説明

乾燥なめこの製造方法及びこの製造方法により製造された乾燥なめこ

【課題】茎の部分が長くても良好な乾燥状態の乾燥なめこを製造し得る乾燥なめこの製造方法を提供すること。
【解決手段】生のなめこ及び生の茎部分のみからなるなめこの少なくとも1種を、乾燥機中で、相対湿度50%〜60%、温度35℃〜45℃の温風を用いて一次乾燥を行い、次いで相対湿度40%〜50%、温度50℃〜60℃の温風を用いて本乾燥を行う。この一次乾燥の継続時間は4〜6時間とし、本乾燥の継続時間は2〜4時間とするとよく、また、一次乾燥と本乾燥との間に、常温下又は低温下に保存するあん蒸工程を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生のなめこ及び生の茎部分のみからなるなめこの少なくとも1種を原料として用いた乾燥なめこの製造方法及びこの製造方法により製造された乾燥なめこに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キノコの保存性を向上させるため、キノコを乾燥して乾燥キノコとすることが行われており、シイタケ、エリンギ、ヒラタケ、マイタケ、マツタケ等については多く生産されている。特に、乾燥シイタケは、ビタミンDやビタミンB1等の栄養素が多く含まれ、健康に良い食品として親しまれており、市場流通量も非常に多くなっている。
【0003】
このような乾燥キノコを製造する際には、天日乾燥であるとキノコの乾燥状態が天候に作用されるためにばらつきが生じることから、通常は乾燥装置を用いて温風乾燥を行うことが行われている。しかも、キノコは、笠の部分と茎の部分とでは水分含有量が異なることから、単純に乾燥するとキノコが変形したり、風味を失ってしまうことがある。そのため、通常は乾燥装置の温度や湿度を適宜に制御することにより、キノコの変形が少なく、風味が良好であって商品価値が高い乾燥キノコを製造することが行われている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、生シイタケの内部の水分を表面に滲出させ得る減圧状態での温風乾燥と、主として生シイタケの表面を乾燥させる常圧状態での温風乾燥とを数分間隔で交互に繰り返すことにより、生シイタケの表面と内部とを均一に乾燥させて乾しシイタケに仕上げるシイタケの乾燥方法の発明が開示されている。下記特許文献1に記載された発明によれば、シイタケの乾燥過程において、表面と内部との乾燥の程度の差が少なくなるので、変形することなく原形を保ち、しかも、従来よりも短時間で味の良い品質の優良な乾しシイタケを量産することができるようになるというものである。
【0005】
また、下記特許文献2には、シイタケを乾燥機に収容し、この乾燥機に熱風を流通して乾燥シイタケを製造するに際し、相対湿度を45〜60%に加湿すると共に、温度を55〜65℃に加熱した熱風で前処理乾燥した後、温度を60〜80℃に少なくとも一段階で加熱した熱風によって本乾燥することからなるシイタケの乾燥方法の発明が示されている。下記特許文献2に記載された発明によれば、前処理乾燥によってシイタケの表面が加湿されながら高温となり、その表面からの水分の蒸散が活発化してシイタケの内部の温度が高まって表面への水分の拡散速度が増加し、水分の蒸散と拡散とがバランスして表面硬化を起こすことがなくなり、その後の本乾燥によってシイタケの温度内部の温度が高いことと相まって高温熱風によりさらに昇温され、内部の水分蒸散が促進されるので、乾燥時間を大幅に短縮できるというものである。
【0006】
また、下記特許文献3には、生の松茸を網状体に載せて乾燥室に入れ、この乾燥室に温風を送給するとともにこれを排気して、該松茸を上記温風にさらして乾燥するようにした松茸の乾燥方法において、50℃以下の温風を送風する第一次乾燥工程と、第一次乾燥工程の後に温風の送球を停止して乾燥室内を常温に戻す休止工程と、この休止工程の後に50℃以下の範囲の温風を温度を順次上げて送球する第二次乾燥工程とを備えた松茸の乾燥方法の発明が開示されている。下記特許文献3に開示されている乾燥松茸の製造方法によれば、遷移構造がシイタケよりも弱い松茸においても、収縮の少ない乾燥松茸を製造することができるというものである。
【0007】
また、下記特許文献4には、乾燥キノコの製造装置として、乾燥室に、パネルヒーターと、パネルヒーターによる加熱により遠赤外線を放射するセラミックスパネルと、乾燥室の空気を循環させる送風ファンとを設けたものを使用し、乾燥室の温度を50℃以下とすることによって乾燥するようにした乾燥マイタケの製造方法が示されている。下記特許文献4に示されている乾燥マイタケの製造方法によれば、マイタケ本来の良い香りを保持し、水戻しに要する時間が短く、水戻し後は生のものと同様な色相、食感で味わうことの乾燥マイタケを作製できるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平 4− 29324号公報
【特許文献2】特公平 4− 24018号公報
【特許文献3】特開平 3− 94636号公報
【特許文献4】特開2002− 34494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜4に示されているように、きのこの種類によってそれぞれ乾燥状態を変えることにより、各種乾燥きのこを製造することが知られている。しかしながら、従来作製されていた乾燥キノコは、シイタケ、エリンギ、ヒラタケ、マイタケ、松茸等、サイズが大きいもので組織の水分含有量が少なく、組織が強固であるためにスライスして乾燥することもでき、しかも空気中である程度常温保存することができるものが大部分であった。
【0010】
これに対し、なめこは、サイズが小さく、しかも笠部の表面にゼラチン状のぬめり成分を多量に有しており、特に笠部の水分含有量が多いため、空気中で常温保存すると、笠部の組織の劣化が急速に進むという性質を有している。また、なめこは、生食用にも提供できることから、通常は笠を含む部分が茎の長さが1〜2cm程度、長くても2.5cm程度となるように採取されており、それ以上の茎の大部分は生食には適さないために破棄されている。
【0011】
そのため、一般的ななめこは茎の長さが6cm以上にもなるから、なめこの生産に際しては、食料資源として大きな無駄が生じている。しかも、生のなめこの長期保存は、笠の部分を冷凍することによるものが大部分であり、しかも、乾燥するとぬめりが少なくなって商品価値が低下すると考えられていたこと及び笠の部分と茎の部分とでは最適な乾燥条件が異なることから、茎の部分を長く残したまま乾燥なめことすることは実質的に行われていない。
【0012】
しかしながら、生のなめこを冷凍保存することは、エネルギーの使用量が大きく、費用がかかるという課題が存在する。しかも、加工食品製造用には必ずしも笠の部分のみとする必要はないため、なめこの場合も、他のキノコの場合と同様に、茎の部分を長く残した状態で乾燥なめことすることが要望されている。
【0013】
一方、なめこは、笠の部分はぬめり成分が多く存在するのに対して茎の部分はぬめりがないので、笠の部分と茎の部分とでは水分含有量が大きく異なる。そのため、原料として茎の部分を長く残した生のなめこを用いて乾燥なめこを製造するに際し、上述のような他のきのこの乾燥方法をそのまま適用すると、茎の部分の乾燥は良好に進行するが、笠の部分の表面からの水分の蒸発が早すぎて表面組織が縮んで硬くなってしまい、笠の部分の内部組織の乾燥が進行し難いという課題が存在する。しかも、なめこはサイズが小さいので、スライスして笠の部分の内部組織を乾燥し易くするには適していない。
【0014】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、生のなめこ及び生の茎部分のみからなるなめこの少なくとも1種を所定の条件で乾燥することにより、茎の部分を長く残した場合であっても、茎部分のみの場合であっても、良好に全体を乾燥することができ、安価に作製できると共に長期保存が可能な乾燥なめこの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の乾燥なめこの製造方法は、生のなめこ及び生の茎部分のみからなるなめこの少なくとも1種を、乾燥機中で、相対湿度50%〜60%、温度35℃〜45℃の温風を用いて一次乾燥を行い、次いで相対湿度40%〜50%、温度50℃〜60℃の温風を用いて本乾燥を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明における「乾燥なめこ」とは、笠の部分がついているものだけでなく、茎部分のみのものを含む意味で用いられている。そして、本発明の乾燥なめこの製造方法は、生のなめこ及び生の茎部分のみからなるなめこの少なくとも1種に対して、一次乾燥を相対湿度50%〜60%、温度35℃〜45℃の温風を用いて行うことが必要である。この一次乾燥条件は、比較的低温で湿度が高い条件であるので、生のなめこの笠部の乾燥が穏やかに進むため、笠部の収縮が少なく、比較的原型を保った状態で乾燥が進行する。この一次乾燥の相対湿度が50%未満であると、乾燥温度が35℃〜45℃と低くても乾燥速度が早くなるので、なめこの笠の部分の収縮が進みすぎる。また相対湿度が60%を超えると、乾燥温度が35℃〜45℃と低いために乾燥が進み難く,乾燥に必要な時間が長くなる。また、乾燥温度が35℃未満であると、相対湿度が50%〜60%と高いので乾燥速度が遅くなり、乾燥に必要な時間が長くなる。また、乾燥温度が45℃を超えると、相対湿度が50%〜60%と高くても乾燥速度が早くなり、なめこの笠の部分の収縮が大きくなる。
【0017】
また、本発明の乾燥なめこの製造方法においては、一次乾燥の後に、相対湿度40%〜50%、温度50℃〜60℃の温風を用いて本乾燥を行っている。本乾燥を一次乾燥よりも低湿度かつ高温で行うことにより,短時間で全体の乾燥を行うことができるようになる。本乾燥の相対湿度が40%未満であると、乾燥温度が50℃〜60℃と高いために乾燥速度が早くなるので、なめこの笠の部分の収縮が進みすぎる。また相対湿度が50%を超えると、乾燥温度が50℃〜60℃と高くても乾燥が進み難く,乾燥に必要な時間が長くなる。また、乾燥温度が50℃未満であると、相対湿度が50℃〜60℃と高くても乾燥速度が遅くなり、乾燥に必要な時間が長くなる。また、乾燥温度が60℃を超えると、乾燥速度が早くなるが、風味が失われてしまう。
【0018】
本発明によって製造された乾燥なめこは、笠部分が原型に近い状態を維持したまま、笠部分だけでなく茎部分も内部が良好に乾燥されているため、半年〜1年単位で長期保存することができ、使用時には約20〜30分湯又は水で戻すことによって調理や加工食品製造用に使用することができるようになる。湯又は水で戻した本発明によって製造された乾燥なめこは、ぬめりは生の状態よりも少なくなっているが、香り、歯ごたえなどは生のなめこよりも強いものとなる。
【0019】
また、本発明の乾燥なめこの製造方法においては、前記一次乾燥と本乾燥との間に、常温下又は低温下に保存するあん蒸工程を設けることができる。
【0020】
あん蒸工程は、組織の内部の水分を外側に滲み出させる工程である。なめこは、一次乾燥でなめこの笠部分の乾燥が進むと笠の表面が収縮して水分の蒸発速度が遅くなるが、このあん蒸工程を経るとなめこの組織の内部の水分が表面に拡散して来るので、組織全体の水分濃度が均質に近くなる。そのため、本発明の乾燥なめこの製造方法によれば、本乾燥を経ることにより笠部分だけでなく茎部分も良好に乾燥された乾燥なめこを得ることができる。
【0021】
なお、あん蒸工程を経た乾燥なめこは、あん蒸工程を経ない乾燥なめこと比較すると、乾燥の度合いが良好となって1年以上の長期保存に耐えられるようになると共に、湯又は水で戻したときにぬめりが多くなる。また、あん蒸工程を経ない乾燥なめこは、半年程度の長期保存に耐えられ、あん蒸工程を経た乾燥なめこと比較すると味が良く、歯ごたえがあり、香りがよいという利点があるが、ぬめりが減少する。
【0022】
また、本発明の乾燥なめこの製造方法においては、前記生のなめこは、茎部分の長さが5cm以上のものであることが好ましい。
【0023】
本発明の乾燥なめこの製造方法によれば、石突き部分を除いた茎部分の長さが5cm以上の生のなめこを用いた場合であっても、笠の部分と茎の部分との乾燥が良好に進み、原型に近い状態を維持したまま乾燥なめことすることができる。
【0024】
また、本発明の乾燥なめこの製造方法においては、下段側に前記茎部分の長さが5cm以上の生のなめこを、上段側に前記生の茎部分のみからなるなめこをそれぞれ配置し、最下段側から前記温風を供給して乾燥することができる。
【0025】
生食用のなめこを製造する際には、茎の部分が副成される。従来、この茎の部分は廃棄されていたが、本発明の本発明の乾燥なめこの製造方法によれば、なめこの茎の部分は笠の部分よりも乾燥させ易いので、このような副成されたなめこの茎部分のうち、石突き部分を除いた茎だけの部分も同時に乾燥することができ、経済的となる。
【0026】
また、本発明の乾燥なめこの製造方法においては、前記一次乾燥の継続時間を4〜6時間とし、前記本乾燥の継続時間を2〜4時間とすることが好ましい。
【0027】
本発明の乾燥なめこの製造方法では、一次乾燥条件が高湿度低温条件となっており、本乾燥条件が低湿度高温条件となっているる。そのため、一次乾燥時間を4〜6時間とすれば、笠の部分の収縮を抑制しながら笠の部分だけでなく茎の部分もの水分を大きく減らすことができ、さらに、本乾燥の継続時間2〜4時間とすれば、充分に乾燥した乾燥なめこを製造することができるようになる。
【0028】
また、本発明の乾燥なめこの製造方法においては、前記あん蒸工程を低温中で2〜5時間行うことが好ましい。
【0029】
あん蒸工程を低温下で行うとあん蒸に要する時間が長くなるが、作製された乾燥なめこの香りの低下が抑制される。また、あん蒸工程を常温下で行うとあん蒸に要する時間が短くなるが、作製された乾燥なめこの香りの低下が大きくなる。
【0030】
また、上記目的を達成するため、本発明の乾燥なめこは、上記何れかの乾燥なめこの製造方法によって製造されたものであることを特徴とする。
【0031】
本発明の乾燥なめこによれば、笠付の茎が長いなめこであっても、或いは笠部分のみのなめこであっても、笠部分が原型に近い状態を維持したまま、笠部分だけでなく茎部分も内部が良好に乾燥されているため、半年〜1年単位で長期保存することができ、使用時には約20〜30分湯又は水で戻すことによって調理や加工食品製造用に使用することができるようになる。また、本発明の乾燥なめこは、湯又は水で戻した際には、ぬめりは生の状態よりも少なくなっているが、香り、歯ごたえなどは生のなめこよりも強いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1Aはなめこの生育状態を示す側面図であり、図1Bは生育された1本のなめこの具体的寸法の一例である。
【図2】実施形態で使用した乾燥なめこの製造用乾燥機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例を示すものであって、本発をこの実施形態に特定することを意図するものではなく、本発は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0034】
まず、例えば一般的なポット栽培されたなめこの生育状況は、図1Aに示したとおりである。このように生育されたなめこは、人手により、或いは機械的に笠の部分を含むように茎の部分が切り取られる。従来のなめこの採取範囲は、図1Bに示したように、生食用にも供給することができるようにするため茎の長さは長くても2.5cm程度とされている。なめこの1本の長さは6cm以上7cm程度にもなるので、茎の長さの4cm以上が破棄されていることになる。
【0035】
それに対し、本発明は、原料として、破棄されていた生の茎部分のみからなるなめこ及び茎の長さが5cm以上となるようにして採取された生の笠つきのなめこを使用しているため、破棄される部分、すなわち石突き部分の長さは約1cm以下となり、従来のものよりも破棄される部分は非常に短くなる。なお、採取されたなめこは、それぞれ多種の長さのものが混合しているため、茎の長さの長いものを選別して茎の長さが短いものは生食用として用いてもよく、多種の長さのものが混合している状態で乾燥なめこを製造するようにしてもよい。
【0036】
次いで、実施形態で使用するなめこ乾燥機の構成を図2を用いて説明する。このなめこ乾燥機10は、箱体11内を穿孔板12により乾燥室13と下部通風室14とに区画し、この下部通風室14にダクト15を介して上面開口に送風機16を取り付けた熱交換機17を連結し、乾燥室13に開閉扉(図示省略)を設けると共に、多数の支持杆18を横架してこれに目の細かい乾燥網19を支持させ、乾燥室13の上壁に排風室20を設け、この排風室20に排風機21を設けた構成を有している。なお、このようななめこ乾燥機は、従来例のしいたけ乾燥機等をそのまま使用することもできる。
【0037】
そして、実施形態の乾燥なめこの製造方法では、複数枚の乾燥網19にそれぞれ生の茎部分のみからなるなめこ及び上述のようにして採取された茎の長さが5cm以上の生のなめこを均一になるように分散させ、生の茎部分のみからなるなめこの置かれた乾燥網19を送風機16から遠い位置に、笠つきなめこの置かれた乾燥網19を送風機16から近い位置になるよう、なめこ乾燥機10の乾燥室13内にセットする。次いで、熱交換機17、送風機16及び排風機21を制御することにより、相対湿度50%〜60%、温度35℃〜45℃の温風を用いて一次乾燥を行う。この一次乾燥は、高湿度低温条件となっているので、4〜6時間とする。
【0038】
この一次乾燥では、生のなめこの笠部の乾燥が穏やかに進むため、笠部の収縮が少なく、比較的原型を保った状態で乾燥が進行する。この一次乾燥の相対湿度が50%未満であると、乾燥温度が35℃〜45℃と低くても乾燥速度が早くなるので、なめこの笠の部分の収縮が進みすぎ、相対湿度が60%を超えると、乾燥温度が35℃〜45℃と低いために乾燥が進み難く,乾燥に必要な時間が長くなる。また、乾燥温度が35℃未満であると、相対湿度が50%〜60%と高いので乾燥速度が遅くなるので、乾燥に必要な時間が長くなり、乾燥温度が45℃を超えると、相対湿度が50%〜60%と高くても乾燥速度が早くなり、なめこの笠の部分の収縮が大きくなってしまう。一次乾燥中、乾燥網19の位置を適宜入れ替える。これは温風が乾燥機の下部から送られているため、送風機16に近い乾燥網19に置かれたなめこのほうが、送風機16から遠い乾燥網19に置かれたなめこよりも速く乾燥してしまうためである。このとき、笠つきなめこは笠つきなめこ、茎部分のみのなめこは茎部分のみのなめこが置かれた乾燥網19同士で入れ替える。
【0039】
この一次乾燥を終えた後、あん蒸を行わない場合は直ちに本乾燥に移行する。本乾燥は、一次乾燥よりも相対湿度40%〜50%、温度50℃〜60℃の温風を用いて、2〜4時間行う。本乾燥を一次乾燥よりも低湿度かつ高温で行うことにより,短時間で全体の乾燥を行うことができるようになる。本乾燥の相対湿度が40%未満であると、乾燥温度が50℃〜60℃と高いために乾燥速度が早くなるので、なめこの笠の部分の収縮が進みすぎ、相対湿度が50%を超えると、乾燥温度が50℃〜60℃と高くても乾燥が進み難く,乾燥に必要な時間が長くなる。また、乾燥温度が50℃未満であると、相対湿度が50℃〜60℃と高くても乾燥速度が遅くなって乾燥に必要な時間が長くなり、乾燥温度が60℃を超えると、乾燥速度が早くなるが、風味が失われてしまう。
【0040】
この工程を経た後、熱交換機17、送風機16及び排風機21の運転を停止し、本乾燥されたなめこを載せた乾燥網19を取り出し、自然放冷することにより乾燥なめこを得る。このようにして作製された乾燥なめこは、原型に近い状態を維持したまま内部が良好に乾燥されているため、半年程度は長期保存することができ、使用時には約20〜30分湯又は水で戻すことによって調理や加工食品製造用に使用することができるようになる。湯又は水で戻した本発明によって製造された乾燥なめこは、ぬめりは生の状態よりも少なくなっているが、香り、歯ごたえなどは生のなめこよりも強いものとなる。
【0041】
また、一次乾燥を終えた後、あん蒸を行う場合、最初に熱交換機17の運転を停止すると共に、送風機16及び排風機21を運転したままとし、常温の空気を流通させることにより一次乾燥されたなめこを常温まで冷却する。その後、送風機16及び排風機21の運転を停止し、常温のまま1〜3時間放置する。または、一次乾燥されたなめこを載せた乾燥網19を取り出し、0〜10℃に維持された冷蔵庫などの低温所内に載置して2〜5時間放置する。このあん蒸期間になめこの組織の内部の水分が表面に拡散して来るので、組織全体の水分濃度が均質に近くなる。
【0042】
その後、上述の場合と同様にして本乾燥を行う。低温であん蒸する場合、常温であん蒸する場合よりもあん蒸に要する時間が長くなるが、作製された乾燥なめこの香りの低下が抑制される。また、常温であん蒸を行う場合、低温であん蒸を行う場合よりもあん蒸に要する時間が短くなるが、作製された乾燥なめこの香りの低下が大きくなる。ただし、何れの環境下であん蒸を行っても、あん蒸を行わない場合と比較すると、乾燥の度合いが良好なるので1年以上の長期保存に耐えられるようになると共に、湯又は水で戻したときにぬめりが多くなるが、味、歯ごたえ及び香りが低下する。
【符号の説明】
【0043】
10…乾燥機
11…箱体
12…穿孔板
13…乾燥室
14…下部通風室
15…ダクト
16…送風機
17…熱交換機
18…支持杆
19…乾燥網
20…排風室
21…排風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生のなめこ及び生の茎部分のみからなるなめこの少なくとも1種を、乾燥機中で、相対湿度50%〜60%、温度35℃〜45℃の温風を用いて一次乾燥を行い、次いで相対湿度40%〜50%、温度50℃〜60℃の温風を用いて本乾燥を行うことを特徴とする乾燥なめこの製造方法。
【請求項2】
前記一次乾燥と本乾燥との間に、常温下又は低温下に保存するあん蒸工程を設けることを特徴とする請求項1に記載の乾燥なめこの製造方法。
【請求項3】
前記生のなめこは、茎部分の長さが5cm以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の乾燥なめこの製造方法。
【請求項4】
前記乾燥機中に、下段側に前記茎部分の長さが5cm以上の生のなめこを、上段側に前記生の茎部分のみからなるなめこをそれぞれ配置し、最下段側から前記温風を供給して乾燥することを特徴とする請求項3に記載の乾燥なめこの製造方法。
【請求項5】
前記一次乾燥の継続時間を4〜6時間とし、前記本乾燥の継続時間を2〜4時間としたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の乾燥なめこの製造方法。
【請求項6】
前記あん蒸工程を低温中で2〜5時間行うことを特徴とする請求項2に記載の乾燥なめこの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の乾燥なめこの製造方法によって製造された乾燥なめこ。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−135279(P2012−135279A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290810(P2010−290810)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(503143208)
【Fターム(参考)】