説明

交通情報伝達方法

【課題】受信装置において、実情に近い道路区間の交通情報を復元する。
【解決手段】送信装置は、道路区間参照データで特定される道路区間中の2つの基準点間で、当該道路区間を複数の小区間に分割し、計測された元情報に基づき、当該道路区間全体の交通情報の状態量の総量および前記小区間ごとの交通情報の状態量の配分比を算出し、前記道路区間参照データと、前記総量及び前記配分比を含む交通情報を前記受信装置へ送信する。受信装置は、前記道路区間参照データに基づき、前記送信装置において特定された前記道路区間に対応する自己のデジタル地図上の道路区間を特定し、前記総量及び前記小区間ごとに算出された前記配分比に基づいて、自己のデジタル地図上の前記道路区間上の前記各小区間に対応する位置ごとに、交通情報の状態量を算出し、交通情報を復元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渋滞状況や旅行時間などを表す交通情報を生成し、伝達する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カーナビゲーション装置などに道路交通情報提供サービスを実施しているVICS(道路交通情報通信システム)は、道路交通情報を収集・編集し、FM多重放送やビーコンを通じて、渋滞情報や、所要時間を表す旅行時間情報などの交通情報を伝送している。
【0003】
道路交通情報提供サービスにおいて、例えばセンター装置からカーナビゲーション装置に提供される交通情報は、プローブ車両から収集される収集データを元に作成される。
【0004】
一方、交通情報は、各道路区間の原単位である管理リンク(=交差点や、トンネルや行政区域等の属性が変更する地点、交通流の顕著な差が発生する地点などで区切られた、交通情報や自車の存在位置、経路計算時の最小単位等を管理するリンク)単位で、生成され、管理される。
【0005】
ここで、管理リンクは、交通情報の生成装置で使用した地図データに大きく依存しており、通常様々な地図データで共通的に参照できるような管理体系は構築されていない。従って、異なる地図データを持ったシステム(カーナビゲーション装置等)に交通情報を提供する場合、以下のような問題が生じていた。
【0006】
まず、管理リンクは、該当地図データまたはシステム内での整合性しか考慮していないため、番号体系や各道路区間の番号はまちまちであって、異なる地図またはシステム間で共通的に使用できる識別子とはならない。また交通情報の送信側と受信側各々の地図データでは、存在する管理リンクが異なる場合があり、管理リンク構成が異なる場合がある。例えば、細い街路道路等は、地図データによっては存在しない場合があり、当該街路道路が存在する地図データと、存在しない地図データの間では、管理リンクの構成が異なることとなる。また、対応する交差点であっても、一方の地図データでは二つの道路が交わる単純交差点として定義されていても、他方の地図データでは単純交差点が複合して形成される複合交差点として定義されている場合がある。
【0007】
上記のような場合、管理リンク構成が送信側と受信側各々の地図データが異なるため、地図データの違いを吸収する仕組みが必要となる。
【0008】
また、交通情報の送信側と受信側各々の地図データでは、対応する管理リンクのリンク長が異なる場合がある。例えば、幹線道路の交差点位置のような、所定道路区間の端点(始点または終点)が、送信側と受信側各々の地図データ間でずれている可能性がある。また、緯度及び経度が偶然同じであっても、道路形状を構成する管理リンクの密度(詳細度)が、送信側と受信側各々の地図データ間で異なる場合がある。
【0009】
上記のような場合、対応する管理リンクのリンク長が異なることとなるため、リンク長の差を補正する仕組みが必要となる。
【0010】
また、交通情報を計測する計測単位が、交通情報の送信側と受信側各々の地図データで異なる場合もある。
【0011】
上述したような、異なる地図データを持つシステム間で交通情報が送受信される際に生ずる問題を解決する提案が、特許文献1において開示されている。
【0012】
当該特許文献1においては、管理リンクをリンク長に依存しない形式のデータに変換することにより、上記した問題の解決を図っている。まず、送信側の装置は、地図データの管理リンク単位の旅行時間(管理リンクを車両が移動するのに要した時間)を管理リンク毎に求める。次に、送信側の装置は、管理リンク単位の旅行時間を、単位距離当り旅行時間(リンク長に依存しない混雑指標)に変換する。さらに、送信側の装置は、アンカーポイント(道路区間の始点と終点)間を等間隔に分割して標本化する。このような処理により、送信側装置の地図データのリンク構成の概念が排除され、リンク構成に依拠しない交通情報が生成される。
【0013】
上記した交通情報を受信した受信側の装置は、地図データの各管理リンクの旅行時間を復元することにより、受信装置の地図データ上に受信した交通情報を表示する。
【特許文献1】特開2004−005416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、特許文献1に開示の技術は、送受信の対象となる道路区間の長さ方向に沿って、当該道路区間を等間隔に分割する、いわゆる正規化表現を用いている。しかしながら、当該文献では、具体的な標本化方法、そして具体化された標本化方法から生じ得る問題が吟味されていない。
【0015】
本発明は、具体的に好ましい態様の標本化を用いた交通情報伝達方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の交通情報伝達方法は、送信装置から受信装置へ交通情報を伝達する交通情報伝達方法であって、前記送信装置は、道路区間参照データで特定される道路区間中の2つの基準点間で、当該道路区間を複数の小区間に分割し、計測された元情報に基づき、当該道路区間全体の交通情報の状態量の総量および前記小区間ごとの交通情報の状態量の配分比を算出し、前記道路区間参照データと、前記総量及び前記配分比を含む交通情報を前記受信装置へ送信し、前記受信装置は、前記道路区間参照データに基づき、前記送信装置において特定された前記道路区間に対応する自己のデジタル地図上の道路区間を特定し、前記総量及び前記小区間ごとに算出された前記配分比に基づいて、自己のデジタル地図上の前記道路区間上の前記各小区間に対応する位置ごとに、交通情報の状態量を算出し、交通情報を復元する、交通情報伝達方法である。
【0017】
本発明によれば、交通情報の状態量の総量と各小区間での状態量の配分比が受信装置に送信されるので、受信装置は、実情に近い道路区間の交通情報を復元することができる。
【0018】
上記構成において、前記送信装置は、等間隔に標本化点を設定することにより前記複数の小区間を設定してもよい。
【0019】
上記構成により、送信データのデータ量を減らすことが可能となる。
【0020】
また、上記構成において、前記交通情報の状態量は、前記道路区間における旅行時間であることが好ましい。
【0021】
上記構成においては、取り扱いの容易な旅行時間を使用することができる。
【0022】
また、前記受信装置は、前記自己のデジタル地図上で予め定義されている管理リンク単位に前記交通情報を復元するようにしてもよい。
【0023】
上記構成によれば、従来からの管理リンクを使用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、交通情報の状態量の総量と各小区間での状態量の配分比が受信装置に送信されるので、受信装置は、実情に近い道路区間の交通情報を復元することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明が適用される交通情報の伝達システムのブロック図を示す。交通情報の伝達システムは、交通情報を送信する(交通情報)送信装置10と、交通情報を受信する(交通情報)受信装置20を含む。例えば、交通情報送信装置は、交通情報の提供サービスを行うセンター装置であり、交通情報受信装置は車両に搭載されたカーナビゲーション装置である。
【0027】
送信装置10は、交通情報データベース(DB)11と、地図データベース(DB)12と、位置・交通情報分離部13と、位置情報生成部14と、交通情報生成部15とを備える。
【0028】
交通情報データベース11は、道路に配置された各種のセンサーや、プローブ車両などから、渋滞や事故など発生した事象に関する事象情報に基づき生成された元の交通情報が蓄積される。事象情報は、図示せぬ事象情報入力部に入力された後、交通情報データベース11に送られる。ここでの「元の交通情報」は、一般的には緯度・経度によって規定される地図上の特定のポイントであるノード(接続ノードともいう)間をネットワーク状に結んで定義されるリンクによって管理されたものであり、これらリンクの構成、位置、形状、長さは地図データベース12に依存したものである。
【0029】
地図データベース12は、第1のデジタル地図を表現する、ベクトル化された道路ネットワークデータを含むデジタル地図データX(第1の地図データ)である。
【0030】
位置・交通情報分離部13は、位置情報と交通情報を分離する。ここで、交通情報データベース11における元の交通情報から、リンクに関する情報が分離され、位置情報と交通情報が生成される。このリンクに関する情報から、後述するように対象道路区間を表すデータ(道路区間参照データ)の列である位置情報が生成される。従って、位置情報が分離された「交通情報」は、交通情報データベース11における元の交通情報とは異なり、リンクによって管理されたものではなく、地図データに依存しないものである。
【0031】
位置情報生成部14は道路区間を表すデータの列である位置情報を生成し、受信装置20に送信する。交通情報生成部15は位置情報が切り離された交通情報を生成し、受信装置20に送信する。
【0032】
受信装置20は、道路区間特定部21と、交通情報設定位置特定部22と、地図データベース(DB)23と、交通情報復元部24と、復元交通情報データベース(DB)25とを備える。
【0033】
道路区間特定部21は、送信装置10から送信された位置情報に基づき、送信対象の道路区間を特定する。交通情報設定位置特定部22は、送信装置10から送信された交通情報に基づき、交通情報の設定位置(交通情報に含まれる各種事象の位置)を特定する。地図データベース23は、第2のデジタル地図を表現する、ベクトル化された道路ネットワークデータを含むデジタル地図データY(第2の地図データ)である。
【0034】
交通情報復元部24は、道路区間特定部21によって特定された道路区間と、交通情報設定位置特定部22によって特定された交通情報の設定位置とに基づき、地図データベース23のデジタル地図データYに対応した交通情報を復元する。復元交通情報データベース25は、交通情報復元部24によって復元された交通情報を蓄積する。蓄積された交通情報は、必要に応じて表示情報として液晶表示装置等によって表示される。
【0035】
図2(a)は交通情報データベース11に蓄積された交通情報のデータ構造図を示し、図2(b)は復元交通情報データベース25に蓄積された交通情報のデータ構造図を示す。いずれに交通情報においても、所定のリンク(管理リンクIDなど)と、当該リンクの旅行時間(が関連付けられている。旅行時間は、事故、渋滞等の交通状況を示す交通情報の状態量の一種である。その他、交通情報の状態量としては、速度や、渋滞度などが含まれる。
【0036】
次に、交通情報の伝達システムにおける送信装置10と受信装置20の動作を、図3を用いて説明する。
【0037】
本発明の交通情報の伝達システムにおいては、上記したように、リンクによって管理されたものではなく、地図データに依存しない「交通情報」を生成し、伝達する。このような処理により、送信側と受信側各々の地図データの違いが吸収される。具体的には、交通情報生成装置(送信装置)側の管理リンクに依存しない形式のデータに変換される。
【0038】
すなわち、図3(a)に示すように、交通情報データベース11には、デジタル地図データXの道路区間上で、管理リンク単位の旅行時間(管理リンクを移動するのに要する時間)がリンク毎に求められた形式を有する元の交通情報(元情報)が、蓄積されている。図3(a)では、16s(秒)、52s、28s・・・というリンク毎の旅行時間が示されており、図2(a)のデータ構造に対応するものである。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、位置・交通情報分離部13は、元の交通情報における管理リンク単位の旅行時間を、単位距離あたり旅行時間や速度、混雑度(リンク長に依存しない混雑指標)に変換する。以降の説明では、単位距離あたり旅行時間を例にとって説明する。図3(b)の横線の高さが当該管理リンクでの単位距離あたりの旅行時間を示す。横線が高い位置にあるほど旅行時間が大きいことを示しており、図3(a)における、52s、48s、22sの各管理リンク単位の旅行時間に対応する管理リンクでは、単位距離あたりの旅行時間が大きく、渋滞の発生や、混雑の可能性を示している。
【0040】
次に、交通情報生成部15は、図3(c)に示すように、対象道路区間のアンカーポイント間を等間隔に分割して標本化する(等間隔にリサンプルする)。アンカーポイントには、一般的に大きな交差点等、比較的位置が特定しやすい地図上のポイントが選ばれ、本例では対象道路区間の始点と終点として機能している。
【0041】
道路区間が等間隔で分割される個所は「標本化点」と呼ばれ、当該標本化点はノードとは別に設定される。隣接した二つの標本化点間には小区間が定義され、隣接した標本化点の距離(小区間の長さ)は、通常50から150mに設定されるが特に限定されるものではない。本実施形態ではアンカーポイントは、標本化点または小区間を設定する位置的な基準である基準点として機能する。図3(c)に示す、10,47,8等の数字は、各標本化点における単位距離あたりの旅行時間(秒)を示す。
【0042】
このような操作を施すことにより、管理リンク構成に関する情報(各管理リンクのリンク長)が元の交通情報から排除(分離)される。そして、リンク構成に依拠しない、アンカーポイント間の等間隔の標本化点毎の単位距離旅行時間のみの交通情報が得られる。単位距離旅行時間は、等間隔に設定されているため、直行変換を用いた圧縮手法など、交通情報のデータの効率的な圧縮が適用可能となる。
【0043】
上記した交通情報と、位置情報生成部14によって生成された位置情報とを、図示せぬ送信部が、受信装置20に送信する。受信装置20は、位置情報と交通情報を図示せぬ受信部で受信する。
【0044】
そして、受信装置20の道路区間特定部21は、位置情報に基づき、送信対象の道路区間を特定する。さらに道路区間特定部21は、位置情報から特定したアンカーポイント間の道なり距離(いずれかのアンカーポイントからの距離)と標本化点の数から、デジタル地図データYにおける該当道路上の標本化点位置を算出する。
【0045】
交通情報設定位置特定部22は、交通情報に基づき、交通情報の設定位置(交通情報に含まれる各種事象の位置)を特定する。
【0046】
そして、図3(d)に示すように、交通情報復元部24は、各標本化点位置の単位距離当り旅行時間と、デジタル地図データYの管理リンク構成から、受信装置側の管理リンク単位の旅行時間を算出する。
【0047】
上述したように、上記図3の処理では、送信装置10は、元の交通情報における管理リンク単位の旅行時間を、単位距離あたり旅行時間(リンク長に依存しない混雑指標)に変換した後、受信装置20に位置情報と交通情報を送信している。
【0048】
上述の方式では、道路区間の交通状況を表す指標として、単位距離あたり旅行時間が、送信装置10から受信装置20に送信される。この指標は管理リンクのリンク長に依存しない。
【0049】
従って、送信装置10のデジタル地図データXと、受信装置20のデジタル地図データYの間で、対応する道路区間の長さ(アンカーポイント間の距離)が異なる場合、アンカーポイント間の旅行時間が、送信装置10側と受信装置20側で異なることとなる。
【0050】
例えば、送信装置10のデジタル地図データXにおける所定の道路区間の長さ(アンカーポイント間の距離)が100mであり、単位距離あたりの旅行時間が、道路区間全長に渡って、1s/mであったとする。この場合、アンカーポイント間の旅行時間は100sとなる。
【0051】
一方、受信装置20のデジタル地図データYにおける対応する道路区間の長さが120mであった場合(すなわちデジタル地図データXとデジタル地図データYは種類が異なる)、単位距離あたりの旅行時間が、道路区間全長に渡って、1s/mであったとする。この場合、アンカーポイント間の旅行時間は120sとなる。すなわち、アンカーポイント間の旅行時間が、送信装置10側と受信装置20側で異なることとなり、結果的に間違ったアンカーポイント間の旅行時間が、受信装置20に伝えられる事態が生じてしまう。すなわち、渋滞、事故等といった、交通情報の混在指標(状態量)が、送信装置10側と受信装置20側で異なる事態が生じることとなる。
【0052】
デジタル地図データXとデジタル地図データYの種類が異なるとは、両者の作成者の違いや、製品の違い、同じ製品でも更新前と更新後のものという違いにより生ずるものであり、このような違いは避け難いものである。
【0053】
そこで、さらに本発明では、アンカーポイント間の旅行時間と、各標本化点における配分比によって表現することとする。すなわち、上述の例では、送信装置10で得られたアンカーポイント間の旅行時間、100sという値を、そのまま受信装置20に送信する。また、各標本化点における配分比とは、全体の旅行時間100sを各標本化点毎に振り分ける際に、各標本化点における旅行時間がもつ全体の旅行時間に対する割合である。
【0054】
図4は、各標本化点における旅行時間の配分比を説明している。数字2,2,2,9,9,9,1,1,1・・・は、配分比を示し、横線の高さが、配分比に対応している。本例では数字を合計すると100となり、これらの数字は、100分率における、比を示す。例えば、アンカーポイント間の旅行時間が100sの場合、数字「2」の部分の標本化点には2sが旅行時間(単位区間旅行時間)として配分され、数字「4」の部分の標本化点には4sが旅行時間として配分される。
【0055】
上述した処理によると、道路上の各地点における速度や単位距離あたり旅行時間などの混雑状況を表す指標値は、多少の誤差が出る可能性がある。しかしながら、道路区間のアンカーポイント間では、これらの誤差がキャンセルされるようなデータ構造を実現することが可能となる。
【0056】
なお、図4の例のように、配分比の表現方法は、一般的に合計値が100%となるように設定される。しかしながらが、合計値が256でもよく、特にその値は限定されない。例えば、各標本化点の配分比の値を分子とし、道路区間の全標本化点の配分比の合計値を分母とすることにより、配分比を求めることができる。
【0057】
図5(a)は送信装置10の動作フロー図を示し、図5(b)は受信装置20の動作フロー図を示す。
【0058】
図5(a)に示すように、まず、送信装置10の位置・交通情報分離部13は、交通情報を提供する対象となる対象道路区間の管理リンクを選出する(ステップS101)。さらに位置・交通情報分離部13は、選出された道路区間内の管理リンクの列と、当該管理リンクの列に対応する交通情報とを抽出する(ステップS102)
【0059】
次に、位置情報生成部14は、ステップS102で抽出された管理リンクの列から、該当道路区間の位置情報を生成する(ステップS103)。一方、交通情報生成部15は、抽出した道路区間の交通情報の状態量の総量、すなわち対象道路区間全長の旅行時間(アンカーポイント間の旅行時間)を算出する(ステップS104)。対象道路区間全長の旅行時間は、図2(a)の各リンクごとの旅行時間(交通情報の状態量)を合計することにより算出される。
【0060】
さらに交通情報生成部15は、道路区間内の各設定位置、すなわち各標本化点における配分比を算出する(ステップS105)。各標本化点の配分比は、図4で示したように、図2(a)の各リンクごとの旅行時間と、対象道路区間全長の旅行時間の比から算出される。
【0061】
図5(b)に示すように、受信装置20の道路区間特定部21は、受信した位置情報から、デジタル地図Y上の対象道路区間と管理リンクの列を特定する(ステップS201)。一方、交通情報設定位置特定部22は、受信した交通情報から、対象道路区間内の交通情報設定位置、すなわち送信装置10のデジタル地図データXで規定された標本化点に対応する位置を算出する(ステップS202)。
【0062】
続いて、交通情報復元部24は、対象道路区間全長の旅行時間(各区間の交通情報の状態量の総量)と配分比から、各交通情報設定位置における旅行時間(交通情報の状態量)を算出する(ステップS203)。さらに、交通情報復元部24は、管理リンク単位の旅行時間を復元する(ステップS204)。以上のような手順を踏まえて図2(b)に示すような交通情報が復元され、復元交通情報データベース25に蓄積される。
【0063】
図6(a)は、位置情報生成部14により生成された位置情報のデータ構造図を示し、図6(b)は、交通情報生成部15により生成された交通情報のデータ構造図を示す。
【0064】
図6(a)のデータ構造図に示すように、対象道路区間の位置情報は、デジタル地図データXの緯度、経度によって位置が規定されたノードの集合体によって規定される。属性情報は、交差点の接続角度や道路種別など、道路を特定するための補助情報であり、受信装置側における道路の特定の精度を上げるための情報である。
【0065】
なお、位置情報の表現形式は、本例の緯度・経度を主情報とした方式に限るものではなく、既存のVICSリンク番号など、その他の方法を用いることも可能である。
【0066】
図6(b)のデータ構造図に示すように、対象道路区間の交通情報は、対象道路区間の始端、終端に対応するアンカーポイントの番号によって、対象道路区間が特定される。そして、図5(a)のステップS104、ステップS105で算出された総旅行時間、各標本化点の配分比が、対象道路区間毎に記述されている。図6(b)のデータ構造図では、複数の道路区間の交通情報が記述されているが、含められる道路区間の数は特に限定されない。
【0067】
上述した実施形態の説明では、対象道路区間のアンカーポイントという両端の端点間に、等距離間隔で複数の標本化点が設定され、各標本化点に対応する態様にて旅行時間という交通情報の状態量の配分比が算出された。しかしながら、本発明はそのような態様には限定されない。
【0068】
すなわち、本発明においては、送信装置が交通情報を送信する際、道路区間という所定区間の総旅行時間(交通情報の状態量の総量)と、当該所定区間の各位置において、総旅行時間のどれだけの割合が配分されるかを示す配分比を送信すればよい。この場合、受信装置は、元の情報から変化していない、正確な所定区間の総旅行時間を受け取ることができる。従って、実施形態の標本化点のように、配分比が付与される点、小区間はかならずしも等距離で設定される必要はない。
【0069】
すなわち、道路区間を異なる長さの複数の小区間に分けた場合であっても、各小区間の長さの比を送信装置が受信装置に送信することにより、受信装置は、長さの比から配分比を計算することができる。
【0070】
図7は、このような実施態様において、図6(a)のデータの代わりに、交通情報生成部15によって生成される交通情報のデータ構造を示す。この図に示すように、対象道路区間は複数の小区間に分割され、各小区間の長さと配分比が記述されている。この交通情報を受信した受信装置は、各小区間の長さと配分比から、小区間毎の旅行時間を算出することができ、交通情報を復元することができる。
【0071】
以上述べたように、本発明によれば、交通情報の状態量の総量と各小区間での状態量の配分比が受信装置に送信されるので、受信装置は、実情に近い道路区間の交通情報を復元することができる。
【0072】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、受信装置は、実情に近い道路区間の交通情報を復元することができ、高精度な交通情報の伝達を可能とする交通情報伝達システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明が適用される交通情報の伝達システムのブロック図
【図2】送信装置の元の交通情報および受信装置において復元される交通情報のデータ構造図
【図3】道路区間を等間隔に分割する正規化表現の概念を示す図
【図4】各標本化点の配分比の概念を示す図
【図5】送信装置および受信装置各々における処理手順を示すフロー図
【図6】送信装置から送信される位置情報および交通情報のデータ構造図
【図7】送信装置から送信される交通情報の他の例のデータ構造図
【符号の説明】
【0075】
10 送信装置
11 交通情報データベース
12 地図データベース
13 位置・交通情報分離部
14 位置情報生成部
15 交通情報生成部
20 受信装置
21 道路区間特定部
22 交通情報設定位置特定部
23 地図データベース
24 交通情報復元部
25 復元交通情報データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から受信装置へ交通情報を伝達する交通情報伝達方法であって、
前記送信装置は、
道路区間参照データで特定される道路区間中の2つの基準点間で、当該道路区間を複数の小区間に分割し、
計測された元情報に基づき、当該道路区間全体の交通情報の状態量の総量および前記小区間ごとの交通情報の状態量の配分比を算出し、
前記道路区間参照データと、前記総量及び前記配分比を含む交通情報を前記受信装置へ送信し、
前記受信装置は、
前記道路区間参照データに基づき、前記送信装置において特定された前記道路区間に対応する自己のデジタル地図上の道路区間を特定し、
前記総量及び前記小区間ごとに算出された前記配分比に基づいて、自己のデジタル地図上の前記道路区間上の前記各小区間に対応する位置ごとに、交通情報の状態量を算出し、交通情報を復元する、
交通情報伝達方法。
【請求項2】
請求項1記載の交通情報伝達方法であって、
前記送信装置は、等間隔に標本化点を設定することにより前記複数の小区間を設定する交通情報伝達方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の交通情報伝達方法であって、
前記交通情報の状態量は、前記道路区間における旅行時間である交通情報伝達方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の交通情報伝達方法であって、
前記受信装置は、前記自己のデジタル地図上で予め定義されている管理リンク単位に前記交通情報を復元する交通情報伝達方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−258845(P2009−258845A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104691(P2008−104691)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】