乾燥装置及び溶液製膜方法
【課題】従来よりも幅が広い光学フィルムを効率よく製造する。
【解決手段】バンド91は、帯状の中央部91cと中央部91cの幅方向両側に配された帯状の側部91sとからなる。中央部91c及び側部91sの溶接部91wは、表面91aから露出する。流出口133aから移動状態のバンド91の表面91aに向けてドープが流出する。表面91a上では、ドープからなる流延膜136が、溶接部91wを覆うように形成される。ダクトから流延膜136に向けて乾燥風が送り出される。乾燥風との接触により流延膜136から溶剤が蒸発する。ノズル151は、裏面91b側から溶接部91wへ加熱風150をあてる。加熱風150により、表面91a上の流延膜から溶剤が蒸発する。剥取ローラは、流延膜136をバンド91から剥ぎ取ってフィルムとする。
【解決手段】バンド91は、帯状の中央部91cと中央部91cの幅方向両側に配された帯状の側部91sとからなる。中央部91c及び側部91sの溶接部91wは、表面91aから露出する。流出口133aから移動状態のバンド91の表面91aに向けてドープが流出する。表面91a上では、ドープからなる流延膜136が、溶接部91wを覆うように形成される。ダクトから流延膜136に向けて乾燥風が送り出される。乾燥風との接触により流延膜136から溶剤が蒸発する。ノズル151は、裏面91b側から溶接部91wへ加熱風150をあてる。加熱風150により、表面91a上の流延膜から溶剤が蒸発する。剥取ローラは、流延膜136をバンド91から剥ぎ取ってフィルムとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液製膜方法、及び溶液製膜方法に用いる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)の大画面化に伴い、LCDに用いる光学フィルムにも大面積化が要求される。光学フィルムは、長尺に製造されてから、LCDに対応するように所定のサイズにカットされる。したがって、より大きな面積の光学フィルムを製造するためには、幅が従来よりも大きな長尺の光学フィルムを製造する必要がある。
【0003】
長尺の光学フィルムの代表的な製造方法としては、連続方式の溶液製膜方法がある。溶液製膜方法は、周知のように、ポリマーが溶剤に溶けているドープを、移動する流延支持体の上に流延し、ドープからなる流延膜を流延支持体上に形成し、流延膜を流延支持体から剥がして乾燥することによりフィルムを製造する方法である。
【0004】
流延支持体として、金属製のバンドが用いられ、製造することができるフィルムの最大幅は、このバンドの幅に制約される。したがって、より大きな幅のフィルムを製造するには、より大きな幅のバンドが必要となる。しかし、これまで、幅が2m程度までのバンドしか得られていなかった。
【0005】
そこで、特許文献1では、幅方向の中央部になる中央バンドと、バンドの各側部になる1対の側部バンドとを、長手方向に溶接することにより、従来よりも大きな幅のバンドを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開公報第2009−0110082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のバンドの表面には、側部バンドと中央バンドとの溶接部が露出し、この溶接部には、側部バンドや中央バンドに比べ、ピンホール等の欠陥が多く存在する。このため、溶接部の欠陥に起因して、剥げ残り故障が生じてしまう。剥げ残り故障が生じると、溶液製膜方法の生産速度を一旦下げて、又は停止し、流延支持体上に残留した流延膜を除去する作業を行わなければ成らず、結果として、効率よくフィルムを製造することができなくなる。
【0008】
本発明は、従来よりも幅の広いバンドを用いて溶液製膜方法を行い、効率よくフィルムを製造することができる溶液製膜方法、及び溶液製膜方法に用いる乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の溶液製膜方法は、第1金属製シートと第2金属製シートとが溶接してなる移動バンドであって、移動方向にのびる溶接部が露出する移動バンドの表面へポリマー及び溶剤を含むドープを連続して流出し、ドープからなり溶接部を覆う流延膜を表面上に形成する膜形成工程と、乾燥風をあてて流延膜から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、支持体から流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥取工程と、湿潤フィルムから溶剤を蒸発させるフィルム乾燥工程と、を有し、前記溶接部には、直径50μm以上70μm未満のピンホールがあることを特徴とする。また、前記溶接部には直径70μm以上のピンホールがないことを特徴とする。さらに、前記溶接部には、直径50μm以上70μm未満のピンホールが長手方向1mあたり10個以下であるか、又は、直径50μm以上70μm未満のピンホールが長手方向1mmあたり3個以下であるか、又はその両方であることが望ましい。
【0010】
移動バンドの移動速度が70m/s未満であることが望ましい。
また、膜形成工程と剥取工程との間では、移動バンドの裏面側から溶接部を加熱する溶接部加熱工程を行うことが望ましい。この場合においては移動バンドの移動速度が70m/s以上であってもかまわない。
また、移動バンドの側部に乾燥風を遮る遮風板を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも幅が広い長尺のフィルムを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のバンドの製造設備の概要を示す側面図である。
【図2】バンド製造設備の概要を示す平面図である。
【図3】溶接ユニットの概要を示す側面図である。
【図4】溶接ユニットの概要を示す平面図である。
【図5】溶接支持ローラの概要を示すV−V線断面図である。
【図6】溶接ビード及びその周辺の説明図である。
【図7】テーパローラの概略図である。
【図8】クリップの概略図である。
【図9】バンドの概略図である。
【図10】第1の溶液製膜設備の概要を示す側面図である。
【図11】バンドの概要を示す平面図である。
【図12】裏面加熱部の概要を示す斜視図である。
【図13】裏面加熱部が溶接部を加熱する様子を示す断面図である。
【図14】第2の溶液製膜設備の概要を示す側面図である。
【図15】第3の溶液製膜設備の概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2に示すバンド製造設備10は、長尺の中央部材12と、中央部材12の幅方向両側に設けられる側部材11とからなる長尺のバンド部材13をつくるものである。
【0014】
側部材11と中央部材12とは、それぞれ金属製のシート材である。側部材11は相対的に幅が狭い幅狭のシート材である。側部材11と中央部材12とは、互いに同じ素材から形成されることが好ましく、互いに同一の原料及び形成工程を経て形成されることがより好ましい。例えば、側部材11及び中央部材12として、ステンレス鋼から形成されたもの用いることが好ましい。
【0015】
中央部材12としては、従来の流延支持体として用いられてきたバンドを用いてよい。中央部材12は、側部材11よりも幅が広く、本実施形態における中央部材12の幅は1500mm以上2100mm以下の範囲で一定であり、側部材11の幅は50mm以上500mm以下の範囲で一定である。
【0016】
バンド製造設備10は、送出部16と、突き合わせ部17と、溶接ユニット18と、加熱部19と、巻取装置20とを備える。
【0017】
(送出部)
送出部16は、側部材11を送り出す第1送出装置23と、中央部材12を送り出す第2送出装置24とを有し、側部材11と中央部材12とをそれぞれ独立して突き合わせ部17に送る。第1送出装置23には、ロール状に巻かれた側部材11がセットされ、側部材11を巻き出して突き合わせ部17に送る。第2送出装置24には、ロール状に巻かれた中央部材12がセットされ、中央部材12を巻き出して突き合わせ部17に送る。
【0018】
突き合わせ部17は、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが互いに接するように、独立して案内されてくる側部材11と中央部材とを突き合わせる。突き合わせ部17は、中央部材12の搬送路に上流側から順に配される第1ローラ26と第2ローラ27、側部材11の搬送路に配される第3ローラ28、側部材11と中央部材12との両方を支持するように搬送路に配される第4ローラ29を有することが好ましい。
【0019】
第4ローラ29は、側部材11の一方の側縁と中央部材12の一方の側縁とが接触を開始する突き合わせ位置Pcにおいて、送られてきた側部材11と中央部材12とを支持する突き合わせ支持ローラである。
【0020】
第2ローラ27と第3ローラ28とは、第4ローラ29の周面で中央部材12と側部材11とが接触するように中央部材12と側部材11との搬送経路をそれぞれ調整する。
【0021】
第2ローラ27は、中央部材12の搬送経路を調整して、側部材11と溶接されるべき側縁12eの通過経路を、突き合わせ位置Pcに向けて制御する。第2ローラ27は、中央部材12の幅方向Yに移動自在となっている。シフト機構32は、第2ローラ27を幅方向Yへ移動する。
【0022】
第2ローラ27と第4ローラ29との間には、中央部材12の各側縁12eのうちの一方の通過位置を検出し、検出した通過位置の信号をコントローラ33に送る位置検出手段34が配される。コントローラ33は、送られてきた通過位置の信号に基づき、幅方向Yにおける第2ローラ27の変位量を求め、変位量の信号をシフト機構32に送る。シフト機構32は、送られてきた変位量の信号に基づき第2ローラ27の傾きや中央部材12の幅方向Yにおける第2ローラ27の位置を変える。このように第2ローラ27の傾きや位置を変えることにより、中央部材12が幅方向Yに変位する。
【0023】
第1ローラ26には、シフト機構37が設けられていることが好ましい。このシフト機構37により、第1ローラ26は、第2ローラ27に向かう中央部材12を一方の部材面から押す。この第1ローラ26の変位量に応じて、第1ローラ26の中央部材12に対する押し圧が変わり、押し圧を調整することにより、第2ローラ27に巻き掛ける中央部材12の巻き掛け中心角を制御することができる。この巻き掛け中心角の制御により、第2ローラ27による中央部材12の幅方向Yでの変位量をより精緻に制御することができる。
【0024】
第3ローラ28は、側部材11の搬送経路を調整して、中央部材12と溶接されるべき一方の側縁11eの通過経路を突き合わせ位置Pcに向けて調整する。第3ローラ28には、長手方向の向きを制御するコントローラ38が備えられる。このコントローラ38は、例えば、側部材11と接触している間の接触領域における周方向と中央部材12の搬送方向Xとのなす角θ1が変化するように、第3ローラ28の長手方向を側部材11の部材面に沿って変化させる。
【0025】
以上のように第1ローラ26〜第3ローラ28を用いて、突き合わせ位置Pcが第4ローラ29上になるように制御することが好ましい。第1ローラ26〜第3ローラ28は、いずれも周方向に回転する駆動ローラであることが好ましい。周方向に回転することにより、第1ローラ26及び第2ローラ27は、中央部材12の搬送手段としても作用し、第3ローラ28は、側部材11の搬送手段としても作用する。第1ローラ26〜第3ローラ28を駆動ローラとすることにより、側部材11と中央部材12との搬送路の制御がより確実になるとともに、側部材11と中央部材12との第1ローラ26〜第3ローラ28上でのスリップを防止して部材面に傷がつくことが防止される。
【0026】
(溶接ユニット)
溶接ユニット18は、互いの側縁11e,12eが接触した状態で突き合わせ部17から供給される側部材11と中央部材12とを溶接する。突き合わせ部17から連続的に供給されることにより、側部材11と中央部材12とを長手方向で溶接する長手溶接工程を行うことができる。溶接ユニット18は、溶接装置42を備える。溶接装置42としては、例えば、レーザ溶接装置が挙げられる。レーザ溶接装置としては、例えば、CO2レーザ溶接装置や、YAGレーザ溶接装置を用いることができる。本実施態様では、CO2レーザ溶接装置を溶接装置42として用いた場合を説明する。
【0027】
溶接装置42は、集光したレーザ光を射出して、照射対象としての側部材11及び中央部材12にレーザ光を照射することにより、側部材11と中央部材12とを溶融して接合する。溶接装置42は、レーザ発振器43と、このレーザ発振器43から案内されてきたレーザ光を集光して射出する溶接装置本体46と、レーザ光を照射するにあたりCO2ガスを供給するガス供給部(図示無し)とを備える。CO2ガスは、側部材11と中央部材12との酸化を防止する。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにレーザ発振器43の図示は略してある。
【0028】
レーザ溶接装置に代えてTIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)装置を用いてもよい。TIG溶接とは、周知のように、アークを熱源とする溶接アーク溶接のひとつであり、シールドガスとしてイナートガス(不活性ガス)を用い、電極にはタングステンあるいはタングステン合金を用いるイナートガスアーク溶接の一種である。TIG溶接よりもレーザ溶接の方がより好ましい。また、TIG溶接とレーザ溶接とを組み合わせたハイブリッド溶接としてもよい。
【0029】
溶接装置本体46のレーザ光の射出口に対向するように、側部材11と中央部材12との搬送路には側部材11と中央部材12とを周面で支持する溶接支持ローラ41が備えてある。溶接支持ローラ41の回転軸は、側部材11及び中央部材12の幅方向Yと平行である。溶接支持ローラ41の周面で支持されている間の側部材11と中央部材12とにレーザ光が照射されるように、溶接支持ローラ41による側部材11と中央部材12との支持位置を設定することが好ましい。すなわち、溶接支持ローラ41上で、溶接をすることが好ましい。これにより、互いに側縁11e,12eが接した状態で側部材11と中央部材12とが安定し、照射すべき箇所にレーザ光を確実に照射することができる。
【0030】
溶接装置本体46には、幅方向Yに変位するためのシフト機構50が備えられることが好ましい。溶接装置42の上流には、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが接している接触位置Ps(図5参照)を検出し、検出した接触位置Ps(図5参照)の信号をコントローラ51に送る位置検出手段47が設けてある。位置検出手段47は、突き合わせ位置Pcから溶接装置42に至る搬送路近傍に配されてあればよい。
【0031】
コントローラ51は、送られてきた接触位置Ps(図5参照)の信号に基づき、幅方向Yにおける溶接装置本体46の変位量を求め、変位量の信号をシフト機構50に送る。コントローラ51は、側部材11と中央部材12との搬送速度の信号が入力されると、溶接装置本体46を変位させるべき変位量の信号とともに変位させるタイミングの信号とをシフト機構50に送る。シフト機構50は、送られてきた変位量及び変位のタイミングの信号に基づき、溶接装置本体46の位置を所定のタイミングで変える。このように溶接装置本体46の位置を幅方向Yで変えることにより、レーザ光の照射位置をより精緻に制御して、より確実に、側部材11と中央部材12とが溶接される。なお、本実施形態における溶接装置42への側部材11と中央部材12との搬送速度は0.15m/分以上20m/分以下の範囲としてある。
【0032】
溶接ユニット18には、図1に示すように、溶接装置本体46と溶接支持ローラ41とを外部空間と仕切るチャンバ52と、気体を清浄化する清浄装置55とを設けることがより好ましい。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにチャンバ52と清浄装置55との図示は略してある。チャンバ52には、内部気体を外部に出す第1開口(図示無し)と、清浄装置55で清浄化された気体を内部に案内する第2開口(図示無し)とが設けられる。第1開口と第2開口とは、それぞれ清浄装置55に接続する。チャンバ52の内部気体は、第1開口から清浄装置55に案内され、清浄装置55はチャンバ52から案内されてきた気体を清浄化して第2開口を介してチャンバ52に送る。このように、チャンバ52の内部気体は、清浄装置55との間で循環される。
【0033】
チャンバ52の内部気体を清浄化しておくことにより、溶接位置Pw及びその周辺が清浄化され、溶接部13wに異物等が混入されてしまうことが防止される。なお、チャンバ52の内部の圧力が、外部空間の圧力よりも高く保持することにより、チャンバ52の内部を清浄化した状態により確実に保持することができる。また、溶接位置Pwを、送出部16、突き合わせ部17、加熱部19、巻取装置20に対して相対的に高い位置にすることにより、これらから異物が案内されることをより防止することができる。
【0034】
チャンバ52の内部の清浄度は、例えば、米国連邦規格FED−STD−209Dでのクラス1000以下とすることが好ましく、クラス100以下にすることがより好ましい。
【0035】
(加熱部)
加熱部19は、溶接ユニット18の下流に設けられることが好ましい。加熱部19は、溶接により得られたバンド部材13の溶接部13wを一定の温度範囲になるように加熱するものであれば特に限定されない。溶接部13w及びその周辺には、溶接により生じたひずみに起因する応力が内部に残っていることがある。このような溶接部13wやその周辺を加熱部19により加熱することにより応力を除去することができる。この応力の除去により、長時間連続して溶液製膜方法を行う場合であっても、溶接部13wの変形を抑えることができる。
【0036】
加熱部19の加熱による溶接部13wの温度は、応力が除去される温度であれば特に限定されないが、例えばバンド部材13がステンレス鋼からなる場合には、溶接部13wの温度は、100℃以上200℃以下であることが好ましく、120℃以上180℃以下であることがより好ましい。
【0037】
加熱部19としては、例えば、送風手段がある。加熱部19としての送風手段は、図1に示すように、一定の温度の気体を吹き出すダクト56と、気体の温度を制御した上でこの気体をダクト56に送り込む送風機57とがある。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにダクト56と送風機57との図示は略してある。
【0038】
加熱部19は、バンド部材13の搬送路に関し、図1のように溶接支持ローラ41とは反対側に設けてもよいし、溶接支持ローラ41と同じ側に設けてもよい。
【0039】
応力を除去されたバンド部材13は、加熱部19の下流の巻取装置20に送られ、ロール状に巻き取られる。巻取装置20には、バンド部材13を巻き取る巻き芯がセットされ、この巻き芯を周方向に回転させる駆動手段が設けられている。
【0040】
巻取装置20は、溶接位置Pwにおけるバンド部材13と側部材11及び中央部材12との張力を制御する溶接張力制御手段としても作用する。そこで、溶接位置Pwにおけるバンド部材13と側部材11及び中央部材12との張力が一定に保持されるように、巻取装置20のトルクを制御することが好ましい。これにより、溶接部13wを長手方向において一定の状態にすることができる。
【0041】
溶接を開始する場合には、例えば、巻取装置20を用いて以下のようにすると好ましい。まず、送出部16から巻取装置20に至る搬送路に側部材11と中央部材12とをセットし、側部材11と中央部材12との各先端を巻取装置20の巻き芯に巻き掛ける。側部材11と中央部材12との巻取を開始する。巻取を開始して、側部材11と中央部材12との搬送の経路を制御して突き合わせ位置Pcを所定位置に保持する。側部材11と中央部材12との突き合わせ位置Pcが一定に保持されるようになった後に、溶接装置42により溶接を開始する。
【0042】
(ずれ防止)
溶接は、側部材11と中央部材12とバンド部材13との位置ずれを抑止しながら実施することが好ましい。例えば、溶接ユニット18に代えて、押圧装置を備える図3及び図4に示すような溶接ユニット61を用いてもよい。溶接ユニット61は、図1及び図2に示す溶接ユニット18に、押圧装置62をさらに備えたものであり、シフト機構50、コントローラ51、チャンバ52、清浄装置55を溶接ユニット18と同様に備えるが、図示の煩雑化を避けるため図3及ぶ図4ではこれらの図示を略してある。また、図1及び図2と同じ装置、部材については図1及び図2と同じ符号を付し、説明を略す。なお、溶接ユニット61では、チャンバ52は、押圧装置62と溶接支持ローラ41とを外部空間と仕切るように囲む。
【0043】
押圧装置62は、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12とバンド部材13との位置ずれを抑止するものであり、第1ベルト63及び第2ベルト64とからなる1対のベルトにより、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とバンド部材13とを押さえる。
【0044】
第1ベルト63と第2ベルト64とは、環状に形成された無端のベルトである。第1ベルト63と第2ベルト64とは、第5ローラ67〜第7ローラ69の周面に、第5ローラ67〜第7ローラ69の各長手方向に並ぶように巻き掛けられる。第5ローラ67〜第7ローラ69のうち少なくともいずれかひとつのローラは、周方向に回転する駆動ローラとされる。この駆動ローラの回転によって、第1ベルト63と第2ベルト64とは、互いに平行な搬送路を保持しながら、搬送される。
【0045】
第5ローラ67〜第7ローラ69は、回転軸が溶接支持ローラ41の回転軸と平行となるように配される。
【0046】
第5ローラ67〜第7ローラ69は、側部材11と中央部材12との搬送路に関し、第4ローラ29と溶接支持ローラ41とが配されてある側とは反対側の領域に配される。第5ローラ67は、第4ローラ29から溶接支持ローラ41へ向かう側部材11と中央部材12との搬送路に対向するように設けられる。第6ローラ68は、溶接支持ローラ41から加熱部19に向かう側部材11と中央部材12との搬送路に対向するように設けられる。第7ローラ69は、第6ローラ68から第5ローラ67へ向かう第1ベルト63と第2ベルト64との搬送路を決定するように、適宜配される。
【0047】
第5ローラ67と第6ローラ68とは、第5ローラ67から第6ローラ68に向かう第1ベルト63と第2ベルト64とが、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とバンド部材13とを押圧するように搬送されるように配される。例えば、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とを上方から溶接する場合には、第5ローラ67と第6ローラ68とは、これらの各下端が、溶接支持ローラ41の上端よりも低い位置となるように配される。
【0048】
第5ローラ67と第6ローラ68とは、第1ベルト63の搬送路が側部材11と側部材11から形成されるバンド部材13の側部13sとの搬送路と対向するように、また、第2ベルト64の搬送路が中央部材12と中央部材12から形成されるバンド部材13の中央部13cとの搬送路に対向するように、設けられる。これにより、第1ベルト63は側部材11と側部13sとを、第2ベルト64は中央部材12と中央部13cとを、それぞれ溶接支持ローラ41に押圧する。
【0049】
以上のように、第1ベルト63と第2ベルト64とは、それぞれ溶接支持ローラ41にそれぞれ対向して設けられ、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12との高さが等しくなるように押圧する。側部材11と中央部材12との高さとは、各部材11,12の表面の高さである。このように高さが等しくなるように側部材11と中央部材12とを押さえ、この状態で溶接を実施することにより、溶接部13wの態様が長手方向でより均一になるとともに、溶接をより確実に行うことができる。
【0050】
図5及び図6を参照しながら、長手溶接工程についてさらに詳細に説明する。第1ベルト63と第2ベルト64とは、互いに離れた状態で搬送される。第1ベルトと第2ベルト64とは、溶接位置Pwが第1ベルト63と第2ベルト64との隙間を通過するように搬送路が設定される。これにより、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが接している接触位置Psは、図5に示すように第1ベルト63と第2ベルト64との隙間を通過し、第1ベルト63と第2ベルト64との間で溶接される。なお、図5においては溶接装置本体46の図示を略してある。
【0051】
第1ベルト63と第2ベルト64との間隔D1は、6mm以上12mm以下の範囲とすることが好ましい。側部材11と中央部材12との幅方向Yにおける断面において、接触位置Psと第1ベルト63との距離D2、及び、接触位置Psと第2ベルト64との距離D3は、それぞれ3mm以上6mm未満の範囲とすることが好ましい。
【0052】
押圧装置62に代えて、溶接支持ローラ41の回転軸と平行な回転軸を有するローラ(図示無し)を溶接装置本体46の上流と下流とにそれぞれ配してもよい。この場合には、上流の一方のローラで側部材11と中央部材12と押さえ、下流の他方でバンド部材13を押さえることにより、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12とを押圧することができる。
【0053】
図6に示すように、接触位置Ps及びこの周辺には溶接装置42の熱により溶解されて溶接ビード72が形成される。この溶接ビード72から両側に熱が伝わり、側部材11と中央部材12とのそれぞれに溶接での熱の影響を受ける熱影響領域73が生じる。この熱影響領域73は、熱影響をうけない他の領域とは異なる性状をただちに示したり、経時的に示すようになったりすることがある。例えば、このように熱影響が幅広く生じたものを流延支持体として用いると、溶液製膜方法を長時間連続して行う場合に、溶接部13wが変形する、あるいは、流延膜が発泡するなどの弊害が生じる。
【0054】
そこで、図5に示すように、溶接支持ローラ41の周面のうち、接触位置Psを通過する通過領域には、側部材11及び中央部材12よりも熱伝導率が高い素材からなる高熱伝導部71が形成されていることが好ましい。これにより、溶接装置42(図3、図4参照)からの熱をよりはやく拡散させることができる。熱をよりはやく溶接支持ローラ41側で拡散させるために、側部材11と中央部材12との熱影響領域73の幅をより小さくしたり熱影響領域73の深さも浅くすることができる。
【0055】
高熱伝導部71とされる通過領域の幅D4は26mm以上32mm以下の範囲であることが好ましい。
【0056】
さらに、第1ベルト63及び第2ベルト64の両面にも、側部材11及び中央部材12よりも熱伝導率が高い素材からなる高熱伝導部が形成されていることがより好ましい。これにより、熱影響領域73の大きさを、幅方向または厚み方向において小さくすることができる。
【0057】
側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとは、溶接位置Psにおいて隙間が0(ゼロ)になるように密着した状態であることが好ましい。そこで、側部材11と中央部材12とは、各側縁11e及び12eを突き合わせたときに隙間が生じないような形状に予め形成されてあることが好ましい。これにより、溶接部に空隙がないバンド部材をより確実に製造することができる。
【0058】
上記の長手溶接工程は、側部材11と中央部材12との長手方向に連続して溶接を実施する連続溶接工程のみであってもよいし、これに加えて、断続的に溶接を実施する断続溶接工程を実施してもよい。断続的に溶接すると、溶接装置42に連続的に送られてくる側部材11と中央部材12とは、間欠的に溶接される。このような断続溶接工程は、連続溶接工程の前に行うことが好ましい。この場合には、断続溶接工程で、まず、側部材11と中央部材12とを仮接合し、その後、連続溶接工程で長手方向全域に亘り接合するとよい。
【0059】
断続溶接工程で仮接合し、その後連続溶接工程で接合を行う場合には、突き合わせ部17(図1,図2参照)から溶接ユニット18に側部材11と中央部材12とを案内して断続的に溶接する。なお、側部材11と中央部材12とに、後の流延支持体として用いる際の流延面に対応する表面と、非流延面に対応する裏面とを設定してある場合には、断続溶接工程での溶接は、裏面に対して行うことが好ましい。そこで、裏面が溶接装置本体46(図1参照)に対向して通過するように、側部材11と中央部材12とを搬送する。
【0060】
断続溶接工程を行った後に、巻取装置20に案内して巻き取る。なお、巻取前に溶接部に対して加熱部19により加熱してもよい。断続溶接工程を経て巻き取られた側部材11と中央部材12とからなる仮接合部材(図示無し)を、送出装置(図示無し)により巻きだして溶接ユニット18に再び送る。この送り出しは、仮溶接部材の表面が溶接装置本体46(図1参照)に対向して通過するように行う。溶接ユニット18では連続溶接を行い、バンド部材13を得る。なお、この方法に代えて、ふたつの溶接ユニット18を相対的に上流と下流とに並べて配し、上流の一方の溶接ユニット18で断続溶接を実施し、下流の他方の溶接ユニット18で連続溶接を実施してもよい。
【0061】
溶接を行うと溶接ビード72は側部材11と中央部材12とよりも盛り上がって形成される場合がある。そこで、以上のように一方の面を長手方向で溶接する第1工程と他方の面を長手方向で溶接する第2工程とを実施する場合において用いる溶接支持ローラ41には、図5に示すように、溶接支持ローラ41の周面のうち接触位置Psが通過する通過領域に、溝76が形成されてあることが好ましい。第1工程で盛り上がった溶接ビート72から形成された溶接部が、この溝76を通過するように、側部材11と中央部材12とを搬送して第2工程を実施するとよい。これにより、より平滑で、残留応力がより少ないバンド部材13を得ることができる。したがって、溶液製膜で用いても流延支持体としてのバンドに変形や、性状の変化がより少なく、流延膜が発泡せず、厚みのむらがないフィルムをより確実に製造することができる。
【0062】
溝76の幅D5は、6mm以上12mm以下の範囲であることが好ましく、溝の深さD6は、1mm程度でよい。
【0063】
以上の実施形態では突き合わせ部17における側部材11の搬送経路を調整する手段として第3ローラ28を用いるが、第3ローラ28に代えて、図7に示すようなテーパローラ81を用いてもよい。テーパローラ81は、一端から他端に向けて径dが連続的に漸減するように形成された断面円形のローラである。径dは、一端から他端に向けて一定の割合で連続的に漸減する。径dが大きい一端を中央部材12の搬送路に向け、径dが小さい他端を中央部材12とは反対側に向くように、テーパローラを配する。
【0064】
搬送されている側部材11は、このテーパローラ81に接触することにより、搬送の経路を中央部材12に向かう矢線Aの方向に変え、中央部材12に寄るようになる。これにより、突き合わせ位置Pc(図1、図2参照)に向けて側部材11は確実に搬送される。
【0065】
テーパローラ81には、周方向に回転する駆動手段82が備えられていることが好ましい。回転軸は、一端面の中央と他端面の中央とを挿通して形成されてある。駆動手段82で回転するテーパローラ81により側部材11を搬送することにより、側部材はより効果的に中央部材12に寄るようになる。
【0066】
第3ローラ28に代えて、図8に示すような把持手段としてのクリップ85を用いてもよい。クリップ85は、コの字状に開いたクリップ本体86と、クリップ本体86の各先端部に設けられた1対の狭持ピン87とを備え、側部材11を狭持して把持する。狭持ピン87は、側部材11を狭持する狭持位置と、狭持位置から退避する退避位置との間で移動自在に設けられる。クリップ85は、移動機構88を備え、把持を開始する把持開始位置と、把持を解除する把持解除位置との間で移動自在とされる。また、クリップ85は、幅方向Yにも移動自在とされる。
【0067】
クリップ85は、把持開始位置で狭持ピン87が狭持位置に移動することにより側部材11を把持する。クリップ85は、側部材11を把持した状態で中央部材12に向かう幅方向に寄せつつ、下流へと搬送する。
【0068】
テーパローラ81とクリップ85とは、側部材11を中央部材12へ寄せるために用いる他に、中央部材12を側部材11に寄せるために用いてもよい。この場合には、テーパローラ81、クリップ85で中央部材12を支持あるいは搬送するとよい。
【0069】
上記の実施形態では、中央部材12に両側部材11を同時に溶接しているが、一方の側部材11を中央部材12に溶接した後に、他方の側部材11を中央部材12に溶接してもよい。
【0070】
(バンド)
図9に示すように、流延支持体として用いるバンド91は、環状にされた無端のバンドである。バンド91は、バンド部材13の長手方向における一端と他端とを溶接してなる。なお、バンド91をつくるためのバンド部材13は、所定の長さにカットしても良いし、あらかじめ所定の長さにカットされた側部材11と中央部材12とからバンド部材13を作った場合は、カットせずにそのまま、バンド91をつくってもよい。
【0071】
バンド部材13は、幅方向Yと交差する方向でカットすることが好ましい。カットの方向は、幅方向Yとなす角が概ね5°以上15°以下の範囲となるようにカットすることがより好ましい。このようにカットしたバンド部材13の長手方向における先端と先端とを溶接した溶接部91vと、幅方向Yとのなす角θ2は、概ね5°以上15°以下の範囲となる。このように長尺のバンド部材13を環状にする環状溶接工程では、長手溶接工程で用いた溶接装置42を用いてもよいし、公知の他の溶接装置を用いてもよい。
【0072】
溶接により製造されたバンド91は、側部材11(図1〜図8参照)から形成された側部91sと、中央部材12(図1〜図8参照)から形成された中央部91cとからなり、側部91s及び中央部91cの溶接部91wは表面91aや裏面91bに露出する。溶接部91wは、溶接部13wに相当する部分である。線状の溶接部91wは、バンド91の長手方向と平行となるように設けられることが好ましい。このように得られるバンド91の幅は、2000mm以上3000mm以下の範囲である。
【0073】
得られたバンド91は、表面を研磨して鏡面にした後、溶液製膜設備に用いられる。バンド91を用いてフィルムを製造する方法について以下に説明する。ポリマーの種類は特に限定されず、溶液製膜でフィルムにすることができる公知のポリマーを用いてよい。以下の実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いた場合を例にして説明する。
【0074】
(溶液製膜設備)
図10及び図11に示すように、溶液製膜設備110は、セルロースアシレート111が溶剤112に溶解したドープ113からフィルム116を形成するフィルム形成装置117と、フィルム116の各側部を保持手段119で保持しながら乾燥をすすめる第1テンタ120と、フィルム116を複数のローラ122で支持しながら乾燥するローラ乾燥装置124と、フィルム116の各側部を保持手段で保持し、幅方向への張力をフィルム116に付与する第2テンタ125と、第2テンタ125の保持手段により保持された各側部の保持跡を切除するスリッタ126と、フィルム116を巻き芯に巻いてロール状にする巻取装置127とを、上流側から順に備える。
【0075】
(フィルム形成装置)
フィルム形成装置117は、周方向に回転する1対のローラ131、132を備える。1対のローラ131、132は水平に並べられ、ローラ131とローラ132との周面には、バンド91が巻き掛けられる。ローラ131,132の少なくともいずれか一方が、駆動手段を有する駆動ローラであればよい。
【0076】
ローラ131,132には、周面温度を所定の温度に制御する第1コントローラ(図示せず)及び第2コントローラ(図示せず)がそれぞれ備えられる。
【0077】
フィルム形成装置117には、バンド91の移動方向上流側から下流側に向かって、ドープ113を流出する流延ダイ133と、膜乾燥装置と、剥取ローラ135とが順次設けられる。
【0078】
(流延ダイ)
バンド91の上方に位置する流延ダイ133を、一方のローラ131の真上、または、一方のローラ131と他方のローラ132との間に配してもよい。なお、流延ダイ133を一方のローラ131と他方のローラ132との間に配する場合には、バンド91を介して流延ダイ133と対向する位置にローラ(図示無し)を配し、このローラによりバンド91を支持してもよい。
【0079】
流延ダイ133は、ドープ113を流出する流出口133aがバンド91の表面91aと対向するように、配される。スリット状の流出口133aは、表面91a全体、すなわち、一方の側部91s、中央部91c、他方の側部91sと対向するように形成される。
【0080】
なお、流延ダイ133からバンド91に至るドープ113、いわゆるビードの上流側のエリアを減圧する減圧チャンバを、流延ダイ133の移動方向上流側に設けても良い。これにより、同伴風に起因するビードの振動を抑え、ひいては、厚みムラ等を防止することができる。なお、同伴風とは、バンド91の移動に伴って表面91a近傍に発生し、バンド91の移動方向へ流れる風を指す。
【0081】
(膜乾燥装置)
膜乾燥装置は、第1ダクト141〜第3ダクト143と、裏面加熱部144とを有する。
【0082】
(ダクト)
流延膜136に向けて乾燥風を送り出す第1ダクト141〜第3ダクト143は、バンド91の移動路に沿って上流側から順に配される。第1ダクト141は、ローラ131,132よりも上方に設けられる。第3ダクト143は、ローラ131,132よりも下方に設けられる。第2ダクト142は、第1ダクト141及び第3ダクト143の間に設けられる。
【0083】
第1ダクト〜第3ダクト141〜143は、それぞれ送風機(図示せず)に接続する。送風機には、第1ダクト〜第3ダクト141〜143のそれぞれへ供給する気体の温度、湿度、流量を独立して制御する送風コントローラ(図示せず)が接続する。第1ダクト〜第3ダクト141〜143には、送風機から供給された気体を乾燥風として送り出す送出口が設けられる。第1〜第3ダクト141〜143に設けられた送出口は、それぞれ表面91a全体、すなわち、一方の側部91s、中央部91c、他方の側部91sと対向するように形成される。
【0084】
第1ダクト141〜第3ダクト143に設けられた流出口は、スリット状に形成され、バンド91の幅方向に長く伸びる。バンド91の幅方向における各流出口の長さは、流延膜136全体に乾燥風があたるようなものとなっていればよい。
【0085】
乾燥風の温度は、バンド91の移動路の上流側から下流側に向かうに従って高くなることが好ましい。第1ダクト141からの乾燥風の温度は、50℃以上140℃以下であることが好ましく、第2ダクト142からの乾燥風の温度は、50℃以上140℃以下であることが好ましく、第3ダクト143からの乾燥風の温度は、40℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0086】
(裏面加熱部)
裏面加熱部144は、ローラ131,132の間に設けられる。図12及び図13に示すように、裏面加熱部144は、加熱風150を送り出すノズル151を備える。ノズル151は、バンド91の裏面91b側において、溶接部91wと対向するように配される。ノズル151から送り出された加熱風150が溶接部91wにあたると、溶接部91wは加熱される。
【0087】
ノズル151は、バンド91の移動方向に並べられることが好ましい。バンド91に複数の溶接部91wがある場合には、全ての溶接部91wへ加熱風150をあてるようにノズル151を設けることが好ましい。
【0088】
加熱風150の温度は特に限定されないが、例えば、40℃以上70℃以下であることが好ましい。
【0089】
(渡り)
図10に戻って、フィルム形成装置117と第1テンタ120との間の搬送路には、送風装置(図示無し)を配してもよい。この送風装置からの送風により、フィルム116の乾燥をすすめる。
【0090】
(第1テンタ)
第1テンタ120は、クリップ110を用いてフィルム116の両側縁部を保持して長手方向に搬送しながら、幅方向への張力を付与し、フィルム116の幅を拡げる。第1テンタ120には、上流側から順に、予熱エリア、延伸エリア、及び緩和エリアが形成されてある。なお、緩和エリアは省略してもよい。
【0091】
第1テンタ120は、1対のレール(図示無し)及びチェーン(図示無し)を備える。レールはフィルム116の搬送路の両側に設置され1対のレールは所定の間隔で離間して配される。このレール間隔は、予熱エリアでは一定であり、延伸エリアでは下流に向かうに従って次第に広くなり、緩和エリアでは一定である。なお、緩和エリアのレール間隔は、下流に向かうに従って次第に狭くなるようにしてもよい。
【0092】
チェーンは、原動スプロケット及び従動スプロケット(図示無し)に掛け渡され、レールに沿って移動自在に取り付けられている。複数の保持手段119は、チェーンに所定の間隔で取り付けられている。原動スプロケットの回転により、保持手段119はレールに沿って循環移動する。
【0093】
保持手段119は、第1テンタ120の入口近傍で、案内されてきたフィルム116の保持を開始し、出口に向かって移動して、出口近傍で保持を解除する。保持を解除した保持手段119は再び入口近傍に移動して、新たに案内されてきたフィルム116を保持する。
【0094】
ダクト155はフィルム116の搬送路の上方に設けられる。ダクト155は、乾燥風を送り出すスリットを有し、送風機(図示無し)から供給される。送風機は、所定の温度や湿度に調整した乾燥風をダクト155に送る。スリットがフィルム116の搬送路と対向するようにダクト155は配される。各スリットはフィルム116の幅方向に長く伸びた形状であり、搬送方向で互いに所定の間隔をもって形成されている。なお、同様の構造を有するダクトを、フィルム116の搬送路の下方に設けてもよいし、フィルム116の搬送路の上方と下方との両方に設けてもよい。
【0095】
この第1テンタ120で、フィルムは搬送されながら、ダクト155からの乾燥風により乾燥をすすめられるとともに、保持手段119により幅を所定のタイミングで変えられる。
【0096】
延伸エリアにおけるフィルム116の溶剤含有率は、2質量%D.B.以上250質量%D.B.以下であることが好ましく、2質量%D.B.以上100質量%D.B.以下であることがより好ましい。延伸処理における延伸率ER1(={(延伸後の幅)/(延伸前の幅)}×100)は、100%より大きく140%以下であることが好ましい。延伸処理におけるフィルム116の温度は、95℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0097】
なお、本明細書においては、溶剤含有率(単位;質量%D.B.)は乾量基準の値であり、具体的には、溶剤の質量をx、フィルム116の質量をyとするときに、{x/(y−x)}×100で求める値である。
【0098】
(ローラ乾燥装置)
ローラ乾燥装置124の内部の雰囲気は、温度や湿度などが図示しない空調機により調節されている。ローラ乾燥装置124には、多数のローラ122が設けられており、これらにフィルム116が巻き掛けられて搬送される。ローラ乾燥装置124において、フィルム116から溶剤が蒸発する。ローラ乾燥装置124では、溶剤含有率が5質量%D.B.以下となるまで、乾燥工程を行うことが好ましい。
【0099】
なお、ローラ乾燥装置124から出たフィルム116がカールしている場合には、ローラ乾燥装置124と第2テンタ125との間に、カールを矯正してフィルム116を平らにするカール矯正装置(図示無し)を設けてもよい。
【0100】
(第2テンタ)
第2テンタ125は、フィルム116を延伸する。この延伸により、所望の光学特性を有するフィルム116となる。得られるフィルム116は位相差フィルムとして利用することができる。第2テンタ125は、第1テンタ120と同様の構造を有する。なお、第2テンタ125に設けられるダクト157は、スリット(図示せず)から、所定の温度に加熱された乾燥風を流出し、フィルム116に向かって流れる。
【0101】
第2テンタ125での延伸における延伸率ER2(={(延伸後の幅)/(延伸前の幅)}×100)は、105%より大きく200%以下であることが好ましく、110%以上160%以下であることがより好ましい。延伸開始時におけるフィルム116の溶剤含有率は、5質量%D.B.以下であることが好ましく、3質量%D.B.以下であることがより好ましい。延伸におけるフィルム116の温度は、100℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0102】
製造目的とするフィルム116の光学特性によっては、第2テンタ125を省略しても良い。
【0103】
第2テンタ125の下流のスリッタ126は、フィルム116が案内されてくると、第1テンタ120や第2テンタ125の各保持手段119,158による保持跡を含む側部を切除する。側部を切除したフィルム116を巻取装置127に送り、ロール状に巻き取る。
【0104】
第2テンタ125とスリッタ126との間に冷却装置(図示無し)を設けて、第2テンタ125からのフィルム116を冷却して降温させてもよい。
【0105】
次に、本発明の作用を説明する。
【0106】
駆動ローラの回転により、バンド91は長手方向へ循環移動する。流延ダイ133は、バンド91の表面91aへドープ113を連続的に流出する。ドープ113はバンド91上で流延される。この結果、バンド91上には、表面91aに露出する溶接部91wを覆うようにして、流延膜136が形成する。
【0107】
第1ダクト〜第3ダクト141〜143は、流出口から乾燥風を竜煙幕136に向けて送り出す。第1ダクト〜第3ダクト141〜143から乾燥風が流延膜136にあたると、流延膜136から溶剤が蒸発する。
【0108】
溶剤の蒸発により、第1テンタ120への搬送が可能な程度になった流延膜136を、溶剤を含む状態でバンド91から剥がす。剥ぎ取りの際には、フィルム116を剥ぎ取り用のローラ(以下、剥取ローラと称する)137で支持し、流延膜136がバンド91から剥がれる剥取位置を一定に保持する。なお、剥取ローラ135は、駆動手段を備え周方向に回転する駆動ローラであってもよい。剥ぎ取られた流延膜136、すなわちフィルム116は、第1テンタ120に案内される。
【0109】
剥取ローラ135によって剥ぎ取られる流延膜136は、バンド91に設けられた溶接部91wを覆うように形成されている。しかしながら、表面91aのうち溶接部91wは、ほかの部分に比べてピンホールなどの欠陥が多い。このため、流延膜136のうち、溶接部91w上の部分は、欠陥の存在に起因して剥げ残りが起こりやすい。
【0110】
図12に示すように、本発明では、流延膜136の剥ぎ取り前に、溶接部91wを裏面91b側から加熱するため、溶接部91w上の部分の乾燥が十分に進む。このように、本発明によれば、欠陥に起因する剥ぎ残りを抑えつつ、流延膜136を剥取ローラ135から剥ぎ取ることが可能となる。
【0111】
溶接部91wには、ピンホールが含まれる。溶接部91wに直径50μm以上70μm未満のピンホールが含まれる場合においても、本発明を適用することができる。たとえば、溶接部91wに、直径50μm以上70μm未満のピンホールが5個/m以下であることが好ましく、更に、直径50μm以上70μm未満のピンホールが1個/mm以下であることが好ましい。ここで、「個/m」は、バンド91の長手方向に1mの範囲にて溶接部91w中に含まれるピンホールの数であり、「個/mm」は、バンド91の長手方向に1mmの範囲にて溶接部91w中に含まれるピンホールの数である。なお、溶接部91wに直径70μm以上のピンホールが存在しないことが好ましい。
【0112】
上記実施形態では、裏面加熱部144による流延膜の乾燥を、乾燥風による流延膜の乾燥と同時に行ったが、本発明はこれに限られず、裏面加熱部144による流延膜の乾燥と、乾燥風による流延膜の乾燥とを切り替えておこなっても良い。
【0113】
裏面加熱部144は、バンド91を介して第3ダクト143と対向するように設けたが、本発明はこれに限られず、バンド91を介して第1ダクト141と対向するように設けても良い。また、ローラ132のうち溶接部91wと接する部分に、裏面91b側から溶接部91wを加熱する加熱部を設けても良い。
【0114】
なお、発泡を防ぐ観点から、裏面加熱部144による流延膜の乾燥は、乾燥がある程度進行した時点で行うこと、すなわち、裏面加熱部144を第3ダクト143と対向するように設けることが好ましい。裏面加熱部144による乾燥は、流延膜の溶剤含有率が、30質量%D.B.以上100質量%D.B.以下であることが好ましい。
【0115】
上記実施形態では、中央部材12の幅を側部材11の幅よりも広くしたが、本発明はこれに限られず、中央部材12の幅は、側部材11の幅と等しい、又は、側部材11の幅よりも狭くてもよい。また、バンド91を構成する構成部材(中央部材や側部材)の数は、3つに限られず、2つまたは4つ以上でも良い。
【0116】
上記実施形態では、移動方向に平行な溶接部91について、裏面91b側から加熱を行ったが、本発明はこれに限られず、移動方向と交差する溶接部について、裏面91b側から加熱を行ってもよい。
【0117】
(凝縮乾燥)
流延膜136を乾燥するために、本実施形態では、第1〜第3ダクト141〜143を含む膜乾燥装置を用いたが、本発明はこれに限られず、他の乾燥手段を用いてもよい。他の乾燥手段としては、例えば、凝縮器を含む乾燥手段があり、これを第1〜第3ダクト141〜143を含む乾燥手段に代えて、または加えてもよい。
【0118】
(遮風板)
図14及び図15に示すように、第1ダクト141と側部91sとの間には、1対の遮風板170を設けても良い。バンド91の移動方向に設けられた遮風板170は、起立した姿勢で配される。遮風板170により、第1ダクト141からの乾燥風がバンド91の側部91sにあたることを防ぐことができるため、乾燥風によって加熱された側部91sの変形を防ぐことができる。側部91sの変形には、例えば、側部91sがローラ131,132から浮くもの等がある。
【0119】
なお、1対の遮風板170は、第2ダクト142と側部91sとの間、あるいは、第3ダクト143と側部91sとの間に設けてもよい。
【0120】
(抑えローラ)
流延ダイ133からのドープ113がバンド91に接触し始める接触開始位置の上流側に、1対のローラ165を設けることが好ましい。1対のローラ165は、ローラ131とともに側部91sをニップするように配される。同様に、接触開始位置の下流の側部にも、1対のローラ165が配されることが好ましい。これらのローラ165により側部91sを押圧して、ドープの流延時における側部91sの浮き上がりをより確実に防止することができる。
【0121】
ローラ165は、駆動手段により回転する駆動ローラであることが好ましい。バンド91の搬送速度と同じ速度で周回させることにより、バンド91とローラ165との接触による側部91sの摩擦熱の発生を抑止することができ、側部91sの変形をより確実に防止することができる。
【0122】
本実施形態では、接触位置の上流と下流との両方に1対のローラ165を配してあるが、上流と下流とのいずれか一方でもよい。
【0123】
(ポリマー)
本発明に用いることのできるポリマーは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンである。
【0124】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)を満たすものであることが好ましい。下記式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。セルロースアシレートの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。中でも、本発明は、セルロースアシレートとしてセルロースジアセテート(DAC)を用いた場合に特に大きな効果がある。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0125】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0126】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「2位のアシル置換度」とする)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「3位のアシル置換度」という)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「6位のアシル置換度」という)である。
【0127】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が用いられてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0128】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位の水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れたドープを作製することができる。特に、非塩素系有機溶剤を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0129】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター、パルプのいずれかから得られたものでもよい。
【0130】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特には限定されない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレノイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0131】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0132】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。セルロースアシレートの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度及び光学特性など物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対して2〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0133】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶剤組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶剤として用いることができる。
【実施例】
【0134】
以下に本発明の効果を確認するために、実験1〜5を行った。各実験の詳細は実験1にて説明し、実験2〜5については、実験1と異なる条件のみを示す。
【0135】
(実験1)
バンド製造設備10において、SUS316製の側部材11とSUS316製の中央部材12とから、第1のバンド(以下、バンドAと称する)を製造した。側部材の幅は150mm、中央部材の幅は2000mmであった。目視で認めた溶接ビードと熱影響領域との各幅を測定した。溶接ビードの幅は2mm、熱影響領域の幅は4mmであった。
【0136】
バンドAの溶接部において、直径が50μm以上70μm以下のピンホールの数は、長手方向1mあたり5個、かつ、長手方向1mmあたり1個以下であった。また、直径が70μm以上のピンホールは存在しなかった。
【0137】
(ピンホールの測定方法)
溶接部におけるピンホールの数は、目視によりカウントした。また、目視により確認したピンホールの直径について、ファイバスコープを用いて測定した。
【0138】
溶液製膜設備110(図10参照)において、セルロースジアセテート(DAC)及び溶剤を含むドープ113からフィルム116を製造した。バンドAをバンド91として用いた。バンド91の移動速度は40m/分であった。流延ダイ133は、移動状態のバンド91へドープ113を連続的に流出した。バンド91の表面91a上には、ドープ113からなる流延膜136が形成された。
【0139】
各ダクト141〜143からの乾燥風を用いて、バンド91上の流延膜136から溶剤を蒸発させた。第1ダクト141からの乾燥風の温度は130℃であり、第2ダクト142からの乾燥風の温度は130℃であり、第3ダクト143からの乾燥風の温度は70℃であった。また、裏面加熱部144による流延膜136の乾燥は行わなかった。
【0140】
剥取ローラ135が、流延膜136をバンド91から剥ぎ取って、フィルム116とした。バンド91から剥ぎ取る際、流延膜136のうち溶接部91wよりも幅方向内側の部分の溶剤含有率は45質量%D.B.であり、流延膜136のうち溶接部91w、及び側部91s上の部分の溶剤含有率は45質量%D.B.であった。フィルム116は、第1テンタ120、ローラ乾燥装置124、第2テンタ125、スリッタ126へと順次送られた。
【0141】
(実験2)
バンドAに代えてバンドBを用いたこと以外は、実験1と同様にして、フィルム116を製造した。バンドBは、溶接部におけるピンホールの数・直径等の以外は、バンドAと同一のものである。バンドBの溶接部において、直径が50μm以上70μm以下のピンホールの数は、長手方向1mあたり6個、かつ、長手方向1mmあたり2個以下であった。また、直径が70μm以上のピンホールは存在しなかった。
【0142】
(実験3)
バンドAに代えてバンドCを用いたこと以外は、実験1と同様にして、フィルム116を製造した。バンドCは、溶接部におけるピンホールの数・直径等の以外は、バンドAと同一のものである。バンドCの溶接部において、直径が50μm以上70μm以下のピンホールの数は、長手方向1mあたり6個、かつ、長手方向2mmあたり2個以下であった。直径が75μm以上のピンホールの数は、全体において1個であった。
【0143】
(実験4)
バンドAに代えてバンドBを用いたこと、バンド91の移動速度を70m/分としたこと、及びバンド91を介して第3ダクト143と対向する位置に設けられた裏面加熱部144を用いて流延膜136の乾燥を行ったこと、及び、裏面加熱部144が流延膜136に温度50℃の加熱風をあてたこと以外は、実験1と同様にして、フィルム116を製造した。なお、バンド91から剥ぎ取る際、流延膜136のうち溶接部91wよりも幅方向内側の部分の溶剤含有率は70質量%D.B.であり、流延膜136のうち溶接部91w、及び側部91s上の部分の溶剤含有率は60質量%D.B.であった。
【0144】
(実験5)
バンドAに代えてバンドBを用いたこと、バンド91の移動速度を70m/分としたこと以外は、実験1と同様にして、フィルム116を製造した。なお、バンド91から剥ぎ取る際、流延膜136のうち溶接部91wよりも幅方向内側の部分の溶剤含有率は70質量%D.B.であり、流延膜136のうち溶接部91w、及び側部91s上の部分の溶剤含有率は70質量%D.B.であった。
【0145】
(剥げ残り評価)
実験1〜5について、剥げ残りの有無について評価を行った。実験1及び4では、剥げ残りが発生しなかった。実験2では、わずかながら剥げ残りが発生した。実験3及び5では、剥げ残りが顕著に発生した。
【符号の説明】
【0146】
91 バンド
91a 表面
91b 裏面
91s 側部
91c 中央部
91w 溶接部
110 溶液製膜設備
144 裏面加熱部
150 加熱風
151 ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液製膜方法、及び溶液製膜方法に用いる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)の大画面化に伴い、LCDに用いる光学フィルムにも大面積化が要求される。光学フィルムは、長尺に製造されてから、LCDに対応するように所定のサイズにカットされる。したがって、より大きな面積の光学フィルムを製造するためには、幅が従来よりも大きな長尺の光学フィルムを製造する必要がある。
【0003】
長尺の光学フィルムの代表的な製造方法としては、連続方式の溶液製膜方法がある。溶液製膜方法は、周知のように、ポリマーが溶剤に溶けているドープを、移動する流延支持体の上に流延し、ドープからなる流延膜を流延支持体上に形成し、流延膜を流延支持体から剥がして乾燥することによりフィルムを製造する方法である。
【0004】
流延支持体として、金属製のバンドが用いられ、製造することができるフィルムの最大幅は、このバンドの幅に制約される。したがって、より大きな幅のフィルムを製造するには、より大きな幅のバンドが必要となる。しかし、これまで、幅が2m程度までのバンドしか得られていなかった。
【0005】
そこで、特許文献1では、幅方向の中央部になる中央バンドと、バンドの各側部になる1対の側部バンドとを、長手方向に溶接することにより、従来よりも大きな幅のバンドを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開公報第2009−0110082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のバンドの表面には、側部バンドと中央バンドとの溶接部が露出し、この溶接部には、側部バンドや中央バンドに比べ、ピンホール等の欠陥が多く存在する。このため、溶接部の欠陥に起因して、剥げ残り故障が生じてしまう。剥げ残り故障が生じると、溶液製膜方法の生産速度を一旦下げて、又は停止し、流延支持体上に残留した流延膜を除去する作業を行わなければ成らず、結果として、効率よくフィルムを製造することができなくなる。
【0008】
本発明は、従来よりも幅の広いバンドを用いて溶液製膜方法を行い、効率よくフィルムを製造することができる溶液製膜方法、及び溶液製膜方法に用いる乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の溶液製膜方法は、第1金属製シートと第2金属製シートとが溶接してなる移動バンドであって、移動方向にのびる溶接部が露出する移動バンドの表面へポリマー及び溶剤を含むドープを連続して流出し、ドープからなり溶接部を覆う流延膜を表面上に形成する膜形成工程と、乾燥風をあてて流延膜から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、支持体から流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥取工程と、湿潤フィルムから溶剤を蒸発させるフィルム乾燥工程と、を有し、前記溶接部には、直径50μm以上70μm未満のピンホールがあることを特徴とする。また、前記溶接部には直径70μm以上のピンホールがないことを特徴とする。さらに、前記溶接部には、直径50μm以上70μm未満のピンホールが長手方向1mあたり10個以下であるか、又は、直径50μm以上70μm未満のピンホールが長手方向1mmあたり3個以下であるか、又はその両方であることが望ましい。
【0010】
移動バンドの移動速度が70m/s未満であることが望ましい。
また、膜形成工程と剥取工程との間では、移動バンドの裏面側から溶接部を加熱する溶接部加熱工程を行うことが望ましい。この場合においては移動バンドの移動速度が70m/s以上であってもかまわない。
また、移動バンドの側部に乾燥風を遮る遮風板を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも幅が広い長尺のフィルムを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のバンドの製造設備の概要を示す側面図である。
【図2】バンド製造設備の概要を示す平面図である。
【図3】溶接ユニットの概要を示す側面図である。
【図4】溶接ユニットの概要を示す平面図である。
【図5】溶接支持ローラの概要を示すV−V線断面図である。
【図6】溶接ビード及びその周辺の説明図である。
【図7】テーパローラの概略図である。
【図8】クリップの概略図である。
【図9】バンドの概略図である。
【図10】第1の溶液製膜設備の概要を示す側面図である。
【図11】バンドの概要を示す平面図である。
【図12】裏面加熱部の概要を示す斜視図である。
【図13】裏面加熱部が溶接部を加熱する様子を示す断面図である。
【図14】第2の溶液製膜設備の概要を示す側面図である。
【図15】第3の溶液製膜設備の概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2に示すバンド製造設備10は、長尺の中央部材12と、中央部材12の幅方向両側に設けられる側部材11とからなる長尺のバンド部材13をつくるものである。
【0014】
側部材11と中央部材12とは、それぞれ金属製のシート材である。側部材11は相対的に幅が狭い幅狭のシート材である。側部材11と中央部材12とは、互いに同じ素材から形成されることが好ましく、互いに同一の原料及び形成工程を経て形成されることがより好ましい。例えば、側部材11及び中央部材12として、ステンレス鋼から形成されたもの用いることが好ましい。
【0015】
中央部材12としては、従来の流延支持体として用いられてきたバンドを用いてよい。中央部材12は、側部材11よりも幅が広く、本実施形態における中央部材12の幅は1500mm以上2100mm以下の範囲で一定であり、側部材11の幅は50mm以上500mm以下の範囲で一定である。
【0016】
バンド製造設備10は、送出部16と、突き合わせ部17と、溶接ユニット18と、加熱部19と、巻取装置20とを備える。
【0017】
(送出部)
送出部16は、側部材11を送り出す第1送出装置23と、中央部材12を送り出す第2送出装置24とを有し、側部材11と中央部材12とをそれぞれ独立して突き合わせ部17に送る。第1送出装置23には、ロール状に巻かれた側部材11がセットされ、側部材11を巻き出して突き合わせ部17に送る。第2送出装置24には、ロール状に巻かれた中央部材12がセットされ、中央部材12を巻き出して突き合わせ部17に送る。
【0018】
突き合わせ部17は、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが互いに接するように、独立して案内されてくる側部材11と中央部材とを突き合わせる。突き合わせ部17は、中央部材12の搬送路に上流側から順に配される第1ローラ26と第2ローラ27、側部材11の搬送路に配される第3ローラ28、側部材11と中央部材12との両方を支持するように搬送路に配される第4ローラ29を有することが好ましい。
【0019】
第4ローラ29は、側部材11の一方の側縁と中央部材12の一方の側縁とが接触を開始する突き合わせ位置Pcにおいて、送られてきた側部材11と中央部材12とを支持する突き合わせ支持ローラである。
【0020】
第2ローラ27と第3ローラ28とは、第4ローラ29の周面で中央部材12と側部材11とが接触するように中央部材12と側部材11との搬送経路をそれぞれ調整する。
【0021】
第2ローラ27は、中央部材12の搬送経路を調整して、側部材11と溶接されるべき側縁12eの通過経路を、突き合わせ位置Pcに向けて制御する。第2ローラ27は、中央部材12の幅方向Yに移動自在となっている。シフト機構32は、第2ローラ27を幅方向Yへ移動する。
【0022】
第2ローラ27と第4ローラ29との間には、中央部材12の各側縁12eのうちの一方の通過位置を検出し、検出した通過位置の信号をコントローラ33に送る位置検出手段34が配される。コントローラ33は、送られてきた通過位置の信号に基づき、幅方向Yにおける第2ローラ27の変位量を求め、変位量の信号をシフト機構32に送る。シフト機構32は、送られてきた変位量の信号に基づき第2ローラ27の傾きや中央部材12の幅方向Yにおける第2ローラ27の位置を変える。このように第2ローラ27の傾きや位置を変えることにより、中央部材12が幅方向Yに変位する。
【0023】
第1ローラ26には、シフト機構37が設けられていることが好ましい。このシフト機構37により、第1ローラ26は、第2ローラ27に向かう中央部材12を一方の部材面から押す。この第1ローラ26の変位量に応じて、第1ローラ26の中央部材12に対する押し圧が変わり、押し圧を調整することにより、第2ローラ27に巻き掛ける中央部材12の巻き掛け中心角を制御することができる。この巻き掛け中心角の制御により、第2ローラ27による中央部材12の幅方向Yでの変位量をより精緻に制御することができる。
【0024】
第3ローラ28は、側部材11の搬送経路を調整して、中央部材12と溶接されるべき一方の側縁11eの通過経路を突き合わせ位置Pcに向けて調整する。第3ローラ28には、長手方向の向きを制御するコントローラ38が備えられる。このコントローラ38は、例えば、側部材11と接触している間の接触領域における周方向と中央部材12の搬送方向Xとのなす角θ1が変化するように、第3ローラ28の長手方向を側部材11の部材面に沿って変化させる。
【0025】
以上のように第1ローラ26〜第3ローラ28を用いて、突き合わせ位置Pcが第4ローラ29上になるように制御することが好ましい。第1ローラ26〜第3ローラ28は、いずれも周方向に回転する駆動ローラであることが好ましい。周方向に回転することにより、第1ローラ26及び第2ローラ27は、中央部材12の搬送手段としても作用し、第3ローラ28は、側部材11の搬送手段としても作用する。第1ローラ26〜第3ローラ28を駆動ローラとすることにより、側部材11と中央部材12との搬送路の制御がより確実になるとともに、側部材11と中央部材12との第1ローラ26〜第3ローラ28上でのスリップを防止して部材面に傷がつくことが防止される。
【0026】
(溶接ユニット)
溶接ユニット18は、互いの側縁11e,12eが接触した状態で突き合わせ部17から供給される側部材11と中央部材12とを溶接する。突き合わせ部17から連続的に供給されることにより、側部材11と中央部材12とを長手方向で溶接する長手溶接工程を行うことができる。溶接ユニット18は、溶接装置42を備える。溶接装置42としては、例えば、レーザ溶接装置が挙げられる。レーザ溶接装置としては、例えば、CO2レーザ溶接装置や、YAGレーザ溶接装置を用いることができる。本実施態様では、CO2レーザ溶接装置を溶接装置42として用いた場合を説明する。
【0027】
溶接装置42は、集光したレーザ光を射出して、照射対象としての側部材11及び中央部材12にレーザ光を照射することにより、側部材11と中央部材12とを溶融して接合する。溶接装置42は、レーザ発振器43と、このレーザ発振器43から案内されてきたレーザ光を集光して射出する溶接装置本体46と、レーザ光を照射するにあたりCO2ガスを供給するガス供給部(図示無し)とを備える。CO2ガスは、側部材11と中央部材12との酸化を防止する。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにレーザ発振器43の図示は略してある。
【0028】
レーザ溶接装置に代えてTIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)装置を用いてもよい。TIG溶接とは、周知のように、アークを熱源とする溶接アーク溶接のひとつであり、シールドガスとしてイナートガス(不活性ガス)を用い、電極にはタングステンあるいはタングステン合金を用いるイナートガスアーク溶接の一種である。TIG溶接よりもレーザ溶接の方がより好ましい。また、TIG溶接とレーザ溶接とを組み合わせたハイブリッド溶接としてもよい。
【0029】
溶接装置本体46のレーザ光の射出口に対向するように、側部材11と中央部材12との搬送路には側部材11と中央部材12とを周面で支持する溶接支持ローラ41が備えてある。溶接支持ローラ41の回転軸は、側部材11及び中央部材12の幅方向Yと平行である。溶接支持ローラ41の周面で支持されている間の側部材11と中央部材12とにレーザ光が照射されるように、溶接支持ローラ41による側部材11と中央部材12との支持位置を設定することが好ましい。すなわち、溶接支持ローラ41上で、溶接をすることが好ましい。これにより、互いに側縁11e,12eが接した状態で側部材11と中央部材12とが安定し、照射すべき箇所にレーザ光を確実に照射することができる。
【0030】
溶接装置本体46には、幅方向Yに変位するためのシフト機構50が備えられることが好ましい。溶接装置42の上流には、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが接している接触位置Ps(図5参照)を検出し、検出した接触位置Ps(図5参照)の信号をコントローラ51に送る位置検出手段47が設けてある。位置検出手段47は、突き合わせ位置Pcから溶接装置42に至る搬送路近傍に配されてあればよい。
【0031】
コントローラ51は、送られてきた接触位置Ps(図5参照)の信号に基づき、幅方向Yにおける溶接装置本体46の変位量を求め、変位量の信号をシフト機構50に送る。コントローラ51は、側部材11と中央部材12との搬送速度の信号が入力されると、溶接装置本体46を変位させるべき変位量の信号とともに変位させるタイミングの信号とをシフト機構50に送る。シフト機構50は、送られてきた変位量及び変位のタイミングの信号に基づき、溶接装置本体46の位置を所定のタイミングで変える。このように溶接装置本体46の位置を幅方向Yで変えることにより、レーザ光の照射位置をより精緻に制御して、より確実に、側部材11と中央部材12とが溶接される。なお、本実施形態における溶接装置42への側部材11と中央部材12との搬送速度は0.15m/分以上20m/分以下の範囲としてある。
【0032】
溶接ユニット18には、図1に示すように、溶接装置本体46と溶接支持ローラ41とを外部空間と仕切るチャンバ52と、気体を清浄化する清浄装置55とを設けることがより好ましい。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにチャンバ52と清浄装置55との図示は略してある。チャンバ52には、内部気体を外部に出す第1開口(図示無し)と、清浄装置55で清浄化された気体を内部に案内する第2開口(図示無し)とが設けられる。第1開口と第2開口とは、それぞれ清浄装置55に接続する。チャンバ52の内部気体は、第1開口から清浄装置55に案内され、清浄装置55はチャンバ52から案内されてきた気体を清浄化して第2開口を介してチャンバ52に送る。このように、チャンバ52の内部気体は、清浄装置55との間で循環される。
【0033】
チャンバ52の内部気体を清浄化しておくことにより、溶接位置Pw及びその周辺が清浄化され、溶接部13wに異物等が混入されてしまうことが防止される。なお、チャンバ52の内部の圧力が、外部空間の圧力よりも高く保持することにより、チャンバ52の内部を清浄化した状態により確実に保持することができる。また、溶接位置Pwを、送出部16、突き合わせ部17、加熱部19、巻取装置20に対して相対的に高い位置にすることにより、これらから異物が案内されることをより防止することができる。
【0034】
チャンバ52の内部の清浄度は、例えば、米国連邦規格FED−STD−209Dでのクラス1000以下とすることが好ましく、クラス100以下にすることがより好ましい。
【0035】
(加熱部)
加熱部19は、溶接ユニット18の下流に設けられることが好ましい。加熱部19は、溶接により得られたバンド部材13の溶接部13wを一定の温度範囲になるように加熱するものであれば特に限定されない。溶接部13w及びその周辺には、溶接により生じたひずみに起因する応力が内部に残っていることがある。このような溶接部13wやその周辺を加熱部19により加熱することにより応力を除去することができる。この応力の除去により、長時間連続して溶液製膜方法を行う場合であっても、溶接部13wの変形を抑えることができる。
【0036】
加熱部19の加熱による溶接部13wの温度は、応力が除去される温度であれば特に限定されないが、例えばバンド部材13がステンレス鋼からなる場合には、溶接部13wの温度は、100℃以上200℃以下であることが好ましく、120℃以上180℃以下であることがより好ましい。
【0037】
加熱部19としては、例えば、送風手段がある。加熱部19としての送風手段は、図1に示すように、一定の温度の気体を吹き出すダクト56と、気体の温度を制御した上でこの気体をダクト56に送り込む送風機57とがある。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにダクト56と送風機57との図示は略してある。
【0038】
加熱部19は、バンド部材13の搬送路に関し、図1のように溶接支持ローラ41とは反対側に設けてもよいし、溶接支持ローラ41と同じ側に設けてもよい。
【0039】
応力を除去されたバンド部材13は、加熱部19の下流の巻取装置20に送られ、ロール状に巻き取られる。巻取装置20には、バンド部材13を巻き取る巻き芯がセットされ、この巻き芯を周方向に回転させる駆動手段が設けられている。
【0040】
巻取装置20は、溶接位置Pwにおけるバンド部材13と側部材11及び中央部材12との張力を制御する溶接張力制御手段としても作用する。そこで、溶接位置Pwにおけるバンド部材13と側部材11及び中央部材12との張力が一定に保持されるように、巻取装置20のトルクを制御することが好ましい。これにより、溶接部13wを長手方向において一定の状態にすることができる。
【0041】
溶接を開始する場合には、例えば、巻取装置20を用いて以下のようにすると好ましい。まず、送出部16から巻取装置20に至る搬送路に側部材11と中央部材12とをセットし、側部材11と中央部材12との各先端を巻取装置20の巻き芯に巻き掛ける。側部材11と中央部材12との巻取を開始する。巻取を開始して、側部材11と中央部材12との搬送の経路を制御して突き合わせ位置Pcを所定位置に保持する。側部材11と中央部材12との突き合わせ位置Pcが一定に保持されるようになった後に、溶接装置42により溶接を開始する。
【0042】
(ずれ防止)
溶接は、側部材11と中央部材12とバンド部材13との位置ずれを抑止しながら実施することが好ましい。例えば、溶接ユニット18に代えて、押圧装置を備える図3及び図4に示すような溶接ユニット61を用いてもよい。溶接ユニット61は、図1及び図2に示す溶接ユニット18に、押圧装置62をさらに備えたものであり、シフト機構50、コントローラ51、チャンバ52、清浄装置55を溶接ユニット18と同様に備えるが、図示の煩雑化を避けるため図3及ぶ図4ではこれらの図示を略してある。また、図1及び図2と同じ装置、部材については図1及び図2と同じ符号を付し、説明を略す。なお、溶接ユニット61では、チャンバ52は、押圧装置62と溶接支持ローラ41とを外部空間と仕切るように囲む。
【0043】
押圧装置62は、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12とバンド部材13との位置ずれを抑止するものであり、第1ベルト63及び第2ベルト64とからなる1対のベルトにより、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とバンド部材13とを押さえる。
【0044】
第1ベルト63と第2ベルト64とは、環状に形成された無端のベルトである。第1ベルト63と第2ベルト64とは、第5ローラ67〜第7ローラ69の周面に、第5ローラ67〜第7ローラ69の各長手方向に並ぶように巻き掛けられる。第5ローラ67〜第7ローラ69のうち少なくともいずれかひとつのローラは、周方向に回転する駆動ローラとされる。この駆動ローラの回転によって、第1ベルト63と第2ベルト64とは、互いに平行な搬送路を保持しながら、搬送される。
【0045】
第5ローラ67〜第7ローラ69は、回転軸が溶接支持ローラ41の回転軸と平行となるように配される。
【0046】
第5ローラ67〜第7ローラ69は、側部材11と中央部材12との搬送路に関し、第4ローラ29と溶接支持ローラ41とが配されてある側とは反対側の領域に配される。第5ローラ67は、第4ローラ29から溶接支持ローラ41へ向かう側部材11と中央部材12との搬送路に対向するように設けられる。第6ローラ68は、溶接支持ローラ41から加熱部19に向かう側部材11と中央部材12との搬送路に対向するように設けられる。第7ローラ69は、第6ローラ68から第5ローラ67へ向かう第1ベルト63と第2ベルト64との搬送路を決定するように、適宜配される。
【0047】
第5ローラ67と第6ローラ68とは、第5ローラ67から第6ローラ68に向かう第1ベルト63と第2ベルト64とが、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とバンド部材13とを押圧するように搬送されるように配される。例えば、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とを上方から溶接する場合には、第5ローラ67と第6ローラ68とは、これらの各下端が、溶接支持ローラ41の上端よりも低い位置となるように配される。
【0048】
第5ローラ67と第6ローラ68とは、第1ベルト63の搬送路が側部材11と側部材11から形成されるバンド部材13の側部13sとの搬送路と対向するように、また、第2ベルト64の搬送路が中央部材12と中央部材12から形成されるバンド部材13の中央部13cとの搬送路に対向するように、設けられる。これにより、第1ベルト63は側部材11と側部13sとを、第2ベルト64は中央部材12と中央部13cとを、それぞれ溶接支持ローラ41に押圧する。
【0049】
以上のように、第1ベルト63と第2ベルト64とは、それぞれ溶接支持ローラ41にそれぞれ対向して設けられ、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12との高さが等しくなるように押圧する。側部材11と中央部材12との高さとは、各部材11,12の表面の高さである。このように高さが等しくなるように側部材11と中央部材12とを押さえ、この状態で溶接を実施することにより、溶接部13wの態様が長手方向でより均一になるとともに、溶接をより確実に行うことができる。
【0050】
図5及び図6を参照しながら、長手溶接工程についてさらに詳細に説明する。第1ベルト63と第2ベルト64とは、互いに離れた状態で搬送される。第1ベルトと第2ベルト64とは、溶接位置Pwが第1ベルト63と第2ベルト64との隙間を通過するように搬送路が設定される。これにより、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが接している接触位置Psは、図5に示すように第1ベルト63と第2ベルト64との隙間を通過し、第1ベルト63と第2ベルト64との間で溶接される。なお、図5においては溶接装置本体46の図示を略してある。
【0051】
第1ベルト63と第2ベルト64との間隔D1は、6mm以上12mm以下の範囲とすることが好ましい。側部材11と中央部材12との幅方向Yにおける断面において、接触位置Psと第1ベルト63との距離D2、及び、接触位置Psと第2ベルト64との距離D3は、それぞれ3mm以上6mm未満の範囲とすることが好ましい。
【0052】
押圧装置62に代えて、溶接支持ローラ41の回転軸と平行な回転軸を有するローラ(図示無し)を溶接装置本体46の上流と下流とにそれぞれ配してもよい。この場合には、上流の一方のローラで側部材11と中央部材12と押さえ、下流の他方でバンド部材13を押さえることにより、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12とを押圧することができる。
【0053】
図6に示すように、接触位置Ps及びこの周辺には溶接装置42の熱により溶解されて溶接ビード72が形成される。この溶接ビード72から両側に熱が伝わり、側部材11と中央部材12とのそれぞれに溶接での熱の影響を受ける熱影響領域73が生じる。この熱影響領域73は、熱影響をうけない他の領域とは異なる性状をただちに示したり、経時的に示すようになったりすることがある。例えば、このように熱影響が幅広く生じたものを流延支持体として用いると、溶液製膜方法を長時間連続して行う場合に、溶接部13wが変形する、あるいは、流延膜が発泡するなどの弊害が生じる。
【0054】
そこで、図5に示すように、溶接支持ローラ41の周面のうち、接触位置Psを通過する通過領域には、側部材11及び中央部材12よりも熱伝導率が高い素材からなる高熱伝導部71が形成されていることが好ましい。これにより、溶接装置42(図3、図4参照)からの熱をよりはやく拡散させることができる。熱をよりはやく溶接支持ローラ41側で拡散させるために、側部材11と中央部材12との熱影響領域73の幅をより小さくしたり熱影響領域73の深さも浅くすることができる。
【0055】
高熱伝導部71とされる通過領域の幅D4は26mm以上32mm以下の範囲であることが好ましい。
【0056】
さらに、第1ベルト63及び第2ベルト64の両面にも、側部材11及び中央部材12よりも熱伝導率が高い素材からなる高熱伝導部が形成されていることがより好ましい。これにより、熱影響領域73の大きさを、幅方向または厚み方向において小さくすることができる。
【0057】
側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとは、溶接位置Psにおいて隙間が0(ゼロ)になるように密着した状態であることが好ましい。そこで、側部材11と中央部材12とは、各側縁11e及び12eを突き合わせたときに隙間が生じないような形状に予め形成されてあることが好ましい。これにより、溶接部に空隙がないバンド部材をより確実に製造することができる。
【0058】
上記の長手溶接工程は、側部材11と中央部材12との長手方向に連続して溶接を実施する連続溶接工程のみであってもよいし、これに加えて、断続的に溶接を実施する断続溶接工程を実施してもよい。断続的に溶接すると、溶接装置42に連続的に送られてくる側部材11と中央部材12とは、間欠的に溶接される。このような断続溶接工程は、連続溶接工程の前に行うことが好ましい。この場合には、断続溶接工程で、まず、側部材11と中央部材12とを仮接合し、その後、連続溶接工程で長手方向全域に亘り接合するとよい。
【0059】
断続溶接工程で仮接合し、その後連続溶接工程で接合を行う場合には、突き合わせ部17(図1,図2参照)から溶接ユニット18に側部材11と中央部材12とを案内して断続的に溶接する。なお、側部材11と中央部材12とに、後の流延支持体として用いる際の流延面に対応する表面と、非流延面に対応する裏面とを設定してある場合には、断続溶接工程での溶接は、裏面に対して行うことが好ましい。そこで、裏面が溶接装置本体46(図1参照)に対向して通過するように、側部材11と中央部材12とを搬送する。
【0060】
断続溶接工程を行った後に、巻取装置20に案内して巻き取る。なお、巻取前に溶接部に対して加熱部19により加熱してもよい。断続溶接工程を経て巻き取られた側部材11と中央部材12とからなる仮接合部材(図示無し)を、送出装置(図示無し)により巻きだして溶接ユニット18に再び送る。この送り出しは、仮溶接部材の表面が溶接装置本体46(図1参照)に対向して通過するように行う。溶接ユニット18では連続溶接を行い、バンド部材13を得る。なお、この方法に代えて、ふたつの溶接ユニット18を相対的に上流と下流とに並べて配し、上流の一方の溶接ユニット18で断続溶接を実施し、下流の他方の溶接ユニット18で連続溶接を実施してもよい。
【0061】
溶接を行うと溶接ビード72は側部材11と中央部材12とよりも盛り上がって形成される場合がある。そこで、以上のように一方の面を長手方向で溶接する第1工程と他方の面を長手方向で溶接する第2工程とを実施する場合において用いる溶接支持ローラ41には、図5に示すように、溶接支持ローラ41の周面のうち接触位置Psが通過する通過領域に、溝76が形成されてあることが好ましい。第1工程で盛り上がった溶接ビート72から形成された溶接部が、この溝76を通過するように、側部材11と中央部材12とを搬送して第2工程を実施するとよい。これにより、より平滑で、残留応力がより少ないバンド部材13を得ることができる。したがって、溶液製膜で用いても流延支持体としてのバンドに変形や、性状の変化がより少なく、流延膜が発泡せず、厚みのむらがないフィルムをより確実に製造することができる。
【0062】
溝76の幅D5は、6mm以上12mm以下の範囲であることが好ましく、溝の深さD6は、1mm程度でよい。
【0063】
以上の実施形態では突き合わせ部17における側部材11の搬送経路を調整する手段として第3ローラ28を用いるが、第3ローラ28に代えて、図7に示すようなテーパローラ81を用いてもよい。テーパローラ81は、一端から他端に向けて径dが連続的に漸減するように形成された断面円形のローラである。径dは、一端から他端に向けて一定の割合で連続的に漸減する。径dが大きい一端を中央部材12の搬送路に向け、径dが小さい他端を中央部材12とは反対側に向くように、テーパローラを配する。
【0064】
搬送されている側部材11は、このテーパローラ81に接触することにより、搬送の経路を中央部材12に向かう矢線Aの方向に変え、中央部材12に寄るようになる。これにより、突き合わせ位置Pc(図1、図2参照)に向けて側部材11は確実に搬送される。
【0065】
テーパローラ81には、周方向に回転する駆動手段82が備えられていることが好ましい。回転軸は、一端面の中央と他端面の中央とを挿通して形成されてある。駆動手段82で回転するテーパローラ81により側部材11を搬送することにより、側部材はより効果的に中央部材12に寄るようになる。
【0066】
第3ローラ28に代えて、図8に示すような把持手段としてのクリップ85を用いてもよい。クリップ85は、コの字状に開いたクリップ本体86と、クリップ本体86の各先端部に設けられた1対の狭持ピン87とを備え、側部材11を狭持して把持する。狭持ピン87は、側部材11を狭持する狭持位置と、狭持位置から退避する退避位置との間で移動自在に設けられる。クリップ85は、移動機構88を備え、把持を開始する把持開始位置と、把持を解除する把持解除位置との間で移動自在とされる。また、クリップ85は、幅方向Yにも移動自在とされる。
【0067】
クリップ85は、把持開始位置で狭持ピン87が狭持位置に移動することにより側部材11を把持する。クリップ85は、側部材11を把持した状態で中央部材12に向かう幅方向に寄せつつ、下流へと搬送する。
【0068】
テーパローラ81とクリップ85とは、側部材11を中央部材12へ寄せるために用いる他に、中央部材12を側部材11に寄せるために用いてもよい。この場合には、テーパローラ81、クリップ85で中央部材12を支持あるいは搬送するとよい。
【0069】
上記の実施形態では、中央部材12に両側部材11を同時に溶接しているが、一方の側部材11を中央部材12に溶接した後に、他方の側部材11を中央部材12に溶接してもよい。
【0070】
(バンド)
図9に示すように、流延支持体として用いるバンド91は、環状にされた無端のバンドである。バンド91は、バンド部材13の長手方向における一端と他端とを溶接してなる。なお、バンド91をつくるためのバンド部材13は、所定の長さにカットしても良いし、あらかじめ所定の長さにカットされた側部材11と中央部材12とからバンド部材13を作った場合は、カットせずにそのまま、バンド91をつくってもよい。
【0071】
バンド部材13は、幅方向Yと交差する方向でカットすることが好ましい。カットの方向は、幅方向Yとなす角が概ね5°以上15°以下の範囲となるようにカットすることがより好ましい。このようにカットしたバンド部材13の長手方向における先端と先端とを溶接した溶接部91vと、幅方向Yとのなす角θ2は、概ね5°以上15°以下の範囲となる。このように長尺のバンド部材13を環状にする環状溶接工程では、長手溶接工程で用いた溶接装置42を用いてもよいし、公知の他の溶接装置を用いてもよい。
【0072】
溶接により製造されたバンド91は、側部材11(図1〜図8参照)から形成された側部91sと、中央部材12(図1〜図8参照)から形成された中央部91cとからなり、側部91s及び中央部91cの溶接部91wは表面91aや裏面91bに露出する。溶接部91wは、溶接部13wに相当する部分である。線状の溶接部91wは、バンド91の長手方向と平行となるように設けられることが好ましい。このように得られるバンド91の幅は、2000mm以上3000mm以下の範囲である。
【0073】
得られたバンド91は、表面を研磨して鏡面にした後、溶液製膜設備に用いられる。バンド91を用いてフィルムを製造する方法について以下に説明する。ポリマーの種類は特に限定されず、溶液製膜でフィルムにすることができる公知のポリマーを用いてよい。以下の実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いた場合を例にして説明する。
【0074】
(溶液製膜設備)
図10及び図11に示すように、溶液製膜設備110は、セルロースアシレート111が溶剤112に溶解したドープ113からフィルム116を形成するフィルム形成装置117と、フィルム116の各側部を保持手段119で保持しながら乾燥をすすめる第1テンタ120と、フィルム116を複数のローラ122で支持しながら乾燥するローラ乾燥装置124と、フィルム116の各側部を保持手段で保持し、幅方向への張力をフィルム116に付与する第2テンタ125と、第2テンタ125の保持手段により保持された各側部の保持跡を切除するスリッタ126と、フィルム116を巻き芯に巻いてロール状にする巻取装置127とを、上流側から順に備える。
【0075】
(フィルム形成装置)
フィルム形成装置117は、周方向に回転する1対のローラ131、132を備える。1対のローラ131、132は水平に並べられ、ローラ131とローラ132との周面には、バンド91が巻き掛けられる。ローラ131,132の少なくともいずれか一方が、駆動手段を有する駆動ローラであればよい。
【0076】
ローラ131,132には、周面温度を所定の温度に制御する第1コントローラ(図示せず)及び第2コントローラ(図示せず)がそれぞれ備えられる。
【0077】
フィルム形成装置117には、バンド91の移動方向上流側から下流側に向かって、ドープ113を流出する流延ダイ133と、膜乾燥装置と、剥取ローラ135とが順次設けられる。
【0078】
(流延ダイ)
バンド91の上方に位置する流延ダイ133を、一方のローラ131の真上、または、一方のローラ131と他方のローラ132との間に配してもよい。なお、流延ダイ133を一方のローラ131と他方のローラ132との間に配する場合には、バンド91を介して流延ダイ133と対向する位置にローラ(図示無し)を配し、このローラによりバンド91を支持してもよい。
【0079】
流延ダイ133は、ドープ113を流出する流出口133aがバンド91の表面91aと対向するように、配される。スリット状の流出口133aは、表面91a全体、すなわち、一方の側部91s、中央部91c、他方の側部91sと対向するように形成される。
【0080】
なお、流延ダイ133からバンド91に至るドープ113、いわゆるビードの上流側のエリアを減圧する減圧チャンバを、流延ダイ133の移動方向上流側に設けても良い。これにより、同伴風に起因するビードの振動を抑え、ひいては、厚みムラ等を防止することができる。なお、同伴風とは、バンド91の移動に伴って表面91a近傍に発生し、バンド91の移動方向へ流れる風を指す。
【0081】
(膜乾燥装置)
膜乾燥装置は、第1ダクト141〜第3ダクト143と、裏面加熱部144とを有する。
【0082】
(ダクト)
流延膜136に向けて乾燥風を送り出す第1ダクト141〜第3ダクト143は、バンド91の移動路に沿って上流側から順に配される。第1ダクト141は、ローラ131,132よりも上方に設けられる。第3ダクト143は、ローラ131,132よりも下方に設けられる。第2ダクト142は、第1ダクト141及び第3ダクト143の間に設けられる。
【0083】
第1ダクト〜第3ダクト141〜143は、それぞれ送風機(図示せず)に接続する。送風機には、第1ダクト〜第3ダクト141〜143のそれぞれへ供給する気体の温度、湿度、流量を独立して制御する送風コントローラ(図示せず)が接続する。第1ダクト〜第3ダクト141〜143には、送風機から供給された気体を乾燥風として送り出す送出口が設けられる。第1〜第3ダクト141〜143に設けられた送出口は、それぞれ表面91a全体、すなわち、一方の側部91s、中央部91c、他方の側部91sと対向するように形成される。
【0084】
第1ダクト141〜第3ダクト143に設けられた流出口は、スリット状に形成され、バンド91の幅方向に長く伸びる。バンド91の幅方向における各流出口の長さは、流延膜136全体に乾燥風があたるようなものとなっていればよい。
【0085】
乾燥風の温度は、バンド91の移動路の上流側から下流側に向かうに従って高くなることが好ましい。第1ダクト141からの乾燥風の温度は、50℃以上140℃以下であることが好ましく、第2ダクト142からの乾燥風の温度は、50℃以上140℃以下であることが好ましく、第3ダクト143からの乾燥風の温度は、40℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0086】
(裏面加熱部)
裏面加熱部144は、ローラ131,132の間に設けられる。図12及び図13に示すように、裏面加熱部144は、加熱風150を送り出すノズル151を備える。ノズル151は、バンド91の裏面91b側において、溶接部91wと対向するように配される。ノズル151から送り出された加熱風150が溶接部91wにあたると、溶接部91wは加熱される。
【0087】
ノズル151は、バンド91の移動方向に並べられることが好ましい。バンド91に複数の溶接部91wがある場合には、全ての溶接部91wへ加熱風150をあてるようにノズル151を設けることが好ましい。
【0088】
加熱風150の温度は特に限定されないが、例えば、40℃以上70℃以下であることが好ましい。
【0089】
(渡り)
図10に戻って、フィルム形成装置117と第1テンタ120との間の搬送路には、送風装置(図示無し)を配してもよい。この送風装置からの送風により、フィルム116の乾燥をすすめる。
【0090】
(第1テンタ)
第1テンタ120は、クリップ110を用いてフィルム116の両側縁部を保持して長手方向に搬送しながら、幅方向への張力を付与し、フィルム116の幅を拡げる。第1テンタ120には、上流側から順に、予熱エリア、延伸エリア、及び緩和エリアが形成されてある。なお、緩和エリアは省略してもよい。
【0091】
第1テンタ120は、1対のレール(図示無し)及びチェーン(図示無し)を備える。レールはフィルム116の搬送路の両側に設置され1対のレールは所定の間隔で離間して配される。このレール間隔は、予熱エリアでは一定であり、延伸エリアでは下流に向かうに従って次第に広くなり、緩和エリアでは一定である。なお、緩和エリアのレール間隔は、下流に向かうに従って次第に狭くなるようにしてもよい。
【0092】
チェーンは、原動スプロケット及び従動スプロケット(図示無し)に掛け渡され、レールに沿って移動自在に取り付けられている。複数の保持手段119は、チェーンに所定の間隔で取り付けられている。原動スプロケットの回転により、保持手段119はレールに沿って循環移動する。
【0093】
保持手段119は、第1テンタ120の入口近傍で、案内されてきたフィルム116の保持を開始し、出口に向かって移動して、出口近傍で保持を解除する。保持を解除した保持手段119は再び入口近傍に移動して、新たに案内されてきたフィルム116を保持する。
【0094】
ダクト155はフィルム116の搬送路の上方に設けられる。ダクト155は、乾燥風を送り出すスリットを有し、送風機(図示無し)から供給される。送風機は、所定の温度や湿度に調整した乾燥風をダクト155に送る。スリットがフィルム116の搬送路と対向するようにダクト155は配される。各スリットはフィルム116の幅方向に長く伸びた形状であり、搬送方向で互いに所定の間隔をもって形成されている。なお、同様の構造を有するダクトを、フィルム116の搬送路の下方に設けてもよいし、フィルム116の搬送路の上方と下方との両方に設けてもよい。
【0095】
この第1テンタ120で、フィルムは搬送されながら、ダクト155からの乾燥風により乾燥をすすめられるとともに、保持手段119により幅を所定のタイミングで変えられる。
【0096】
延伸エリアにおけるフィルム116の溶剤含有率は、2質量%D.B.以上250質量%D.B.以下であることが好ましく、2質量%D.B.以上100質量%D.B.以下であることがより好ましい。延伸処理における延伸率ER1(={(延伸後の幅)/(延伸前の幅)}×100)は、100%より大きく140%以下であることが好ましい。延伸処理におけるフィルム116の温度は、95℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0097】
なお、本明細書においては、溶剤含有率(単位;質量%D.B.)は乾量基準の値であり、具体的には、溶剤の質量をx、フィルム116の質量をyとするときに、{x/(y−x)}×100で求める値である。
【0098】
(ローラ乾燥装置)
ローラ乾燥装置124の内部の雰囲気は、温度や湿度などが図示しない空調機により調節されている。ローラ乾燥装置124には、多数のローラ122が設けられており、これらにフィルム116が巻き掛けられて搬送される。ローラ乾燥装置124において、フィルム116から溶剤が蒸発する。ローラ乾燥装置124では、溶剤含有率が5質量%D.B.以下となるまで、乾燥工程を行うことが好ましい。
【0099】
なお、ローラ乾燥装置124から出たフィルム116がカールしている場合には、ローラ乾燥装置124と第2テンタ125との間に、カールを矯正してフィルム116を平らにするカール矯正装置(図示無し)を設けてもよい。
【0100】
(第2テンタ)
第2テンタ125は、フィルム116を延伸する。この延伸により、所望の光学特性を有するフィルム116となる。得られるフィルム116は位相差フィルムとして利用することができる。第2テンタ125は、第1テンタ120と同様の構造を有する。なお、第2テンタ125に設けられるダクト157は、スリット(図示せず)から、所定の温度に加熱された乾燥風を流出し、フィルム116に向かって流れる。
【0101】
第2テンタ125での延伸における延伸率ER2(={(延伸後の幅)/(延伸前の幅)}×100)は、105%より大きく200%以下であることが好ましく、110%以上160%以下であることがより好ましい。延伸開始時におけるフィルム116の溶剤含有率は、5質量%D.B.以下であることが好ましく、3質量%D.B.以下であることがより好ましい。延伸におけるフィルム116の温度は、100℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0102】
製造目的とするフィルム116の光学特性によっては、第2テンタ125を省略しても良い。
【0103】
第2テンタ125の下流のスリッタ126は、フィルム116が案内されてくると、第1テンタ120や第2テンタ125の各保持手段119,158による保持跡を含む側部を切除する。側部を切除したフィルム116を巻取装置127に送り、ロール状に巻き取る。
【0104】
第2テンタ125とスリッタ126との間に冷却装置(図示無し)を設けて、第2テンタ125からのフィルム116を冷却して降温させてもよい。
【0105】
次に、本発明の作用を説明する。
【0106】
駆動ローラの回転により、バンド91は長手方向へ循環移動する。流延ダイ133は、バンド91の表面91aへドープ113を連続的に流出する。ドープ113はバンド91上で流延される。この結果、バンド91上には、表面91aに露出する溶接部91wを覆うようにして、流延膜136が形成する。
【0107】
第1ダクト〜第3ダクト141〜143は、流出口から乾燥風を竜煙幕136に向けて送り出す。第1ダクト〜第3ダクト141〜143から乾燥風が流延膜136にあたると、流延膜136から溶剤が蒸発する。
【0108】
溶剤の蒸発により、第1テンタ120への搬送が可能な程度になった流延膜136を、溶剤を含む状態でバンド91から剥がす。剥ぎ取りの際には、フィルム116を剥ぎ取り用のローラ(以下、剥取ローラと称する)137で支持し、流延膜136がバンド91から剥がれる剥取位置を一定に保持する。なお、剥取ローラ135は、駆動手段を備え周方向に回転する駆動ローラであってもよい。剥ぎ取られた流延膜136、すなわちフィルム116は、第1テンタ120に案内される。
【0109】
剥取ローラ135によって剥ぎ取られる流延膜136は、バンド91に設けられた溶接部91wを覆うように形成されている。しかしながら、表面91aのうち溶接部91wは、ほかの部分に比べてピンホールなどの欠陥が多い。このため、流延膜136のうち、溶接部91w上の部分は、欠陥の存在に起因して剥げ残りが起こりやすい。
【0110】
図12に示すように、本発明では、流延膜136の剥ぎ取り前に、溶接部91wを裏面91b側から加熱するため、溶接部91w上の部分の乾燥が十分に進む。このように、本発明によれば、欠陥に起因する剥ぎ残りを抑えつつ、流延膜136を剥取ローラ135から剥ぎ取ることが可能となる。
【0111】
溶接部91wには、ピンホールが含まれる。溶接部91wに直径50μm以上70μm未満のピンホールが含まれる場合においても、本発明を適用することができる。たとえば、溶接部91wに、直径50μm以上70μm未満のピンホールが5個/m以下であることが好ましく、更に、直径50μm以上70μm未満のピンホールが1個/mm以下であることが好ましい。ここで、「個/m」は、バンド91の長手方向に1mの範囲にて溶接部91w中に含まれるピンホールの数であり、「個/mm」は、バンド91の長手方向に1mmの範囲にて溶接部91w中に含まれるピンホールの数である。なお、溶接部91wに直径70μm以上のピンホールが存在しないことが好ましい。
【0112】
上記実施形態では、裏面加熱部144による流延膜の乾燥を、乾燥風による流延膜の乾燥と同時に行ったが、本発明はこれに限られず、裏面加熱部144による流延膜の乾燥と、乾燥風による流延膜の乾燥とを切り替えておこなっても良い。
【0113】
裏面加熱部144は、バンド91を介して第3ダクト143と対向するように設けたが、本発明はこれに限られず、バンド91を介して第1ダクト141と対向するように設けても良い。また、ローラ132のうち溶接部91wと接する部分に、裏面91b側から溶接部91wを加熱する加熱部を設けても良い。
【0114】
なお、発泡を防ぐ観点から、裏面加熱部144による流延膜の乾燥は、乾燥がある程度進行した時点で行うこと、すなわち、裏面加熱部144を第3ダクト143と対向するように設けることが好ましい。裏面加熱部144による乾燥は、流延膜の溶剤含有率が、30質量%D.B.以上100質量%D.B.以下であることが好ましい。
【0115】
上記実施形態では、中央部材12の幅を側部材11の幅よりも広くしたが、本発明はこれに限られず、中央部材12の幅は、側部材11の幅と等しい、又は、側部材11の幅よりも狭くてもよい。また、バンド91を構成する構成部材(中央部材や側部材)の数は、3つに限られず、2つまたは4つ以上でも良い。
【0116】
上記実施形態では、移動方向に平行な溶接部91について、裏面91b側から加熱を行ったが、本発明はこれに限られず、移動方向と交差する溶接部について、裏面91b側から加熱を行ってもよい。
【0117】
(凝縮乾燥)
流延膜136を乾燥するために、本実施形態では、第1〜第3ダクト141〜143を含む膜乾燥装置を用いたが、本発明はこれに限られず、他の乾燥手段を用いてもよい。他の乾燥手段としては、例えば、凝縮器を含む乾燥手段があり、これを第1〜第3ダクト141〜143を含む乾燥手段に代えて、または加えてもよい。
【0118】
(遮風板)
図14及び図15に示すように、第1ダクト141と側部91sとの間には、1対の遮風板170を設けても良い。バンド91の移動方向に設けられた遮風板170は、起立した姿勢で配される。遮風板170により、第1ダクト141からの乾燥風がバンド91の側部91sにあたることを防ぐことができるため、乾燥風によって加熱された側部91sの変形を防ぐことができる。側部91sの変形には、例えば、側部91sがローラ131,132から浮くもの等がある。
【0119】
なお、1対の遮風板170は、第2ダクト142と側部91sとの間、あるいは、第3ダクト143と側部91sとの間に設けてもよい。
【0120】
(抑えローラ)
流延ダイ133からのドープ113がバンド91に接触し始める接触開始位置の上流側に、1対のローラ165を設けることが好ましい。1対のローラ165は、ローラ131とともに側部91sをニップするように配される。同様に、接触開始位置の下流の側部にも、1対のローラ165が配されることが好ましい。これらのローラ165により側部91sを押圧して、ドープの流延時における側部91sの浮き上がりをより確実に防止することができる。
【0121】
ローラ165は、駆動手段により回転する駆動ローラであることが好ましい。バンド91の搬送速度と同じ速度で周回させることにより、バンド91とローラ165との接触による側部91sの摩擦熱の発生を抑止することができ、側部91sの変形をより確実に防止することができる。
【0122】
本実施形態では、接触位置の上流と下流との両方に1対のローラ165を配してあるが、上流と下流とのいずれか一方でもよい。
【0123】
(ポリマー)
本発明に用いることのできるポリマーは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンである。
【0124】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)を満たすものであることが好ましい。下記式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。セルロースアシレートの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。中でも、本発明は、セルロースアシレートとしてセルロースジアセテート(DAC)を用いた場合に特に大きな効果がある。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0125】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0126】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「2位のアシル置換度」とする)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「3位のアシル置換度」という)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「6位のアシル置換度」という)である。
【0127】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が用いられてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0128】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位の水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れたドープを作製することができる。特に、非塩素系有機溶剤を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0129】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター、パルプのいずれかから得られたものでもよい。
【0130】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特には限定されない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレノイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0131】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0132】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。セルロースアシレートの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度及び光学特性など物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対して2〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0133】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶剤組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶剤として用いることができる。
【実施例】
【0134】
以下に本発明の効果を確認するために、実験1〜5を行った。各実験の詳細は実験1にて説明し、実験2〜5については、実験1と異なる条件のみを示す。
【0135】
(実験1)
バンド製造設備10において、SUS316製の側部材11とSUS316製の中央部材12とから、第1のバンド(以下、バンドAと称する)を製造した。側部材の幅は150mm、中央部材の幅は2000mmであった。目視で認めた溶接ビードと熱影響領域との各幅を測定した。溶接ビードの幅は2mm、熱影響領域の幅は4mmであった。
【0136】
バンドAの溶接部において、直径が50μm以上70μm以下のピンホールの数は、長手方向1mあたり5個、かつ、長手方向1mmあたり1個以下であった。また、直径が70μm以上のピンホールは存在しなかった。
【0137】
(ピンホールの測定方法)
溶接部におけるピンホールの数は、目視によりカウントした。また、目視により確認したピンホールの直径について、ファイバスコープを用いて測定した。
【0138】
溶液製膜設備110(図10参照)において、セルロースジアセテート(DAC)及び溶剤を含むドープ113からフィルム116を製造した。バンドAをバンド91として用いた。バンド91の移動速度は40m/分であった。流延ダイ133は、移動状態のバンド91へドープ113を連続的に流出した。バンド91の表面91a上には、ドープ113からなる流延膜136が形成された。
【0139】
各ダクト141〜143からの乾燥風を用いて、バンド91上の流延膜136から溶剤を蒸発させた。第1ダクト141からの乾燥風の温度は130℃であり、第2ダクト142からの乾燥風の温度は130℃であり、第3ダクト143からの乾燥風の温度は70℃であった。また、裏面加熱部144による流延膜136の乾燥は行わなかった。
【0140】
剥取ローラ135が、流延膜136をバンド91から剥ぎ取って、フィルム116とした。バンド91から剥ぎ取る際、流延膜136のうち溶接部91wよりも幅方向内側の部分の溶剤含有率は45質量%D.B.であり、流延膜136のうち溶接部91w、及び側部91s上の部分の溶剤含有率は45質量%D.B.であった。フィルム116は、第1テンタ120、ローラ乾燥装置124、第2テンタ125、スリッタ126へと順次送られた。
【0141】
(実験2)
バンドAに代えてバンドBを用いたこと以外は、実験1と同様にして、フィルム116を製造した。バンドBは、溶接部におけるピンホールの数・直径等の以外は、バンドAと同一のものである。バンドBの溶接部において、直径が50μm以上70μm以下のピンホールの数は、長手方向1mあたり6個、かつ、長手方向1mmあたり2個以下であった。また、直径が70μm以上のピンホールは存在しなかった。
【0142】
(実験3)
バンドAに代えてバンドCを用いたこと以外は、実験1と同様にして、フィルム116を製造した。バンドCは、溶接部におけるピンホールの数・直径等の以外は、バンドAと同一のものである。バンドCの溶接部において、直径が50μm以上70μm以下のピンホールの数は、長手方向1mあたり6個、かつ、長手方向2mmあたり2個以下であった。直径が75μm以上のピンホールの数は、全体において1個であった。
【0143】
(実験4)
バンドAに代えてバンドBを用いたこと、バンド91の移動速度を70m/分としたこと、及びバンド91を介して第3ダクト143と対向する位置に設けられた裏面加熱部144を用いて流延膜136の乾燥を行ったこと、及び、裏面加熱部144が流延膜136に温度50℃の加熱風をあてたこと以外は、実験1と同様にして、フィルム116を製造した。なお、バンド91から剥ぎ取る際、流延膜136のうち溶接部91wよりも幅方向内側の部分の溶剤含有率は70質量%D.B.であり、流延膜136のうち溶接部91w、及び側部91s上の部分の溶剤含有率は60質量%D.B.であった。
【0144】
(実験5)
バンドAに代えてバンドBを用いたこと、バンド91の移動速度を70m/分としたこと以外は、実験1と同様にして、フィルム116を製造した。なお、バンド91から剥ぎ取る際、流延膜136のうち溶接部91wよりも幅方向内側の部分の溶剤含有率は70質量%D.B.であり、流延膜136のうち溶接部91w、及び側部91s上の部分の溶剤含有率は70質量%D.B.であった。
【0145】
(剥げ残り評価)
実験1〜5について、剥げ残りの有無について評価を行った。実験1及び4では、剥げ残りが発生しなかった。実験2では、わずかながら剥げ残りが発生した。実験3及び5では、剥げ残りが顕著に発生した。
【符号の説明】
【0146】
91 バンド
91a 表面
91b 裏面
91s 側部
91c 中央部
91w 溶接部
110 溶液製膜設備
144 裏面加熱部
150 加熱風
151 ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属製シートと第2金属製シートとが溶接してなる移動バンドであって、移動方向にのびる溶接部が露出する前記移動バンドの表面へポリマー及び溶剤を含むドープを連続して流出し、前記ドープからなり前記溶接部を覆う流延膜を前記表面上に形成する膜形成工程と、
乾燥風をあてて前記流延膜から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥取工程と、
前記湿潤フィルムから溶剤を蒸発させるフィルム乾燥工程と、
を有し、
前記溶接部には、直径50μm以上70μm未満のピンホールがあることを特徴とする、溶液製膜方法。
【請求項2】
前記溶接部には、直径70μm以上のピンホールがないことを特徴とする、請求項1に記載の溶液製膜方法。
【請求項3】
前記溶接部には直径50μm以上70μm未満のピンホールが長手方向1mあたり10個以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶液製膜方法。
【請求項4】
前記溶接部には直径50μm以上70μm未満のピンホールが長手方向1mmあたり3個以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の溶液製膜方法。
【請求項5】
前記移動バンドの移動速度が70m/s未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の溶液製膜方法。
【請求項6】
前記膜形成工程と前記剥取工程との間では、前記移動バンドの裏面側から前記溶接部を加熱する溶接部加熱工程を行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の溶液製膜方法。
【請求項7】
前記移動バンドの側部に乾燥風を遮る遮風板を設けることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の溶液製膜方法。
【請求項1】
第1金属製シートと第2金属製シートとが溶接してなる移動バンドであって、移動方向にのびる溶接部が露出する前記移動バンドの表面へポリマー及び溶剤を含むドープを連続して流出し、前記ドープからなり前記溶接部を覆う流延膜を前記表面上に形成する膜形成工程と、
乾燥風をあてて前記流延膜から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥取工程と、
前記湿潤フィルムから溶剤を蒸発させるフィルム乾燥工程と、
を有し、
前記溶接部には、直径50μm以上70μm未満のピンホールがあることを特徴とする、溶液製膜方法。
【請求項2】
前記溶接部には、直径70μm以上のピンホールがないことを特徴とする、請求項1に記載の溶液製膜方法。
【請求項3】
前記溶接部には直径50μm以上70μm未満のピンホールが長手方向1mあたり10個以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶液製膜方法。
【請求項4】
前記溶接部には直径50μm以上70μm未満のピンホールが長手方向1mmあたり3個以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の溶液製膜方法。
【請求項5】
前記移動バンドの移動速度が70m/s未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の溶液製膜方法。
【請求項6】
前記膜形成工程と前記剥取工程との間では、前記移動バンドの裏面側から前記溶接部を加熱する溶接部加熱工程を行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の溶液製膜方法。
【請求項7】
前記移動バンドの側部に乾燥風を遮る遮風板を設けることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の溶液製膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−30601(P2012−30601A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243071(P2011−243071)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2010−171923(P2010−171923)の分割
【原出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2010−171923(P2010−171923)の分割
【原出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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