説明

亜鉛または他の活性金属を暗色化し及び耐蝕性を付与するための組成物及び方法

亜鉛または他の活性金属表面を暗色化させ、且つそれに耐蝕性を付与するのに役立つ方法及び組成物を開示する。本組成物は、塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含有する水溶液を含む。本組成物は、塩化アンモニウムとモリブデン酸アンモニウムの特定の濃度比を使用する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、亜鉛及び他の活性金属の二機能性コーティングに関する。このコーティングは、亜鉛の表面を暗色化し、且つこのコーティング化製品に耐蝕性(anti-corrosion property)を付与するのに役立つ。
【0002】
発明の背景
工業用部品及びアセンブリをコーティングするための組成物は、ますます重要となってきている。たとえば、多くの機械部品及びファスナー(fastener:締め金具)は、特に部品が最終組み立て製品中で目に見える場合には、審美性と、部品またはファスナーの全体の外観とを改良するために組成物でコーティングする。さらに、ボルトまたはスクリューなどの機械的ファスナーは、製品の組み立てまたは取り外しを簡便化するために着色されていてもよい。これらの組成物は、コーティング化部品に特定の着色または外観を付与するために、所望により顔料または他の着色剤を含むことが多い。
【0003】
自動車で使用される多くの機械的部品は、黒、灰色または暗色仕上げを付与するために暗色化塗装または組成物でコーティングされる。多くの機械的部品は、強度要求条件の結果として金属でなければならないので、そのようなコーティングなしでは、金属部品は銀色であるか、またはその外観は少なくとも光沢がある。そのような部品に黒または暗色の外観を付与するためには、好適なコーティングを適用する必要がある。
【0004】
金属部品に黒または暗色を付与するためには、種々の組成物が公知である。これらの組成物の多くは市販されている。しかしながら多くの用途に関しては、部品の銀及び光沢のある金属表面を効果的に覆うためには、着色コーティングの複合的な被膜(coat)を適用しなければならない。そのような組成物は比較的高価であるため、それは望ましくない。それに複合的コーティングの付与は、労働集約的である。従って、これらの着色コーティングの使用に関し、別のやり方で費用を削減する方法の必要性がある。
【0005】
金属部品を着色するための組成物を適用することに加えて、他の物理的特性を付与するために他の組成物を部品に適用することが多い。金属部品、特に自動車用途で使用するようなそのような部品にとっては、耐蝕性(corrosion resistance)は望ましい特性である。当該技術分野は金属表面に耐蝕性を付与するための広範な種類の組成物を十分に備えている。コーティング組成物は、変わりつつある合金技術と腐蝕化学の理解と共に発展してきた。
【0006】
腐蝕防止組成物(corrosion-inhibiting composition)の発展に影響を与えている因子は、組成物またはその成分の相対的毒性または環境影響である。この理由から、好適な防蝕剤として、特に毒性のクロムまたはクロムベースの化合物の代替品として、モリブデン酸塩が研究されてきている。
【0007】
モリブデン及びその化合物は、腐蝕防止剤として長い間、認識されてきた。たとえば、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,409,121号は、モリブデン酸塩を含有する腐蝕防止組成物について記載している。この特許の背景部分で、この米国特許第4,409,121号特許は、本明細書中、いずれも参照として含まれる米国特許第4,176,059号及び同第4,217,216号などのモリブデン酸塩を含む腐蝕防止組成物について述べていた。
【0008】
同様に、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,440,721号は、水性液の存在下で鉱物スケール及び腐蝕を阻害するための組成物について記載している。この米国特許第4,440,721号特許の組成物は、一種以上の水溶性モリブデン酸塩化合物を含む。モリブデン酸塩化合物を含有する水性組成物について記載する他の特許としては、本明細書中、その全体が参照として含まれる、米国特許第3,030,308号、同第2,147,409号及び同第2,147,395号が挙げられる。しかしながらこれらの組成物は、一般的に、凍結防止組成物について記載している。
【0009】
モリブデン酸塩の耐蝕性についてのさらなる研究によって、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,548,787号特許がもたらされた。この米国特許第4,548,787号特許は、水性液体中のアルミニウムをキャビテーション腐蝕(cavitation-erosion))及び腐蝕から保護する組成物について記載する。この組成物は、リン酸塩と、水溶性モリブデン酸塩化合物を含んでいてもよい特定の水溶性薬剤との組み合わせをベースとする。
【0010】
本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,640,793号では、特定の種類のポリマーをベースとする腐蝕防止混合物中にモリブデンの水溶性塩を使用することについてさらに言及している。
【0011】
おそらく特許文献で最も関連性のある従来技術は、本明細書中、参照として含まれる米国特許第4,798,683号であろう。この米国特許第4,798,683号特許は、モリブデン酸塩化合物の使用によって腐蝕を制御する方法に関する。具体的には、この米国特許第4,798,683号特許では、水系に接触した金属表面の腐蝕を防止するための方法及び組成物について記載する。この米国特許第4,798,683号特許の組成物は、モリブデン酸塩イオン供給源と特定の水溶性成分とを含む。この米国特許第4,798,683号特許は、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウムなどのモリブデン酸塩イオン供給源を開示する。
【0012】
それほど関連性はないが、もう一つの興味深いモリブデン酸塩組成物を含む従来技術は、Philippe Lienard及びClement Pacqueの“Analysis of the Mechanism of Selective Coloration Facilitating the Identification of Various Phases in Aluminum-Silicon-Copper Casting Alloys”、Homes Et Fonderie、1982年6〜7月、27〜35頁による。この論文では、ヘプタモリブデン酸アンモニウム0.5重量%と塩化アンモニウム3重量%との水性組成物を使用して、この論文の主題であった種々の合金における粒界(grain boundary)を強調し且つ目立たせていた。モリブデン酸塩水性組成物によって、検討中の合金に耐腐蝕性を付与する試みについては記載されていなかった。
【0013】
多くの点で満足しているものの、従来技術の多くは、熱伝達系における腐蝕制御を含む用途に関するものであって、腐蝕を制御するためのコーティングに関するものではない。この二つの用途は、はっきりと異なる特徴を有する。さらに従来技術の耐蝕性組成物の多くは多くの他の薬剤を含み、その多くは、外来であるか、コスト高であるか、または毒性が高い。従って、金属表面に耐蝕性を容易に付与するための組成物及び方法に対する需要がある。さらに、従来技術の耐蝕性組成物は、金属部品及びファスナーの審美性を改善すること、特にコーティング化部品に黒または暗色を付与することに対処していない。Lienard及びPacqueによる先に述べた文献は、金属に暗色表面を適用することについては記載していなかった。さらにLienard及びPacqueは、合金用の腐蝕防止組成物に関して全く見解を述べていなかった。その代わり、彼らは記載したモリブデン酸塩組成物を使用して、アルミニウム-シリコン-銅合金の粒界をより可視的にする、即ち、金属表面の特定の領域の間のコントラストを強めた。従って、金属表面を容易に暗色化するための組成物及び方法を提供するのが望ましい。さらに、光沢のある、または銀のような金属表面と、色素性または着色化トップコートとの間のコントラストを低下させるための組成物及び方法を提供するのが望ましい。さらに、耐蝕性、または少なくとも耐蝕性と、金属部品の外面の暗色化とを同時に付与するための組成物及び方法を提供するのが特に望ましい。
【0014】
発明の概要
第一の側面において、本発明は、塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、水約90パーセント〜約99.8パーセントとを含む組成物を提供する。本組成物は、塩化アンモニウム対モリブデン酸アンモニウムの特定の比も使用する。通常、これらの成分の比は、それぞれ約1:3〜約3:1である。
【0015】
もう一つの側面では、本発明は、塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、ヘプタモリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含む水性組成物を提供する。塩化アンモニウム対ヘプタモリブデン酸アンモニウムの比は、約1:3〜約3:1である。
【0016】
もう一つの側面では、本発明は、外面をもつ金属基板を含むコーティング化金属基板を提供し、ここで前記金属は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、マンガン及びその合金からなる群から選択される。コーティング化金属基板は、そのコーティングが、(i)塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、(ii)モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含む水性組成物から形成される、基板上に配置された暗色化コーティングも含む。塩化アンモニウム対モリブデン酸アンモニウムの比は、約1:3〜約3:1である。
【0017】
もう一つの側面では、本発明は、亜鉛の外面を有する基板を準備し、及び塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとモリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含む組成物を準備することを含む、亜鉛の表面を暗色化するための方法を提供する。本方法は、亜鉛の外面に本組成物を適用して、その上に暗色化コーティングを形成する段階も含む。
【0018】
さらにもう一つの側面では、本発明は、活性金属の基板に腐蝕防止特性を付与するための方法を提供する。本方法は、活性金属の基板を準備することを含む。本方法は、塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含む組成物を提供する段階も含む。塩化アンモニウム対モリブデン酸アンモニウムの比は、約1:3〜約3:1である。本方法は、基板に組成物を適用する段階も含む。
【0019】
さらにもう一つの側面では、本発明は、亜鉛表面に耐蝕性を付与するための方法を提供する。本方法は、亜鉛の外面を有する成分を準備することを含む。本方法は、塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含む組成物を提供する段階も含む。本方法は、亜鉛の外面に本組成物を提供する段階も含む。
【0020】
好ましい態様の記載
本発明は、金属、特に亜鉛または他の活性金属の表面を暗色化するための方法及び組成物を提供する。また本発明は、亜鉛または他の活性金属などの金属に、耐蝕性を付与するための方法及び組成物を提供する。最も好ましい側面では、本発明はこれらの目的のいずれをも達成する組成物を提供する。また本発明は、得られたコーティング化物品または製品を含む。
【0021】
好ましい態様では、本発明は、塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含む水溶液を提供する。本明細書中で記載する全てのパーセントは、他に記載しない限り、重量パーセントである。より好ましくは、この水溶液は、塩化アンモニウム約0.5パーセント〜約3.0パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.5パーセント〜約3.0パーセントとを含む。最も好ましくは、この水溶液は、塩化アンモニウム約2.5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約2.5パーセントとを含む。本発明に従った水性組成物は、その成分が比較的水溶性であるので、かなり高濃度のモリブデン酸アンモニウムを使用することができる。対照的に、塩化アンモニウムは水溶性がかなり低い。使用した塩化アンモニウムとモリブデン酸アンモニウムの特定の濃度にかかわらず、これらの二つの成分の濃度は同じであるか、実質的に同じであるのが最も好ましい。これらの成分の濃度が実質的に同一であるとき、着色と耐蝕性において二つの利点が得られる。通常、これら二つの成分の相対濃度は約1:3〜約3:1、好ましくは約1:2〜約2:1、最も好ましくは約1:1である。これらの比は、重量比であり、それぞれ塩化アンモニウム対モリブデン酸アンモニウムの比に関して示される。好ましい組成物の残余は水である。本発明の組成物は、本明細書中に記載の他の添加剤及び成分を含むことができる。
【0022】
既に記載の如く、種々の金属成分、特に自動車業界で使用されるものに黒または暗色を付与するのが望ましいことが多い。そのような成分の例としては、ファスナー、ドア・ストライカ(door strike)、及び関連するアセンブリが挙げられるが、これらに限定されない。既に説明したように、そのような成分を耐蝕性または防蝕性コーティングでコーティングすることは望ましいか、または必須でもある。本発明の組成物は、単独でコーティング化部品に暗色及び/または耐蝕性を付与するか、あるいは一種以上の他の着色コーティングまたは耐蝕性若しくは防蝕性コーティングと組み合わせて使用することができる。他のコーティングと組み合わせて使用するとき、本発明の組成物は他のコーティングをそれほど必要としないので、コスト削減につなげることができ、且つ高い耐蝕性または防蝕性を提供することができる。これらの好都合な点については、本明細書中で詳細に記載する。
【0023】
本発明の譲受人は、商標Dacromet(登録商標)及びGeomet(登録商標)のもと、幾つかの市販の耐蝕性コーティングを提供する。Dacromet(登録商標)は、無機バインダー中の亜鉛とアルミニウムフレークをベースとする無機コーティングである。Dacromet(登録商標)の具体的なグレードとしては、低揮発性有機化合物(VOC)を含有するDacromet 320(登録商標);低クロム配合物であるDacromet 320LC(登録商標);一貫性のあるトルク-テンション特性を提供するためにポリテトラフルオロエチレンの使用をベースとするDacromet 500(登録商標);及び比較的粘稠で且つ肉厚(heavy)コーティングを提供するために配合したDacromet 320(登録商標)が挙げられる。Geomet(登録商標)は、無機バインダー系と共に、亜鉛及びアルミニウムフレークとを含有する水性コーティング分散液である。Geomet(登録商標)は、代替の環境的に優しい耐蝕性コーティングとして配合された。Geomet(登録商標)は、水ベースの低VOCで、且つクロム、ニッケル、カドミウム、バリウム及び鉛などの全て厳しく規制された毒性金属を含まない。Dacromet(登録商標)及びGeomet(登録商標)製品は、Metal Coatings International,Inc.,Chardon、オハイオ州及びその多くの実施権者から市販されている。防蝕性コーティングのさらなる記載は、本明細書中、その全体が参照として含まれる、米国特許第3,907,608号;同第4,555,445号;同第4,645,790号;同第7,891,268号;同第4,799,959号;同第5,006,597号;同第5,868,819号;同第5,270,884号及び同第6,261,872号に記載されている。
【0024】
本発明の組成物を既に記載したような一種以上の耐蝕性コーティングと、または一種以上の着色若しくは顔料含有組成物と組み合わせて使用する場合、耐蝕性コーティング及び/または着色コーティングを適用する前に、本発明のコーティングを未コーティングで且つ露出した金属表面に適用するのが好ましい。本発明のコーティングを適用すると、耐蝕性コーティングのベース層を提供する。さらに、本発明の組成物の層は、下にある金属の、銀のようなまたは光沢のあることが多い外観の上に暗色を提供する。かくして、続いてGeomet(登録商標)コーティングのような耐蝕性コーティングを適用すると、通常、被覆率をさらに改善して、下の金属の表面を最小に示すか、または全く示さない。さらに、耐蝕性材料のコーティングをする前に、本発明の組成物で最初にコーティングした金属部品は、耐蝕性材料だけでコーティングしたときよりもより耐久性があり、且つ黒または暗色が長期に持続する。これは、本発明の組成物でコーティングせず、且つ耐蝕性コーティング材料でコーティングしただけの部品は、擦れた場合に、耐蝕性材料のすぐ下の銀のようなまたは光沢のある金属表面が見えるようになることが多いからである。そのようにせずに、そのような部品を本発明の組成物で最初にコーティングすると、コーティング化部品は黒か暗色である。そして耐蝕性コーティングをさらに適用した後で部品が擦れて耐蝕性コーティングの領域が剥がれると、光沢のある金属表面が露出するのではなく、本発明の組成物の黒または暗色が露出する。下部の金属表面と比較して、これはそれほど目立たない。
【0025】
本発明は、本発明の組成物を、先にGeomet(登録商標)配合物でコーティングしておいた金属部品の外面などの、コーティング化表面の外部層上に適用する方法も含む。即ち、本発明の組成物は、トップコートとして、または外部コーティングとして使用し得る。本明細書における試験結果で記載される部品の多くは、本発明の好ましい組成物を適用する前に、Geomet(登録商標)で最初にコーティングした。顕著な耐蝕性が得られた。理論的根拠はないが、先に配置したコーティング中に一種以上の活性金属が存在すると、本発明のコーティングの粘着性を改善するものと考えられる。従って、本発明の組成物を、前もってコーティングしておいた金属基板上に適応する用途に関しては、下敷きコーティングは、一種以上の活性金属の有効量を含むのが好ましい。しかしながら、本発明は、コーティングが全く活性金属を含まないコーティング化金属基板上に本発明の組成物を適用することも含むと考えられる。
【0026】
さらに、本発明の組成物及び関連する方法は、本発明の組成物を中間コーティングまたは層として使用する方策も含む。即ち、本発明の組成物をコーティング基板上に適用し、次いで一種以上の追加のコーティングをその上に適用することができる。たとえば、金属基板は、Geomet(登録商標)配合物などの耐蝕性組成物で最初にコーティングすることができる。次いで、本発明の組成物をGeomet(登録商標)の層の上に適用することができる。その後、他の配合物の一種以上の追加のコーティングまたは層を、本発明の組成物の前もって適用しておいた層の上に適用することができる。本発明の組成物の前もって適用しておいた層の上に適用し得る追加のコーティングの例としては、その全てがMetal Coatings International,Inc.,及びその多くの実施権者により市販されているDacrokote(登録商標)50 Clear、Dacrokote(登録商標)105、Dacrokote(登録商標)107、Dacrokote(登録商標)127、Dacrokote(登録商標)135、Geokote(登録商標)137、Geokoto(登録商標)147、Geokote(登録商標)200及びPlus(登録商標)Lが挙げられるが、これらに限定されない。そのような多層コーティング系を形成する記載は、本明細書中の試験結果の議論のところで提供する。
【0027】
既に記載したように、本発明の組成物は、単独で、または他の組成物と共に使用して、金属表面に暗色化と腐蝕防止の両方を提供することができる。上記の内容からわかるように、本発明の組成物を単独で、または一種以上の耐蝕性コーティング及び/または着色性組成物と共に使用するかの決定は、コーティングされた部品の用途及び所望の特性に依存する。
【0028】
好ましい態様の組成物は、塩化アンモニウムとモリブデン酸アンモニウムとを含む。理論的根拠はないが、塩化アンモニウムは、コーティングすべき金属表面に対してエッチング液として機能すると考えられる。たとえば、亜鉛表面に関しては、塩化アンモニウムは亜鉛基板を攻撃し、亜鉛の最も外側の露出層を溶解する。次いでモリブデン酸アンモニウムからのモリブデン酸イオンがその露出した亜鉛表面と反応して、露出した亜鉛表面上に不溶性のモリブデン酸亜鉛または酸化モリブデン酸亜鉛(zinc molybdate oxide)化合物を形成する。得られたモリブデン酸亜鉛または酸化モリブデン酸亜鉛化合物は、保護層(passivator)であると考えられる。これらの不溶性化合物の形成によって、黒または暗色が形成される。この暗色は、モリブデン酸塩の混合酸化状態の結果である。既に記載の如く、この暗色が、コーティング化部品を、Geomet(登録商標)などの一種以上の耐蝕性コーティングと続くコーティングに適したものとする。
【0029】
本発明の好ましい組成物は、水性であるが、本発明は一種以上の有機成分を含む組成物も含む。本明細書中で使用する「水溶性」なる用語は、水または水ベースを指すものとし、水道水、蒸留水及び脱イオン水が挙げられるが、これらに限定されない。コーティング組成物の有機成分は、好ましくは低沸点有機液体であるのが好ましいが、液体媒体が上記のものの混合物を含むように、いくらか高沸点の有機液体が存在してもよい。組成物安定性などの所望の組成物の特徴を維持しつつ、低沸点有機液体を含有する好適なコーティング組成物も製造することができる。低沸点有機液体は、周囲圧力で約100℃(212゜F)未満の沸点をもち、水溶性であるのが好ましい。そのような低沸点有機液体は、アセトンまたは、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールなどの低分子量アルコールによって表すことができ、さらに水溶性ケトン、たとえばメチルエチルケトンなどの100℃(212゜F)未満で沸騰するケトンが挙げられる。
【0030】
通常、一種以上の有機成分を含む組成物に関しては、有機成分は、全組成物重量をベースとして約1〜約30パーセントの量で存在する。特に約10パーセントを超える量、例えば約15〜25パーセント、そのような有機液体を配合すると、コーティングの耐蝕性を向上することができるが、約30パーセントを超えて使用すると非経済的となることがある。組成物を経済的且つ容易に製造するためには、低沸点有機液体としてアセトンを供給し、全組成物の約1〜約10パーセントの量で配合するのが好ましい。好適な低沸点有機液体及び高沸点有機液体のさらなる例としては、本明細書中、いずれも参照として含まれる米国特許第5,868,819号及び同第6,270,884号に提供されている。
【0031】
本発明のもう一つの好都合な点は、本組成物のコーティングは、コーティング化部品から流出する白色の腐蝕生成物を抑制、または少なくとも顕著に軽減することである。黒または暗色のコーティング化部品にとっては、白色の腐蝕物質が見えると、目立ち且つ不利である。上記の内容から解るように、白色の腐蝕物質または白色の錆は、通常、亜鉛の腐蝕生成物と関連している。赤色の錆は、通常、スチールまたは鉄の腐蝕生成物と関連する。
【0032】
本発明の組成物は、塩化アンモニウム及びモリブデン酸アンモニウムの他に、即ちこれに加えて、他の成分を含むことができる。同様に、モリブデン酸アンモニウムの代わりにまたはこれに加えて、モリブデン酸塩イオンの他の供給源を使用することができる。好適なモリブデン酸塩イオンの供給源の例としては、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ルビジウム及びモリブデン酸セシウムが挙げられるが、これらに限定されない。「モリブデン酸アンモニウム」なる用語は、ジモリブデン酸アンモニウムとヘプタモリブデン酸アンモニウムとを含む。溶液の特定の用途及び特徴に依存して、モリブデン酸塩イオンに関して、部分的または全く、供給源としてモリブデン酸を使用することも考えられる。系内のモリブデン酸塩イオンの具体的な濃度は、水性系の硬度、温度、及び水性系に溶解した酸素の量に依存して変動し得る。
【0033】
本発明の組成物は、例えばフッ化ナトリウムなどのフッ化化合物などの追加の薬剤を含んで、亜鉛表面のエッチングを促進することもできる。一種以上の酸化剤または過酸化物を含むことも考えられる。
【0034】
さらに、本発明の組成物は、これらに限定されないが、湿潤剤、pH調節剤、増粘剤または粘度調節剤などの追加の薬剤も含むことができる。好適な湿潤化剤または湿潤化剤の混合物としては、非-イオン性アルキルフェノールポリエトキシ付加物などの非-イオン性薬剤が挙げられる。また、アニオン性湿潤剤も使用することができ、これらは最も好都合に制御された発泡アニオン性湿潤剤(foam anionic wetting agent)である。実用的な、そのような湿潤剤または湿潤剤の混合物としては、有機リン酸塩エステル、並びにナトリウムビストリデシルスルホスクシネートによって表されるようなジエステルスルホスクシネートなどのアニオン性薬剤が挙げられる。そのような湿潤剤の量は、通常、全コーティング組成物の約0.01〜約3パーセントである。
【0035】
本組成物は、最終組成物のpHを調節し得るpH調節剤を含むことができる。調節剤を使用する場合、そのpH調節剤は、通常、アルカリ金属の酸化物及び水酸化物から選択され、優れたコーティング完全性に関しては、好ましいアルカリ金属はリチウム及びナトリウムである。または、通常、周期律表の第IIA族及び第IIB族に属する金属の酸化物及び水酸化物から選択され、この化合物、例えばストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛及びカドミウムなどは、水溶液中に可溶性である。pH調節剤は、上記金属の炭酸塩または硝酸塩などのもう一種の化合物であってもよい。
【0036】
本発明のコーティング組成物は、増粘剤を含んでいてもよい。存在する場合には、この増粘剤は、全組成物重量をベースとして約0.01〜約2.0パーセントの量の増粘剤に寄与することができる。この増粘剤は、Cellosize(商標)増粘剤などの、水溶性セルロースエーテルであってもよい。好適な増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルセルロースまたはこれらの物質の混合物のエーテルが挙げられる。このセルロースエーテルはコーティング組成物の増粘化を強めるために水溶性でなければならないが、有機液体中で可溶性である必要はない。増粘剤を配合するとき、約0.02パーセント未満の増粘剤は好都合な組成物の粘度を付与するのに不十分であり、組成物中の増粘剤が約2パーセントを超えると、取り扱いが困難な組成物となる高い粘度となることがある。有害な高い粘度とせずに、最適に増粘化するためには、全組成物は約0.1〜約1.2パーセントの増粘剤を含むのが好ましい。セルロース増粘剤の使用も考えることができ、この増粘剤はセルロース増粘剤として参照されるが、増粘剤の幾らか〜全てはもう一つの増粘剤成分であってもよいと考えられる。そのような他の増粘剤としては、キサンタンガム、関連する増粘剤、たとえばウレタン関連増粘剤(urethane associative thickener)及びウレタンを含まない非-イオン性関連の増粘剤が挙げられ、これらは通常、不透明の、100℃(212゜F)を超えて沸騰する、高沸点液体である。他の好適な増粘剤としては、変性クレー、たとえば高度に選別されたヘクトライトクレー(hectorite clay)並びに有機的に変性し且つ活性化したスメクタイトクレーが挙げられるが、それは好ましくない。増粘剤を配合するとき、通常、これは配合物に添加する最終成分である。
【0037】
さらに、用途に依存して、本発明の組成物は、これらに限定されないが、一種以上の潤滑剤、ポリマー材料、例えばポリエチレン、ポリエチレンを含むコポリマー若しくはポリテトラフルオロエチレン;グラファイト、二硫化モリブデン;またはその組み合わせも含むことができる。
【0038】
本発明のさらに好都合な点は、望ましくは、金属表面に適用する前に、組成物が顔料を含まないこと、及び/または無色であることである。この特徴は、適用後の本発明の組成物のコーティングの暗色が、基板上に形成した得られたモリブデン化合物の混合酸化状態によるものであって、組成物中の顔料によるのではないということに由来する。適用前、通常、本発明の組成物は透明であるか、または無色である。しかしながら、本発明の組成物は、所望により、一種以上の顔料または着色剤を含むと考えられる。
【0039】
本発明の組成物及び方法は、多様な金属表面に関して使用することができる。たとえば、殆ど全ての活性金属を、本明細書に記載の如くコーティングすることができる。好ましい金属としては、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、マンガン及びこれらの金属を含む合金が挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましくは、本発明に従ってコーティングすべき金属表面は亜鉛である。「亜鉛」表面とは、亜鉛若しくは亜鉛合金、または亜鉛若しくは亜鉛合金でコーティングしたスチールなどの金属の表面、並びに金属間混合物中に亜鉛を含有する基板の表面を意味する。「亜鉛」表面なる用語は、亜鉛または亜鉛化合物を含有するコーティングの表面も含む。
【0040】
コーティング前に、殆どの場合において、十分に洗浄及び脱脂することなどによって、基板表面から外来物質を除去することが望ましい。脱脂は、公知の薬剤、たとえばメタ珪酸ナトリウム、苛性ソーダ、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどを含有する薬剤で、実施することができる。リン酸三ナトリウム-水酸化ナトリウム洗浄水溶液などの洗浄に関しては、洗浄と軽い研磨処理とを組み合わせた、市販のアルカリ洗浄組成物を使用することができる。洗浄に加えて、この基板は洗浄+エッチング、または洗浄+熱ブラスティング(blasting)を受けることができる。
【0041】
本発明の組成物は、浸漬コーティング、圧延または噴霧などの種々の方法で適用することができるが、これらに限定されない。通常、本コーティング組成物は、これらの種々の方法のいずれか、たとえば浸漬ドレーン(dip drain)及び浸漬スピン法を含む浸漬法により適用することができる。用途に依存して、本コーティング組成物は、カーテンコーティング(curtain coating)、ブラシコーティングまたは圧延コーティング及び上記の組み合わせなどによって適用することができる。噴霧方法並びに、例えば噴霧とスピン、噴霧とブラシ法などの組み合わせを使用することも考えられる。高温にあるコーティング化物品は、浸漬スピン、浸漬ドレーンまたは噴霧コーティングなどの方法によって、広範囲に冷却することなく、コーティングできることが多い。この方法に依存して、幾つか考慮しなければならない点がある。露出した金属またはコーティング化表面への組成物の噴霧または塗布は、通常、最も簡単な方法である。というのも、供給材料の組成は、適用の間を通してくまなく一定のままであるからである。対照的に、組成物の予定量または一定量を浸漬コーティング操作で使用するとき、コーティングの形成は事実上反応性であるため、その構成成分の組成及び濃度は経時で変化する。例えば、本発明の組成物の浴中に亜鉛部品を浸漬すると、亜鉛のある量が部品からエッチングまたは除去されて、浴中に移動する。その結果として、浴由来のモリブデン酸塩が、露出亜鉛部品上に形成する不溶性コーティングの形成で使用される。次いで、種々のアンモニウム化合物と沈殿が形成し、浴の組成がさらに変わる。従って、浴中の少なくともモリブデン酸塩イオンの濃度を許容可能なレベルに維持するためには、制御または他のモニター法を使用するのが望ましい。
【0042】
本コーティング組成物を金属またはコーティング化金属に適用した後、最適の耐蝕性とするには、適用したコーティングを続いて熱硬化するのが好ましい。しかしながら、揮発性コーティング物質は、硬化前に乾燥することなどによって、適用したコーティングのいずれかから最初に簡単に蒸発させることができる。乾燥後の冷却は未然に防ぐことができる。予備硬化とも参照される、そのような乾燥のための温度は、約37℃(100゜F)〜約121℃(250゜F)の範囲であってもよい。用途に依存して、より高い温度を使用することができる。乾燥時間は、約2〜約25分またはそれ以上のオーダーであってもよい。
【0043】
基板上のコーティング組成物の全ての高温硬化は、ホットエアオーブン硬化であることが多いが、他の硬化方法、例えば赤外線ベーキング及び誘導硬化(induction curing)を使用することができる。本コーティング組成物は、高温、たとえば約232℃(450゜F)のオーダーで、通常、より高いオーブンエア温度で、熱硬化することができる。この硬化は通常、少なくとも約232℃(450゜F)のピーク金属温度として、基板温度を提供する。
【0044】
ホットエア対流オーブンなどでの硬化は、数分間実施する。硬化時間は5分未満であってもよいが、これらは、通常、少なくとも約10〜約45分間のオーダーである。この硬化時間及び温度は、二層以上のコーティングを適用する場合、または熱硬化トップコーティングであるトップコーティングを続いて適用するとき、効果があると考えられる。かくして、短時間及び低温での硬化を実施できる。また、二以上のコーティングを適用する場合、または熱硬化可能なトップコーティングを適用する場合、このコーティングは、上記の如く乾燥の必要があるだけである。次いで、熱硬化トップコーティングを適用後、硬化を進行させることができる。
【0045】
試験
本発明の組成物及び方法をさらに評価するために、一連の試験を実施した。特に、市販の腐蝕防止組成物でコーティングした種々の部品を、同一の腐蝕防止組成物と、さらに本発明のコーティングでコーティングもした対応する部品と比較した。これらの試験は、以下の通りである。
【0046】
これらの試験の多くにおいて、種々の部品及びコーティング化サンプルを、種々の期間の塩の噴霧に暴露した。そのような噴霧に暴露すること、及びその作用は、部品またはコーティング化サンプルの耐蝕性に関し識見を提供した。本明細書中に記載される全ての塩の噴霧試験は、ASTM B117に従って実施した。コーティング化部品の耐蝕性は、ASTM B-117に記載の塗料及びニスに関する標準的な塩噴霧(霧)試験により測定した。この試験では、部品を一定温度に維持したチャンバに設置し、ここでこれらの部品を指定の時間、5パーセントの塩溶液の微細噴霧(霧)に暴露し、水で濯ぎ、乾燥する。試験部品の腐蝕の程度は、赤錆のパーセントとして表すことができる。
【0047】
A.試験No.1
以下に記載如く40mmボルトにコーティングしたGeomet(登録商標)の二つのコートをこの最初の試験で使用した。このボルトは、ワイヤバスケット中に設置し、Geomet(登録商標)コーティング組成物中にこのバスケットを浸漬し、バスケットを取り出し、過剰の組成物を排水することによってコーティングした。次いで、このボルトとバスケットとを浸漬スピンした。浸漬スピンの間、バスケットは10秒間前へ、10秒間背面へ300rpmでスピンした。
【0048】
排水後、ベーキングした。ボルトは、ベーキング用にシートに設置した。ベーキングは、約121℃(250゜F)で10分以下、次いで232℃(450゜F)で30分間の空気温度で実施した。このボルトは、この手順を使用してコーティング組成物で二回、コーティングした。
【0049】
このGeomet(登録商標)部品を、33.7g/m2のコーティング重量で対照として使用した。後処理では、RFN-01-1-PTと表される、本発明に従った好ましい態様の組成物を使用した。この組成物の配合は表1に記載され、水95パーセント中に、塩化アンモニウム2.5パーセントとモリブデン酸アンモニウム2.5パーセントとを含む。また、浴は、2.5パーセントのモリブデン酸アンモニウムだけを含むようにして準備した。もう一つの浴は、2.5パーセントの塩化アンモニウムだけを含むようにして準備した。部品を30秒間から10分間の範囲で、種々の時間、浴に浸漬した。脱イオン水だけの浴と、RFN-01-1-PT浴をコーティング化部品に適用し、この浴は室温と、塩噴霧における比較のために室温及び65℃(150゜F)であった。脱イオン水だけの浴及びRFN-01-1-PT浴を適用した後、塩噴霧試験にかける前に、この部品を24時間風乾した。RFN-01-1-PT浴、2.5パーセント塩化アンモニウムだけの浴、及び2.5パーセントモリブデン酸アンモニウムだけの浴を室温で適用し、部品を177℃(350゜F)で5分間乾燥した。このRFN-01-1-PT浴は、室温と65℃(105゜F)とでも適用し、次いで177℃(350゜F)で5分間乾燥した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表2のデータは、図1〜5にグラフで説明する。
このデータは、後処理、即ち、全ての手段で適用した好ましい態様の組成物の適用によって、塩噴霧においてGeomet(登録商標)の性能及び耐蝕性を改善したことをはっきりと示す。
【0053】
B.試験No.2
さらにもう一つの一連の試験では、予めGeomet(登録商標)でコーティングしておいたブレーキローターをこの好ましい態様の組成物でさらにコーティングし、以下のような種々の試験にかけた。
【0054】
このローターは、酸またはアルカリ洗浄剤で洗浄した。アルカリ洗浄したローターを、Metal Cleaner 478アルカリ性クリーナー中、65℃(150゜F)で15分間、浸漬した。次いでこのローターを水道水で濯ぎ、続いてアセトン洗浄してから、Geomet(登録商標)コーティングを適用した。酸洗浄したローターは、最初に列記したアルカリ性洗浄液法で洗浄し、続いてMadison Chemical Acid 165中、48℃(120゜F)中で7分間洗浄した。次いで、酸洗浄したローターを水道水、続いてMadison Chemical DX 1100デスムッター(de-smutter)中、室温で3分間、濯いだ。ローターを水道水、続いてアセトンで濯いでから、Geomet(登録商標)を適用した。Geomet(登録商標)をローターの上に噴霧した。ローターを65℃(150゜F)オーブン中で5分間温めてから、RFN-01-1-PTを適用した。RFN-01-1-PTの組成は、表1に記載済みである。RFN-01-1-PTを噴霧し、ローター上に浸漬ドレーンした。ローターBとGは、RFN-01-1-PTを適用した後で、水で濯いだ。ローター2と8は、RFN-01-1-PTを適用した後に水で濯がなかった。以下に示す表3は、種々のローター、コーティング様式、及び得られたコーティングの厚さを示す。
【0055】
【表3】

【0056】
次いでコーティングしたローターを、既に記載のように塩噴霧試験にかけた。
【0057】
【表4】

【0058】
表4のデータは、図6にグラフで示されている。
アルカリクリーナーで洗浄したGeomet(登録商標)ローターは、RFN-01-1-PT中で後処理を任意に実施した、酸で洗浄したGeomet(登録商標)ローターよりも、塩噴霧試験で優れた耐蝕性を示した。このデータは、好ましい態様の組成物を適用すると、耐蝕性を顕著に高めることをはっきりと示している。
【0059】
C.試験No.3
もう一つの一連の試験において、自動車ドア・ストライカをコーティングし、種々の様式で試験した。ストライカーサンプルを種々の市販のコーティングでコーティングし、本発明に従ってコーティングしたストライカとの比較に使用した。適用したGeomet(登録商標)の一つのコートを有する部品を、Geomet(登録商標)の二つのコートを有する部品に対しても試験した。
【0060】
表1に記載された、本明細書中、RFN-01-1-PTと示される好ましい態様の後処理溶液は、Geomet(登録商標)でコーティングしたドア・ストライカに適用するために製造した。この処理は、部品を溶液中に3分間浸漬し、脱イオン水で濯ぎ、次いで圧縮空気で乾燥することによって適用した。
【0061】
部品は、コーティングに依存して、種々の速度で、浸漬-スピンによってトップコーティングした。Dacrokote(登録商標)107でコーティングしたものは121℃(250゜F)で20分間硬化させた以外は、全ての部品を177℃(350゜F)で20分間硬化させた。表5A及び表5Bは、種々のコーティングについて列記する。
【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
要約すれば、一つのGeomet(登録商標)のコートを有する部品は、いずれも、塩噴霧で360時間の必要条件を満たさなかった。好ましい態様の組成物でコーティングし、処理したものの中で、Plus(登録商標)Lの一つのコートを有する部品と、Geokote(登録商標)200の一つのコートを有するものは、必要条件が足りず24時間で崩壊し、最初の赤錆が336時間で発生した。Geomet(登録商標)の一つのコートを有する部品の塩噴霧の概要については、表6を参照されたい。
【0065】
Geomet(登録商標)の二つのコートを有する部品は全て、360時間の塩噴霧必要条件を満たしたが、例外として、好ましい態様の組成物で処理した、トップコートしていない二つのGeomet(登録商標)コートは、216時間で最初の赤錆を示した。二つのGeomet(登録商標)のコートを有する部品の塩噴霧の概要については、表7を参照されたい。
【0066】
表6及び7は、サンプルまたは部品の上の赤錆の割合に対応する数字の格付けを示す。これらの表における腐蝕の数字は、以下の赤錆の量を示す。
【0067】
【表7】

【0068】
試験した部品は全て、その上に少なくとも幾らか白錆があり、そのなかで最も酷いものは、黒のトップコートの部品の上であった。トップコートのない部品は、黒い部品よりも白錆が少なかった。Plus(登録商標)Lでトップコートした部品は、白錆が最も少なかった。
【0069】
Geomet(登録商標)の二つのコートでコーティング化した部品は、トップコートにも、好ましい態様の組成物で処理にも関係なく、Geomet(登録商標)の一つのコートを有するものよりも顕著に優れていた。本発明に従う二つのコートの部品は、市販のコーティングを有するものよりも優れていたが、これは、Geomet(登録商標)のコーティング重量が多かったことに少なくとも一部よるのだろう。
【0070】
変形例(variation)O(Geomet(登録商標)コート1、暗色化溶液、及びPlus(登録商標)L)由来の部品は、変形例K(Geomet(登録商標)コート1、暗色化溶液なし、及びPlus(登録商標)L)よりも優れており、Kは、変形例L(Geomet(登録商標)コート1、暗色化溶液、及びPlus(登録商標)L)よりも優れていた。変形例BB及びEE(Geomet(登録商標)コート2、暗色化溶液、及びPlus(登録商標)L)の部品は、変形例AA(Geomet(登録商標)コート2、暗色化溶液なし、及びPlus(登録商標)L)の部品よりも優れていた。
【0071】
かくして、これらの部品の塩噴霧必要条件を満たすためには、Geomet(登録商標)の二つのコートが好ましいことが明らかである。結果は、好ましい組成物RFN-01-1-PTが、変形例Lの一つの例外を除いて、耐蝕性を改善したことを示す。
【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
上記記載は、現在のところ、本発明の好ましい態様と考えられる。しかしながら、本発明を逸脱せずに、種々の変形及び変更ができることは、当業者には明かであろう。従って、上記は、全ての等価な側面を含む、本発明の趣旨及び範囲内に含まれるそのような全ての変形及び変更を網羅することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、室温で種々の時間、浸漬及びコーティングし、風乾した金属サンプルの耐腐性を示すグラフである。
【図2】図2は、65℃(150゜F)で種々の時間、浸漬及びコーティングし、風乾した金属サンプルの耐蝕性を示すグラフである。
【図3】図3は、室温で種々の時間、浸漬及びコーティングし、177℃(350゜F)で乾燥した金属サンプルの耐蝕性を示すグラフである。
【図4】図4は、コーティングし、177℃(350゜F)で乾燥した金属サンプルの耐蝕性を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明に従ってコーティングした金属サンプルと、コーティングしていない従来のサンプルとの比較である。
【図6】図6は、種々の程度の耐蝕性を示す、本発明に従ってコーティングした金属サンプルのもう一つの比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセント;
モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセント;及び
水約90パーセント〜約99.8パーセントを含む組成物であって、塩化アンモニウム対モリブデン酸アンモニウムの比は、約1:3〜約3:1である、前記組成物。
【請求項2】
前記比が約1:2〜約2:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記比が約1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
塩化アンモニウム濃度が約0.5パーセント〜約3パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
塩化アンモニウム濃度が約2.5パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
モリブデン酸アンモニウムの濃度が約0.5パーセント〜約3パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
モリブデン酸アンモニウムの濃度が約2.5パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセント;及び
ヘプタモリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントを含む組成物であって、塩化アンモニウム対ヘプタモリブデン酸アンモニウムの比は、約1:3〜約3:1である、前記組成物。
【請求項9】
前記比が約1:2〜約2:1である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記比が約1:1である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
塩化アンモニウムの濃度が約0.5パーセント〜約3パーセントである、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
塩化アンモニウムの濃度が約2.5パーセントである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
ヘプタモリブデン酸アンモニウムの濃度が約0.5パーセント〜約3パーセントである、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
ヘプタモリブデン酸アンモニウムの濃度が約2.5パーセントである、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
塩化アンモニウム約2.5パーセントと、ヘプタモリブデン酸アンモニウム約2.5パーセントとを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
外面をもつ金属基板、ここで前記金属は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、並びにその合金及び金属間混合物から選択される;及び
前記基板上に配置された暗色化コーティングを含むコーティング化金属基板であって、ここで前記コーティングは、
(i)塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセント;及び
(ii)モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントを含む水性組成物から形成され、ここで塩化アンモニウム対モリブデン酸アンモニウムの比は、約1:3〜約3:1である、前記コーティング化金属基板。
【請求項17】
前記暗色化コーティング上に配置された耐蝕性コーティングをさらに含み、ここで前記耐蝕性コーティングは、無機バインダー中に分散された亜鉛フレークとアルミニウムフレークとを含む、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項18】
前記比が約1:2〜約2:1である、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項19】
前記比が約1:1である、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項20】
塩化アンモニウムの濃度が約0.5パーセント〜約3パーセントである、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項21】
塩化アンモニウムの濃度が約2.5パーセントである、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項22】
モリブデン酸アンモニウムの濃度が約0.5パーセント〜約3パーセントである、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項23】
モリブデン酸アンモニウムの濃度が約2.5パーセントである、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項24】
塩化アンモニウムの濃度が約2.5パーセントであり、モリブデン酸アンモニウムの濃度が約2.5パーセントである、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項25】
前記金属基板の前記外面と前記暗色化コーティングとの間に配置された耐蝕性コーティングをさらに含み、ここで前記耐蝕性コーティングは有機バインダー中に亜鉛フレークとアルミニウムフレークとを含む、請求項16に記載のコーティング化基板。
【請求項26】
亜鉛の外面を有する基板を準備し;
塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントを含む組成物を準備し;及び
前記組成物を前記亜鉛の外面に適用して、その上に暗色化コーティングを形成する、各段階を含む、亜鉛表面を暗色化するための方法。
【請求項27】
前記組成物を適用する段階の後に、約37℃(100゜F)〜約121℃(250゜F)の温度で前記コーティングを乾燥する段階をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物を適用する段階の後に、前記コーティングを硬化操作に暴露する段階をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、塩化アンモニウム約0.5パーセント〜約3パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.5パーセント〜約3パーセントとを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、塩化アンモニウム約2.5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約2.5パーセントとを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
活性金属の基板に防蝕性を付与する方法であって、
活性金属の基板を準備し;
塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含む組成物を準備し、ここで塩化アンモニウム対モリブデン酸アンモニウムの比は約1:3〜約3:1であり;及び
前記組成物を前記基板に適用する、各段階を含む、前記方法。
【請求項32】
前記組成物を適用する段階の後で、約37℃(100゜F)〜約121℃(250゜F)の温度で前記コーティングを乾燥する段階をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物を適用する段階の後で、前記コーティングを硬化操作に暴露する段階をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が塩化アンモニウム約0.5パーセント〜約3パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約0.5パーセント〜約3パーセントとを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が塩化アンモニウム約2.5パーセントと、モリブデン酸アンモニウム約2.5パーセントとを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
亜鉛表面に耐蝕性を付与する方法であって、
亜鉛外面を有する部品を準備し;
塩化アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとモリブデン酸アンモニウム約0.1パーセント〜約5パーセントとを含む組成物を準備し;及び
前記組成物を前記亜鉛の外面に提供する、各段階を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−526710(P2006−526710A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515205(P2006−515205)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/017786
【国際公開番号】WO2004/108407
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(597069464)メタル・コーティングズ・インターナショナル・インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Metal Coatings International Inc.
【住所又は居所原語表記】275 Industrial Parkway,Chardon,Ohio 44024,United States of America
【Fターム(参考)】