二重床及び間仕切り壁の施工方法
【課題】間仕切り壁の真下に束足を配置する必要をなくすことで、二重床及び間仕切り壁の施工を容易にする。
【解決手段】下床上に多数の高さ調整可能な束足を配置し、細長い板状の補強材を2個以上の前記束足の上面に架け渡し固定し、前記補強材の上に上床ベースボードを貼付し、前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設し、前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付することで、前記課題を解決する。
【解決手段】下床上に多数の高さ調整可能な束足を配置し、細長い板状の補強材を2個以上の前記束足の上面に架け渡し固定し、前記補強材の上に上床ベースボードを貼付し、前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設し、前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付することで、前記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床の上床ベースボードの上から間仕切り壁を立設する二重床及び間仕切り壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献に示されるように、二重床の上床ベースボードを施工し、その上から間仕切り壁を立設する二重床及び間仕切り壁の施工方法(いわゆる床先行工法)が知られている。
図11に基づいて従来の工法を説明する。まず、コンクリートスラブなどの下床16の上に墨出しを行い、束足1が上床ベースボード8の目地9部分になるように束足の配置を決める。さらに、間仕切り壁11の墨出しを行い、間仕切り壁の真下の束足の配置を決める。
周壁17には、際根太(図示せず)を取り付けておく。
墨出しにしたがって下床上に束足を配置した後、束足及び際根太の上に上床ベースボードを敷き、束足の高さの微調整を行う。この状態が図11である。
次に、上床ベースボード8の上に間仕切り壁11の墨出しを行い、間仕切り壁を立設する。次に、上床ベースボード8の上にフローリングなどの仕上材を貼付し、必要に応じて巾木などを取り付け、二重床及び間仕切り壁の施工が完了する。
【特許文献1】特開2005−97901
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、従来工法においては、間仕切り壁を設ける位置の真下に束足を配置する必要があった。このため、下床上に間仕切り壁の墨出しを行う必要があり、また、その束足の高さ調整のために、ベースボードの当該位置に貫通孔を設ける煩雑な手間が必要であった。さらに、上床ベースボードを施工した後に、設計変更で間仕切り壁の位置が変わった場合は、施工した上床ベースボードを排除して、再び下床上に墨出しを行い、束足を配置する必要があった。
【0004】
本発明は、間仕切り壁の真下に束足を配置する必要をなくすことで、二重床及び間仕切り壁の施工を容易にすることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔請求項1〕
本発明は、下床上に多数の高さ調整可能な束足を配置するステップと、
細長い板状の補強材を2個以上の前記束足の上面に架け渡し固定するステップと、
前記補強材の上に上床ベースボードを貼付するステップと、
前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設するステップと、
前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付するステップを有することを特徴とする二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
【0006】
補強材を設けることで、載荷荷重により最もたわみを生じやすい上板ベースボードの中央部が強化され、たわみが生じにくくなるので、間仕切り壁を上床ベースボード上のどの位置に設けても、載荷荷重に対する上床の変形量が少なくなり、充分な剛性を得ることができる。
【0007】
〔請求項2〕
また本発明は、2個以上高さ調整可能な束足の上面に細長い板状の補強材を架け渡して固定したものを下床上に多数配置するステップと、
前記補強材の上に上床ベースボードを貼付するステップと、
前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設するステップと、
前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付するステップを有することを特徴とする二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
このように、あらかじめ、2個以上の束足の上面に強材を架け渡して一体化しておくこともできる。
【0008】
〔請求項3〕
また本発明は、前記束足が、下端の防振ゴムと、該防振ゴムから立設した支持ボルトと、雌ねじ孔を有し該雌ねじ孔に前記支持ボルトの上部が螺合して支持ボルト上部に高さ調整可能に支持された受板を有するものである請求項1又は2の二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
このような束足を用いることで、充分な遮音性能を得ることができる。
【0009】
〔請求項4〕
また本発明は、前記補強材が、前記支持ボルトを回転させるための貫通孔を有する請求項3の二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
貫通孔を設けることで、上床ベースボードの上から容易に束足の高さ調整を行うことができる。
【0010】
〔請求項5〕
また本発明は、前記束足が、前記ベースボードの目地部分に配置され、該目地から前記支持ボルトを回転させることができる請求項3又は4の二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
このようにすることで、上床ベースボードの上から容易に束足の高さ調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、間仕切り壁の真下に束足を配置する必要がなく、上床ベースボードを貼付した後に任意の位置に間仕切り壁を施工できるので、下床に間仕切り壁の墨出しを行う必要がなく、上床ベースボードに貫通孔をあける煩雑な作業も不要となる。
したがって、工期が短縮され、経済性にも優れる。
また、上床は載荷荷重に対して充分な剛性を備え、変形も少ない。さらに、充分な遮音性能も得ることができる。
また、上床ベースボードを施工した後に、設計変更などで間仕切り壁の位置が変わった場合でも、上床ベースボードを排除する必要がなく、変更した位置にそのまま間仕切り壁を施工できるので、設計変更、フリープラン、リニューアルが自由にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施例に関する図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は下床上に束足を配置した状態の平面図、図2は補強材を束足の上面に固定した状態の平面図、図3,4は上床ベースボードを貼付し間仕切り壁を立設した状態の平面図、図5は図3の間仕切り壁の断面説明図、図6は図4の間仕切り壁の断面説明図、図7は束足の断面図、図8は補強材の斜視図、図9は実施例により施工した二重床の軽量床衝撃音遮断性能の測定結果、図10は実施例により施工した二重床の重量床衝撃音遮断性能の測定結果である。
【0013】
図1〜4は、本発明の二重床及び間仕切り壁の施工方法の施工順序を示している。これらの図における部屋は下床16がコンクリートスラブで、周壁17がコンクリート壁であり、出入口などは図面上省略している。
周壁17には、あらかじめ、上床の周囲部分を支持するための際根太(図示せず)を設ける。際根太は任意の構造のものを設ければよいが、例えば特開2007−177392に示されるものは好適である。
【0014】
図1に示すように、下床16の上に所定間隔で束足1を配置する。束足は、上床ベースボードの割付に合わせ、その目地(長辺方向)部分に配置することが望ましい。束足1の、上床ベースボードの短辺方向の間隔aは450〜650mmが好適であるが、幅600mmの上床ベースボードを用い、目地幅が10mmであるときは610mmが望ましい。束足1の、上床ベースボードの長辺方向の間隔bは300〜600mmが好適である。
【0015】
図7に束足1の一例を示す。この束足1は、下端の防振ゴム5と、防振ゴムから立設した支持ボルト4と、その上部に支持される受板2からなる。受板2は雌ねじ孔3aを有し、支持ボルト4上部が雌ねじ孔3aに螺合している。この場合は、受板2にナット3を組み合わせることで雌ねじ孔3aを形成している。支持ボルト4の頂部には溝4aが形成され、上方からドライバーなどの器具でボルトを回転することで受板上面の高さを調整することができる。
受板の素材は木質系(例えば厚さ20〜25mmのパーティクルボード,合板など)、プラスチック、金属などとすることができる。雌ねじ孔は、本実施例のナットを組み合わせるほかに、プラスチックや金属の受板に直接雌ねじ孔を形成してもよい。
【0016】
次に、図2に示すように、細長い板状の補強材6を、2個の束足1の受板上面に架け渡し、接着剤,釘などの適宜な固定手段で補強材と束足(受板)を固定する。これにより、それぞれ2個の束足が補強材を介して一体化される。補強材6は、上板ベースボード8の短辺方向に設けるのが好ましい。この場合は、2個の束足を一組として補強材を架け渡し一体化しているので、外周の一部の束足には補強材が設けらず単独となっている。このように、必ずしも全ての束足が補強材で一体化されている必要はなく、外周部分の一部に補強材が設けられていない束足があっても差し支えない。
また、図2は補強材を2個の束足上に架け渡しているが、3個以上の束足に架け渡し、一体化してもよい。
【0017】
図8に補強材6の一例を示す。補強材6には、束足1の支持ボルトを上からドライバーなどで回転できるように、貫通孔7を設けておくことが好ましい。貫通孔7は、図1のaの間隔であければよいので、あける位置を容易に決めることができる。補強材の素材は合板,木材,パーティクルボードなどの木質系が適しており、厚さは15〜40mm、幅は45〜90mm程度が好適である。
【0018】
次に、図3,4に示すように、補強材6(一部は束足1の上に直接)及び際根太(図示せず)の上に上床ベースボード8を貼付し、その目地9からドライバーなどで支持ボルトを回転させ、上床の高さの微調整を行う。さらに、上床ベースボード8の上に間仕切り壁の墨出しを行い、上床ベースボード8の上から間仕切り壁11を立設する。
上床ベースボード8の材質は、厚さ20〜25mmのパーティクルボードが最も好適であるが、ベニヤ合板などでもよい。
【0019】
図3,5は、間仕切り壁11が上床ベースボード8の短辺方向に設けられた場合で、しかも、補強材6のちょうど中央に位置し、強度的に最も不利な場合である。
この場合の間仕切り壁11は軽量鉄骨製で、上床ベースボード8の上に樋状のランナー13をビス15で固定し、ランナー13に軽量鉄骨12(縦材)を立設し、これにプラスターボード14をビスで貼付したものである。
なお、間仕切り壁の構造は、本実施例のような軽量鉄骨製に限らず、例えば木質材料で軸組を行ったものでもよい。
【0020】
図4,6は、間仕切り壁11が上床ベースボード8の長辺方向に設けられた場合で、しかも、束足1のちょうど中央に位置し、強度的に最も不利な場合である。 間仕切り壁の構造は、図3,5の場合と同じである。
【0021】
間仕切り壁11を施工した後、上床ベースボード8の上に仕上材を貼付する。仕上材はフローリングなど自由であり、また、仕上材は上床ベースボードの上に直接貼付してもよいし、間に緩衝シートや合板などを介して貼付してもよい。
【0022】
図3,4に示す間仕切り壁際において、上床のたわみ量試験を行った。いずれの場合も、次の施工条件により行った。
束足の間隔: 610mm(a)×460mm(b)
補強材: 厚さ30mm×幅60mmの合板
上床ベースボード: 600mm×1800mm×25mmのパーティクルボード
仕上材: 厚さ12mmのフローリングを上床ベースボードに直接貼付
間仕切り壁: 軽量鉄骨製(図5,6)
【0023】
図3は間仕切り壁11が上床ベースボード8の短辺方向に設けられた場合で、しかも、補強材6のちょうど中央に位置し、強度的に最も不利な場合である。同図に示される荷重範囲18(300mm×1100mm)に分銅をおいて荷重をかけ、A,B,Cの3測定点における上床のたわみ量を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0024】
図4は間仕切り壁11が上床ベースボード8の長辺方向に設けられた場合で、しかも、束足1のちょうど中央に位置し、強度的に最も不利な場合である。同図に示される荷重範囲18(300mm×1100mm)に分銅をおいて荷重をかけ、A,B,Cの3測定点における上床のたわみ量を測定した。その結果を表2に示す。
【表2】
【0025】
表1における最大たわみ量は、荷重260kgにおける測定点Cの1.64cm、表2における最大たわみ量は、荷重260kgにおける測定点Bの1.43cmである。荷重範囲300mm×1100mmにおける荷重260kgは1m2に換算すると788kgに相当する。例えば公団試験判定基準によれば、載荷荷重400kg/m2に対して変位が7.5mm以下であるから、本実施例は優にこの基準を満たしている。
本実施例は、最も強度的に不利な位置に間仕切り壁を設けているから、本発明によれば、充分な上床の強度・剛性を得られることが実証された。
【0026】
図9は、図3の二重床について、軽量床衝撃音遮断性能試験(JIS A 1418−1)を行った結果である。床衝撃音遮断性能等級はLr−45で、優れた遮音性能を示している。
【0027】
図10は、図3の二重床について、重量床衝撃音遮断性能試験(JIS A 1418−2)を行った結果である。床衝撃音遮断性能等級はLr−50で、優れた遮音性能を示している。
これにより、本発明によれば、充分な遮音性能を得られることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】下床上に束足を配置した状態の平面図である。
【図2】補強材を束足の上面に固定した状態の平面図である。
【図3】上床ベースボードを貼付し、間仕切り壁を立設した状態の平面図である。
【図4】上床ベースボードを貼付し、間仕切り壁を立設した状態の平面図である。
【図5】図3の間仕切り壁の断面説明図である。
【図6】図4の間仕切り壁の断面説明図である。
【図7】束足の断面図である。
【図8】補強材の斜視図である。
【図9】実施例により施工した二重床の軽量床衝撃音遮断性能の測定結果である。
【図10】実施例により施工した二重床の重量床衝撃音遮断性能の測定結果である。
【図11】従来の二重床及び間仕切り壁の施工方法の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 束足
2 受板
3 ナット
4 支持ボルト
5 防振ゴム
6 補強材
7 貫通孔
8 上床ベースボード
9 目地
10 仕上材
11 間仕切り壁
12 軽量鉄骨
13 ランナー
14 プラスターボード
15 ビス
16 下床
17 周壁
18 荷重範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床の上床ベースボードの上から間仕切り壁を立設する二重床及び間仕切り壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献に示されるように、二重床の上床ベースボードを施工し、その上から間仕切り壁を立設する二重床及び間仕切り壁の施工方法(いわゆる床先行工法)が知られている。
図11に基づいて従来の工法を説明する。まず、コンクリートスラブなどの下床16の上に墨出しを行い、束足1が上床ベースボード8の目地9部分になるように束足の配置を決める。さらに、間仕切り壁11の墨出しを行い、間仕切り壁の真下の束足の配置を決める。
周壁17には、際根太(図示せず)を取り付けておく。
墨出しにしたがって下床上に束足を配置した後、束足及び際根太の上に上床ベースボードを敷き、束足の高さの微調整を行う。この状態が図11である。
次に、上床ベースボード8の上に間仕切り壁11の墨出しを行い、間仕切り壁を立設する。次に、上床ベースボード8の上にフローリングなどの仕上材を貼付し、必要に応じて巾木などを取り付け、二重床及び間仕切り壁の施工が完了する。
【特許文献1】特開2005−97901
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、従来工法においては、間仕切り壁を設ける位置の真下に束足を配置する必要があった。このため、下床上に間仕切り壁の墨出しを行う必要があり、また、その束足の高さ調整のために、ベースボードの当該位置に貫通孔を設ける煩雑な手間が必要であった。さらに、上床ベースボードを施工した後に、設計変更で間仕切り壁の位置が変わった場合は、施工した上床ベースボードを排除して、再び下床上に墨出しを行い、束足を配置する必要があった。
【0004】
本発明は、間仕切り壁の真下に束足を配置する必要をなくすことで、二重床及び間仕切り壁の施工を容易にすることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔請求項1〕
本発明は、下床上に多数の高さ調整可能な束足を配置するステップと、
細長い板状の補強材を2個以上の前記束足の上面に架け渡し固定するステップと、
前記補強材の上に上床ベースボードを貼付するステップと、
前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設するステップと、
前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付するステップを有することを特徴とする二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
【0006】
補強材を設けることで、載荷荷重により最もたわみを生じやすい上板ベースボードの中央部が強化され、たわみが生じにくくなるので、間仕切り壁を上床ベースボード上のどの位置に設けても、載荷荷重に対する上床の変形量が少なくなり、充分な剛性を得ることができる。
【0007】
〔請求項2〕
また本発明は、2個以上高さ調整可能な束足の上面に細長い板状の補強材を架け渡して固定したものを下床上に多数配置するステップと、
前記補強材の上に上床ベースボードを貼付するステップと、
前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設するステップと、
前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付するステップを有することを特徴とする二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
このように、あらかじめ、2個以上の束足の上面に強材を架け渡して一体化しておくこともできる。
【0008】
〔請求項3〕
また本発明は、前記束足が、下端の防振ゴムと、該防振ゴムから立設した支持ボルトと、雌ねじ孔を有し該雌ねじ孔に前記支持ボルトの上部が螺合して支持ボルト上部に高さ調整可能に支持された受板を有するものである請求項1又は2の二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
このような束足を用いることで、充分な遮音性能を得ることができる。
【0009】
〔請求項4〕
また本発明は、前記補強材が、前記支持ボルトを回転させるための貫通孔を有する請求項3の二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
貫通孔を設けることで、上床ベースボードの上から容易に束足の高さ調整を行うことができる。
【0010】
〔請求項5〕
また本発明は、前記束足が、前記ベースボードの目地部分に配置され、該目地から前記支持ボルトを回転させることができる請求項3又は4の二重床及び間仕切り壁の施工方法である。
このようにすることで、上床ベースボードの上から容易に束足の高さ調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、間仕切り壁の真下に束足を配置する必要がなく、上床ベースボードを貼付した後に任意の位置に間仕切り壁を施工できるので、下床に間仕切り壁の墨出しを行う必要がなく、上床ベースボードに貫通孔をあける煩雑な作業も不要となる。
したがって、工期が短縮され、経済性にも優れる。
また、上床は載荷荷重に対して充分な剛性を備え、変形も少ない。さらに、充分な遮音性能も得ることができる。
また、上床ベースボードを施工した後に、設計変更などで間仕切り壁の位置が変わった場合でも、上床ベースボードを排除する必要がなく、変更した位置にそのまま間仕切り壁を施工できるので、設計変更、フリープラン、リニューアルが自由にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施例に関する図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は下床上に束足を配置した状態の平面図、図2は補強材を束足の上面に固定した状態の平面図、図3,4は上床ベースボードを貼付し間仕切り壁を立設した状態の平面図、図5は図3の間仕切り壁の断面説明図、図6は図4の間仕切り壁の断面説明図、図7は束足の断面図、図8は補強材の斜視図、図9は実施例により施工した二重床の軽量床衝撃音遮断性能の測定結果、図10は実施例により施工した二重床の重量床衝撃音遮断性能の測定結果である。
【0013】
図1〜4は、本発明の二重床及び間仕切り壁の施工方法の施工順序を示している。これらの図における部屋は下床16がコンクリートスラブで、周壁17がコンクリート壁であり、出入口などは図面上省略している。
周壁17には、あらかじめ、上床の周囲部分を支持するための際根太(図示せず)を設ける。際根太は任意の構造のものを設ければよいが、例えば特開2007−177392に示されるものは好適である。
【0014】
図1に示すように、下床16の上に所定間隔で束足1を配置する。束足は、上床ベースボードの割付に合わせ、その目地(長辺方向)部分に配置することが望ましい。束足1の、上床ベースボードの短辺方向の間隔aは450〜650mmが好適であるが、幅600mmの上床ベースボードを用い、目地幅が10mmであるときは610mmが望ましい。束足1の、上床ベースボードの長辺方向の間隔bは300〜600mmが好適である。
【0015】
図7に束足1の一例を示す。この束足1は、下端の防振ゴム5と、防振ゴムから立設した支持ボルト4と、その上部に支持される受板2からなる。受板2は雌ねじ孔3aを有し、支持ボルト4上部が雌ねじ孔3aに螺合している。この場合は、受板2にナット3を組み合わせることで雌ねじ孔3aを形成している。支持ボルト4の頂部には溝4aが形成され、上方からドライバーなどの器具でボルトを回転することで受板上面の高さを調整することができる。
受板の素材は木質系(例えば厚さ20〜25mmのパーティクルボード,合板など)、プラスチック、金属などとすることができる。雌ねじ孔は、本実施例のナットを組み合わせるほかに、プラスチックや金属の受板に直接雌ねじ孔を形成してもよい。
【0016】
次に、図2に示すように、細長い板状の補強材6を、2個の束足1の受板上面に架け渡し、接着剤,釘などの適宜な固定手段で補強材と束足(受板)を固定する。これにより、それぞれ2個の束足が補強材を介して一体化される。補強材6は、上板ベースボード8の短辺方向に設けるのが好ましい。この場合は、2個の束足を一組として補強材を架け渡し一体化しているので、外周の一部の束足には補強材が設けらず単独となっている。このように、必ずしも全ての束足が補強材で一体化されている必要はなく、外周部分の一部に補強材が設けられていない束足があっても差し支えない。
また、図2は補強材を2個の束足上に架け渡しているが、3個以上の束足に架け渡し、一体化してもよい。
【0017】
図8に補強材6の一例を示す。補強材6には、束足1の支持ボルトを上からドライバーなどで回転できるように、貫通孔7を設けておくことが好ましい。貫通孔7は、図1のaの間隔であければよいので、あける位置を容易に決めることができる。補強材の素材は合板,木材,パーティクルボードなどの木質系が適しており、厚さは15〜40mm、幅は45〜90mm程度が好適である。
【0018】
次に、図3,4に示すように、補強材6(一部は束足1の上に直接)及び際根太(図示せず)の上に上床ベースボード8を貼付し、その目地9からドライバーなどで支持ボルトを回転させ、上床の高さの微調整を行う。さらに、上床ベースボード8の上に間仕切り壁の墨出しを行い、上床ベースボード8の上から間仕切り壁11を立設する。
上床ベースボード8の材質は、厚さ20〜25mmのパーティクルボードが最も好適であるが、ベニヤ合板などでもよい。
【0019】
図3,5は、間仕切り壁11が上床ベースボード8の短辺方向に設けられた場合で、しかも、補強材6のちょうど中央に位置し、強度的に最も不利な場合である。
この場合の間仕切り壁11は軽量鉄骨製で、上床ベースボード8の上に樋状のランナー13をビス15で固定し、ランナー13に軽量鉄骨12(縦材)を立設し、これにプラスターボード14をビスで貼付したものである。
なお、間仕切り壁の構造は、本実施例のような軽量鉄骨製に限らず、例えば木質材料で軸組を行ったものでもよい。
【0020】
図4,6は、間仕切り壁11が上床ベースボード8の長辺方向に設けられた場合で、しかも、束足1のちょうど中央に位置し、強度的に最も不利な場合である。 間仕切り壁の構造は、図3,5の場合と同じである。
【0021】
間仕切り壁11を施工した後、上床ベースボード8の上に仕上材を貼付する。仕上材はフローリングなど自由であり、また、仕上材は上床ベースボードの上に直接貼付してもよいし、間に緩衝シートや合板などを介して貼付してもよい。
【0022】
図3,4に示す間仕切り壁際において、上床のたわみ量試験を行った。いずれの場合も、次の施工条件により行った。
束足の間隔: 610mm(a)×460mm(b)
補強材: 厚さ30mm×幅60mmの合板
上床ベースボード: 600mm×1800mm×25mmのパーティクルボード
仕上材: 厚さ12mmのフローリングを上床ベースボードに直接貼付
間仕切り壁: 軽量鉄骨製(図5,6)
【0023】
図3は間仕切り壁11が上床ベースボード8の短辺方向に設けられた場合で、しかも、補強材6のちょうど中央に位置し、強度的に最も不利な場合である。同図に示される荷重範囲18(300mm×1100mm)に分銅をおいて荷重をかけ、A,B,Cの3測定点における上床のたわみ量を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0024】
図4は間仕切り壁11が上床ベースボード8の長辺方向に設けられた場合で、しかも、束足1のちょうど中央に位置し、強度的に最も不利な場合である。同図に示される荷重範囲18(300mm×1100mm)に分銅をおいて荷重をかけ、A,B,Cの3測定点における上床のたわみ量を測定した。その結果を表2に示す。
【表2】
【0025】
表1における最大たわみ量は、荷重260kgにおける測定点Cの1.64cm、表2における最大たわみ量は、荷重260kgにおける測定点Bの1.43cmである。荷重範囲300mm×1100mmにおける荷重260kgは1m2に換算すると788kgに相当する。例えば公団試験判定基準によれば、載荷荷重400kg/m2に対して変位が7.5mm以下であるから、本実施例は優にこの基準を満たしている。
本実施例は、最も強度的に不利な位置に間仕切り壁を設けているから、本発明によれば、充分な上床の強度・剛性を得られることが実証された。
【0026】
図9は、図3の二重床について、軽量床衝撃音遮断性能試験(JIS A 1418−1)を行った結果である。床衝撃音遮断性能等級はLr−45で、優れた遮音性能を示している。
【0027】
図10は、図3の二重床について、重量床衝撃音遮断性能試験(JIS A 1418−2)を行った結果である。床衝撃音遮断性能等級はLr−50で、優れた遮音性能を示している。
これにより、本発明によれば、充分な遮音性能を得られることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】下床上に束足を配置した状態の平面図である。
【図2】補強材を束足の上面に固定した状態の平面図である。
【図3】上床ベースボードを貼付し、間仕切り壁を立設した状態の平面図である。
【図4】上床ベースボードを貼付し、間仕切り壁を立設した状態の平面図である。
【図5】図3の間仕切り壁の断面説明図である。
【図6】図4の間仕切り壁の断面説明図である。
【図7】束足の断面図である。
【図8】補強材の斜視図である。
【図9】実施例により施工した二重床の軽量床衝撃音遮断性能の測定結果である。
【図10】実施例により施工した二重床の重量床衝撃音遮断性能の測定結果である。
【図11】従来の二重床及び間仕切り壁の施工方法の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 束足
2 受板
3 ナット
4 支持ボルト
5 防振ゴム
6 補強材
7 貫通孔
8 上床ベースボード
9 目地
10 仕上材
11 間仕切り壁
12 軽量鉄骨
13 ランナー
14 プラスターボード
15 ビス
16 下床
17 周壁
18 荷重範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下床上に多数の高さ調整可能な束足を配置するステップと、
細長い板状の補強材を2個以上の前記束足の上面に架け渡し固定するステップと、
前記補強材の上に上床ベースボードを貼付するステップと、
前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設するステップと、
前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付するステップを有することを特徴とする二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項2】
2個以上高さ調整可能な束足の上面に細長い板状の補強材を架け渡して固定したものを下床上に多数配置するステップと、
前記補強材の上に上床ベースボードを貼付するステップと、
前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設するステップと、
前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付するステップを有することを特徴とする二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項3】
前記束足が、下端の防振ゴムと、該防振ゴムから立設した支持ボルトと、雌ねじ孔を有し該雌ねじ孔に前記支持ボルトの上部が螺合して支持ボルト上部に高さ調整可能に支持された受板を有するものである請求項1又は2の二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項4】
前記補強材が、前記支持ボルトを回転させるための貫通孔を有する請求項3の二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項5】
前記束足が、前記ベースボードの目地部分に配置され、該目地から前記支持ボルトを回転させることができる請求項3又は4の二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項1】
下床上に多数の高さ調整可能な束足を配置するステップと、
細長い板状の補強材を2個以上の前記束足の上面に架け渡し固定するステップと、
前記補強材の上に上床ベースボードを貼付するステップと、
前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設するステップと、
前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付するステップを有することを特徴とする二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項2】
2個以上高さ調整可能な束足の上面に細長い板状の補強材を架け渡して固定したものを下床上に多数配置するステップと、
前記補強材の上に上床ベースボードを貼付するステップと、
前記上床ベースボードの任意の位置に間仕切り壁を立設するステップと、
前記上床ベースボードの上に仕上材を貼付するステップを有することを特徴とする二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項3】
前記束足が、下端の防振ゴムと、該防振ゴムから立設した支持ボルトと、雌ねじ孔を有し該雌ねじ孔に前記支持ボルトの上部が螺合して支持ボルト上部に高さ調整可能に支持された受板を有するものである請求項1又は2の二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項4】
前記補強材が、前記支持ボルトを回転させるための貫通孔を有する請求項3の二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【請求項5】
前記束足が、前記ベースボードの目地部分に配置され、該目地から前記支持ボルトを回転させることができる請求項3又は4の二重床及び間仕切り壁の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−65494(P2010−65494A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234661(P2008−234661)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(392021285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(392021285)
【Fターム(参考)】
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