロール類としては、コレステロール(無機性値182、有機性値520)及びフィトステロールが挙げられる。フィトステロールは、β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール等の植物ステロールの総称であり、その組成は限定されるものではない。
【0022】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.001〜10質量%含有され、好ましくは0.05〜7質量%、更に0.1〜3質量%含有されるのが、水分閉塞性が高まるのでより好ましい。
【0023】
[成分(C)]
本発明で用いる成分(C)は、前記一般式(2)で表わされる化合物である。
【0024】
式中、R1は、ヒドロキシル基、カルボニル基若しくはアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の、好ましくはヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子である。
Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子のいずれかを示す。
【0025】
1、X2及びX3は、各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示す。X1、X2及びX3のうち0〜1個がヒドロキシル基で、残余が水素原子であるのが好ましい。Zがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方のみが水素原子であり、他方は存在しない。また、X4は水素原子かグリセリル基であるのが好ましい。
2及びR3は、水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し、好ましいR2は水素原子又はヒドロキシメチル基であり、好ましいR3は水素原子である。
【0026】
4は、ヒドロキシル基、カルボキシ基又はアミノ基が置換していてもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。好ましくは、ヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜35の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基、又は該炭化水素基のω位に、ヒドロキシル基が置換してもよい炭素数8〜22の直鎖、分岐又は環状の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合又はアミド結合したものが挙げられる。結合する脂肪酸としては、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸又はリノール酸が好ましい。
【0027】
5は、水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。R1が水素原子、Zが酸素原子のときR5は総炭素数10〜30の炭化水素基である。また、R1が炭化水素基のときR5は総炭素数1〜8の炭化水素基である。これらのうち、水素原子あるいは、ヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換していてもよい総炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。ここで、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基としては炭素数1〜7のものが好ましい。
【0028】
一般式(2)で表わされる化合物としては、次の一般式(3)又は(4)で表わされるセラミド類が好ましい。
(I)一般式(3)で表わされる化合物は、天然由来のセラミド類又は同構造の合成物であっても良い。
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、R11はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Z1はメチレン基又はメチン基を示し;X5、X6、及びX7は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し;X8は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Z1がメチン基のとき、X5とX6のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X8がオキソ基を形成するとき、X7は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R13は水素原子を示すか、炭素数1〜4のアルキル基を示し;R14はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該アルキル基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
【0031】
好ましくは、R11が炭素数7〜19、更に好ましくは炭素数13〜15の直鎖アルキル基;R14がヒドロキシル基が置換しても良い炭素数9〜27の直鎖アルキル基又はリノール酸がエステル結合した炭素数9〜27の直鎖アルキル基である化合物が挙げられる。また、X8は水素原子を示すか、酸素原子とともにオキソ基を形成するのが好ましい。更に、R14としては、トリコシル、1−ヒドロキシペンタデシル、1−ヒドロキシトリコシル、ヘプタデシル、1−ヒドロキシウンデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したノナコシル基が好ましい。
【0032】
天然型セラミドの具体的な例示として、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミドType1〜7(例えば、J. Lipid Res., 24:759(1983)の図2、及びJ. Lipid. Res.,35:2069(1994)の図4記載のブタ及びヒトのセラミド類)が挙げられる。
【0033】
更にこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)も含まれる。
これらのセラミドは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。これらのうち、CERAMIDE1、CERAMIDE2、CERAMIDE3、CERAMIDE5、CERAMIDE6IIの化合物(以上、INCI、8th Edition)及び次式で表わされるものが好ましい。
【0034】
【化4】

【0035】
これらは天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
このような天然型セラミドの市販のものとしては、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社)、Ceramide TIC-001(高砂香料社)、CERAMIDE II(Quest International社)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社)、CERAMIDE2(セダーマ社)が挙げられる。
【0036】
【化5】

【0037】
(II)一般式(4)で表わされる擬似型セラミド。
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、R15は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X9は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R16はヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R17は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
【0040】
16としては、ノニル、トリデシル、ペンタデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したウンデシル基、ω位にリノール酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位に12−ヒドロキシステアリン酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位にメチル分岐イソステアリン酸がアミド結合したウンデシル基が好ましい。
【0041】
17は、R15が水素原子の場合は、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数10〜30の、好ましくは総炭素数12〜20のアルキル基であり、R15がヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基である場合には、水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜8のアルキル基を示すものが好ましい。R17のヒドロキシアルコキシ基又はアルコキシ基としては炭素数1〜7のものが好ましい。
【0042】
【化7】

【0043】
一般式(4)としては、R15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がペンタデシル基、R17がヒドロキシエチル基のもの;R15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がノニル基、R17がヒドロキシエチル基のもの;又はR15がヘキサデシル基、X9がグリセリル基、R16がトリデシル基、R17が3−メトキシプロピル基の擬似型セラミド類が好ましく、一般式(4)のR15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がペンタデシル基、R17がヒドロキシエチル基のもの(N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)が、更に好ましい。
【0044】
【化8】

【0045】
成分(C)の化合物は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.001〜10質量%含有され、好ましくは0.05〜7質量%、更に0.1〜5質量%含有されるのが、成分(C)を充分に皮膚へ浸透させられるのでより好ましい。
【0046】
本発明において、成分(A)、(B)及び(C)の質量割合は、((A)+(B))/((A)+(B)+(C))=0.15以上、更に0.35〜0.8であるのが、α−ゲルの保存安定性が高まるので好ましい。
また、成分(A)及び(B)の質量割合は、(A)/((A)+(B))=0.1以上、更に0.25〜0.75であるのが、しっかりしたα−ゲル構造を作り、水分保持力を高めることができるので好ましい。
【0047】
[成分(D)]
本発明で用いる成分(D)は、ポリオキシエチレン基を有するHLB10以上の非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤及びスフィンゴシン塩類から選ばれる1種以上の化合物である。
成分(D)の化合物のうち、非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン基を有するもので、HLB10以上、好ましくはHLB12.5〜15.5の親水性のものである。例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
これらのうち、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましい。
【0048】
また、成分(D)の化合物のうち、イオン性界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸アルギニン等の炭素数12〜24の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム等の脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン、N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。
これらのうち、炭素数12〜24の脂肪酸塩、脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、長鎖N−アシルグルタミン酸塩が好ましく、更に、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン、ポリオキシチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウムが好ましい。
【0049】
また、カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩が好ましく、例えば、塩化ステアリウムトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム、トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられる。
【0050】
更に、両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アミドアミノ酸塩、アルキルアミドプロピルベタインが挙げられ、更にアルキルアミドプロピルベタインが好ましい。
【0051】
本発明で用いる成分(D)の化合物のうち、スフィンゴシン塩類とは、スフィンゴシン類と酸性物質とから構成されるものである。スフィンゴシン類としては、一般式(5)で表わされるものが挙げられる。
【0052】
【化9】

【0053】
(式中、R21はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X11、X12、及びX13は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X14は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基のとき、X11とX12のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X14がオキソ基を形成するとき、X13は存在しない。);R22及びR23は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のR1は各々独立して水素
原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)
【0054】
式中、R21は、ヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30、好ましくはヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基である。炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Y側末端にヒドロキシル基を持つ炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で、分岐鎖アルキル基の場合は分岐鎖がメチル分岐のもの等が好ましい。具体的には、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、1−ヒドロキシトリデシル基、1−ヒドロキシペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソステアリル基が好ましい。
【0055】
Yはメチレン基(CH2)、メチン基(CH)又は酸素原子のいずれかを示す。
11、X12、及びX13は、各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X14は水素原子、アセチル基、グリセリル基、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成する置換基を示す。X11、X12、及びX13のうち0〜1個がヒドロキシル基で、残余が水素原子、及びX14が水素原子であるものが好ましい。なお、Yがメチン基のとき、X11とX12のいずれか一方のみが水素原子であり、他方は存在しない。また、X14がオキソ基を形成するとき、X13は存在しない。
【0056】
22及びR23は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し、更にR23は水素原子であることが好ましい。
【0057】
また、aは2又は3の数を示し、aが2のときR1はR24及びR25を示し、aが3のときR1はR24、R25及びR26を示す。
【0058】
24、R25及びR26は、各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。ここで炭化水素基に置換し得るヒドロキシアルコキシ基としては炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のヒドロキシアルコキシ基が好ましい。またアルコキシ基としては炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましい。R24、R25及びR26としては、例えば水素原子;メチル、エチル、プロピル、2−エチルへキシル、イソプロピル等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;アミジノ基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−メトキシエチル、1−メチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基から選ばれる1〜6個が置換した総炭素数1〜8の炭化水素基が挙げられる。
【0059】
これらのうち、水素原子、又はメチル基、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル等のヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換していてもよいアルキル基が好ましい。
【0060】
一般式(5)で表わされるスフィンゴシン類としては、次の一般式(6)で表わされる天然由来のスフィンゴシン類又は同構造の合成物、及びその誘導体(以下、天然型スフィンゴシンと記載する。)又は一般式(7)で表わされるスフィンゴシン構造を有する擬似型スフィンゴシン類(以下、擬似型スフィンゴシンと記載する。)が好ましい。
(I)一般式(6)で表わされる天然型スフィンゴシン。
【0061】
【化10】

【0062】
(式中、R27はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Y1はメチレン基又はメチン基を示し;X15、X16及びX17は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X18は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Y1がメチン基のとき、X15とX16のいずれか一方が水素原子を示し、他方は存在しない。X18がオキソ基を形成するとき、X17は存在しない。);R28はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のR2は各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合があってもよいことを示す)
【0063】
ここでR27としては、炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基が好ましく、更に炭素数13〜15の直鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基が好ましい。aは2が好ましく、R2は各々独立して水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましい。
【0064】
一般式(6)で表わされる天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、天然のスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)等が挙げられる。
これらのスフィンゴシンは天然型(D(+)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(−)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。
更に、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び次式で表わされるものが好ましい。
【0065】
【化11】

【0066】
これらは、天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
天然型スフィンゴシンの市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine)(SIGMA-ALDRICH社)、DS-phytosphingosine (DOOSAN社)、phytosphingosine(コスモファーム社)が挙げられる。
【0067】
(II)一般式(7)で表わされる擬似型スフィンゴシン。
【0068】
【化12】

【0069】
(式中、R29はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;X19は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;a個のR3は各々独立して水素原子又はアミジノ基を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、aは2又は3の数を示す)
【0070】
ここでR29としては、炭素数14〜20のイソ分岐アルキル基が好ましく、更にイソステアリル基が好ましい。イソステアリル基は、動植物油由来の脂肪酸を用いたダイマー酸製造時の副生成物由来のイソステアルアルコールを原料油として得られるイソステアリル基がもっとも好ましい。
また、aが2のときR3はR30及びR31を示し、aが3のときR3はR30、R31及びR32である。
【0071】
30、R31及びR32は、例えば水素原子;メチル、エチル、プロピル、2−エチルへキシル、イソプロピル等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;アミジノ基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−メトキシエチル、1−メチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基から選ばれる置換基を有する総炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
これらのうち、R30及びR31のいずれか1つが水素原子で、他方が2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルである2級アミンが好ましい。
【0072】
擬似型スフィンゴシンとしては、R29がイソステアリル基、X19が水素原子で、R30が水素原子、R31が2−ヒドロキシエチル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル基、又は2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基等のヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換したアルキル基であるものが好ましい。
擬似型スフィンゴシンの具体例としては、次の擬似型スフィンゴシン(i)〜(iv)が挙げられる。
【0073】
【化13】

【0074】
スフィンゴシン類としては、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、擬似型スフィンゴシンが好ましく、更には、擬似型スフィンゴシン(ii)、1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノールが好ましい。
【0075】
これらのスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、擬似型スフィンゴシンと塩を構成する酸性物質としては、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;リン酸、塩酸等の無機酸;酢酸等のモノカルボン酸;コハク酸等のジカルボン酸;クエン酸、乳酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸などが挙げられる。これらの中で、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、又は擬似型スフィンゴシン(擬似型スフィンゴシン(ii)、1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール)のコハク酸塩、乳酸塩、グルタミン酸塩が好ましく、更に、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、又は擬似型スフィンゴシンのグルタミン酸塩が好ましい。
【0076】
成分(D)としては、アニオン界面活性剤、スフィンゴシン塩類を用いるのが、電荷反発の効果によって、ラメラの層間に多量の水分を抱え込めるため、保水性の観点からより好ましい。中でも、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン、フィトスフィンゴシンのグルタミン酸塩、及び擬似型スフィンゴシンのグルタミン酸塩が、少ない量で安定な乳化物が得られる点で好ましい。
成分(D)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.00012〜10質量%含有され、好ましくは0.01〜7質量%、更に0.2〜3質量%含有されるのが、成分(A)、(B)及び(C)で作るラメラ構造の層間隔を広げ、層間に水分を多く蓄える構造を形成するのに役立つので好ましい。
【0077】
[成分(E)]
本発明で用いる成分(E)は、2単糖又は3単糖であり、例えば、トレハロース、ガラクトシルフルクトース、スクラロース、メリビオース、ラフィノース、ラクトース等が挙げられる。これらのうち、トレハロース、ラフィノースが好ましく、更にはトレハロースが好ましい。
【0078】
2単糖又は3単糖は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.018〜15質量%含有され、好ましくは0.1〜10質量%、更に0.5〜7質量%含有されるのが、高い水分保持能が得られるので好ましい。
【0079】
本発明において、成分(A)、(B)、(C)及び(E)の質量割合は、(E)/((A)+(B)+(C))=0.2以上、特に0.6〜5であるのが、成分(A)、(B)、(C)及び(D)で構成される構造の層間にある水分(結合水および自由水)をしっかり抱えこむことができ、保水性を飛躍的に高めることができるので好ましい。
成分(E)を含むことにより、成分(A)、(B)及び(C)で作るラメラ構造がしっかりし、乾燥後も皮膚上に細胞間に構成されると同様なラメラ状の柔軟な皮膜が形成され、皮膚の水分保持能が高まり、潤い感が持続するので好ましい。
また、(D)/((A)+(B)+(C))=0.04〜1、更に0.04〜0.5であるのが、成分(C)の浸透性を高め、皮膚表面と内部からの保湿効果を得ることができるので好ましい。
【0080】
本発明において、成分(F)の水は、全組成中に20〜99.9質量%含有されるのが好ましく、40〜95質量%、更に50〜90質量%含有されるのが好ましい。
また、その他の水性基剤、例えばエタノール、プロパノール等の炭素数1〜4の低級アルコールなどを含有することもできる。
【0081】
本発明においては、前記成分のそれぞれの好ましい成分、及び好ましい含有量を組み合わせるのが、より好ましい。
更に、成分(A)がモノベヘン酸グリセリル又はモノセチルグリセリルエーテル、成分(B)がセタノール、成分(C)が一般式(2)で表される化合物、成分(D)がステアロイルグルタミン酸塩又はスフィンゴシン塩類、成分(E)がトレハロース、成分(F)が水であるものが、より好ましい。
【0082】
本発明の乳化組成物は、更に、油性成分を含有することができる。例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素油;セチルジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油;ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリオクタノイン等のエステル油;ステアリン酸、ベヘン酸、イソミリスチン酸等の高級脂肪酸;オリーブ油等の植物油;ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油;パーフルオロアルキルエチルリン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンリン酸、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系油などが挙げられる。これらの油性成分は、全組成中に0〜20質量%含有されるのが好ましい。
【0083】
また、本発明の乳化組成物は、通常の化粧料に用いられる有効成分や添加剤、例えば、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸等の水溶性ビタミン類;オウバクエキス、カンゾウエキス、アロエエキス、スギナエキス、茶エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、ハマメリス抽出液、プラセンタエキス、海藻エキス、マロニエエキス、ユズエキス、アスナロエキス、ローヤルゼリーエキス、ユーカリエキス、アスナロ抽出液等の動・植物抽出液;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム等の塩基;クエン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、コハク酸、アジピン酸等の酸;カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸ナトリウム、オキサゾリン変性シリコーン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体等の増粘剤などを含有することもできる。
【0084】
本発明の乳化組成物は、製造方法(1)〜製造方法(3)により製造することができる。
製造方法(1):成分(A)〜(D)(油性成分を含む場合は、成分(A)〜(D)及び油性成分)を含む混合成分と、成分(E)及び(F)を含む水相成分を混合して乳化させる方法。
製造方法(2):成分(A)〜(E)(油性成分を含む場合は、成分(A)〜(E)及び油性成分)を含む混合成分と、成分(F)を含む水相成分を混合して乳化させる方法。
製造方法(3):成分(A)〜(D)(油性成分を含む場合は、成分(A)〜(D)及び油性成分)と成分(E)の一部を含む混合成分と、残余の成分(E)及び(F)を含む水相成分を混合して乳化させる方法。
製造方法(2)は、製造方法(1)と比較して、得られる乳化組成物の保水性がより高いことから、より好ましい。
【0085】
得られる乳化組成物は、α−ゲル(α型結晶)であり、結晶(γ型結晶)の析出が抑制される。α−ゲルは、X線による構造解析により、確認することができる。α型構造は六方晶系のことであり、親油基が親水基層の面に対して直角に配向しており、Bragg角21〜23°付近に鋭い一本の回折ピークが現れるのが特徴である。
また、本発明の乳化組成物は、水中油型乳化組成物であり、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の化粧料や、皮膚外用剤として好適である。
【実施例】
【0086】
実施例1〜6及び比較例1〜4
表1に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、X線による構造解析及び残存水分量測定を行った。また、皮膜形成性を評価した。結果を表1に併せて示す。
なお、実施例で得られた皮膜は、透過型電子顕微鏡によりラメラ構造を有することを確認した。
【0087】
(製造方法)
製造方法(1):
第I相の成分(成分(A)〜(D)を含む混合成分)を、80〜95℃で加熱混合し、これに、プロペラ撹拌下(300rpm)、80〜95℃に加熱した第II相(成分(E)、(F)を含む混合成分)を加えて乳化し、25℃まで徐々に冷却して、水中油型乳化組成物を得た。
【0088】
(評価方法)
(1)X線による構造解折:
得られた水中油型乳化組成物について、2θ=10〜30°の広角X線回折ピークより、WilsonとOttの方法(Wilson,D.A. and Ott,E., J.Chem.Phys., 2, 231-238(1934))に従い、結晶構造を決定した。
【0089】
(2)残存水分量測定:
6×6cmの金属トレーに、水中油型乳化組成物2gを一定厚みで均一に広げ、25℃、湿度40%の恒温恒湿下で、重量変化を時間に対してプロットする。このとき、図1のように2段階に屈曲が生じ、ラメラ皮膜の形成により、その後重量変化が極めて小さくなる。図1中の直線1と直線2の交点の重量から残存水分量を求め、製剤中の固形分に対する水分量を、以下の式で求めた。固形分には、成分(A)〜(E)全ての成分を含む。
【0090】
【数1】

【0091】
(3)皮膜形成性:
テフロン(登録商標)シャーレ(直径5cm)に5gの剤を入れ、均一に伸ばし、2日間乾燥させた際の皮膜の状態を観察した。
○:柔軟な皮膜が形成される。
△:硬くて脆い皮膜が形成される。
×:皮膜は形成されない。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例7及び比較例5〜7
表2に示す組成の水中油型乳化組成物を実施例1〜6と同様にして製造し、比較例5を基準とした小角X線散乱強度の変化を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0094】
【表2】

【0095】
表2の結果より、実施例7は、小角X線散乱強度が増大していることから、ラメラ構造の秩序性が高いことが確認された。
【0096】
実施例8〜13、比較例8〜17
実施例1〜6と同様にして、表3に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、X線による構造解析、残存水分量及び皮膜形成性を評価した。また、浸透感及び潤いの持続性を評価した。結果を表3に併せて示す。
【0097】
(評価方法)
使用感(浸透感/潤いの持続性):
10名の専門パネラーが、各乳化組成物0.5〜0.6gを顔面に塗布した直後の「浸透感」及び塗布後10時間経過後の「潤いの持続性」について官能評価した。結果を、「良好である」と評価したパネラーの人数で示した。
【0098】
【表3】

【0099】
実施例14〜30、比較例18
実施例1〜6と同様にして、表4〜表5に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、X線による構造解析、残存水分量、浸透感及び潤いの持続性を評価した。結果を表4〜表5に併せて示す。
【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
実施例31
表6に示す組成の水中油型乳化組成物について、製造方法(2)に従って製造し、得られた組成物について、それぞれ、X線による構造解析、残存水分量、皮膜形成性、浸透感及び潤いの持続性を評価した。結果を表6に併せて示す。
なお、実施例30と同様の組成で、製造方法(1)により製造されたもの(実施例1)を併せて示す。
【0103】
製造方法(2):
第I相の成分(成分(A)〜(E)を含む混合成分)を、80〜95℃で加熱混合し、これに、プロペラ撹拌下(300rpm)、80〜95℃に加熱した第II相(成分(F)を含む水相成分)を加えて乳化し、25℃まで徐々に冷却して、水中油型乳化組成物を得た。
【0104】
【表6】

【0105】
実施例32(化粧水)
第I相の成分を、80〜95℃で加熱混合し、これに、プロペラ撹拌下(300rpm)、80〜95℃に加熱した第II相を加えて乳化し、25℃まで徐々に冷却した後、25℃の第III相を加え、表7に示す組成の水中油型乳化組成物(化粧水)を製造した。そして、X線による構造解析を行い、皮膜形成性、浸透感及び潤いの持続性を評価した。結果を表7に併せて示す。
【0106】
【表7】

【0107】
実施例33(美容液)
第I相の成分を、80〜95℃で加熱混合し、これに、プロペラ撹拌下(300rpm)、80〜95℃に加熱した第II相を加えて乳化し、25℃まで徐々に冷却した後、25℃の第III相を加え、表8に示す組成の水中油型乳化組成物(化粧水)を製造した。そして、X線による構造解析を行い、皮膜形成性、浸透感及びうるおいの持続性を評価した。結果を表8に併せて示す。
【0108】
【表8】

【0109】
実施例34(乳液)
実施例1〜6と同様にして、表9に示す組成の水中油型乳化組成物(乳液)を製造し、X線による構造解析を行い、皮膜形成性、浸透感及びうるおいの持続性を評価した。結果を表9に併せて示す。
【0110】
【表9】

【0111】
実施例35(クリーム)
実施例1〜6と同様にして、表10に示す組成の水中油型乳化組成物(クリーム)を製造し、X線による構造解析を行い、皮膜形成性、浸透感及びうるおいの持続性を評価した。結果を表10に併せて示す。
【0112】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)水酸基を2個以上有する有機化合物であって、無機性値が220〜450、有機性値が300〜1000である有機化合物 0.001〜10質量%、
(B)水酸基を1個有する有機化合物であって、無機性値が100〜200、有機性値が280〜700である有機化合物 0.001〜10質量%、
(C)一般式(2):
【化1】

(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基若しくはアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示し;Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Zがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R4はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;R5は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい、総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)で表される化合物 0.001〜10質量%、
(D)ポリオキシエチレン基を有するHLB10以上の非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤及びスフィンゴシン塩類から選ばれる1種以上の化合物
0.00012〜10質量%、
(E)2単糖又は3単糖 0.018〜15質量%、
(F)水
を含有する乳化組成物。
【請求項2】
成分(A)が、次の一般式(1):
【化2】

(式中、Z1は、グリセリン、ソルビタン、ソルビトール又はショ糖残基で2個以上のヒドロキシル基を有する構造を示し、Y1は、エステル結合基又はエーテル結合基を示し、Rは、炭素数14〜22の炭化水素基を示し、nは1〜4の数を示す)で表される化合物である請求項1記載の乳化組成物。
【請求項3】
成分(B)が、炭素数14〜22の高級アルコール及びステロール類から選ばれる1種以上の化合物である請求項1又は2記載の乳化組成物。
【請求項4】
成分(A)において、一般式(1)中のR、及び成分(B)において、高級アルコール中の炭化水素基が、直鎖炭化水素基である請求項2又は3記載の乳化組成物。
【請求項5】
成分(D)が、アニオン界面活性剤又はスフィンゴシン塩類である請求項1〜4記載のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項6】
α−ゲル構造を形成する請求項1〜5のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項7】
((A)+(B))/((A)+(B)+(C))が0.15以上で、かつ(A)/(A)+(B)が0.1以上である請求項1〜6のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項8】
(E)/((A)+(B)+(C))が0.01〜5である請求項1〜7のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項9】
成分(A)がモノベヘン酸グリセリル又はモノセチルグリセリルエーテル、
成分(B)がセタノール、
成分(C)が一般式(2)で表される化合物、
成分(D)がステアロイルグルタミン酸塩又はスフィンゴシン塩類、
成分(E)がトレハロース、
成分(F)が水
である請求項1〜8のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項10】
成分(A)〜(E)を含む混合成分と、成分(F)を含む水相成分を混合して乳化する請求項1〜9のいずれか1項記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項11】
成分(A)〜(D)を含む混合成分と、成分(E)及び(F)を含む水相成分を混合して乳化する請求項1〜9のいずれか1項記載の乳化組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−32266(P2011−32266A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154037(P2010−154037)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】