説明

二次電池用正極およびこれを用いた非水電解液二次電池

【課題】低抵抗を維持しつつ高い耐久性を有する二次電池用正極およびこれを用いた非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】集電体と、活物質、導電剤、および結着剤を含む電極層と、からなる二次電池用正極であって、前記活物質のタップ密度が2.0g/cm以下であり、前記結着剤の量が前記導電剤100質量部に対して90質量部以下であり、前記集電体と前記電極層との間の剥離強度が0.1N/mm以上である二次電池用正極およびこれを用いた非水電解液二次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極およびこれを用いた非水電解液二次電池に関し、さらに詳細には、従来の二次電池では実現が困難であった高出力特性および耐久性を発現させうる二次電池用正極、およびこれを用いた非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用の二次電池においては、より高出力の特性が求められており、これまでに、BET比表面積が3m/g以上のスピネル構造マンガン酸化物を正極に使用することや、比表面積が4m/g以上である電極を使用することなどが提案されている。
【0003】
これに対し、特許文献1は、単に活物質の比表面積を大きくするだけではなく、電極構成材料の粒子サイズを極めて小さくすることにより、サイクル特性および出力特性を向上させた高出力電池が得られることを開示している。
【0004】
かかる技術で採用する電極構成材料の粒子サイズ、特に正極活物質は、下限の平均粒子径が5μm以上であることが多かった。この理由としては、分散性といったプロセスの課題はもちろん、活物質の小粒子化に伴い電極の一成分として用いる結着剤などの他の固形分の含有量が増加し、単位質量あたりの活物質量、すなわち容量密度が減少してしまうことが主な背景と考えられる。
【特許文献1】特開2003−151547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような高出力化を目的とした活物質の小粒子径化およびそれに伴う導電剤量の増加は、電極内において結着剤の増量を必要とする。また、活物質の小粒子径化は、粒子自身の集電箔へのアンカー効果を低減させる。このため、活物質と集電体との結合は、結着剤による化学的結合に一層依存するようになり、結着剤の必要量は増加する。活物質の小粒子径化や導電剤量の調整によって反応抵抗や電子抵抗を低下させても、結着剤量の増加により反応抵抗や拡散抵抗などを増加させることになり、全抵抗値が増加することになる。
【0006】
一方、極めて少ない量の結着剤で電極を作製した場合、集電体と電極層との間の結着力は極めて弱く、電解液の含浸や充放電に伴う活物質の膨張収縮などによる集電体と電極層との剥離が容易に発生する。電極層の集電体からの剥離は、電子の流れを切断することになり、電気抵抗が増加しやすい状況となる。このような電極を用いることは、長い期間に亘って抵抗の増加を抑制し、高い入出力特性を発現させる必要がある電池の用途、例えば、自動車用電池用途において要求される耐久性を満足しないという問題が生じうる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次電池用正極の活物質として粒子径が小さい粒子を用いる場合に、高出力の効果を最大限引き出すために電極層の剥離を抑制し、低抵抗を維持しつつ高い耐久性を有する二次電池用正極およびこれを用いた非水電解液二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を積み重ねた結果、二次電池用正極の構成材料として特定の結着剤を用いることにより、電極層内の結着性を改善することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、集電体と、正極活物質、導電剤および結着剤を含む電極層と、からなる二次電池用正極であって、前記正極活物質のタップ密度が2.0g/cm以下であり、前記結着剤の量が前記導電剤100質量部に対して90質量部以下であり、前記集電体と前記電極層との間の剥離強度が0.1N/mm以上である、二次電池用正極である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高出力特性と高耐久性とを兼ね備えた非水電解液二次電池が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
(正極の構成)
本発明は、集電体と、正極活物質、導電剤および結着剤を含む電極層と、からなる二次電池用正極であって、前記正極活物質のタップ密度が2.0g/cm以下であり、前記結着剤の量が前記導電剤100質量部に対して90質量部以下であり、前記集電体と前記電極層との間の剥離強度が0.1N/mm以上である、二次電池用正極である。
【0013】
図1は、本発明の二次電池用正極を表す模式図である。集電体1の上に電極層2が形成されている。電極層2には、正極活物質3、導電剤4、および結着剤5が含まれる。
【0014】
本発明の二次電池用正極は、正極活物質のタップ密度が2.0g/cm以下であり、結着剤の量が導電剤100質量部に対して90質量部以下であり、集電体と電極層との間の剥離強度が0.1N/mm以上であることを特徴とする。かような形態によれば、電極内の抵抗が低減され、高出力特性を有し、優れた耐久性を有する二次電池用正極を得ることができる。
【0015】
上述のように、本発明の二次電池用正極は、電極構成材料として集電体、正極活物質、導電剤および結着剤を含む。以下、この構成材料について詳細に説明する。
【0016】
[正極側の集電体]
集電体への不均一なストレスは劣化促進要因となり、例えば、集電体の孔食腐食が発生しやすくなり、電池の耐久性に悪影響を与えることが考えられる。耐久性が特に求められる用途、例えば、自動車用電池においては、耐久性を保障できるほどに十分な集電体と電極層との接着強度を有することが必要である。本発明の二次電池用正極の電極層と集電体との界面における剥離強度は0.1N/mm以上、好ましくは0.1〜0.5N/mm、より好ましくは0.15〜0.3N/mmである。剥離強度が前記範囲内にあれば、前記界面での結合状態を強固なものとし、電極層と集電体との間の電子的な接続を保持できるようになり、二次電池の低抵抗特性および高出力特性が発揮され、さらにこのような状態を長期間維持することが可能となる。なお、本発明において、前記剥離強度は、後述の実施例に記載された方法によって測定された値を採用するものとする。
【0017】
集電体の構成材料の例としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、鉄箔、チタン箔、ステンレス箔、もしくは銅箔などの金属箔、または前記金属箔を物理的な表面処理もしくは化学的な表面処理を行ったものが好ましく挙げられる。正極で使用するという観点から、アルミニウム箔、または物理的な表面処理もしくは化学的な表面処理を行ったアルミニウム箔がより好ましい。アルミニウム箔を用いることにより、耐食性に優れた正極を得ることができる。前記物理的な表面処理の例としては、例えば、パンチング、または凹凸を付けるために型ロールと受ロールとで加工する方法などが挙げられる。また、前記化学的な表面処理の例としては、例えば、メッキ処理、接着剤塗布、合金化、または防錆処理などが挙げられる。なお、特に限定するものではないが、これらの中でも変性ポリマーを使用する場合に化学結合しやすい表面状態を形成するものが好ましい。
【0018】
前記集電体の厚さは5〜20μmであることが好ましく、8〜15μmであることがより好ましい。
【0019】
以上のような集電体を用いることにより、本発明の二次電池用正極において、アンカー効果による集電体と電極層とのより強固な機械的結合の形成、集電体と電極層との物理的相互作用、または結着剤を用いる際の集電体と電極層とのより強固な化学的結合の形成などを得ることができる。したがって、小粒径の正極活物質であっても良好な結着状態を示す正極を製造することができる。
【0020】
本発明に用いられる集電体の製造方法としては、特に制限されることはないが、例えば圧延製箔製法などが挙げられる。
【0021】
[正極活物質]
本発明の二次電池用正極に用いられる正極活物質は、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガンニッケルコバルト酸リチウムおよびオリビン型燐酸鉄からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、これらを組み合わせて使用しても良い。これらを用いると、正極活物質の平均粒子径を容易に調整することができ、集電体の表面をより均一な状態にすることが可能となる。
【0022】
本発明において、前記正極活物質のタップ密度は、2.0g/cm以下である。
【0023】
前記タップ密度が小さすぎる場合、前記正極活物質は嵩高くなり、前記正極活物質の粒子間の距離は短くなりにくい傾向がある。このため、電極内の導電ネットワークおよび電極構造を保持することが難しく、電池の耐久性に悪影響を及ぼす可能性がある。耐久性が必要となる用途、例えば、自動車用電池などにおいては、タップ密度がある程度小さく、かつ、嵩高い活物質を固定できる十分な電極内強度を有することが必要である。一方、単なるバインダーの増量による電極内強度の増大は、電極の抵抗の増加およびエネルギー密度の低下に繋がる。このため、結着剤の種類を工夫し、集電体と電極層との間の剥離強度を高めることによって、電極層内の電子的な接続は長い時間保持されるようになり、二次電池の抵抗の低減および高出力特性を長い時間保持することが可能となる。
【0024】
以上のような観点から、前記タップ密度は1.0〜2.0g/cmであることが好ましく、1.4〜1.8g/cmであることがさらに好ましい。前記タップ密度が2.0g/cmを超えると、充填性が高くなり過ぎて電極内の空隙が極めて小さく少なくなる。Liイオンは、電極空隙内を電解液を介して移動する為、空隙の減少はLiイオンが移動つまり拡散し難い状況につながる。結果として拡散抵抗は増加し、出力は低下することになると考えられる。なお、本発明において、前記タップ密度は、後述の実施例に記載の方法により測定した値を採用するものとする。
【0025】
前記正極活物質の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましく、2〜8μmであることが特に好ましい。かかる範囲の平均粒子径を有する正極活物質を用いることにより、電池の容量密度をより大きくすることができ、高出力の二次電池を製造することができる。また、さらには、かかる範囲の平均粒子径を有する正極活物質を用いることにより、電極内の空隙が電極全体に亘ってより均一に存在して空隙どうしが隣接するようになり、Liイオンが移動しやすい環境を形成できるものと考えられる。なお、本発明において、前記平均粒子径は、レーザー回折散乱法を用いて得られたD50値(メディアン径)を採用するものとする。
【0026】
前記正極活物質の比表面積は、1〜3m/gであることが好ましい。かかる範囲の比表面積を有する正極活物質を用いることにより、エネルギー密度の低下を抑制しながら反応抵抗を低減することができる。なお、本発明において、前記比表面積は、BET法により測定した値を採用するものとする。
【0027】
[正極側の導電剤]
本発明の二次電池用正極に用いられる導電剤は、黒鉛、無定形炭素および繊維状炭素からなる群より選択される少なくとも1種の炭素材料であることが好ましい。前記のような炭素材料を用いることにより、上述のような小さい粒子径の活物質を使用しても電極内の導電性を確保することができ、正極の低抵抗化および二次電池の高出力化が可能となる。
【0028】
前記黒鉛の例としては、例えば、鱗片状黒鉛や繊維状黒鉛などが挙げられる。前記無定形炭素の例としては、例えば、カーボンブラック、より具体的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどが挙げられ、これらは天然由来のものでもよく、人造のものでもよい。前記繊維状炭素は、直径が10〜150nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましい。また、長さは1〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。前記繊維状炭素の直径および長さがかかる範囲にある場合、導電性が付与されるという効果を奏する。前記繊維状炭素の例としては、例えば、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また、鱗片状黒鉛では、D50で6μm以下が好ましく、さらには3μm以下が好ましい。カーボンブラックではD50で3μm以下が好ましく、さらには1μm以下が好ましい。
【0029】
[正極側の結着剤]
本発明の二次電池用正極に用いられる結着剤の例としては、フッ素系ポリマー、変性処理したフッ素系ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ユリア樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、ブチルゴム、スチレン系ゴムなどのゴム系材料などが好ましく挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。これらの中でも、フッ素系ポリマーおよび変性処理したフッ素系ポリマーのいずれか一方または両方を含むことが好ましく、変性処理したフッ素系ポリマーを含むことがより好ましい。結着剤に前記フッ素系ポリマーおよび前記変性処理したフッ素系ポリマーのいずれか一方または両方を含有させることにより、本発明の二次電池用正極の耐薬品性(耐電解液性)が向上するという優れた効果を得ることができる。なお、本明細書において、上述の「変性処理」とは、ポリマーに対して極性を有する官能基を導入することを意味する。
【0030】
前記結着剤中の前記フッ素系ポリマーおよび前記変性処理したフッ素系ポリマーのいずれか一方または両方の量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、100質量%以上であることがさらに好ましい。
【0031】
前記フッ素系ポリマーの例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフロロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、またはこれら重合体もしくは共重合体の原料となるモノマーからなる群より選択される少なくとも2種のモノマーを共重合して得られる共重合体などのフッ素系樹脂;あるいは、フッ化ビニリデン系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素ゴム、またはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系フッ素ゴムなどのフッ素ゴムが挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0032】
前記変性処理したフッ素系ポリマーの例としては、上述のフッ素系樹脂に極性を有する官能基を導入したポリマー、すなわち変性処理したフッ素系樹脂、または上述のフッ素ゴムに極性を有する官能基を導入したポリマー、すなわち変性処理したフッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0033】
これらの中でも、フッ化ビニリデン系樹脂または変性処理したフッ化ビニリデン系樹脂が好ましく、変性処理したフッ化ビニリデン系樹脂がより好ましい。フッ化ビニリデン系樹脂および変性処理したフッ化ビニリデン系樹脂のいずれか一方または両方を結着剤として用いることにより、活物質を細粒化しても均一分散が可能であり、電極製造の際にスラリーを容易に調整できる。変性処理によってフッ化ビニリデン樹脂に導入される官能基の例としては、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、またはヒドロキシ基などの極性基が挙げられる。かかる極性基を含有するフッ化ビニリデン系樹脂、すなわち変性処理したフッ化ビニリデン系樹脂は、極性基を有しないフッ化ビニリデン系樹脂に比べて、活物質との結着性を一層向上させることができる。前記フッ化ビニリデン系樹脂の変性処理の方法の例としては、(a)特開平6−172452号公報に記載のフッ化ビニリデン系単量体と官能基を有する単量体とを共重合させる方法;(b)特開平6−93025号公報に記載のフッ化ビニリデン樹脂を溶解または膨潤する溶媒中で変性剤と反応させる方法;(c)特開2005−047275号公報に記載の放射線を照射してグラフト処理を行うことにより変性処理する方法などが挙げられる。以下、上記(a)〜(c)の変性処理の方法を詳細に述べる。
【0034】
(a)フッ化ビニリデン系単量体と極性基を有する単量体との共重合(特開平6−172452号公報に記載の方法)
本変性処理の方法で使用されるフッ化ビニリデンは、フッ化ビニリデン単独であっても、またはフッ化ビニリデンと他の単量体との混合物であってもよい。前記他の単量体の例としては、フッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系単量体、またはエチレン、プロピレン等の炭化水素系単量体が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系単量体の例としては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、またはフルオロアルキルビニルエ−テルなど挙げることができる。これらフッ化ビニリデンと共重合可能な他の単量体の量は、得られる共重合体の溶剤溶解性と耐溶剤性とのバランスを考慮して、フッ化ビニリデンと他の単量体との総量の20質量%未満であることが好ましい。
【0035】
上記したフッ化ビニリデンを主構成成分とする単量体(以下、「フッ化ビニリデン系単量体」とも称する)と共重合させる単量体としては、炭素数5〜8の不飽和二塩基酸のモノエステルが好ましい。具体的には、例えば、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、またはシトラコン酸モノエチルエステルなどを挙げることができる。より好ましくは、マレイン酸モノメチルエステルまたはシトラコン酸モノメチルエステルである。
【0036】
フッ化ビニリデン系単量体と、不飽和二塩基酸のモノエステル(以下、「極性単量体」とも称する)との共重合においては、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などの方法が採用できるが、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、または乳化重合が好ましく、水系懸濁重合がより好ましい。
【0037】
前記水系懸濁重合で用いられる懸濁剤の種類と使用量、重合開始剤の種類と使用量、連鎖移動剤の種類と使用量、単量体の仕込み量、重合温度、および重合時間などの重合条件については、特開平6−172452号公報に記載の条件を参照して、適宜採用することができる。
【0038】
フッ化ビニリデン系単量体と共重合させる極性単量体(すなわち不飽和二塩基酸のモノエステル)の仕込み量は、フッ化ビニリデン系単量体100質量部に対して好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.3〜2質量部である。0.1質量部未満では、得られる共重合体の金属等の基材との接着性等の極性基導入効果が乏しい場合がある。他方、3質量部を超えると、得られる共重合体の耐薬品性が低下する傾向がある。同様の理由により、得られるフッ化ビニリデン系共重合体は、1×10−5〜5×10−4モル/gのカルボニル基を含有することが好ましい。
【0039】
(b)フッ化ビニリデン系樹脂を溶解または膨潤する溶媒中で変性剤と反応させる方法(特開平6−93025号公報に記載の方法)
本変性処理の方法では、フッ化ビニリデン系樹脂と、フッ化ビニリデン系樹脂と反応しうる基および加水分解性基を有するシラン系カップリング剤およびチタネート系カップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種とを反応させて、フッ化ビニリデン系樹脂を変性する。
【0040】
本変性処理の方法で用いられるフッ化ビニリデン系樹脂としては、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等により得られるフッ化ビニリデンホモポリマー、またはフッ化ビニリデンと、不飽和二重結合を有するフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系単量体や、エチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸等の非フッ素系単量体を挙げることができる。溶剤溶解性、耐薬品性の観点から、フッ化ビニリデンホモポリマーまたはフッ化ビニリデンとフッ素系単量体の共重合体が好ましい。共重合体の場合、フッ化ビニリデンが得られる共重合体の80モル%以上となる量で共重合させることが好ましい。重合形式としては、特に限定されないが、高純度の樹脂が得られる点で、懸濁重合が好ましい。
【0041】
本変性処理の方法で用いられるシラン系カップリング剤またはチタネート系カップリング剤は、フッ化ビニリデン系樹脂と反応しうる基と加水分解性基とを有することが必要である。
【0042】
フッ化ビニリデン系樹脂と反応しうる基(反応性基)の例としては、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、またはこれらの基を含む基がある。アミノ基、メルカプト基、またはウレイド基を含む基の例としては、例えば、β−アミノエチル基、γ−アミノプロピル基、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピル基、N−フェニル−γ−アミノプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、またはγ−ウレイドプロピル基などが挙げられる。また、イソシアネート基の如く、系内または大気中の水分と反応してアミノ基を生成するような、潜在的にフッ化ビニリデン系樹脂と反応し得る能力を有する、前記反応性基の前駆体基も、本変性処理の方法においては同様な効果をもたらす。
【0043】
前記加水分解性基の例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアシルオキシ基、−ON=C(CH基、−ON=C(CH)C基のオキシモ基などが挙げられ、より好ましくはアルコキシ基である。
【0044】
本変性処理の方法で使用されるシラン系カップリング剤およびチタネート系カップリング剤の好ましい具体例としては、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、もしくはN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、もしくはγ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネートシラン、またはイソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートなどのアミノチタネートなどが挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。より好ましくは、γ−アミノプロピルトリエトキシシランまたはγ−メルカプトプロピルトリエトキシシランである。
【0045】
本変性処理の方法は、前記フッ化ビニリデン系樹脂を溶媒に溶解または膨潤させたものに、上記カップリング剤の少なくとも1種を添加、混合することによって行われる。このとき、フッ化ビニリデン系樹脂とカップリング剤とが反応し、カップリング剤が付加的にフッ化ビニリデン系樹脂に結合する。
【0046】
前記溶媒の例としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、またはジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。また、フッ化ビニリデン系樹脂を膨潤させる溶媒の例としては、2−ブタノン、アセトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、またはテトラヒドロフランなどを挙げることができ、これら溶媒は単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0047】
カップリング剤の量は、シラン系カップリング剤中のシリコンまたはチタネート系カップリング剤中のチタンの質量(シラン系カップリング剤とチタネート系カップリング剤とを併用する場合はシリコンとチタンとの合計量)が、フッ化ビニリデン系樹脂の質量に対して100〜8000ppmとなるようにすることが好ましい。100ppm未満では、変性後のポリマーをバインダーまたは接着剤等として使用した場合、基材あるいは充填剤への接着力が不十分となる場合がある。8000ppmを超えると、基材等との接着力が添加量の増大に比してほとんど増大しないか、むしろ低下する場合がある。
【0048】
その他、反応温度などの反応条件は、特開平6−93025号公報に記載の反応条件を参照して、適宜採用することができる。
【0049】
(c)放射線を照射してグラフト処理を行うことにより変性処理する方法(特開2005−47275号公報に記載の方法)
本変性処理の方法は、下記(1)〜(4)の工程を経て行われる。
【0050】
(1)フッ化ビニリデン系樹脂と不飽和モノマーとを溶融混合し、
(2)(1)で得られた混合物をフィルム、シート、顆粒または粉末の形にし、
(3)(2)の工程で得られた生成物に空気の非存在下で、光子(γ)または電子(β)を線量1〜15Mradで照射し、
(4)必要な場合には、さらに(3)で得られた生成物を処理してフッ化ビニリデン系樹脂にグラフトしていない不飽和モノマーの全部または一部を除去する。
【0051】
本変性処理の方法で用いられるフッ化ビニリデン系樹脂は、上述の(b)の変性処理の方法の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0052】
前記不飽和モノマーの具体例としては、カルボン酸とその誘導体、酸塩化物、イソシアネート、オキサゾリン、エポキシド、アミンまたはヒドロキシドなどが挙げられる。前記カルボン酸は2〜20個の炭素原子を含むもので、具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸などが挙げられる。これらのカルボン酸の誘導体の例としては、例えば、不飽和カルボン酸の無水物、エステル誘導体、アミド誘導体、イミド誘導体および金属塩(アルカリ金属塩など)がある。ウンデシレン酸も挙げられる。
【0053】
これらの中でも、好ましい不飽和モノマーは、4〜10個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸とその誘導体、またはその無水物である。具体例としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、4−シクロヘキシ−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキシ−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、x−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、4−シクロヘキシン−1,2−ジカルボン酸、4−メチレン−4−シクロヘキシン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸またはx−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−5−エン−2,2−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0054】
また、不飽和モノマーの他の例としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イソコン酸モノメチル、イソコン酸ジエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノアミド、マレイン酸のジアミド、マレイン酸のN−モノエチルアミド、マレイン酸のN,N−ジエチルアミド、マレイン酸のN−モノブチルアミド、マレイン酸のN,N−ジブチルアミド、フマル酸のモノアミド、フマル酸のジアミド、フマル酸のN−モノエチルアミド、フマル酸のN,N−ジエチルアミド、フマル酸のN−モノブチルアミド、フマル酸のN,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、またはメタクリル酸カリウムが挙げられる。これらの中でも、無水マレイン酸がより好ましい。
【0055】
前記の工程(1)〜(4)の実施条件は、特開2005−47275号公報に記載の実施条件を参照して、適宜採用することができる。
【0056】
以上のような(a)〜(c)の変性処理の方法のうち、特に(a)フッ化ビニリデン系単量体と極性基を有する他の単量体との共重合による変性処理の方法が好ましい。その理由は、上記フッ化ビニリデン系共重合体は、耐薬品性に優れ金属等の基材との接着性が良好であり、また、極性基を有する他の単量体との共重合は、水重合でも生成可能なため取り扱いが容易となるためである。
【0057】
前記フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、変性処理した場合、35万以上であることが好ましく、35万〜100万であることがより好ましく、45万〜70万であることがさらに好ましい。一方、変性処理していない場合、50万〜100万であることが好ましく、50万〜70万であることがより好ましい。重量平均分子量がかかる範囲にすれば、集電体と電極層との間の剥離強度を高くすることができるとともに、正極活物質スラリーの粘度調整が比較的容易となり、正極活物質スラリーの塗布を容易に行うことができる。なお、本発明において、前記重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてGPC(Gel Permeation Chromatography)法によって測定した値を採用するものとする。
【0058】
本発明の二次電池用正極中の前記結着剤の量は、前記導電剤100質量部に対して90質量部以下であり、40〜90質量部であることが好ましく、50〜80質量部であることがより好ましい。
【0059】
また、本発明の二次電池用正極中の前記結着剤の量は、前記正極活物質100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、3〜10質量部であることがより好ましく、4〜8質量部であることがさらに好ましい。前記結着剤の量が前記導電剤100質量部に対して90質量部を超える、または前記結着剤の量が前記正極活物質100質量部に対して10質量部を超えると、活物質表面を導電剤や結着剤が覆う割合が高くなって反応抵抗が増加する虞や、結着剤が導電剤と活物質との接触を低減させて導電性を低下させる虞がある。
【0060】
このように、本発明の結着剤は従来と比較して有意に少ない量で、結着剤の量の増加による電極の抵抗の増加を伴うことなく、所望の剥離強度および出力特性を得ることができ、さらに容量密度を高く維持することもできる。
【0061】
[その他]
また、前記電極層には、必要であれば、支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマーなどが含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0062】
支持塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、ビスペンタフルオロエチルスルホニルイミドリチウム(LiBETI)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0063】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。ここで、前記ポリマーは、本発明の電極が採用された電池の電解質層において用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0064】
重合開始剤は、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール(BDK)等が挙げられる。
【0065】
電極層に含まれる、上記成分の配合比は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池などについての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0066】
電極層の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池などについての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、電極層の厚さは、好ましくは10〜100μm程度であり、より好ましくは20〜50μmである。電極層の厚さが10μm程度以上であれば、電池容量が充分に確保されうる。一方、電極層の厚さが100μm程度以下であれば、電極深部(集電体側)にリチウムイオンなどが拡散しにくくなることに伴う内部抵抗の増大という問題の発生が抑制されうる。なお、負極および電解質層については、下記で詳述する。
【0067】
本発明の二次電池用正極は、従来公知の方法により製造することができる。その具体的な例としては、例えば、前記集電体を準備する段階と、前記正極活物質、前記導電剤および前記結着剤を含む電極層材料を混合する段階と、得られた混合物をスラリー粘度調整溶媒に分散して正極活物質スラリーを調整する段階と、前記集電体の一方の面に前記正極活物質スラリーを塗布し乾燥する段階と、を含む製造方法が挙げられる。二次電池用正極の構成要素である集電体、活物質、導電剤および結着剤については、上記と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0068】
前記スラリー粘度調整溶媒は、特に制限されることはないが、例えば、NMPなどが挙げられる。スラリーはホモジナイザーまたは混練装置などを用いて溶媒及び固形分よりインク化される。塗布はホットプレート法または温風乾燥法にて実施される。塗布温度は100〜150℃であることが好ましく、120〜140℃であることがより好ましい。塗布時間は、3〜30分であることが好ましく、5〜15分であることがより好ましい。
【0069】
本発明はまた、上記の二次電池用正極、または上記の製造方法により得られる二次電池用正極を用いて構成される、非水電解液二次電池である。本発明による正極の構成は、積層型電池にも双極型電池にも適用することができる。以下に、本発明の非水電解液二次電池に用いられる負極および本発明の非水電解液二次電池の構造について説明する。
【0070】
(負極の構成)
本発明の非水電解液二次電池に用いられる負極の構成は、従来公知の構成を採用することができる。
【0071】
負極側の集電体は導電性の材料から構成される。前記材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、または銅箔などが具体例として挙げられる。集電体の厚さは1〜30μmであることが好ましい。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
【0072】
用いられる負極活物質は、特に限定されないが、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素または非晶質炭素などの炭素材料、金属材料、ならびにリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金およびリチウムケイ素合金などのリチウム合金などが具体例として挙げられる。これらの中でも、容量および出力特性に優れた電池を構成できる観点から、好ましくはカーボンである。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
【0073】
前記負極活物質の平均粒子径および前記負極活物質の含有量は特に限定されず、リチウムイオン二次電池などの二次電池についての公知の知見が適宜参照されうる。
【0074】
また、必要であれば、導電剤、結着剤、支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマーなどが含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0075】
導電剤の例としては、例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイトなどのカーボン粉末、または気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)などの種々の炭素繊維などが挙げられる。前記導電剤の含有量は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池などの二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0076】
結着剤の例としては、以下に制限されることはないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル、ポリイミドまたはユリア樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂もしくはポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、またはブチルゴムもしくはスチレン系ゴムなどのゴム系材料が挙げられる。
【0077】
支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー、および重合開始剤の具体的な例については、前記の正極の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。これらの成分の配合比は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池などの二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0078】
負極における電極層の厚さについても、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0079】
(非水電解液二次電池)
本発明の正極を用いた電池は、積層型、双極型など従来公知の形態を有する非水電解液二次電池とすることができる。
【0080】
図2は、本発明の正極を用いた非水電解液二次電池の一例として双極型電池を示す断面図である。以下、図2に示す双極型電池を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに制限されない。
【0081】
図2に示す双極型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の電池要素21が、外装であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。
【0082】
図2に示すように、本実施形態の双極型電池10の電池要素21は、正極活物質層13と、負極活物質層15とが集電体11のそれぞれの面に形成された双極型電極を複数個有する。各双極型電極は、電解質層17を介して積層されて電池要素21を形成する。この際、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層17が積層されている。
【0083】
そして、隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周には、隣接する集電体11間を絶縁するための絶縁層31が設けられている。なお、電池要素21の最外層に位置する集電体(最外層集電体)(11a、11b)には、片面のみに、正極活物質層13(正極側最外層集電体11a)または負極活物質層15(負極側最外層集電体11b)のいずれか一方が形成されている。
【0084】
さらに、図2に示す双極型電池10では、正極側最外層集電体11aが延長されて正極タブ(端子)25とされ、外装であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体11bが延長されて負極タブ(端子)27とされ、同様にラミネートシート29から導出している。
【0085】
以下、本実施形態の双極型電池10を構成する部材について説明する。ただし、電極を構成する成分については上記で説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。また、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに制限されることはなく、従来公知の形態が同様に採用されうる。
【0086】
[電解質層]
電解質層17を構成する電解質は特に限定されないが、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
【0087】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
【0088】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲルポリマー電解質(ゲル電解質)と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0089】
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、特に限定されないが例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフルオロピレン(HFP)のポリマー、PAN、PMMAおよびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0090】
なお、電解質層17が液体電解質やゲルポリマー電解質から構成される場合には、電解質層17にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0091】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層17が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0092】
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0093】
本発明において、前記電解質層はゲルポリマー電解質からなることが好ましい。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、双極型電池の製造を容易にし、またシール性能を向上することが可能となる。ゲルポリマー電解質のホストポリマーおよび可塑剤の例は上記の通りである。
【0094】
また、前記電解質層は全固体電解質からなることがより好ましい。電解質として全固体電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、集電体への電解質の流出がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することがより確実になりうる。
【0095】
[絶縁層]
双極型電池10においては、通常、各単電池層19の周囲に絶縁層31が設けられる。この絶縁層31は、電池内で隣り合う集電体11同士が接触したり、電池要素21における単電池層19の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起きたりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁層31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型電池10が提供されうる。
【0096】
絶縁層31としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、またはゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ウレタン樹脂またはエポキシ樹脂が好ましい。
【0097】
[タブ]
双極型電池10においては、電池外部に電流を取り出す目的で、最外層集電体(11a、11b)に電気的に接続されたタブ(正極タブ25および負極タブ27)が外装であるラミネートシート29の外部に取り出される。具体的には、正極用最外層集電体11aに電気的に接続された正極タブ25と、負極用最外層集電体11bに電気的に接続された負極タブ27とが、ラミネートシート29の外部に取り出される。
【0098】
タブ(正極タブ25および負極タブ27)の材質は、特に制限されず、双極型電池用のタブとして従来用いられている公知の材質が用いられうる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等が例示される。なお、正極タブ25と負極タブ27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。なお、本実施形態のように、最外層集電体(11a、11b)を延長することによりタブ(25、27)としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
【0099】
[外装ケース]
双極型電池10においては、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、電池要素21は、好ましくはラミネートシート29などの外装内に収容される。外装としては特に制限されず、従来公知の外装が用いられうる。上述の通り、本発明の二次電池用正極を用いることにより、高出力で耐久性に優れた二次電池を得ることができるが、特に、形状の自由度の高いアルミラミネートの外装体を用いた場合、耐久性を一層向上させることができる。この理由は、ラミネートセルは、金属製の円筒型セルや角型セルのような構造的な圧力によって電極と箔との接触を保持できる構造を有していないため、結着剤による電極との接着力がより重要となると考えられるためである。
【0100】
図2に示す双極型電池10によれば、本発明の電極が集電体11の両面に形成されてなる双極型電極が採用されている。このため、本実施形態の双極型電池は出力特性に優れる。
【0101】
上述したような本発明の作用効果は、高出力条件下において用いられる二次電池において特に顕著に発現しうる。したがって、本発明の二次電池は、高出力条件下において用いられることが好ましい。具体的には、本発明の二次電池は、好ましくは20C以上、より好ましくは50C以上、さらに好ましくは100C以上の出力を必要とする条件下において好適に用いられる。
【0102】
<組電池>
本実施形態では、上記の非水電解液二次電池の複数個を、並列および/または直列に接続して、組電池を構成する。
【0103】
図3は、本実施形態の組電池を示す斜視図である。
【0104】
図3に示すように、組電池40は、上記の第3実施形態に記載の双極型電池が複数個接続されることにより構成される。各双極型電池10の正極タブ25および負極タブ27がバスバーを用いて接続されることにより、各双極型電池10が接続されている。組電池40の一の側面には、組電池40全体の電極として、電極ターミナル(42、43)が設けられている。
【0105】
組電池40を構成する複数個の双極型電池10を接続する際の接続方法は特に制限されず、従来公知の手法が適宜採用されうる。例えば、超音波溶接、スポット溶接などの溶接を用いる手法や、リベット、カシメなどを用いて固定する手法が採用されうる。かような接続方法によれば、組電池40の長期信頼性が向上しうる。
【0106】
本実施形態の組電池40によれば、組電池40を構成する個々の双極型電池10が出力特性に優れることから、出力特性に優れる組電池が提供されうる。
【0107】
なお、組電池40を構成する双極型電池10の接続は、複数個全て並列に接続してもよく、また、複数個全て直列に接続してもよく、さらに、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。これにより、容量および電圧を自由に調節することが可能となる。
【0108】
<車両>
本実施形態では、上記の双極型電池10、または組電池40をモータ駆動用電源として搭載して、車両を構成する。双極型電池10または組電池40をモータ用電源として用いる車両としては、例えば、ガソリンを用いない完全電気自動車、シリーズハイブリッド自動車やパラレルハイブリッド自動車などのハイブリッド自動車、もしくは燃料電池自動車などの車輪をモータによって駆動する自動車、または他の車両(例えば電車)が挙げられる。これにより、従来に比して高寿命で信頼性の高い車両を製造することが可能となる。
【0109】
参考までに、図4に、組電池40を搭載する自動車50の概略図を示す。自動車50に搭載される組電池40は、上記で説明したような特性を有する。このため、組電池40を搭載する自動車50は出力特性に優れるとともに、高寿命で信頼性の高い車両となる。
【0110】
以上のように、本発明の幾つかの好適な実施形態について示したが、本発明は、以上の実施形態に限られるものではなく、当業者によって種々の変更、省略、および追加が可能である。例えば、上記では双極型のリチウムイオン二次電池(双極型電池)を例に挙げて説明したが、本発明の電池の技術的範囲が双極型電池のみに制限されることはなく、例えば、双極型でない二次電池であってもよい。参考までに、図5に積層型の非水電解液二次電池60の概要を示す断面図を示す。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。なお、活物質の平均粒子径および活物質のタップ密度は、下記表1に記載の方法でそれぞれ測定した。
【0112】
【表1】

【0113】
[実施例1]
<正極の作製>
正極活物質として、平均粒子径D50が1.4μmのマンガン酸リチウムを用いた。また、導電剤としてアセチレンブラックを、結着剤として重量平均分子量が50万のポリフッ化ビニリデンのカルボン酸変性品をそれぞれ用いた。結着剤は、導電剤100質量部に対して60質量部となる量を供試した。これらを混合し、次いでスラリー粘度調整溶媒であるNMPに分散して、正極活物質スラリーを調整した。
【0114】
集電体として、厚さ20μmのアルミニウム箔を用意し、集電体の一方の面に上記で作製したスラリーを塗布し、乾燥後プレスすることで正極を作製した。
【0115】
<負極の作製>
負極活物質として難黒鉛化性炭素、導電剤としてアセチレンブラック、および結着剤としてPVDFを混合し、次いでスラリー粘度調整溶媒であるNMPに分散して、負極活物質スラリーを調整した。結着剤は、導電剤100質量部に対して200質量部となり、かつ活物質100質量部に対して12質量部となる量を供試した。
【0116】
さらに、負極側の集電体として厚さ10μmの銅箔を用意し、集電体の一方の面に上記のスラリーを塗布、乾燥後プレスすることで負極を作製した。
【0117】
<評価用セルの作製>
上記の通り作製した正極および負極を縦10cm、横10cmの大きさに切り出し、厚さ20μmのポリエチレン製セパレータを介して対向させるように積層して評価用電池要素を作製した。なお、各電極にはニッケル製タブリードおよびアルミニウム製タブリードを超音波溶接にて接続させた。次いで、前記の評価用電池要素を1対のラミネート外装の内部に設置し、電解液を1ml注入後真空封止して評価用セルを作製した。なお、電解液は、1MLiPFをPC:EC=1:1(体積比)の溶媒に溶解させたものを使用した。
【0118】
[実施例2]
正極活物質として平均粒子径D50が3.3μmのマンガン酸リチウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0119】
[実施例3]
重量平均分子量が50万のポリフッ化ビニリデンのカルボン酸変性品を、アセチレンブラック100質量部に対して40質量部となる量で供試したこと以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0120】
[実施例4]
正極の結着剤として、重量平均分子量が35万のポリフッ化ビニリデンのカルボン酸変性品を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0121】
[比較例1]
正極活物質として、平均粒子径D50が1.4μmのマンガン酸リチウムを用いた。また、導電剤としてアセチレンブラックを、結着剤として重量平均分子量35万のポリフッ化ビニリデンの未変性品をそれぞれ用いた。結着剤は、導電剤100質量部に対して100質量部となり、かつ活物質100質量部に対して13質量部となる量を供試した。これらを混合し、次いでスラリー粘度調整溶媒であるNMPに分散して、正極活物質スラリーを調整した。
【0122】
一方、集電体として、厚さ20μmのアルミニウム箔を準備し、集電体の一方の面に上記のスラリーを塗布し、乾燥後プレスすることで正極を作製した。
【0123】
上記のように正極を作製したこと以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0124】
[比較例2]
重量平均分子量35万のポリフッ化ビニリデンの未変性品を、アセチレンブラック100質量部に対して60質量部となる量で供試したこと以外は、比較例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0125】
[比較例3]
正極活物質として平均粒子径D50が1.3μmのマンガン酸リチウムを用いたこと以外は、比較例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0126】
[比較例4]
正極活物質として平均粒子径D50が8.8μmのマンガン酸リチウムを用いたこと以外は、比較例2と同様にして評価用セルを作製した。
【0127】
<評価>
(剥離強度の測定)
実施例1〜4および比較例1〜4で作製した正極の集電体と電極層との間の剥離強度は、下記表2に示す条件で測定した。
【0128】
【表2】

【0129】
(IV抵抗の測定)
実施例1〜4および比較例1〜4で作製した評価用セルを用い、初回充放電後SOC50%の状態から測定を開始した。測定条件は測定温度25℃、電流値1.23C、放電時間10秒であった(評価装置:北斗電工株式会社製、HJ−1001SM8)。
【0130】
(抵抗上昇率)
実施例1〜4および比較例1〜4で作製した評価用セルについて、45℃で30日間保存した後のIV抵抗値の変化率を各々測定した。
【0131】
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた評価用セルを用いて物性評価を行った結果を、表3に示す。
【0132】
(比表面積測定)
・測定方法:窒素吸着BET一点法
・測定装置:株式会社堀場製作所製、連続流動式表面積計SA9601を使用した。
【0133】
【表3】

【0134】
表3において、「剥離箇所」とは、剥離が集電体の膜内(以下、「膜内」とも称する)で起こったか、集電体と電極層との界面(以下、「界面」とも称する)で起こったかを示している。剥離が「界面」ではなく「膜内」で起こる場合、「界面」での結着性が強いことを意味し、このような場合には、長期間に渡って電極における抵抗の増加を抑制し、高い入出力特性の発現が要求される用途に求められる耐久性を満足することができる。
【0135】
また、IV抵抗および抵抗上昇率の結果は、比較例1の結果を基準値とした比率で表した。IV抵抗が低いということは、電極内の電気抵抗の低減につながる。
【0136】
表3より、正極活物質のタップ密度が2.0g/cm以下であり、正極活物質の量が導電剤100質量部に対して90質量部以下であり、集電体と電極層との間の剥離強度が0.1N/mm以上である実施例1〜4の正極を用いた場合、剥離箇所は常に膜内であるとともに、IV抵抗および抵抗上昇率がより低い値となることが分かった。すなわち、正極活物質のタップ密度が2.0g/cm以下であり、正極活物質の量が導電剤100質量部に対して90質量部以下であり、かつ集電体と電極層との間の剥離強度が0.1N/mm以上である本発明の二次電池用正極は、集電体と電極層との結着性が高いため電極内の電気抵抗を低減させることが分かった。また、本発明の正極を用いると、優れた入出力特性および優れた耐久性を有する二次電池が得られることが分かった。これに対し、正極活物質のタップ密度、正極活物質の量、または集電体と電極層との間の剥離強度が本発明の範囲外である比較例1〜4の正極を用いた場合、電気抵抗(IV抵抗)が実施例と比べて高くなることが分かった。また、比較例1〜3の正極を用いた場合、実施例の正極を用いた場合と比べて、抵抗上昇率が高くなることが分かった。
【0137】
以上のように、本発明の二次電池用正極によれば、集電体と電極層との結着性を高めて、電極内の電気抵抗を低減させることができる。加えて、より小さな平均粒子径の正極活物質および従来と比べてより少ない量の結着剤を用いた本発明の二次電池用正極を用いることにより、従来よりも高い結着性と容量密度とを兼ね備えた二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の一実施形態による二次電池用正極を示す模式図である。
【図2】本発明の正極を用いた非水電解液二次電池の一例として双極型電池を示す断面図である。
【図3】本発明の正極を用いた双極型電池を複数個接続して得られる組電池を示す斜視図である。
【図4】組電池を搭載する自動車を示す概略図である。
【図5】本発明の正極を用いた非水電解液二次電池の一例である積層型電池を示す断面図である。
【符号の説明】
【0139】
1 集電体、
2 電極層、
3 正極活物質、
4 導電剤、
5 結着剤、
10 双極型電池、
11 集電体、
11a 正極側最外層集電体、
11b 負極側最外層集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 電池要素、
25 正極タブ(端子)、
27 負極タブ(端子)、
29 ラミネートシート、
31 絶縁層、
33 正極集電体、
35 負極集電体、
40 組電池、
42、43 電極ターミナル、
50 自動車、
60 積層型電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
正極活物質、導電剤、および結着剤を含む電極層と、
からなる二次電池用正極であって、
前記正極活物質のタップ密度が2.0g/cm以下であり、前記結着剤の量が前記導電剤100質量部に対して90質量部以下であり、前記集電体と前記電極層との間の剥離強度が0.1N/mm以上である、二次電池用正極。
【請求項2】
前記結着剤が変性処理したフッ素系ポリマーを含む、請求項1に記載の二次電池用正極。
【請求項3】
前記変性処理したフッ素系ポリマーの重量平均分子量が35万以上である、請求項2に記載の二次電池用正極。
【請求項4】
前記正極活物質の比表面積が1〜3m/gである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項5】
前記正極活物質の平均粒子径が10μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項6】
前記正極活物質が、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガンニッケルコバルト酸リチウムおよびオリビン型燐酸鉄からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項7】
前記導電剤は、黒鉛、無定形炭素および繊維状炭素からなる群より選択される少なくとも1種の炭素材料を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項8】
前記集電体が、アルミニウム箔、または物理的な表面処理もしくは化学的な表面処理を行ったアルミニウム箔である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項9】
正極、電解質層、および負極がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を含む非水電解液二次電池であって、
前記正極が、請求項1〜8のいずれか1項に記載の二次電池用正極である、非水電解液二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の非水電解液二次電池を用いた組電池。
【請求項11】
請求項9に記載の非水電解液二次電池、または請求項10に記載の組電池を駆動用電源として搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−129889(P2009−129889A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307337(P2007−307337)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】