説明

交通情報管理装置、交通情報管理方法および交通情報管理プログラム

【課題】過度の通信費を発生させてしまう。
【解決手段】要求される交通情報の範囲を特定するための要求位置情報と、車両に搭載された記録媒体に保持されている交通情報の範囲を特定するための既存位置情報とに基づいて、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複しているか否かを判定し、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していないと判定された場合には所定の通信部を制御して要求された前記範囲の前記交通情報の送信を実行し、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定された場合には前記所定の通信部による前記交通情報の送信を実行しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報管理装置、交通情報管理方法および交通情報管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置の利用者によって交通情報の取得指示が行われたとき、または、予め設定されている所定のタイミングとなった場合に、経路誘導処理の対象として設定されている走行経路に沿った所定範囲や自車位置周辺の所定範囲の交通情報を送信するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ナビゲーション装置に対して各種の情報を配信する技術として特許文献2に開示された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−286469号公報
【特許文献2】特開2002−277268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、渋滞情報を任意に受信可能であるため、例えば、ナビゲーション装置を利用するユーザが要求を行うたびにサーバ装置から渋滞情報を送信してしまう。従って、ナビゲーション装置側に蓄積された情報とサーバ装置から送信される情報とが同一である場合であっても通信を行ってしまい、過度に通信費を発生させてしまう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、無駄な通信の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、有効期間が決められた交通情報を車両にて取得する構成において、車両にて利用する交通情報の範囲が位置情報に基づいて特定される構成とする。この構成において、交通情報の送信が要求される場合、送信要求対象となる交通情報(以下、要求される交通情報と呼ぶ)についての位置情報を要求位置情報とする。また、記録媒体に保持されている有効期間が経過していない交通情報(以下、保持されている交通情報と呼ぶ)についての位置情報を既存位置情報とする。
【0006】
そして、本発明においては、要求位置情報と既存位置情報とを取得し、要求位置情報と既存位置情報とに基づいて、要求される交通情報と保持されている交通情報とが重複しているか否かを判定する。さらに、要求される交通情報と保持されている交通情報とが重複していないと判定された場合には所定の通信部を制御して要求される範囲内の交通情報の送信を実行する。要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定された場合には所定の通信部による交通情報の送信を実行しない。
【0007】
従って、交通情報の送信要求が行われた場合であっても、既存の交通情報を流用できる状態であれば送信要求に応じた交通情報の送信は行わず、既存の交通情報を流用できない状態であるときに送信要求に応じた交通情報の送信を行うことになる。この結果、無駄な通信の発生を防止することができる。
【0008】
ここで、送信要求取得手段は、交通情報の送信要求とともに要求位置情報を取得することができればよい。交通情報は、交通に関する情報であれば良く、渋滞情報などの道路上の車両の状態を示す情報であっても良いし、規制情報や気象情報など道路上の車両に影響を与える情報であっても良い。また、当該交通情報には有効期間が決められていればよく、交通情報内に当該有効期間を含む情報が含まれていてもよいし、交通情報を利用可能な期間として予め既定の有効期間が決められていてもよい。交通情報の有効期間が経過した場合、その交通情報は参照されない。
【0009】
送信要求は、交通情報の送信開始指示がなされたことを認識させるための情報であればよい。要求位置情報は、要求される交通情報の範囲を特定するための位置情報であれば良く、当該位置情報が示す位置に基づいて予め決められた規則に基づいて交通情報の要求範囲を特定することができればよい。交通情報は、道路に対応づけられた渋滞情報や地域の気象情報など位置に対応づけられた情報によって構成されるため、交通情報の範囲は当該位置によって定義される。
【0010】
既存位置情報取得手段は、車両に搭載された記録媒体に有効期間が経過していない交通情報が保持されている場合に、当該保持されている交通情報の範囲を特定するための位置情報である既存位置情報を取得することができればよい。すなわち、記録媒体に保持されている交通情報も位置情報に基づいて交通情報の範囲が決められていればよく、交通情報を要求する際に送信要求とともに取得される要求位置情報と同等の情報によって既存位置情報を構成してもよいし、他の位置情報によって既存位置情報を構成してもよい。
いればよい。
【0011】
既存情報判定手段は、要求位置情報と既存位置情報とに基づいて、要求される交通情報と保持されている交通情報とが重複しているか否かを判定することができればよい。すなわち、要求位置情報は要求される交通情報の範囲を示し、既存位置情報は保持されている交通情報の範囲を示すため、要求位置情報と既存位置情報とを比較すれば、両情報が重複しているか否かを判定することができる。ここでは、要求位置情報と既存位置情報とが示す交通情報の範囲を具体的に特定して重複しているか否かの判定を行っても良いし、位置情報が示す位置を比較することによって間接的に重複しているか否かの判定を行っても良い。
【0012】
交通情報送信制御手段は、要求される交通情報と保持されている交通情報とが重複しているか否かの判定に基づいて要求される範囲内の交通情報の送信を実行し、または、実行しないように所定の通信部を制御することができればよい。なお、本発明にかかる交通情報管理装置は、車両に備えられていても良いし、交通情報の管理センターに備えられていても良い。交通情報管理装置が車両に備えられている場合、交通情報送信制御手段が制御する所定の通信部も車両に備えられており、交通情報送信制御手段は当該通信部を制御して交通情報の管理センターとの通信を実現し、交通情報の送信に関する一連の処理を実行する。交通情報管理装置が交通情報の管理センターに備えられている場合、交通情報送信制御手段が制御する所定の通信部も交通情報の管理センターに備えられており、交通情報送信制御手段は当該通信部を制御して車両との通信を実現し、交通情報の送信に関する一連の処理を実行する。
【0013】
さらに、交通情報の送信要求がなされたときに車両に搭載された表示部に表示されていた地図上での第1基準位置を要求位置情報とし、保持されている交通情報に、自動的に送信され、且つ、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報が含まれる場合、車両の位置を既存位置情報として取得する構成を採用しても良い。また、この構成においては、第1基準位置と車両の位置との距離が第1閾値以下である場合に、要求される交通情報と保持されている交通情報とが重複していると判定する。
【0014】
すなわち、送信要求対象となる交通情報については、第1基準位置を含む所定範囲が交通情報の範囲となるように予め定義される。さらに、交通情報が自動的に送信されるシステムにおいて、当該自動的に送信される交通情報については車両の位置を含む所定範囲が交通情報の範囲となるように予め定義される。この構成において交通情報の範囲の広さや形状は第1基準位置や車両の位置に対応しており、両範囲が重複しているか否かを第1基準位置と車両の位置との距離に基づいて評価することが可能である。そこで、第1基準位置と車両の位置との距離についての基準となる第1閾値を予め設定し、第1基準位置と車両の位置との距離が第1閾値以下である場合に、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定する。
【0015】
なお、第1閾値は、第1基準位置から特定される交通情報の範囲と車両の位置から特定される交通情報の範囲とが重複するか否かを判定するための指標となればよい。例えば、交通情報の範囲が第1基準位置や車両の位置によって変動し得る(例えば、車両が属する地域によって送信される交通情報の範囲が異なるなど)構成において、要求される交通情報の範囲と保持されている交通情報の範囲とが一定以上の確率で重複するか否かを判定するための指標として第1閾値を定義しても良い。より具体的には、車両の位置に対応して取得された交通情報の範囲の外側に一定以上の確率で第1基準位置が存在することを判定するための指標として第1閾値を定義しても良い。この構成によれば、既存の交通情報と要求される交通情報とが重複するか否かを極めて簡易な構成によって判定可能であり、判定結果が一定以上の確率で正しくなるように構成することが可能である。
【0016】
さらに、各種の交通情報に対して本発明を適用することが可能であり、例えば、1回の送信要求に応じて送信される情報の範囲が地域単位で決められる広域交通情報と、1回の送信要求に応じて送信される情報の範囲が当該地域よりも狭い所定領域単位で決められる狭域交通情報とを扱う構成に本発明を適用しても良い。この構成において、広域交通情報は比較的広い地域単位での交通情報であるため、定常的に利用される可能性が高い情報であることが好ましく、自動的に送信され、かつ車両の位置に基づいて範囲が特定される交通情報であることが好ましい。
【0017】
一方、狭域交通情報は比較的狭い所定領域単位での交通情報であるため、ユーザが要求した場合に利用される情報であることが好ましい。また、一時的に表示された地図に対応した範囲の交通情報は一時的に利用される可能性が高いため、第1基準位置に基づいて狭域交通情報を特定する構成とすることが好ましい。以上のように、車両の位置に基づいて広域交通情報の範囲が特定され、第1基準位置に基づいて狭域交通情報の範囲が特定される構成において、車両の位置と第1基準位置との距離が第1閾値以下であるか否かを判定すれば、要求された狭域交通情報が既存の広域交通情報と重複するか否かを判定することが可能である。
【0018】
さらに、保持されている交通情報に、前回の送信要求に応じて送信された交通情報が含まれる場合、前回の送信要求がなされたときに車両に搭載された表示部に表示されていた地図上での第2基準位置を既存位置情報とし、交通情報の重複を判定する際に当該第2基準位置も利用する構成としても良い。ここで、前回の送信要求は、送信要求取得手段によって、ある時点にて送信要求を取得した場合に、当該ある時点よりも前の時点で行われた送信要求である。従って、当該ある時点での送信要求に応じて交通情報が送信されていれば、記録媒体において前回の送信要求に応じて送信された交通情報が保持されていることになる。この構成においては、車両の位置と第1基準位置との距離が第1閾値よりも大きく、第1基準位置と第2基準位置との距離が第2閾値以下である場合に、要求される交通情報と保持されている交通情報とが重複していると判定する。この構成においては、自動的に送信され、且つ、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報と要求される交通情報とが重複していない場合に、さらに、表示部に表示された地図の第2基準位置に基づいて要求範囲が特定された既存の交通情報が、要求される交通情報の範囲と重複するか否かを判定することとなる。
【0019】
なお、第2閾値は、第1基準位置から特定される交通情報の範囲と第2基準位置から特定される交通情報の範囲とが重複するか否かを判定するための指標となればよい。例えば、第2基準位置から特定される範囲の外側に一定以上の確率で第1基準位置が存在するか否かを判定するための指標として第2閾値を定義しても良い。この構成によれば、既存の交通情報と要求される交通情報とが重複するか否かを極めて簡易な構成によって判定可能であり、判定結果が一定以上の確率で正しくなるように構成することが可能である。
【0020】
なお、既存位置情報として車両の位置が取得されていない場合に、第1基準位置と第2基準位置との距離が第2閾値以下であるか否かを判定する構成とすれば、車両の位置に基づいて範囲が特定される交通情報が存在しないことを極めて簡易な方法によって判定した後に第2閾値に基づく判定を行うことが可能である。また、上述の第1基準位置や第2基準位置は、車両に搭載された表示部に表示された地図に対応した位置であればよく、表示部の画面内に予め設定された座標に対応した位置であればよい。
【0021】
なお、本発明のように、要求される交通情報と保持されている交通情報とが重複していない場合に交通情報を送信させる手法は、この処理を行う方法やプログラムとしても適用可能である。また、以上のような交通情報管理装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置として実現される場合もある。また、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあれば、車両に搭載されない各部と連携して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、交通情報管理装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】交通情報管理装置を示すブロック図である。
【図2】送信要求処理を示すフローチャートである。
【図3】交通情報管理処理を示すフローチャートである。
【図4】(4A)、(4B)は地図を模式的に示す図である。
【図5】(5A)、(5B)は地図を模式的に示す図である。
【図6】交通情報管理処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)交通情報管理システムの構成:
(1−1)ナビゲーション装置の構成:
(1−2)送信要求処理:
(1−3)交通情報管理装置の構成:
(1−4)交通情報管理処理:
(2)他の実施形態:
【0024】
(1)交通情報管理システムの構成:
(1−1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、車両Cに備えられたナビゲーション装置100と交通情報の管理センターに設置された交通情報管理装置10とを含むシステムの構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置100は道路を走行する複数の車両Cに搭載されており、当該ナビゲーション装置100はCPU,RAM,ROM等を備える制御部200と記録媒体300とを備えており、当該記録媒体300やROMに記憶されたプログラムを制御部200で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム210を実行可能であり、制御部200は当該ナビゲーションプログラム210によって記録媒体300に記録された地図情報300aに基づく経路探索を行うことができる。また、制御部200は、各地の交通情報を取得して案内することができる。
【0025】
なお、地図情報300aは記録媒体300に記録されており、当該地図情報300aには車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、走行予定経路の目的地となり得る施設を示す施設データ等が含まれている。従って、制御部200は、地図情報300aが示すノードデータやリンクデータに基づいてリンクに相当する道路区間を特定し、各道路区間についての地図表示を行い、また、各道路区間上での車両の位置を特定することができる。交通情報300bは記録媒体300に記録されている。本実施形態において、当該交通情報300bはノードデータとリンクデータとによって特定される道路区間毎の渋滞を示す渋滞情報(例えば、渋滞度等)である。従って、交通情報300bに基づいて各道路区間の渋滞を案内することができる。
【0026】
この処理を行うため、車両Cは、交通情報管理装置10と通信するための回路にて構成される通信部220を備えている。制御部200はナビゲーションプログラム210の処理により交通情報管理装置10と通信を行うことができ、通信部220を介して交通情報の送信要求と交通情報の受信が行われる。なお、本実施形態において通信部220は、無料の通信方式(例えば、FM多重放送による情報の送信など)と有料の通信方式(例えば、携帯電話による通信など)との2種類の通信方式に対応している。
【0027】
さらに、車両Cは、GPS受信部410と車速センサ420とユーザI/F部430とを備えており、GPS受信部410は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部200は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ420は、車両Cが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両Cの速度を取得する。車速センサ420は、GPS受信部410の出力信号から特定される車両Cの現在位置を補正するなどのために利用される。また、車両Cの現在位置は、当該車両Cの走行軌跡に基づいて適宜補正される。なお、車両の動作を示す情報を取得するための構成は、ほかにも種々の構成を採用可能であり、車両Cの現在位置をジャイロセンサ等の出力信号に基づいて補正する構成やセンサやカメラによって特定する構成、GPSからの信号や地図上での車両の軌跡,車車間通信,路車間通信等によって車両Cの動作情報を取得する構成等を採用可能である。
【0028】
ユーザI/F部430は、ユーザが指示を入力し、またはユーザに各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しない表示部やボタン、スピーカー等を備えている。ナビゲーションプログラム210は、ナビゲーション処理部210a(地図表示部210bを含む)と送信要求部210cとを備えている。制御部200は、当該ナビゲーション処理部210aの処理により、ユーザI/F部430を介して目的地の入力を受け付けて走行予定経路を取得する。また、制御部200は、ナビゲーション処理部210aの処理により、GPS受信部410および車速センサ420の出力信号および地図情報300aに基づいて車両Cの現在位置を特定し、車両Cが走行予定経路に沿って走行できるようにユーザI/F部430を介して案内を行う。
【0029】
この過程において、制御部200は、ユーザI/F部430の表示部に地図を表示するとともに車両の位置や走行予定経路を当該地図上に表示させる。ユーザI/F部430は、表示部に表示された地図のスクロール指示ボタンを備えている。ユーザはスクロール指示ボタンによって表示部に表示されている地図の表示範囲を切り替えるように制御部200に対して指示することができ、制御部200は、地図表示部210bの処理により、当該指示に応じて表示部に表示される地図の範囲を切り替える。
【0030】
図4Aは、地図を模式的に示す図である。同図4Aは、実線で道路を示しており、一点鎖線で表示部に表示される地図の表示範囲Rdを示している。制御部200が、スクロール指示ボタンの指示に応じて表示部に表示される地図の表示範囲を切り替えると、例えば、図4Aにおいて白い矢印で示すように表示範囲Rdで表示対象とする位置が変更され、地図表示が切り替わる。むろん、表示部において地図の縮尺を変更することは可能であり、縮尺の変更に応じて表示範囲Rdの大きさが変動する。
【0031】
さらに、ユーザI/F部430は交通情報の送信要求を行うための送信要求ボタンを備えている。ユーザは送信要求ボタンによって交通情報の送信要求を出力するように制御部200に指示することができる。制御部200は、送信要求部210cの処理により、当該指示に応じて新たに交通情報を送信させるための処理を行う。すなわち、制御部200は、通信部220を介して交通情報の送信要求ととともに要求される交通情報の範囲を特定するための位置情報である要求位置情報を出力する。当該送信要求は交通情報管理装置10に受信され、当該交通情報管理装置10における後述する判定に応じて交通情報が適宜返信される。なお、本実施形態において交通情報300bは道路区間毎に定義されるため、交通情報300bの範囲は渋滞情報が特定された道路区間が存在する範囲に対応する。また、送信要求ボタンによる指示に応じて出力される送信要求は、通信部220における有料の通信方式によって出力される。
【0032】
送信要求ボタンに応じた送信要求とともに出力される要求位置情報は、上述の表示部に表示された地図に依存する。すなわち、表示部には予め基準位置を特定するための座標(例えば、表示画面の中心座標など)が設定されており、送信要求ボタンによる交通情報の送信要求がなされたときに表示部に表示されていた地図において、上述の座標に相当する地図上の位置(緯度および経度)が要求位置情報で示される位置となる。なお、要求位置情報が示す位置は、送信要求ボタンによって要求される交通情報の範囲に対応している。
【0033】
例えば、要求位置情報が示す位置を中心とした正方形であるとともに、地図の表示範囲を含む正方形が交通情報の要求範囲であるとみなし、1回の送信要求に応じて当該正方形に含まれる道路区間の交通情報が要求されたとみなす構成とすればよい。ここでは、要求位置情報が示す位置を第1基準位置P1と呼ぶ。なお、図4Aにおいては、白い矢印に相当する表示の変更を行った後の表示範囲Rdに対応する第1基準位置P1を黒丸、第1基準位置P1によって特定される交通情報の範囲R1を二点鎖線で示している。
【0034】
一方、本実施形態において制御部200は、送信要求ボタンによる操作に依存せずに予め決められたタイミングで自動的に交通情報の受信処理も行っている。すなわち、図示しない交通情報のセンターから交通情報が自動的に送信されており、制御部200は、送信要求部210cの処理により、予め決められたタイミングで定期的に無料の通信方式による通信を実行して当該自動的に送信された交通情報を取得する。当該無料の通信方式による通信において、交通情報の範囲を特定するための位置情報は車両の位置を示す情報である。すなわち、制御部200は、GPS受信部410および車速センサ420の出力信号に基づいて交通情報を取得したときの車両の位置を特定し、当該車両の位置が含まれる地域を交通情報の範囲とする。
【0035】
なお、本実施形態において、有料の通信方式にて取得する交通情報の範囲は無料の通信方式にて取得する交通情報の範囲よりも狭い。ここでは、有料の通信方式にて取得する交通情報を狭域交通情報と呼び、無料の通信方式にて取得する交通情報を広域交通情報と呼ぶ。すなわち、広域交通情報は無料の通信方式によって自動で取得され、狭域交通情報は有料の通信方式によってユーザの指示に応じて取得される。なお、図4に示す例においては狭域交通情報の範囲を範囲R1で示し、広域交通情報の範囲を破線で囲まれた範囲で示しており、前者の方が後者よりも狭くなっている。広域交通情報は比較的広い地域単位での交通情報であるため、本実施形態においては、車両の位置の周辺において定常的に利用される可能性が高い情報が広域交通情報とされる。一方、ユーザが要求する場合には過度に広い範囲の情報を必要としないことが多く、本実施形態においては比較的狭い所定領域単位での交通情報である狭域交通情報をユーザの要求に応じて取得する構成となっている。
【0036】
制御部200が交通情報を取得すると、取得された交通情報は記録媒体300に記録される(交通情報300b)。なお、交通情報300bが示す渋滞度は時間変化するため、交通情報300bには情報の信頼度が維持できる期間として予め有効期間が対応づけられている。本実施形態において、制御部200は、記録媒体300に記録された交通情報300bについて有効期間が経過したか否かを判定しており、有効期間が経過した交通情報300bは記録媒体300から削除する。従って、本実施形態において記録媒体300に交通情報300bが保持されていれば、その交通情報300bは有効期間が経過していない交通情報300bとなる。
【0037】
交通情報300bは、有料の通信方式によって取得される場合と無料の通信方式によって取得される場合とがあるため、記録媒体300にはいずれかの通信方式によって取得された交通情報300bが保持されている状態となり得る。なお、記録媒体300に保持された交通情報300bにおいては、交通情報の範囲を特定するための位置情報である既存位置情報が対応づけられて記録される。
【0038】
例えば、自動的に送信された交通情報300bが取得された場合、当該交通情報300bには当該車両の位置を示す情報が対応づけられて保持される(図1に示す車両位置情報300c)。また、第1基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが取得された場合、第1基準位置が示す位置情報を第2基準位置とし、当該第2基準位置を示す第2基準位置情報が、取得された交通情報300bに対応づけられて保持される。尚、本実施形態においては、送信要求の際の要求位置情報を第1基準位置として定義したため、記録媒体300に保持された交通情報300bに対応づけられる位置情報を第2基準位置と呼んで区別する。
【0039】
なお、本実施形態においては、送信要求ボタンによる操作に応じて送信される交通情報300bが新たに取得されると、制御部200は、それ以前に送信要求ボタンによる操作に応じて送信されて記録媒体300に保持されていた交通情報を破棄する。従って、本実施形態において、送信要求ボタンによる操作に応じて送信される交通情報が記録媒体300に保持されていれば、当該保持された交通情報は前回の送信要求に応じて取得された交通情報である。
【0040】
以上の構成において、通信環境や送信要求を行うタイミングによっては、交通情報300bが記録媒体300に保持されている場合もあるし、保持されていない場合もある。例えば、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが保持されていないのであれば車両位置情報300cは記録媒体300に記録されていない。また、地図上の基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが保持されていないのであれば第2基準位置情報300dは記録媒体300に記録されていない。そこで、本実施形態において制御部200は、要求される交通情報と保持している交通情報とが重複するか否かを交通情報管理装置10に判断させるための情報を送信する。すなわち、制御部200は、交通情報の送信要求とともに要求される交通情報の範囲を示す第1基準位置を示す情報を送信する。さらに、記録媒体300に交通情報300bが保持されていれば、保持された交通情報300bに対応する車両位置情報300cと第2基準位置情報300dとのいずれかまたは双方を送信する。
【0041】
(1−2)送信要求処理:
図2は、当該送信要求を行う際の処理を示すフローチャートである。ナビゲーションプログラム210が実行されている過程において、制御部200は図2に示す送信要求処理を所定期間毎(例えば、100ms毎)に繰り返し実行している。当該送信要求処理において、制御部200は、送信要求ボタンによる指示がなされたか否かを判別しており(ステップS100)、指示がなされたと判別されなければ送信要求処理を終了する。
【0042】
ステップS100において、送信要求ボタンによる指示がなされたと判別されたとき、制御部200は、地図表示部210bの処理により、表示部の中心座標に表示された地図上の位置を上述の第1基準位置として取得する(ステップS105)。すなわち、制御部200は、表示部において表示中の地図の表示範囲Rdを特定し、表示範囲Rdの中心の座標に表示されていた地図上での位置(緯度および経度)を第1基準位置とする。そして、制御部200は、当該第1基準位置を送信対象として設定する(ステップS110)。
【0043】
次に、制御部200は、送信要求部210cの処理により、記録媒体300を参照し、有効期間が経過していない交通情報300bが保持されているか否かを判別する(ステップS115)。ステップS115において、有効期間が経過していない交通情報300bが保持されていると判別されないとき、制御部200はステップS120〜S135をスキップしてステップS140を実行する。ステップS140において、制御部200は、送信要求とともに、送信対象に設定された情報を交通情報管理装置10に対して送信する。従って、ステップS120〜S135をスキップした後にステップS140が実行された場合、送信要求とともに第1基準位置を示す情報が送信される。すなわち、この場合、重複しているか否かを判定する対象となる交通情報300bが保持されていないため、重複しているか否かを判定させるための情報は送信されず、要求範囲を示す第1基準位置が送信される。
【0044】
一方、ステップS115において、有効期間が経過していない交通情報300bが保持されていると判別されたとき、制御部200は、送信要求部210cの処理により、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが存在するか否かを判別する(ステップS120)。すなわち、制御部200は、車両位置情報300cが対応づけられた交通情報300bが記録媒体300に保持されているか否かを判別する。
【0045】
ステップS120において、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが存在すると判別された場合、制御部200は、記録媒体300を参照して、車両の位置を示す情報(車両位置情報300c)を送信対象として設定する(ステップS125)。ステップS120において、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが存在すると判別されない場合、当該ステップS125はスキップされる。
【0046】
次に、制御部200は、送信要求部210cの処理により、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが存在するか否かを判別する(ステップS130)。すなわち、制御部200は、第2基準位置情報300dが対応づけられた交通情報300bが記録媒体300に保持されているか否かを判別する。
【0047】
ステップS130において、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが存在すると判別された場合、制御部200は、記録媒体300を参照して、第2基準位置を示す情報(第2基準位置情報300d)を送信対象として設定する(ステップS135)。ステップS130において、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが存在すると判別されない場合、当該ステップS135はスキップされる。
【0048】
ステップS130において第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが存在すると判別されない場合、または、ステップS135を実行した後、制御部200はステップS140を実行する。この場合においては、車両の位置または第2基準位置のいずれかまたは双方が送信対象として設定されているため、送信要求とともに車両の位置または第2基準位置のいずれかまたは双方が送信される。すなわち、この場合、重複しているか否かを判定する対象となる交通情報300bを特定するための情報として車両の位置または第2基準位置のいずれかまたは双方を示す情報が送信される。
【0049】
(1−3)交通情報管理装置の構成:
交通情報管理装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、制御部20は当該記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行することができる。本実施形態において制御部20は、このプログラムの一つとして交通情報管理プログラム21を実行可能であり、当該交通情報管理プログラム21によって制御部20は送信要求に対して交通情報を送信すべきか否かを判定し、必要に応じて交通情報を送信する。
【0050】
交通情報管理プログラム21は、送信要求取得部21aと既存位置情報取得部21bと既存情報判定部21cと交通情報送信制御部21dとを備えている。また、交通情報管理装置10は、車両Cと通信するための回路にて構成される通信部22を備えている。送信要求取得部21aは、交通情報の送信要求とともに、要求される交通情報の範囲を特定するための要求位置情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、送信要求取得部21aの処理により、通信部22を介して送信要求を受信したか否かを判別し、送信要求を受信したときには当該送信要求とともに送信される要求位置情報である第1基準位置を取得する。
【0051】
既存位置情報取得部21bは、記録媒体300に有効期間が経過していない交通情報300bが保持されている場合に、当該保持されている交通情報300bの範囲を特定するための既存位置情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、既存位置情報取得部21bの処理により、車両Cの記録媒体300に保持されている交通情報300bの範囲を特定するための既存位置情報である車両の位置と第2基準位置とのいずれかまたは双方を取得する。
【0052】
既存情報判定部21cは、要求位置情報と既存位置情報とに基づいて、上述の送信要求ボタンの指示によって要求される交通情報と、記録媒体300に保持されている交通情報300bとが重複しているか否かを判定する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、車両の位置と第2基準位置の存否および第1基準位置との関係に基づいて重複が生じているか否かを判定する。当該判定の詳細は後述する。
【0053】
交通情報送信制御部21dは、交通情報の送信を実行する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、交通情報管理装置10においては、複数の車両Cから取得したプローブ情報を解析するなどして各道路区間に対応する交通情報を作成し、時間の経過に伴う交通情報の変化に対応して当該交通情報を逐次更新している。当該交通情報は記録媒体30に保持されており(交通情報30a)、上述の判定において重複していないと判定された場合、制御部20は要求される交通情報の範囲を特定し、当該範囲の交通情報を交通情報30aから抽出する。そして、制御部20は、通信部22を制御して当該抽出した交通情報を送信する。一方、重複していると判定された場合、制御部20は交通情報の送信を実行しない。
【0054】
以上の処理によれば、送信要求がなされた交通情報の範囲と、車両Cの記録媒体300に保持された有効期間が経過していない交通情報300bとが重複していない場合に交通情報の送信が行われる。一方、重複している場合には交通情報の送信が行われない。従って、交通情報の送信要求が行われた場合であっても、既存の交通情報を流用できる状態であれば送信要求に応じた交通情報の送信は行わず、既存の交通情報を流用できない状態であるときに送信要求に応じた交通情報の送信を行うことになる。この結果、交通情報の送信が必要なときに通信が実行され、交通情報の送信が必要ではないときには通信は実行されず、無駄な通信の発生を防止することができる。
【0055】
(1−4)交通情報管理処理:
次に上述の構成において交通情報管理装置10が実行する交通情報管理処理を詳細に説明する。図3は、交通情報管理装置10が実行する交通情報管理処理を示すフローチャートである。制御部20は図3に示す交通情報管理処理を所定期間毎(例えば、100ms毎)に繰り返し実行している。当該送交通情報管理処理において、制御部20は、通信部22によって送信要求を受信したか否かを判別しており(ステップS200)、送信要求を受信したと判別されなければ交通情報管理処理を終了する。
【0056】
ステップS200において、送信要求を受信したと判別された場合、制御部20は、送信要求とともに既存位置情報として車両の位置を示す情報(車両位置情報300c)を受信したか否かを判別する(ステップS205)。ステップS205において、車両の位置を示す情報を受信したと判別された場合、記録媒体300において車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが保持されていることになる。
【0057】
そこで、制御部20は、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bと要求される交通情報とが重複するか否かを判別するため、ステップS210を実行する。すなわち、制御部20は、ステップS210において、車両の位置と第1基準位置との距離が所定の第1閾値D1以下であるか否かを判別する。また、ステップS210において、車両の位置と第1基準位置との距離が所定の第1閾値D1以下であると判別された場合、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bと要求される交通情報とは重複しているとみなす。この場合、制御部20は、ステップS210の後に交通情報を送信することなく図3に示す処理を終了する。
【0058】
本実施形態において、第1閾値D1は、第1基準位置から特定される交通情報の範囲と車両の位置から特定される交通情報の範囲とが重複するか否かを判定するための指標である。本実施形態においては、第1基準位置から特定される交通情報の範囲と記録媒体300に保持されている交通情報300bの範囲とが一定以上の確率で重複するか否かを判定するための指標として第1閾値D1が定義されている。車両の位置に基づいて特定される交通情報の範囲は地域ごとに決められており、その広さの規模は各地域でほぼ共通(例えば、数10〜数100キロ四方の地域)であって、車両の位置が属する地域が交通情報の範囲となる。また、第1基準位置に基づいて特定される交通情報の範囲は第1基準位置を中心とした正方形内の範囲として予め決められている。
【0059】
従って、車両の位置と第1基準位置との距離が小さいほど、要求される交通情報の範囲と記録媒体300に保持されている交通情報300bの範囲とが重複する確率が高くなる。図4Bは、図4Aの一部を拡大して示す図である。図4Bにおいては、車両の位置Pc、2種類の第1基準位置P11,P12および各第1基準位置P11,P12のそれぞれによって特定される交通情報の範囲R11,R12を示している。同図においては、車両の位置Pcと第1基準位置P11との距離L11が第1閾値D1以下である場合の例を示している。この場合、図4Bに示すように車両の位置が属する破線で囲まれた地域と交通情報の範囲R11とが重複する可能性が高い。一方、同図においては、車両の位置Pcと第1基準位置P12との距離L12が第1閾値D1より大きい場合の例を示している。この場合、図4Bに示すように車両の位置が属する破線で囲まれた地域と交通情報の範囲R12とが重複しない可能性が高い。
【0060】
そこで、本実施形態においては、車両の位置が属する地域の外側に一定以上の確率で第1基準位置が存在することを判定するための指標として第1閾値D1を定義し、ステップS210において車両の位置と第1基準位置との距離が所定の第1閾値D1以下であるか否かを判別することとしている。この構成によれば、既存の交通情報300bと要求される交通情報とが重複するか否かを極めて簡易な構成によって判定可能であり、判定結果が一定以上の確率で正しくなるように構成することが可能である。
【0061】
一方、ステップS210において、車両の位置と第1基準位置との距離が所定の第1閾値D1以下であると判別されない場合、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bと要求される交通情報とは重複していないとみなす。この場合、さらに、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bと要求される交通情報とが重複しているか否かを判別するため、ステップS215以降の処理を行う。なお、ステップS205にて車両の位置を受信したと判別されない場合は、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bと要求される交通情報とは重複していないため、この場合もステップS215以降の処理を行う。
【0062】
ステップS215において、制御部20は、第2基準位置を示す情報(第2基準位置情報300d)を受信したか否かを判別する。ステップS215において、第2基準位置を示す情報を受信したと判別されない場合、記録媒体300において第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bは保持されていない。従って、送信要求がなされた交通情報と重複する交通情報300bが記録媒体300に保持されていないとみなし、制御部20は要求された範囲の交通情報を特定して送信する(ステップS225)。すなわち、制御部20は、第1基準位置に基づいて交通情報の範囲を特定するとともに、記録媒体30の交通情報30aを参照して当該特定された範囲の交通情報を抽出する。そして、制御部20は、通信部22を介して当該交通情報を送信する。車両Cにおいては当該送信された交通情報を受信して記録媒体300に記録して利用する。
【0063】
一方、ステップS215において、第2基準位置を示す情報を受信したと判別された場合、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bが記録媒体300に保持されている。そこで、制御部20は、第1基準位置と第2基準位置との距離が所定の第2閾値D2以下であるか否かを判別する(ステップS220)。
【0064】
ステップS220において、第1基準位置と第2基準位置との距離が所定の第2閾値D2以下であると判別された場合、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bと要求される交通情報とは重複しているとみなす。この場合、制御部20は、ステップS220の後に交通情報を送信することなく図3に示す処理を終了する。
【0065】
ステップS220において、第1基準位置と第2基準位置との距離が所定の第2閾値D2以下であると判別されない場合、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bと要求される交通情報とは重複していないとみなす。この場合、制御部20は、ステップS225の処理を実行して交通情報を送信する。
【0066】
本実施形態において、第2閾値D2は、第2基準位置から特定される交通情報の範囲と第1基準位置から特定される交通情報の範囲とが重複するか否かを判定するための指標である。本実施形態においては、第1基準位置から特定される交通情報の範囲と記録媒体300に保持されている交通情報300bの範囲とが一定以上の確率で重複するか否かを判定するための指標として第2閾値D2が定義されている。第1基準位置に基づいて特定される交通情報の範囲は第1基準位置を中心とした正方形の範囲として予め決められている(例えば、数キロ四方の範囲)。
【0067】
従って、第1基準位置と第2基準位置との距離が小さいほど、要求される交通情報の範囲と記録媒体300に保持されている交通情報300bの範囲とが重複する確率が高くなる。図5A,5Bは、図4Aの一部を拡大して示す図である。図5Aにおいては、車両の位置Pc、第1基準位置P13、第1基準位置P13によって特定される交通情報の範囲R13、第2基準位置P21、第2基準位置P21によって特定される交通情報の範囲R21を示している。図5Bにおいては、車両の位置Pc、第1基準位置P13、第1基準位置P13によって特定される交通情報の範囲R13、第2基準位置P22、第2基準位置P22によって特定される交通情報の範囲R22を示している。
【0068】
図5Aにおいては、第1基準位置P13と第2基準位置P21との距離L21が第2閾値D2以下である場合の例を示している。この場合、図5Aに示すように第1基準位置P13によって特定される交通情報の範囲R13と第2基準位置P21によって特定される交通情報の範囲R21とが重複する可能性が高い。図5Bにおいては、第1基準位置P13と第2基準位置P22との距離L22が第2閾値D2より大きい場合の例を示している。この場合、図5Bに示すように第1基準位置P13によって特定される交通情報の範囲R13と第2基準位置P22によって特定される交通情報の範囲R22とが重複しない可能性が高い。
【0069】
そこで、本実施形態においては、第2基準位置から特定される範囲の外側に一定以上の確率で第1基準位置が存在することを判定するための指標として第2閾値D2を定義し、ステップS220において第1基準位置と第2基準位置との距離が所定の第2閾値D2以下であるか否かを判別することとしている。この構成によれば、既存の交通情報300bと要求される交通情報とが重複するか否かを極めて簡易な構成によって判定可能であり、判定結果が一定以上の確率で正しくなるように構成することが可能である。
【0070】
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、要求される交通情報と保持されている交通情報とが重複していない場合に交通情報を送信させる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、送信要求取得部21a、既存位置情報取得部21b、既存情報判定部21c、交通情報送信制御部21dの各部によって実現される機能の一部または全てが車両Cの制御部200によって実現されても良い。
【0071】
図6は、車両Cの制御部200によってこれらの機能が実現される場合のフローチャートを示している。この処理において制御部200は、交通情報を送信させるか否かの判断を行い、交通情報の送信を行うべき場合に通信部220を制御して、交通情報管理装置10に交通情報を送信させるための処理を実行し、交通情報の送信を行う必要がない場合には交通情報管理装置10に交通情報を送信させるための処理を実行しない。また、この処理は図1に示す車両Cと同様な構成を備える車両において、制御部200によって実行されればよい。以下に示す実施形態においては、有効期間が経過した交通情報300bであっても記録媒体300に保持され得る構成について説明する。さらに、以下の例における交通情報管理装置10は、記録媒体30に交通情報30aを保持しており、交通情報の送信を行うべきとき、すなわち、通信部220からの指示に応じて通信部22を介して交通情報を送信すればよい。
【0072】
具体的には、制御部200は、図6に示す交通情報管理処理を所定期間毎(例えば、100ms毎)に繰り返し実行する。この処理においてまず制御部は送信要求ボタンによる指示がなされたか否かを判別し(ステップS300)、指示がなされたと判別されなければ送信要求処理を終了する。ステップS300において、送信要求ボタンによる指示がなされたと判別されたとき、制御部200は、第1基準位置が車両の位置と地図をスクロールさせた後の位置とのいずれかであるかを判別する(ステップS305)。
【0073】
すなわち、ユーザI/F部430の表示部においては、通常の状態で車両の位置を特定の位置に表示しながら地図表示を行っており、スクロール指示ボタンによる指示がなされた場合には地図の表示範囲が切り替えられる。そこで、ステップS305において、制御部200は、ユーザI/F部430の表示部に車両が表示されている場合には第1基準位置として車両の位置を取得し、表示部に車両が表示されていない場合には第1基準位置としてスクロール後の表示部の基準位置を取得する。
【0074】
ステップS305にて、第1基準位置が車両の位置であると判別されたとき、制御部200は、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bであって有効期間が経過していない交通情報300bが存在するか否かを判別する(ステップS310)。ステップS310において、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bであって有効期間が経過していない交通情報300bが存在すると判別された場合、要求される交通情報と重複する有効期間が経過していない交通情報300bが存在するとみなして図6に示す処理を終了する。ステップS310において、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bであって有効期間が経過していない交通情報300bが存在すると判別されない場合、要求される交通情報と重複する有効期間が経過していない交通情報300bが存在しないとみなす。この場合、制御部200は、第1基準位置である車両の位置によって特定される範囲の交通情報が交通情報管理装置10から送信されるように通信部220を制御する(ステップS315)。
【0075】
一方、ステップS305にて、第1基準位置が地図をスクロールさせた後の位置であると判別されたとき、制御部200は、車両の現在位置と第1基準位置(スクロール後の位置)との距離が第1閾値D1以下であるか否かを判別する(ステップS320)。ステップS320において、車両の現在位置と第1基準位置との距離が第1閾値D1以下であると判別されたとき、車両位置情報300cが示す車両の位置(交通情報取得時の車両の位置)に基づいて範囲が特定された交通情報300bと第1基準位置から特定される交通情報の範囲とが重複しているか否かを判断すれば良いとみなし、制御部200はステップS310を実行する。
【0076】
さらに、ステップS320において、車両の現在位置と第1基準位置との距離が第1閾値D1以下であると判別されないとき、制御部200は、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bであって有効期間が経過していない交通情報300bが存在するか否かを判別する(ステップS325)。ステップS325において、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bであって有効期間が経過していない交通情報300bが存在すると判別されない場合には、要求される交通情報と重複する有効期間が経過していない交通情報300bが存在しないとみなしてステップS315に示す処理を実行する。すなわち、制御部200は、第1基準位置であるスクロール後の位置によって特定される範囲の交通情報が交通情報管理装置10から送信されるように通信部220を制御する。
【0077】
ステップS325において、第2基準位置に基づいて範囲が特定された交通情報300bであって有効期間が経過していない交通情報300bが存在すると判別された場合、当該交通情報300bの範囲と要求される交通情報の範囲とが重複するか否かを判定するためにステップS330を実行する。すなわち、制御部200は、第1基準位置と第2基準位置との距離が所定の第2閾値D2以下であるか否かを判別し、第1基準位置と第2基準位置との距離が所定の第2閾値D2以下であると判別された場合、交通情報の送信処理を行うことなく図6に示す処理を終了する。第1基準位置と第2基準位置との距離が所定の第2閾値D2以下であると判別されない場合、制御部200は、ステップS315を実行する。すなわち、制御部200は、第1基準位置であるスクロール後の位置によって特定される範囲の交通情報が交通情報管理装置10から送信されるように通信部220を制御する。
【0078】
さらに、上述の実施形態において、通信部220においては、異なる通信方式によって広域交通情報と狭域交通情報とを取得する構成としていたが、むろん、単一の通信方式によって広域交通情報と狭域交通情報とを取得する構成としても良い。この場合、広域交通情報と狭域交通情報との双方について重複を避けて送信要求範囲の交通情報を取得するように構成することが好ましい。
【0079】
さらに、交通情報は、交通に関する情報であれば良く、規制情報や気象情報など道路上の車両に影響を与える情報であっても良い。また、交通情報の有効期間を特定するためには、交通情報内に当該有効期間を含む情報が含まれていてもよいし、交通情報を利用可能な期間として予め既定の有効期間が決められていてもよい。
【0080】
要求位置情報と既存位置情報とが示す交通情報の範囲が重複しているか否かの判定は、要求位置情報と既存位置情報とが示す交通情報の範囲を具体的に特定し、特定された範囲を直接的に比較することによって実行しても良い。
【0081】
第1基準位置と車両の位置、第2基準位置は交通情報の範囲を特定可能な情報であれば良く、各種の規則に基づいて交通情報の範囲を特定するように構成可能である。例えば、第1基準位置、車両の位置、第2基準位置を含む所定範囲が交通情報の範囲となるように予め定義される構成を採用可能である。所定範囲の広さや形状は特に限定されず予め決められていればよい。第1基準位置、車両の位置、第2基準位置に応じて所定範囲の広さや形状が変動しても良い。例えば、車両の位置が属する地域毎の交通情報を送信する構成において、地域ごとに送信される交通情報の範囲が異なる構成等を採用可能である。
【符号の説明】
【0082】
10…交通情報管理装置、20…制御部、21…交通情報管理プログラム、21a…送信要求取得部、21b…既存位置情報取得部、21c…既存情報判定部、21d…交通情報送信制御部、22…通信部、30…記録媒体、30a…交通情報、100…ナビゲーション装置、200…制御部、210…ナビゲーションプログラム、210a…ナビゲーション処理部、210b…地図表示部、210c…送信要求部、220…通信部、300…記録媒体、300a…地図情報、300b…交通情報、300c…車両位置、300d…第2基準位置、410…GPS受信部、420…車速センサ、430…ユーザI/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効期間が決められた交通情報を車両へ送信させるための送信要求とともに要求される前記交通情報の範囲を特定するための位置情報である要求位置情報を取得する送信要求取得手段と、
前記車両に搭載された記録媒体に前記有効期間が経過していない前記交通情報が保持されている場合に、保持されている前記交通情報の範囲を特定するための位置情報である既存位置情報を取得する既存位置情報取得手段と、
前記要求位置情報と前記既存位置情報とに基づいて、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複しているか否かを判定する既存情報判定手段と、
要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していないと判定された場合には所定の通信部を制御して要求された前記範囲の前記交通情報の送信を実行し、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定された場合には前記所定の通信部による前記交通情報の送信を実行しない、交通情報送信制御手段と、
を備える交通情報管理装置。
【請求項2】
前記送信要求取得手段は、要求された前記交通情報の送信要求がなされたときに前記車両に搭載された表示部に表示されていた地図上での第1基準位置を前記要求位置情報として取得し、
前記既存位置情報取得手段は、保持されている前記交通情報に、自動的に送信され、且つ、車両の位置に基づいて範囲が特定された交通情報が含まれる場合、前記車両の位置を前記既存位置情報として取得し、
前記既存情報判定手段は、前記第1基準位置と前記車両の位置との距離が第1閾値以下である場合には、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定する、
請求項1に記載の交通情報管理装置。
【請求項3】
前記既存位置情報取得手段は、保持されている前記交通情報に、前回の前記送信要求に応じて送信された交通情報が含まれる場合、前回の前記送信要求がなされたときに前記表示部に表示されていた地図上での第2基準位置を前記既存位置情報として取得し、
前記既存情報判定手段は、前記車両の位置と前記第1基準位置との距離が前記第1閾値よりも大きく、前記第1基準位置と前記第2基準位置との距離が第2閾値以下である場合に、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定する、
請求項2に記載の交通情報管理装置。
【請求項4】
前記既存情報判定手段は、前記既存位置情報として前記車両の位置が取得されていない場合、前記第1基準位置と前記第2基準位置との距離が第2閾値以下である場合に、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定する、
請求項3に記載の交通情報管理装置。
【請求項5】
有効期間が決められた交通情報を車両へ送信させるための送信要求とともに要求される前記交通情報の範囲を特定するための位置情報である要求位置情報を取得する送信要求取得工程と、
前記車両に搭載された記録媒体に前記有効期間が経過していない前記交通情報が保持されている場合に、当該保持されている前記交通情報の範囲を特定するための位置情報である既存位置情報を取得する既存位置情報取得工程と、
前記要求位置情報と前記既存位置情報とに基づいて、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複しているか否かを判定する既存情報判定工程と、
要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していないと判定された場合には所定の通信部を制御して要求された前記範囲の前記交通情報の送信を実行し、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定された場合には前記所定の通信部による前記交通情報の送信を実行しない、交通情報送信制御工程と、
を含む交通情報管理方法。
【請求項6】
有効期間が決められた交通情報を車両へ送信させるための送信要求とともに要求される前記交通情報の範囲を特定するための位置情報である要求位置情報を取得する送信要求取得機能と、
前記車両に搭載された記録媒体に前記有効期間が経過していない前記交通情報が保持されている場合に、当該保持されている前記交通情報の範囲を特定するための位置情報である既存位置情報を取得する既存位置情報取得機能と、
前記要求位置情報と前記既存位置情報とに基づいて、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複しているか否かを判定する既存情報判定機能と、
要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していないと判定された場合には所定の通信部を制御して要求された前記範囲の前記交通情報の送信を実行し、要求される前記交通情報と保持されている前記交通情報とが重複していると判定された場合には前記所定の通信部による前記交通情報の送信を実行しない、交通情報送信制御機能と、
をコンピュータに実現させる交通情報管理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−231584(P2010−231584A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79418(P2009−79418)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】