説明

亜酸化銅粒子分散体

【課題】 基板への密着性が高い銅配線を形成するために有用な亜酸化銅粒子分散体を提供すること。
【解決手段】本発明の亜酸化銅粒子分散体は、亜酸化銅粒子と、亜酸化銅粒子に対して5〜50重量%のグリセリンと、亜酸化銅粒子に対して10〜90重量%のポリエチレングリコールを含む。この分散体は、電気回路の配線形成に用いられる。特に、ポリイミドのフレキシブル基板へ配線を形成することが好ましい。この分散体を用い、印刷によってポリイミドのフレキシブル基板に電気回路の配線を形成するときには、印刷によって形成された塗膜を、ポリイミドのガラス転移点以下の温度で熱処理することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜酸化銅粒子の分散体に関する。本発明の亜酸化銅粒子分散体は、電気回路の配線の形成に用いられる。
【背景技術】
【0002】
基板上に導電膜を形成する方法としては、スパッタリング法や真空蒸着法等の真空薄膜形成法、電解めっき法や無電解めっき法等のめっき法などが知られている。これらの方法のうち、スパッタリング法や真空蒸着法等の真空薄膜形成法は、その実施に真空チャンバが必要となり、装置が複雑化するという不都合や、製造速度を高めにくいといった不都合がある。電解めっき法や無電解めっき法によれば、比較的大面積の基板に容易に薄膜を形成することが可能であるが、基板の表面に導電化処理を施す必要があるという不都合や、廃液の環境負荷が大きく、その処理に多大な経費が必要であるという不都合がある。
【0003】
このような状況のもと、金属粒子のインクやペースト等の導電性分散体の塗布によって導電膜を形成する方法が注目されている。この方法によれば、複雑な装置を用いることなく、比較的低コストで導電膜を高速生産することができる。導電膜を形成する対象となる基板としては、電子回路の種類に応じて、ガラス基板等のプリント基板や、ポリイミド等からなるフレキシブルプリント基板が知られている。例えば特許文献1には、ポリイミドフィルムの表面に、亜酸化銅粒子、ジエチレングリコール及びポリエチレングリコール200からなる分散液を塗布し、次いで含酸素雰囲気下に加熱して銅薄膜を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−257935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリイミドは安定な樹脂であるため、表面の活性が低く、そのことに起因して他の材料との密着性を十分に高くすることが容易ではない。前記の特許文献1においては、亜酸化銅粒子の分散液から形成されたポリイミドフィルム上の塗膜を加熱処理して得られた銅薄膜に、ピンホール等の欠陥が生じていないことを確認しているが、該銅薄膜とポリイミドフィルムとの密着性については何ら考慮されていない。
【0006】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得ることにあり、具体的には基板との密着性が高い銅薄膜を形成し得る亜酸化銅粒子分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の化合物を特定の配合量で含む亜酸化銅粒子の分散体によって前記の目的が達成されることを知見した。
【0008】
本発明は前記の知見に基づきなされたものであり、亜酸化銅粒子と、亜酸化銅粒子に対して5〜50重量%のグリセリンと、亜酸化銅粒子に対して10〜90重量%のポリエチレングリコールを含む、電気回路の配線形成用の亜酸化銅粒子分散体を提供することにより前記の課題を解決したものである。
【0009】
また本発明は、前記の亜酸化銅粒子分散体を用い、印刷によってポリイミドのフレキシブル基板に電気回路の配線を形成する配線形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の亜酸化銅粒子分散体を用いて形成される銅配線は、基板への密着性が高いものである。したがって本発明の亜酸化銅粒子分散体は、特にフレキシブル基板に配線を形成するために好適なものであり、とりわけポリイミドからなるフレキシブル基板に配線を形成するために好適なものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の亜酸化銅粒子分散体は、これを基板の表面に塗布して、電気回路の配線を形成するために用いられるものである。塗布の対象となる基板としては、例えば無機物及び有機物のいずれを用いることができる。無機物の基板としては、例えばガラス、シリコンやゲルマニウム等の半導体、ガリウム−ヒ素やインジウム−アンチモン等の化合物半導体などからなる基板が挙げられる。有機物の基板としては、ポリイミド、ポリエステル、アラミド、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などからなる基板が挙げられる。特に、後述するように、本発明の分散体を用いて形成される配線は、基板との密着性が高いものなので、フレキシブル基板を塗布の対象とすることで、本発明の効果が顕著なものとなる。とりわけ、これまで密着性を高めることが困難とされてきた材料であるポリイミドからなるフレキシブル基板を塗布の対象とした場合であっても、本発明の分散体を用いれば密着性を十分に高めることができる。
【0012】
本発明は、亜酸化銅粒子分散体に含まれる各成分の配合比を特定の範囲に設定することで、該分散体から形成される配線と基板との密着性を高めている点に特徴の一つを有する。本発明の分散体は、固形分としての亜酸化銅粒子を含んでいる。また液体分として、グリセリン及びポリエチレングリコールを含んでいる。以下、これらの成分についてそれぞれ説明する。
【0013】
固形分である亜酸化銅粒子は、分散体に対して好ましくは5〜35重量%、更に好ましくは10〜30重量%の配合比で配合される。亜酸化銅粒子の配合比を5重量%以上とすることで、分散体中の亜酸化銅粒子の濃度を十分なものとすることができ、膜厚の銅配線を得ることができる。一方、亜酸化銅粒子の配合比を35重量%以下とすることで、分散体の粘度の過度の増加が防止でき、分散体の流動性の過度の低下を防止できる。
【0014】
本発明で用いる亜酸化銅粒子の粒径に特に制限はなく、広い範囲から選択が可能である。本発明の分散体を微細な配線の形成に用いる場合には、亜酸化銅粒子として微粒のものを用いることが有利である。具体的には、粒径が20〜300nm、特に50〜150nmの微粒の亜酸化銅粒子を用いると、微細な配線を容易に形成することができる。ここで言う亜酸化銅粒子の粒径とは、該粒子の一次粒径のことであり、走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影された粒子の写真に基づき、個々の粒子のうち横断長が最も長い部分の長さを測定し、その平均値を算出することで求める。測定に用いられるサンプル数はN=30以上とする。
【0015】
亜酸化銅粒子としては、市販品を用いてもよく、あるいは銅含有化合物を原料として生成させたものを用いてもよい。亜酸化銅粒子を生成させるには、例えば酢酸銅とメタノールと水とを混合・撹拌し、そこにヒドラジン等の還元剤を添加して酢酸銅を還元し、亜酸化銅粒子を生成させる方法を用いることができる。あるいはアセチルアセトナト銅錯体を、200℃程度のポリオール溶媒中で加熱する方法(例えばアンゲバンデケミインターナショナルエディション、40号、2巻、p359、2001を参照のこと。)を用いることもできる。亜酸化銅粒子の形状は、その製造方法に応じて例えば球状、多面体状、不定形等になるところ、本発明においてはいずれの形状のものも用いることができる。
【0016】
グリセリンは、本発明の亜酸化銅粒子分散体から形成される配線と基板との密着性、及び形成される配線の導電性を高める目的で本発明の分散体に配合される。このようなグリセリンの効果が奏される理由について分明ではないが、グリセリンは還元性の高い物質であることから、亜酸化銅粒子から生じた銅微粒子によって基板へのアンカー効果が助長されると同時に、生じた銅微粒子どうしが面会合し易くなるので、本発明の亜酸化銅粒子分散体から形成される配線と基板との密着性、及び配線の導電性が高まると本発明者らは考えている。
【0017】
グリセリンの配合比は、本発明の分散体中に含まれる亜酸化銅粒子に対して5〜50重量%とし、好ましくは8〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%とする。グリセリンの配合比が5重量%に満たない場合には、配線の導電性を十分に高めることができない。一方、グリセリンの配合比が50重量%を超える場合には、焼成後にグリセリンが残存し易くなり、十分な導電性が得られない。
【0018】
ポリエチレングリコールは、主として、本発明の分散体から形成される配線の導電性を高める目的で、本発明の分散体に配合される。本発明者らは、亜酸化銅粒子から生成した銅微粒子が、ポリエチレングリコールの分子鎖によって網目状に保持されることで、配線が曲げに対して強靱なものになるのではないかと考えている。特に、銅はポリエチレングリコールに対して触媒作用を有しているので、この作用によってポリエチレングリコールが高分子量化し、そのことによってポリエチレングリコールの分子鎖による保持効果が一層高まるのではないか、と本発明者らは考えている。なお、ポリエチレングリコールは、先に述べた2価ポリオールと、分子量の点で明確に区別される物質である。
【0019】
ポリエチレングリコールとしては、広い範囲の分子量の中から塗布方法などに応じて適切な分子量のものを選択して用いることができる。一般的に言って、数平均分子量が200〜4000のものを用いることができる。この範囲の分子量のうち、本発明の亜酸化銅粒子分散体を例えばインクジェット印刷法やマイクロディスペンス印刷法によって塗布する場合には、数平均分子量が300〜600のポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0020】
ポリエチレングリコールの配合比は、本発明の分散体中に含まれる亜酸化銅粒子に対して10〜90重量%とし、好ましくは15〜90重量%、更に好ましくは20〜80重量%とする。ポリエチレングリコールの配合比が10重量%に満たない場合には、配線の導電性を十分に高めることができない。一方、ポリエチレングリコールの配合比が90重量%を超える場合には、配線の電気抵抗を十分に低くすることができない。
【0021】
本発明において液体分として、上述したグリセリン及びポリエチレングリコールに加えて2価ポリオールを用いてもよい。2価ポリオールは、主として粒子の分散媒としての目的で、かつ分散体の流動性を確保する目的で本発明の分散体に配合される。2価ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングルコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール等の、炭素数2〜6の2価ポリオールを用いることができる。これらの2価ポリオールは1種又は2種以上用いることができる。これらの2価ポリオールのうち、エチレングリコール、プロピレングルコール、ヘキシレングリコールを用いることが、粒子の高分散化かつ分散体の流動性確保点から好ましい。
【0022】
2価ポリオールの配合比は、本発明の分散体に対して好ましくは16〜94.25重量%とし、更に好ましくは5〜80重量%、一層好ましくは10〜50重量%とする。2価ポリオールの配合比を16重量%以上とすることで、粒子の分散性の低下を防止でき、かつ分散体の流動性の低下も防止できる。一方、2価ポリオールの配合比を94.25重量%以下とすることで、分散体中の亜酸化銅粒子の濃度の過度の低下を防止でき、十分な膜厚の銅配線を得ることができる。
【0023】
本発明の亜酸化銅粒子分散体においては、以上の液体分に加えて、必要に応じて他の液体分、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類等を配合してもよい。これらの液体分の配合比は、分散体に対して好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは3〜30重量%とする。
【0024】
次に、本発明の亜酸化銅粒子分散液の好適な製造方法について説明する。本製造方法においては、例えば上述の方法を用い、酢酸銅の還元によって亜酸化銅粒子を生成させる。生成した亜酸化銅粒子は、メタノール及び水に分散した状態になっているので、2価ポリオールを用いた溶媒置換によって、2価ポリオールを分散媒とする分散液となす。この場合、溶媒置換を複数回繰り返すことで、水を実施的に含有せず、かつ2価ポリオールのみを分散媒とする分散液を得ることができる。完全に溶媒置換が完了したら、メディアミル等の分散装置を用いた分散処理を行い、また必要に応じ粗大粒子を濾過によって除去する。その後、液体分の配合比の調整の目的及び亜酸化銅粒子の濃度調整の目的で、所定量のグリセリン及びポリエチレングリコールを添加する。これによって、亜酸化銅粒子と、2価ポリオールと、グリセリンと、ポリエチレングリコールとの配合比が所望の値となった分散体となすことができる。
【0025】
このようにして得られた本発明の亜酸化銅粒子分散体は、例えばインクジェット印刷用インク、マイクロディスペンサ用インク、グラビア印刷用インク、スクリーン印刷用インク及びその他の用途へのペースト等として好適に用いられる。
【0026】
本発明の亜酸化銅粒子分散体は、例えば基板上に塗布されることで塗膜となり、該塗膜を熱処理することで、導電性を有する銅薄膜となる。本発明の亜酸化銅粒子分散体に含まれる亜酸化銅粒子が微粒である場合には、微細なパターンの銅薄膜を形成することができる。このような微細なパターンの銅薄膜は、電気回路の配線として好適なものである。
【0027】
本発明の亜酸化銅粒子分散体又はインクやペーストを塗布する方法は、これらの粘度や、亜酸化銅粒子の粒径に応じて適切な方法が選択される。そのような方法としては、例えばインクジェット印刷、マイクロディスペンサ法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレー塗布法、バーコーティング法、ロールコーティング法が挙げられる。塗膜の厚みは、目的とする銅薄膜の具体的な用途に応じて好ましくは0.1〜100μm、更に好ましくは1〜30μmの範囲で適切に調整できる。
【0028】
塗膜の形成後には、亜酸化銅を金属銅に還元するのに十分な温度で熱処理する。熱処理は例えば非酸化性雰囲気下で行うことができる。非酸化性雰囲気は、水素や一酸化炭素等の還元雰囲気、及びアルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素等の不活性雰囲気を包含する。特に還元雰囲気下で行うことが有利である。還元雰囲気及び不活性雰囲気のいずれの場合であっても、加熱に先立ち加熱炉内を一旦真空吸引して酸素を除去した後に、還元雰囲気又は不活性雰囲気とすることが好ましい。また不活性雰囲気下で一旦熱処理した後に、還元雰囲気下で熱処理すると、得られる銅薄膜が一層緻密になるので好ましい。
【0029】
熱処理の温度は、基板の材質に応じて決定すればよい。例えば基板としてポリイミドのフレキシブル基板を用いる場合には、ポリイミドのガラス転移点以下の温度で熱処理を行う。熱処理の温度の上限値は270℃、特に230℃とすることが好ましい。熱処理の時間は10分〜3時間、特に30分〜1時間とすることが好ましい。ポリイミドとしては、各種の市販品、例えば東レ・デュポン株式会社のカプトン(登録商標)、宇部興産株式会社のユーピレックス(登録商標)、株式会社カネカのアピカル(登録商標)などを用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0031】
〔実施例1〕
2000mlビーカーに純水432g、酢酸銅一水和物(日本化学産業株式会社製)204g、メタノール(和光純薬工業株式会社製)185gを加え、スクリュー翼を用いて十分に攪拌した。次にヒドラジン一水和物(和光純薬工業株式会社製)19gを添加し、更に攪拌することで一次粒子径約100nmの亜酸化銅微粒子を得た。なお、一次粒子の平均粒径は、走査型顕微鏡によって撮影された粒子の写真を用い、個々の粒子のうち最も長い部分の長さを測定し、その平均値を算出することで求めた。測定に用いられるサンプル数はN=30以上とする。この粒子を十分に洗浄した後、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)へ溶媒置換し、亜酸化銅スラリーを得た。
【0032】
スラリーを湿式分散処理した後、抜き出し回収した。そして得られたスラリー中に含有される1μm以上の粒子をカートリッジ式フィルター(アドバンテック東洋株式会社製MCP−JX−E10S、平均孔径1μm)に通液濾過することで除去した。濾過後の亜酸化銅スラリーの濃度は40%であった。次に該スラリーを62.5g、プロピレングリコールを26.25g、ポリエチレングリコール300(和光純薬工業株式会社製、数平均分子量300)を7.5g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)を3.75g加え、攪拌、混合することで濃度25%の亜酸化銅粒子分散体を得た。分散体の組成を以下の表1に示す。
【0033】
得られた亜酸化銅粒子分散体のポリイミドに対する密着性と導電性を評価した。密着性については、ポリイミド(宇部興産株式会社製ユーピレックス25S)上にスピンコートにて該分散体を塗布し、塗布後に230℃の窒素雰囲気下で一時間の熱処理を行い、銅の膜を形成した。得られた膜についてセロハンテープにて剥離テストを行った。導電性については、密着性評価と同様の成膜、熱処理を行った後、得られた膜の比抵抗を、抵抗率計(三菱化学社製MCP−T600)にて表面抵抗測定を行った後、膜厚を換算して算出した。その結果を以下の表1に示す。
【0034】
〔実施例2〕
実施例1で得られた通液濾過後の亜酸化銅スラリーを62.5g、プロピレングリコールを22.5g、ポリエチレングリコール300を7.5g、グリセリンを7.5g加え、攪拌、混合することで濃度25%の亜酸化銅粒子分散体を得た。分散体の組成を以下の表1に示す。該亜酸化銅粒子分散体を実施例1と同様に成膜、焼成し、導電性と密着性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0035】
〔実施例3〕
実施例1で得られた通液濾過後の亜酸化銅スラリーを62.5g、プロピレングリコールを15g、ポリエチレングリコール300を15g、グリセリンを7.5g加え、攪拌、混合することで濃度25%の亜酸化銅粒子分散体を得た。分散体の組成を以下の表1に示す。亜酸化銅粒子分散体を実施例1と同様に成膜、焼成し、導電性と密着性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0036】
〔比較例1〕
実施例1で得られた通液濾過後の亜酸化銅スラリーを62.5g、プロピレングリコールを37.5g加え、攪拌、混合することで濃度25%の亜酸化銅粒子分散体を得た。分散体の組成を以下の表1に示す。該亜酸化銅粒子分散体を実施例1と同様に成膜、焼成し、導電性と密着性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0037】
〔比較例2〕
実施例1で得られた通液濾過後の亜酸化銅スラリーを62.5g、ポリエチレングリコール300を25g、グリセリンを12.5g加え、攪拌、混合することで濃度25%の亜酸化銅粒子分散体を得た。分散体の組成を以下の表1に示す。該亜酸化銅粒子分散体を実施例1と同様に成膜、焼成し、導電性と密着性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0038】
〔比較例3〕
実施例1で得られた通液濾過後の亜酸化銅スラリーを62.5g、ポリエチレングリコール300を30g、グリセリンを7.5g加え、攪拌、混合することで濃度25%の亜酸化銅粒子分散体を得た。分散体の組成を以下の表1に示す。該亜酸化銅粒子分散体を実施例1と同様に成膜、焼成し、導電性と密着性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0039】
〔比較例4〕
実施例1で得られた通液濾過後の亜酸化銅スラリーを62.5g、プロピレングリコールを16.25g、ポリエチレングリコール300を7.5g、グリセリンを13.75g加え、攪拌、混合することで濃度25%の亜酸化銅粒子分散体を得た。分散体の組成を以下の表1に示す。該亜酸化銅粒子分散体を実施例1と同様に成膜、焼成し、導電性と密着性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた分散体を用いて形成された銅の膜は比抵抗が低く、かつポリイミドとの密着性が高いことが判る。これに対して、ポリエチレングリコール300及びグリセリンを添加しない分散液を用いた比較例1では、比抵抗は低いものの、ポリイミドとの密着性が低いことが判る。また、ポリエチレングリコール300を多量に添加した比較例2及び3では、ポリイミドとの密着性は高いものの、導電性を発現しないことが判る。更に、グリセリンを多量に添加した比較例4も、銅の膜とポリイミドとの密着性は高いものの、銅の膜は導電性を発現しないことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜酸化銅粒子と、亜酸化銅粒子に対して5〜50重量%のグリセリンと、亜酸化銅粒子に対して10〜90重量%のポリエチレングリコールを含む、電気回路の配線形成用の亜酸化銅粒子分散体。
【請求項2】
ポリイミドのフレキシブル基板への配線形成用である請求項1に記載の亜酸化銅粒子分散体。
【請求項3】
請求項1に記載の亜酸化銅粒子分散体を用い、印刷によってポリイミドのフレキシブル基板に電気回路の配線を形成する配線形成方法。
【請求項4】
印刷によって形成された塗膜を、ポリイミドのガラス転移点以下の温度で熱処理する請求項3に記載の配線形成方法。
【請求項5】
非酸化性雰囲気に熱処理を行う請求項4に記載の配線形成方法。

【公開番号】特開2012−134297(P2012−134297A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284579(P2010−284579)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】