説明

乾燥保護コーティングを備えた管状ねじ山付き要素

基板に接着する固体マトリックスを備えるコーティングには、1つあるいは同じクラスに属する少なくとも1種の固体潤滑剤が分散する。固体マトリックスは、潤滑性であり、塑性または粘塑性型のレオロジー的挙動を有する。提供される本発明は、炭化水素井戸にて使用されるねじ山付き要素のねじ山(threading)を腐食および摩損(galling)から保護することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状ねじ山付き接続部用ねじ山付き要素に関する。
【背景技術】
【0002】
管状コンポーネント(チューブあるいはスリーブ)の端部に備えられて炭化水素井戸にて使用されるねじ山付き要素は、まず掘削部位が輸送または保管の間に腐食から保護されなければならず、そのために従来より製造所を発つ際に油またはグリースで被覆されていた。
【0003】
井戸において、ねじ山付き要素は、複数の組立ておよび分解作業を経なければならない。組立作業は、高い軸方向荷重下、例えばねじ山付き接続部により垂直に組み立てられた何メートルもの長さ(通常、長さ10〜13m)の管の重量下で垂直に行われ、かつ特にねじ山(threading)の摩損(galling)を生じさせる。また、この荷重は、組み立てられた管が垂直に取り付けられるので、組み立てられたねじ山付き要素の軸が微妙なミスアライメントにより配置され、そのことが摩損のおそれを増大させる。ここで、図1は、ミスアライメントを伴う建設現場における長さ10〜13mである2つの管1および2のねじ山付き接続部を用いたアセンブリーのための手順を示しており、パワートング3が管1の雄型ねじ山部4を管2の雌型ねじ山部5に組み立てるために使用されている。
【0004】
組立ておよび分解作業における摩損からねじ山などの繊細な部分を保護するために、ねじ山には従来より保護グリースを施さずに非特許文献1にしたがったグリースなどの特別な組立グリースを被覆していた。そのような鉛などの重金属および/または毒性の金属で充たされたグリースの使用は、井戸において二度目の被覆作業を行う必要があることに加えて、組立作業の間にねじ山から漏れ出した余分なグリースが井戸や環境の汚染をもたらすという弊害を伴う。
【0005】
特許文献1では、化学的作用を伴う少なくとも1種の極圧添加剤を含んだワックス状(セミドライと呼ばれる)の潤滑剤の薄層を使用して、2つの連続したコーティングをねじ山付き要素の製造所において行う一度のコーティングに置き換えることが提案されている。しかしながら、このようなセミドライコーティングは、輸送および保管の間に埃または砂の粒子による汚染からの機械的保護が必要であるという弊害を招く。
【0006】
特許文献2〜7では、グリースを、ねじ山付き要素の製造所において適用する固相の様々な保護コーティングであって基板に付着する固体マトリックスを含み、固体潤滑剤の粒子が分散したものに、置き換えることが提案されており、それらの中でも二硫化モリブデンMoSが特に詳しく述べられている。
【0007】
これらのコーティングは、グリースに比べて改善が見られるものの完全に十分ではない。特に、掘削現場条件下で、コーティングの剥がれ落ちることおよび/またはその摩擦面から粒子がもぎ取られて自然環境内に拡散されることが頻繁に見出され、これらのことから管状コンポーネントを工場に戻すことが必要になっている。
【0008】
さらに、それらのコーティングは、一般的に、約200℃の炉において何十分あるいは実際には1時間を超えて加熱することにより硬化させる必要があり、このことはコーティング生成サイクルを相当増やし、ねじ山の機械組立てに沿うことができない。
【0009】
さらに、それらは腐食からねじ山を保護しないか保護が十分ではないので、特許文献5および7では腐食防止物質のセパレート層の塗布を提供する(前者ではカルボン酸、後者では亜鉛粒子を含むエポキシ樹脂)。
【0010】
それらの二層コーティングは、より一層扱いにくい生成サイクルを必要とするし、粒子がもぎ取られる問題を解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6933264号明細書
【特許文献2】米国特許第4414247号明細書
【特許文献3】米国特許第4630849号明細書
【特許文献4】米国特許第6027145号明細書
【特許文献5】米国特許第6679526号明細書
【特許文献6】米国特許公開第2004/0166341号
【特許文献7】国際公開第2004/033951号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】米国石油協会仕様書API RP5A3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、公知の乾燥あるいはセミドライコーティングやグリースの弊害を改善し、それによりコーティングの塗布の摩擦性および生産性に関してその状況を改善することにある。
【0014】
任意に、本発明の目的は、ねじ山付き要素の腐食に関してその状況を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
作業条件下、特に建設現場条件下での組立てとは、垂直位置において一般的に実行される組立作業を意味し、(i)第1のねじ山付き要素が垂直に保持されるとともに固定され、(ii)第1のねじ山付き要素上に組み立てられ、13m長であり得る管の末端に配置されるとともに固定される第2のねじ山付き要素が昇降装置により第1のねじ山付き要素上に実質的に垂直に保持され、その後にモータ駆動されたパワートングなどの適切な装置を使用して第1のねじ山付き要素に組み立てられる。同様に、建設現場条件下での分解とは、垂直に配置されるとともに、それにより管の重量および起こりやすいミスアライメントを支持する第1および第2のねじ山付き要素を意味し、分解される管が昇降装置から吊り下げられる。
【0016】
本発明は、特に、基板にベタ付かずに(not sticky to the touch)付着する固相の薄いコーティングにより覆われたねじ山(threading)を備える摩損(galling)に抵抗性がある管状ねじ山付き接続部用ねじ山付き要素であって、前記薄いコーティングは固体マトリックスと当該マトリックス内の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子の分散液とを含むものに関する。
【0017】
本発明によれば、固体マトリックスは、潤滑性があり塑性または粘塑性型のレオロジー的挙動を示す。
【0018】
一態様にしたがえば、少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子の分散液は、クラス1、2、3または4の1種の潤滑剤の粒子を含む。
【0019】
本発明の他の態様にしたがえば、マトリックスは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、摩擦により前記ねじ山付き要素の表面近傍に形成される、デブリス粒子を再凝集させることが可能なデブリス粒子再凝集体手段とを含む。
【0020】
本発明の追加あるいは代替される任意の特徴は、下記に述べる。
【0021】
マトリックスは、80〜320℃の間の融点を有する。
【0022】
熱可塑性ポリマーは、ポリエチレンである。
【0023】
マトリックスは、少なくとも1種の金属石鹸を含む。
【0024】
マトリックスは、少なくとも1種の植物、動物、無機物または合成品由来のワックスを含む。
【0025】
ワックスは、カルナバワックスである。
【0026】
マトリックスは、少なくとも1種の腐食防止剤を含む。
【0027】
腐食防止剤は、スルホン酸カルシウム誘導体である。
【0028】
石鹸は、基準ISO9227による塩水噴霧試験における腐食の発生のための時間が向上するように選択される。
【0029】
マトリックスは、100℃における動粘度が850mm/秒以上である少なくとも1種の液体ポリマーを含む。
【0030】
液体ポリマーは、水に不溶性である。
【0031】
液体ポリマーは、アルキルポリメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテンおよびポリジアルキルシロキサンから選択される。
【0032】
マトリックスは、少なくとも1種の表面活性剤を含む。
【0033】
マトリックスは、少なくとも1種の着色剤を含む。
【0034】
マトリックスは、少なくとも1種の抗酸化剤を含む。
【0035】
固体潤滑剤の粒子は、クラス1の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含む。
【0036】
固体潤滑剤の粒子は、グラファイト粒子を除くクラス1の潤滑剤の粒子から選択される。
【0037】
固体潤滑剤の粒子は、窒化ホウ素および酸化亜鉛から選択されるクラス1の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含む。
【0038】
固体潤滑剤の粒子は、クラス2の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含む。
【0039】
固体潤滑剤の粒子は、二硫化モリブデンの粒子を除くクラス2の潤滑剤の粒子から選択される。
【0040】
固体潤滑剤の粒子は、フッ化グラファイト、硫化スズおよび硫化ビスマスから選択されるクラス2の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含む。
【0041】
固体潤滑剤の粒子は、クラス4の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含む。
【0042】
固体潤滑剤の粒子は、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリアミド11から選択されるクラス4の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含む。
【0043】
また、本発明は、雄型ねじ山付き要素と雌型ねじ山付き要素とを備えた管状ねじ山付き接続部であって、前記ねじ山付き要素の少なくとも1つが既に明示した通りであることを特徴とするもの、および管状ねじ山付き要素を仕上げるための方法において、被覆される表面にコーティングの接着性を向上させるための表面処理が施された後に、既に明示されたような薄層状の耐摩損コーティングがねじ山の表面に少なくとも塗布されるものに関する。
【0044】
本発明の方法は、下記の特徴の少なくともいくつかを含み得る。
【0045】
コーティングの成分がマトリックスの融点よりも高い温度に高められ、次いで前記コーティングが溶融状態のマトリックスを含む前記成分の噴霧により塗布される。
【0046】
コーティングは、前記コーティングの成分により形成された粉末の炎を経た射出(projection)により塗布される。
【0047】
コーティングは、前記コーティングの成分が分散した水溶性エマルジョンの噴霧により塗布される。
【0048】
ねじ山付き要素は、80℃以上に高められる。
【0049】
ねじ山付き要素は、周囲温度である。
【0050】
前記表面処理は、機械的処理、化学的処理および非反応性堆積(non−reactive deposits)から選択される。
【0051】
被覆された表面が金属面であり、前記表面処理が前記表面の化学的変換のための処理である。
【0052】
前記化学的変換は、リン酸塩処理である。
【0053】
前記表面処理の後に、耐腐食作用を伴うナノ物質(11)により被覆された表面の粗さまたは多孔性(12)を埋める(impregnation)ための処理が行われる。
【0054】
前記ナノ物質は、酸化亜鉛の粒子(11)である。
【0055】
前記ナノ物質は、200nmのオーダーの平均粒子径である。
【0056】
前記ナノ物質は、分散液に適用される。
【0057】
本発明の他の特徴と利点は、下記の詳細説明と添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、炭化水素井戸にて、ねじ山付き要素による組立て準備がされた2つの管を図示する。
【図2】図2は、本発明の方法にしたがってナノ物質により多孔性が埋められた、ねじ山付き要素のねじ面の部分の拡大スケールを示す。
【図3】図3は、本発明による方法を実施するために使用することができる装置を図示する。
【図4】図4は、本発明による方法を実施するために使用することができる装置を図示する。
【図5】図5は、組立ておよび分解試験により本発明のコーティングを評価するための装置を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、摩損に抵抗性がある管状ねじ山付き接続部用ねじ山付き要素に関する。ねじ山付き要素は、基板にベタ付かずに(not sticky to the touch)付着する固相の薄いコーティングにより覆われたねじ山(threading)を備え、多数の組立ておよび分解作業に耐える。
【0060】
ねじ山付き要素のコーティングは、固体マトリックスと、そのマトリックス内の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子の分散液とを含む。
【0061】
本発明は、特定の物質の摩擦学的挙動の研究に基づくとともに、下記に述べる特定の概念を参照している。
【0062】
基本概念
固体潤滑転移フィルム効果あるいはリーフィング効果
流体力学的潤滑条件の乾燥状態において固体潤滑剤は、流体あるいは粘塑性物質に分散する際に、安定した方法で表面に固定される性質を有し、表面の摩擦特性を改質する。固体潤滑剤は、化学的結合により表面に転移および結合され、摩耗に対する高レベルの抵抗性と摩擦特性の向上をもたらす。固体の性質によっては、表面に、高い表面荷重応力(ヘルツ応力)により発生する極圧での耐摩耗保護性、耐摩耗抵抗性および耐摩耗特性と、広範囲にわたる荷重および摩擦速度での低い摩擦係数とを与える。転移フィルム効果あるいはリーフィング効果は、管状ねじ山付き接続部の系の組立ておよび分解の間に生成されるような、表面に反復的に応力が課される摩擦の型のために使用される。
【0063】
第3の摩擦体
第3の摩擦体は、摩擦の間に2つの表面の間に接触して介在する物体である。
【0064】
潤滑剤が存在しない際には、相対的な摩擦における応力下の2つの物体は、各物体から化学的あるいは非化学的に変換された、デブリス粒子により形成された第3の物体を生成する。この第3の物体は、固定または除去される、加えられた応力下での挙動、応力下での変換機構、移動容量により摩擦特性の一部を決定付ける。
【0065】
液体、流体あるいは可塑性の固体潤滑剤、つまり物質の流動を伴う可塑状態におけるせん断下での変形を受ける潤滑剤は、2つの物体の間に介在する際には、2つの物体を分離するフィルムを形成するとともに、それ自体は第3の物体を構成する。その性質は、境界条件において、つまり摩擦応力が潤滑された物質の間で接触して最も高くなる際に、流体あるいは可塑性潤滑剤と混合された固体生成物により改質される。
【0066】
極圧特性
この特性は、極めて高いヘルツ応力が課された表面に、摩耗に耐えるとともに低摩擦係数により摺動することを可能にさせる、特定の生成物の性質である。
【0067】
ヘルツ応力あるいがヘルツ圧力
荷重応力下で接触する表面は、弾性的に変形し、特定の領域の接触域を決定付ける。その領域により分けられて加えられた荷重は、ヘルツ圧力あるいは応力を決定付ける。高ヘルツ応力の間に、固体の非可塑性物質は内部せん断の影響を受けて物質の疲労により使用寿命を減らすが、固体の可塑性物質は構造的劣化を伴わずにせん断効果を受ける。
【0068】
マトリックス
この用語は、活性成分を所定の位置に固定または搬送することを可能にする系を意味するために使用される。また、マトリックスは、異なる系用の接着剤として使用することができるとともに、活性成分の結合または担持を完全なものにする機能を有することができる。
【0069】
本発明のマトリックスは、特に潤滑性であるとともに、可塑性あるいは粘塑性型のレオロジー的挙動を有する。
【0070】
相乗作用
基本的な性質を有する物体を、全く異なる性質および挙動を示す複合体に組み合わせることができる。その複合体の挙動がそれらの成分の組み合わせよりも優れた性質を導く場合を、相乗作用と呼ぶ。
【0071】
粘性、可塑性、粘塑性、粒状体挙動
高い変形性があるか流体であり、わずかでも、静水圧効果下で限られた変形やせん断応力効果下で不定流を経る物体がある。例えば、オイルやグリースである。
【0072】
変形性がないか固体であり、応力の性質とは無関係な限られた変形を少なくとも特定の応力閾値まで受ける物体がある。物質の構造的劣化が引き起こすものを超える降伏強度を有する熱硬化系による場合である。
【0073】
それらの2つの極端な状態(弾性、可塑、粘性および粘塑性挙動)の間の物質(最も多い)がある。
【0074】
第3の物体に発生するあるいは第3の物体が示す摩擦状況は、潤滑あるいは非潤滑性能が、下記の表1にしたがった物理的状態に依存している。
本発明によるマトリックスにおいて使用される物質は、表1におけるカテゴリー1に属する。
【表1】

【0075】
熱可塑性および熱硬化性ポリマー
本発明の固体マトリックスは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む。
【0076】
用語熱可塑性は、可逆的に、それぞれ温度TおよびT(ガラス転移温度および融解温度)への加熱により軟化し、次いで融解するとともに、冷却により凝固することが可能な可溶性ポリマーを称する。熱可塑性ポリマーは、化学反応によらずに変換される。熱可塑性ポリマーは、静止した状態で、固体の乾燥して(ベタ付かない)安定な構造を保ちながら、摩擦応力下で、粘性流を達成するために本発明において使用される。一方、一般用語において、熱硬化性ポリマーは、応力下で全くあるいは殆ど粘性挙動を有さない。
【0077】
金属石鹸
この用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属ならびに他の金属の石鹸を包含する。これらは、表面間に流動性を有する可溶性の化合物である(表1におけるカテゴリー1)。
【0078】
ワックス
この用語は、ペースト状または硬い粘稠性の多少やその性質によって広範囲に変化することができる融点および滴点を伴う、様々な由来(特に石油の蒸留からもたらされる無機物、植物、動物あるいは合成品)の潤滑特性を有する可溶性物質を含む。
【0079】
腐食防止剤
これらの添加剤は、異なる腐食環境から表面を保護するための性能を、表面に適用された液体あるいは固体物質に与える。これらの腐食防止剤は、化学、電気化学あるいは物理化学的機構にしたがって作用する。
【0080】
固体潤滑剤
固体潤滑剤は、2つの摩擦面間に介在し、摩擦係数を低くするとともに表面の摩耗および損傷を減らすことを可能にする固形安定体である。
【0081】
これらの物体は、作用機構や構造により決定付けられる異なるカテゴリーに分類される。これらのカテゴリーは、例えば、フランス国立高等石油動力学校のエリック・ガード氏により行われた「固体潤滑剤」と称する過程論文に記載されている。
【0082】
クラス1:潤滑特性が、結晶構造に依存する固形物体、例えばグラファイト、窒化ホウ素BN、酸化亜鉛ZnOである。
【0083】
クラス2:潤滑特性が、一方で結晶構造、そして他方でその成分の反応性のある化学元素に依存する固形物体、例えば二硫化モリブデンMoS、フッ化グラファイト、硫化スズ、および硫化ビスマスである。
【0084】
クラス3:潤滑特性が、化学反応性に依存する固形物体、例えばチオ硫酸塩型の特定の化合物(例えばデジリューブテクノロジー株式会社より市販されているデジリューブ88)である。
【0085】
クラス4:潤滑特性が、摩擦応力下での可塑性あるいは粘塑性挙動に依存する固形物体、例えばポリテトラフルオロエチレンPTFEおよびポリアミドである。
【0086】
摩擦や固体潤滑剤転移フィルム組成の観点から良好なレベルの性能を達成するために、本発明は上記クラスの1つに属する固体潤滑剤の粒子を使用する。
【0087】
本発明者らは、好ましくは、クラス2の化合物であって、特にフッ化グラファイトおよび硫化スズまたは硫化ビスマスの錯体など、これまで殆ど使用されて来なかった化合物を、固体潤滑剤として使用した。本発明者らによれば、これらの化合物は、金属へのより高い結合性や顕著に高い極圧での性能レベルがあるため、グラファイト、二硫化モリブデンあるいは二硫化タングステンなどの従来の固体潤滑性製品とは異なる。
【0088】
本発明者らは、特に、腐食の発生を促進する可能性があるグラファイト、あるいは、特に水分の存在下で不安定であるとともに、鋼を腐食させる硫黄酸化物もしくは鋼を異なる水素ぜい化型応力破裂(硫化物応力割れまたはSSC)に影響されやすくする可能性がある硫化水素を発生することが知られている化合物である二硫化モリブデンを伴わない溶液を求めた。
【0089】
フラーレン
これらは、閉じられたもしくは開いた管状あるいは閉じられたもしくは開いた球状で、単層または多層状の構造を有する分子材料である。球状フラーレンは、単層体の場合には数十nmのサイズ、多層体の場合には約80nmより大きいサイズを伴う。それらは、安定して、表面粗さにより作り出された部位の阻止や破片型の劣化の阻止をすることにより表面に作用する。
【0090】
応力の型
本発明は、作業中に管状ねじ山付き接続部に課される異なる応力を考慮している。
【0091】
高低速度での摩擦、高低ヘルツ応力
摩擦系は、ねじ山接続部の組立ておよび分解の間に直面する極めて多様な摩擦速度による複合体である。つまり、速度は、組立ての間は相対的に高く、組立終了あるいは分解開始の際には殆どゼロであることができる。
【0092】
一方、ヘルツ応力は、同じ摩擦区間で極めて大きく、限界条件を導く。したがって、本発明者らは、これらの応力に対応する系を決定付けることを試みた。
【0093】
運動応力による問題を解決するために、本発明者らは、応力下で粘性流れを導くとともに、直面する全速度状況に対応する可塑的性質を伴うマトリックスを開発した。複数の成分の使用が、極めて多様なせん断効果に適応させるための高性能系には必要である。マトリックスは、適所に他の活性元素を保持するとともに、安定した転移フィルムあるいはリーフの生成に寄与することを可能にする。
【0094】
一般的に可塑的性質を有する熱可塑性樹脂が選択されるとともに、本発明者らは、存在する全ての粘組成ポリマーの中でも、溶融状態にて高い粘性のために適用に問題が生じるポリアミド6、ポリアミド11およびポリプロピレンなどの他の粘塑性ポリマーに優先して、ポリエチレンを選択した。この選択は、ポリエチレンの性質の中でも、105℃より高い融点を有する性質のためであった。
【0095】
表面における摩擦から生じるデブリス粒子を阻止するとともに、これにより環境汚染を起こす可能性を除去するために、本発明は、さらに、ねじ山付き要素の接触面のレベルにおける摩擦現象から生ずるデブリス粒子を再凝集させることが可能なデブリス粒子再凝集手段を備える。デブリス粒子再凝集手段は、形成されるとすぐにデブリス粒子を再凝集させることが可能である。
【0096】
本発明者らは、特に、特定の金属石鹸、特定のワックスおよび特定のポリマーが、再凝集手段として使用することができることを見出した。
【0097】
本発明者らは、実験により、デブリス粒子の再凝集やマトリックスの可塑性に関する特性の向上は、上述した現場条件下での組立ておよび分解作業数の観点から優れた結果を与える、カルシウム、ビスマスおよび亜鉛の中からの金属石鹸型の再凝集手段の添加により達成されることを見出した。これらの石鹸の中でも、ステアリン酸亜鉛は、既に検討した腐食防止剤との相乗的関係に関与するため選択された。
【0098】
カルナバワックスなどの脂肪酸物質の混入は、組立て分解作業におけるデブリス粒子の再凝集特性を最適化することを可能にする。
【0099】
準静的条件下で極めて高い摩擦荷重の組み合わせを伴う限界潤滑応力に応じるために、本発明者らは、固体マトリックス内に分散した粒子により形成された固体潤滑剤を含んだ添加剤の適切な系を調製した。従来のEP(極圧)添加剤、例えば欧州特許第1313827号明細書に記載される種類の硫黄化合物は、伴う表面力が添加剤に反応を可能にする際にのみ作用し、それは特定の荷重および摩擦速度の範囲でのみ発生する。本発明者らは、準静的条件下でも潤滑作用状態を保証することが可能な固体潤滑剤を用いることを好んで選択した。
【0100】
本発明者らは、クラス2における1または2以上の固体潤滑剤を使用した。
【0101】
極限環境(水分は塩分を含んでいてもいなくてもよい)
表面の耐腐食保護の要請によっては、マトリックス内に腐食防止剤を含ませることが必要であり得る。そのような防止剤の中でも、スルホン酸カルシウム誘導体、より詳細にはALOX(登録商標)606の名称でLUBRIZOL社により市販されている製品などのワックス、石油樹脂あるいはスルホン酸カルシウムによりなる媒体における酸化カルシウムとスルホン酸カルシウムとの結合体は、それ自体が特に(腐食防止)性能を示すが、アミン、アミノボレート、第4級アミン、ポリα−オレインにおけるスーパーアルカリ化硫酸、ストロンチウムホスホシリケート、亜鉛ホスホシリケートおよびボレートカルボキシレート型の腐食防止剤も同等に使用することができる。
【0102】
腐食抵抗性は、腐食を阻止するための他の機構にしたがって作用する化合物を結合させることにより、さらに向上させることができる。
【0103】
既に示したように、ステアリン酸亜鉛は、特に、マトリックスの潤滑挙動に寄与しつつ腐食防止剤と相乗特性を提供する。
【0104】
腐食防止保護性の主試験は、基準ISO9227にしたがって行われるとともに、マンガンを伴うリン酸化(リン酸の付着量8〜20g/m)により処理されるプレート上でISO EN2846−3にしたがってインデックスReが評価される塩水噴霧試験である。
【0105】
保護された環境における使用(環境との互換性の制約)
マトリックスの組成は、環境汚染の可能性を除去するために、表面上の摩擦から生じるデブリス粒子を阻止するために提供される。マトリックスの適切な組成の貢献により、デブリス粒子は、形成されるとすぐに再凝集する。
【0106】
その性質を明らかにするために、本発明者らは、実験的プロトコールにおいて、摩擦の間に生成するデブリス粒子の計量による定量的測定を伴う手順を含めた。これにより、彼らは、金属石鹸およびワックス型の再凝集手段の効果を示すことが可能になった。
【0107】
しかしながら、研究下での組成によれば、再凝集の観点から不適切な性能が、再凝集機能を伴う生成物の他の型を検索させることに導いた。そこで、彼らは、VISCOPLEX6−950の名称でROHMAX社より市販されている100℃で850mm/秒の動粘度のPAMAにより得られるデブリス粒子再凝集試験における優れた結果を伴う、アルキルポリメタクリレート(PMMA)、ポリブテン、ポリイソブテンおよびポリシロキサンなどの高粘性ポリマーの影響を検討した。
【0108】
PAMAを含有するのみの本発明によるコーティングを備えた2つのねじ山の組立ておよび分解サイクル後の試験は、そのコーティングにより、摩擦により生成されたデブリス粒子が、他のコーティングによるデブリス粒子が分散したまま外的汚染を引き起こすことなく摩擦面に再凝集して混入することを示す。
【0109】
コーティングの応用可能性
周囲温度でのコーティングの接着および外観を向上させるために、マトリックスに少なくとも1種の表面活性剤を添加することが必要であり得る。
【0110】
したがって、本発明者らは、とりわけ、表面活性シリコン、好ましくはポリジメチルシロキサンあるいはDC56(DOW CORING社より市販されている)の2%以下の添加量を考察した。
【0111】
また、同様な表面活性特性を有する他の化合物であって、ポリマーであってもなくてもよいものも検討し得る。
【0112】
したがって、本発明は、相乗的相互作用の体系的活用を伴う、生成物の2つの群を結び付けている。つまり、
マトリックスの成分と、
同じクラスの固体潤滑剤とである。
【0113】
本発明による方法は、潤滑した要素の表面修飾を含む。
【0114】
組立ておよび分解試験は、適切な転移フィルムの構築を達成するために、サンドブラストもしくはショットブラストなどの機械的処理、または、表面において結晶化された状態の無機堆積物に基づく反応処理、例えば酸による化学的侵食、亜鉛もしくはマンガンを使用したリン酸化処理、あるいは表面において化学変換層を導くシュウ酸化処理を用いた物理的もしくは化学的改質により、被覆された表面を改質することが必要なことを実証した。これらの表面処理の中でも、シュウ酸化処理が、摩擦に抵抗するとともに極めて安定していること転移フィルムの生成を導く適切な接着面に加えて、耐腐食保護性のある基体を生成することが可能であるので好ましい。
【0115】
さらに、特に、ナノ物質であって、多孔質に挿入することが可能なサイズのものにより表面の多孔を埋めることを伴う補完的な表面修飾処理を行うことが好ましい。この埋め込み作業の目的は、コーティングのための良好な接着性を保ちながら、腐食から表面を保護するための不活性作用を有する物質により、多孔性により作り出された部位をブロックするとともに飽和させることである。
【0116】
図2は、金属基板13の多孔性部位12内への粒子11の埋め込みを図示する。
【0117】
本発明者らは、水中に単分散させたナノメータサイズ(平均200nm)の酸化亜鉛の粒子を挿入することによる上述の基準(腐食発生のための時間の20%までの増加)にしたがった塩水噴霧試験における性能レベルの向上に気づいた。
【0118】
処理面の視認を可能にするために、摩擦性能の低下をもたらさないような割合(例えば1%)で公知の着色剤を使用することが可能である。
【0119】
例えば加熱による酸化により劣化することからコーティングを保護するために、1または2以上の抗酸化剤を添加し得る。ポリフェノール化合物、ナフチルアミン誘導体および有機亜リン酸塩は、抗酸化剤の一義的なファミリーを構成する。本発明者らは、より詳しくはチバガイギー社のIRGANOX(登録商標)L150(ポリフェノールおよびアミン抗酸化剤の系)とIRGAFOS(登録商標)168(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)の製品の組み合わせを選んだ。
【0120】
また、本発明は、産業化を促進する、コーティング塗布の方法に関する。この目的のために異なる技術が使用されており、最もふさわしいものを下記に表わす。
【0121】
溶融状態による噴霧技術は、生成物を液相において高温で保つとともに、自動的に温度制御されたスプレーガンを用いて噴霧することを伴う。生成物は、溶融温度より10〜50℃高い温度で加熱されるとともに、良好に面を覆うことを達成するために溶融温度より高い温度にプレ加熱された温度上に噴霧される。
【0122】
別の例では、噴霧作業は、プレ加熱されない(つまり周囲温度で維持された)ねじ山付き要素上で行われる。次いで、コーティングの組成は、少量の表面活性剤の添加、例えば、表面活性シリコン、好ましくはポリジメチルシロキサンまたはDC56(DOW CORING社より市販されている)の最大で2%、好ましくは0.6%〜1%の添加により適合される。
【0123】
図3は、プロセスを実施するための設備例を示す。生成物20は、プロペラ状の攪拌子22を使用して攪拌してベッセル21で溶融され、次いで流量制御ポンプ24によりパイプ25を通って、コンプレッサ26によって空気も供給される噴霧ヘッド23に、移動する。コンポーネント21および23〜26は、温度が調節されている。
【0124】
他の技術は、生成物が水溶性エマルジョンの状態で噴霧されるエマルジョン塗布である。エマルジョンと基板は周囲温度であることができ、乾燥時間が必要である。この乾燥時間は、生成物を60〜80℃の間および/または表面を50〜150℃の間でプレ加熱することによって相当に減らすことができる。
【0125】
図4は、炎を通した溶射あるいは噴霧を伴う技術を図解する。生成物30の場合においては、粉末状の生成物30が、空気32および可燃性ガス33が供給される銃31を用いて、被覆された表面に射出される。粉末は、炎34を通ることにより溶けるとともに標的を均質的に覆う。
【0126】
実施例
実施例は、ヴァルレック・マンネスマンチューブのOCTG部門により編纂された技術仕様書にしたがった名目直径177.8mm(7インチ)、線密度43.15kg/m(29 lb/ft)の低合金鋼のVAM TOP HC型の管状ねじ山付き接続部を伴う。
【0127】
コーティングの塗布に先立って、雄型ねじ山付き要素は亜鉛によるリン酸化(層重量4〜20g/mの間)が施されるとともに、雌型ねじ山付き要素はマンガンによるリン酸化(層重量8〜20g/mの間)が施される。ねじ山付き要素は130℃にプレ加熱された後、溶射が150℃で溶融状態に保たれた、下記実施例I〜VIの一の組成の生成物の厚さ35μmの層をねじ山付き要素に塗布するために利用される。
【0128】
PE520の名称でCLARIANT社より市販されているポリエチレン
LANCO1955SFの名称でNOVEON社より市販されているカルナバワックス
LIGASTAB ZN70の名称でPETER GREVEN社より市販されているステアリン酸亜鉛
VISCOPLEX6−950の名称でROHMAX社より市販されているPAMA(アルキルポリメタクリレート)
ALOX606の名称でLUBRIZOL社より市販されているスルホン酸カルシウム誘導体
DC56の名称でDOW CORNING社より市販されているシリコン(表面活性要素)、シリコンはエマルジョン状である
一方は芳香族アミンとフェノールの混合物であり、他方はリン酸フェニルであるIRGANOX L150およびIRGAFOS 168の名称でチバガイギー社より、それぞれ市販されている抗酸化剤
BNの名称でESK社より市販されている窒化ホウ素
ZnOの名称でSILAR S.A.社より市販されている酸化亜鉛
CFの名称でARC社より市販されているフッ化グラファイト
SnSの名称でCHEMETALL社より市販されている二硫化スズ
PTFEの名称でSILAR S.A.社より市販されているポリテトラフルオロエチレン
RILSAN B.の名称でARKEMA社より市販されているポリアミド11
【0129】
実施例I:クラス1の固体潤滑剤
【表2】

【0130】
実施例II:クラス2の固体潤滑剤
【表3】

【0131】
実施例III:クラス4の固体潤滑剤
【表4】

【0132】
実施例IV:クラス1における2種の固体潤滑剤の相乗的組み合わせ
【表5】

【0133】
実施例V:クラス2における2種の固体潤滑剤の相乗的組み合わせ
【表6】

【0134】
実施例VI:クラス4における2種の固体潤滑剤の相乗的組み合わせ
【表7】

【0135】
実施例I〜VIは、下記の範囲の重量組成のコーティングとして考察することができる。
【表8】

【0136】
マトリックスについては、下記の範囲の重量組成として考察することができる。
【表9】

【0137】
シリコンは、好ましくはポリジメチルシロキサンまたはDC56(DOW CORNING社より市販されている)である。
【0138】
任意に、コーティングは、球形構造の少なくとも1種のフラーレンの分子を含む。
【0139】
実際上は、コーティングの厚さは、一般に、10μmと50μmの間である。
【0140】
また、コーティングは、2つのねじ山付き要素のアセンブリーを組み立てた後に、第2のねじ山付き要素の対応する密封面に密封締めにて接触することが可能な(第1のねじ山付き要素の)密封面に、適用することができる。
【0141】
作業条件をシミュレートするために、組立ておよび分解試験が、パワートングの固定あご41において垂直に保持される雌型要素と、雌型要素に人手により予め組み立てられ、垂直に配置された「パップジョイント」と呼ばれる短管42の下端に形成された雄型要素とを備えたスリーブ40にて行われる。
【0142】
次いで、雄型要素は、パワートングの移動あご44に係合するとともに、16rpmの初期回転速度で、非被覆ねじ山付き接続部の名目組立トルク(実施例では20,100Nm)到達における最終局面でゼロにする速度減少を伴って、雌型要素に組み立てられる。
【0143】
分解は、対称的な方法、つまり回転速度の増加を伴って行われる。
【0144】
これらの条件下では、複数の組立および分解サイクルを、ねじ山付き要素の構成部材の劣化を伴うことなく行うことが可能であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にベタ付かずに(not sticky to the touch)付着する固相の薄いコーティングにより覆われたねじ山(threading)を備える摩損(galling)に抵抗性がある管状ねじ山付き接続部用ねじ山付き要素であって、前記薄いコーティングは固体マトリックスと当該マトリックス内の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子の分散液とを含み、前記マトリックスは潤滑性があり塑性または粘塑性型のレオロジー的挙動を示すことを特徴とする、管状ねじ山付き接続部用ねじ山付き要素。
【請求項2】
前記マトリックスは、80〜320℃の間の融点を有することを特徴とする、請求項1に記載のねじ山付き要素。
【請求項3】
前記マトリックスは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、摩擦により前記ねじ山付き要素の表面近傍に形成される、デブリス粒子を再凝集させることが可能なデブリス粒子再凝集体手段とを含むことを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリエチレンであることを特徴とする、請求項3に記載のねじ山付き要素。
【請求項5】
前記マトリックスは、少なくとも1種の金属石鹸を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項6】
前記石鹸は、ステアリン酸亜鉛であることを特徴とする、請求項5に記載のねじ山付き要素。
【請求項7】
前記マトリックスは、少なくとも1種の植物、動物、無機物または合成品由来のワックスを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項8】
ワックスは、カルナバワックスであることを特徴とする、請求項7に記載のねじ山付き要素。
【請求項9】
前記マトリックスは、少なくとも1種の腐食防止剤を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項10】
前記腐食防止剤は、スルホン酸カルシウム誘導体であることを特徴とする、請求項9に記載のねじ山付き要素。
【請求項11】
前記石鹸は、基準ISO9227による塩水噴霧試験における腐食の発生のための時間が向上するように選択されることを特徴とする、請求項5、6、9および10のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項12】
前記マトリックスは、100℃における動粘度が850mm/秒以上である少なくとも1種の液体ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項13】
前記液体ポリマーは、水に不溶性であることを特徴とする、請求項12に記載のねじ山付き要素。
【請求項14】
前記液体ポリマーは、アルキルポリメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテンおよびポリジアルキルシロキサンから選択されることを特徴とする、請求項12および13のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項15】
前記マトリックスは、少なくとも1種の表面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項16】
前記マトリックスは、少なくとも1種の着色剤を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項17】
前記マトリックスは、少なくとも1種の抗酸化剤を含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項18】
前記少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子の分散液は、クラス1、2、3または4の1種の潤滑剤の粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項19】
前記固体潤滑剤の粒子は、グラファイト粒子を除くクラス1の潤滑剤の粒子から選択されることを特徴とする、請求項18に記載のねじ山付き要素。
【請求項20】
前記固体潤滑剤の粒子は、窒化ホウ素および酸化亜鉛から選択されるクラス1の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含むことを特徴とする、請求項18および19のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項21】
前記固体潤滑剤の粒子は、二硫化モリブデンの粒子を除くクラス2の潤滑剤の粒子から選択されることを特徴とする、請求項18に記載のねじ山付き要素。
【請求項22】
前記固体潤滑剤の粒子は、フッ化グラファイト、硫化スズおよび硫化ビスマスから選択されるクラス2の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含むことを特徴とする、請求項18および21のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項23】
前記固体潤滑剤の粒子は、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリアミド11から選択されるクラス4の少なくとも1種の固体潤滑剤の粒子を含むことを特徴とする、請求項18に記載のねじ山付き要素。
【請求項24】
前記マトリックスの重量組成は、下記表1の通りであることを特徴とする、請求項18〜23のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【表1】

【請求項25】
前記シリコンは、ポリジメチルシロキサンまたは商品名DC56でDOW CORING社より市販されているものであることを特徴とする、請求項24に記載のねじ山付き要素。
【請求項26】
前記コーティングの重量組成は、下記の通りであることを特徴とする、請求項18〜25のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【表2】

【請求項27】
前記コーティングの厚さは、10μm〜50μmの間であることを特徴とする、請求項18〜26のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項28】
前記コーティングはさらに、密封面であって、2つのねじ山付き要素のアセンブリーを組み立てた後に第2のねじ山付き要素の対応する密封面に密封締め(sealing tight)にて接触可能な面に、適用されることを特徴とする、請求項18〜27のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項29】
前記コーティングは、球形構造の少なくとも1種のフラーレンの分子を含むことを特徴とする、請求項1〜28のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項30】
雄型ねじ山付き要素と雌型ねじ山付き要素とを備えた管状ねじ山付き接続部であって、前記ねじ山付き要素の少なくとも1つが請求項1〜29のいずれか1項に記載のねじ山付き要素であることを特徴とする、管状ねじ山付き接続部。
【請求項31】
管状ねじ山付き要素を仕上げるための方法であって、薄層状の耐摩損コーティングが固体コーティングを生成するためにねじ山の表面に少なくとも塗布される方法において、被覆される前記表面にコーティングの接着性を向上させるための表面処理が施され、かつ前記コーティングの成分が請求項1〜30のいずれか1項に定義されたものであることを特徴とする、管状ねじ山付き要素を仕上げるための方法。
【請求項32】
前記コーティングの成分がマトリックスの融点よりも高い温度に高められ、かつ前記コーティングが溶融状態のマトリックスを含む前記成分の噴霧により塗布されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記コーティングは、前記コーティングの成分により形成された粉末の炎を経た射出(projection)により塗布されることを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記コーティングは、前記コーティングの成分が分散した水溶性エマルジョンの噴霧により塗布されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ねじ山付き要素は、80℃以上に高められることを特徴とする、請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ねじ山付き要素は、周囲温度であることを特徴とする、請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記表面処理は、機械的処理、化学的処理および非反応性堆積(non−reactive deposits)から選択されることを特徴とする、請求項31〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
被覆された前記表面が金属面であり、前記表面処理が前記表面の化学的変換のための処理であることを特徴とする、請求項31〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記化学的変換は、リン酸塩処理であることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記表面処理の後に、耐腐食作用を伴うナノ物質(11)により被覆された前記表面の粗さまたは多孔性(12)を埋める(impregnation)ための処理が行われることを特徴とする、請求項31〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ物質は、酸化亜鉛の粒子(11)であることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ナノ物質は、200nmのオーダーの平均粒子径であることを特徴とする、請求項40および41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ナノ物質は、分散液に適用されることを特徴とする、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−523920(P2010−523920A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502540(P2010−502540)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000627
【国際公開番号】WO2008/125740
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(504255249)ヴァルレック・マンネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス (30)
【氏名又は名称原語表記】VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS FRANCE
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】