説明

交差導波路および光導波路

【課題】交差部における光損失や光搬送波の混信を抑制し、高品質の光通信が可能な交差導波路、および光損失を抑制し、高品質の光通信が可能な光導波路を提供すること。
【解決手段】交差導波路10は、第1のコア部141と、第1のコア部141を覆う側面クラッド部15とを備える第1の光導波路1と、第2のコア部142と、第2のコア部142を覆う側面クラッド部15とを備える第2の光導波路2とを有し、各コア部141、142同士が交わるように第1の光導波路1と第2の光導波路2とが交差してなる導波路であって、導波路の交差部143よりも第1の光導波路1の入射側部分において、第1のコア部141の幅が、第1の光導波路1中の光の伝搬方向に進むにつれて徐々に拡大するように、第1のコア部141と側面クラッド部15との境界面と第2のコア部142と側面クラッド部15との境界面との交差部近傍がテーパー状になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差導波路および光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光搬送波を使用してデータを移送する光通信がますます重要になっている。このような光通信において、光搬送波を一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が使用されている。
【0003】
この光導波路は、例えば、長尺状のコア部と、このコア部の側面を囲うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0004】
このような光導波路は、一般に配線基板の表面上に配設されている。また、この配線基板上には、発光素子や受光素子が搭載されており、発光素子から出射された光信号は、光導波路を伝搬して受光素子により受信される。
【0005】
ところが、配線基板上の光導波路の配設密度が向上するにつれて、光導波路を交差させる必要性が生じる。この場合、製造容易性および配線基板の薄型化の観点から、光導波路の交差は、立体交差でなく、それぞれのコア部同士が交わるようにして同一平面上での交差が一般的である。
【0006】
例えば、特許文献1には、2本の光導波路をX字状に交差してなる交差導波路構造が開示されている。
【0007】
しかしながら、光導波路同士を単に交差させただけでは、交差部における光損失が大きくなったり、交差部において光搬送波の混信が生じたりして、光通信の品質が低下することが問題となっている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−230013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、交差部における光損失や光搬送波の混信を抑制し、高品質の光通信が可能な交差導波路、および光損失を抑制し、高品質の光通信が可能な光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) 第1のコア部と、該第1のコア部を囲むように設けられたクラッド部とを備える第1の光導波路と、第2のコア部と、該第2のコア部を囲むように設けられたクラッド部とを備える第2の光導波路とが、前記第1のコア部と前記第2のコア部とが同一の平面上で交わるよう配置された交差導波路であって、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との交差点よりも前記第1の光導波路の光の入射側に位置する入射側部分から前記交差点に向けて、前記平面上で見たときの前記第1のコア部の幅が徐々に拡大するようなテーパー状をなす部分を有していることを特徴とする交差導波路。
【0011】
(2) 前記入射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に対するテーパー角度は、前記第1の光導波路中を伝搬する光の伝搬角度より小さい上記(1)に記載の交差導波路。
【0012】
(3) 前記入射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に沿う長さは、前記第1のコア部の最狭部の幅の5倍以上である上記(1)または(2)に記載の交差導波路。
【0013】
(4) 前記入射側部分において、前記テーパー状をなす部分は、該部分で前記第1の光導波路を伝搬する光を反射することにより、該光の伝搬モードを、より低次側に変更する機能を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の交差導波路。
【0014】
(5) 前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との交差点から、該交差点よりも前記第1の光導波路の光の出射側に位置する出射側部分に向けて、前記平面上で見たときの前記第1のコア部の幅が徐々に縮小するようなテーパー状をなす部分を有している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の交差導波路。
【0015】
(6) 前記出射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に対するテーパー角度は、前記第1の光導波路の臨界角から、前記第1の光導波路中の光の伝搬角度を除した角度よりも小さい上記(5)に記載の交差導波路。
【0016】
(7) 前記出射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に対するテーパー角度は、前記第1のコア部の幅の縮小率が0.5〜40%になるような角度になっている上記(5)または(6)に記載の交差導波路。
【0017】
(8) 前記出射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に沿う長さは、前記第1のコア部の最狭部の幅の5倍以上である上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の交差導波路。
【0018】
(9) 前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との交差点近傍の前記第2のコア部内に、前記第2のコア部を横切るように設けられ、前記第2のコア部より屈折率の低い帯状クラッド部を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の交差導波路。
【0019】
(10) 前記第1の光導波路は、マルチモードに対応したものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の交差導波路。
【0020】
(11) コア部と、該コア部を囲むように設けられたクラッド部とを備える光導波路であって、
前記コア部の途中または光の入射側端部近傍に設けられ、当該光導波路の光の入射側から出射側に向かって前記コア部の径が徐々に拡大するようなテーパー状をなす拡径部分を有していることを特徴とする光導波路。
【0021】
(12) さらに、前記拡径部分より出射側の、前記コア部の途中または光の出射側端部近傍に設けられ、当該光導波路の光の入射側から出射側に向かって前記コア部の径が徐々に縮小するようなテーパー状をなす縮径部分を有している上記(11)に記載の光導波路。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、2本の光導波路が交差しており、交差部近傍においてコア部とクラッド部との境界面の一部にテーパー部が形成されていることにより、光導波路を伝搬する光が、交差する他の光導波路との交差部近傍において外部に漏れ出たり、他の光導波路に混信したりするのが抑制され、高品質の光通信が可能な交差導波路を提供することができる。
【0023】
また、光導波路の交差部より入射端側において、テーパー部のテーパー角度を、コア部を伝搬する光の伝搬角度より小さくすることにより、テーパー部は、高次モードの光を反射し、より低次の光に確実に変換することができる。これにより、高次モードの光がより低次のモードに変換されることにより、光路長が短くなり、全反射回数が少なくなることで損失特性を向上することができるという利点と、信号光の伝搬速度が安定するのでモード分散による伝送特性の劣化が抑えられる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の交差導波路および光導波路について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の交差導波路の実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示す交差導波路のコア層のみを示す平面図、図3は、図2に示すコア層を伝搬する光の伝搬経路の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1は、層の厚さ方向(図1の上下方向)が誇張して描かれている。
【0026】
図1に示す交差導波路10は、図1において下側からクラッド層(クラッド部)11、コア層13およびクラッド層(クラッド部)12をこの順に積層してなるものであり、コア層13には、互いに交差する2本のコア部(第1のコア部141と第2のコア部142)と、これらのコア部141、142に隣接する側面クラッド部15とが形成されている。
【0027】
図1に示す交差導波路10は、第1のコア部141の入射端141aに入射された光を、第1のコア部141とクラッド部16(各クラッド層11、12および側面クラッド部15)との界面で次々と全反射させ、出射端側に(図1に示す矢印の方向に)伝搬することにより、第1のコア部141の出射端141bから取り出すことができる。そして、出射端141bで受光した光の明滅パターンに基づいて光通信を行うことができる。
【0028】
また、第2のコア部142も、第1のコア部141と同様、第2のコア部142の入射端142aに入射された光を、第2のコア部142とクラッド部16との界面で次々と全反射させ、出射端側に(図1に示す矢印の方向に)伝搬することにより、第2のコア部142の出射端142bから取り出すことができる。これにより、第2のコア部142では、第1のコア部141を伝搬する光信号とは独立して光信号を伝搬し、光通信を行うことができる。
【0029】
すなわち、交差導波路10は、第1のコア部141とそれを囲うように設けられたクラッド部16とで構成される第1の光導波路1と、この第1の光導波路1と同一の平面上で交差し、第2のコア部142とそれを囲うように設けられたクラッド部16とで構成される第2の光導波路2とを備えるものである。
【0030】
各コア部141、142とクラッド部16との界面でそれぞれ全反射を生じさせるためには、界面に屈折率差が存在する必要がある。各コア部141、142の屈折率は、クラッド部16の屈折率より高ければよく、その差は特に限定されないものの、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。なお、屈折率差の上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは2.0%程度とされる。屈折率差が前記下限値未満であると光を伝搬する効果が低下する場合があり、また、前記上限値を超えても、光の伝搬効果のそれ以上の増大は期待できない。
【0031】
なお、前記屈折率差とは、各コア部141、142の屈折率をA、クラッド部16の屈折率をBとしたとき、次式で表わされる。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
【0032】
また、図1に示す構成では、第1のコア部141および第2のコア部142は、平面視で互いに軸線(光軸)が直交しており、各コア部141、142の重複部分が交差部143(交差点)を形成している。
【0033】
ここで、第1のコア部141とクラッド部16との境界面のうち、交差部143より第1のコア部141の入射端141a側に位置するものを境界面171aとし、出射端141b側に位置するものを境界面171bとする。
【0034】
また、第2のコア部142とクラッド部16との境界面のうち、交差部143より第2のコア部142の入射端142a側に位置するものを境界面172aとし、出射端142b側に位置するものを境界面172bとする。
【0035】
図1に示す交差導波路10では、交差部143近傍において、各境界面171a、171bがテーパー状になっている。
【0036】
具体的には、第1のコア部141の幅(前記平面で見たときの幅)は、図2に示すように、入射端141a付近ではWであるが、交差部143近傍では光の伝搬方向に進むにつれて徐々に拡大している。また、境界面171aが境界面172aおよび境界面172bと交わる位置では、第1のコア部141の幅はWまで広がっている。そして、境界面171aは、その一部に、第1のコア部141の軸線M(光軸)に対して図2に示すテーパー角度θで傾斜したテーパー面180a(テーパー状をなす部分)を有している。
【0037】
また、交差部143より出射端141b側では、第1のコア部141の幅は、境界面171bが境界面172aおよび境界面172bと交わる位置ではWであるが、光の伝搬方向に進むにつれて徐々に縮小している。また、出射端141b付近ではWまで縮小している。そして、境界面171bは、その一部に、第1のコア部141の軸線Mに対して図2に示すテーパー角度θで傾斜したテーパー面180b(テーパー状をなす部分)を有している。
【0038】
また、第1のコア部141および第2のコア部142は、それぞれ、その横断面形状が正方形または矩形(長方形)のような四角形をなしている。
【0039】
第1のコア部141および第2のコア部142の幅(W〜W)および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。
【0040】
また、図1に示す交差導波路10は、第2のコア部142の交差部143近傍のうち、第2のコア部142の入射端142a側に、第2のコア部142を横切るように設けられた、平面視で帯状をなす混信防止クラッド(帯状クラッド部)192aを有している。さらに、第2のコア部142の交差部143近傍のうち、第2のコア部142の出射端142b側には、第2のコア部142を横切るように設けられた、平面視で帯状をなす混信防止クラッド(帯状クラッド部)192bを有している。
【0041】
これらの帯状をなす混信防止クラッド192a、192bは、それぞれの軸線が、第1のコア部141の軸線に対して平行になるよう設けられている。そして、これらの混信防止クラッド192a、192bは、それぞれの屈折率が前記第2のコア部142の屈折率よりも小さいものである。これにより、各混信防止クラッド192a、192bは、第1のコア部141を伝搬する光が、第2のコア部142に向かったとしても、図3に一点鎖線の矢印で示すように、その光を全反射して、第2のコア部142に侵入するのを防止することができる。一方、第2のコア部142を伝搬する光は、各混信防止クラッド192a、192bに対して小さい入射角で入射するため、全反射されることなく透過する。すなわち、各混信防止クラッド192a、192bは、不本意にも第2のコア部142に侵入した侵入光が、第2のコア部142を伝搬する光にとってのノイズ光になってしまうのを防止する機能を有するものである。
【0042】
なお、各混信防止クラッド192a、192bの屈折率は、第1のコア部141を伝搬する光を全反射し得る程度に第2のコア部142の屈折率より小さければよいが、その屈折率差は、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。なお、屈折率差の上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。
【0043】
また、帯状をなす各混信防止クラッド192a、192bの幅Wは、好ましくは10μm以下程度、より好ましくは5μm程度以下、さらに好ましくは1〜2μm程度とされる。各混信防止クラッド192a、192bの幅Wを前記範囲内とすることにより、各混信防止クラッド192a、192bは、第2のコア部142中における光の伝搬を著しく阻害することなく、第1のコア部141を伝搬する光が第2のコア部142中に混信するのを確実に防止し得るものとなる。
【0044】
上述したように、各コア部141、142は、クラッド部16および各混信防止クラッド192a、192bに比べて屈折率が高くなっているが、各コア部141、142、クラッド部16および各混信防止クラッド192a、192bの各構成材料は、それぞれ上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されない。本実施形態では、各コア部141、142、側面クラッド部15および各混信防止クラッド192a、192bは同一の材料(コア層13)で構成されており、各コア部141、142、側面クラッド部15および各混信防止クラッド192a、192bのそれぞれの間における屈折率差は、材料の化学構造の差異により発現している。
【0045】
コア層13の構成材料には、各コア部141、142を伝搬する光に対して実質的に透明な材料であればいかなる材料をも用いることができるが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。
【0046】
このうち、本実施形態のように化学構造の差異により屈折率差を発現させるためには、紫外線、電子線のような活性エネルギー線の照射により(あるいはさらに加熱することにより)屈折率が変化する材料であるのが好ましい。
【0047】
このような材料としては、例えば、活性エネルギー線の照射や加熱により、少なくとも一部の結合が切断したり、少なくとも一部の官能基が脱離する等して、化学構造が変化し得る材料が挙げられる。
【0048】
具体的には、ポリシラン(例:ポリメチルフェニルシラン)、ポリシラザン(例:ペルヒドロポリシラザン)等のシラン系樹脂の他、前述したような構造変化を伴う材料のベースとなる樹脂としては、分子の側鎖または末端に官能基を有する以下の(1)〜(6)のような樹脂が挙げられる。(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂等のノルボルネン系樹脂、その他、光硬化反応性モノマーを重合することにより得られるアクリル系樹脂、エポキシ樹脂。
【0049】
なお、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0050】
一方、クラッド層11および12は、それぞれ、各コア部141、142の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、各コア部141、142は、その外周をクラッド部16に囲まれた導光路として機能する。
【0051】
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部141、142の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.3〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜30μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、交差導波路10が不要に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
【0052】
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
【0053】
なお、本実施形態では、コア層13の構成材料と、クラッド層11、12の構成材料との間で、両者の間の屈折率差を考慮して適宜異なる材料を選択して使用することが可能である。したがって、コア層13とクラッド層11、12との境界において光を確実に全反射させるため、十分な屈折率差が生じるように材料を選択すればよい。これにより、交差導波路10の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部141、142からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。その結果、各コア部141、142を伝搬する光の減衰を抑制することができる。
【0054】
また、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13とクラッド層11、12との間の密着性が高いことが好ましい。したがって、クラッド層11、12の構成材料は、コア層13の構成材料よりも屈折率が低く、かつコア層13の構成材料と密着性が高いという条件を満たすものであれば、いかなる材料であってもよい。
【0055】
例えば、比較的低い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーとしては、末端にエポキシ構造を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系ポリマーは、特に低い屈折率を有するとともに、密着性が良好である。
【0056】
また、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高いため、かかるノルボルネン系ポリマーを用いることにより、交差導波路10に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0057】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアルキル基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられるが、ヘキシル基が特に好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0058】
ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマー全体の屈折率が上昇するのを防止することができる。また、ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることから好ましい。
【0059】
なお、クラッド層11、側面クラッド部15およびクラッド層12の構成材料は、それぞれ、同一(同種)のものでも異なるものでもよいが、これらは、屈折率が近似しているものであるのが好ましい。
【0060】
このような本発明の交差導波路10は、各コア部141、142の材料の光学特性等によっても若干異なり、特に限定されないが、例えば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において好適に使用される。
【0061】
ここで、従来の交差導波路について説明する。
図12は、従来の交差導波路を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図13は、図12に示すコア層を伝搬する光の伝搬経路の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図12中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図12は、層の厚さ方向(図12の上下方向)が誇張して描かれている。
【0062】
図12に示す交差導波路90は、第1のコア部とクラッド部との境界面の形状、および、第2のコア部とクラッド部との境界面の形状が異なること以外は、図1に示す交差導波路10と同様である。
【0063】
図12に示すコア層93には、互いに交差する2本のコア部(第1のコア部941と第2のコア部942)と、これらのコア部941、942に隣接する側面クラッド部95とが形成されている。
【0064】
そして、第1のコア部941および第2のコア部942は、平面視で互いに軸線が直交しており、各コア部941、942の重複部分が交差部943を形成している。
【0065】
ここで、図12に示す交差導波路90では、第1のコア部941と側面クラッド部95との境界面971が、第2のコア部942と側面クラッド部95との境界面972と直交している。
【0066】
ところで、一般にマルチモードに対応した光導波路に入射された光は、コア部中に複数の光路が存在する。複数の光路は、互いに伝搬角度が異なっており、伝搬角度が相対的に小さい光を低次モード、伝搬角度が相対的に大きい光のモードを高次モードという。
【0067】
このうち、高次モードの光が、境界面971の交差部943近傍の部分で反射されると、その反射光は、図13に破線の矢印で示すように、第2のコア部942に入射するとともに、一部は側面クラッド部95に漏れ出る。このような高次モードの光は、伝搬角度が大きいので、交差部943において相対的に高い確率で第2のコア部942側に入射してしまい、第2のコア部942を伝搬する光にとってのノイズ光になってしまう。このため、交差部943において高次モードの信号光の混信や減衰を招いてしまうことが以前から問題となっていた。
【0068】
また、低次モードの光であったとしても、図13に一点鎖線の矢印で示すように、境界面972のうち、交差部943近傍の部分に、第1のコア部941を伝搬する信号光が当たると、境界面972の法線に対して小さな入射角で光が当たることになるため、その光は境界面972で全反射されることなく、第1のコア部941から側面クラッド部95に漏れ出てしまう。低次モードの光において、このような漏出が生じる確率は高次モードの光に比べて相対的に低いものの、やはり交差部943における信号光の減衰が問題となっていた。
【0069】
そこで、本発明では、前述したように、交差部143近傍において、各境界面171a、171bの一部をテーパー状にすることとした(図2および図3参照)。すなわち、境界面171aは、その一部に前述したテーパー面180aを有し、境界面171bは、その一部に前述したテーパー面180bを有するものである。これにより、テーパー面180aで反射された高次モードの光は、図3に破線の矢印で示すように、第1のコア部141における伝搬角度がより小さくなり、より低次モードの光に変換されることとなる。その結果、高次モードの光は、第2のコア部142に混信したり、側面クラッド部15に漏出したりすることなく交差部143を通過する。さらに、高次モードの光がより低次のモードに変換される、換言すれば、伝搬モード(横モード)をより低次側に変換することにより、光路長が短くなり、全反射回数が少なくなるので損失特性を向上することができるという利点と、信号光の伝搬速度が安定するのでモード分散による伝送特性の劣化が抑えられる利点もある。
【0070】
また、伝搬角度によっては、図3に実線の矢印で示すように、信号光がテーパー面180aで反射された後、交差部143を通過して、テーパー面180bで再度反射される。その結果、信号光は、第2のコア部142に混信したり、側面クラッド部15に漏出したりすることなく、交差部143を通過する。
【0071】
このように本発明にかかる交差導波路10によれば、従来であれば光損失や混信等の原因となっていた交差部143近傍で反射した光を、信号光として出射端141bまで確実に伝搬することができる。すなわち、交差部143における信号光の混信や減衰を抑制することができる。その結果、交差導波路10は、高品質の光通信が可能なものとなる。
【0072】
ここで、テーパー面180aの、第1のコア部141の軸線Mに対する角度(テーパー角度θ)は、第1のコア部141を伝搬する光の伝搬角度に応じて適宜設定される。
【0073】
具体的には、テーパー角度θは、第1のコア部141の高次モードの伝搬角度より小さい角度に設定される。これにより、テーパー面180aは、高次モードの光を受けて反射することができるようになるので、前述したように高次モードの光を低次モードの光に確実に変換し得るものとなる。なお、仮に、テーパー角度θが高次モードの伝搬角度より大きい場合には、テーパー面180aに光が当たらないので、光を反射することができない。
【0074】
また、第1のコア部141における高次モードの伝搬角度は、第1のコア部141の開口数(NA)と受光面形状、光源の開口数と出射面形状(直径)、第1のコア部141とクラッド部16との屈折率差等の因子に応じて変わるものの、一例としては5〜15°程度である。
【0075】
なお、テーパー角度θの具体的角度の一例としては7.11°以下とされる。一方、θの下限値は特に設定されなくてもよいが、一例として0.1°程度とされる。
【0076】
また、テーパー面180aの第1のコア部141の軸線M(光軸)に沿う長さ(図2に示す長さL)は、交差部143における混信や光損失の抑制という観点からは長い方が好ましいが、一方、長すぎると高次モードの割合が増加する、デバイス全体が大きくなり過ぎる等の問題も発生する。このため、長さLは、第1のコア部141の最狭部の幅の1〜20倍程度であるのが好ましく、7〜15倍程度であるのがより好ましい。
【0077】
また、第1のコア部141の幅は、前述したように、入射端141a付近ではWであるが、交差部143近傍では光の伝搬方向に進むにつれて徐々に拡大し、テーパー面180aの交差部143側の端部ではWまで拡大している。すなわち、テーパー面180aは、第1のコア部141の幅がWからWまで拡大するように傾斜している。
【0078】
この場合、第1のコア部141の幅の拡大率、すなわち、Wに対する(W−W)の割合は、テーパー面180aのテーパー角度θと長さLとに基づいて導かれるが、一例として0.5〜40%程度であるのが好ましく、10〜30%程度であるのがより好ましい。
【0079】
一方、テーパー面180bの、第1のコア部141の軸線Mに対する角度(テーパー角度θ)は、第1のコア部141を伝搬する光の伝搬角度と、第1のコア部141の屈折率およびクラッド部16の屈折率に基づいて算出される全反射の臨界角とに応じて適宜設定される。
【0080】
具体的には、テーパー角度θは、第1のコア部141の臨界角から、第1のコア部141の伝搬角度を除した角度よりも小さい角度に設定される。これにより、テーパー面180bは、第1のコア部141を伝搬する光を確実に全反射することができる。その結果、テーパー面180bは、従来はクラッド部に漏れ出ていた光を反射することによって、信号光の強度低下を抑制することができる。
【0081】
また、テーパー面180bの第1のコア部141の軸線Mに沿う長さ(図2に示す長さL)は、交差部143における混信や光損失の抑制という観点からは長い方が好ましいが、一方、テーパー面180aと同様、長すぎると高次モードの割合が増加する、デバイス全体が大きくなり過ぎる等の問題が発生する。このため、長さLは、第1のコア部141の最狭部の幅の1〜20倍程度であるのが好ましく、7〜15倍程度であるのがより好ましい。
【0082】
なお、テーパー角度θの具体的角度の一例としては2°以下とされる。一方、θの下限値は特に設定されなくてもよいが、一例として0.1°程度とされる。
【0083】
また、第1のコア部141の幅は、前述したように、境界面171bが境界面172aおよび境界面172bと交わる位置ではWであるが、光の伝搬方向に進むにつれて徐々に縮小し、テーパー面180bの出射側の端部ではWまで縮小している。すなわち、テーパー面180bは、第1のコア部141の幅がWからWまで減少するように傾斜している。
【0084】
この場合、第1のコア部141の幅の縮小率、すなわち、Wに対する(W−W)の割合は、0.5〜40%程度であるのが好ましく、10〜30%程度であるのがより好ましい。幅の縮小率を前記範囲内とすることにより、縮小率が急すぎてテーパー面180bから高次モードの光がクラッド部に漏れ出てしまうのを抑制しつつ、第1のコア部141の幅が適度に縮小されることになるので、第1のコア部141を伝搬する光のうち、高次モードの割合が増加するのを抑制することができる。
【0085】
なお、第2のコア部142の幅Wは、特に限定されないが、交差部143における第1のコア部141から第2のコア部142への混信や光損失の抑制という観点からは幅Wはできるだけ狭い方が好ましいが、第2の光導波路2の接続性との関係からは、第1のコア部141の最狭部の幅Wの50〜150%程度であるのが好ましく、80〜120%程度であるのがより好ましい。
【0086】
また、交差導波路10の交差部143には、必要に応じて、ミラー等の分岐素子の他、合波素子、分光素子、変調素子、スイッチング素子等の各種素子が設けられていてもよい。
【0087】
また、各混信防止クラッド192a、192bは、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
【0088】
ここで、図9に、図2に示す交差導波路の他の構成例を示す。
図9に示す交差導波路は、各テーパー面180a、180bの形状が異なること以外は、図2に示す交差導波路10と同様である。すなわち、図9に示す各角部180a、180a、180aは、それぞれ、図2に示すような角を面取りした平面状のテーパー面180aとは異なる形状であるが、テーパー面180aと同様の機能を有するものである。
【0089】
図9(a)に示す角部180aは、第1のコア部141の内側に突出するように湾曲している。
【0090】
また、図9(b)に示す角部180aは、第1のコア部141の外側に突出するように湾曲している。
【0091】
さらに、図9(c)に示す角部180aは、テーパー状になっており、かつそのテーパー角度が段階的に変化するよう構成されている。
【0092】
このような各角部180a、180a、180aを備える交差導波路は、それぞれ、前述した図2に示す交差導波路10と同様の作用・効果を奏する。
【0093】
また、図10には、図2に示す交差導波路のさらに別の構成例を示す。
図10に示す交差導波路は、コア層13において、第1のコア部141の交差部143近傍にも、第2のコア部142に設けられた混信防止クラッド192a、192bと同様の機能を有する混信防止クラッド191a、191bを有している以外は、図2に示す交差導波路10と同様である。
【0094】
すなわち、図10に示す交差導波路は、コア層13中に、第1のコア部141の交差部143近傍のうち、第1のコア部141の入射端141a側に、第1のコア部141を横切るように設けられた、平面視で帯状をなす混信防止クラッド(帯状クラッド部)191aを有している。また、第1のコア部141の交差部143近傍のうち、第1のコア部141の出射端141b側には、第1のコア部141を横切るように設けられた、平面視で帯状をなす混信防止クラッド(帯状クラッド部)191bを有している。
【0095】
これらの帯状をなす混信防止クラッド191a、191bは、それぞれの軸線が、第2のコア部142の軸線に対して平行になるよう設けられている。そして、これらの混信防止クラッド191a、191bは、それぞれの屈折率が前記第1のコア部141の屈折率よりも小さいものである。これにより、各混信防止クラッド191a、191bは、第2のコア部142を伝搬する光が、交差部143において第1のコア部141に向かったとしても、前記各混信防止クラッド192a、192bと同様に、その光を全反射して、第1のコア部141に侵入するのを防止することができる。一方、第1のコア部141を伝搬する光は、各混信防止クラッド191a、191bに対して小さい入射角で入射するため、全反射されることなく透過する。すなわち、各混信防止クラッド191a、191bは、不本意にも第1のコア部141に侵入した侵入光が、第1のコア部141を伝搬する光にとってのノイズ光になってしまうのを防止する機能を有するものである。
【0096】
以上のことから、図10に示す交差導波路は、第1のコア部141と第2のコア部142の双方に、混信防止クラッドを有していることから、相互の混信をより確実に防止することができる。
【0097】
なお、各混信防止クラッド191a、191bの屈折率は、第2のコア部142を伝搬する光を全反射し得る程度に第1のコア部141の屈折率より小さければよいが、その屈折率差は、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。なお、屈折率差の上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。
【0098】
また、帯状をなす各混信防止クラッド191a、191bの幅は、前記各混信防止クラッド192a、192bの幅と同様に設定される。
【0099】
次に、交差導波路10の製造方法の一例について説明する。
交差導波路10は、クラッド層11と、コア層13と、クラッド層12とをそれぞれ作製し、これらを積層することにより製造される。
【0100】
このような製造方法では、互いに屈折率の異なる部位が物理的かつ光学的に接するように作製する必要がある。具体的には、第1のコア部141および第2のコア部142に対して、側面クラッド部15や各クラッド層11、12が隙間を介することなく、確実に密着するように形成する必要がある。
【0101】
コア層13の具体的な製造方法としては、同一層(コア層13)内に、各コア部141、142と、側面クラッド部15を形成し得る方法であれば特に限定されず、例えば、フォトブリーチング法、フォトリソグラフィ法、直接露光法、ナノインプリンティング法、モノマーディフュージョン法等が挙げられる。
【0102】
ここでは、代表として、モノマーディフュージョン法を含む交差導波路10の製造方法について説明する。
【0103】
図4〜図8は、それぞれ、図1に示す交差導波路10の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。なお、図5、6、8は、図1のA−A線における断面図である。
【0104】
[1] まず、支持基板161上に、層110を形成する(図4参照)。
層110は、コア層形成用材料(ワニス)100を塗布し硬化(固化)させる方法により形成される。
【0105】
具体的には、層110は、支持基板161上にコア層形成用材料100を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板161を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより形成する。
【0106】
層110を塗布法で形成する場合、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0107】
支持基板161には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
【0108】
コア層形成用材料100は、ポリマー115と、添加剤120(少なくともモノマーおよび触媒を含む)とで構成される現像性材料を含有し、活性放射線の照射および加熱により、ポリマー115中において、モノマーの反応が生じる材料である。
【0109】
そして、得られた層110中では、ポリマー(マトリックス)115は、いずれも、実質的に一様かつランダムに分配され、添加剤120は、ポリマー115内に実質的に一様かつランダムに分散されている。これにより、層110中には、添加剤120が実質的に一様かつ任意に分散されている。
【0110】
このような層110の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。
【0111】
ポリマー115には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中で後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても、十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
【0112】
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用材料100中や層110中においてポリマー115と相分離を起こさないことを言う。
このようなポリマー115としては、前述したコア層13の構成材料が挙げられる。
【0113】
なお、ポリマー115としてノルボルネン系ポリマーを用いた場合、このポリマーが高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層13を得ることができる。
【0114】
また、ノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
【0115】
このうち、コポリマーの一例としては、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する化合物が好適に用いられる。
【0116】
【化1】

[式中、mは、1〜4の整数を表し、nは、1〜9の整数を表す。]
【0117】
なお、コポリマーの種類としては、上記式(1)の2つの単位が任意の順序(ランダム)に並んだもの、交互に並んだもの、各単位がそれぞれ固まって(ブロック状に)並んだもの等のいずれの形態をとるものであってもよい。
【0118】
ここで、ポリマー115として上記ノルボルネン系ポリマーを用いた場合、添加剤120の一例として、ノルボルネン系モノマー、助触媒(第1の物質)および触媒前駆体(第2の物質)を含むものが好ましく選択される。
【0119】
ノルボルネン系モノマーは、後述する活性放射線に照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、この反応物の存在により、層110において照射領域と、活性放射線の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
【0120】
この反応物としては、ノルボルネン系モノマーがポリマー(マトリックス)115中で重合して形成されたポリマー(重合体)、ポリマー115同士を架橋する架橋構造、および、ポリマー115に重合してポリマー115から分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖(ペンダントグループ))のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0121】
ここで、層110において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して高い屈折率を有するノルボルネン系モノマーとが組み合わせて使用され、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して低い屈折率を有するノルボルネン系モノマーとが組み合わせて使用される。
【0122】
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味する。
【0123】
そして、ノルボルネン系モノマーの反応(反応物の生成)により、層110において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が側面クラッド部15となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分が各コア部141、142となる。
【0124】
触媒前駆体(第2の物質)は、前記のモノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、後述する活性放射線の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
【0125】
この触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13(交差導波路10)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、交差導波路10の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
【0126】
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0127】
(E(R)Pd(Q) ・・・(Ia)
[(E(R)Pd(Q)(LB)[WCA] ・・・(Ib)
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0128】
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(i−Pr)、Pd(OAc)(P(Cy)、Pd(OCCMe(P(Cy)、Pd(OAc)(P(Cp)、Pd(OCCF(P(Cy)、Pd(OCC(P(Cy)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0129】
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0130】
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)(P(Cy)が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0131】
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0132】
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
【0133】
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0134】
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)等が挙げられる。
【0135】
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
【0136】
また、コア層形成用材料(ワニス)100中には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
【0137】
さらに、コア層形成用材料100中には、酸化防止剤を添加することができる。これにより、望ましくないフリーラジカルの発生や、ポリマー115の自然酸化を防止することができる。その結果、得られたコア層13(交差導波路10)の特性の向上を図ることができる。
以上のようなコア層形成用材料100を用いて層110が形成される。
【0138】
このとき、層110は、第1の屈折率を有している。この第1の屈折率は、層110中に一様に分散(分布)するポリマー115およびモノマーの作用による。
【0139】
また、以上の添加剤120の説明では、モノマーがノルボルネン系モノマーの場合を例に説明したが、これ以外のモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0140】
なお、添加剤120中の触媒は、モノマーの種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、アクリル酸系モノマーやエポキシ系モノマーの場合には、触媒前駆体(第2の物質)の添加を省略することができる。
【0141】
[2] 次に、開口(窓)1351が形成されたマスク(マスキング)135を用意し、このマスク135を介して、層110に対して活性放射線(活性エネルギー光線)130を照射する(図5参照)。
【0142】
以下では、モノマーとして、ポリマー115より低い屈折率を有するものを用い、コア層形成用材料100は、活性放射線130の照射に伴って照射領域125の屈折率が低下する場合を一例に説明する。
【0143】
すなわち、ここで示す例では、活性放射線130の照射領域125がコア層13中の側面クラッド部15となる。
【0144】
したがって、ここで示す例では、マスク135には、形成すべき側面クラッド部15のパターンと等価な開口(窓)1351が形成される。この開口1351は、照射する活性放射線130が透過する透過部を形成するものである。
【0145】
マスク135は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層110上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
【0146】
用いる活性放射線130は、助触媒に対して、光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
【0147】
マスク135を介して、活性放射線130を層110に照射すると、活性放射線130が照射された照射領域125内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線130の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
【0148】
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域125内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
【0149】
なお、活性放射線130として、レーザ光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク135の使用を省略してもよい。
【0150】
[3] 次に、層110に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域125内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
【0151】
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域125内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域125と未照射領域140との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域140からモノマーが拡散(モノマーディフュージョン)して照射領域125に集まってくる。
【0152】
その結果、照射領域125では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、モノマーの重合体としては、主に付加(共)重合体が生成する。
【0153】
一方、未照射領域140では、当該領域から照射領域125にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー115の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
【0154】
このようにして、照射領域125と未照射領域140との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、各コア部141、142(未照射領域140)と側面クラッド部(照射領域125)とが形成される(図6参照)。
【0155】
[4] 次に、層110に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域140および/または照射領域125に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域125、140に残存するモノマーを反応させる。
【0156】
このように、各領域125、140に残存するモノマーを反応させることにより、得られる各コア部141、142および側面クラッド部15の安定化を図ることができる。
【0157】
[5] 次に、層110に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、各コア部141、142および側面クラッド部15の更なる安定化を図ることができる。
【0158】
以上の工程を経て、コア層13が得られる。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、各コア部141、142および側面クラッド部15との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、本工程[5]や前記工程[4]を省略してもよい。
【0159】
[6] 次に、支持基板162上に、クラッド層11(12)を形成する(図7参照)。
【0160】
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用材料)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
【0161】
クラッド層11(12)を塗布法で形成する場合、例えば、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0162】
支持基板162には、支持基板161と同様のものを用いることができる。
以上のようにして、支持基板162上に、クラッド層11(12)が形成される。
【0163】
[7] 次に、支持基板161からコア層13を剥離し、このコア層13を、クラッド層11が形成された支持基板162と、クラッド層12が形成された支持基板162とで挟持する(図8参照)。
【0164】
そして、クラッド層12が形成された支持基板162の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。
これにより、クラッド層11、12とコア層13とが接合、一体化される。
【0165】
また、この圧着作業は、加熱下で行われるのが好ましい。加熱温度は、クラッド層11、12やコア層13の構成材料等により適宜決定されるが、通常は、80〜200℃程度が好ましく、120〜180℃程度がより好ましい。
【0166】
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ、支持基板162を剥離、除去する。これにより、交差導波路10(本発明の交差導波路)が得られる。
【0167】
以上のような方法によれば、各コア部141、142と側面クラッド部15とを同一の製造工程において同時に形成することができる。
【0168】
また、このようにして形成された各コア部141、142と側面クラッド部15とは、同種の材料で構成されたものとなる。このため、両者は熱膨張率が等しくなり、互いに異なる材料で構成された場合に比べ、温度変化に伴う交差導波路10の変形や層間剥離等の不具合を低減することができる。
【0169】
以上、モノマーディフュージョン法による交差導波路10の製造方法について説明したが、前述したように、交差導波路10の製造方法には、前述したようなその他の方法を用いることもできる。
【0170】
このうち、フォトブリーチング法では、例えば、活性放射線の照射により活性化する離脱剤(物質)と、主鎖と該主鎖から分岐し、活性化した離脱剤の作用により、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)とを有するポリマーを含有するコア層形成用材料を用いる。このコア層形成用材料は、層状に成膜された後、この層の一部に紫外線等の活性放射線を照射することにより、離脱性基が離脱(切断)され、その領域の屈折率が変化(上昇または低下)する。例えば、離脱性基の離脱に伴って屈折率が低下するものとすると、活性放射線の照射領域が側面クラッド部15となり、それ以外の領域が各コア部141、142となる。このようにしてコア層13を形成した後、前述したようにして、コア層13の両面にクラッド層11、12を接合する。
【0171】
一方、フォトリソグラフィ法は、例えば、高屈折率のコア部形成用材料の層をクラッド層11上に成膜し、さらにこの層上に各コア部141、142に対応する形状のレジスト膜をフォトリソグラフィ技術により形成する。そして、このレジスト膜をマスクとして、コア部形成用材料の層をエッチングする。これにより各コア部141、142が得られる。その後、各コア部141、142を覆うようにして、相対的に低屈折率のクラッド部形成用材料を成膜することにより、各コア部141、142以外の領域をクラッド部形成用材料が充填し、側面クラッド部15が得られる。また、さらに、これら(各コア部141、142および側面クラッド部15)を覆うようにクラッド部形成用材料が供給されることにより、クラッド層12が得られる。
【0172】
ここで、前述したような交差導波路10が備えるテーパー状をなす部分(各テーパー面180a、180b)を、交差部を有しない光導波路に適用した場合でも、光損失の抑制、伝送特性の向上等の効果が期待できる。
【0173】
図11は、本発明の光導波路の実施形態を示す平面図である。図11に示す光導波路20は、図2に示す交差導波路10において第2の光導波路2を省略し、テーパー状をなす部分(各テーパー面180a、180b)を備える第1の光導波路1のみを残存させたものと等価である。
【0174】
すなわち、図11に示す光導波路20は、クラッド層11、コア層23およびクラッド層12をこの順に積層してなるものであるが、図11には、コア層23の平面図を示し、各クラッド層11、12の図示は省略している。そして、コア層23中には、コア部24と側面クラッド部25とが形成されている。これらのコア部24および側面クラッド部25は、それぞれ、図2に示す交差導波路10におけるコア部14および側面クラッド部15に対応するものである。
【0175】
そして、図11に示す光導波路20は、光の伝搬方向に進むにつれて徐々に拡径する拡径部分280a(テーパー状をなす拡径部分)を有している。一方、拡径部分280aより出射端側には、光の伝搬方向に進むにつれて徐々に縮径する縮径部分280b(テーパー状をなす縮径部分)を有している。これらの拡径部分280aおよび縮径部分280bは、それぞれ、交差導波路10におけるテーパー面180aおよびテーパー面180bに対応するものであり、各テーパー面180a、180bと同等の作用・効果を奏する。なお、拡径部分280aにおけるテーパー角度、長さ等のパラメータや、縮径部分280aにおけるテーパー角度、長さ等のパラメータは、前述した各テーパー面180a、180bのパラメータに準ずる。
【0176】
このような光導波路20によれば、従来であれば光損失の原因となっていた高次モードの光を、拡径部分280aによって低次モードの光に変換することで、光路長を短縮して全反射回数を減少させ、損失特性を向上するとともに、信号光の伝搬速度を安定させてモード分散による伝搬特性の劣化を抑制することができる。これにより、光導波路20は、高品質の光通信が可能なものとなる。
【0177】
一方、縮径部分280bを備えることにより、光導波路20は、出射端におけるコア部24の径が大きくなり過ぎるのを抑制することができるので、高次モードの割合の増加やデバイスの大型化を抑制するとともに、集光性が向上し、受光素子における受光効率を高めることができる。これにより、高品質の光通信が可能でかつ小型化を可能にする光導波路20が得られる。
【0178】
なお、このような光導波路20の平面視形状は、特に限定されず、直線状、湾曲状、屈曲状等の形状であってもよい。また、光導波路20の途中に分岐部を備えていてもよい。
【0179】
また、拡径部分280aおよび縮径部分280bは、1本の光導波路20上に複数個設けるようにすれば、光の伝搬モード(横モード)の低次側への変換を、より効率的に行うことができる。この場合、各拡径部分280aおよび各縮径部分280bを、交互に等間隔で設けるようにすれば、光導波路20の長さによらず、伝送特性の向上が安定的に図られる。
【0180】
また、図11に示す拡径部分280aは、コア部14の途中に設けられているが、コア部14の入射側端部(図11の左側端部)近傍に設けられていてもよい。さらに、図12に示す縮径部分280bも、コア部14の途中に設けられているが、コア部14の出射側端部(図11の右側端部)近傍に設けられていてもよい。
【0181】
以上、本発明の交差導波路および光導波路を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されていてもよい。
【0182】
また、本発明の交差導波路および光導波路は、シングルチャンネルでもマルチチャンネルでもよい。
【0183】
ところで、このような本発明の交差導波路および光導波路は、例えば光通信用の光配線に用いることができる。
【0184】
また、本発明の交差導波路および光導波路を備えた光配線は、既存の電気配線とともに基板上に混載されることにより、いわゆる「光・電気混載基板」を構成することができる。かかる光・電気混載基板では、例えば、光配線で伝送された光信号を、光デバイスにおいて電気信号に変換し、電気配線に伝達する。これにより、光配線の部分で、従来の電気配線よりも高速かつ大容量の情報伝送を可能にする。したがって、例えばCPUやLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間をつなぐバス等に、この光・電気混載基板を適用することにより、システム全体の性能を高めるとともに、電磁ノイズの発生を抑制することができる。また、交差部での光信号の混信や減衰を抑制することができるので、より高速で高効率の光・電気混載基板が得られる。
【0185】
なお、かかる光・電気混載基板は、例えば、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等、大容量のデータを高速に伝送する電子機器類に搭載することが考えられる。このように光・電気混載基板を備えた電子機器は、内部の情報処理速度に優れた高い性能を発揮し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明の交差導波路の実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
【図2】図1に示す交差導波路のコア層のみを示す平面図である。
【図3】図2に示すコア層を伝搬する光の伝搬経路の一例を示す図である。
【図4】図1に示す交差導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図5】図1に示す交差導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図6】図1に示す交差導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図7】図1に示す交差導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図8】図1に示す交差導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図9】図2に示す実施形態の他の構成例を示す図である。
【図10】図2に示す交差導波路のさらに別の構成例を示す図である。
【図11】本発明の光導波路の実施形態を示す平面図である。
【図12】従来の交差導波路を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
【図13】図12に示すコア層を伝搬する光の伝搬経路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0187】
1 第1の光導波路
2 第2の光導波路
10 交差導波路
11、12 クラッド層
13 コア層
141 第1のコア部
141a 入射側端部
141b 出射側端部
142 第2のコア部
142a 入射側端部
142b 出射側端部
143 交差部
15 側面クラッド部
16 クラッド部
171a、171b、172a、172b 境界面
180a、180b テーパー面
180a、180a、180a 角部
191a、191b、192a、192b 混信防止クラッド
100 コア層形成用材料(ワニス)
110 層
115 ポリマー
120 添加剤
125 照射領域
130 活性放射線(活性エネルギー光線)
135 マスク
1351 開口(窓)
140 未照射領域
161、162 支持基板
20 光導波路
23 コア層
24 コア部
25 側面クラッド部
280a 拡径部分
280b 縮径部分
90 交差導波路
93 コア層
941 第1のコア部
942 第2のコア部
943 交差部
95 側面クラッド部
971、972 境界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコア部と、該第1のコア部を囲むように設けられたクラッド部とを備える第1の光導波路と、第2のコア部と、該第2のコア部を囲むように設けられたクラッド部とを備える第2の光導波路とが、前記第1のコア部と前記第2のコア部とが同一の平面上で交わるよう配置された交差導波路であって、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との交差点よりも前記第1の光導波路の光の入射側に位置する入射側部分から前記交差点に向けて、前記平面上で見たときの前記第1のコア部の幅が徐々に拡大するようなテーパー状をなす部分を有していることを特徴とする交差導波路。
【請求項2】
前記入射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に対するテーパー角度は、前記第1の光導波路中を伝搬する光の伝搬角度より小さい請求項1に記載の交差導波路。
【請求項3】
前記入射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に沿う長さは、前記第1のコア部の最狭部の幅の5倍以上である請求項1または2に記載の交差導波路。
【請求項4】
前記入射側部分において、前記テーパー状をなす部分は、該部分で前記第1の光導波路を伝搬する光を反射することにより、該光の伝搬モードを、より低次側に変更する機能を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の交差導波路。
【請求項5】
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との交差点から、該交差点よりも前記第1の光導波路の光の出射側に位置する出射側部分に向けて、前記平面上で見たときの前記第1のコア部の幅が徐々に縮小するようなテーパー状をなす部分を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の交差導波路。
【請求項6】
前記出射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に対するテーパー角度は、前記第1の光導波路の臨界角から、前記第1の光導波路中の光の伝搬角度を除した角度よりも小さい請求項5に記載の交差導波路。
【請求項7】
前記出射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に対するテーパー角度は、前記第1のコア部の幅の縮小率が0.5〜40%になるような角度になっている請求項5または6に記載の交差導波路。
【請求項8】
前記出射側部分において、前記テーパー状をなす部分の、前記第1のコア部の光軸に沿う長さは、前記第1のコア部の最狭部の幅の5倍以上である請求項5ないし7のいずれかに記載の交差導波路。
【請求項9】
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との交差点近傍の前記第2のコア部内に、前記第2のコア部を横切るように設けられ、前記第2のコア部より屈折率の低い帯状クラッド部を有する請求項1ないし8のいずれかに記載の交差導波路。
【請求項10】
前記第1の光導波路は、マルチモードに対応したものである請求項1ないし9のいずれかに記載の交差導波路。
【請求項11】
コア部と、該コア部を囲むように設けられたクラッド部とを備える光導波路であって、
前記コア部の途中または光の入射側端部近傍に設けられ、当該光導波路の光の入射側から出射側に向かって前記コア部の径が徐々に拡大するようなテーパー状をなす拡径部分を有していることを特徴とする光導波路。
【請求項12】
さらに、前記拡径部分より出射側の、前記コア部の途中または光の出射側端部近傍に設けられ、当該光導波路の光の入射側から出射側に向かって前記コア部の径が徐々に縮小するようなテーパー状をなす縮径部分を有している請求項11に記載の光導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−156869(P2010−156869A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335499(P2008−335499)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】