説明

二座(Bipodal)配位子を有する金属錯体

本発明は、二極性配位子を有する新規の金属錯体に関する。このような化合物は、最も広い意味の電子産業に関連する、一連の異なるアプリケーションにおける機能性材料として利用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
キレート錯体および有機金属化合物は、最も広い意味において電子産業とされ得る多くの様々なアプリケーションにおける機能性材料として、近い将来用いられるであろう。有機成分に基づくエレクトロルミネセンスデバイス(構成の一般的な記載は、US 4,539,507 および US 5,151,629 を参照のこと)、およびそれらの個々の構成成分、例えば有機発光ダイオード(OLED)について言えば、パイオニア社およびコダック社製の「有機ディスプレイ」を有する自動車用ラジオおよびデジタルカメラからも確認されるように、市場への導入が既に始まっている。このタイプのさらなる製品も、導入され始めているところである。しかしながら、これらのディスプレイを、現在市場を支配する液晶ディスプレイ(LCD)に対する真の競合物にするためには、かなりの改善がなお必要である。
【0002】
この点における開発は、金属キレート錯体に基づく電子輸送材料および青色一重項エミッタの改良であり、ここでは、アルミニウムキレート錯体およびランタンキレート錯体が、特に興味深い。
【0003】
近年持ち上がっているさらなる開発は、蛍光に代えてリン光を示す有機金属錯体の使用である(M.A.バルドー(Baldo)、S.ラマンスキー(Lamansky)、P.E.バローズ(Burrows)M.E.トンプスン(Thompson)、S.R.フォレスト(Forrest)、Appl. Phys. Lett., 1999, 75, 4-6)。理論的なスピン統計に基づく理由のために、リン光エミッタとして有機金属化合物を用いると、最大で4倍までのエネルギー効率およびパワー効率が可能となる。この開発が成功するか否かは、OLEDにおいてこれらの利点(一重項発光=蛍光と比較した三重項発光=リン光)を提供することができる、対応するデバイス組成物を見出すことができるかどうかという点に依存する。ここで述べる実際のアプリケーションに対する必須の条件は、とりわけ、長い寿命、熱に対する高い安定性、および携帯アプリケーションを可能にするための低い使用電圧および駆動電圧である。
【0004】
いずれにしても、対応するキレート錯体または有機金属化合物に至る効率のよい化学的な経路が必要である。しかしながら、このことは、貴金属であるルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金および金が希少であるということを背景に対して非常に重要である。
【0005】
今日まで、着色要素として蛍光エミッタまたはリン光エミッタを含むOLEDの2つの基本のタイプの構造(これらは、その層構造の点で異なる)は、文献中に記載されている。これらのOLEDのタイプは、例えば、WO 04/058911 中に詳細に記載されている。
【0006】
従来技術によるOLEDの特性データは、とりわけ、次の欠点を示す。すなわち、
1.寿命は、ほとんどの場合に、あまりにも短すぎ、これは、長寿命を有するOLEDの市場への導入の妨げとなっている。
2.効率は、しばしば、輝度の向上に伴い相当に低下することが、効率/輝度曲線から明らかである。このことは、実際には必要である非常に高い輝度は、高いパワー消費によってのみ得ることができるということを意味する。しかしながら、大きなパワー消費は、携帯用の装置(携帯電話、ラップトップ等)について高いバッテリーパワーを要求する。加えて、大部分が熱に変換される大きなパワー消費は、ディスプレイに熱的な損傷をもたらし得る。
【0007】
上に述べたOLEDデバイスにおいて、上記した機能的な材料は、最適化されてきた、または集中的に最適化されているところである。
【0008】
かねてから、金属錯体は、ETM(電子輸送材料)(例えば、AIQ、C.W.タン(Tang)等、Applied Phys. Lett., 1987, 51(12), 913;ZnQ、S.−J.ユング(Jung)等、J. Korean Electrochemical Society, 2000, 3(1),1)として、HBM(正孔障壁材料)(例えば、B−AIQ、R.クォン(Kwong)等、Applied Physics Letters, 2002, 81(1), 162)として、EML(発光層)(例えば、B−AIQ、C.H.チェン(Chen)等、Proceedings of SPIE-The International Society for Optical Engineering, 1998, 3421, 78)として、一重項エミッタ(例えば、AIQ、ZnQ、および他の錯体、S.トキトウ(Tokito)等、Synthetic Metals, 2000, 111-112, 393)として、および三重項エミッタ(例えば、Ir(PPy)、WO 00/70655 ;例えば、Ir(TPy)およびIr(BTPy)、S.オカダ等、Proceedings of the SID, 2002, 52.2, 1360)として用いられている。同様に、白金錯体に基づく三重項エミッタが、かねてから知られており、四座大環状配位子の錯体(例えば、PtOEP、L.R.ミルグロム(Milgrom)、Polyhedron, 1988, 7(1), 57、M.A.バルドー、Nature, 1998, 395(6698), 151-154)が、二座配位子の錯体(例えば、ブルクス(Brooks)等、Inorg. Chem., 2002, 41, 3055-3066 )に加えて知られている。二価の白金(d構造)のこれらの錯体は、大抵の白金(II)錯体のように、平面構造、またはほぼ平面構造を有する。固体において、これらの平面錯体単位は、強い、しばしば協同的な配位子−配位子、金属−金属、または配位子−金属相互作用が生じるといった方法で凝集する。
【0009】
それぞれの分子に特有な個々の欠点に加えて、既知の金属錯体のクラスは、一般的な欠点を有し、これを、簡潔に以下に記載する。
【0010】
1.既知の金属錯体の多く、とりわけ、アルミニウム、または亜鉛のようなd10構造を有する遷移金属のような主族金属を含有するものは、時としてかなりの加水分解活性を有し、これは、金属錯体が、短時間空気に曝されただけで、かなり分解するということを明らかにし得る。
一方で、例えば、電子輸送材料として用いられるAIQおよびZnQのようなものは、水を付加する傾向を有する。
これらの、および同様のアルミニウムおよび亜鉛錯体の高い吸湿性は、重大な実用上の不利な点である。標準状態下で合成し貯蔵するAIQも、ヒドロキシキノリン配位子に加えて、錯体分子につき1モルの水を常に含有する(例えば、H.シュミットバウア(Schmidbaur)等、Z.Naturforsch., 1991, 46b, 901-911 を参照のこと)。この水は、除去することが非常に難しい。OLEDにおける使用のために、AIQおよびZnQは、従って、複雑な、多工程の昇華プロセスにおける複雑な精製に供されなければならず、続いて、水を排除しながら保護ガス雰囲気下で貯蔵し取り扱わなければならない。さらに、個々のAIQのバッチの品質の大きなばらつき、および乏しい貯蔵安定性が、観察されている(S.カルク(Karg)、E−MRSコンファレンス、2000、ストラスブール)。
【0011】
2.既知の金属錯体の多くは、低い熱的安定性を有する。真空蒸着中、これは、必然的に有機熱分解生成物の遊離をもたらし、これは時として、少量であっても、OLEDの寿命を著しく縮める(例えば、R.G.チャールズ(Charles)、J. Inorg. Nucl. Chem., 1963, 25, 45 ;MQの熱的安定性にて)。
【0012】
3.固体中の錯体単位の強い相互作用、とりわけ、白金(II)のようなd金属の平面錯体の場合は、同様に、ドープの程度が、約0.1%を超える(これは、当該技術の現在の状況による実情である)場合に、発光層における錯体単位の凝集を引き起こす。この凝集は、(光学または電気的)励起時にいわゆるエキシマーまたは励起錯体を生じる。これらの凝集体は、しばしば、定まった形のない幅広い発光帯を有し、これは、純粋な基本色(RGB)を生じることを著しくより困難にするか、全く不可能にする。一般的に、この遷移についての効率もまた、低下する。
【0013】
4.加えて、発光色は、ドーピングの程度に強く依存し、特に大きな生産工場においては、かなりの技術的な努力をもって正確に制御するしかないパラメータであることは上記から明らかである。
【0014】
従って、上記の欠点を有さない代替化合物についての要求が存在する。
【0015】
驚くべきことに、四座キレート、非大環状配位子の金属錯体が、電子輸送材料、正孔障壁材料、ELにおけるマトリクス材、一重項エミッタまたは三重項エミッタとしての使用において優れた性質を有し、個別の、具体的な機能は、金属の適切な選択、および適切な関連配位子により決定される。このクラスの金属錯体、および光電子要素中の機能性材料としてのその使用は新規であり、今日までのところ文献中にも記載されておらず、しかし、その効率的な調製と、純物質としての入手可能性は、このため非常に重要である。
【0016】
従って、本発明は、構造2の四座キレート配位子Ligに配位した金属Metを含有することを特徴とする構造1の化合物に関する
【化13】

【化14】

【0017】
(式中、Vは架橋単位であり、第3主族、第4主族、第5主族および/または第6主族からの1〜40の原子を含有し、2つの配位子部位L1およびL2(これは、出現毎に同一であるか異なる)を互いに共有結合させることを特徴とし、ここで、2つの配位子部位L1およびL2は、構造3を満足し、L3は、出現毎に同一であるか異なり、単座または二座の中性またはモノアニオン性配位子であり、aは、0、1または2である)
【化15】

【0018】
(式中、Cy1およびCy2は、出現毎に同一であるか異なり、それぞれ、置換または無置換の、飽和、不飽和、または芳香族の同素環または複素環に相当し、これは、いずれの場合にも、環原子を介して、または同素環若しくは複素環に環外で結合した原子を介して、イオン的に、共有結合的に、または配位的に金属(Met)に結合している)。
【0019】
架橋Vは、構造1の単核金属錯体の形成を促進し、且つ配位ポリマーの形成は生じないか、または構造2の配位子と金属化合物との反応に対してわずかな程度生じるのみであることを特徴とする。
【0020】
同素環または複素環であるCy1およびCy2は、さらに、置換基を介して互いに結合していてもよく、従って、多環式の脂肪族または芳香族環構造を示してもよい。これらは、同様に、単結合を介する代わりに、共通の端を介して互いに結合していてもよい。
【0021】
電子的に中性であることを特徴とする、本発明による構造1の化合物が好ましい。
【0022】
L1=L2であることを特徴とする、本発明による構造1の化合物が好ましい。
【0023】
さらに、Cy1が、Cy2と同一でないことを特徴とする、本発明による構造1の化合物が好ましい。ここで2つの環のうち一方は、好ましくは、金属−炭素結合を介して結合しており、他方は、炭素以外のドナー原子を介して、特に好ましくはN、PまたはSを介して結合している。
【0024】
架橋単位Vが、第3主族、第4主族、第5主族および/または第6主族(IUPACによれば、13族、14族、15族および/または16族)からの1〜40の原子を含有するか、3〜6員の同素環または複素環であることを特徴とする、本発明による構造1の化合物が好ましい。これらは、架橋単位の骨格を形成する。架橋単位Vが、1〜6の架橋原子を含有するか、3〜6員の同素環または複素環であることを特徴とする、構造1の化合物が特に好ましい。ここで架橋単位Vは、非対称の構造を有していてもよく、すなわち、L1およびL2に対するVの結合は、同一である必要はない。
【0025】
Vが、BR、−(CR)RB(CR)−、−O−RB−O−、−O−(RO)B−O−、−CRO−RB−OCR−、−(CRCR)RB(CRCR)−、C=O、C=NR、C=S、CR、CR(OH)、CR(OR)、C(NR、−(CR)RC(CR)−、−(CRCR)RC(CRCR)−、−(SiR)RC(SiR)−、−(SiRCR)RC(CRSiR)−、−(CRSiR)RC(SiRCR)−、−(SiRSiR)RC(SiRSiR)−,シス−RC=CR、1,2−C、1,3−C、SiR、Si(OH)
Si(OR、−(CR)RSi(CR)−、−(CRCR)RSi(CRCR)−、−(SiR)RSi(SiR)−、−(SiRCR)RSi(CRSiR)−、−(CRSiR)RSi(SiRCR)−、−(SiRSiR)RSi(SiRSiR)−、RN、−(CR)RN(CR)−、−(CRCR)RN(CRCR)−、FP、FPO、RP、RAs、RSb、RBi、RPO、RAsO、RSbO、RBiO、RPSe、RAsSe、RSbSe、RBiSe、RPTe、RAsTe、RSbTe、RBiTe、−O−RPO−O−、−O−(RO)PO−O−、−CRO−RPO−OCR−、−OCR−RPO−CRO−、O、S、Se、−(CR)O(CR)−,−(CR)S(CR)−,−(CR)(O)S(CR)−、または−(CR)(O)S(CR)−、または対応する非対称類似体であり、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、NO、CN、1〜20のC原子を有する直鎖の、分岐の、若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、−O−、−S−、−NR−、または−CONR−により置き換えられてもよく、また、1以上のH原子は、Fにより置き換えられてもよい)、または1〜14のC原子を有するアリール基、アリールオキシ基、若しくはヘテロアリール基(これは、1以上の非芳香族のR基により置換されていてもよい)であり、ここで、複数の置換基Rは、さらなる単環または多環式の脂肪族または芳香族環構造を示してもよく、および
、Rは、出現毎に同一であるか異なり、Hまたは1〜20のC原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素基である
架橋単位Vが、特に好ましい。
【0026】
スキーム1による化合物(1)〜(8)のような金属錯体が特に好ましく、このそれぞれは、上記したような1つまたは2つのさらなる配位子L3を有していてもよい。
【化16】

【0027】
(式中、R、RおよびRは、上記したものと同じ意味を有し、他の記号および添え字は、以下の意味を有する。すなわち、
Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、La、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、CdまたはHgであり、
Lは、出現毎に同一であるか異なり、C、N、またはPであり、
Qは、出現毎に同一であるか異なり、N、O、S、Se、またはTeであり、
Tは、出現毎に同一であるか異なり、NまたはPであり、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CR、N、またはPであり、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、NR、O、S、Se、Te、SO、SeO、TeO、SO、SeO、またはTeOであり、
Zは、Vについて上記したものと同じ意味を有し、
cは、出現毎に同一であるか異なり、0または1である)。
【0028】
加えて、スキーム2による化合物(9)〜(12)が同様に好ましく、このそれぞれは、上記したように、1つまたは2つのさらなる配位子L3を有していてもよい。
【化17】

【0029】
(式中、記号および添え字であるM、L、Q、T、X、Y、Z、R、R、Rおよびcは、上記した意味を有する)。
【0030】
本発明は、さらに、化合物(1)、(2)、(3)および/または(4)のようなタイプの配位子を同時に有する化合物にも関し、すなわち、混合配位子系に関する。
【0031】
これらは、スキーム3による式(13)〜(30)により示され、このそれぞれは、上記したように、1つまたは2つのさらなる配位子L3を有していてもよい
【化18】

【化19】

【0032】
(式中、記号および添え字であるM、L、Q、T、X、Y、Z、R、R、Rおよびcは、上記した意味を有する)。
【0033】
構造1の化合物または化合物(1)〜(30)は、任意に、既に上記したような、さらなる単座または多座の、カチオン性、中性、またはアニオン性配位子を有していてもよい。これらは、配位子L3として記載される。
【0034】
存在する場合に、配位子L3が、二座キレート配位子であることを特徴とする、構造1の化合物または化合物(1)〜(30)が好ましい。
【0035】
本発明の好ましい態様において、L3は、配位子部位L1およびL2と同一であるか異なる、モノアニオン性配位子である。
【0036】
本発明のさらに好ましい態様において、L3は、構造(4)の配位子である
【化20】

【0037】
(式中、出現毎に同一であるか異なるRは、H、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、C〜C20のアリール基若しくはヘテロアリール基、またはC〜C20のアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基を示し、および1以上のH原子は、Fにより置き換えられてもよい)。
【0038】
記号M=Be、Mg、PtまたはZn、および添え字a=0である、本発明による化合物(1)〜(30)が好ましい。
【0039】
c=0およびM=Ptである、本発明による化合物(1)〜(30)が特に好ましい。
【0040】
さらに、記号M=RhまたはIr、特に好ましくはM=Ir、および二座のモノアニオン性配位子L3の場合には添え字a=1、または単座のモノアニオン性配位子L3の場合にはa=2である、本発明による化合物(1)〜(30)が好ましい。
【0041】
記号L=CまたはN、特に好ましくはL=Cである、本発明による化合物(1)〜(30)が、同様に好ましい。
【0042】
記号Q=OまたはSである、本発明による化合物(1)〜(30)が、同様に好ましい。
【0043】
記号T=Nである、本発明による化合物(1)〜(30)が、同様に好ましい。
【0044】
記号X=CRまたはNである、本発明による化合物(1)〜(30)が、同様に好ましい。
【0045】
記号Z=BR、CR、CO,SiR、RN、FP、FPO、RP、RPO、−CRCR−、−CR−O−CR−、−O−(OR)PO−O−、シス−CR=CR、−CR−BR−CR−、−CR−CO−CR−、−CR−CR−CR−、または−CR−NR−CRである、本発明による化合物(1)〜(30)が、同様に好ましい。
【0046】
記号R=H、F、Cl、Br、I、CN、1〜6のC原子を有する直鎖の、分岐の、環状のアルキル基若しくはアルコキシ基、または3〜10のC原子を有するアリール基若しくはヘテロアリール基(これは、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい)であり、ここで、同一の環上および2つの異なる環上の複数の置換基Rは、互いにさらなる単環または多環式の脂肪族環構造または芳香族環構造を形成してもよい、本発明による化合物(1)〜(30)が、同様に好ましい。
【0047】
化合物(1)〜(30)において、R基は、脂肪族環構造、オレフィン環構造、または芳香族環構造を示してもよい。
【0048】
R基が、化合物(1)〜(30)において芳香族環構造を示す場合には、これらは、好ましくは、ベンゼン、1−ナフタレン若しくは2−ナフタレン、1−アントラセン、2−アントラセン若しくは9−アントラセン、2−ピリジン、3−ピリジン若しくは4−ピリジン、2−ピリミジン、4−ピリミジン若しくは5−ピリミジン、2−ピラジン、3−ピリダジン若しくは4−ピリダジン、トリアジン、2−キノリン、3−キノリン、4−キノリン、5−キノリン、6−キノリン、7−キノリン若しくは8−キノリン、2−ピロール若しくは3−ピロール、3−ピラゾール、4−ピラゾール若しくは5−ピラゾール、2−イミダゾール、4−イミダゾール若しくは5−イミダゾール、2−チオフェン、3−チオフェン、2−セレノフェン、3−セレノフェン、2−フラン若しくは3−フラン、2−(1,3,4−オキサジアゾール)、インドールまたはカルバゾールである。
【0049】
本発明による化合物は、以下の一般的な性質により特徴付けられる。
【0050】
1.昇華時に部分的な、または完全な熱分解を被る多くの既知の金属錯体と比較して、本発明による化合物は、高い熱安定性を有する。このことは、とりわけ、ヘテロ原子を介する供与配位に加えて、少なくとも1つのアリール炭素−白金結合またはアリール炭素−イリジウム結合をも含む四座キレート配位子を有する、本発明による白金錯体およびイリジウム錯体に当てはまる。本発明による化合物の高い熱安定性は、対応するデバイスにおける使用時の、寿命の有意な延長をもたらす。
【0051】
2.本発明による化合物は、明らかな加水分解または吸湿性を有さない。空気および水蒸気を除くことなく何日もまたは何週間もの間貯蔵しても、物質へのいかなる変化ももたらさない。化合物への水の付加は、検出できなかった。このことは、より単純な条件下で、物質を精製し、輸送し、貯蔵し、使用のために調製することができるという利点を有する。
【0052】
3.エレクトロルミネセンスデバイスにおける電子輸送材料として用いられる本発明による化合物は、とりわけ、用いられる電流密度に関係なく、高い効率をもたらす。従って、非常に良好な効率が、高い電流密度、すなわち高い輝度の場合にも得られる。
【0053】
4.エレクトロルミネセンスデバイスにおける正孔障壁層として用いられる本発明による化合物は、とりわけ、用いられる電流密度に関係なく、高い効率をもたらす。従って、非常に良好な効率が、高い電流密度の場合にも得られる。加えて、本発明による材料は、正孔に対して安定であり、これは、例えば、AIQおよび類似体化合物のような他の金属錯体の場合の適切な範囲ではそうならない(Z.ポポビッチ(Popovic)等、Proceedings of SPIE, 1999, 3797, 310-315)。
【0054】
5.単独で発光材料として、マトリックス材中にドープされた発光材料として、またはドーパントと組み合わせてマトリクス材としてエレクトロルミネセンスデバイスにおいて用いられる本発明による化合物は、高い効率をもたらし、エレクトロルミネセンスデバイスは、急峻な電流/電圧曲線により特徴づけられ、とりわけ長い駆動耐用年数により特徴づけられる。
【0055】
6.本発明による化合物は、平面とならないような構造定義により形成され、従って、強い金属−金属、金属−配位子、または配位子−配位子相互作用の生成による凝集を抑えられる。
【0056】
7.これらの化合物の凝集の抑制は、第1に、狭い発光帯をもたらし、つまり、より純粋な発光色をもたらす。第2に、発光色は、広範囲に渡るドープの程度に無関係であり、これは、工業的な利用についての大きな利点である。
【0057】
8.特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明による化合物のリジッドな構造は、発光遷移の高い量子効率につながる。
【0058】
9.本発明による化合物を、確実に高い純度で、容易に再現できる方法で調製することができ、本発明による化合物は、バッチのばらつきを有さない。
【0059】
10.時として、本発明による化合物は、有機溶媒中への優れた溶解性を有し、例えば、架橋VまたはZ中に分岐アルキル鎖を導入することによって、置換基の形態を適切に選択することにより、溶解度をカスタマイズすることができる。従って、これらの材料は、コーティング技術または印刷技術により、溶液から処理することもできる。蒸発による従来の処理の場合においても、プラントの洗浄、または洗浄に用いられるシャドーマスクの洗浄が、かなり簡素化されるために、この性質は有利である。
【0060】
本発明は、同様に、スキーム4による化合物(31)〜(60)に関する
【化21】

【化22】

【化23】

【0061】
(式中、化合物ビス(6−フェニル−2−ピリジル)メタン[CAS 362602−93−5]、ビス(6−フェニル−2−ピリジル)ケトン[CAS 217177−35−0]、ビス(6−(1−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル)フェニル−2−ピリジル)メタノール[CAS 367525−74−4]、2,2’−チオビス(3−シアノ−2,4−ジフェニル)ピリジン[CAS 160598−76−5]、ビス(6−(3−フェニル)フェニル−2−ピリジル)メタン[CAS 57476−80−9]および異性体[CAS 57476−79−6]を除いて、記号および添え字のQ、L、T、X、Y、Z、R、R、Rおよびcは、上記した意味を有する。
【0062】
上記の化合物(31)〜(60)は、構造2において詳細に既に述べており、同じ概念に従う(V=Z)。
【化24】

【0063】
これらの化合物は、本発明による構造1の化合物の配位子を示し、これらの化合物に至る経路上での重要な中間体である。
【0064】
本発明による化合物(31)〜(60)を、一般的な有機反応により調製することができ、これは、多くの例を参照しながら以下で確認される。例えば、化合物(31)は、ジ(6−ブロモ−2−ピリジル)ケトン(WO 98/22148)から出発して、ジピリジルメタノールを与える脂肪族若しくは芳香族リチウムまたはグリニャール試薬との反応により得ることができる。これを、続いて、例えば、ジエチルアミノサルファ三フッ化物(DAST)、塩化チオニル、または三臭化リンのようなハロゲン化剤を用いる反応によりフッ素化、塩素化、または臭素化することができる。エーテルの形成を伴う水酸基のアルキル化も、同様に、容易に行うことができる。最後に、アリールボロン酸とのスズキカップリングにより、化合物(31)を与える。この反応順序を、メチル化、フッ素化、フェニルボロン酸とのカップリングの具体例についてスキーム5に示し、ここではc=0の化合物(31)を与える。
【化25】

【0065】
テトラヒドロピラニル保護されたフェノールボロン酸(対応するブロモフェノールからジヒドロピランを用いて保護することにより調製することができる)を用いる類似の反応順序、続くグリニャール反応、ボロン酸エステルとの反応は、保護基を除いた後に、タイプ(31)の化合物(式中、c=1)を与える(スキーム6)。
【化26】

【0066】
化合物(32)〜(38)を、対応する5員環複素環化合物および6員環複素環化合物を使用して、類似の様式で調製することができる。
【0067】
タイプ(39)〜(40)の化合物を、例えば、具体例に基づいてスキーム7に示される反応順序によって調製することができる。当然ながら、出発材料(アリールハライド、またはボロン酸)を変化させることにより、多数のさらなる化合物を得ることもできる。
【化27】

【0068】
最終的に、化合物(41)〜(60)に、類似の反応順序を用いて、全く類似の様式で到達することができることを特筆しておく。
【0069】
2−リチオ−6−フェニルピリジン(グロ(Gros)等、J. Org. Chem., 2003, 68(5), 2028-2029 )、およびその類似体から出発すると、架橋VまたはZにヘテロ原子を有する本発明による配位子を調製することができ、さらなるシントンとして適切であるヘテロ原子を含有する求電子物質を用いることが可能となる。適切な求電子物質は、とりわけ、スキーム8に示すような、ジクロロアリールボラン、ジクロロアルキルシラン若しくはジクロロアリールシラン、またはジクロロアリールホスフィン若しくはジクロロアルキルホスフィンである。
【化28】

【0070】
本発明による化合物(1)〜(30)を、基本的に、種々の方法により調製することができるが、以下に述べる新規の方法が、特に適していることが分かった。
【0071】
従って、本発明は、さらに、化合物(31)〜(60)による四座のキレート配位子と、金属アルコキシドである化合物(61)、金属ケトケトナートである化合物(62)、金属ハライド、金属カルボン酸塩、金属硝酸塩および金属硫酸塩である化合物(63)、並びにアルキル金属化合物またはアリール金属化合物である化合物(64)との反応による、化合物(1)〜(30)の調製のための方法に関する。
【化29】

【0072】
(式中、記号MおよびRは、スキーム1において示した意味を有し、並びに、A=F、Cl、Br、I、OH、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、硝酸塩または硫酸塩であり、並びに、L’は、例えば、THFのようなエーテル、例えば、トリメチルアミン若しくはピリジンのようなアミン、例えば、トリフェニルホスフィンのようなホスフィン、または例えば、DMSOのようなスルホキシドの群からの単座配位子であり、並びにn=1、2または3であり、q=0、1、2または3であり、好ましくは0、1または2である)。ここで、化合物(62)は、帯電していてもよい。必要に応じて、例えば、塩化アルミニウムまたは五フッ化アンチモン若しくは五塩化アンチモンのようなルイス酸、例えば、アミンのようなブレンステッド塩基、または例えば、有機リチウム若しくはグリニャール化合物のようなアルキル化剤を、助剤として加えてもよい。
【0073】
個々の配位子を導入するために、複数の個々の工程にて反応を行うことも、さらに有利である。例えば、配位子Ligを最初に導入し、この錯体が、さらなる補助配位子(例えば、ハライド)を含むことが好ましく、これは、その後、さらなる工程において二座キレート配位子L3により置き換えられる。例えば、最初に錯体中に配位子部位L1およびL2を導入し、その後、続く工程において、架橋単位VまたはZにこれらを結合させることも同様に可能である。
【0074】
こうして、化合物(1)〜(30)を、高純度で、好ましくは>99%(H−NMRおよび/またはHPLCにより決定)で得ることができる。
【0075】
とりわけ、以下に示す化合物(1)〜(66)の例を、ここに説明する合成方法を用いて調製することができる。
【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【0076】
一般的に、基礎として上記の構造要素を含む構造、例えば、スキーム9による化合物は、本発明によるものと見なす。
【化36】

【0077】
上記した本発明による化合物(例えば、例7、14、26、27、37、38、39、41、45による化合物)を、対応する共役、部分共役、または非共役のポリマーまたはデンドリマー(例えば、例14および26による化合物)を生成するコモノマーとして用いることができる。対応する重合は、好ましくは、ハロゲン官能基を介して行われる。これらを、とりわけ、可溶ポリフルオレン(例えば、EP 842208 または WO 00/22026 による)、ポリスピロビフルオレン(例えば、EP 707020 または EP 894107 による)、ポリ−パラ−フェニレン(例えば、WO 92/18552 による)、ポリジヒドロフェナントレン(例えば、DE 10337346.2 による)、ポリインデノフルオレン(例えば、WO 04/041901 または EP 03014042.0 による)、ポリカルバゾール(例えば、DE 10304819.7 または DE 10328627.6 による)、ポリチオフェン(例えば、EP 1028136 による)、ポリビニルカルバゾールまたはポリケトン中に重合することができ、またはこれらの単位の2以上を含むコポリマー中に重合することができる。
【0078】
従って、本発明は、さらに、化合物(1)〜(30)の1以上を含む、共役、部分共役、または非共役ポリマーまたはデンドリマーに関する(ここで、上記したR基の少なくとも1つは、ポリマーまたはデンドリマーへの結合を示す)。
【0079】
本発明による金属錯体を、さらに、例えば上記したタイプの反応によりさらに官能化することができ、従って、伸長した金属錯体に変えることができる。アリールボロン酸を用いるスズキ法による官能化、またはアミンを用いるハルトビヒ−ブークウォルド(Hartwig-Buchwald)法による官能化を例として述べておく。
【0080】
上記した本発明による化合物(1)〜(30)、コモノマーとしてタイプ(1)〜(30)の化合物を含有するポリマーおよびデンドリマー、伸長した金属錯体を、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機太陽電池(O−SC)または有機レーザーダイオード(O−laser)における活性成分として用いる。
【0081】
従って、本発明は、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機太陽電池(O−SC)または有機レーザーダイオード(O−laser)のような電子デバイスおよび/または光学素子における、上記した本発明による化合物(1)〜(30)、コモノマーとしてタイプ(1)〜(30)の化合物を含有するポリマーおよびデンドリマー、並びに伸長した金属錯体の使用にも関する。
【0082】
本発明は、さらに、本発明による化合物(1)〜(30)、コモノマーとしてタイプ(1)〜(30)の化合物を含有するポリマーおよびデンドリマー、および伸長した金属錯体の1以上を含む、電子デバイスおよび/または光学素子、とりわけ、有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機太陽電池(O−SC)または有機レーザーダイオード(O−laser)に関する。
【0083】
本発明を、特定の理論に拘束されることを望まないが、以下の例により、より詳細に説明する。当業者は、発明を必要とすることなく、本発明に従うさらなる錯体を調製すること、およびこの記載から本発明に従う方法を用いることができるであろう。
【0084】
本発明による化合物の1以上を含むOLEDを、例えば、WO 04/058911 および DE 10317556.3 に記載されるような、当業者によく知られる方法により作製することができる。
【0085】
例:
他に示さない限り、以下の合成は、保護ガス雰囲気下、乾燥溶媒中で行った。出発材料を、アルドリッチまたはABCR[メチルマグネシウムクロライド(THF中3M)、ジエチルアミノサルファ三フッ化物(DAST)、ベンゼンボロン酸、(吹き付け乾燥させた)フッ化カリウム、トリ−tert−ブチルホスフィン、酢酸パラジウム(II)、テトラクロロ白金酸カリウム]から購入した。ジ(6−ブロモ−2−ピリジル)ケトンを、WO 98/22148 に記載される通りに調製した。シス−ジメチル−ジ(η−S−ジメチルスルホキシジル)白金(II)を、エアボルン(Eaborn)等、J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1981, 933-938 により記載される通りに調製した。
【0086】
配位子合成
例1:1,1−ビス(6−フェニル−2−ピリジル)−1−フルオロエタン
a)1,1−ビス(6−ブロモ−2−ピリジル)エタン−1−オール
【化37】

【0087】
THF中の113ml(340mmol)の3Mのメチルマグネシウムクロライド溶液を、1000mlのTHF中の102.6g(300mmol)のジ(6−ブロモ−2−ピリジル)ケトンの−78℃に冷却した懸濁液に、激しく攪拌しながら、−60℃を超えない速度で滴下して加えた。滴下を終えたら、この混合物をさらに30分間攪拌し、続いて、50mlのエタノールを滴下して加え、混合物を0℃にまで温め、60mlの半飽和(semi-saturated)塩化アンモニウム溶液を加えた。この反応混合物をろ過し、塩をそれぞれ100mlのTHFを用いて2回洗浄し、ろ液を回転エバポレータ中で乾燥するまで蒸発させた。油状の残渣を1000mlのジクロロメタン中に溶解し、有機相を300mlの水を用いて3回洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。ジクロロメタンを取り除くと、黄褐色オイルとして、H−NMRによれば約95%の純度を有する、98.6%の収率に対応する106.0g(296mmol)の粗生成物を与え、これを精製することなくさらに反応させた。
【0088】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=7.77(d,HH=7.8Hz,2H),7.53(dd,HH=7.8Hz,HH=7.8Hz,2H),7.34(d,HH=7.8Hz,2H),5.78(br.s,1H,OH),1.92(s,3H,CH)。
【0089】
b)1,1−ビス(6−ブロモ−2−ピリジル)−1−フルオロエタン
【化38】

【0090】
117.3ml(888mmol)のDASTを、1500mlのクロロホルム中の105.9g(296mmol)の1,1−ビス(6−ブロモ−2−ピリジル)エタン−1−オールの10℃に冷却した溶液に、温度が20℃を超えない速度で、30分間に渡り滴下して加えた。この反応混合物を20℃で1時間攪拌し、その後氷で冷却しながら、500mlの氷水を滴下しながら加水分解し(注意:高い発熱反応)、続いて1000mlの3MのNaOH水溶液を滴下して加水分解した。有機相を分離し、水相を100mlのクロロホルムを用いて2回抽出し、集めた有機相を500mlの水を用いて1回洗浄して、塩化カルシウムにて乾燥させた。乾燥剤をろ過した後に、褐色の有機相を200mlにまで濃縮し、シリカゲルカラムを通してろ過した。こうして得られた黄色溶液を、乾燥するまで蒸発させ、黄色の粘性のオイル状残渣を200mlのn−ヘプタンから再結晶すると、73.7%の収率に対応する78.6g(218mmol)の生成物を、無色針状結晶の形態で、H−NMRによれば>99.0%の純度で与えた。
【0091】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=7.56(dd,HH=7.8Hz,HH=7.8Hz,2H),7.50(d,HH=7.8Hz,2H),7.34(d,HH=7.8Hz,2H),2.15(d,HF=23.4Hz,3H,CH)。
【0092】
c)1,1−ビス(6−フェニル−2−ピリジル)−1−フルオロエタン
【化39】

【0093】
600μl(2.6mmol)のトリ−tert−ブチルホスフィンおよび449mg(2.0mmol)の酢酸パラジウム(II)を、350mlのTHF中の18.0g(50mmol)の1,1−ビス(6−ブロモ−2−ピリジル)−1−フルオロエタン、24.4g(200mmol)のベンゼンボロン酸および19.2g(330mmol)のフッ化カリウムの脱気懸濁液に加え、この混合物を、還流下で3時間、攪拌しながら加熱した。冷却後、減圧下でTHFを除去し、残渣を500mlのジクロロメタン中に溶解させ、300mlの水を用いて3回洗浄した。硫酸マグネシウムにて乾燥させ、シリカゲルを通してろ過し、溶媒を除去した後、黄色のオイル状残渣をエタノールから3回再結晶すると、88.6%の収率に対応する15.7g(44mmol)の生成物を、無色の針状結晶の形態で、H−NMRによれば>99%の純度で与えた。
【0094】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.04(d,HH=7.7Hz,4H),7.72(dd,HH=7.8Hz,HH=7.8Hz,2H),7.63(d,HH=7.8Hz,2H),7.50(d,HH=7.8Hz,2H),7.44−7.35(m,6H),2.35(d,HF=23.4Hz,3H,CH)。
【0095】
錯体合成
例1:[1,1−ビス(6−フェニル−2−ピリジナト−N,C)−1−フルオロエタン]白金(II)
【化40】

【0096】
15mlのトルエン中の1.063g(3.0mmol)の1,1−ビス(6−フェニル−2−ピリジル)−1−フルオロエタンと1.144g(3.0mmol)のシス−ジメチル−ジ(η−S−ジメチルスルホキシジル)白金(II)の溶液を、90℃で3時間攪拌した。室温にまで冷却した後、30mlのジエチルエーテルを黄色の懸濁液に加え、黄色の微晶質の生成物を吸引しながらろ過し、それぞれ10mlのジエチルエーテルを用いて3回洗浄した。減圧下で乾燥させると、>99.5%(HPLC)の純度を有する
、94.0%の収率に対応する1.544g(2.8mmol)の生成物を与えた。
【0097】
MS(FAB):m/e=347(M)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造2の四座キレート配位子Ligに配位した金属Metを含有することを特徴とする構造1の化合物。
【化1】

【化2】

(式中、Vは架橋単位であり、第3主族、第4主族、第5主族および/または第6主族からの1〜40の原子を含有し、2つの配位子部位L1およびL2(これは、出現毎に同一であるか異なる)を互いに共有結合させることを特徴とし、ここで、前記2つの配位子部位L1およびL2は、構造3を満足し、並びにL3は、出現毎に同一であるか異なり、単座または二座の中性またはモノアニオン性配位子であり、aは、0、1または2である)
【化3】

(式中、Cy1およびCy2は、出現毎に同一であるか異なり、置換または無置換の飽和、不飽和または芳香族の同素環または複素環に相当し、いずれの場合にも、環原子を介して、または同素環または複素環に対して環外で結合した原子を介して、イオン的、共有結合的、または配位的に前記金属に結合している)
【請求項2】
電気的に中性であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
L1=L2であることを特徴とする請求項1および/または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記架橋単位Vが、1〜6の原子を含有するか、または3員〜6員の同素環若しくは複素環であることを特徴とする請求項1〜3の一項以上に記載の化合物。
【請求項5】
以下、すなわち、
Vは、BR、−(CR)RB(CR)−、−O−RB−O−、−O−(RO)B−O−、−CRO−RB−OCR−、−(CRCR)RB(CRCR)−、C=O、C=NR、C=S、CR、CR(OH)、CR(OR)、C(NR、−(CR)RC(CR)−、−(CRCR)RC(CRCR)−、−(SiR)RC(SiR)−、−(SiRCR)RC(CRSiR)−、−(CRSiR)RC(SiRCR)−、−(SiRSiR)RC(SiRSiR)−,シス−RC=CR、1,2−C、1,3−C、SiR、Si(OH)
Si(OR、−(CR)RSi(CR)−、−(CRCR)RSi(CRCR)−、−(SiR)RSi(SiR)−、−(SiRCR)RSi(CRSiR)−、−(CRSiR)RSi(SiRCR)−、−(SiRSiR)RSi(SiRSiR)−、RN、−(CR)RN(CR)−、−(CRCR)RN(CRCR)−、FP、FPO、RP、RAs、RSb、RBi、RPO、RAsO、RSbO、RBiO、RPSe、RAsSe、RSbSe、RBiSe、RPTe、RAsTe、RSbTe、RBiTe、−O−RPO−O−、−O−(RO)PO−O−、−CRO−RPO−OCR−、−OCR−RPO−CRO−、O、S、Se、−(CR)O(CR)−、−(CR)S(CR)−、−(CR)(O)S(CR)−、または−(CR)(O)S(CR)−、または対応する非対称類似体であり、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、NO、CN、1〜20のC原子を有する直鎖の、分岐の、若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、−O−、−S−、−NR−、または−CONR−により置き換えられてもよく、また、1以上のH原子は、Fにより置き換えられてもよい)、または1〜14のC原子を有するアリール基、アリールオキシ基、若しくはヘテロアリール基(これは、1以上の非芳香族のR基により置換されていてもよい)であり、ここで、複数の置換基Rは、さらなる単環または多環式の脂肪族または芳香族環構造を示してもよく、および
、Rは、出現毎に同一であるか異なり、Hまたは1〜20のC原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素基であること
が、前記架橋部位Vに適用されることを特徴とする請求項1〜4の一項以上に記載の化合物。
【請求項6】
化合物(1)〜(8)から選択され、このそれぞれが、1または2つのさらなる配位子L3を有し得る請求項1〜5の一項以上に記載の金属錯体。
【化4】

(式中、R、RおよびRは、請求項5において記載したものと同じ意味を有し、他の記号および添え字は、以下の意味を有する。すなわち、
Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、La、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、CdまたはHgであり、
Lは、出現毎に同一であるか異なり、C、N、またはPであり、
Qは、出現毎に同一であるか異なり、N、O、S、Se、またはTeであり、
Tは、出現毎に同一であるか異なり、NまたはPであり、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CR、N、またはPであり、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、NR、O、S、Se、Te、SO、SeO、TeO、SO、SeO、またはTeOであり、
Zは、請求項5においてVについて上記したものと同じ意味を有し、
cは、出現毎に同一であるか異なり、0または1である)
【請求項7】
化合物(9)〜(12)から選択され、このそれぞれが、1または2つのさらなる配位子L3を有し得る請求項1〜5の一項以上に記載の金属錯体。
【化5】

(式中、記号および添え字のM、L、Q、T、X、Y、Z、R、R、Rおよびcは、請求項5および6と同じ意味を有する)
【請求項8】
化合物(13)〜(30)から選択され、このそれぞれが、1または2つのさらなる配位子L3を有し得る請求項1〜5の一項以上に記載の金属錯体。
【化6】

【化7】

(式中、記号および添え字のM、L、Q、T、X、Y、Z、R、R、R、cおよびnは、請求項5および6と同じ意味を有する)
【請求項9】
存在する場合に、前記配位子L3は、二座キレート配位子であることを特徴とする請求項1〜8の一項以上に記載の金属錯体。
【請求項10】
前記L3が、前記配位子部位L1およびL2と同一であるか異なるモノアニオン性配位子であるか、または前記L3は、構造(4)の配位子であることを特徴とする請求項9に記載の金属錯体。
【化8】

(式中、出現毎に同一であるか異なるRは、H、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、C〜C20のアリール基若しくはヘテロアリール基、またはC〜C20のアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基を示し、および1以上のH原子は、Fにより置き換えられてもよい)
【請求項11】
記号M=Be、Mg、PtまたはZnであり、添え字a=0であることを特徴とする請求項1〜10の一項以上に記載の化合物。
【請求項12】
記号c=0およびM=Ptであることを特徴とする請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
記号M=RhまたはIrであり、および二座モノアニオン性配位子L3の場合には添え字a=1であり、単座モノアニオン性配位子L3の場合にはa=2であることを特徴とする請求項1〜10の一項以上に記載の化合物。
【請求項14】
記号L=CまたはNであることを特徴とする請求項1〜13の一項以上に記載の化合物。
【請求項15】
記号Q=OまたはSであることを特徴とする請求項1〜14の一項以上に記載の化合物。
【請求項16】
記号T=Nであることを特徴とする請求項1〜15の一項以上に記載の化合物。
【請求項17】
記号X=CRまたはNであることを特徴とする請求項1〜16の一項以上に記載の化合物。
【請求項18】
記号Z=BR、CR、CO,SiR、RN、FP、FPO、RP、RPO、−CRCR−、−CR−O−CR−、−O−(OR)PO−O−、シス−CR=CR、−CR−BR−CR−、−CR−CO−CR−、−CR−CR−CR−、または−CR−NR−CRであることを特徴とする請求項1〜17の一項以上に記載の化合物。
【請求項19】
記号R=H、F、Cl、Br、I、CN、1〜6のC原子を有する直鎖の、分岐の、環状のアルキル基若しくはアルコキシ基、または3〜10のC原子を有するアリール基若しくはヘテロアリール基(これは、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい)(ここで、同一の環状および2つの異なる環状の複数の置換基Rは、互いにさらなる単環または多環式の脂肪族環構造または芳香族環構造を形成してもよい)であることを特徴とする請求項1〜18の一項以上に記載の化合物。
【請求項20】
(31)〜(60)の化合物。
【化9】

【化10】

【化11】

(式中、ビス(6−フェニル−2−ピリジル)メタン、ビス(6−フェニル−2−ピリジル)ケトン、ビス(6−(1−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル)フェニル−2−ピリジル)メタノール、2,2’−チオビス(3−シアノ−2,4−ジフェニル)ピリジン、ビス(6−(3−フェニル)フェニル−2−ピリジル)メタンおよび異性体を除いて、記号および添え字のL、Q、T、X、Y、Z、R、R、Rおよびcは、請求項7と同じ意味を有する)。
【請求項21】
請求項20に記載の前記化合物(31)〜(60)と、金属アルコキシドである化合物(61)、金属ケトケトナートである化合物(62)、金属ハライド、金属カルボン酸塩、金属硝酸塩および金属硫酸塩である化合物(63)、またはアルキル金属化合物若しくはアリール金属化合物である化合物(64)との反応による請求項1〜19の一項以上に記載の前記化合物の調製のための方法。
【化12】

(式中、記号MおよびRは、請求項5および6に与えた意味を有し、および記号A=F、Cl、Br、I、OH、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、硝酸塩または硫酸塩であり、並びに、L’は、単座配位子であり、並びにn=1、2または3であり、q=0、1、2または3である)
【請求項22】
純度(H−NMRおよび/またはHPLCにより決定)が、99%を超えることを特徴とする請求項1〜10の一項以上に記載の化合物。
【請求項23】
構造1の化合物の1以上、または請求項1〜19の一項以上による化合物(1)〜(30)の1以上を含有する共役、部分共役および/または非共役ポリマーまたはデンドリマー。
【請求項24】
請求項5において定義したR基の少なくとも1つが、前記ポリマーまたはデンドリマーへの結合を示すことを特徴とする請求項23に記載のポリマーまたはデンドリマー。
【請求項25】
前記ポリマーが、ポリフルオレン、ポリスピロビフルオレン、ポリ−パラ−フェニレン、ポリジヒドロフェナントレン、ポリインデノフルオレン、ポリカルバゾール、ポリチオフェン、ポリケトン、ポリビニルカルバゾールの群から選択されるか、または上記した単位の複数を有するコポリマーから選択されることを特徴とする請求項23および/または24に記載のポリマー。
【請求項26】
請求項1〜19および22〜25の一項以上に記載の化合物、ポリマー、コポリマーまたはデンドリマーの少なくとも1つを含む電子デバイス。
【請求項27】
有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機太陽電池(O−SC)または有機レーザーダイオード(O−laser)であることを特徴とする請求項26に記載の電子デバイス。

【公表番号】特表2007−519614(P2007−519614A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537137(P2006−537137)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011890
【国際公開番号】WO2005/042550
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】