二元合金単結晶ナノ構造体及びその製造方法
【課題】触媒を使用しない気相合成法を用いて高品質かつ欠陥のないすぐれた形状の固相の二元合金単結晶ナノ構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】二元合金を構成する金属元素らの金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属、または二元合金物質を前駆物質とし、気相合成法を利用した二元合金単結晶ナノ構造体の製造方法及び二元合金単結晶ナノ構造体を提供する。より詳細には、反応炉の前端部に位置させた前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた基板を、不活性気体が流れる雰囲気下において熱処理して、前記基板上に二元合金単結晶ナノワイヤまたは二元合金単結晶ナノベルトを形成させる製造方法及びこの製造方法によって製造された二元合金単結晶ナノワイヤまたは二元合金単結晶ナノベルトを提供する。
【解決手段】二元合金を構成する金属元素らの金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属、または二元合金物質を前駆物質とし、気相合成法を利用した二元合金単結晶ナノ構造体の製造方法及び二元合金単結晶ナノ構造体を提供する。より詳細には、反応炉の前端部に位置させた前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた基板を、不活性気体が流れる雰囲気下において熱処理して、前記基板上に二元合金単結晶ナノワイヤまたは二元合金単結晶ナノベルトを形成させる製造方法及びこの製造方法によって製造された二元合金単結晶ナノワイヤまたは二元合金単結晶ナノベルトを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相合成法を利用した二元合金(Binary Alloy)単結晶ナノ構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤに代表される1次元ナノ構造物は、多様な応用可能性を有する物質として注目を浴びている。即ち、このようなナノ構造は、それらの減少されたサイズ、増加されたアスペクト比と、これに反して増加された体積対表面積の比、また、新しい構造に起因する新しい現象、またはバルク状態では観察されない独特な特性を示すことが期待されている。
【0003】
殊に、異種合金ナノワイヤは、ガスセンサー、磁性素子及び磁性センサーとして多方面からの注目を受けている。しかし、多様で精密なガスセンサーの開発は、科学技術の発展とともに、高い精度が要求される作業において未だなお重大な課題として残されている。また、感知能力の優れたセンサーの開発は、国内はもちろん、先進各国においても低い段階の状態である。殊に、燃料電池の開発とともにこれを商用化する時に発生することが予想される水素の漏洩とこれを感知することのできる高感度燃料電池用水素ガスセンサーの開発は、次世代クリーンエネルギーとして使用される燃料電池の研究と並行しなければならない課題としても残されている。
【0004】
なお、このような水素ガスセンサーの開発と同様に重要視されていることが、センサーの素材として使われる物質の開発である。その中でも、最も注目されている物質の1つがPdAuのナノワイヤである。水素に強い吸着力を示すPdAuを使用、ナノワイヤに合成して、高感度のセンサーとして応用することができる。さらに、PdAuのナノワイヤは、0.1〜2%の水素濃度においてα→βの相転移(phase transition)が起らないので、水素センサーとして応用する時にセンサーの反応時間が向上されることが期待される。
【0005】
また、CoAg合金ナノワイヤの場合は、磁気抵抗の特性及びスピングラスの特性などの磁性特性によって、テルル化銀ナノワイヤの場合は、イオンと電荷伝導が混在された典型的な物質であって、高い温度環境において超イオン伝導率(superionic conductivity)を有し、バルクにおいてAgが豊富なテルル化銀及びTeが豊富なテルル化銀の場合は、巨大な量の磁気抵抗(large positive MR)特性を有することによって、ナノサイズの磁気センサーまたは磁気素子として活用されることが期待されている。
【0006】
ただ、CoAg合金の場合、CoとAgとの異種系において混合エネルギーが陽の値を有するため、金属間化合物が存在することが難しいと知られている。このような理由によって、1990年以後からようやくCoAg alloy関連論文などを確認することができる。なお、報告された形態は、非晶質または多結晶体からなる薄膜及びナノ粒子などである。CoAgと同様にPdAu及びテルル化銀ナノワイヤも単結晶形態のナノワイヤの製造が報告されたことがなく、異種合金ナノワイヤが無触媒の状態で気相合成法によって製造された場合も報告されたことがない。
【0007】
現在、異種金属ナノワイヤでない単一の金属から構成されたナノワイヤの合成だけでも難しい実情であり、現在まで報告された論文の主な関心は、バルク状態の金属を利用してナノサイズを有する構造体に合成することにフォーカスを当てている実情である。1次元ナノ構造の合成のためには、大部分の研究グループにおいて最も容易な方法である陽極酸化アルミニウム・テンプレート法(Anodic aluminium oxide template)を利用している。この方法は、1次元ナノ構造を合成するために最も便利な方法であり、合成の条件によっては、ナノワイヤの直径を調節することができるという面(Diameter control)において注目されているが、単結晶ナノワイヤの合成は難しいという問題がある。
【0008】
前記単結晶ナノワイヤの合成は、その物質の電気的、かつ磁気的性質の向上の側面から見て非常に重要な要素である。ナノワイヤの電気的性質において最も考慮されるべき事項は電子伝導率の程度(Degree of electron conductivity)である。単結晶ナノワイヤの場合は、ナノワイヤ自体が1つの大きな結晶粒界であるため、ナノワイヤの内部に電子伝導に対する何らの妨害物も存在しないが、多結晶ナノワイヤの場合は、数多い結晶粒及び結晶粒界からなっているため、電子がナノワイヤを沿って伝導される場合、多くの境界障壁(boundary barrier)が電子の散乱を発生させることによって電子伝導性を低下させることになる。また、ナノワイヤの磁気的性質には、ナノワイヤに対して外部磁界(external field)を印加するとき、電子スピンの配列が非常に重要な因子である。前述のように、単結晶の場合は1つの結晶だけを有するため、外部磁界を印加する時に電子のスピンは全て一定の方向に配列をなすが、数多い結晶の集合体である多結晶ナノワイヤの場合は、外部磁界を印加するときに、それぞれの結晶が多様な方向に電子スピンの配列を形成することによって、結局、磁気的性質の程度を低める要因として作用することになる。
【0009】
本出願人は、このような問題を解決するために、鋭意検討を繰り返した結果、二元合金を構成する金属元素の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属、または二元合金物質を前駆物質にして気相合成法によって、単結晶の完璧な構造である二元合金ナノ構造体を合成することができた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した問題を解決するための本発明の目的は、触媒を使用しない気相輸送法を用いて高品質、固相の二元合金単結晶ナノ構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の二元合金ナノ構造体の製造方法は、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトの前記二元合金を構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第2物質、または、前記二元合金の二元合金物質を含めてなる第3物質において、前記第1物質及び第3物質から選択された2つの物質、または、前記選択された2つの物質の混合物を前駆物質に用いて、反応炉の前端部に位置させた前記前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体の単結晶基板を、不活性気体が流れる雰囲気下で熱処理し、前記単結晶基板上に二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを形成することを特徴とする。前記前駆物質は、第1物質と第2物質との混合物、第1物質と第3物質との混合物、または、第3物質であり、前記第1物質または第2物質のハロゲン化金属は、フッ化金属(metal fluoride)、塩化金属(metal chloride)、臭化金属(metal bromide)またはヨウ化金属(metal iodide)から選択されることを特徴とする。
【0012】
本発明による前記単結晶ナノワイヤを形成する場合の前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部の方に10〜600sccm流されるとともに、前記熱処理は2〜30torrの圧力下で実施されることを特徴とする。また、前記前駆物質は、500〜1200℃に保持されるとともに、前記単結晶基板は、700〜1100℃に保持することを特徴とする。
【0013】
また、本発明による前記単結晶ナノベルトを形成する場合の前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部の方に10〜600sccm流されるとともに、前記熱処理は、2〜30torrの圧力下で実施されることを特徴とする。また、前記前駆物質は、500〜1200℃に保持されるとともに、前記単結晶基板は、100〜200℃に保持することを特徴とする。
【0014】
前記前駆物質としてハロゲン化金属が使用される場合、即ち、前記前駆物質が前記第1物質のハロゲン化金属及び前記第2物質である場合、前記第1物質のハロゲン化金属と前記第2物質とを物理的に分離して前記反応炉の前端部に位置させることが好ましい。このとき、前記第1物質のハロゲン化金属は、500〜800℃に保持され、前記第2物質は800〜1200℃に保持され、前記単結晶基板は700〜1100℃に保持されることが好ましい。
【0015】
好ましくは、前記第1物質または第2物質としての金属酸化物は、酸化銀、酸化金、酸化コバルト、酸化パラジウムまたは酸化テルルであり、前記第1物質または第2物質としての金属物質は、銀、金、コバルト、パラジウムまたはテルルであり、前記第1物質または第2物質としてのハロゲン化金属は、ハロゲン化銀、ハロゲン化金、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化パラジウムまたはハロゲン化テルルであり、前記第3物質としての二元合金物質は、PdとAuの合金、CoとAgの合金、AgとTeの合金、またはBiとTeの合金である。
【0016】
また、前記単結晶基板上に形成される二元合金単結晶ナノワイヤは、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤまたはBi1Te1単結晶ナノベルトである。
【0017】
本発明の二元合金ナノ構造体は、前記前駆物質を利用して触媒条件下での気相合成法によって製造された金属及び半金属から選択される2つの元素の単結晶体の固溶体、または単結晶体の化合物であることを特徴としている。このとき、前記前駆物質は、前記二元合金ナノワイヤまたは、ナノベルトを構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第2物質、または前記二元合金の二元合金物質を含めてなる第3物質において、前記第1物質乃至第3物質から選択された2つの物質、または前記選択された2つの物質の混合物である。前記前駆物質が500〜1200℃に保持され、二元合金単結晶ナノワイヤが形成される基板が、700〜1100℃に保持され、2〜30torrの圧力下で前記前駆物質から前記基板の方に不活性気体を10〜600sccm流す熱処理によって本発明の二元合金ナノワイヤが製造される。
【0018】
前記二元合金ナノ構造体は、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤであり、または、Bi1Te1単結晶ナノベルトである。また、前記PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(FCC;Face Centered Cubic)の特徴を有し、前記PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤは固溶体である。また、前記CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤは面心立方構造の特徴を有し、前記CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤは、固溶体である。また、前記Ag2Te単結晶ナノワイヤは、単純単斜晶構造(Simple monoclinic)の特徴を有し、前記Ag2Te単結晶ナノワイヤは化合物の特徴を有する。また、前記Bi1Te1単結晶ナノベルトは、六方晶系(hexagonal)構造の特徴を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法は、触媒を使用しない気相輸送法を利用して二元合金ナノワイヤを製造することができるため、その工程が簡単で再現性があり、製造されたナノワイヤが欠陥の無い完璧な単結晶状態の高品質二元合金ナノワイヤまたはナノベルトのメリットを有し、単結晶の基板上に凝集されていない均一なサイズの二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを大量生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の二元合金ナノ構造体の製造方法は、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトの前記二元合金を構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を包含する第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を包含する第2物質、または、前記二元合金の二元合金物質を包含する第3物質において、前記第1物質乃至第3物質から選択された2つの物質、または前記選択された2つの物質の混合物を前駆物質として利用し、反応炉の前端部に位置させた前記前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体の単結晶基板を、不活性気体が流れる雰囲気下で熱処理して前記単結晶基板上に二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを形成することを特徴とする。
【0021】
本発明の製造方法は、触媒の使用なしに、ただ二元合金物質または二元合金を構成する2つの金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を前駆物質として使用し、基板上に二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを形成させる方法であって、触媒の使用なしに気相の物質移動経路を通じて二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを製造するため、その工程が簡単でかつ再現性があり、二元合金を構成する2つの金属以外の不純物が包含されない高純度のナノ構造体を製造することができる。
【0022】
また、前記反応炉の前端部及び後端部の温度をそれぞれ調節し、また前記不活性気体の流れの程度と前記熱処理のときに利用される熱処理管内の圧力とを調節して、最終的に基板上部において二元合金の核生成駆動力、成長駆動力、核生成速度及び成長速度を調節する方法であることから、二元合金単結晶ナノ構造体のサイズ及び基板上の密度などの制御が可能であり、また再現性があるとともに欠陥のない結晶性の優れた高品質の二元合金単結晶ナノ構造体を製造することができる。
【0023】
前記熱処理の温度条件、不活性気体の流れの条件(carrier gas flow rate)及び熱処理時の圧力条件は、それぞれ独立的に変化されることができるが、前記3つの条件をそれぞれ他の条件の状態に従って従属的に変化されるようにすることにより、好ましい品質及び形状の二元合金単結晶ナノワイヤを得ることができる。
【0024】
したがって、前記3つの条件の数値的限定は独立的な意味を有することよりも、3つの条件を整合させた状態から最も望ましい二元合金単結晶ナノワイヤの製造方法となるのである。
【0025】
また、前記反応炉の前端部及び後端部におけるそれぞれの温度は、前駆物質の溶融点、気化点、気化エネルギーなどの物理的性質、及び不活性気体の流れの条件及び熱処理時の圧力条件に従って最適化されなければならない。好ましくは、前記前駆物質は500〜1200℃に保持されるとともに、ナノワイヤの場合、前記基板は700〜1100℃に保持され、ナノベルトの場合、前記基板は100〜200℃に保持されることが好ましい。
【0026】
前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から該反応炉の後端部の方に向けて10〜600sccmの流れにすることが好ましく、前記前駆物質がハロゲン化金属を包含する場合、前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から該反応炉の後端部の方に向けて300〜600sccmの流れにすることが好ましく、さらに450〜550sccmの流れにすることがより好ましい。また、前記前駆物質がハロゲン化金属を包含しない場合、前記不活性気体の前記反応炉の前端部から該反応炉の後端部への流れを10〜300sccmにすることが好ましい。
【0027】
前記熱処理のときの圧力は、常圧より低い圧力を有することが好ましく、2〜30torrの圧力がさらに好ましく、5〜15torrの圧力が最も好ましい。しかし、前駆物質がハロゲン化金属を包含する場合は、熱処理の圧力を常圧にしても構わない。
【0028】
また、前記反応炉の前・後端におけるそれぞれの温度条件、不活性気体の流れの条件及び熱処理のときの圧力条件は、前駆物質の気化程度、時間当たり単結晶基板に伝達される気化された前駆物質の量、単結晶基板上における二元合金物質の核生成及び成長速度、単結晶基板上に生成された二元合金物質(ナノワイヤまたはナノベルト)の表面エネルギー、単結晶基板上に生成された二元合金物質(ナノワイヤまたはナノベルト)の凝集程度、単結晶基板上に生成された二元合金物質の形状(morphology)に影響を及ぼすことになる。
【0029】
したがって、前記の温度条件、不活性気体の流れ及び熱処理時の圧力条件などの整合に基づいて、本発明の前駆物質を用いて気相輸送法を適用することによって、最も好ましい品質と形状の二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを製造することができる。もし、前記条件の適正範囲を外れる場合には、二元合金形態のナノワイヤを得ることが難しく、製造されたナノワイヤまたはナノベルトの凝集や形状の変化と欠陥が生じる品質上の問題が発生することがあり、ナノワイヤまたはナノベルトの形態ではなく、粒子或はロッドなどの金属体になるなどの問題がある。
【0030】
熱処理の時間も前記の温度条件、不活性気体の流れ及び熱処理時の圧力条件などの整合に基づいて最適化するところ、好ましくは10分〜1時間の熱処理が好ましい。前記の熱処理時間の間、不活性気体によって気化された前駆物質が単結晶基板に移動して、核生成及び成長に作用するようになるが、これと同時に単結晶基板に既に形成された二元合金物質の間で気相及び基板表面を介する二元合金物質の移動(原子またはクラスター(cluster)単位の物質移動)が発生してオストワルド塾生(Ostwald ripening)が生じることになる。
【0031】
したがって、前記熱処理の後、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトが形成された単結晶基板の前駆物質を除去した状態で、さらに熱処理することにより二元合金ナノワイヤまたはナノベルトの密度、またはサイズなどを調節することができる。
【0032】
上述のように本発明の製造方法においては、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを構成する2つの元素の金属酸化物、金属物質、またはハロゲン化金属を前駆物質として利用するか、前記2つの元素の二元合金物質を前駆物質として利用するという点と、前記前駆物質を利用して二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを製造するとき、気相輸送法を利用することができるため、この方法によって全ての二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを製造することができる。ただ、単結晶基板上に形成される二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトが、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤ、またはBi1Te1単結晶ナノベルトであることが好ましい。
【0033】
また、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを製造するために供する前駆物質が混合物の状態、または二元合金を構成する2つの金属を包含するが、混合状態ではなく分離されている2つの物質を使用することができる。前記の混合物を使用する場合、前駆物質として第1物質と第2物質との混合物、または第1物質と第3物質との混合物を使用することができ、単独で二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを構成する2つの金属の合金(第3物質)を使用することもできる。前記第1物質と第2物質との混合物は、第1物質の金属酸化物と第2物質の金属酸化物、第1物質の金属物質と第2物質の金属酸化物、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属酸化物、第1物質の金属酸化物と第2物質の金属物質、第1物質の金属物質と第2物質の金属物質、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属物質、第1物質の金属酸化物と第2物質のハロゲン化金属、第1物質の金属物質と第2物質のハロゲン化金属、または、第1物質のハロゲン化金属と第2物質のハロゲン化金属を混合した混合物であることもできる。本実施形態においては、好ましくは、第1物質の金属酸化物と第2物質の金属酸化物、第1物質の金属物質と第2物質の金属酸化物、第1物質の金属酸化物と第2物質の金属物質、または、第1物質の金属物質と第2物質の金属物質とを混合した混合物を使用する。
【0034】
また、第1物質と第3物質との混合物は、第1物質の金属酸化物と第3物質の二元合金物質、第1物質の金属物質と第3物質の二元合金物質、または第1物質のハロゲン化金属と第3物質の二元合金物質を混合した混合物であることもできる。ただ、好ましくは、第1物質の金属酸化物と第3物質の二元合金物質または第1物質の金属物質と第3物質の二元合金物質を使用する。
【0035】
また、前記前駆物質として第3物質の二元合金物質を単独で使用することもできる。
【0036】
前記混合物の混合状態は、粒子形態を有する第1物質及び第2物質が互に混合されていることだけの意味ではなく、反応炉上において前記2つの物質が隣接する位置(同じ温度が保持される位置)に置かれることを包含する意味である。
【0037】
殊に、ハロゲン化金属を前駆物質として利用する場合、前記第1物質のハロゲン化金属及び前記第2物質を使用するとき、前記両物質が物理的に分離された状態で前記反応炉の前端部に位置させることが好ましい。ここで、前記第1物質のハロゲン化金属と前記第2物質とが物理的に分離された状態で反応炉の前端部にそれぞれ位置させる理由は、第1物質のハロゲン化金属と第2物質とがそれぞれ異なるるつぼに収納されて互に異なる温度を保持しながら、ナノワイヤまたはナノベルトの合成にそれぞれ作用することになるためである。これは、ハロゲン化金属の揮発性が、金属、異種金属及び金属酸化物に比べて大きい値を有するため、前記不活性ガスの流れに従って、前記基板上に移動するハロゲン化金属の気体の量を調節するためである。この場合、前駆物質として、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属酸化物、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属物質、または、第1物質のハロゲン化金属と第2物質のハロゲン化金属が使用されるが、好ましくは、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属酸化物、または第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属物質を使用する。また、第1物質のハロゲン化金属と第3物質の二元合金物質を使用することもできる。前記のように反応炉の前端部に物理的に分離された状態で位置させた前記第1物質のハロゲン化金属と前記第2物質(または第3物質)において、前記第1物質のハロゲン化金属は、500〜800℃に保持され、前記第2物質(または第3物質)は800〜1200℃に保持されることが好ましく、ナノワイヤの場合では、前記基板が700〜1100℃に保持され、ナノベルトの場合では、前記基板が100〜200℃に保持されることが好ましい。このとき、反応炉を構成する温度調節装置が単一である場合は、管内のユニフォームゾーン(uniform zone)に前駆物質を位置させ、前記前駆物質と前記ユニフォームゾーンとの距離を調節して他の物質または基板を位置させることにより温度を調節することができる。また、個別的に加熱体と温度調節装置を設ける場合は、保持しようとする温度をそれぞれ温度調節装置と加熱体とを利用して調節することができる。
【0038】
前記第1物質または第2物質のハロゲン化金属は、フッ化金属、塩化金属、臭化金属またはヨウ化金属から選択されたものであり、好ましくは、ハロゲン化銀、ハロゲン化金、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化パラジウムまたはハロゲン化テルルである。前記ハロゲン化銀は、フッ化銀、塩化銀、臭化銀またはヨウ化銀から選択されたものであり、前記ハロゲン化金は、フッ化金、塩化金、臭化金またはヨウ化金から選択されたものであり、前記ハロゲン化コバルトは、フッ化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルトまたはヨウ化コバルトから選択されたものであり、前記ハロゲン化パラジウムは、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウムまたはヨウ化パラジウムから選択されたものであり、前記ハロゲン化テルルは、フッ化テルル、塩化テルル、臭化テルルまたはヨウ化テルルから選択されたものである。
【0039】
前記第1物質または第2物質の金属酸化物は、好ましくは、酸化銀、酸化金、酸化コバルト、酸化パラジウムまたは酸化テルルである。このとき、前記酸化金、酸化コバルト、酸化パラジウムまたは酸化テルルは、常温常圧下で、熱力学的に安定した量論比を有する酸化物であることがあり、金属による点欠陥または酸素による点欠陥に起因する前記の安定した量論比を有していないこともある。
【0040】
前記第1物質または第2物質の金属物質は、好ましくは、銀、金、コバルト、パラジウムまたはテルルである。
【0041】
前記第3物質の二元合金物質は、好ましくは、PdとAuの合金、CoとAgの合金、AgとTeの合金、またはBiとTeの合金であり、前記PdとAuの合金、CoとAgの合金、またはAgとTeの合金は金属間化合物、化合物、固溶体であることができる。また、前記合金の組成は、製造しようとするナノワイヤまたはナノベルトの組成と類似することが好ましいが、製造しょうとするナノワイヤまたはナノベルトの組成と異なっても構わない。
【0042】
また、前記半導体または不導体の単結晶基板は、前記の熱処理条件において、化学的/熱的に安定した半導体または不導体であれば、全てが使用可能とするが、好ましくは、シリコン単結晶、ゲルマニウム単結晶、または、シリコンゲルマニウム単結晶から選択された4族単結晶、ガリウム砒素単結晶、インジウムリン単結晶、または、ガリウムリン単結晶から選択された3−5族単結晶、2−6族単結晶、4−6族単結晶、サファイア単結晶または二酸化ケイ素単結晶から選択された単結晶基板を使用することが好ましい。
【0043】
しかし、前記基板は、単純に基板上部においてナノワイヤまたはナノベルトが形成される空間を提供する役割を行うだけであるため、必要によって上述した単結晶基板物質の多結晶体を使用しても良い。
【0044】
本発明の製造方法の優秀性を実験を通じて立証するために、本発明の製造方法に従って、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤ及びBi1Te1単結晶ナノベルトをそれぞれ製造(実施例1、2、3及び4)した。
【0045】
下記の実施例1は、ハロゲン化前駆物質を使用せずに、二元合金ナノワイヤを製造する代表的な実施例であり、同実施例2は、ハロゲン化前駆物質を使用して二元合金ナノワイヤを製造する代表的な実施例であり、同実施例3は、製造しようとする二元合金ナノワイヤの二元合金物質を使用して二元合金ナノワイヤを製造する代表的な実施例であり、同実施例4は、製造しようとする二元合金ナノベルトの二元合金物質を使用して二元合金ナノベルトを製造する代表的な実施例である。
【0046】
上述の後記する実施例3においては、前駆物質として二元合金物質(Ag2Te)のみを使用しているが、二元合金物質(Ag2Te)と金属(Ag)または二元合金物質と金属酸化物(Ag2O3)とを混合して使用することができる。また、後記する実施例4においては、前駆物質として二元合金物質(Bi1Te1)のみを使用しているが、二元合金物質(Bi1Te1)と金属(Bi)または二元合金物質と金属酸化物(Bi2O3)とを混合して使用することができる。
【0047】
(実施例1)
反応炉において、気相輸送法によりPdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤを合成した。
【0048】
前記反応炉は、前端部と後端部に区別されるとともに、個別的に加熱体と温度調節装置を設けて構成されている。反応炉内の管は、直径1インチ、長さ60cmサイズの石英材質のものを使用した。
【0049】
反応炉の前端部の中に、前駆物質であるAu2O3(Sigma−Aldrich社、334057製品)0.03gとPdO(Sigma−Aldrich社、203971製品)0.03gとを混合させた混合物を収納した高純度アルミナ材質のボート型容器を位置させた。また、反応炉の後端部の中には、サファイア単結晶基板(表面0001)を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部から導入されて反応炉の後端部に排気される。なお、反応炉の後端部には真空ポンプが設置され、該真空ポンプを利用して石英管内の圧力を5torrに保持し、MFC(Mass Flow Controller)を利用して150sccmのArが流れるようにした。
【0050】
反応炉の前端部(前駆物質が収納されたアルミナボート)の温度は、1100℃に保持し、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は、950℃に保持した状態で30分間の熱処理によって、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤを製造した。
【0051】
(実施例2)
反応炉において、気相輸送法により、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤを合成した。
【0052】
前記実施例1と同様に構成されている反応炉を使用した。
【0053】
前駆物質としてCoCl2(Sigma−Aldrich社、449776製品)0.01gとAg2O(Sigma−Aldrich社、22163製品)0.3gを使用し、前記 CoCl2とAg2Oをそれぞれ高純度アルミナ材質のボート型容器に収納して反応炉の前端部に位置させた。また、反応炉の後端部の中には、Si単結晶基板(表面100)を位置させた。また、前記反応炉の前端部の中にAu2O3が収納されたアルミナるつぼを位置させた。
【0054】
アルゴン気体は、反応炉の前端部から導入されて反応炉の後端部に排気される。また、反応炉の後端部には真空ポンプが設置され、該真空ポンプを利用して石英管内の圧力を15torrに保持し、MFCを利用して500sccmのArが流れるようにした。
【0055】
反応炉の前端部(反応炉の中の位置)の温度は、1000℃に保持して前記Ag2Oが収納されたアルミナるつぼが1000℃に保持されるようにし、前記Ag2Oが収納されたアルミナるつぼの位置を基準にして4cmの間隔をおいて、前記CoCl2が収納されたアルミナるつぼを位置させて、前記CoCl2が収納されたアルミナるつぼが650℃の温度を保持するようにするとともに、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は、800℃を保持した状態で30分間の熱処理によってCoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤを製造した。本実施例の理解のために、実施例2の前駆物質及び基板における熱処理の構成を図1に示した。
【0056】
(実施例3)
反応炉において気相輸送法によりAg2Te単結晶ナノワイヤを合成した。
【0057】
前記実施例1と同様に構成されている反応炉を使用した。
【0058】
反応炉の前端部の中に、前駆物質であるAg2Te(Sigma−Aldrich社、400645製品)0.05gが収納された高純度アルミナ材質のボート型容器を位置させた。また反応炉の後端部の中には、シリコン単結晶基板(表面100)を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部から導入されて反応炉の後端部に排気される。また、反応炉の後端部には真空ポンプが設置され、前記真空ポンプを利用して石英管内の圧力を10torrに保持し、MFCを利用して200sccmのArが流れるようにした。
【0059】
反応炉の前端部(前駆物質が収納されたアルミナボート)の温度は、1000℃に保持し、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は、800℃に保持した状態で30分間の熱処理によって、Ag2Te単結晶ナノワイヤを製造した。
【0060】
(実施例4)
反応炉において、気相輸送法によりBi1Te1単結晶ナノベルトを合成した。
【0061】
前記実施例1と同様に構成されている反応炉を使用した。
【0062】
反応炉の前端部の中に、前駆物質であるBi2Te3(Alfa Aesar社、44077製品)0.05gが収納された高純度アルミナ材質のボート型容器を位置させた。また、反応炉の後端部の中には、シリコン単結晶基板(表面100)を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部から導入されて反応炉の後端部に排気される。また、反応炉の後端部には真空ポンプが設置され、前記真空ポンプを利用して石英管内の圧力を10torrに保持し、MFCを利用して200sccmのArが流れるようにした。反応炉の前端部(前駆物質が収納されたアルミナボート)の温度は、600℃に保持し、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は、150℃に保持した状態で30分間の熱処理によって、Bi1Te1単結晶ナノベルトを製造した。
【0063】
以上、前記実施例1〜4によって製造された二元合金単結晶ナノワイヤ及びナノベルトを分析して、本発明の製造方法によって製造された二元合金単結晶ナノ構造体の品質、形状及び純度などを調査・分析した。
【0064】
先ず、図2〜図5は、実施例1を通じて製造されたPdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤを分析・測定した結果である。
【0065】
図2は、サファイア単結晶基板上にて製造されたPdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)ナノワイヤのSEM写真である。図2から分るように、多量のナノワイヤの直径が50〜150nm程度であり、30um以上(30〜50um)の長さを有する均一なサイズでサファイア単結晶基板と分離されて製造されていることを分る。また、ナノワイヤの長手軸方向に真直ぐ伸びた形状を有し、ナノワイヤ同士の固まりがなく個別的に分離可能のナノワイヤが製造されるとともに、ナノワイヤの長手軸が基板の表面に対して略垂直状の配向性を有していることを分る。
【0066】
図3は、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)ナノワイヤのXRD(X−Ray Diffraction)による結果を示している。前記図3の回折結果は、Pd金属ともAu金属とも一致しない結晶性を有していることを分る。図4のTEM装備に装着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用したナノワイヤの成分分析結果である。ここで分るように、グリッドのような測定装備の特性上、付随的に測定された物質を除外すれば、製造されたナノワイヤがPdとAgだけでなっていることを確認することができる。また、本発明の製造方法によって製造された多数のナノワイヤをTEM装備に装着されたEDSによる分析の結果、PdxAu1-xのナノワイヤが製造され、前記xは0.01≦x≦0.99の組成を有していることを分る。
【0067】
図5は、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)ナノワイヤのTEM分析結果であり、図5(a)はナノワイヤの暗視野像(dark field image)であり、図5(b)は図5(a)におけるナノワイヤの高倍率TEM写真であり、図5(c)は図5(a)のナノワイヤのSAED(Selected Area Electron Diffraction)パターンである。図5(a)及び図5(b)を通じて、滑らかな表面を有し、均一の太さのナノワイヤが形成されていることを確認することができ、図5(c)を通じては、製造されたナノワイヤが面心立方構造を有することと、[100]方向の成長方向を有する単結晶体であることを確認することができる。
【0068】
前記図2〜図5の結果を通じて、PdとAuが固溶体をなした面心立方構造の特徴を有する単結晶体としての高品質かつ欠陥のない完璧な形状のナノワイヤが製造されていることを確認することができる。
【0069】
図6〜図8は、実施例2によって製造されたCoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤを分析・測定した結果である。
【0070】
図6は、シリコン単結晶基板上に製造されたCoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤのSEM写真である。図6から分るように、ナノワイヤとプレートが同時に製造され、図6の左側上部に図示した高倍率SEM写真から分るように、直径が200〜300nm程度であり、数um以上の長さを有する均一なサイズのナノワイヤがサファイア単結晶基板と分離されて多量に製造されていることを確認することができる。長手軸方向に真直ぐ伸びた形状を有し、ナノワイヤ同士の固まりがなく個別的に分離可能のナノワイヤが製造されていることを確認することができる。図7のXRD回折結果から分るように、製造されたナノワイヤが面心立方構造(FCC)を有し、バルクAgの回折結果と一致していることを分る。
【0071】
図8は、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)ナノワイヤの暗視野像であり、図8の左側下部に図示された挿入図面は、図8のナノワイヤのSAEDパターンである。図8の結果から分るように、ナノワイヤが面心立方構造(FCC)の[01−1]成長方向を有する単結晶体であることを分る。
【0072】
図9は、TEM装備に装着されたEDSを利用したナノワイヤの成分分析結果であり、図9の(a)は図9のナノワイヤのAg EDS mappingの結果であり、図9の(b)は図9のナノワイヤのCo EDS mappingの結果である。図9の(c)は図9のナノワイヤの上部に表示した白の四角形部分のEDS結果であり、図9の(d)は同じく下部に表示した白の四角形部分のEDS結果である。図9の(a)〜(d)から分るように、グリッドのような測定装備の特性上、付随的に測定された物質を除外すれば、製造されたナノワイヤがCoとAgだけで構成され、CoとAgがナノワイヤ全体に亘って均一に分布されていることを分る。また、本発明の製造方法によって製造された多数のナノワイヤのEDSによる分析結果、CoyAg1-yのナノワイヤが製造され、前記yは0.01≦y≦0.5の組成を有していることを分る。
【0073】
図6〜図9の結果を通じてCoとAgが固溶体をなした面心立方構造を有する単結晶体としての高品質かつ完璧な形状のナノワイヤが製造される。
【0074】
図10〜図13は、実施例2を通じて製造されたAg2Teナノワイヤに対する測定結果である。
【0075】
図10は、サファイア単結晶基板上に製造されたAg2TeナノワイヤのSEM写真であり、図10から分るように多量のナノワイヤの直径が150〜200nm程度であり、数um以上の長さを有する均一なサイズでサファイア単結晶基板と分離されて製造されていることを分る。また、ナノワイヤの長手軸方向に真直ぐ伸びた形状を有し、ナノワイヤ同士の固まりがなく個別的に分離可能のナノワイヤが製造されている。図11のXRDによる結果を通じてバルクのAg2Teと同一の構造を有する単純な単斜晶構造の化合物であるAg2Teナノワイヤが製造されていることを分る。
【0076】
図12は、Ag2TeナノワイヤのTEM分析結果であり、図12(a)はナノワイヤの暗視野像及びSAEDパターンであり、図12(b)は、図12(a)のナノワイヤのHRTEM(High Resolution Transmission Microscopy)写真であり、図12(b)の右側上部に挿入されたパターンは、図12(b)の高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)パターンである。図12(a)を通じて滑らかな表面を有し、均一なサイズのナノワイヤが形成され、製造されたナノワイヤが[−302]成長方向を有する単純単斜晶構造の単結晶体であることを確認することができる。図12(b)のHRTEM写真を通じて製造されたナノワイヤが欠陥のない高品質の単結晶体であり、ナノワイヤの(010)面間距離がバルクのAg2Te(010)面間距離と同一の4.46Aであることを確認することができる。図13のTEM装備に付着されたEDSを利用したナノワイヤの成分分析結果を通じて分るように、グリッドのように測定装備の特性上、付随的に測定された物質を除外すると、製造されたナノワイヤがAgとTeだけで構成され、AgとTeの組成比が2:1であることを確認することができる。
【0077】
図10〜図13の結果によって、AgとTeが2:1の組成比を有する単純単斜晶構造の化合物であり、完璧な形状と高品質の単結晶体としてのAg2Teナノワイヤが製造されていることを分る。
【0078】
図14はBi1Te1ナノベルトのTEM分析結果であり、(a)はナノベルトの暗視野像とSAEDパターンである。
【0079】
図14の(a)を通じて滑らかな表面を有し、均一な太さのナノベルトが形成されていることを確認することができる。また、前記図14の(b)はナノベルトの高倍率TEM写真であり、挿入されたイメージは高速フーリエ変換のパターンである。
【0080】
図14の(a)及び(b)によって合成されたナノベルトが六方晶系の構造を有し、[110]方向の成長方向を有する単結晶体であることを確認することができる。
【0081】
図15は、本発明の実施例4によって製造されたナノベルトのTEM装備に付着されたEDSを利用するナノベルトの成分分析結果である。
【0082】
図16は、本発明の実施例4によって製造されたナノベルトのXRDの結果を示したグラフ図である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施例2の前駆物質及び基板の熱処理構成の模式図である。
【図2】本発明の実施例1によって製造されたナノワイヤのSEM写真図である。
【図3】本発明の実施例1によって製造されたナノワイヤのXRD結果図である。
【図4】本発明の実施例1によって製造されたナノワイヤのTEM装備に付着されたEDSによる結果図である。
【図5】本発明の実施例1によって製造されたナノワイヤのTEM分析結果図であって、(a)はナノワイヤの暗視野像であり、(b)は(a)のナノワイヤの高倍率TEM写真図であり、(c)は(a)のナノワイヤのSAEDパターンを示した図面である。
【図6】本発明の実施例2によって製造されたナノワイヤのSEM写真図である。
【図7】本発明の実施例2によって製造されたナノワイヤのXRDの結果図である。
【図8】本発明の実施例2によって製造されたナノワイヤの暗視野像であって、図面左側の下部に挿入された図面はナノワイヤのSAEDパターンを示した図面である。
【図9】本発明の実施例2によって製造されたナノワイヤのTEM装備に付着されたEDSを利用したナノワイヤの成分分析結果図であって、(a)はナノワイヤのAg EDS mappingの結果図であり、(b)はナノワイヤのCo EDS mappingの結果図であり、(c)はナノワイヤの上部に表示した白の四角形部分のEDS結果図であり、(d)は下部に表示した白の四角形部分のEDS結果図である。
【図10】本発明の実施例3によって製造されたナノワイヤのSEM写真図である。
【図11】本発明の実施例3によって製造されたナノワイヤのXRD結果図である。
【図12】本発明の実施例3によって製造されたナノワイヤのTEM分析結果図であって、(a)はナノワイヤの暗視野像及びSAEDパターンを示した図面であり、(b)は(a)のナノワイヤのHRTEM写真図であり、(b)の右側上部に挿入されたパターンは、(b)の高速フーリエ変換のパターンを示した図面である。
【図13】本発明の実施例3によって製造されたナノワイヤのTEM装備に付着されたEDSによる結果図である。
【図14】Bi1Te1ナノベルトのTEM分析結果図であって、(a)はナノワイヤの暗視野像とSAEDパターンを示した図面である。
【図15】本発明の実施例4によって製造されたナノベルトのTEM装備に付着されたEDSを利用するナノベルトの成分分析結果図である。
【図16】本発明の実施例4によって製造されたナノベルトのXRDの結果を示すグラフ図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相合成法を利用した二元合金(Binary Alloy)単結晶ナノ構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤに代表される1次元ナノ構造物は、多様な応用可能性を有する物質として注目を浴びている。即ち、このようなナノ構造は、それらの減少されたサイズ、増加されたアスペクト比と、これに反して増加された体積対表面積の比、また、新しい構造に起因する新しい現象、またはバルク状態では観察されない独特な特性を示すことが期待されている。
【0003】
殊に、異種合金ナノワイヤは、ガスセンサー、磁性素子及び磁性センサーとして多方面からの注目を受けている。しかし、多様で精密なガスセンサーの開発は、科学技術の発展とともに、高い精度が要求される作業において未だなお重大な課題として残されている。また、感知能力の優れたセンサーの開発は、国内はもちろん、先進各国においても低い段階の状態である。殊に、燃料電池の開発とともにこれを商用化する時に発生することが予想される水素の漏洩とこれを感知することのできる高感度燃料電池用水素ガスセンサーの開発は、次世代クリーンエネルギーとして使用される燃料電池の研究と並行しなければならない課題としても残されている。
【0004】
なお、このような水素ガスセンサーの開発と同様に重要視されていることが、センサーの素材として使われる物質の開発である。その中でも、最も注目されている物質の1つがPdAuのナノワイヤである。水素に強い吸着力を示すPdAuを使用、ナノワイヤに合成して、高感度のセンサーとして応用することができる。さらに、PdAuのナノワイヤは、0.1〜2%の水素濃度においてα→βの相転移(phase transition)が起らないので、水素センサーとして応用する時にセンサーの反応時間が向上されることが期待される。
【0005】
また、CoAg合金ナノワイヤの場合は、磁気抵抗の特性及びスピングラスの特性などの磁性特性によって、テルル化銀ナノワイヤの場合は、イオンと電荷伝導が混在された典型的な物質であって、高い温度環境において超イオン伝導率(superionic conductivity)を有し、バルクにおいてAgが豊富なテルル化銀及びTeが豊富なテルル化銀の場合は、巨大な量の磁気抵抗(large positive MR)特性を有することによって、ナノサイズの磁気センサーまたは磁気素子として活用されることが期待されている。
【0006】
ただ、CoAg合金の場合、CoとAgとの異種系において混合エネルギーが陽の値を有するため、金属間化合物が存在することが難しいと知られている。このような理由によって、1990年以後からようやくCoAg alloy関連論文などを確認することができる。なお、報告された形態は、非晶質または多結晶体からなる薄膜及びナノ粒子などである。CoAgと同様にPdAu及びテルル化銀ナノワイヤも単結晶形態のナノワイヤの製造が報告されたことがなく、異種合金ナノワイヤが無触媒の状態で気相合成法によって製造された場合も報告されたことがない。
【0007】
現在、異種金属ナノワイヤでない単一の金属から構成されたナノワイヤの合成だけでも難しい実情であり、現在まで報告された論文の主な関心は、バルク状態の金属を利用してナノサイズを有する構造体に合成することにフォーカスを当てている実情である。1次元ナノ構造の合成のためには、大部分の研究グループにおいて最も容易な方法である陽極酸化アルミニウム・テンプレート法(Anodic aluminium oxide template)を利用している。この方法は、1次元ナノ構造を合成するために最も便利な方法であり、合成の条件によっては、ナノワイヤの直径を調節することができるという面(Diameter control)において注目されているが、単結晶ナノワイヤの合成は難しいという問題がある。
【0008】
前記単結晶ナノワイヤの合成は、その物質の電気的、かつ磁気的性質の向上の側面から見て非常に重要な要素である。ナノワイヤの電気的性質において最も考慮されるべき事項は電子伝導率の程度(Degree of electron conductivity)である。単結晶ナノワイヤの場合は、ナノワイヤ自体が1つの大きな結晶粒界であるため、ナノワイヤの内部に電子伝導に対する何らの妨害物も存在しないが、多結晶ナノワイヤの場合は、数多い結晶粒及び結晶粒界からなっているため、電子がナノワイヤを沿って伝導される場合、多くの境界障壁(boundary barrier)が電子の散乱を発生させることによって電子伝導性を低下させることになる。また、ナノワイヤの磁気的性質には、ナノワイヤに対して外部磁界(external field)を印加するとき、電子スピンの配列が非常に重要な因子である。前述のように、単結晶の場合は1つの結晶だけを有するため、外部磁界を印加する時に電子のスピンは全て一定の方向に配列をなすが、数多い結晶の集合体である多結晶ナノワイヤの場合は、外部磁界を印加するときに、それぞれの結晶が多様な方向に電子スピンの配列を形成することによって、結局、磁気的性質の程度を低める要因として作用することになる。
【0009】
本出願人は、このような問題を解決するために、鋭意検討を繰り返した結果、二元合金を構成する金属元素の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属、または二元合金物質を前駆物質にして気相合成法によって、単結晶の完璧な構造である二元合金ナノ構造体を合成することができた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した問題を解決するための本発明の目的は、触媒を使用しない気相輸送法を用いて高品質、固相の二元合金単結晶ナノ構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の二元合金ナノ構造体の製造方法は、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトの前記二元合金を構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第2物質、または、前記二元合金の二元合金物質を含めてなる第3物質において、前記第1物質及び第3物質から選択された2つの物質、または、前記選択された2つの物質の混合物を前駆物質に用いて、反応炉の前端部に位置させた前記前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体の単結晶基板を、不活性気体が流れる雰囲気下で熱処理し、前記単結晶基板上に二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを形成することを特徴とする。前記前駆物質は、第1物質と第2物質との混合物、第1物質と第3物質との混合物、または、第3物質であり、前記第1物質または第2物質のハロゲン化金属は、フッ化金属(metal fluoride)、塩化金属(metal chloride)、臭化金属(metal bromide)またはヨウ化金属(metal iodide)から選択されることを特徴とする。
【0012】
本発明による前記単結晶ナノワイヤを形成する場合の前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部の方に10〜600sccm流されるとともに、前記熱処理は2〜30torrの圧力下で実施されることを特徴とする。また、前記前駆物質は、500〜1200℃に保持されるとともに、前記単結晶基板は、700〜1100℃に保持することを特徴とする。
【0013】
また、本発明による前記単結晶ナノベルトを形成する場合の前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部の方に10〜600sccm流されるとともに、前記熱処理は、2〜30torrの圧力下で実施されることを特徴とする。また、前記前駆物質は、500〜1200℃に保持されるとともに、前記単結晶基板は、100〜200℃に保持することを特徴とする。
【0014】
前記前駆物質としてハロゲン化金属が使用される場合、即ち、前記前駆物質が前記第1物質のハロゲン化金属及び前記第2物質である場合、前記第1物質のハロゲン化金属と前記第2物質とを物理的に分離して前記反応炉の前端部に位置させることが好ましい。このとき、前記第1物質のハロゲン化金属は、500〜800℃に保持され、前記第2物質は800〜1200℃に保持され、前記単結晶基板は700〜1100℃に保持されることが好ましい。
【0015】
好ましくは、前記第1物質または第2物質としての金属酸化物は、酸化銀、酸化金、酸化コバルト、酸化パラジウムまたは酸化テルルであり、前記第1物質または第2物質としての金属物質は、銀、金、コバルト、パラジウムまたはテルルであり、前記第1物質または第2物質としてのハロゲン化金属は、ハロゲン化銀、ハロゲン化金、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化パラジウムまたはハロゲン化テルルであり、前記第3物質としての二元合金物質は、PdとAuの合金、CoとAgの合金、AgとTeの合金、またはBiとTeの合金である。
【0016】
また、前記単結晶基板上に形成される二元合金単結晶ナノワイヤは、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤまたはBi1Te1単結晶ナノベルトである。
【0017】
本発明の二元合金ナノ構造体は、前記前駆物質を利用して触媒条件下での気相合成法によって製造された金属及び半金属から選択される2つの元素の単結晶体の固溶体、または単結晶体の化合物であることを特徴としている。このとき、前記前駆物質は、前記二元合金ナノワイヤまたは、ナノベルトを構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第2物質、または前記二元合金の二元合金物質を含めてなる第3物質において、前記第1物質乃至第3物質から選択された2つの物質、または前記選択された2つの物質の混合物である。前記前駆物質が500〜1200℃に保持され、二元合金単結晶ナノワイヤが形成される基板が、700〜1100℃に保持され、2〜30torrの圧力下で前記前駆物質から前記基板の方に不活性気体を10〜600sccm流す熱処理によって本発明の二元合金ナノワイヤが製造される。
【0018】
前記二元合金ナノ構造体は、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤであり、または、Bi1Te1単結晶ナノベルトである。また、前記PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(FCC;Face Centered Cubic)の特徴を有し、前記PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤは固溶体である。また、前記CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤは面心立方構造の特徴を有し、前記CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤは、固溶体である。また、前記Ag2Te単結晶ナノワイヤは、単純単斜晶構造(Simple monoclinic)の特徴を有し、前記Ag2Te単結晶ナノワイヤは化合物の特徴を有する。また、前記Bi1Te1単結晶ナノベルトは、六方晶系(hexagonal)構造の特徴を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法は、触媒を使用しない気相輸送法を利用して二元合金ナノワイヤを製造することができるため、その工程が簡単で再現性があり、製造されたナノワイヤが欠陥の無い完璧な単結晶状態の高品質二元合金ナノワイヤまたはナノベルトのメリットを有し、単結晶の基板上に凝集されていない均一なサイズの二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを大量生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の二元合金ナノ構造体の製造方法は、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトの前記二元合金を構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を包含する第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を包含する第2物質、または、前記二元合金の二元合金物質を包含する第3物質において、前記第1物質乃至第3物質から選択された2つの物質、または前記選択された2つの物質の混合物を前駆物質として利用し、反応炉の前端部に位置させた前記前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体の単結晶基板を、不活性気体が流れる雰囲気下で熱処理して前記単結晶基板上に二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを形成することを特徴とする。
【0021】
本発明の製造方法は、触媒の使用なしに、ただ二元合金物質または二元合金を構成する2つの金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を前駆物質として使用し、基板上に二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを形成させる方法であって、触媒の使用なしに気相の物質移動経路を通じて二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを製造するため、その工程が簡単でかつ再現性があり、二元合金を構成する2つの金属以外の不純物が包含されない高純度のナノ構造体を製造することができる。
【0022】
また、前記反応炉の前端部及び後端部の温度をそれぞれ調節し、また前記不活性気体の流れの程度と前記熱処理のときに利用される熱処理管内の圧力とを調節して、最終的に基板上部において二元合金の核生成駆動力、成長駆動力、核生成速度及び成長速度を調節する方法であることから、二元合金単結晶ナノ構造体のサイズ及び基板上の密度などの制御が可能であり、また再現性があるとともに欠陥のない結晶性の優れた高品質の二元合金単結晶ナノ構造体を製造することができる。
【0023】
前記熱処理の温度条件、不活性気体の流れの条件(carrier gas flow rate)及び熱処理時の圧力条件は、それぞれ独立的に変化されることができるが、前記3つの条件をそれぞれ他の条件の状態に従って従属的に変化されるようにすることにより、好ましい品質及び形状の二元合金単結晶ナノワイヤを得ることができる。
【0024】
したがって、前記3つの条件の数値的限定は独立的な意味を有することよりも、3つの条件を整合させた状態から最も望ましい二元合金単結晶ナノワイヤの製造方法となるのである。
【0025】
また、前記反応炉の前端部及び後端部におけるそれぞれの温度は、前駆物質の溶融点、気化点、気化エネルギーなどの物理的性質、及び不活性気体の流れの条件及び熱処理時の圧力条件に従って最適化されなければならない。好ましくは、前記前駆物質は500〜1200℃に保持されるとともに、ナノワイヤの場合、前記基板は700〜1100℃に保持され、ナノベルトの場合、前記基板は100〜200℃に保持されることが好ましい。
【0026】
前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から該反応炉の後端部の方に向けて10〜600sccmの流れにすることが好ましく、前記前駆物質がハロゲン化金属を包含する場合、前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から該反応炉の後端部の方に向けて300〜600sccmの流れにすることが好ましく、さらに450〜550sccmの流れにすることがより好ましい。また、前記前駆物質がハロゲン化金属を包含しない場合、前記不活性気体の前記反応炉の前端部から該反応炉の後端部への流れを10〜300sccmにすることが好ましい。
【0027】
前記熱処理のときの圧力は、常圧より低い圧力を有することが好ましく、2〜30torrの圧力がさらに好ましく、5〜15torrの圧力が最も好ましい。しかし、前駆物質がハロゲン化金属を包含する場合は、熱処理の圧力を常圧にしても構わない。
【0028】
また、前記反応炉の前・後端におけるそれぞれの温度条件、不活性気体の流れの条件及び熱処理のときの圧力条件は、前駆物質の気化程度、時間当たり単結晶基板に伝達される気化された前駆物質の量、単結晶基板上における二元合金物質の核生成及び成長速度、単結晶基板上に生成された二元合金物質(ナノワイヤまたはナノベルト)の表面エネルギー、単結晶基板上に生成された二元合金物質(ナノワイヤまたはナノベルト)の凝集程度、単結晶基板上に生成された二元合金物質の形状(morphology)に影響を及ぼすことになる。
【0029】
したがって、前記の温度条件、不活性気体の流れ及び熱処理時の圧力条件などの整合に基づいて、本発明の前駆物質を用いて気相輸送法を適用することによって、最も好ましい品質と形状の二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを製造することができる。もし、前記条件の適正範囲を外れる場合には、二元合金形態のナノワイヤを得ることが難しく、製造されたナノワイヤまたはナノベルトの凝集や形状の変化と欠陥が生じる品質上の問題が発生することがあり、ナノワイヤまたはナノベルトの形態ではなく、粒子或はロッドなどの金属体になるなどの問題がある。
【0030】
熱処理の時間も前記の温度条件、不活性気体の流れ及び熱処理時の圧力条件などの整合に基づいて最適化するところ、好ましくは10分〜1時間の熱処理が好ましい。前記の熱処理時間の間、不活性気体によって気化された前駆物質が単結晶基板に移動して、核生成及び成長に作用するようになるが、これと同時に単結晶基板に既に形成された二元合金物質の間で気相及び基板表面を介する二元合金物質の移動(原子またはクラスター(cluster)単位の物質移動)が発生してオストワルド塾生(Ostwald ripening)が生じることになる。
【0031】
したがって、前記熱処理の後、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトが形成された単結晶基板の前駆物質を除去した状態で、さらに熱処理することにより二元合金ナノワイヤまたはナノベルトの密度、またはサイズなどを調節することができる。
【0032】
上述のように本発明の製造方法においては、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを構成する2つの元素の金属酸化物、金属物質、またはハロゲン化金属を前駆物質として利用するか、前記2つの元素の二元合金物質を前駆物質として利用するという点と、前記前駆物質を利用して二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを製造するとき、気相輸送法を利用することができるため、この方法によって全ての二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを製造することができる。ただ、単結晶基板上に形成される二元合金単結晶ナノワイヤまたはナノベルトが、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤ、またはBi1Te1単結晶ナノベルトであることが好ましい。
【0033】
また、二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを製造するために供する前駆物質が混合物の状態、または二元合金を構成する2つの金属を包含するが、混合状態ではなく分離されている2つの物質を使用することができる。前記の混合物を使用する場合、前駆物質として第1物質と第2物質との混合物、または第1物質と第3物質との混合物を使用することができ、単独で二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを構成する2つの金属の合金(第3物質)を使用することもできる。前記第1物質と第2物質との混合物は、第1物質の金属酸化物と第2物質の金属酸化物、第1物質の金属物質と第2物質の金属酸化物、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属酸化物、第1物質の金属酸化物と第2物質の金属物質、第1物質の金属物質と第2物質の金属物質、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属物質、第1物質の金属酸化物と第2物質のハロゲン化金属、第1物質の金属物質と第2物質のハロゲン化金属、または、第1物質のハロゲン化金属と第2物質のハロゲン化金属を混合した混合物であることもできる。本実施形態においては、好ましくは、第1物質の金属酸化物と第2物質の金属酸化物、第1物質の金属物質と第2物質の金属酸化物、第1物質の金属酸化物と第2物質の金属物質、または、第1物質の金属物質と第2物質の金属物質とを混合した混合物を使用する。
【0034】
また、第1物質と第3物質との混合物は、第1物質の金属酸化物と第3物質の二元合金物質、第1物質の金属物質と第3物質の二元合金物質、または第1物質のハロゲン化金属と第3物質の二元合金物質を混合した混合物であることもできる。ただ、好ましくは、第1物質の金属酸化物と第3物質の二元合金物質または第1物質の金属物質と第3物質の二元合金物質を使用する。
【0035】
また、前記前駆物質として第3物質の二元合金物質を単独で使用することもできる。
【0036】
前記混合物の混合状態は、粒子形態を有する第1物質及び第2物質が互に混合されていることだけの意味ではなく、反応炉上において前記2つの物質が隣接する位置(同じ温度が保持される位置)に置かれることを包含する意味である。
【0037】
殊に、ハロゲン化金属を前駆物質として利用する場合、前記第1物質のハロゲン化金属及び前記第2物質を使用するとき、前記両物質が物理的に分離された状態で前記反応炉の前端部に位置させることが好ましい。ここで、前記第1物質のハロゲン化金属と前記第2物質とが物理的に分離された状態で反応炉の前端部にそれぞれ位置させる理由は、第1物質のハロゲン化金属と第2物質とがそれぞれ異なるるつぼに収納されて互に異なる温度を保持しながら、ナノワイヤまたはナノベルトの合成にそれぞれ作用することになるためである。これは、ハロゲン化金属の揮発性が、金属、異種金属及び金属酸化物に比べて大きい値を有するため、前記不活性ガスの流れに従って、前記基板上に移動するハロゲン化金属の気体の量を調節するためである。この場合、前駆物質として、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属酸化物、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属物質、または、第1物質のハロゲン化金属と第2物質のハロゲン化金属が使用されるが、好ましくは、第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属酸化物、または第1物質のハロゲン化金属と第2物質の金属物質を使用する。また、第1物質のハロゲン化金属と第3物質の二元合金物質を使用することもできる。前記のように反応炉の前端部に物理的に分離された状態で位置させた前記第1物質のハロゲン化金属と前記第2物質(または第3物質)において、前記第1物質のハロゲン化金属は、500〜800℃に保持され、前記第2物質(または第3物質)は800〜1200℃に保持されることが好ましく、ナノワイヤの場合では、前記基板が700〜1100℃に保持され、ナノベルトの場合では、前記基板が100〜200℃に保持されることが好ましい。このとき、反応炉を構成する温度調節装置が単一である場合は、管内のユニフォームゾーン(uniform zone)に前駆物質を位置させ、前記前駆物質と前記ユニフォームゾーンとの距離を調節して他の物質または基板を位置させることにより温度を調節することができる。また、個別的に加熱体と温度調節装置を設ける場合は、保持しようとする温度をそれぞれ温度調節装置と加熱体とを利用して調節することができる。
【0038】
前記第1物質または第2物質のハロゲン化金属は、フッ化金属、塩化金属、臭化金属またはヨウ化金属から選択されたものであり、好ましくは、ハロゲン化銀、ハロゲン化金、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化パラジウムまたはハロゲン化テルルである。前記ハロゲン化銀は、フッ化銀、塩化銀、臭化銀またはヨウ化銀から選択されたものであり、前記ハロゲン化金は、フッ化金、塩化金、臭化金またはヨウ化金から選択されたものであり、前記ハロゲン化コバルトは、フッ化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルトまたはヨウ化コバルトから選択されたものであり、前記ハロゲン化パラジウムは、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウムまたはヨウ化パラジウムから選択されたものであり、前記ハロゲン化テルルは、フッ化テルル、塩化テルル、臭化テルルまたはヨウ化テルルから選択されたものである。
【0039】
前記第1物質または第2物質の金属酸化物は、好ましくは、酸化銀、酸化金、酸化コバルト、酸化パラジウムまたは酸化テルルである。このとき、前記酸化金、酸化コバルト、酸化パラジウムまたは酸化テルルは、常温常圧下で、熱力学的に安定した量論比を有する酸化物であることがあり、金属による点欠陥または酸素による点欠陥に起因する前記の安定した量論比を有していないこともある。
【0040】
前記第1物質または第2物質の金属物質は、好ましくは、銀、金、コバルト、パラジウムまたはテルルである。
【0041】
前記第3物質の二元合金物質は、好ましくは、PdとAuの合金、CoとAgの合金、AgとTeの合金、またはBiとTeの合金であり、前記PdとAuの合金、CoとAgの合金、またはAgとTeの合金は金属間化合物、化合物、固溶体であることができる。また、前記合金の組成は、製造しようとするナノワイヤまたはナノベルトの組成と類似することが好ましいが、製造しょうとするナノワイヤまたはナノベルトの組成と異なっても構わない。
【0042】
また、前記半導体または不導体の単結晶基板は、前記の熱処理条件において、化学的/熱的に安定した半導体または不導体であれば、全てが使用可能とするが、好ましくは、シリコン単結晶、ゲルマニウム単結晶、または、シリコンゲルマニウム単結晶から選択された4族単結晶、ガリウム砒素単結晶、インジウムリン単結晶、または、ガリウムリン単結晶から選択された3−5族単結晶、2−6族単結晶、4−6族単結晶、サファイア単結晶または二酸化ケイ素単結晶から選択された単結晶基板を使用することが好ましい。
【0043】
しかし、前記基板は、単純に基板上部においてナノワイヤまたはナノベルトが形成される空間を提供する役割を行うだけであるため、必要によって上述した単結晶基板物質の多結晶体を使用しても良い。
【0044】
本発明の製造方法の優秀性を実験を通じて立証するために、本発明の製造方法に従って、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤ及びBi1Te1単結晶ナノベルトをそれぞれ製造(実施例1、2、3及び4)した。
【0045】
下記の実施例1は、ハロゲン化前駆物質を使用せずに、二元合金ナノワイヤを製造する代表的な実施例であり、同実施例2は、ハロゲン化前駆物質を使用して二元合金ナノワイヤを製造する代表的な実施例であり、同実施例3は、製造しようとする二元合金ナノワイヤの二元合金物質を使用して二元合金ナノワイヤを製造する代表的な実施例であり、同実施例4は、製造しようとする二元合金ナノベルトの二元合金物質を使用して二元合金ナノベルトを製造する代表的な実施例である。
【0046】
上述の後記する実施例3においては、前駆物質として二元合金物質(Ag2Te)のみを使用しているが、二元合金物質(Ag2Te)と金属(Ag)または二元合金物質と金属酸化物(Ag2O3)とを混合して使用することができる。また、後記する実施例4においては、前駆物質として二元合金物質(Bi1Te1)のみを使用しているが、二元合金物質(Bi1Te1)と金属(Bi)または二元合金物質と金属酸化物(Bi2O3)とを混合して使用することができる。
【0047】
(実施例1)
反応炉において、気相輸送法によりPdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤを合成した。
【0048】
前記反応炉は、前端部と後端部に区別されるとともに、個別的に加熱体と温度調節装置を設けて構成されている。反応炉内の管は、直径1インチ、長さ60cmサイズの石英材質のものを使用した。
【0049】
反応炉の前端部の中に、前駆物質であるAu2O3(Sigma−Aldrich社、334057製品)0.03gとPdO(Sigma−Aldrich社、203971製品)0.03gとを混合させた混合物を収納した高純度アルミナ材質のボート型容器を位置させた。また、反応炉の後端部の中には、サファイア単結晶基板(表面0001)を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部から導入されて反応炉の後端部に排気される。なお、反応炉の後端部には真空ポンプが設置され、該真空ポンプを利用して石英管内の圧力を5torrに保持し、MFC(Mass Flow Controller)を利用して150sccmのArが流れるようにした。
【0050】
反応炉の前端部(前駆物質が収納されたアルミナボート)の温度は、1100℃に保持し、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は、950℃に保持した状態で30分間の熱処理によって、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤを製造した。
【0051】
(実施例2)
反応炉において、気相輸送法により、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤを合成した。
【0052】
前記実施例1と同様に構成されている反応炉を使用した。
【0053】
前駆物質としてCoCl2(Sigma−Aldrich社、449776製品)0.01gとAg2O(Sigma−Aldrich社、22163製品)0.3gを使用し、前記 CoCl2とAg2Oをそれぞれ高純度アルミナ材質のボート型容器に収納して反応炉の前端部に位置させた。また、反応炉の後端部の中には、Si単結晶基板(表面100)を位置させた。また、前記反応炉の前端部の中にAu2O3が収納されたアルミナるつぼを位置させた。
【0054】
アルゴン気体は、反応炉の前端部から導入されて反応炉の後端部に排気される。また、反応炉の後端部には真空ポンプが設置され、該真空ポンプを利用して石英管内の圧力を15torrに保持し、MFCを利用して500sccmのArが流れるようにした。
【0055】
反応炉の前端部(反応炉の中の位置)の温度は、1000℃に保持して前記Ag2Oが収納されたアルミナるつぼが1000℃に保持されるようにし、前記Ag2Oが収納されたアルミナるつぼの位置を基準にして4cmの間隔をおいて、前記CoCl2が収納されたアルミナるつぼを位置させて、前記CoCl2が収納されたアルミナるつぼが650℃の温度を保持するようにするとともに、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は、800℃を保持した状態で30分間の熱処理によってCoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤを製造した。本実施例の理解のために、実施例2の前駆物質及び基板における熱処理の構成を図1に示した。
【0056】
(実施例3)
反応炉において気相輸送法によりAg2Te単結晶ナノワイヤを合成した。
【0057】
前記実施例1と同様に構成されている反応炉を使用した。
【0058】
反応炉の前端部の中に、前駆物質であるAg2Te(Sigma−Aldrich社、400645製品)0.05gが収納された高純度アルミナ材質のボート型容器を位置させた。また反応炉の後端部の中には、シリコン単結晶基板(表面100)を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部から導入されて反応炉の後端部に排気される。また、反応炉の後端部には真空ポンプが設置され、前記真空ポンプを利用して石英管内の圧力を10torrに保持し、MFCを利用して200sccmのArが流れるようにした。
【0059】
反応炉の前端部(前駆物質が収納されたアルミナボート)の温度は、1000℃に保持し、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は、800℃に保持した状態で30分間の熱処理によって、Ag2Te単結晶ナノワイヤを製造した。
【0060】
(実施例4)
反応炉において、気相輸送法によりBi1Te1単結晶ナノベルトを合成した。
【0061】
前記実施例1と同様に構成されている反応炉を使用した。
【0062】
反応炉の前端部の中に、前駆物質であるBi2Te3(Alfa Aesar社、44077製品)0.05gが収納された高純度アルミナ材質のボート型容器を位置させた。また、反応炉の後端部の中には、シリコン単結晶基板(表面100)を位置させた。アルゴン気体は、反応炉の前端部から導入されて反応炉の後端部に排気される。また、反応炉の後端部には真空ポンプが設置され、前記真空ポンプを利用して石英管内の圧力を10torrに保持し、MFCを利用して200sccmのArが流れるようにした。反応炉の前端部(前駆物質が収納されたアルミナボート)の温度は、600℃に保持し、反応炉の後端部(シリコン基板)の温度は、150℃に保持した状態で30分間の熱処理によって、Bi1Te1単結晶ナノベルトを製造した。
【0063】
以上、前記実施例1〜4によって製造された二元合金単結晶ナノワイヤ及びナノベルトを分析して、本発明の製造方法によって製造された二元合金単結晶ナノ構造体の品質、形状及び純度などを調査・分析した。
【0064】
先ず、図2〜図5は、実施例1を通じて製造されたPdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤを分析・測定した結果である。
【0065】
図2は、サファイア単結晶基板上にて製造されたPdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)ナノワイヤのSEM写真である。図2から分るように、多量のナノワイヤの直径が50〜150nm程度であり、30um以上(30〜50um)の長さを有する均一なサイズでサファイア単結晶基板と分離されて製造されていることを分る。また、ナノワイヤの長手軸方向に真直ぐ伸びた形状を有し、ナノワイヤ同士の固まりがなく個別的に分離可能のナノワイヤが製造されるとともに、ナノワイヤの長手軸が基板の表面に対して略垂直状の配向性を有していることを分る。
【0066】
図3は、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)ナノワイヤのXRD(X−Ray Diffraction)による結果を示している。前記図3の回折結果は、Pd金属ともAu金属とも一致しない結晶性を有していることを分る。図4のTEM装備に装着されたEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)を利用したナノワイヤの成分分析結果である。ここで分るように、グリッドのような測定装備の特性上、付随的に測定された物質を除外すれば、製造されたナノワイヤがPdとAgだけでなっていることを確認することができる。また、本発明の製造方法によって製造された多数のナノワイヤをTEM装備に装着されたEDSによる分析の結果、PdxAu1-xのナノワイヤが製造され、前記xは0.01≦x≦0.99の組成を有していることを分る。
【0067】
図5は、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)ナノワイヤのTEM分析結果であり、図5(a)はナノワイヤの暗視野像(dark field image)であり、図5(b)は図5(a)におけるナノワイヤの高倍率TEM写真であり、図5(c)は図5(a)のナノワイヤのSAED(Selected Area Electron Diffraction)パターンである。図5(a)及び図5(b)を通じて、滑らかな表面を有し、均一の太さのナノワイヤが形成されていることを確認することができ、図5(c)を通じては、製造されたナノワイヤが面心立方構造を有することと、[100]方向の成長方向を有する単結晶体であることを確認することができる。
【0068】
前記図2〜図5の結果を通じて、PdとAuが固溶体をなした面心立方構造の特徴を有する単結晶体としての高品質かつ欠陥のない完璧な形状のナノワイヤが製造されていることを確認することができる。
【0069】
図6〜図8は、実施例2によって製造されたCoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤを分析・測定した結果である。
【0070】
図6は、シリコン単結晶基板上に製造されたCoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤのSEM写真である。図6から分るように、ナノワイヤとプレートが同時に製造され、図6の左側上部に図示した高倍率SEM写真から分るように、直径が200〜300nm程度であり、数um以上の長さを有する均一なサイズのナノワイヤがサファイア単結晶基板と分離されて多量に製造されていることを確認することができる。長手軸方向に真直ぐ伸びた形状を有し、ナノワイヤ同士の固まりがなく個別的に分離可能のナノワイヤが製造されていることを確認することができる。図7のXRD回折結果から分るように、製造されたナノワイヤが面心立方構造(FCC)を有し、バルクAgの回折結果と一致していることを分る。
【0071】
図8は、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)ナノワイヤの暗視野像であり、図8の左側下部に図示された挿入図面は、図8のナノワイヤのSAEDパターンである。図8の結果から分るように、ナノワイヤが面心立方構造(FCC)の[01−1]成長方向を有する単結晶体であることを分る。
【0072】
図9は、TEM装備に装着されたEDSを利用したナノワイヤの成分分析結果であり、図9の(a)は図9のナノワイヤのAg EDS mappingの結果であり、図9の(b)は図9のナノワイヤのCo EDS mappingの結果である。図9の(c)は図9のナノワイヤの上部に表示した白の四角形部分のEDS結果であり、図9の(d)は同じく下部に表示した白の四角形部分のEDS結果である。図9の(a)〜(d)から分るように、グリッドのような測定装備の特性上、付随的に測定された物質を除外すれば、製造されたナノワイヤがCoとAgだけで構成され、CoとAgがナノワイヤ全体に亘って均一に分布されていることを分る。また、本発明の製造方法によって製造された多数のナノワイヤのEDSによる分析結果、CoyAg1-yのナノワイヤが製造され、前記yは0.01≦y≦0.5の組成を有していることを分る。
【0073】
図6〜図9の結果を通じてCoとAgが固溶体をなした面心立方構造を有する単結晶体としての高品質かつ完璧な形状のナノワイヤが製造される。
【0074】
図10〜図13は、実施例2を通じて製造されたAg2Teナノワイヤに対する測定結果である。
【0075】
図10は、サファイア単結晶基板上に製造されたAg2TeナノワイヤのSEM写真であり、図10から分るように多量のナノワイヤの直径が150〜200nm程度であり、数um以上の長さを有する均一なサイズでサファイア単結晶基板と分離されて製造されていることを分る。また、ナノワイヤの長手軸方向に真直ぐ伸びた形状を有し、ナノワイヤ同士の固まりがなく個別的に分離可能のナノワイヤが製造されている。図11のXRDによる結果を通じてバルクのAg2Teと同一の構造を有する単純な単斜晶構造の化合物であるAg2Teナノワイヤが製造されていることを分る。
【0076】
図12は、Ag2TeナノワイヤのTEM分析結果であり、図12(a)はナノワイヤの暗視野像及びSAEDパターンであり、図12(b)は、図12(a)のナノワイヤのHRTEM(High Resolution Transmission Microscopy)写真であり、図12(b)の右側上部に挿入されたパターンは、図12(b)の高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)パターンである。図12(a)を通じて滑らかな表面を有し、均一なサイズのナノワイヤが形成され、製造されたナノワイヤが[−302]成長方向を有する単純単斜晶構造の単結晶体であることを確認することができる。図12(b)のHRTEM写真を通じて製造されたナノワイヤが欠陥のない高品質の単結晶体であり、ナノワイヤの(010)面間距離がバルクのAg2Te(010)面間距離と同一の4.46Aであることを確認することができる。図13のTEM装備に付着されたEDSを利用したナノワイヤの成分分析結果を通じて分るように、グリッドのように測定装備の特性上、付随的に測定された物質を除外すると、製造されたナノワイヤがAgとTeだけで構成され、AgとTeの組成比が2:1であることを確認することができる。
【0077】
図10〜図13の結果によって、AgとTeが2:1の組成比を有する単純単斜晶構造の化合物であり、完璧な形状と高品質の単結晶体としてのAg2Teナノワイヤが製造されていることを分る。
【0078】
図14はBi1Te1ナノベルトのTEM分析結果であり、(a)はナノベルトの暗視野像とSAEDパターンである。
【0079】
図14の(a)を通じて滑らかな表面を有し、均一な太さのナノベルトが形成されていることを確認することができる。また、前記図14の(b)はナノベルトの高倍率TEM写真であり、挿入されたイメージは高速フーリエ変換のパターンである。
【0080】
図14の(a)及び(b)によって合成されたナノベルトが六方晶系の構造を有し、[110]方向の成長方向を有する単結晶体であることを確認することができる。
【0081】
図15は、本発明の実施例4によって製造されたナノベルトのTEM装備に付着されたEDSを利用するナノベルトの成分分析結果である。
【0082】
図16は、本発明の実施例4によって製造されたナノベルトのXRDの結果を示したグラフ図である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施例2の前駆物質及び基板の熱処理構成の模式図である。
【図2】本発明の実施例1によって製造されたナノワイヤのSEM写真図である。
【図3】本発明の実施例1によって製造されたナノワイヤのXRD結果図である。
【図4】本発明の実施例1によって製造されたナノワイヤのTEM装備に付着されたEDSによる結果図である。
【図5】本発明の実施例1によって製造されたナノワイヤのTEM分析結果図であって、(a)はナノワイヤの暗視野像であり、(b)は(a)のナノワイヤの高倍率TEM写真図であり、(c)は(a)のナノワイヤのSAEDパターンを示した図面である。
【図6】本発明の実施例2によって製造されたナノワイヤのSEM写真図である。
【図7】本発明の実施例2によって製造されたナノワイヤのXRDの結果図である。
【図8】本発明の実施例2によって製造されたナノワイヤの暗視野像であって、図面左側の下部に挿入された図面はナノワイヤのSAEDパターンを示した図面である。
【図9】本発明の実施例2によって製造されたナノワイヤのTEM装備に付着されたEDSを利用したナノワイヤの成分分析結果図であって、(a)はナノワイヤのAg EDS mappingの結果図であり、(b)はナノワイヤのCo EDS mappingの結果図であり、(c)はナノワイヤの上部に表示した白の四角形部分のEDS結果図であり、(d)は下部に表示した白の四角形部分のEDS結果図である。
【図10】本発明の実施例3によって製造されたナノワイヤのSEM写真図である。
【図11】本発明の実施例3によって製造されたナノワイヤのXRD結果図である。
【図12】本発明の実施例3によって製造されたナノワイヤのTEM分析結果図であって、(a)はナノワイヤの暗視野像及びSAEDパターンを示した図面であり、(b)は(a)のナノワイヤのHRTEM写真図であり、(b)の右側上部に挿入されたパターンは、(b)の高速フーリエ変換のパターンを示した図面である。
【図13】本発明の実施例3によって製造されたナノワイヤのTEM装備に付着されたEDSによる結果図である。
【図14】Bi1Te1ナノベルトのTEM分析結果図であって、(a)はナノワイヤの暗視野像とSAEDパターンを示した図面である。
【図15】本発明の実施例4によって製造されたナノベルトのTEM装備に付着されたEDSを利用するナノベルトの成分分析結果図である。
【図16】本発明の実施例4によって製造されたナノベルトのXRDの結果を示すグラフ図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二元合金ナノワイヤまたはナノベルトの前記二元合金を構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第2物質、または、前記二元合金の二元合金物質を含めてなる第3物質において、
前記第1物質及び第3物質から選択された2つの物質、または、前記選択された2つの物質の混合物を前駆物質に用いて、
反応炉の前端部に位置させた前記前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体の単結晶基板を、不活性気体が流れる雰囲気下で熱処理し、前記単結晶基板上に二元合金(binary alloy)単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを形成することを特徴とする二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項2】
前記前駆物質は、第1物質と第2物質との混合物、第1物質と第3物質との混合物、または、第3物質であることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1物質または第2物質のハロゲン化金属は、フッ化金属(metal fluoride)、塩化金属(metal chloride)、臭化金属(metal bromide)またはヨウ化金属(metal iodide)から選択されることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項4】
前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部の方に10〜600sccm流すことを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理は、2〜30torrの圧力下で実施されることを特徴とする請求項4に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項6】
前記前駆物質は、500〜1200℃に保持されるとともに、前記単結晶基板は、700〜1100℃に保持されることを特徴とする請求項5に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項7】
前記前駆物質は、500〜1200℃に保持されるとともに、前記単結晶基板は、100〜200℃に保持されることを特徴とする請求項5に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記前駆物質が、前記第1物質のハロゲン化金属及び前記第2物質であり、前記第1物質のハロゲン化金属と前記第2物質とを物理的に分離して前記反応炉の前記前端部に位置させることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第1物質のハロゲン化金属は、500〜800℃に保持され、前記第2物質は800〜1200℃に保持され、前記単結晶基板は、700〜1100℃に保持されることを特徴とする請求項8に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第1物質または第2物質としての金属酸化物は、酸化銀、酸化金、酸化コバルト、酸化パラジウムまたは酸化テルルであることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記第1物質または第2物質としての金属物質は、銀、金、コバルト、パラジウムまたはテルルであることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項12】
前記第1物質または第2物質としてのハロゲン化金属は、ハロゲン化銀、ハロゲン化金、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化パラジウムまたはハロゲン化テルルであることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項13】
前記第3物質としての二元合金物質は、PdとAuの合金、CoとAgの合金、AgとTeの合金またはBiとTeの合金であることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項14】
前記単結晶基板上に形成される二元合金単結晶ナノワイヤは、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤまたはBi1Te1単結晶ナノベルトであることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項15】
前駆物質を利用して触媒条件下での気相合成法によって製造された金属及び半金属から選択された2つの元素の単結晶体の固溶体、または単結晶体の化合物である二元合金ナノ構造体。
【請求項16】
前記前駆物質は、前記二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第2物質、または前記二元合金の二元合金物質を含めてなる第3物質において、前記第1物質乃至第3物質から選択された2つの物質、または前記選択された2つの物質の混合物であることを特徴とする請求項15に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項17】
前記気相合成法は、前記前駆物質が500〜1200℃に保持されるとともに、二元合金単結晶ナノワイヤが形成される基板が、700〜1100℃に保持され、2〜30torrの圧力下で前記前駆物質から前記基板の方に不活性気体を10〜600sccm流す熱処理であることを特徴とする請求項15に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項18】
また、前記気相合成法は、前記前駆物質が500〜1200℃に保持されるとともに、二元合金単結晶ナノベルトが形成される基板が、100〜200℃に保持され、2〜30torrの圧力下で前記前駆物質から前記基板の方に不活性気体を10〜600sccm流す熱処理であることを特徴とする請求項15に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項19】
前記二元合金ナノ構造体は、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤ、またはBi1Te1単結晶ナノベルトであることを特徴とする請求項15に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項20】
前記PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(FCC;Face Centered Cubic)であることを特徴とする請求項19に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項21】
前記PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤは、固溶体であることを特徴とする請求項20に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項22】
前記CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤは、面心立方構造であることを特徴とする請求項19に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項23】
前記CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤは、固溶体であることを特徴とする請求項22に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項24】
前記Ag2Te単結晶ナノワイヤは、単純単斜晶構造(Simple monoclinic)であることを特徴とする請求項19に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項25】
前記Ag2Te単結晶ナノワイヤは、化合物であることを特徴とする請求項24に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項26】
前記Bi1Te1単結晶ナノベルトは、六方晶系(hexagonal)の構造であることを特徴とする請求項19に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項1】
二元合金ナノワイヤまたはナノベルトの前記二元合金を構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第2物質、または、前記二元合金の二元合金物質を含めてなる第3物質において、
前記第1物質及び第3物質から選択された2つの物質、または、前記選択された2つの物質の混合物を前駆物質に用いて、
反応炉の前端部に位置させた前記前駆物質と、反応炉の後端部に位置させた半導体または不導体の単結晶基板を、不活性気体が流れる雰囲気下で熱処理し、前記単結晶基板上に二元合金(binary alloy)単結晶ナノワイヤまたはナノベルトを形成することを特徴とする二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項2】
前記前駆物質は、第1物質と第2物質との混合物、第1物質と第3物質との混合物、または、第3物質であることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1物質または第2物質のハロゲン化金属は、フッ化金属(metal fluoride)、塩化金属(metal chloride)、臭化金属(metal bromide)またはヨウ化金属(metal iodide)から選択されることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項4】
前記不活性気体は、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部の方に10〜600sccm流すことを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理は、2〜30torrの圧力下で実施されることを特徴とする請求項4に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項6】
前記前駆物質は、500〜1200℃に保持されるとともに、前記単結晶基板は、700〜1100℃に保持されることを特徴とする請求項5に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項7】
前記前駆物質は、500〜1200℃に保持されるとともに、前記単結晶基板は、100〜200℃に保持されることを特徴とする請求項5に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記前駆物質が、前記第1物質のハロゲン化金属及び前記第2物質であり、前記第1物質のハロゲン化金属と前記第2物質とを物理的に分離して前記反応炉の前記前端部に位置させることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第1物質のハロゲン化金属は、500〜800℃に保持され、前記第2物質は800〜1200℃に保持され、前記単結晶基板は、700〜1100℃に保持されることを特徴とする請求項8に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第1物質または第2物質としての金属酸化物は、酸化銀、酸化金、酸化コバルト、酸化パラジウムまたは酸化テルルであることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記第1物質または第2物質としての金属物質は、銀、金、コバルト、パラジウムまたはテルルであることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項12】
前記第1物質または第2物質としてのハロゲン化金属は、ハロゲン化銀、ハロゲン化金、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化パラジウムまたはハロゲン化テルルであることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項13】
前記第3物質としての二元合金物質は、PdとAuの合金、CoとAgの合金、AgとTeの合金またはBiとTeの合金であることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項14】
前記単結晶基板上に形成される二元合金単結晶ナノワイヤは、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤまたはBi1Te1単結晶ナノベルトであることを特徴とする請求項1に記載の二元合金ナノ構造体の製造方法。
【請求項15】
前駆物質を利用して触媒条件下での気相合成法によって製造された金属及び半金属から選択された2つの元素の単結晶体の固溶体、または単結晶体の化合物である二元合金ナノ構造体。
【請求項16】
前記前駆物質は、前記二元合金ナノワイヤまたはナノベルトを構成する1金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第1物質、前記二元合金を構成する他の金属の金属酸化物、金属物質またはハロゲン化金属を含めてなる第2物質、または前記二元合金の二元合金物質を含めてなる第3物質において、前記第1物質乃至第3物質から選択された2つの物質、または前記選択された2つの物質の混合物であることを特徴とする請求項15に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項17】
前記気相合成法は、前記前駆物質が500〜1200℃に保持されるとともに、二元合金単結晶ナノワイヤが形成される基板が、700〜1100℃に保持され、2〜30torrの圧力下で前記前駆物質から前記基板の方に不活性気体を10〜600sccm流す熱処理であることを特徴とする請求項15に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項18】
また、前記気相合成法は、前記前駆物質が500〜1200℃に保持されるとともに、二元合金単結晶ナノベルトが形成される基板が、100〜200℃に保持され、2〜30torrの圧力下で前記前駆物質から前記基板の方に不活性気体を10〜600sccm流す熱処理であることを特徴とする請求項15に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項19】
前記二元合金ナノ構造体は、PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤ、CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤ、Ag2Te単結晶ナノワイヤ、またはBi1Te1単結晶ナノベルトであることを特徴とする請求項15に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項20】
前記PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤは、面心立方構造(FCC;Face Centered Cubic)であることを特徴とする請求項19に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項21】
前記PdxAu1-x(前記xは0.01≦x≦0.99)単結晶ナノワイヤは、固溶体であることを特徴とする請求項20に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項22】
前記CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤは、面心立方構造であることを特徴とする請求項19に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項23】
前記CoyAg1-y(前記yは0.01≦y≦0.5)単結晶ナノワイヤは、固溶体であることを特徴とする請求項22に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項24】
前記Ag2Te単結晶ナノワイヤは、単純単斜晶構造(Simple monoclinic)であることを特徴とする請求項19に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項25】
前記Ag2Te単結晶ナノワイヤは、化合物であることを特徴とする請求項24に記載の二元合金ナノ構造体。
【請求項26】
前記Bi1Te1単結晶ナノベルトは、六方晶系(hexagonal)の構造であることを特徴とする請求項19に記載の二元合金ナノ構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−35474(P2009−35474A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164209(P2008−164209)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]