説明

乳酸系ポリマー組成物からボトルを製造する方法

【課題】射出二軸延伸ブロー成型加工性に優れた乳酸系ポリマー組成物、並びにそれから得られる射出二軸延伸ブローボトルを提供すること。
【解決手段】 乳酸系ポリマー(A)100重量部に対し結晶核剤としてケイ酸(SiO2)成分を30%以上含む結晶性の無機化合物(B)0.1〜10重量部を含有する乳酸系ポリマー組成物、並びにそれから得られる射出二軸延伸ブローボトル。さらに該乳酸系ポリマー組成物をマスターバッチ方法で製造する方法及びマスターバッチが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳酸系ポリマー組成物に関する。更に詳しくは成形が良好で、使用後自然環境下で分解する乳酸系ポリマー組成物並びに該組成物より得られる射出二軸延伸ブローボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックから作られる成形物の材料としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が使用されている。かかる樹脂から製造された成形物は透明性に優れているものもあるが、廃棄する際その処理方法を誤るとゴミの量を増すうえに、自然環境下では殆ど分解しないため、埋設処理すると、半永久的に地中に残留する。一方、熱可塑性樹脂で生分解性のあるポリマーとして、ポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーが開発されている。これらの樹脂は、動物の体内で数カ月から1年以内に100%生分解し、また、土壌や海水中に置かれた場合、湿った環境下では数週間で分解を始め、約1年から数年で消滅し、さらに分解生成物は、人体に無害な乳酸と二酸化炭素と水になるという特性を有している。
【0003】
これらの乳酸系ポリマー組成物は透明性、剛性に優れているものの、耐熱性の付与された射出二軸延伸ブローボトルを成形しようとすると以下のような問題を有していた。耐熱性を付与された射出二軸延伸ブローボトルを製造する場合、射出成形されたプリフォームを延伸ブロー前に、プリフォームの口部を結晶化させる必要がある。しかし、乳酸系ポリマーは本来、結晶化速度が遅い為、これを改良する為に結晶化速度を速くするのに有効な結晶核剤の添加が行われるが、結晶化が短時間で進むような処方にすると、延伸時のプリフォーム胴体部の予熱の間に、この胴体部の結晶化が進んでしまい、延伸性が悪くなる為、予熱温度や予熱時間が極端に制限を受けるという欠点を有していた。
【0004】
また、延伸時の成形性を重視し、胴体部の予熱時に結晶化が進まない処方にすると、乳酸系ポリマーは、結晶化速度が遅い為、事前の口部の結晶化に長時間を要し、生産性という点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-354223号公報
【特許文献2】特開平08-244781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、射出二軸延伸ブロー成型加工性に優れ、使用後自然環境下で分解する乳酸系ポリマー組成物、ボトルを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対ししてケイ酸(SiO2)成分を3
0%以上含む結晶性の無機化合物(B)0.07〜10重量部を含有する乳酸系ポリマー組成物(AA)を提供する。
【0008】
前記無機化合物(B)が、タルク、カオリン、クレー、シリカから選ばれた少なくとも1種である前記乳酸系ポリマー組成物(AA)は本発明の好ましい形態である。
【0009】
前記乳酸系ポリマー(A)中の乳酸単位中のD体の含有量が8%以下である乳酸系ポリマー組成物(AA)も本発明の好ましい態様である。
【0010】
本発明はさらに、前記乳酸系ポリマー組成物(AA)からなる射出二軸延伸ブローボトルを提供する。
【0011】
本発明は、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対しケイ酸(SiO2)成分を30%
以上含む結晶性の無機化合物(B)1.0〜50重量部を含んでなる乳酸系ポリマー組成
物(AAA)を、乳酸系ポリマー(A)によって希釈することによって前記乳酸系ポリマー組成物(AA)を製造する方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対し、ケイ酸(SiO2)成分
を30%以上含む結晶性の無機化合物(B)を1.0〜50重量部を含んでなるマスターバッチに適した乳酸系ポリマー組成物(AAA)を提供する。
【0013】
また本発明は、結晶化度が1%以下の乳酸系ポリマーをガラス転移温度以上100℃以下で5分の加熱処理したときの結晶化度が5%以下であってかつ、120℃以上融点以下で5分の加熱処理したときの結晶化度が15%以上である乳酸系ポリマー組成物を提供する。
【0014】
本発明はさらに、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対しケイ酸(SiO2)成分を
30%以上含む結晶性の無機化合物(B)0.07〜10重量部を含有する乳酸系ポリマー組成物(AA)から、射出成形機によりプリフォームを作製し、このプリフォームの口部を120℃以上融点以下で加熱して結晶化度15%以上に結晶化させた後、該プリフォームをガラス転移温度以上100℃以下で加熱した後、延伸ブロー成形してボトルを製造する方法を提供する。
【0015】
前記ボトルを製造する際には、前記無機化合物(B)が、タルク、カオリン、クレー、シリカから選ばれた少なくとも1種であることが本発明の好ましい態様である。
【0016】
前記ボトルを製造する際には、乳酸系ポリマー(A)中の乳酸単位中のD体の含有量が8%以下であり、乳酸系ポリマー組成物(AA)から、射出成形機によりプリフォームを作製し、このプリフォームの口部を120℃以上融点以下で5分加熱して結晶化度15%以上に結晶化させた後、該プリフォームをガラス転移温度以上100℃以下で1分加熱した後、延伸ブロー成形することが本発明の好ましい態様である。
【0017】
前記ボトルを製造する際には、乳酸系ポリマー(A)100重量部及びケイ酸(SiO2)成分を30%以上含む結晶性の無機化合物(B)1.0〜50重量部を含有する樹脂組成物(AAA)を、乳酸系ポリマー(A)によって希釈することによって得られた請求項1〜3のいずれかに記載した乳酸系ポリマー組成物(AA)を用いることが本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、射出二軸延伸ブロー成型加工性に優れ、更に分解性が良好な乳酸系ポリマー組成物およびそれからなる射出延伸ブローボトルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において乳酸系ポリマー(A)とは、乳酸を主成分とするポリエステルであって、好ましくは乳酸を50%以上、特に好ましくは75%以上を含有し、その他の成分として乳酸以外の炭素数2〜10の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪
族ジオールなどからなるものであり、また、ポリマーの生分解性を損なわない範囲でテレフタル酸などの芳香族化合物を含有するものであっても良い。これらを主成分とするホモポリマー、コポリマー、ならびにこれらの混合物を含む。
【0020】
ポリマーの原料に用いられる乳酸類としては、L−乳酸、D−乳酸,DL−乳酸又はそれらの混合物または乳酸の環状2量体であるラクタイドを使用することができる。また乳酸類と併用できるヒドロキシカルボン酸類としては、炭素数2〜10の乳酸以外のヒドロキシカルボン酸類が好ましく、具体的にはグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などを好適に使用することができ、更にヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンも使用できる。
【0021】
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数2〜30の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フェニルコハク酸、1,4-フェニレンジ酢酸等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0022】
脂肪族ジオールとしては、炭素数2〜30の脂肪族ジオールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ一ル、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0023】
原料としての乳酸以外のヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオールは、得られるコポリマーならびに混合物中の乳酸含有率が50%以上になるように、種々の組み合わせで使用することができる。
【0024】
乳酸系ポリマーは、上記原料を直接脱水重縮合する方法、または上記乳類やヒドロキシカルボン酸類の環状2量体、例えばラクタイドやグリコライド、あるいはε−カプロラクトンのような環状エステル中間体を開環重合させる方法により得られる。
【0025】
直接脱水重縮合して製造する場合、原料である乳酸類又は乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を、脂肪族ジカルボン酸類 及び脂肪族ジオ−ル類を好ましくは有機溶媒、特にフェ
ニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した強度を持つ高分子量の乳酸系ポリマーが得られる。乳酸系ポリマーの重量平均分子量は、成形性が可能な範囲で高分子量のものが好ましく、3万以上500万以下がより好ましく、更に好ましくは7万以上300万が好ましく、特に好ましくは10万以上150万以下が好ましい。
【0026】
本発明では乳酸系ポリマー中の、全乳酸単位含有量中のD−乳酸含有量が8%以下、好ましくは5%以下となる事が好ましい
本発明で用いる無機化合物(B)とは無機化合物は、ケイ酸(SiO2)成分を30%
以上含む結晶性の無機化合物が好ましく、より好ましくはケイ酸(SiO2)成分を40
%以上含む結晶性の無機化合物である。その具体例としては、タルク、カオリン、クレー、シリカが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、また、二種以上を混合して使
用しても良い。これらの中でも特に、タルクが好ましい。
【0027】
本発明で示す無機化合物(B)とは、ポリマーの結晶化を促進向上させるもので、具体的には成形加工された成形物の結晶化速度を促進作用を有するものを言う。
【0028】
また該無機化合物(B)の平均粒径は0.1μm〜50μm、好ましくは0.5μm〜30μm、より好ましくは1.0μm〜20μmである。
【0029】
本発明の乳酸系ポリマー組成物(AA)は、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対し無機化合物(B)の含有量は0.07〜10.0重量部、好ましくは0.08〜10.0重量部であり、さらに好ましくは0.09〜9.0重量部である。その含有量は、結晶化度が1%以下の乳酸系ポリマーをガラス転移温度以上100℃以下で5分の加熱後の結晶化度が5%以下かつ、120℃以上融点以下で5分の加熱後の結晶化度が15%以上、また目的とする成形、加工性当が良好となる最適量が適宜選択される。
【0030】
本発明に記載の結晶化度とは、特に記述しない場合は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC Pyris1)を用い、窒素雰囲気下で10℃/分の昇温条件で0℃から200℃まで昇温した時の結晶融解熱量の絶対値から昇温結晶化熱量の絶対値を引いた値を、ポリ乳酸の理論結晶融解熱量の93.1J/gで除して求めた。
【0031】
また、組成物中に、ポリ乳酸が昇温結晶化する温度域に近い温度域で結晶融解する成分を含む場合は、上述の方法ではポリ乳酸の結晶化熱量を正確に測定できない為、広角X線法(X線解析装置:理学電気(株) RINT2500、Cuターゲット、透過法)により結
晶化度を求めた。
【0032】
本発明では必要により可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の改質剤を添加することもできる。その添加量は、目的とする物性によってその際適量が適宜選択できる。
【0033】
乳酸系ポリマーと結晶核剤等の混合には公知の混練技術を適用できる。本発明による乳酸系ポリマー組成物は造粒することにより、ペレット状のものが得られ、成形に用いられる。
【0034】
乳酸系ポリマー組成物の成形方法としては、公知の方法を用いることができる。通常パウダー状あるいはペレット状の乳酸系ポリマーに結晶核剤をリボンブレンダーなどで混合した後、二軸押出機で組成物を押出しペレット化して成形に供せられる。例えば(a)前記方法にて得られたペレットを成形機に供給する方法、(b)乳酸系ポリマーのペレットを二軸押出機で溶融混練する際に結晶核剤を同時にフィードしながら溶融混練し、成形機に供給する方法、(c)結晶核剤を高濃度に含有した乳酸系ポリマー組成物(マスターバッチ)を一旦製造し、この乳酸系ポリマー組成物を改質用のマスターバッチとして使用し、このマスターバッチを通常のペレットとしての乳酸系ポリマーのペレットで希釈混合して成形機に供給する方法などが挙げられる。
【0035】
上記(c)のマスターバッチ方式を採用する場合、改質用のマスターバッチの希釈倍率は、マスターバッチ中の結晶核剤の濃度によって変わるが、通常2〜50倍、好ましくは3〜40倍、より好ましくは5〜30倍である。この範囲では結晶核剤が均一に分散するので好適に採用できる。
【0036】
このような結晶核剤を高濃度に含有した乳酸系ポリマー組成物(マスターバッチ)としては、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対し、無機化合物(B)を1.0〜50重量部、好ましくは2.0〜40重量部、さらに好ましくは5.0〜30重量部含んでなる乳
酸系ポリマー組成物(AAA)が好ましい。マスターバッチ(AAA)と乳酸系ポリマー(A)との公知の混練にも公知の混練技術を適用することができる。
【0037】
ペレットにした組成物は、加熱処理を行なう事でペレット中のポリマーの結晶化度を促進し、耐熱性が向上して、ペレット同士の融着が防止されて押出安定性が向上する。成形機は公知のものをそのまま用い、公知の方法で成形することができる。
【0038】
本発明の組成物からボトルを成形するには、公知公用の方法が用いることができる。例えば、射出成形機によってプリフォームを成形し、このものの口部を加熱し結晶化させた後に延伸ブロー成形法によって得ることができる。
【0039】
本発明のボトルは、必要に応じてボトル表面に帯電防止性、防曇性、粘着性、ガスバリヤー性、密着性および易接着性等の機能を有する層をコーティングにより形成することができる。例えば、ボトルの表面に、帯電防止剤を含む水性塗工液を塗布、乾燥することによって帯電防止層を形成することができる。
【0040】
本発明に係る樹脂組成物からなるボトルは、飲料用その他のボトルとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0042】
なお、本発明において各種物性は下記の方法で測定し評価した。
(1)結晶化度
特に断りのない限り、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC Pyris1)を
用い、窒素雰囲気下で10℃/分の昇温条件で0℃から200℃まで昇温した時の結晶融解熱量の絶対値から昇温結晶化熱量の絶対値を引いた値を、ポリ乳酸の理論結晶融解熱量の93.1J/gで除して求めた。また、組成物中に、ポリ乳酸が昇温結晶化する温度域
に近い温度域で結晶融解する成分を含む場合は、前述の方法ではポリ乳酸の結晶化熱量を正確に測定できない為、広角X線法(X線解析装置:理学電気(株) RINT2500、Cuターゲット、透過法)により結晶化度を求めた。
(2)二軸延伸ブロー成形時の口部の形状
目視にて、評価し、形状の変形の見られなかったものを「変形なし」とした。
(3)二軸延伸ブロー成形時のボトル胴体部の延伸性
延伸時にプリフォームが途中で破れずに、最後まで賦形出来た場合を「良好」とした。
【0043】
[実施例1]
ヘンシェルミキサー中でポリ乳酸(A1)(H−440(三井化学(株)販売)、重量平均分
子量 21万、L体/D体=96/4、融点 155℃)100重量部、タルクXE−71
(富士タルク工業(株)製)0.6重量部を混合し、ドライブレンド物を調製した。その後、このドライブレンド物を、210℃に設定された、スクリュー径が35mmφの同方向二軸回転式押出機へと供給し、溶融混練して、ペレットを調製した。
【0044】
次いで、前記の方法で得たペレットを用い、シリンダー温度200℃に設定した射出成形機により、非晶の500ccボトル用プリフォーム(目付け量=約32g)を成形した。
【0045】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表面温度140℃で5分間加熱した。この時の口部の結晶化度は15%であった。
【0046】
続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、口部の変形は起らず、且つ胴体部は良好な延伸性をしめした。このプリフォームの胴体部の80℃で1分加熱後、延伸ブロー成形前の結晶化度は1%未満であった。
【0047】
[実施例2]
実施例1のタルクXE−71の添加量0.6重量部を1.0重量部に変更した以外は、実
施例1と同様な操作を行い、プリフォームを得た。
【0048】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表面温度140℃で5分間加熱した。この時のプリフォームの口部の結晶化度は20%であった。
【0049】
続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、口部の変形は起らず、且つ胴体部は良好な延伸性をしめした。このプリフォームの胴体部の80℃で1分加熱後、延伸ブロー成形前の結晶化度は1%未満であった。
【0050】
[実施例3]
実施例1のタルクXE−71の添加量0.6重量部を8.0重量部に変更した以外は、実
施例1と同様な操作を行い、プリフォームを得た。
【0051】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表面温度140℃で5分間加熱した。この時のプリフォームの口部の結晶化度は30%であった。
【0052】
続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、口部の変形は起らず、且つ胴体部は良好な延伸性をしめした。このプリフォームの胴体部の80℃で1分加熱後、延伸ブロー成形前の結晶化度は4%であった。
【0053】
[実施例4]
実施例2のポリ乳酸(A1)100重量部をポリ乳酸(A2)(H−400(三井化学(
株)販売)、重量平均分子量 20万、L体/D体=98.6/1.4)100重量部に変更
した以外は、実施例2と同様な操作を行い、プリフォームを得た。
【0054】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表面温度140℃で5分間加熱した。この時のプリフォームの口部の結晶化度は35%であった。
【0055】
続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、口部の変形は起らず、且つ胴体部は良好な延伸性をしめした。このプリフォームの胴体部の80℃で1分加熱後、延伸ブロー成形前の結晶化度は4%であった。
【0056】
[実施例5]
実施例4のタルクXE−71の添加量1.0重量部を0.1重量部に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、プリフォームを得た。
【0057】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表
面温度140℃で5分間加熱した。この時のプリフォームの口部の結晶化度は29%であった。
【0058】
続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、口部の変形は起らず、且つ胴体部は良好な延伸性をしめした。このプリフォームの胴体部の80℃で1分加熱後、延伸ブロー成形前の結晶化度は1%未満であった。
【0059】
[実施例6]
実施例2のポリ乳酸(A1)100重量部を、ポリ乳酸(A1)90重量部とビオノーレ#1001(昭和高分子(株)製)10重量部にした以外は実施例2と同様な操作を行い、プリフォームを得た。
【0060】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表面温度140℃で5分間加熱した。この時のプリフォームの口部の結晶化度は23%であった。
【0061】
続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、口部の変形は起らず、且つ胴体部は良好な延伸性をしめした。このプリフォームの胴体部の80℃で1分加熱後、延伸ブロー成形前の結晶化度は1%未満であった。
【0062】
[実施例7]
ヘンシェルミキサー中でポリ乳酸(A1)(H−440(三井化学(株)販売)、重量平均分子量 21万、L体/D体=96/4、融点 155℃)100重量部、タルクXE−7
1(富士タルク工業(株)製)10重量部を混合し、ドライブレンド物を調製した。その後、このドライブレンド物を、210℃に設定された、スクリュー径が35mmφの同方向二軸回転式押出機へと供給し、溶融混練して、ペレットを調製しタルクXE−71のマスターバッチペレットとした。
【0063】
次いで、前記の方法で得たマスターバッチペレット10重量部とポリ乳酸(A1)90重量部をペレット状態で予備混合し、シリンダー温度200℃に設定した射出成形機に供給し、非晶の500ccボトル用プリフォーム(目付け量=約32g)を成形した。
【0064】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表面温度140℃で5分間加熱した。この時の口部の結晶化度は17%であった。続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、口部の変形は起らず、且つ胴体部は良好な延伸性をしめした。このプリフォームの胴体部の80℃で1分加熱後、延伸ブロー成形前の結晶化度は1%未満であった。即ち、実施例1と同等の効果が得られた。
【0065】
[比較例1]
実施例1のタルクXE−71の添加量0.6重量部を0.05重量部に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、プリフォームを得た。
【0066】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表面温度140℃で5分間加熱した。この時のプリフォームの口部の結晶化度は8%であった。続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、縦延伸時に口部のつぶれ及びブロー成形時に口部の膨れが発生し良好なボトルは得られなかった。
【0067】
[比較例2]
実施例4のタルクXE−71の添加量1.0重量部を15重量部に変更した以外は、実施
例1と同様な操作を行い、プリフォームを得た。
【0068】
このプリフォームの口部の結晶化度は1%未満であった。このプリフォームの口部を表面温度140℃で5分間加熱した。この時のプリフォームの口部の結晶化度は45%であった。
【0069】
続いてこのプリフォームの胴体部を、延伸ブロー可能温度範囲内の80℃で1分加熱した後、延伸ブロー成形を行ったところ、延伸時に胴体部の破れが発生し成形出来なかった。このプリフォームの胴体部の80℃で1分加熱後、延伸ブロー成形前の結晶化度は25%であった。
【0070】
【表1】

【0071】
ポリ乳酸(A1):重量平均分子量21万、L体/D体=96/4、融点155℃(三井化学(株)販売 H−440)
ポリ乳酸(A2):重量平均分子量20万、L体/D体=98.6/1.4、融点167℃(三井化学(株)販売 H−400)
結晶化度A:射出成形されたプリフォームの口部を140℃で5分加熱した後の口部の結晶化度
結晶化度B:プリフォームの口部を140℃で5分加熱後、胴体部を80℃で1分過熱した後の胴体部の結晶化度
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、成形性に優れ、さらに分解性が良好な乳酸系ポリマー組成物の提供が可能になる。さらに本発明によれば、乳酸系ポリマー組成物から、成形性、生産性に優れ、さらに分解性が良好な射出二軸延伸ブローの提供が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸系ポリマー(A)100重量部に対しケイ酸(SiO2)成分を30%以上含む結
晶性の無機化合物(B)0.07〜10重量部を含有する乳酸系ポリマー組成物(AA)から、射出成形機によりプリフォームを作製し、このプリフォームの口部を120℃以上融点以下で加熱して結晶化度15%以上に結晶化させた後、該プリフォームをガラス転移温度以上100℃以下で加熱した後、延伸ブロー成形してボトルを製造する方法。
【請求項2】
前記無機化合物(B)が、タルク、カオリン、クレー、シリカから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のボトルを製造する方法。
【請求項3】
乳酸系ポリマー(A)中の乳酸単位中のD体の含有量が8%以下であり、乳酸系ポリマー組成物(AA)から、射出成形機によりプリフォームを作製し、このプリフォームの口部を120℃以上融点以下で5分加熱して結晶化度15%以上に結晶化させた後、該プリフォームをガラス転移温度以上100℃以下で1分加熱した後、延伸ブロー成形することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のボトルを製造する方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法によって得られた射出二軸延伸ボトル。
【請求項5】
乳酸系ポリマー(A)100重量部及びケイ酸(SiO2)成分を30%以上含む結晶
性の無機化合物(B)1.0〜50重量部を含有する樹脂組成物(AAA)を、乳酸系ポ
リマー(A)によって希釈することによって得られた請求項1〜3のいずれかに記載した乳酸系ポリマー組成物(AA)を用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のボトルを製造する方法。

【公開番号】特開2010−6082(P2010−6082A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237130(P2009−237130)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【分割の表示】特願2004−10325(P2004−10325)の分割
【原出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】