説明

乾燥装置

【課題】比較的高温で乾燥した空気を乾燥室の全般にわたって効果的に循環させ、乾燥室の上方域にある被処理材と共に下方域にある被処理材も実質的に均一に乾燥させる。
【解決手段】除湿機26による乾燥を行う乾燥室12の内面に複数の攪拌ファン30を備え、そのうち乾燥室の天井22に設置された攪拌ファン30a〜30eの送風口に隣接して上端開口を有し、乾燥室の底面近くに下端開口を有するクロスフローダクト40が側面に取り付けられる。乾燥室内上方に滞留する高温乾燥の空気をクロスフローダクトを介して乾燥室の底面23近くに強制移動させることにより乾燥室内の温度および湿度を均一にする。さらに、クロスフローダクトの下端開口42から放出された高温乾燥空気に対して、側面設置ファンから室内中央に向けられた送風が、該高温乾燥空気の上昇移動を妨げる作用を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥装置に関し、特に、野菜・果物・海産物・キノコなどの食材や花をその本来の新鮮な風味や色合いを損なうことなく商品価値の高い乾燥物に仕上げる目的で使用される乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような乾燥装置としては高温で短時間に乾燥処理を行う装置が多用されてきたが、特に野菜や果物などを高温で乾燥させるとその本来の新鮮な風味や色合いが損なわれてしまい、また、魚介類などにあっては腐食を進行させてしまうという問題があった。
【0003】
このため、常温(一般に40℃程度以下)において風を利用した乾燥を行うことが提案されるに至っている。たとえば、下記特許文献1には、乾燥室内に一定時間間隔でランダム流となるランダム風を生成し、この対流効果を利用して乾燥室内に配置した被処理材を乾燥する乾燥装置が提案されている。
【特許文献1】特開2006−132855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者による数多くの実験の結果、特許文献1記載の乾燥装置によってもなお乾燥の均一化・効率化が十分に促進されないことが分かった。特に、一度にできるだけ多量の食材などを乾燥処理しようとする場合には、被処理材を載せたトレイを多段に積み重ねた状態のトレイラックを一または複数台乾燥室内に配置することが望まれるが、トレイラックの最上段近くのトレイに載せられた被処理材は比較的短時間で効率的に乾燥されるが、中段から下段にかけてのトレイ上の被処理材、特にこれら各トレイの中央付近に置かれた被処理材を乾燥させるには長時間を要することが分かった。これは、密閉された乾燥室の下方には比較的温度が低く且つ湿度が高い空気が溜まりやすく、壁面に設置したファンから送風しても結局は低温・多湿の空気を乾燥室の下方域で撹拌しているにすぎず、該下方域に高温の乾燥空気を取り込む効果が薄いためであると考えられる。また、天井に設置したファンは、上方域の高温乾燥空気を下方に向けて移動させるが、これによって乾燥が促進されるのは結局のところ最上段近くのトレイ上の被処理食材に止まり、しかも一旦は下方域に移動してもその高温のためにすぐに上昇して上方域に戻ってしまうため、下方域にある被処理材の乾燥を促進させる効果はほとんど期待できなかった。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、比較的高温で乾燥した空気を乾燥室の全般にわたって効果的に循環させ、乾燥室の上方域にある被処理材と共に下方域にある被処理材も実質的に均一に乾燥させることができるような新規な構成を備えた乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、被処理材を収容する乾燥室と、乾燥室の室内面に設けられる複数のファンとを備えた乾燥装置において、乾燥室の天井またはその近くに設置されたファンの送風口に隣接した位置に上端開口が配置されると共に乾燥室の底面近くに下端開口が配置され、これら上端開口から下端開口に至る空気通路を与えるように乾燥室の壁面にクロスフローダクトが取り付けられ、乾燥室内上方に滞留する高温乾燥の空気をクロスフローダクトを介して乾燥室の底面近くに強制的に移動することにより乾燥室内の温度および湿度を均一にすることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の乾燥装置において、クロスフローダクトの下端開口から乾燥室の底面近くに放出された高温乾燥空気に対して、乾燥室の側面設置ファンの少なくとも一部から室内中央に向けられた送風が、該高温乾燥空気の上昇移動を妨げる作用を果たすことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の乾燥装置において、クロスフローダクトの下端開口が斜めにカットされていて、該下端開口からの空気を乾燥室の中央に向けて放出することを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る本発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の乾燥装置において、乾燥室内に外気を導入するための吸気手段と、乾燥室内の空気を外部に排出する排気手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る本発明は、請求項4記載の乾燥装置において、乾燥処理の初期において吸気手段による外気導入および排気手段による排気を行って、乾燥室内の湿度を外気湿度より10〜20%低い湿度まで低下させることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る本発明は、請求項5記載の乾燥装置において、吸気手段による外気導入および排気手段による排気を所定インターバルで間欠的に行って、乾燥室内の温度上昇を抑制することを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る本発明は、請求項1ないし6のいずれか記載の乾燥装置において、乾燥室内の温度を設定温度に維持するための暖房手段および/または冷房手段をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る本発明は、請求項1ないし7のいずれか記載の乾燥装置において、被処理材を載せたトレイを多段に収容可能なトレイラックが乾燥室内に収容されることを特徴とする。
【0014】
請求項9に係る本発明は、請求項8記載の乾燥装置において、トレイがメッシュ構造を有し、このメッシュに挿入して取付可能な補助部材に被処理材を立て掛けて保持することを特徴とする。
【0015】
請求項10に係る本発明は、請求項8または9記載の乾燥装置において、トレイラックを回転させる回転機構が付設されることを特徴とする。
【0016】
請求項11に係る本発明は、請求項8または9記載の乾燥装置において、トレイラックが回転可能に設置され、ファンからの送風により乾燥室内に形成される一定の方向性を持った空気の流れによってトレイラックを回転させることを特徴とする。
【0017】

請求項12に係る本発明は、請求項1ないし7のいずれか記載の乾燥装置において、被処理材を収容する回転ドラムが乾燥室内に収容されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乾燥室の天井またはその近くに設置されたファンの送風口に隣接して上端開口を有すると共に乾燥室の底面近くに下端開口を有するクロスフローダクトが取り付けられているので、乾燥室内上方に滞留しがちな高温乾燥の空気をクロスフローダクトを介して乾燥室の底面近くに強制移動させる。これにより乾燥室内の温度および湿度を均一にすることができる。したがって、食材などの被処理材を載せたトレイをトレイラックに多段に収容して乾燥室に配置して乾燥処理を行うような場合にも、乾燥室の上方域にある被処理材と共に下方域にある被処理材も実質的に均一に乾燥させることができ、乾燥室内における乾燥ムラを防ぐことができる。
【0019】
また、クロスフローダクトの下端開口から乾燥室の底面近くに放出された高温乾燥の空気に対して、乾燥室の側面設置ファンの少なくとも一部から室内中央に向けられた送風が、該高温乾燥の空気の上昇移動を妨げる作用を果たす。これにより乾燥室内の温度および湿度を均一にする効果がさらに向上する。
【0020】
また、クロスフローダクトの斜めにカットされた下端開口から高温乾燥の空気が乾燥室の中央に向けて放出されるので、乾燥室内の温度および湿度を均一にする効果がさらに向上する。
【0021】
また、吸気手段による乾燥室内への外気導入と排気手段による排気を利用することにより、除湿乾燥をより効率的に行うことが可能になる。これにより、乾燥処理の初期において、乾燥室内の湿度を外気湿度より10〜20%低い湿度まで低下させることができる。また、外気導入と排気を所定インターバルで間欠的に行うことにより、乾燥室内の温度上昇を抑制しながら除湿効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態としての、野菜・果物・海産物・キノコなどの乾燥食材を製造するための乾燥装置の正面外観図であり、図2はその正面室内図、図3はその右側面室内図、図4はその左側面室内図、図5はその奥面室内図、図6はその天井室内図である。
【0023】
この乾燥装置10は、正面に開閉自在の扉11a,11bを備えた略立方体形状のハウジングを有し、このハウジングの内部が乾燥室12となっている。ハウジング正面にはさらに吸気口13が設けられると共に、撹拌ファン30、排気ファン16、除湿機26などの動作を所定プログラムに基づいて制御するための制御回路を備えた制御盤14が設けられている。制御盤14からの各種コードは配線ラック15を介して各被制御要素へと配線されている。乾燥装置10の一側面(図1において右側面)上部に任意数(図示実施形態では4基)の排気ファン16が取り付けられている。
【0024】
乾燥装置10において、扉11a,11bが設けられた開口部を除いた正面には左右正面パネル17,18が設けられ、さらに、右側面パネル19、左側面パネル20、背面パネル21、天井パネル22、床面パネル23を有する。右側正面パネル18に前記の吸気口13および制御盤14が設けられており、吸気口13の室内側には吸気口カバー24が取り付けられている。したがって、排気ファン16の運転により吸気口13から取り込まれた空気は、吸気口カバー24の一端24aから右側正面パネル18に沿って放出されると共に、他端24bから左側面パネル20に沿って放出されて、乾燥室12内に拡散されることになる。
【0025】
左側面パネル20の天井近くには、乾燥室12内の温度を設定温度に加熱または冷却するためのエアコン25が設置されている。符号26は除湿機である。符号45は外気温湿度センサ、符号46は乾燥室12内の温湿度センサであり、これらのセンサ検知信号が制御盤14の制御回路に入力される。符号47は乾燥室12内部の浮遊菌対策、空気清浄および脱臭のために設置された光触媒装置である。なお、吸気口13にも酸化チタンを塗布した金属メッシュ数層に紫外線ランプ(市販の殺菌灯)を照射して光触媒による吸気の殺菌を行う。
【0026】
乾燥室12を構成する各パネル17〜22および壁11a,11bには乾燥室12内の空気を撹拌して流動させるための撹拌ファン30が多数設置されている。これらの撹拌ファン30はいずれも同一構成であり、モータ31によりファン(図示せず)を回転させることにより周囲の空気を取り込んで送風口32から排出するようになっている。撹拌ファン30の取付板33の裏面側にはフレキシブルマグネット34が固定されており、金属製であるパネル17〜22,壁11a,11bに対する取り付けおよび取り外しを容易にし、且つ、取付位置および取付方向(向き)を自在に可動・可変としている。この実施形態では、扉11aの内側に3基、扉11bの内側に5基、左正面パネル17の内側に3基、右正面パネル18の内側に5基(以上図2参照)、右側面パネル19の内側に5基(図3参照)、左側面パネル20の内側に4基(図4参照)、背面パネル21の内側に4基(図5参照)、天井パネル22の下面に9基(図6参照)の撹拌ファン30が設置されている。さらに、正面側においては吸気口カバー24の表面にも2基の撹拌ファン30が設置され(図2参照)、右側面パネル19および背面パネル22側においてはクロスフローダクト40(40a〜40e)の表面下方部分にも各々2基の撹拌ファン30が設置されている(図3および図5参照)。
【0027】
乾燥室12を取り囲む四周面(扉11a,11b、吸気口カバー24、左右正面パネル17,18、左右側面パネル19,20、背面パネル21、クロスフローダクト40)に設置される撹拌ファン30からは、室内に向けて略水平方向に送風が行われることになる。これら四周面に設置される撹拌ファンについては、乾燥室12内の下方域に多数の撹拌ファンを設置することが好ましい。このようにすることにより、後述のクロスフローダクト40の下端開口42から乾燥室12内の床面近くに送り込まれる高温乾燥空気の上昇を、下方域に設置された撹拌ファン30からの水平方向送風によって阻害して、下方域に高温乾燥空気が滞留する時間を長くすることができ、室内温度・湿度の均一化をさらに促進させることができる。
【0028】
図7を参照して、クロスフローダクト40(40a〜40e)は、右側面パネル19および背面パネル22に近接した箇所において天井パネル22に取り付けられた撹拌ファン30(30a〜30e、送風口32を下向きにして設置されている)の下方に配置されている。より詳しくは、その上端開口41が撹拌ファン30a〜30eの下向き送風口32の直下に隣接し(図3,図5)、且つ、床面パネル23近くにおける下端開口42が室内側を向くようにして、左右フランジ43,43をパネル19,21に当ててねじ止めなどにより固定している。
【0029】
乾燥室12内には、乾燥しようとする被処理材が投入されるが、この実施形態では、被処理材を載せたトレイを多段に収容可能なトレイラックを床面パネル23上に任意台数セットする。このようなトレイラック50の一例が図8に示されており、一対の対向側面(これらの面も風通りを良好にするために実質的に開口されていることが好ましい)51a,51bに沿って所定の高さ間隔で支持片52が内方に向けて突出形成されている。トレイラック50は一体または別体として構成された台車53上に載置されており、台車53を含む全高は、これを乾燥室12の床面パネル23上に配置したときに天井パネル22設置の撹拌ファン30などに干渉しない高さ寸法とされている。
【0030】
このトレイラック50において、上下に隣接する突条52,52間がトレイ収納段となり、図9に示すような構成のトレイ60を各トレイ収納段に引き出し可能に収納することができる。このトレイ60は、合成樹脂や金属などを材料として成形された平板状メッシュ構造体61であり、この左右両縁部をトレイラック50のいずれかのトレイ収納段における支持片52,52に支持させることにより該トレイ収納段に収納させることができる。
【0031】
トレイ60はメッシュ構造を有するので上下方向の風(特に上昇しようとする温風)の流動を妨げず、また、周縁部62も平板状に面一であって立ち上がり部を有しない形状とされているので左右方向の風の流動も妨げない。したがって、トレイ60上の被処理材に風が良く当たり、乾燥効率を高めることができる。
【0032】
トレイ60は、その上に直接被処理材を載置するようにして用いても良いが、より好ましくは図10に示すような構成の補助部材63を用いる。この補助部材63は、細長い基板64上に幅方向に所定間隔で多数の櫛歯状突起65を所定角度α(たとえばα=120度)にて設けると共に、基板65の裏面側にはトレイ60のメッシュ構造体61におけるメッシュに嵌合可能な係止突起66を所定間隔で多数設けた構成を有する。この補助部材63の係止突起66をトレイメッシュ構造体61に嵌合することによりトレイ60に固定し、斜めに傾斜している櫛歯状突起65に立てかけるようにして被処理材を配置して、乾燥処理を行う。補助部材63はトレイメッシュ構造体61上に縦横任意の方向に任意個数取り付けることができる。
【0033】
被処理材を直接トレイ60上に置くと、特に平べったい食材などの場合には横からの風を受けにくく、また、トレイ60のメッシュを閉塞してしまうために乾燥効率を低下させてしまうおそれがあるが、このような補助部材63を用いて被処理材を斜めに立てかけるようにすれば、横からの風を受けやすくなり、また、メッシュに対する閉塞も極小化することができるので、補助部材63間に十分な間隔を保持しておけばメッシュ構造による上記利点を妨げることがなく、十分な乾燥効率を確保することができる。
【0034】
以上に述べた乾燥装置10の動作の一例について説明する。乾燥室12内で食材などの被処理材を乾燥処理するためには、乾燥室12内の湿度を0〜20%程度とすることが好ましい。また、乾燥室12内の温度は、外気温にも左右されるが一般に30〜50℃程度とすることが好ましい。これらの範囲において所望の湿度および温度を制御盤14のタッチパネルにて入力・設定する。たとえば、外気の温度20℃、湿度65%である場合において、被処理温度を40℃、湿度を0%に設定する。なお、外気の温度・湿度は外気温湿度センサ45で検知され、乾燥室12内の温度・湿度は室内温湿度センサ46で検知され、これらセンサで検知された外気および室内の温度・湿度は制御盤14のディスプレイに表示される。
【0035】
設定温度は外気温より高く、設定湿度は外気湿度より低いのが通常であるから、乾燥室12内の温度を上昇させるためにヒーター(エアコン25または除湿機26に内蔵)を設置し、室内湿度を低下させるために除湿機26を設置しているが、温度については、排気ファン16、攪拌ファン30、除湿機26、さらには図示されない照明などが作動中のときにこれらからの発熱を有効利用して室内温度を上昇させることができるので、外気温が設定温度よりも25℃以上低いような厳寒季における装置始動時以外は、ヒーターを稼動させる必要はほとんどない。
【0036】
本発明では、乾燥室12内の温度および湿度をより効率的に制御するために排気ファン16をON/OFFする。すなわち、乾燥処理の初期は一般に乾燥室12内が外気より多湿状態にあり、この状態では除湿機26による除湿効果に頼るより、外気を積極的に導入して外気で飛ばした方が大量の水分を除去することができる。しかしながら、排気ファン16を回しっぱなしにすると乾燥室12内の温度が下がりすぎて乾燥効率を低下させてしまう。
【0037】
そこで、たとえば上記に外気温度・湿度および設定温度・湿度の場合に、乾燥室12内に乾燥処理すべき食材などの被処理材を導入した後に扉11a,11bを締めて密閉状態にすると、室内の温度が徐々に上昇し、これと共に湿度も上昇していく。ここで排気ファン16を1〜2分間程度ONにして吸気口13から外気を導入すると共に室内から排気すると、室内の湿度を外気湿度より10〜20%程度(すなわち本例では45〜55%程度まで)下げることができるが、同時に温度も32〜35℃に下がってしまう。そこで排気ファンを1〜2分程度の間隔でON/OFFを繰り返すようにすることにより、室内の湿度を最終的に外気湿度より10〜20%程度下げて本例では45〜55%程度にすると同時に、室内の温度の低下を抑制する。
【0038】
より具体的に説明すると、制御盤14において排気ファン16を強制作動させる湿度条件および温度条件を設定しておく。ここでの湿度条件はたとえば45%であり、また、温度条件は前述の乾燥処理設定温度(40℃)プラス1〜2℃程度に設定される。そして、湿度・温度ともに上記設定値以上であるとき、およびいずれかが設定値以上であるときは、排気ファン16を1〜2分間隔でON/OFFを繰り返すように作動させ、湿度・温度ともに設定値を下回ったときに排気ファン16を停止させる。室内の湿度が外気湿度−20%程度まで下がると、排気ファン16による除湿効果は限界に近くなるので、この時点で排気ファン16による初期の乾燥処理工程を終了して、次段階の乾燥処理工程に移行する。
【0039】
次段階の乾燥処理工程は、除湿機26と攪拌ファン30を作動することにより行われる。ただし、除湿機26からの乾いた空気や撹拌ファン30により撹拌・循環する空気が被処理材に当たりっぱなしであると被処理材の表面だけが乾燥して内部の水分が放出されにくくなるので、これを防止して燻蒸効果を発揮するために、除湿機26および撹拌ファン30は所定間隔(たとえば数分間程度)でON/OFFすることが好ましい。また、温度については乾燥室12内を密閉すると除湿機26や撹拌ファン30などの各種装置からの放熱で設定温度よりも上昇してしまうことがあるので、これを検知した場合には、排気ファン16を一時的に作動させることにより吸気口13から外気を取り込んで冷却に用いる。夏季の日中など、外気を取り込んでも温度が下がらない場合にはエアコン25を作動させて冷却することにより設定温度を維持する。なお、室内湿度が下がって乾燥が進んでいるところに多湿の外気を取り込むと一時的に室内湿度を上げることになるが、1〜2分程度の吸気であれば除湿機26によってすぐに除湿されるので、大きな問題にはならない。
【0040】
この段階の乾燥処理中、すべての撹拌ファン30をずっとONにしておいても良いが、設置面ごとに時間をずらして撹拌ファン30をON/OFFすることによってランダム風を生成させるようにすることが温度および湿度を乾燥室12の室内全般に亘って均一化し乾燥効率を高める上で好ましく、さらに、放熱による温度上昇および運転コストを抑制するメリットもある。撹拌ファンの時間差作動については特許文献1に詳しく述べられており、本発明の主題には直接関連しないので、これ以上の記述を省略する。ただし、クロスフローダクト40(40a〜40d)の前記作用を確保するため、クロスフローダクト40の上端開口41に隣接して天井設置されている攪拌ファン30a〜30dをONにしている間は、クロスフローダクト40の下端開口42から室内中央に向けて放出される空気の上昇を妨げる(上昇速度を低下させる)ことに寄与する攪拌ファン(下端開口42の高さ位置と略同等またはそれより高い位置に壁面設置されている攪拌ファン)も同時にONにするよう制御することが好ましい。
【0041】
以上に述べた実施形態は限定的なものではなく、本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて様々に変更可能である。
【0042】
たとえば、被処理材をトレイ60に載せてトレイラック50に段積みして乾燥室12内で乾燥処理することに代えて、図11に示すような回転ドラム70を乾燥室12内に設置し、被処理材71を入れた回転ドラム70を支持台77および支持脚78により支持して回転軸79を中心にモータ72で回転させる構成を採用しても良い。この場合、回転ドラム70を一方向に連続的に回転させても良いが、図11に示す回転機構ではモータ72としてサーボモータを用い、その出力軸73に架け回したベルト74の一端74aを回転ドラム70の第一の係止突起75に係止し、一周以上架け回して他端74bを第二の係止突起76に係止することにより、回転ドラム70を所定の角度範囲で正逆回転させるようにしている。この図示回転機構によれば、回転ドラム70は、図11(b)に示す時計方向回転極限位置と同図(c)に示す反時計方向回転極限位置との間で最大回転角度252度の範囲内で正逆回転を繰り返す。
【0043】
また、既述実施形態のように被処理材を載せたトレイ60をトレイラック50に段積みして乾燥室12内で乾燥処理を行う場合においても、トレイラック50を回転させると、場所による乾燥のバラツキを無くして均一化することができる。たとえば、図12に示すように、トレイラック50を回転台54に載せ、この回転台54にモータ55の出力をベルト56などで伝達して回転させる機構を採用する。この場合も、回転台54を一方向に連続的に回転させても良いが、図11において回転ドラム70を所定角度範囲内で正逆回転させるために用いた回転機構と同様のものを回転台54のための回転機構として採用することができる。
【0044】
また、撹拌ファン30からの送風により乾燥室12内に一定の方向性を持った空気の流れを形成し、これによってトレイラック50を回転させるようにしても良い。この構成によれば、トレイラック50を回転台54に載せて回転可能に設置するだけで、回転機構を敷設する必要なしにトレイラック50を回転させることができるので、装置構成の簡略化およびコストダウンを図ることができる。たとえば図6において横向きに設けられている撹拌ファン30を駆動することにより一定方向の横方向の空気流を乾燥室12内に生じさせ、この空気流でトレイラック50を所定方向に回転させることができる。クロスフローダクト40の下端開口42から室内中央に向けて放出される空気の流れを利用してトレイラック50を所定方向に回転させることも可能である。どの位置にある撹拌ファン30を駆動すればトレイラック50を回転させるに十分な空気流を生じさせることができるかは、条件を変えて実験することにより容易に把握することが可能である。トレイラック50の回転速度についても、所望の速度を与えるために必要な条件を実験的に把握することができる。これらの実験結果を踏まえ、乾燥効果を十分に発揮しつつトレイラック50に所要の回転を与えるための制御条件を決定し、該制御条件の下で撹拌ファン30を駆動する。
【0045】
なお、先述の燻蒸効果を与えるためにすべての撹拌ファン30を停止させるとトレイラック50の回転も止まるが、トレイラック50は必ずしも乾燥処理中の全時間に亘って回転させる必要はなく、撹拌ファン30の駆動/停止に伴いトレイラック50も回転/静止を繰り返すようにした場合にもトレイラック50に収容した被処理材を略均一に乾燥させる効果を実際上十分に発揮させることができる。
【0046】
また、既述実施形態の乾燥装置10は床面パネル23を有するが、これを割愛して乾燥装置を構成しても良い。
【0047】
また、既述実施形態の乾燥装置10は常温に近い温度域(30〜50℃)で乾燥処理を行うため除湿機を用いて積極的に除湿しているが、乾燥室12内をたとえば60℃のような高温に加熱する場合には除湿機による除湿を行わなくても比較的短時間で乾燥処理を行うことができるので、この場合には除湿機を作動させずに乾燥処理を行うことができ、あるいは除湿機を省略した装置構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態による乾燥装置の正面外観図である。
【図2】この乾燥装置の正面室内図である。
【図3】この乾燥装置の右側面室内図である。
【図4】この乾燥装置の左側面室内図である。
【図5】この乾燥装置の奥面室内図である。
【図6】この乾燥装置の天井室内図である。
【図7】この乾燥装置におけるクロスフローダクトの設置状態を示す正面図(a)および側面図(b)である。
【図8】この乾燥装置において好適に使用されるトレイラックの正面図である。
【図9】図8のトレイラックに使用されるトレイの平面図である。
【図10】図9のトレイに被処理材を載せるために用いる補助部材の正面図(a)および側面図(b)である。
【図11】本発明の他の実施形態として被処理材を回転ドラムに収容して乾燥処理を行う場合の概略構成図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態としてトレイラックを回転台に載せて乾燥処理を行う場合の概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
10 乾燥装置
12 乾燥室
13 吸気口
14 制御盤
16 排気ファン
17,18 正面パネル
19,20 側面パネル
21 背面パネル
22 天井パネル
23 床面パネル
25 エアコン
26 除湿機
30 撹拌ファン
40 クロスフローダクト
45 外気温湿度センサ
46 室内温湿度センサ
47 光触媒装置
50 トレイラック
54 回転台
60 トレイ
70 回転ドラム
71 被処理材
72 モータ(サーボモータ)
74 ベルト
75,76 ベルト端係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理材を収容する乾燥室と、乾燥室の室内面に設けられる複数のファンとを備えた乾燥装置において、乾燥室の天井またはその近くに設置されたファンの送風口に隣接した位置に上端開口が配置されると共に乾燥室の底面近くに下端開口が配置され、これら上端開口から下端開口に至る空気通路を与えるように乾燥室の壁面にクロスフローダクトが取り付けられ、乾燥室内上方に滞留する高温乾燥の空気をクロスフローダクトを介して乾燥室の底面近くに強制的に移動することにより乾燥室内の温度および湿度を均一にすることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
クロスフローダクトの下端開口から乾燥室の底面近くに放出された高温乾燥空気に対して、乾燥室の側面設置ファンの少なくとも一部から室内中央に向けられた送風が、該高温乾燥空気の上昇移動を妨げる作用を果たすことを特徴とする、請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
クロスフローダクトの下端開口が斜めにカットされていて、該下端開口からの空気を乾燥室の中央に向けて放出することを特徴とする、請求項1または2記載の乾燥装置。
【請求項4】
乾燥室内に外気を導入するための吸気手段と、乾燥室内の空気を外部に排出する排気手段とをさらに備えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか記載の乾燥装置。
【請求項5】
乾燥処理の初期において吸気手段による外気導入および排気手段による排気を行って、乾燥室内の湿度を外気湿度より10〜20%低い湿度まで低下させることを特徴とする、請求項4記載の乾燥装置。
【請求項6】
吸気手段による外気導入および排気手段による排気を所定インターバルで間欠的に行って、乾燥室内の温度上昇を抑制することを特徴とする、請求項5記載の乾燥装置。
【請求項7】
乾燥室内の温度を設定温度に維持するための暖房手段および/または冷房手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか記載の乾燥装置。
【請求項8】
被処理材を載せたトレイを多段に収容可能なトレイラックが乾燥室内に収容されることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか記載の乾燥装置。
【請求項9】
トレイがメッシュ構造を有し、このメッシュに挿入して取付可能な補助部材に被処理材を立て掛けて保持することを特徴とする、請求項8記載の乾燥装置。
【請求項10】
トレイラックを回転させる回転機構が付設されることを特徴とする、請求項8または9記載の乾燥装置。
【請求項11】
トレイラックが回転可能に設置され、ファンからの送風により乾燥室内に形成される一定の方向性を持った空気の流れによってトレイラックを回転させることを特徴とする、請求項8または9記載の乾燥装置。
【請求項12】
被処理材を収容する回転ドラムが乾燥室内に収容されることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−101901(P2008−101901A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244965(P2007−244965)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(504412244)有限会社 サント電業 (5)
【Fターム(参考)】