説明

二次電池用負極板、該負極板を用いた二次電池、及び、二次電池用負極板の製造方法。

【課題】長寿命化を図ることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池10は、発電要素109が外装部材106、107に収容されて封止され、正極板101に接続された正極端子104及び負極板103に接続された負極端子105が外装部材106、107から導出しており、発電要素109は、容量が相互に異なる2種類の難黒鉛化炭素材をPVDF等の結着剤に混合してNMP等の溶媒に分散させた負極合剤を負極側集電体104aに塗布した負極板103を含む電極板を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質及び結着剤を混合した負極合剤が集電体に塗布された二次電池用負極板、該負極板を用いた二次電池、及び、二次電池用負極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
負極活物質と結着剤とを混合した粉末を溶媒に分散させた負極スラリー(負極合剤)が集電体に塗布された負極板を用いたリチウム系二次電池として、負極活物質に難黒鉛化炭素を用いたリチウム系二次電池が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
リチウム系二次電池は、そのエネルギー密度の高さが注目されて電気自動車の電源として用いられており、特に、上記のように負極活物質として難黒鉛化炭素を用いた場合には急激な出力低下がないため電気自動車の電源として好適である。このようなリチウム系二次電池は、充電/放電を繰り返して利用されるため、度重なる充放電サイクルに耐え得る更なる長寿命化が望まれている。
【特許文献1】特開2001−176499号公報
【発明の開示】
【0004】
本発明は、二次電池の長寿命化を図ることが可能な二次電池用負極板、該負極板を用いた二次電池、二次電池用負極板の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも負極活物質及び結着剤を混合した負極合剤が集電体に塗布された二次電池用負極板であって、前記負極活物質として、容量が相互に異なる2種類の非黒鉛系炭素材料を用いた二次電池用負極板が提供される。
【0005】
また、上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも負極活物質及び結着剤を混合した負極合剤が集電体に塗布され、前記負極活物質として容量が相互に異なる2種類の非黒鉛系炭素材料を用いた負極板を含む電極板を有する発電要素が外装部材に収容されて封止され、前記電極板に接続された電極端子が前記外装部材から導出した二次電池が提供される。
【0006】
さらに、上記目的を達成するために、本発明によれば、出発材料を焼成して負極活物質を生成する焼成ステップと、少なくとも前記負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を生成する混合ステップと、前記負極合剤を集電体に塗布する塗布ステップと、を少なくとも有する二次電池用負極板の製造方法であって、前記焼成ステップにおいて、出発材料を相互に異なる焼成温度で焼成して、前記負極活物質として容量が相互に異なる2種類の非黒鉛系炭素材料を生成し、前記混合ステップにおいて、前記2種類の非黒鉛系炭素材料を前記結着剤と混合する二次電池用負極板の製造方法が提供される。
【0007】
本発明では、二次電池に用いられる負極板の負極活物質として、容量が相互に異なる2種類の非黒鉛系炭素材料を用いる。これにより、充放電に伴う負極の容量劣化を抑制することが出来るので、二次電池の充放電サイクル特性を向上させ長寿命化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1(A)は本発明の実施形態に係る薄型の二次電池(以下「薄型電池」と称する)の全体を示す平面図、図1(B)は図1(A)のB-B線に沿った断面図である。図1は一つの薄型電池(単位電池)を示し、この薄型電池10を複数積層することにより所望の電圧、容量の組電池が構成される。
【0010】
先ず、図1(A)及び図1(B)を参照しながら、本発明の実施形態に係る薄型電池10の全体構成について説明すると、本例の薄型電池10はリチウム系の薄型二次電池であり、3枚の正極板101と、7枚のセパレータと、3枚の負極板103と、正極端子104と、負極端子105と、上部外装部材106と、下部外装部材107と、特に図示しない電解質と、から構成されている。このうちの正極板101、セパレータ102、負極板103及び電解質を特に発電要素109と称する。正極板101、セパレータ102、負極板103の枚数には何ら限定されず、1枚の正極板101、3枚のセパレータ102、及び、1枚の負極板103でも良いし、また必要に応じて正極板101、負極板103及びセパレータ102の枚数を選択して構成することが出来る。
【0011】
図2は、発電要素109を収容した薄型電池10の内部を具体的に示す。図2に示すように、本実施形態の正極板101は、正極端子104へと正極リード104cを介して接続される正極側集電体104aと、この正極側集電体104aの両面に形成された正極層104bと、を有する。同じく、負極板103は、負極端子105へと負極リード105cを介して接続される負極側集電体105aと、この負極側集電体105aの両面に形成された負極層105bと、を有する。また、正極板101の正極層104bと負極板103の負極層105bとの間には、セパレータ102がそれぞれ介在している。
【0012】
本実施形態では、リチウム含有複合酸化物に属するLiMnを正極活物質とし、炭素系材料に属するカーボンブラックを導電材とし、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を結着剤として採用する。正極活物質と導電材とを混合し、ポリフッ化ビニリデンを溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に、混合した正極活物質と導電材とを均一に分散させてスラリーを作製し、このスラリーを正極側集電体104aとなる厚さ20μmのアルミ金属箔上にドクターブレード等を用いて均一に塗布し、NMPを乾燥器にて蒸発させ、ローラプレス機により圧延し、アルミ金属箔104a上に正極層104bを作製する。混合されるLiMnと、カーボンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)との重量比は、75〜85:10〜20:5〜10であり、好ましくは85:10:5乃至75:20:5である。正極層104bが作製された後、スリッタ等により所定の大きさ(幅70mm、長さ120mm、厚さ0.18mm)に切断し正極板101を得る。
【0013】
正極活物質としては、LiMnのほか、リチウムマンガン複合酸化物(LiMnO、層状構造LiMnO、スピネル構造LiMnO、LiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO)、リチウムマンガンリン酸化合物(LiMnPO)、リチウムバナジウム複合酸化物(LiV)、リチウムチタン複合酸化物(LiTi)、その他のLiM(Mは遷移元素、X、Yは定比及び不定比を含む)等のリチウム複合酸化物を挙げることが出来る。
【0014】
また、本実施形態では、負極活物質として第1の非黒鉛系材料と第2の非黒鉛系材料との2種類の非黒鉛系材料を用い、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を結着剤として採用する。
【0015】
第1及び第2の非黒鉛系材料としては、例えば、黒鉛化処理により黒鉛になり難い難黒鉛化炭素(non-graphiting carbon、hard carbon)や、黒鉛化処理により黒鉛になり易い易黒鉛化炭素( graphiting carbon、soft carbon)等 を例示することが出来る。特に、負極活物質として難黒鉛化炭素を用いると、充放電時における電位の平坦特性に乏しく放電量に伴って出力電圧も低下するので、通信機器や事務機器の電源には不向きであるが、電気自動車の電源として用いると急激な出力低下がないので有利である。
【0016】
この第1および第2の非黒鉛系材料は、X線回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が相互に異なったり、同一の出発材料を相互に異なる焼成温度で焼成されて生成されることにより、相互に容量が異なっている。なお、難黒鉛化炭素の出発材料としては、一般的な熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フルフラール樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることが出来る。
【0017】
以上のような第1及び第2の非黒鉛系炭素材料を50:50の重量比で混合し、さらにこの混合物とポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを90:10の重量比で混合し、これをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを作製し、このスラリーを負極側集電体105aとなる厚さ10μmの銅金属箔上にドクターブレード等を用いて均一に塗布し、NMPを乾燥器にて蒸発させ、ローラプレス機により圧延し、銅箔105b上に負極層105bを形成する。負極層105bが作製された後、スリッタ等により所定の大きさ(幅70mm、長さ120mm、厚さ0.11mm)に切断し、負極板103を得る。なお、第1及び第2の非黒鉛系炭素材料の混合比は、初期容量や寿命特性に応じて、10:90〜90:10の範囲で変化させることが出来る。
【0018】
一般的に、大きな容量の難黒鉛化炭素を用いて初期容量を大きくすると、充放電サイクルに伴う負極の容量劣化が悪化するのに対し、小さな容量の難黒鉛化炭素を用いて充放電サイクルに伴う負極の容量劣化を低減すると、初期容量が小さくなる傾向がある。これに対し、本実施形態では、負極活物質として、容量が相互に異なる2種類の非黒鉛系炭素材料を用いることにより、比較的大きな初期容量を確保しつつ充放電サイクル特性を向上して長寿命化を図ることが可能となる。
【0019】
セパレータ102は、上述した正極板101と負極板103との短絡を防止するもので、電解質を保持する機能を備えても良い。セパレータ102は、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等から構成される微多孔性膜であり、過電流が流れると、その発熱によって膜の空孔が閉塞され電流を遮断する機能をも有する。なお、本発明のセパレータ102は、ポリオレフィン等の単層膜のみに限られず、ポリプロピレン層をポリエチレン層でサンドイッチした三層構造や、ポリオレフィン微多孔性膜と有機不織布等を積層したものも用いることが出来る。セパレータ102を複層化することで、過電流防止機能、電解質保持機能及びセパレータの形状維持(剛性向上)機能等の諸機能を付与することができる。また、セパレータ102の代わりにゲル電解質又は真性ポリマー電解質等を用いることも出来る。
【0020】
以上の正極板101と負極板103とが交互に、且つ、当該正極板101と負極板102との間にセパレータ102が位置するような順序で積層され、さらに、その最上部及び最下部にセパレータ102が一枚ずつ積層されている。そして、3枚の正極板101のそれぞれは、正極側集電体104aが正極リード104cを介して、金属箔製の正極端子104に接続される一方で、3枚の負極板103は、負極側集電体105aが負極リード105cを介して、同じく金属箔製の負極端子105に接続されている。なお、正極端子104も負極端子105も電気化学的に安定した金属材料であれば特に限定されないが、正極端子104としてはアルミニウムやアルミニウム合金等を挙げることが出来、負極端子105としてはニッケル、銅又はステンレス等を挙げることが出来る。また、本例の正極側集電体104aも負極側集電体105aの何れも、正極板101及び負極板103の集電体を構成するアルミニウム箔やニッケル箔、銅箔を延長して構成されているが、別途の材料や部品により当該集電体104a、105aを構成することも出来る。
【0021】
以上の発電要素109は、上部外装部材106及び下部外装部材107により封止されている。これら上部外装部材106及び下部外装部材107は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルムや、アルミニウム等の金属箔の両面をポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂でラミネートした、樹脂−金属薄膜ラミネート材等の、柔軟性を有する材料で形成されている。
【0022】
そして、これらの上部外装部材106及び下部外装部材107によって、上述した発電要素109、正極端子104の一部及び負極端子105の一部を包み込み、当該外装部材106、107により形成される空間に、有機液体溶媒に過塩素酸リチウム(LiClO)やホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等のリチウム塩を溶質とした液体電解質を注入した後、上部外装部材106及び下部外装部材107の外周縁を熱融着等の手法により封止する。
【0023】
外装部材内に封入される液体電解質の有機液体溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のエステル系溶媒に、γ−ブチラクトン(γ−BL)やジエトシキエタン(DEE)等のエーテル系溶媒その他の混合、調合した有機液体溶媒を用いることも出来る。
【0024】
なお、封止された外装部材106、107の一方の端部から、正極端子104が導出するが、正極端子104の厚さ分だけ上部外装部材106と下部外装部材107との接合部に隙間が生じるので、薄型電池10内の封止性を維持するために、当該正極端子104と外装部材106、107とが接触する部分に、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)から構成されたシールフィルムを熱融着等の手法により介在させることも出来る。同様に、封止された外装部材106、107の他方の端部からは、負極端子105が導出するが、ここにも正極端子104側と同様に、当該負極端子105と外装部材106、107とが接触する部分にシールフィルムを介在させることも出来る。なお、正極端子104及び負極端子105の何れかおいても、シールフィルムは外装部材106、107を構成する樹脂と同系統の樹脂から構成することが熱融着性の点から望ましい。
【0025】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。例えば、上述の実施形態では、電極板を積層したタイプの薄型の二次電池に適用するように説明したが、本発明では特にこれに限定されず、電極板を捲回したタイプの二次電池に適用しても良い。
【実施例】
【0026】
以下、本発明をさらに具体化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態で用いた薄型電池の効果を確認するためのものである。
【0027】
実施例1
LiMn(正極活物質)にカーボンブラック(導電材)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を混合した粉末をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散してスラリーとし、当該スラリーをアルミニウム箔(正極側集電体)の両主面に均一に塗布して乾燥させた後、圧縮及び裁断して正極板を作製した。
【0028】
第1の非黒鉛系炭素材料として、出発材料である熱硬化性樹脂を約1100℃で焼成して、容量約350[mAh/g]の難黒鉛化炭素を作製した。また、第2の非黒鉛系炭素材料として、同様の熱硬化性樹脂を約1200℃で焼成して容量約300[mAh/g]の難黒鉛化炭素を作製した。
【0029】
なお、第1の非黒鉛系炭素材料は、Cu−Kα線を用いたX線回折法による得られるC軸方向の面間隔d002値が約0.36[nm]であるのに対し、第2の非黒鉛系炭素材料は、Cu−Kα線を用いたX線回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が約0.35[nm]であり、これら第1及び第2の非黒鉛系炭素材料は、X線回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が相互に異なっていた。
【0030】
そして、これら第1及び第2の非黒鉛系炭素材料を重量比で50:50で混合し、さらにこの混合物をポリフッ化ビニリデン(PVDF)に混合した粉末をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散してスラリーとし、当該スラリーを銅箔(負極側集電体)の両主面に均一に塗布して乾燥させた後、圧縮及び裁断して負極板を作製した。
【0031】
このように作製した正極板と負極板とを、それらの間にセパレータを挟みながら交互に積層して電極積層体とした。各電極板の積層枚数は、所定の電池容量が確保出来るように設定した。
【0032】
この電極積層体から延びている各正極側集電体をアルミニウム製の正極端子にそれぞれ溶接すると共に、当該積層体から延びている各負極側集電体をニッケル製の負極端子にそれぞれ溶接した。
【0033】
次いで、電極端子が接続された電極積層体を、2枚の外装部材の間に収容し、電極端子の一部を外周縁から導出させながら当該外装部材の短辺側二辺と長辺側一辺の合計三辺を熱融着し、当該開口から所定量の電解液を注入した後に、外装部材により形成される空間内を減圧した状態で、残る一辺を熱融着して実施例1の電池サンプルを作製した。
【0034】
電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DMC)の混合溶媒に支持電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解したものを使用した。
【0035】
この実施例1の電池サンプルについて、以下の充放電サイクル試験により電池寿命の評価を行った。この充放電サイクル試験では、1サイクルが、充電→充電休止→放電→放電休止の4ステップから構成される充放電サイクルを25℃の環境下で繰り返し、各サイクル毎に放電容量[Ah](=放電電流[A]×放電時間[h])を測定し、さらにこの放電容量を負極活物質重量で除算することにより負極容量[mAh/g]を算出した。そして、初期サイクル時の負極容量に対して1000サイクル後の負極容量の減少幅(負極容量の劣化率、図3における直線の傾き)が小さい程、電池寿命が長いと評価し、その減少幅が大きい程、電池寿命が短いと評価した。
【0036】
なお、充放電サイクルの充電ステップでは、電流値1CA(60分で全容量を放電させる電流値)で充電を行い、電圧値が4.2[V]となったら充電を停止した。また、充放電サイクルの放電ステップでは、電流値1CAで放電を行い、電圧値が2.5[V]となったら放電を休止した。さらに充放電サイクルの各休止ステップでは、10分間の休止時間をそれぞれ設けた。実施例1の充放電サイクル試験の試験結果を図3に示す。
【0037】
比較例1
比較例1の二次電池は、熱硬化性樹脂を1100℃で焼成した容量約350[mAh/g]の難黒鉛化炭素のみを負極活物質として用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で電池サンプルを作製した。この比較例1の電池サンプルについて、実施例1と同様の条件で、充放電サイクル試験により電池寿命の評価を行った。比較例1の充放電サイクル試験の試験結果を図3に示す。
【0038】
比較例2
比較例2の二次電池は、熱硬化性樹脂を1200℃で焼成した容量約300[mAh/g]の難黒鉛化炭素のみを負極活物質として用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で電池サンプルを作製した。この比較例2の電池サンプルについて、実施例1と同様の条件で、充放電サイクル試験により電池寿命の評価を行った。比較例2の充放電サイクル試験の試験結果を図3に示す。
【0039】
考察
充放電サイクル試験の結果より、比較例1の電池サンプルは、大きな初期容量が確保されているものの、比較例2の電池サンプルと比べると、充放電サイクルを繰り返すに伴って負極容量が大きく減少している(負極容量の劣化率が大きい)ので電池寿命が短いことが分かる。また、比較例2の電池サンプルは、負極容量の劣化率を小さく抑えられているが、小さな初期容量しか確保されていないことが分かる。
【0040】
これに対し、容量が異なる2種類の難黒鉛化炭素を用いた実施例1の電池サンプルでは、初期容量が比較例1及び比較例2における初期容量値の略中間値となっているにも関わらず、1000サイクル後の負極容量は、比較例1及び比較例2における1000サイクル後の負極容量の略中間値とはならずに、比較例1における1000サイクル後の負極容量と略同一値となっており、その負極容量の劣化率は、電池寿命に優れた比較例2と同程度となっており、大きな初期容量を確保しつつ充放電サイクル特性が向上して長寿命化が図られていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1(A)は、本発明の実施形態に係る薄型電池の全体を示す平面図であり、図1(B)は図1(A)のB-B線に沿った断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る薄型電池の内部の構成を詳細に示す断面図である。
【図3】図3は、実施例における二次電池の負極容量と充放電サイクル回数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
10…薄型電池
101…正極板
102…セパレータ
103…負極板
104…正極端子
104a…正極側集電体
104b…正極層
104c…正極リード
105…負極端子
105a…負極側集電体
105b…負極層
105c…負極リード
106…上部外装部材
107…下部外装部材
109…発電要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも負極活物質及び結着剤を混合した負極合剤が集電体に塗布された二次電池用負極板であって、
前記負極活物質として、容量が相互に異なる2種類の非黒鉛系炭素材料を用いた二次電池用負極板。
【請求項2】
前記2種類の非黒鉛系炭素材料は何れも難黒鉛化炭素である請求項1記載の二次電池用負極板。
【請求項3】
前記2種類の難黒鉛化炭素は、X線回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が相互に異なる請求項2記載の二次電池用負極板。
【請求項4】
前記2種類の難黒鉛化炭素は、出発材料を相互に異なる焼成温度で焼成して形成されている請求項2又は3記載の二次電池用負極板。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の負極板を含む電極板を有する発電要素が外装部材に収容されて封止され、前記電極板に接続された電極端子が前記外装部材から導出した二次電池。
【請求項6】
出発材料を焼成して負極活物質を生成する焼成ステップと、
少なくとも前記負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を生成する混合ステップと、
前記負極合剤を集電体に塗布する塗布ステップと、を少なくとも有する二次電池用負極板の製造方法であって、
前記焼成ステップにおいて、出発材料を相互に異なる焼成温度で焼成して、前記負極活物質として容量が相互に異なる2種類の非黒鉛系炭素材料を生成し、
前記混合ステップにおいて、前記2種類の非黒鉛系炭素材料を前記結着剤と混合する二次電池用負極板の製造方法。
【請求項7】
前記2種類の非黒鉛系炭素材料は何れも難黒鉛化炭素である請求項6記載の二次電池用負極板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−79859(P2006−79859A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260108(P2004−260108)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】