説明

二軸配向ポリエステルフィルム

本発明の主たる融点が245〜265℃であるポリエステルを主成分とし、0℃における落袋強度指数が2.0以上、120℃におけるフィルム長手方向の破断強度が100MPa以上である二軸配向ポリエステルフィルムは、耐熱性、機械強度、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れ、特に、包装材料として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、耐熱性、機械強度に優れ、かつ耐衝撃性及び耐屈曲性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムは、優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性、表面特性、光学特性、耐熱性、耐薬品性などの性質を利用して、磁気記録媒体用、工業材料用、包装用など種々の用途に幅広く用いられている。しかし、ポリエステルフィルムは、包装材料などで特に求められる耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性に劣るため、包装材料用途では、ナイロン二軸延伸フィルムが多く使用されている。ナイロンフィルムは、吸湿率および湿度膨張係数が大きく、保存時や加工時の取り扱いに注意を要し、蒸着加工が困難である。また、耐熱性や印刷適性、腰の強さ、寸法安定性を補うため、ナイロンフイルムは、ポリエステルフィルムと貼り合わせた形態で用いられる場合が多い。
また、ポリエステルフィルム単体に耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性を与える方法として、ポリエチレンテレフタレートにダイマー酸などの長鎖脂肪族ジカルボン酸等の成分を共重合することによって柔軟性ポリエステルフィルムを得る方法(特開平6−79776号公報)や、変性ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを配合し柔軟性ポリエステルフィルムを得る方法(特開2001−11213号公報)が提案されている。このような柔軟フィルムでは弾性率が大きいというPETフィルム本来の長所が損なわれ、高価な共重合成分を使用するためコストが高くなりやすい。さらに、従来の柔軟フィルムは、耐熱性が低く、粘着しやすいため製膜工程や加工工程で巻き付きなどのトラブルが起こりやすいという問題があった。
【発明の開示】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、主たる融点が245〜265℃であるポリエステルを主成分とし、0℃における落袋強度指数が2.0以上、120℃におけるフィルム長手方向の破断強度が100MPa以上である。
さらに、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、好ましくは、0℃における落袋強度指数が2.0以上、120℃におけるフィルム長手方向の破断強度が100MPa以上である二軸配向ポリエステルフィルムであって、融点が245〜265℃である芳香族ポリエステルを主成分とする層(A層)と、融点が215〜265℃である混合熱可塑性樹脂からなる層(B層)が交互に5層以上積層され、B層の混合熱可塑性樹脂は、芳香族ポリエステルを90〜99.8重量%、ガラス転移温度が20℃以下である熱可塑性樹脂を0.2〜10.0重量%含有し、主たる融点が245〜265℃であるポリエステルを主成分とする。
発明の実施するための最良の形態
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、主たる融点が245〜265℃であるポリエステルを主成分とし、0℃における落袋強度指数が2.0以上、120℃におけるフィルム長手方向の破断強度が100MPa以上である二軸配向ポリエステルフィルムである。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに用いるポリエステルは、主たる融点が245〜265℃であるポリエステルである。ここで、主たる融点とは、示差走査熱量計を用いて昇温速度10℃/分で測定して得られる融解ピークの温度を指す。また、融解ピークが複数存在する時は、主たる融点とは、もっとも融解熱量の大きなピーク温度を指す。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに用いるポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と、エチレグリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種の脂肪族アルコールとからなる芳香族ポリエステルを主体とするポリエステルが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、繰り返し単位の90モル%以上がポリエチレンテレフタレートおよびポリテトラメチレンテレフタレートからなるポリエステルとすることが好ましい。繰り返し単位の90モル%以上がポリエチレンテレフタレートおよびポリテトラメチレンテレフタレートからなるポリエステルからなる二軸配向ポリエステルフィルムは、特に機械強度および耐熱性が優れており、かつ耐屈曲性、耐衝撃性に優れたフィルムとなる。
また、0℃における落袋強度指数とは、無延伸ポリプロピレンシートと二軸配向ポリエステルフィルムを貼り合わせて袋とし、食塩水を充填して0℃において落下テストを行った際に破袋するまでの落下回数を指す。無延伸ポリプロピレンシートは、一般に袋材として用いられる際にシーラントとして用いられている。
0℃における落袋強度指数は、具体的には、下記の方法で測定した。
まず、三井武田ケミカル(株)製接着剤タケラックA610と硬化剤タケネートA50を9:1で混合し、酢酸エチルで希釈した接着剤を用い、ドライ厚さ1μmとなるようにサンプル表面に塗布し、厚さ60μmの東レ合成フィルム(株)製トレファンNO T3931と二軸配向ポリエステルフィルムを貼り合わた。
次に貼り合わせフィルムを40℃で48時間硬化させ、ヒートシーラー(160℃)で4方シール袋(20cm×15cm)を作成した。2.5重量%食塩水を250gを袋に封入し、食塩水を封入した袋を0℃の冷蔵庫で8時間保温した。その後、1.25mの高さから、食塩水を封入した袋を0℃で落下させ、破袋もしくは袋にピンホールが発生するまでの落下回数を1サンプルについて10回以上測定した。破袋もしくは袋にピンホールが発生するまでの落下回数の平均値を0℃における落袋強度指数とした。
市販のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いると、落袋強度指数は1.0、すなわち全て1回目の落下で袋が破れるが、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、低温での耐衝撃性に優れ、落袋強度指数が、2.0以上、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上である。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、120℃におけるフィルム長手方向の破断強度が100MPa以上である。120℃におけるフィルム長手方向の破断強度が100MPaより小さい場合、印刷、蒸着、貼り合わせなどの加工工程で高温になった時に工程張力によって、フィルム切れ、片伸び、フィルム幅方向の収縮などの問題が発生する。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、120℃におけるフィルム長手方向の破断強度が、好ましくは120MPa以上である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのフィルム全体の厚さは、例えば、包装用フィルムの場合は、好ましくは5〜40μm、特に好ましくは10〜25μmである。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのフィルム長手方向および幅方向の弾性率が共に3GPa以上であることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、特に0℃における落袋強度が強く、耐熱性に優れたフィルムとするためには、融点が245〜265℃である芳香族ポリエステルを主成分とする層(A層)と、融点が215〜265℃である混合熱可塑性樹脂からなる層(B層)が交互に5層以上積層され、B層の混合熱可塑性樹脂が、芳香族ポリエステルを90〜99.8重量%、ガラス転移温度が20℃以下である熱可塑性樹脂を0.2〜10.0重量%含有する二軸配向ポリエステルフィルムとすることが好ましい。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、下記の構成のフィルムとすることにより、0℃における落袋強度指数が2.0以上である二軸配向ポリエステルを得ることもできる。
融点が245〜265℃である芳香族ポリエステルを主成分とする層(C層)と、ポリエステルを主成分とする層(D層)を交互に9層以上積層し、ポリエステルを主成分とする層(D層)が、融点が210〜260℃であり、D層が、C層を構成するポリエステルよりも融点が5〜35℃低いポリエステルを主成分とする層であり、フィルム全体の厚さに対するD層の厚みの比率を5〜20%とし、C層の面配向を比較的高く、かつD層の面配向が低くなるような延伸条件、熱固定条件とする。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムについて、さらに説明をする。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、A層及びB層に用いられる芳香族ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と、エチレグリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種の脂肪族アルコールとからなる芳香族ポリエステルであることが好ましい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのA層に用いる芳香族ポリエステルは、耐熱性が高く機械強度の大きなフィルムを得るために、融点が245〜265℃であることが好ましい。融点が245〜265℃であると、積層フィルムの耐熱性や機械強度が良好である。A層に用いる芳香族ポリエステルの融点は、245〜265℃がより好ましい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に用いる混合熱可塑性樹脂は、融点が215〜265℃である混合熱可塑性樹脂であることが好ましい。B層に用いる混合熱可塑性樹脂の融点は230〜255℃がより好ましい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に用いる混合熱可塑性樹脂は、芳香族ポリエステルを90〜99.8重量%と、ガラス転移温度20℃以下である熱可塑性樹脂を0.2〜10.0重量%含有することが好ましい。B層に用いる混合熱可塑性樹脂には、ガラス転移温度20℃以下である熱可塑性樹脂を、0.5〜5重量%含有することがより好ましい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に用いる混合熱可塑性樹脂中の芳香族ポリエステルが90〜99.8重量%であると、耐衝撃性、耐屈曲性が低下せず、耐熱性、力学強度が良好である。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に用いる混合熱可塑性樹脂中のガラス転移温度が20℃以下である熱可塑性樹脂を0.2〜10.0重量%含有する場合は、耐衝撃性、耐屈曲性が低下せず、耐熱性、力学強度が良好であり、フィルムのヘイズが高くなって、不透明なフィルムとなりやすいという問題が起きない。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に用いる混合熱可塑性樹脂中の混合熱可塑性樹脂の融点が215〜265℃であると、耐熱性、力学強度が良好である。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムの混合熱可塑性樹脂からなるB層は、単層のフィルムとして用いた場合であっても、耐屈曲性が比較的優れたものである。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、好ましくは、融点が245〜265℃である芳香族ポリエステルを主成分とするA層と、混合熱可塑性樹脂からなるB層を、交互に5層以上積層することによって、耐熱性、機械強度と耐屈曲性を両立させることができ、さらに耐衝撃性、耐屈曲性を向上することができる。積層層数が5層以上の場合、耐衝撃性や耐屈曲ピンホール性が良好なフィルムを得ることができ、また、加工工程や使用時に加熱した場合、A層とB層の寸法変化の差によってカールしたり平面性が悪化してしまう問題が起きない。さらに、特に耐熱性と落袋強度、および耐屈曲ピンホール性が高いフィルムとするためには、A層とB層の層数を9層以上、特に好ましくは50層以上200層以下とすることが好ましい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのB層は、本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのA層と比較して、耐屈曲性、耐衝撃性に優れており、A層と交互に積層することによって、屈曲変形を受けた時のA層の変形量を低下させ、衝撃を受けた時の衝撃吸収層として機能する。二軸配向ポリエステルフィルムの耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性は、一般に積層層数を増加することによって、屈曲変形や衝撃吸収を分散させることができるため、さらに向上させることができる。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムの各層の平均厚さは、好ましくは0.02〜0.5μm、さらに好ましくは0.05〜0.15μmである。各層の平均厚さが0.5μmより大きい場合は、B層単体としての耐屈曲性や耐衝撃性は十分なものの、A層の屈曲変形や衝撃吸収を分散させる効果が小さくなるため積層フィルムとしての耐衝撃性、耐屈曲ピンホール特性が低下しやすい傾向がある。逆に各層の平均厚さが0.02μmより小さい場合は薄くなりすぎるため、B層単体としての耐屈曲性、耐衝撃性が低下してしまうため積層フィルムとしての耐衝撃性、耐屈曲ピンホール特性が低下しやすくなる。
本発明の好ましい態様の二軸配向積層ポリエステルフィルムを構成するA層に用いる芳香族ポリエステルは、繰り返し単位の70〜95モル%がエチレンテレフタレート単位、5〜30モル%がテトラメチレンテレフタレート単位からなる芳香族ポリエステルを主成分とすることが、特に好ましい。繰り返し単位の70〜95モル%がエチレンテレフタレート単位、5〜30モル%がテトラメチレンテレフタレート単位からなる芳香族ポリエステルを主成分とするA層とすることにより、コスト、機械特性、耐熱性と耐屈曲ピンホール性を両立することができる。エチレンテレフタレート単位の含有量が70モル%より小さいと、耐熱性、機械強度に劣った積層フィルムとなる場合がある。また、テトラメチレンテレフタレート単位の含有量が30モル%より大きい場合は、耐熱性、機械強度に劣った積層フィルムとなる場合がある。また、エチレンテレフタレート単位の含有量が95モル%より大きい場合は、耐屈曲性が劣った積層フィルムと場合がある。ブチレンテレフタレート単位の含有量が5モル%より小さい場合は、耐屈曲性が劣った積層フィルムとなる場合がある。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するA層に用いる芳香族ポリエステルには、イソフタル酸やプロパンジオール、シクロヘキサンジメタノールや長鎖脂肪酸などの共重合成分を少量用いても良い。A層に用いる芳香族ポリエステルのエチレンテレフタレート単位とテトラメチレンテレフタレート単位の合計量が全ポリエステル中の90モル%以上であることが好ましい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するB層に用いる混合熱可塑性樹脂は、好ましくは、繰り返し単位の20〜90モル%がエチレンテレフタレート単位と、繰り返し単位の10〜80モル%がテトラメチレンテレフタレート単位とからなり、エチレンテレフタレート単位とテトラメチレンテレフタレート単位の合計量が90モル%以上である芳香族ポリエステルと、ガラス転移温度が30℃以下である熱可塑性樹脂を0.2〜10.0重量%含有する混合物である。かかる混合熱可塑性樹脂とした場合に、特に耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性に優れたフィルムを得ることができる。
B層に用いる混合熱可塑性樹脂のエチレンテレフタレート単位は、50〜90モル%がさらに好ましく、テトラメチレンテレフタレート単位は、10〜50モル%がさらに好ましい。B層に用いる混合熱可塑性樹脂のエチレンテレフタレート単位の含有量が90モル%以下であると、耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性が良好なフィルムとなる。B層に用いる混合熱可塑性樹脂のテトラメチレンテレフタレート単位の含有量が10モル%以上であると、耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性が良好なフィルムとなる。また、B層に用いる混合熱可塑性樹脂のエチレンテレフタレート単位の含有量が50〜90モル%であると、耐熱性のよいフィルムとなり、A層との熱特性の差が小さいので、カール発生や平面性の悪化がなく、界面での接着性が低下するといった問題が発生しない。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのA層を構成するポリエステルの融点と、B層を構成する混合樹脂の融点の差が10℃以下であることが好ましい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのA層は、最外層であることが好ましい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムの該A層および該B層には、取り扱い性、加工性を向上させるために、平均粒子径0.01〜5μmの公知の粒子を、含有することが好ましい。本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのA層およびB層に含有させる粒子は、内部粒子、無機粒子、有機粒子が好ましい。本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのA層およびB層には、粒子を、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.3〜3重量%含有させる。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのA層およびB層に含有させることができる内部粒子の析出方法としては公知の技術を用いることができ、例えば、特開昭48−61556号公報、特開昭51−12860号公報、特開昭53−41355号公報、および特開昭54−90397号公報などに記載の技術を採用することができる。さらに、特公昭55−20496号公報や特開昭59−204617号公報などに記載の他の粒子を併用することもできる。平均粒子径を0.01〜5μmとすると、フィルムに欠陥が生じない。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムのA層およびB層に含有させることができる無機粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ、マイカ、カオリン、クレーなど、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子を使用することができる。なかでも、湿式および乾式シリカ、アルミナなどの無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。さらに、これらの内部粒子、無機粒子および有機粒子は二種以上を併用してもよい。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するA層の積層厚さの合計値ΣTaと、B層の積層厚さの合計値ΣTbの比率(ΣTa/ΣTb)は、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜7である。Ta/Tbが1より小さいと、耐熱性、機械強度の劣ったフィルムとなる場合があり、10より大きいと、耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性が悪くなる場合がある。
本発明の好ましい態様の二軸配向ポリエステルフィルムは、5層以上の積層フィルムである。本発明の好ましい態様の二軸配向積層ポリエステルフィルムの製造方法は、ポリマーAとポリマーBを交互に配置することから、2台以上の溶融押出機を用いて、各々の押出機に該ポリマーを供給し、溶融押出を行い、Tダイ上部に設置したフィードブロックやスタティックミキサー、マルチマニホールドなどを用いて積層する方法を好ましく用いることができる。
特に好ましい製造方法としては、ポリマーAおよびポリマーBをフィードブロックにて3層以上に積層した後、スタティックミキサーを用いて積層数を増加させ、Tダイからシート状に吐出し、金属冷却ロール上で急冷することによって、未延伸シートを得る方法が採用される。この時、各層の厚みムラを低減させ、層間の接着力の大きなフィルムを得るためには、上記A層を構成するポリエステルの融点と、B層を構成する混合熱可塑性樹脂の融点の差が10℃以下であることが好ましい。また、上記A層が最外層に積層すると、滑り性、表面の耐熱性が良好となるので好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上記のようにして得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、金属アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウムのよりなる群から選ばれた少なくとも一種の金属化合物の蒸着層を設けることが好ましい。
二軸配向ポリエステルフィルムに蒸着されるこれらの金属化合物は、単独で用いても良いし、混合して用いても良い。
また、蒸着簿膜の作製方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができるが、生産性やコストの点から、真空蒸着法が最も好ましい。
また、二軸配向ポリエステルフィルムと蒸着層との密着性を向上させるために、フィルムの表面をあらかじめコロナ放電処理やアンカーコート剤を塗布するなどの方法により前処理しておくことが望ましい。
本発明の蒸着層を設けた二軸配向ポリエステルフィルムは、耐屈曲性に優れ、袋として用いたときに屈曲変形してもガスバリア性の低下が少ない。また、耐熱性に優れ、弾性率が大きいため、蒸着後の加工工程における工程張力によってフィルムが伸びることによる蒸着層の破断に起因するガスバリア性低下が起こりにくいという長所がある。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを包装袋用として使用する場合には、二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に融点が100〜230℃のヒートシール層を設けることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにヒートシール性を付与するためには、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等のシーラントとよばれる無延伸フィルムと積層して積層体として用いることができる。また、要求性能に応じて、ヒートシール層を設けた二軸配向ポリエステルフィルムに、他の延伸フィルム、たとえば、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等を積層してもよい。他の延伸フィルムをラミネートする方法としては、接着剤を用いたドライラミネート法、押出ラミネート法などの方法が用いられる。
次に、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい製造方法について、具体的に記述する。
芳香族ポリエステルの調製方法としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートの場合、下記の方法を採用することができる。
テレフタル酸ジメチル100重量%、エチレングリコール60重量%の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量%、三酸化アンチモン0.03重量%を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行う。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量%を添加した後、重縮合反応層に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、所望の極限粘度のポリエチレンテレフタレート樹脂を得る。粒子を添加する場合は、エチレングリコールに粒子を分散させたスラリーを用いて重合を行うことが好ましい。
また、ポリテトラメチレンテレフタレートの製造方法としては、例えば以下のように行うことができる。
テレフタル酸100重量%、1,4−ブタンジオール110重量%の混合物を窒素雰囲気下で140℃まで昇温して均一溶液とした後、テレフタル酸に対してオルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.054重量%、モノヒドロキシブチルスズオキサイド0.054重量%を添加し、常法によりエステル化反応を行う。次いで、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.066重量%を添加して、減圧下で重縮合反応を行い、所望の極限粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を得る。
なお、A層、B層に用いる芳香族ポリエステルとして、繰り返し単位としてエチレンテレフタレートとテトラメチレンテレフタレートを有する芳香族ポリエステルを用いる場合、上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートとポリテトラメチレンテレフタレートをあらかじめ二軸押出機を用いて混練しても良い。また、溶融時の粘度差が大きくならないようにそれぞれのポリエステルの重合度を工夫し、製膜の押出時に樹脂チップを混合して用いることが好ましい。また、B層用混合樹脂としては、それぞれの樹脂チップを混合して用いても良い。また、ガラス転移温度が20℃以下である熱可塑性樹脂の分散性の良いフィルムを得るためには、あらかじめポリエチレンテレフタレートもしくはポリテトラメチレンテレフタレート中に低ガラス転移温度の熱可塑性樹脂を高濃度に混練して得たマスターチップを用いる方法が特に好ましい。
上記のようにして得たポリエステルを各々窒素雰囲気、真空雰囲気などで、例えば150℃5時間の乾燥を行い、その後、個別の押出機に供給し溶融する。次いで、別々の経路にて、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を行い、フィードブロックにて、A/B/Aの3層に積層する。ついで、スタティックミキサーを用いて、幅方向に2分割し、合流させることによって5層フィルムとし、さらに目的とする層数になるように、スタティックミキサーを設け、積層数を所望の数に増加させた後、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。
その際、例えば、ワイヤー状電極もしくはテープ状電極を使用して静電印加する方法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けたキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステルのガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
また、ポリオレフィンを使用する場合には、圧空により冷却ドラムに押しつけるエアナイフ法が好ましい。かかる未延伸フィルムを用いて長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行なう。
かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、2.0〜6.0倍、さらに好ましくは2.8〜5.5倍が採用される。また、延伸速度は1,000〜200,000%/分であることが望ましく、延伸温度は、ポリエステルの場合、ガラス転移点〜(ガラス転移点+100℃)の温度範囲であれば、任意の温度とすることができる。延伸温度は、好ましくは80〜140℃、特に好ましくは長手方向の延伸温度を90〜125℃、幅方向の延伸温度を80〜130℃とするのがよい。また、延伸は各方向に対して複数回行なってもよい。
さらに二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行なう。熱処理はオーブン中、加熱されたロール上など従来公知の任意の方法により行なうことができる。熱処理温度は120℃以上ポリエステルの融点以下の任意の温度とすることができ、成形加工性、耐衝撃性の点から120〜230℃の熱処理温度であることが好ましい。かかる好ましい温度であれば、耐衝撃性が良好で、成形加工性が悪化することもない。成形後の耐衝撃性の点からは熱処理温度は150〜220℃がさらに好ましく、170〜210℃であればよりいっそう好ましい。また、熱処理時間は、他の特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは1〜60秒間行うのがよい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。さらに、インク印刷層や接着剤、蒸着層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、コーティング層を設けることもできる。
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)融点、ガラス転移点
セイコーインスツルメント社製のDSC(示差走査熱量計)RDC220を用いて測定した。試料5mgをDSC装置にセットし、25℃から10℃/分で300℃まで昇温した際に結晶融解に基づく吸熱ピーク温度を融点とした。ガラス転移点が0℃以下の樹脂は、−100℃から10℃/分で300℃まで昇温し、ガラス転移点を測定した。
フィルム5mgをサンプルとして用いて上記条件で測定を行い、結晶融解に基づく吸熱ピーク温度を融点とした融解ピークが複数存在する場合は、融解熱量のもっとも大きな吸熱ピークのピーク温度を主たる融点とした。
また、結晶融解に基づく吸熱ピーク温度を融点とした融解ピークが1つだけ存在する場合は、その吸熱ピークのピーク温度を主たる融点とした。
(2)層数、平均積層厚さTa,Tb、厚さ比(ΣTa/ΣTb)
四酸化ルテニウム染色を行ったフィルム断面の薄膜切片を作成し、透過型顕微鏡像から厚さ方向の層数を数えた。また、A層の平均積層厚さTa、B層の平均積層厚さTbを求めるため、9層以下のフィルムの場合は全ての層について、透過型顕微鏡像の視野を変更して10点以上の厚さを測定して平均値を求め平均積層厚さTa,Tbを求めた。10層以上のフィルムは、A層およびB層それぞれ5層以上を代表層として選択し、それぞれの代表層について透過型顕微鏡像の視野を変更して10点以上の厚さを測定して平均値を求め平均積層厚さTa,Tbを求めた。さらに、Ta,TbにそれぞれA層及びB層の層数を積算して積層厚さ合計値ΣTa、ΣTbを求め、厚さ比(ΣTa/ΣTb)を求めた。
(3)耐屈曲ピンホール性
ASTM F−392に準じて、297×210mmの大きさに切り出したフィルムをゲルボテスターを使用し、炭酸ガスを使用して0℃の温度雰囲気にて、500回の繰り返し屈曲試験を実施した。試験を10回行い、ピンホール個数の平均値を算出した。ピンホール個数は少ないほど好ましい。
ピンホール個数が10個以上の場合は、包装材料としての性能に問題がある。
(4)落袋強度(耐衝撃性)
落袋強度指数(落袋強度−1)
三井武田ケミカル(株)製接着剤タケラックA610と硬化剤タケネートA50を9:1で混合し、酢酸エチルで希釈した接着剤を用いた。ドライ厚さ1μmとなるようにサンプル表面に接着剤を塗布し、汎用無延伸ポリプロピレンシートである厚さ60μmの東レ合成フィルム(株)製トレファンNO T3931と貼り合わせ、40℃で48時間硬化させた貼り合わせフィルムを用いた。ヒートシーラーを用いて、160℃で4方シール袋(20cm×15cm)を作成し、2.5重量%食塩水を250g封入した。食塩水を封入した袋を、0℃の冷蔵庫で8時間保温した後、1.25mの高さから0℃の雰囲気下で落下させ、破袋もしくは袋にピンホールが発生するまでの落下回数を1サンプルについて10回以上測定し、平均値を0℃における落袋強度指数とした。
落袋強度(落袋強度−2)
上記汎用無延伸ポリプロピレンシートでは落袋強度が不足する用途に用いる場合に、衝撃強度の大きなシーラントフィルム、例えばハイレトルト用無延伸ポリプロピレンシートや線状低密度ポリエチレンシートと積層して用いられることが多い。このような高衝撃性シーラントと併用した場合の落袋強度の指標として、下記方法で落袋強度−2を求めた。
三井武田ケミカル(株)製接着剤タケラックA610と硬化剤タケネートA50を9:1で混合し、酢酸エチルで希釈した接着剤を用いた。ドライ厚さ1μmとなるようにサンプル表面に接着剤を塗布し、厚さ50μmの東レ合成フィルム(株)製トレファンNO ZK93K(ハイレトルト用グレード)と貼り合わせ、40℃で48時間硬化させた貼り合わせフィルムを用いた。ヒートシーラーを用いて、160℃で4方シール袋(20cm×15cm)を作成し、2.5重量%食塩水を250g封入した。0℃の冷蔵庫で8時間保温した後、1.25mの高さから0℃の雰囲気下で落下させ、破袋もしくは袋にピンホールが発生するまでの落下回数を1サンプルについて10回以上測定し、平均値を落袋強度−2とした。
落袋強度−2が10回以下の場合、運送時の袋の破れが発生しやすくなるという問題がおきる。
(5)機械強度(弾性率)、耐熱性(120℃での破断強度)
フィルム長手方向に長さ200mm、幅10mmの短冊状に切り出したサンプルを用いた。機械強度の指標となる弾性率は、JIS K−7127(1999)に規定された方法にしたがって、東洋精機製作所株式会社製の引張試験機を用いて、25℃、65%RHにて測定した。初期引張チャック間距離は100mmとし、引張速度は300mm/分とした。測定はサンプルを変更して20回行い、平均値を用いた。
弾性率が3.0GPa以下の場合、工程張力での伸びや破断、袋強度低下が問題となるためフィルム厚さを厚くしたり、補強のためのフィルムと貼り合わせる必要があるなどの問題が生じる。
また、同様のサンプルを用い、恒温恒湿槽を有する東洋精機製作所株式会社製の引張試験機を用いて、120℃での破断強度を測定した。
120℃での破断強度が100MPaより小さい場合、印刷、蒸着、貼り合わせなどの加工工程で高温になった時に工程張力によってフィルム切れ、片伸び、フィルム幅方向の収縮などの問題が発生する。
(6)酸素透過度(ml/m・day)
JIS K 7129(1992)に従って、モダンコントロール社製、OX−TRAN2/20を用いて、温度20℃、湿度0%RHの条件下で測定した。
(7)水蒸気透過度(g/m・day)
JIS K 7129(1992)に従って、モダンコントロール社製、PERMATRAN−W 3/30を用いて温度40℃、湿度90%RHの条件下で測定した。
(8)繰り返し摩擦後の酸素透過度(ml/m・day)
フィルムを幅方向200mm、長手方向300mmにサンプリングし、重さ20gのアルミ棒をフィルム上下に幅方向に取り付け、蒸着していない面をロール接触面として、直径20mmのSUS製金属固定ロール上に90°巻き付けた状態で、JIS K 7129 に準じて、モダンコントロール社製、OX−TRAN2/20を用いて、温度20℃、湿度0%RHの条件下で測定した。
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
(ポリエステルの準備)
実施例には以下のポリエステルおよびポリエーテルエステルを使用した。
(ポリエステル1)
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量%、三酸化アンチモン0.03重量%を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行なった。エチレングリコールは、無粒子のエチレングリコールと一部平均2次粒子径1.1μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを混合し、最終のポリエチレンテレフタレートポリマーの状態で凝集シリカを0.05重量%含有させた。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量%を添加した後、重縮合反応層に移行した。次いで、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、固有粘度0.70、融点255℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
(ポリエステル2)
テレフタル酸100重量部、1,4−ブタンジオール110重量部の混合物を窒素雰囲気下で140℃まで昇温して均一溶液とした後、テレフタル酸に対してオルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.054重量%、モノヒドロキシブチルスズオキサイド0.054重量%を添加し、常法によりエステル化反応を行った。次いで、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.066重量%を添加して、1mmHgの減圧下で重縮合反応を行い、固有粘度0.75のポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。こうして得られたポリエステルチップをさらに常法により固相重合を行い、融点226℃、固有粘度1.25のポリテトラメチレンテレフタレート樹脂を得た。
(ポリエステル3)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90モル%、イソフタル酸10モル%、ジオール成分としてエチレングリコール100モル%を用いて、ポリエステル1と同様のエステル3(融点234℃)を得た。
【実施例1】
A層の原料として、ポリエステル1を80重量部、ポリエステル2を20重量部混合して用い、B層原料として、ポリエステル1を78重量部、ポリエステル2を20重量部、東レデュポン(株)製ハイトレル4777(ガラス転移点:−45℃)を2重量部混合して用いた。混合したポリエステルチップをそれぞれ真空乾燥した後2台の単軸押出機を用いて吐出量の比率をA層:B層=4:1として溶融押出を行い、B層の両面にA層を積層するように合流させた後、分割、積層を行うスタティックミキサーを6段設けることによって合計129層とし、Tダイから20℃に冷却した金属ロール上に静電印加を行いながら吐出させ未延伸フィルムを得た。ついで該未延伸フィルムを90℃に加熱してロール/ロール間で長手方向に3.4倍延伸した。その後テンター式延伸機でで幅方向に105℃で3.7倍延伸し、210℃で幅方向に3%弛緩させながら10秒間熱処理を行った後、100℃の冷却ゾーンを通過させ、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【実施例2】
スタティックミキサーの段数を2段とし、9層フィルムとした以外は実施例1と同様にして厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【実施例3】
スタティックミキサーの段数を1段とし、5層フィルムとした以外は実施例1と同様にして厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【実施例4】
スタティックミキサーの段数を10段とし、2049層フィルムとした以外は実施例1と同様にして厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【実施例5】
A層原料として、ポリエステル1を75重量部、ポリエステル2を25重量部混合して用い、B層原料として、ポリエステル1を42重量部、ポリエステル2を50重量部、東レデュポン(株)製ハイトレル4777(ガラス転移点:−45℃)を8重量部混合して用い、吐出量の比率をA層:B層=2:1とした以外は実施例1と同様にして、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【実施例6】
A層原料として、ポリエステル1を85重量部、ポリエステル2を15重量部混合して用い、吐出量の比率をA層:B層=4:5とした以外は、実施例5と同様にして、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【実施例7】
A層の原料としてポリエステル1を用い、B層原料としてポリエステル2を用いた。混合したポリエステルチップをそれぞれ真空乾燥した後2台の単軸押出機を用いて吐出量の比率をA層:B層=5:1として溶融押出を行い、B層の両面にA層を積層するように合流させた後、分割、積層を行うスタティックミキサーを6段設けることによって合計129層とし、Tダイから20℃に冷却した金属ロール上に静電印加を行いながら吐出させ未延伸フィルムを得た。ついで該未延伸フィルムを88℃に加熱してロール/ロール間で長手方向に3.4倍延伸した。その後テンター式延伸機で幅方向に100℃で3.5倍延伸し、215℃で20秒間熱処理を行った後、100℃の冷却ゾーンを通過させ厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例1
スタティックミキサーを設けず、3層フィルムとした以外は実施例1と同様にして厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例2
A層原料として、ポリエステル1を40重量部、ポリエステル2を60重量部混合して用い、B層原料として、ポリエステル1を30重量部、ポリエステル2を76重量部、東レデュポン(株)製ハイトレル4777(ガラス転移点:−45℃)を4重量部混合して用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例3
B層原料として、ポリエステル1を38重量部、ポリエステル2を50重量部、東レデュポン(株)製ハイトレル4777(ガラス転移点:−45℃)を12重量部混合して用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例4
B層原料として、ポリエステル1を80重量部、ポリエステル2を20重量部混合して用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例5
A層の原料としてポリエステル1を用い、B層原料としてポリエステル3を用いた。混合したポリエステルチップをそれぞれ真空乾燥した後2台の単軸押出機を用いて吐出量の比率をA層:B層=1:5として溶融押出を行い、B層の両面にA層を積層するように合流させ3層フィルムとし、Tダイから20℃に冷却した金属ロール上に静電印加を行いながら吐出させ未延伸フィルムを得た。ついで該未延伸フィルムを70℃に加熱してロール/ロール間で長手方向に3.3倍延伸した。その後テンター式延伸機で幅方向に80℃で3.3倍延伸し、230℃で5秒間熱処理を行った後、100℃の冷却ゾーンを通過させ、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例1〜7、比較例1〜5のフィルム特性を表1,2に示す。実施例の二軸配向ポリエステルフィルムは、本発明の要件を全て満たし、耐屈曲性、耐衝撃強度、機械強度、耐熱性、透明性に優れたものであったが、比較例の二軸配向ポリエステルフィルムは本発明の要件を満たさないため特性に劣るものであった。


【実施例8】
実施例1で得られた二軸配向ポリエステルフィルムの片面にコロナ放電処理を施した後、処理面に連続式真空蒸着機にて酸化アルミニウムを蒸着層厚さ40nmに蒸着した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この酸化アルミニウムを蒸着した二軸配向ポリエステルフィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、繰り返し摩擦後の酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
比較例6
比較例3で得られた二軸配向ポリエステルフィルムについて、実施例8と同様にして、片面にコロナ放電処理を施した後、処理面に連続式真空蒸着機にて酸化アルミニウムを蒸着層厚さ40nmに蒸着した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この酸化アルミニウムを蒸着した二軸配向ポリエステルフィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、繰り返し摩擦後の酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
比較例7
比較例4で得られた二軸配向ポリエステルフィルムについて、実施例8と同様にして、片面にコロナ放電処理を施した後、処理面に連続式真空蒸着機にて酸化アルミニウムを蒸着層厚さ40nmに蒸着した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この酸化アルミニウムを蒸着した二軸配向ポリエステルフィルムの酸素透過度、水蒸気透過度、繰り返し摩擦後の酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
実施例8の酸化アルミニウムを蒸着した二軸配向ポリエステルフィルムは、蒸着フィルムの繰り返し摩擦後も優れた酸素透過度を有するが、比較例6,7の酸化アルミニウムを蒸着した二軸配向ポリエステルフィルムは、蒸着フィルムの繰り返し摩擦後の酸素透過度が大幅に悪化した。

【産業上の利用可能性】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、耐熱性、機械強度、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れ、特に、包装材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる融点が245〜265℃であるポリエステルを主成分とし、0℃における落袋強度指数が2.0以上、120℃におけるフィルム長手方向の破断強度が100MPa以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルム厚さが5〜40μmである請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルム長手方向および幅方向の弾性率が共に3GPa以上である請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
融点が245〜265℃である芳香族ポリエステルを主成分とする層(A層)と、融点が215〜265℃である混合熱可塑性樹脂からなる層(B層)が交互に5層以上積層され、B層の混合熱可塑性樹脂が、芳香族ポリエステルを90〜99.8重量%、ガラス転移温度が20℃以下である熱可塑性樹脂を0.2〜10.0重量%含有する請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
A層とB層が、交互に9層以上積層され、各層の平均厚さが0.02〜0.5μmである請求項4に記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
A層を構成する芳香族ポリエステルが、繰り返し単位の70〜95モル%がエチレンテレフタレート単位、繰り返し単位の5〜30モル%がテトラメチレンテレフタレート単位からなり、エチレンテレフタレート単位とテトラメチレンテレフタレート単位の合計量が90モル%以上である請求項4に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
B層を構成する混合熱可塑性樹脂が、繰り返し単位の20〜90モル%がエチレンテレフタレート単位、繰り返し単位の10〜80モル%がテトラメチレンテレフタレート単位からなり、エチレンテレフタレート単位とテトラメチレンテレフタレート単位の合計量が90モル%以上である芳香族ポリエステルと、ガラス転移温度が30℃以下である熱可塑性樹脂を0.2〜10.0重量%含有する混合熱可塑性樹脂との混合物である請求項4に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項8】
A層の積層厚さの合計値ΣTaと、B層の積層厚さの合計値ΣTbの比率(ΣTa/ΣTb)が1〜10である請求項4に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項9】
A層を構成するポリエステルの融点と、B層を構成する混合樹脂の融点の差が10℃以下である請求項4に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項10】
A層が最外層である請求項4に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項11】
請求項1の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、金属アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素よりなる群から選ばれた少なくとも一種の金属化合物の蒸着層を設けてなる二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項12】
請求項1の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に融点が100〜230℃のヒートシール層を設けてなる二軸配向ポリエステルフィルム。

【国際公開番号】WO2004/024446
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535922(P2004−535922)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011541
【国際出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】