説明

交通情報表示システム、交通情報表示方法および交通情報表示プログラム

【課題】ユーザが判断することなく高精度の交通情報を表示させる。
【解決手段】第1送信元が送信した第1交通情報と、前記第1送信元と異なる第2送信元が送信した前記第1交通情報よりも高精度の第2交通情報と、を受信する交通情報受信手段と、前記第1交通情報が示すイベントの数である第1イベント数と、前記第2交通情報が示すイベントの数である第2イベント数とを取得するイベント数取得手段と、前記第1交通情報と前記第2交通情報とのいずれかを表示情報として選択するとともに、前記第2交通情報が表示部に表示されている状態において前記第2イベント数が前記第1イベント数よりも少なくなった場合でも、前記第2イベント数が所定の下限数以上である場合には、前記第2交通情報を継続して前記表示情報として選択する表示情報選択手段と、前記表示情報を地図上に重畳させて前記表示部に表示させる表示制御手段と、を備える交通情報表示システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した交通情報を表示させる交通情報表示装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の送信メディアを介して複数の交通情報を受信するナビゲーション装置が知られている(特許文献1、参照。)。特許文献1のナビゲーション装置は、複数の交通情報のうちユーザが予め選択した一つの送信メディアを介して受信した交通情報を表示する。このように、複数の送信メディアのなかからユーザが選択した一つの送信メディアを介して受信した交通情報を表示させることにより、複数の送信メディアを介して受信した複数の交通情報が同時に表示されることが防止でき、ユーザの混乱を防止できる。
一方、FM多重放送を介して交通情報を受信するとともに、受信できる交通情報のデータ量が最も大きくなるFM多重放送の周波数(送信メディア)を選択して交通情報を受信するナビゲーション装置が知られている(特許文献2、参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−218045号公報
【特許文献2】特開2000−285384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において表示に適する交通情報が送信される送信メディアをユーザが判断することは困難であるという問題があった。一方、特許文献2のように受信できる交通情報のデータ量が最も大きくなる送信メディアを選択して交通情報を受信したとしても、当該送信メディアにて高精度の交通情報が放送されているとは限らず、低精度の交通情報が表示されるという問題があった。送信メディアを介して交通情報を送信する主体である送信元によって送信される交通情報の精度がそもそも異なるため、必ずしも受信できる交通情報のデータ量が最大となる送信メディアを介して受信される交通情報の精度が最も高精度であるとは限らないからである。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、ユーザが判断することなく高精度の交通情報を表示させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明において、交通情報受信手段は、第1送信元が送信した第1交通情報と、第1送信元と異なる第2送信元が送信した第1交通情報よりも高精度の第2交通情報と、を受信する。イベント数取得手段は、第1交通情報が示すイベントの数である第1イベント数と、第2交通情報が示すイベントの数である第2イベント数とを取得する。そして、表示情報選択手段は、第2交通情報が表示部に表示されている状態において、第2イベント数が第1イベント数よりも少なくなった場合でも、第2イベント数が所定の下限数以上である場合には、第2交通情報を継続して表示情報として選択する。表示制御手段は、表示情報を地図上に重畳させて表示部に表示させる。
【0006】
ここで、第2イベント数が第1イベント数よりも少なくなった場合、第2交通情報を表示情報として選択するよりも、第1交通情報を表示情報として選択する方が表示部にて表示できる交通情報の量が多くなる。しかし、第2交通情報が表示部に表示されている状態において、表示情報を第2交通情報から第1交通情報へと切り替えると、表示部に表示された表示情報の精度が低下する。そこで、第2交通情報が表示部に表示されている状態において、第2イベント数が第1イベント数よりも少なくなっても、第2イベント数が所定の下限数以上である場合には、第2交通情報を継続して表示させる。このように、第1交通情報を表示情報として選択する方が表示部にて表示できる交通情報の量が多くなる場合でも、高精度の第2交通情報を継続して表示させることにより、表示部に表示された表示情報の精度の低下が防止できる。また、第1交通情報と第2交通情報とのどちらが表示させるかをユーザが判断しなくても済む。
【0007】
以下、第1送信元と第2送信元とを送信元と総称し、第1交通情報と第2交通情報とを交通情報と総称し、第1イベント数と第2イベント数とをイベント数と総称する場合もある。
第1送信元と第2送信元とが異なるとは、交通情報の送信主体が異なることを意味する。例えば、交通情報を生成して送信するための情報源(計測機器)、情報収集量、情報収集頻度、情報送信頻度、情報送信媒体(キャリア,符号化方式,復号方式,変調方式,復調方式等)、送信機器等の少なくとも一つが第1送信元と第2送信元とで異なっていればよい。イベントは、現実の交通状況における事象に対応し、当該事象の内容を示す情報の包括単位をなす。すなわち、交通状況における事象の内容(事象の属性や位置や方向や範囲等)を示す情報の包括単位としてイベントが設定される。
【0008】
イベント数取得手段は、交通情報が示すイベントの個数をイベント数として取得すればよく、例えば交通情報からイベントの内容を示す情報を取得し、当該イベントの内容を示す情報の量に基づいてイベント数を取得してもよい。また、イベント数取得手段は、交通情報の所定の箇所(例えばヘッダ等)に記述された目次情報が示すイベントの数を、イベント数として取得してもよい。なお、第1交通情報と第2交通情報とでデータ構造が異なる場合もあり、第1イベント数と第2イベント数の取得方法が互いに異なっていてもよい。
【0009】
表示情報選択手段は、第2イベント数が所定の下限数以上である限りにおいて第2交通情報を継続して表示させればよく、第2イベント数の下限数は第2交通情報の表示が可能となる範囲の下限数とすることが望ましい。例えば、第2イベント数が1以上であれば第2交通情報が表示できる場合において、第2イベント数の下限数を1としてもよい。第2交通情報の表示が可能であるとは、第2交通情報の表示が技術的に可能であることを指してもよいし、所定の表示態様(例えばユーザに違和感を生じさせない表示態様)で第2交通情報の表示が可能であることを指してもよい。表示制御手段は、表示情報を地図上に重畳させて表示部に表示させればよく、具体的に表示情報としての第1交通情報または第2交通情報が含むイベントの内容を示す情報を画像化したイベント画像を地図上に重畳させればよい。地図上には第1交通情報に基づくイベント画像と第2交通情報に基づくイベント画像とのいずれか一方が表示されるため、異なる送信元が送信した交通情報に基づくイベント画像が同時に地図上に表示されることにより生じるユーザの混乱を防止できる。
【0010】
ここで、交通情報が高精度であるとは、交通情報が示すイベントの内容が現実の交通状況と一致する確率が高いこと(内容精度が高い)であってもよい。また、交通情報が高精度であるとは、現実の交通状況における事象の発生時刻に対する、当該事象に対応するイベントを示す交通情報が受信された時刻(またはイベントに対応付けられた事象の発生時刻)の遅延が少ない(時間精度が高い)ことであってもよい。さらに、交通情報が高精度であるとは、交通情報が示すイベントの内容の詳細度が高いことであってもよい。交通情報の精度は、当該交通情報を送信する送信元に大きく依存する。例えば、情報源となる計測機器が高精度である送信元や、情報源の情報収集量が多い送信元であるほど、当該送信元が送信する交通情報の内容精度が高精度となる。また、情報更新周期が短い送信元であるほど、当該送信元が送信する交通情報の時間精度が高精度となる。さらに、送信元が交通情報を送信に採用する送信媒体や送信方式の信頼度が高いほど、交通情報の内容精度が高くなる。
【0011】
一方、第1交通情報が表示部に表示されている状態においては、第2イベント数が第1イベント数以上となった場合に、第1交通情報から第2交通情報へと表示情報を切り替えても表示部に表示された表示情報の精度が低下することはない。従って、表示情報選択手段は、第1交通情報が表示部に表示されている状態において、第2イベント数が第1イベント数以上となった場合には、第2交通情報を表示情報として選択してユーザに提示できる情報の量を多くするのが望ましい。また、第2イベント数が第1イベント数以上となった場合には第2イベント数と第1イベント数と同数である場合も含まれるため、第2イベント数と第1イベント数と同数である場合にも高精度の第2交通情報を優先して表示情報として選択できる。
【0012】
ここで、表示情報選択手段は、第1交通情報が表示部に表示されている状態において、第2イベント数が下限数より少ない状態から下限数以上へと増加しても、第2イベント数が第1イベント数以下である限りは、第1交通情報から第2交通情報へと表示情報を切り替えない。従って、第2イベント数が下限数に近い値で変動しても、頻繁に表示情報が切り替えられてユーザが混乱することが防止できる。また、表示情報選択手段は、第2交通情報が表示部に表示されている状態において、第2イベント数が第1イベント数以下となっても、第2イベント数が下限数以上である限りは、第2交通情報から第1交通情報へと表示情報を切り替えない。従って、第1イベント数と第2イベント数とが均衡する状態で変動しても、頻繁に表示情報が切り替えられてユーザが混乱することが防止できる。
【0013】
イベント数取得手段は、第1交通情報と第2交通情報とが示すイベントのうち同一の種類のイベントについての第1イベント数と第2イベント数とを取得してもよい。これにより、送信元における情報収集状況や交通情報の受信状況等を、第1イベント数と第2イベント数とに基づいて公平に評価できる。イベントの種類が同一であるとは、イベントの属性や時間的範囲や地域的範囲等が同一であることであってもよい。例えば、イベント数取得手段が、第1イベント数と第2イベント数とで異なる長さの時間的範囲のイベントの数を計数した場合、送信元における情報収集状況や交通情報の受信状況等に拘わらず、時間的範囲の長い方のイベント数が多くなり易くなる。これに対して、第1イベント数と第2イベント数とで計数するイベントの時間的範囲を同一としておけば、送信元における情報収集状況や交通情報の受信状況等を公平に評価できる。
【0014】
例えば、イベント数取得手段は、第1交通情報と第2交通情報とが示すイベントのうち現在の道路状況に関するイベントについての第1イベント数と第2イベント数とを取得してもよい。送信元における情報収集状況や交通情報の受信状況等の変化に応じてイベント数も変化し得るが、現在の事象に対応するイベントのイベント数により、送信元における最新の情報収集状況や交通情報の最新の受信状況等を反映したイベント数に基づいて表示情報を選択できる。なお、現在の道路状況に関するイベントとは、最も現在に近い時刻にて受信した交通情報が示すイベントであってもよい。また、現在の道路状況に関するイベントとは、過去の所定時刻から現在までに受信した交通情報が示すイベントであってもよいし、過去の所定時刻から現在までに発生した事象に対応するイベントであってもよい。
【0015】
さらに、イベント数取得手段は、第1交通情報と第2交通情報とが示すイベントのうち交通情報受信手段が位置する領域(例えば国、地方、州、県等)内のイベントについての第1イベント数と第2イベント数とを取得してもよい。ここで、交通情報受信手段がユーザとともに領域の境界の近くに存在する場合等には、交通情報受信手段が位置する領域内のイベントを示す交通情報のみならず、交通情報受信手段が位置しない領域内のイベントを示す交通情報も受信され得る。また、交通情報受信手段が位置しない領域内のイベントは、ユーザにとって有益な情報をもたらすイベントとならない場合がある。例えば、国境付近に居住するが生活圏が国内に留まるユーザには、隣国におけるイベントについての情報が有益とならない場合がある。そこで、交通情報受信手段が位置する領域内のイベントのみについてのイベント数を取得することにより、ユーザにとって有益なイベントのイベント数に基づいて表示情報を選択できる。また、第1送信元と第2送信元の整備進行度が領域に依存して異なる場合にも、各領域における第1送信元と第2送信元の整備進行度を反映させた第1イベント数と第2イベント数とに基づいて表示情報を選択できる。
【0016】
交通情報受信手段は、RDS(Radio Data System)規格に準じた第1交通情報と、TPEG(Transport Protocol Experts Group)規格に準じた第2交通情報とを受信してもよい。第1送信元と第2送信元とは、RDSとTPEGとに限られず、他の交通情報送信システムであってもよい。例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System(財団法人 道路交通情報通信システムセンターの登録商標))であってもよいし、車両から送信されたプローブ情報を解析することにより得られた交通情報を車両に送信する交通情報送信システムであってもよい。
【0017】
さらに、本発明のように交通情報を選択して表示させる手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような交通情報表示システム、プログラム、方法は、単独の交通情報表示装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。すなわち、交通情報表示システムを構成する各手段が複数の実体的な装置に分散して備えられてもよい。各手段が複数の実体的な装置に分散して備えられる場合に、各手段を機能させるために必要なデータを送受信する通信手段が備えられてもよい。さらに、以上のような交通情報表示システムの少なくとも一部を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、交通情報表示システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ナビゲーションシステムのブロック図である。
【図2】交通情報表示処理のフローチャートである。
【図3】(3A)は表示例を示す図、(3B)は表示情報の切替タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】他の実施形態にかかる送信元を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)送信元の概要:
(2)ナビゲーションシステムの構成:
(3)交通情報表示処理:
(4)他の実施形態:
【0020】
(1)送信元の概要:
図1は、本発明の一実施形態にかかる交通情報表示システムとしてのナビゲーションシステム10を含む交通情報配信システム1のブロック図である。交通情報配信システム1は、車両Cに搭載されたナビゲーションシステム10、および、第1送信元P1と第2送信元P2とを含む。第1送信元P1と第2送信元P2とは、それぞれ第1交通情報D1と第2交通情報D2とを生成し、ナビゲーションシステム10に対してそれぞれ第1交通情報D1と第2交通情報D2とを送信する。図示しないが、第1送信元P1と第2送信元P2とは、多数のナビゲーションシステム10に対してそれぞれ第1交通情報D1と第2交通情報D2とを送信する。
【0021】
(1−1)第1送信元の概要:
本実施形態において第1送信元P1は、1984年に制定された規格に準じて設立されたRDS(Radio Data System)である。第1送信元P1は、情報源と通信可能に接続されており、当該情報源から第1交通情報D1を生成するための情報を収集する。情報源には、道路における車両の交通量や車両の車速等を計測する計測機器が含まれる。また、情報源には、道路管理機関にて道路管理情報(工事情報、通行規制情報等)を管理するサーバ、気象観測機関にて気象情報を管理するサーバ、および、警察機関や消防機関等にて緊急情報を管理するサーバ等が含まれる。さらに、情報源には、道路上を走行する車両が含まれてもよい。すなわち、第1送信元P1は、車両の車速や位置等を示すプローブ情報を車両から受信してもよい。第1送信元P1は複数の国のそれぞれにて整備されているが、原則として、各国の第1送信元P1はそれぞれ独立して国内で生じた事象に関する情報を情報源から収集し、当該収集した情報に基づく第1交通情報D1を国内に設置されたアンテナから送信する。また、第1送信元P1を構成する設備や装置の整備進行度は、国ごとに異なる。
【0022】
第1送信元P1は、所定の情報更新周期ごとに各情報源から収集した統計することにより、第1交通情報D1を情報更新周期ごとに生成し、送信する。すなわち、第1送信元P1は、前回の情報更新時刻から今回の情報更新時刻までの間に収集された情報を統計することにより、最新の第1交通情報D1を生成する。第1交通情報D1は、RDS−TMC(Traffic Message Channel)の規格に準じて生成される。ただし、前回の情報更新時刻から今回の情報更新時刻までの間に収集された情報であっても、情報源における情報の取得時刻が現在から所定期間以上過去である場合には、統計の対象外とする。
【0023】
第1送信元P1は、イベントごとにイベントの内容を示す情報を格納した第1交通情報D1を生成する。RDS−TMCの規格に準ずる第1交通情報D1は、CRC(Cyclic Redundancy Check)による誤り検出のための誤り検出符号を含む固定長のデータである。第1送信元P1は、イベントの内容を示す情報として、イベントの属性情報と位置情報と方向情報と範囲情報等を第1送信元P1に格納する。
【0024】
イベントの属性情報は、イベントが実測値に基づく現実の交通状況における事象"渋滞","工事","事故","気象"のいずれに対応するかを示す情報である。イベントの位置情報は、イベントに対応する事象が生じた道路上の位置を示す情報である。イベントの方向情報は、イベントに対応する事象が生じた道路の車線の方向を示す情報である。例えば、A地点と接続する道路上の位置についてある事象が生じた場合、当該事象がA地点に接近する車両が走行する車線で生じたのか、A地点から離反する車両が走行する車線で生じたのかを示す方向情報が第1交通情報D1に格納される。イベントの範囲情報は、ある位置にて生じた事象が周辺のどの範囲まで波及しているかを示す情報である。第1送信元P1は、単一の事象に対応するイベントごとに第1交通情報D1を一つ生成する。
【0025】
第1送信元P1は、情報更新周期ごとに最新の第1交通情報D1を生成すると、当該第1交通情報D1に対してFM(Frequency Modulation)変調を行うことにより、当該第1交通情報D1を所定周波数(87.5〜108MHz)の単一キャリアに搬送させて送信(放送)する。なお、FM変調とは、キャリアに対して第1交通情報D1に応じた周波数の変化を与えることを意味する。
【0026】
(1−2)第2送信元の概要:
本実施形態において第2送信元P2は、1998年に設立されたTPEG(Transport Protocol Experts Group)である。第2送信元P2を構成する設備や装置の整備進行度は、国ごとに異なる。また、第1送信元P1の整備進行度と第2送信元P2の整備進行度との相対関係も国ごとに異なる。第2送信元P2はTPEG規格に準じて第2交通情報D2を生成し、送信する。第2送信元P2は、情報源と通信可能に接続されており、当該情報源から第2交通情報D2を生成するための情報を収集する。第2送信元P2の情報源の種類は、第1送信元P1の情報源の種類と同様であるが、TPEGの情報源はRDSの情報源よりも整備された時期が遅く、例えば情報源としての計測機器が高精度となっている。従って、第1交通情報D1よりもTPEG−TECの方が情報の内容精度が高い。ただし、第1送信元P1と第2送信元P2とで一部の情報源が共通していてもよい。第2送信元P2は複数の国のそれぞれにて整備されているが、原則として、各国の第2送信元P2はそれぞれ独立して国内で生じた事象に関する情報を情報源から収集し、当該収集した情報に基づく第2交通情報D2を国内に設置されたアンテナから送信する。
【0027】
第2送信元P2は、第1送信元P1と同様に、イベントの内容を示す情報を格納した第2交通情報D2を生成する。第2交通情報D2は、ヘッダ部とサービスデータ部とを有する。ヘッダ部は、第2交通情報D2のデータ長等を規定するデータである。サービスデータ部は、イベントごとにイベントの内容を示す情報を格納したTPEG−Messageを複数連ねたデータである。従って、単一の第2交通情報D2に複数のTPEG−Messageが格納され、単一の第2交通情報D2は複数のイベントを示し得る。TPEG−Messageは、XML(Extensible Markup Language)方式で記述されたデータであり、可変長となる。さらに、TPEG−Messageは、管理部とイベント情報格納部を有する。管理部には、イベント情報格納部に格納された情報の生成時刻や有効期間や重要度等を示す情報が格納される。イベント情報格納部には、イベントの内容を示す情報が格納される。
【0028】
TPEG−Messageのイベント情報格納部においては、TPEG−Messageに格納された情報が示すイベントの属性を宣言する情報が格納される。TPEG−Messageに格納される情報が示すイベントの属性として、RTM(Road Traffic Messages),PTI(Public Transport Information),TEC(Traffic Event Compact),PKI(Parking Information),TFP(Traffic Flow and Prediction)等が挙げられる。イベントの属性としてTECの宣言がなされたTPEG−Message(以下、TPEG−TEC)は、第1交通情報D1と同様に、現実の交通状況おける事象"渋滞","工事","事故","気象"に対応する属性のイベントについてイベントの内容を示す情報である。なお、TPEG−TFPも交通状況おける事象"渋滞"に対応するイベントを示すが、実測値に基づく現実の交通状況に基づいたイベントではなく、予測した交通状況に基づいたイベントを示す。従って、TPEG−TECが示す事象"渋滞"についてのイベントと、TPEG−TFPが示す事象"渋滞"についてのイベントとは属性が同一とならない。
【0029】
TPEG−TECのイベント情報格納部には、イベントの属性を宣言する情報が格納されるとともに、第1交通情報D1と同様に、イベントの位置情報と方向情報と範囲情報等が格納される。従って、第2交通情報D2のTPEG−TECと交通情報D1とは、互いに同一の属性のイベントについて同様の内容を示す情報を格納したデータであると言うことができる。ただし、TPEG−TECはXML方式で記述され、データ長も可変であるため、第2送信元P2はイベントの内容を示す情報を第1交通情報D1よりも詳細化することができる。すなわち、XMLタグを追加することにより、例えば渋滞度や渋滞原因等を示す情報をTPEG−TECに格納することができる。従って、固定長のデータである第1交通情報D1よりもTPEG−TECの方が情報の詳細度を高くすることができ、第1交通情報D1よりもTPEG−TECの方が情報の精度を高くすることができる。
【0030】
第2送信元P2は、所定の情報更新周期ごとに各情報源から収集した統計することにより、イベントの内容を示す情報を生成し、TPEG−TECのイベント情報格納部に格納する。すなわち、第2送信元P2は、前回の情報更新時刻から今回の情報更新時刻までの間に収集された情報を統計することにより、最新のTPEG−TECをイベントごとに生成する。ただし、前回の情報更新時刻から今回の情報更新時刻までの間に収集された情報であっても、情報源における情報の取得時刻が現在から所定期間以上過去である場合には、統計の対象外とする。ここで、整備された時期が遅い第2送信元P2の方が第1送信元P2よりも収集される情報量も多く情報処理能力も高いため、第2送信元P2は、第1交通情報D1よりもTPEG−TECの情報更新周期を短くしている。従って、第1交通情報D1よりもTPEG−TECの方が情報の時間精度が高い。
【0031】
第2送信元P2は、TPEG−TECを含むTPEG−Messageを生成すると、複数のTPEG−Messageを複数連ねることによりサービスデータ部を生成し、当該サービスデータ部を暗号鍵データを用いて暗号化する。第2送信元P2は、暗号化したサービスデータ部に対してヘッダ部を添付することにより、第2交通情報D2を生成する。従って、第2交通情報D2は第1交通情報D1よりも高いセキュリティ性を有する。暗号化を行うTPEG−TECが改竄される可能性は、暗号化を行わない第1交通情報D1が改竄される可能性よりも低く、第1交通情報D1よりもTPEG−TECの方が情報の内容精度が高い。
【0032】
本実施形態において、第2送信元P2は、DAB(Digital Audio Broadcasting)により、第2送信元P2を送信することとする。第2送信元P2は、誤り訂正符号を追加しつつ第2交通情報D2を符号化する。そして、第2送信元P2は、符号化された第2交通情報D2に対してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調を行うことにより、第2交通情報D2を複数のキャリアに搬送させて送信(放送)する。従って、第2送信元P2は第1送信元P1よりも高速に大量の第2交通情報D2を送信できる。TPEG規格は特に通信手段について定めないため、第2交通情報D2は、DAB以外の通信方式(GSM(Global System for Mobile Communications),UMTS(Universal Mobile Telecommunications System),DMB(Digital Multimedia Broadcasting),インターネット等)によって送信されてもよい。このように第1交通情報D1よりもTPEG−TECの方が高速かつ大量にデータを送信可能な媒体によって送信されるため、第1交通情報D1よりもTPEG−TECの方が情報の詳細度を高くすることができるとともに、第1交通情報D1よりもTPEG−TECの方が情報の時間精度を高くすることができる。
【0033】
(2)ナビゲーションシステムの構成:
ナビゲーションシステム10は、車両Cに搭載される。車両Cは、GPS受信部41とユーザI/F部42と第1受信部43aと第2受信部43bとを備える。GPS受信部41とユーザI/F部42と第1受信部43aと第2受信部43bとがナビゲーションシステム10との間で各種信号を入出力するためのインタフェース(不図示)が備えられている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、車両Cの現在位置を算出するための信号をナビゲーションシステム10に出力する。ユーザI/F部42は、ナビゲーションシステム10から出力された制御信号に基づいて画像や音声を出力する出力装置(ディスプレイ(表示部),スピーカ等)を含む。また、ユーザI/F部42は、ユーザの操作を受け付けるための入力装置(タッチセンサ,ボタン等)を含み、当該入力装置にて受け付けた操作に対応する操作信号をナビゲーションシステム10に出力する。
【0034】
第1受信部43aと第2受信部43bとは、それぞれ第1送信元P1が送信した第1交通情報D1と、第2送信元P2が送信した第2交通情報D2とを受信するためのハードウェアを含む。第1受信部43aは、第1交通情報D1が搬送されたキャリアを受信し、FM復調およびD/A変換を行うことにより、第1交通情報D1を復元する。第1受信部43aは、第1交通情報D1に含まれる誤り検出符号を用いてCRCを行い、誤りが検出された第1交通情報D1は破棄する。第2受信部43bは、第2交通情報D2が搬送された複数のキャリアを受信し、ODFM復調と復号(誤り訂正)とを順次行うことにより、第2交通情報D2を復元する。さらに、第2受信部43bは、第2交通情報D2のサービスデータ部の暗号化を解除する。なお、記録媒体12は第2送信元P2が第2交通情報D2のサービスデータ部の暗号化に使用した暗号鍵データを記録しており、第2受信部43bは当該暗号鍵データを使用して第2交通情報D2のサービスデータ部の暗号化を解除する。
【0035】
ナビゲーションシステム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部11と記録媒体12とを備えており、制御部11は記録媒体12やROMに記憶されたプログラムを実行する。記録媒体12は、地図情報12aと第1交通情報D1と第2交通情報D2とを記録する。地図情報12aは、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置を示すノードデータと、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データと、ノード同士の連結を示すリンクデータと、国境の位置と形状とを示す国境データ等を含んでいる。
【0036】
制御部11は、交通情報表示プログラムとしてのナビゲーションプログラム100を実行する。ナビゲーションプログラム100は、交通情報受信部110とイベント数取得部120と表示情報選択部130と表示制御部140とを含む。
交通情報受信部110は、第1送信元P1が送信した第1交通情報D1と、第1送信元と異なる第2送信元P2が送信した第1交通情報D1よりも高精度の第2交通情報D2とを受信する機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、交通情報受信部110の機能により制御部11は、第1受信部43aと第2受信部43bと協働することにより、それぞれ第1交通情報D1と第2交通情報D2とを受信し、復元する。制御部11は、復元した第1交通情報D1と第2交通情報D2とを記録媒体に記録する。
【0037】
イベント数取得部120は、第1交通情報D1が示すイベントの数である第1イベント数N1と、第2交通情報D2が示すイベントの数である第2イベント数N2とを取得する機能を制御部11に実行させるモジュールである。上述のように第1交通情報D1がイベントごとに生成され、第2交通情報D2のTPEG−Messageがイベントごとに生成されるため、制御部11は、第1交通情報D1ごとのイベントの個数と、TPEG−Messageごとのイベントの個数とをそれぞれ第1イベント数N1と第2イベント数N2として取得すればよい。イベント数取得部120の機能により制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2とが示すイベントのうち道路状況に関する同一の種類のイベントについての第1イベント数N1と第2イベント数とを取得する。同一の種類のイベントとは、属性と時間的範囲と地域的範囲とが同一となるイベントを指す。上述のように第1交通情報D1と、第2交通情報D2のTPEG−Messageの一種であるTPEG−TECとは、ともに現実の交通状況おける事象"渋滞","工事","事故","気象"に対応する属性のイベントについてイベントの内容を示す情報であり、属性が同一のイベントに関する情報である。
【0038】
そこで、制御部11は、第1交通情報D1が示すイベントと、第2交通情報D2のTPEG−TECが示すイベントとのうち、時間的範囲と地域的範囲とが同一となるイベントを抽出し、当該抽出したイベントの数をそれぞれ第1イベント数N1と第2イベント数として取得する。制御部11は、同一の時間的範囲のイベントとして、第1交通情報D1および第2交通情報D2のTPEG−TECが示すイベントのうち現在のイベントを抽出する。ここで、現在のイベントとは、過去の所定時刻(例えば10分前)から現在までに受信した第1交通情報D1と第2交通情報D2のTPEG−TECとがそれぞれ示すイベントである。一方、制御部11は、同一の地域的範囲のイベントとして、第1交通情報D1と第2交通情報D2のTPEG−TECとが示すイベントのうち車両Cが位置する国内の位置を示す位置情報が対応付けられたイベントを抽出する。なお、イベントの位置情報が示す位置が国内であるか否かは、地図情報12aの国境データに基づいて特定できる。なお、複数の時刻にて受信された第1交通情報D1が示す複数のイベントが同一の事象に対応する場合には、単一のイベントとして第1イベント数N1を計数してもよい。同様に、複数の時刻にて受信された第2交通情報D2のTPEG−TECが示す複数のイベントが同一の事象に対応する場合には、単一のイベントとして第2イベント数N2を計数してもよい。
【0039】
そして、制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2のTPEG−TECとが示すイベントから、互いに同一の時間的範囲かつ同一の地域的範囲のイベントをそれぞれ抽出し、当該抽出したイベントの数をそれぞれ第1イベント数N1と第2イベント数として取得する。なお、本実施形態において、表示制御部140の機能により制御部11は、地図情報12aに基づいて車両Cの現在位置を中心とした地図をユーザI/F部42に表示させる。従って、ユーザI/F部42に表示させる地図上の位置を含む国内のイベントと、車両Cが位置する国内のイベントとは一致する。
【0040】
表示情報選択部130は、第1交通情報D1と第2交通情報D2とのいずれかを表示情報として選択するとともに、第2交通情報D2がユーザI/F部42に表示されている状態において第2イベント数N2が第1イベント数N1よりも少なくなった場合でも、第2イベント数N2が所定の下限数以上である場合には、第2交通情報D2を継続して表示情報として選択する機能を制御部11に実行させるモジュールである。本実施形態において下限数は、第2交通情報D2の表示が技術的に可能な範囲の下限数であり、1とされる。ただし、第2イベント数N2の下限数は1でなくてもよく、例えばユーザに違和感を生じさせない程度に第2交通情報D2の表示が可能な範囲の下限数であってもよい。
一方、表示情報選択部130の機能により制御部11は、第1交通情報D1がユーザI/F部42に表示されている状態において、第2イベント数N2が第1イベント数N1以上となった場合に、第1交通情報D1から第2交通情報D2へと表示情報を切り替える。
【0041】
表示制御部140は、表示情報を地図上に重畳させてユーザI/F部42に表示させる機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、表示情報選択部130の機能により第1交通情報D1と第2交通情報D2とのいずれか一方が表示情報として選択されているため、当該選択された表示情報をユーザI/F部42に表示させる。第1交通情報D1が表示情報として選択されている場合、制御部11は、第1交通情報D1が示すイベントの内容に基づくイベント画像を生成し、当該イベント画像を地図上に重畳させる。一方、第2交通情報D2が表示情報として選択されている場合、制御部11は、第2交通情報D2のうちTPEG−TECが示すイベントの内容に基づくイベント画像を生成し、当該イベント画像を地図上に重畳させる。表示制御部140の機能により制御部11は、地図情報12aに基づいて車両Cの現在位置を含む地図を示す地図画像を生成し、当該地図画像にイベント画像を重畳して、ユーザI/F部42に出力する。なお、表示情報選択部130の機能により制御部11は、第2交通情報D2が含むTPEG−MessageのうちTPEG−TECに基づくイベント画像のみを地図上に重畳させ、TPEG−TEC以外のTPEG−Messageに基づくイベント画像は表示させない。
【0042】
以上説明したように、制御部11は、第1イベント数N1と第2イベント数N2とに基づいて、第1交通情報D1と第2交通情報D2とのいずれかを表示情報として選択するため、ユーザが表示に適する交通情報Dを選択しなくても済む。また、制御部11は、第1交通情報D1よりも高精度の第2交通情報D2を受信するとともに、第2交通情報D2がユーザI/F部42に表示されている状態において、第2イベント数N2が第1イベント数N1よりも少なくなった場合でも、第2イベント数が1個以上である場合には、第2交通情報を継続して表示情報として選択する。これにより、第2交通情報D2がユーザI/F部42に表示されている状態において、第2交通情報D2から第1交通情報D1へと表示情報を切り替えることによって、ユーザI/F部42に表示された表示情報の精度が低下し、ユーザが混乱することが防止できる。
【0043】
一方、第1交通情報D1がユーザI/F部42に表示されている状態においては、第2イベント数N2が第1イベント数N1以上となった場合に、第1交通情報D1から第2交通情報D2へと表示情報を切り替えてもユーザI/F部42に表示された表示情報の精度が低下することはない。従って、制御部11は、第2イベント数N2が第1イベント数N1以上となった場合は、第1交通情報D1を表示情報として選択してユーザI/F部42に表示する情報の量を多くする。
【0044】
制御部11は、第1交通情報D1がユーザI/F部42に表示されている状態において、第2イベント数N2が0個から1個以上へと増加しても、第2イベント数N2が第1イベント数N1以下である限りは、第1交通情報D1から第2交通情報D2へと表示情報を切り替えない。従って、第2イベント数N2が0個から1個以上となる状態で変動しても、頻繁に表示情報が切り替えられてユーザが混乱することが防止できる。また、制御部11は、第2交通情報D2がユーザI/F部42に表示されている状態において、第2イベント数N2が第1イベント数N1以下となっても、第2イベント数N2が1個以上である限りは、第2交通情報D2から第1交通情報D1へと表示情報を切り替えない。従って、第1イベント数N1と第2イベント数N2とが均衡する状態で変動しても、頻繁に表示情報が切り替えられてユーザが混乱することが防止できる。
【0045】
制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2とが示すイベントのうち同一の種類のイベントについての第1イベント数N1と第2イベント数N2とを取得する。これにより、送信元P(P1,P2)における情報収集状況や交通情報の受信状況等をイベント数N(N1,N2)に基づいて公平に評価できる。また、制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2とが示すイベントのうち現在の道路状況に関するイベントについての第1イベント数N1と第2イベント数N2とを取得するため、送信元Pにおける最新の情報収集状況や交通情報の最新の受信状況等を反映したイベント数Nに基づいて表示情報を選択できる。
【0046】
ここで、車両Cがユーザとともに国境の近くに存在する場合等には、車両Cが位置する国内のイベントを示す交通情報Dのみならず、車両Cが位置しない国内のイベントを示す交通情報Dも受信され得る。第1交通情報D1と第2交通情報D2とのキャリアは国境を通過し得るからである。そこで、制御部11は、車両Cが位置する国内のイベントのみについてのイベント数Nを取得することにより、ユーザにとって有益なイベントのイベント数Nに基づいて表示情報を選択できる。また、第1送信元P1と第2送信元P2の整備進行度が国に依存して異なる場合にも、各国における第1送信元P1と第2送信元P2の整備進行度を反映させた第1イベント数N1と第2イベント数N2とに基づいて表示情報を選択できる。さらに、制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2とが示すイベントのうちユーザI/F部42に表示された地図上の位置を含む国内のイベントについての第1イベント数N1と第2イベント数N2とを取得する。これにより、ユーザI/F部42にて地図上に重畳される情報の量に対応したイベント数に基づいて表示情報を選択できる。
【0047】
(3)交通情報表示処理:
図2は、ナビゲーションシステム10が実行する交通情報表示処理のフローチャートである。ステップS100において制御部11は、互いに同一の種類のイベントについて第1イベント数N1と第2イベント数N2とを取得する。すなわち、制御部11は、過去の所定時刻から現在までに受信した第1交通情報D1が示すイベントのうち車両Cが存在する国内の位置を示す位置情報が対応付けられたイベントの数を第1イベント数N1として取得する。また、制御部11は、過去の所定時刻から現在までに受信した第2交通情報D1のうちのTPEG−TECが示すイベントのうち車両Cが存在する国内の位置を示す位置情報が対応付けられたイベントの数を第2イベント数N2として取得する。
【0048】
ここで、交通情報表示処理を実行するよりも前に、例えば制御部11が所定の設定画面をユーザI/F部42に表示させることにより、第1交通情報D1を固定して表示させるか、第1交通情報D1と第2交通情報D2との表示を自動(Auto)で切り替えるかの選択をユーザから受け付けており、当該選択の内容を示すフラグが記録媒体12に記録されている。ステップS110において制御部11は、ユーザによる選択内容が第1交通情報D1の固定か、自動(Auto)のいずれであるかを判定する。ここで、ユーザによる選択内容が第1交通情報D1の固定である場合、制御部11は、第1交通情報D1の固定表示処理(S210)を実行する。固定表示処理では、第1イベント数N1と第2イベント数N2とに拘わらず、第1交通情報D1をユーザI/F部42にて地図上に重畳して表示させる。
【0049】
図3Aは、ユーザI/F部42にて表示される画像を示す。図3Aの上図および下図は地図を示し、当該地図内の実線は道路を示す。図3Aの上図に示す一点鎖線矢印は第1交通情報D1が示すイベント(事象"渋滞"に対応)の内容を模式化したイベント画像である。図3Aの下図に示す破線線矢印は第2交通情報D2が示すイベント(事象"渋滞"に対応)の内容を模式化したイベント画像である。1本の矢印は一個のイベント(事象"渋滞")に対応する。また、制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2のTPEG−TECとが示すイベントの位置情報と方向情報と範囲情報とに基づいて、それぞれイベント画像が示す矢印の位置と方向と長さとを決定する。固定表示処理では、図3Aの上図のように、第1交通情報D1に基づくイベント画像が地図上に重畳されて表示される。
【0050】
ステップS110においてユーザによる選択内容が自動であると判定された場合、制御部11はステップS120を実行する。ステップS120において制御部11は、表示情報選択部130の機能によって現在選択されている表示情報が、第1交通情報D1である、または、なしである(第1交通情報D1と第2交通情報D2との双方ともが選択されていない)か否かを判定する。なお、現在選択されている表示情報は、現在、ユーザI/F部42にて地図上に重畳して表示されている情報を意味する。
【0051】
ステップS120において、現在選択されている表示情報が第1交通情報D1である、または、なしであると判定された場合、制御部11はステップS130を実行する。ステップS130において制御部11は、第1イベント数N1と第2イベント数N2とがともに0個であるか否かを判定する。第1イベント数N1と第2イベント数N2とがともに0個である場合、制御部11はステップS140を実行する。ステップS140において制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2との双方ともを表示情報として選択しない。次のステップS150において制御部11は、所定の実行周期(例えば5分)が経過するまで待機し、実行周期が経過するとステップS100に戻る。
【0052】
一方、ステップS130において第1イベント数N1と第2イベント数N2とがともに0個でないと判定された場合、制御部11はステップS160を実行する。ステップS160において制御部11は、第2イベント数N2が第1イベント数N1以上であるか否かを判定する。第2イベント数N2が第1イベント数N1以上である場合、ステップS170において制御部11は第2交通情報D2を表示情報として選択する。すなわち、第1交通情報D1が表示情報として選択されている状態、および、第1交通情報D1と第2交通情報D2とが双方とも表示情報として選択されていない状態において、第2イベント数N2が第1イベント数N1以上である場合には、第2交通情報D2を表示情報として選択する。次のステップS150において制御部11は、実行周期が経過するまで待機し、実行周期が経過するとステップS100に戻る。
【0053】
一方、ステップS160において第2イベント数N2が第1イベント数N1以上であると判定されなかった場合、ステップS180において制御部11は第1交通情報D1を表示情報として選択する。すなわち、第1交通情報D1が表示情報として選択されている状態、および、第1交通情報D1と第2交通情報D2とが双方とも表示情報として選択されていない状態において、第2イベント数N2が第1イベント数N1よりも小さい場合には、引き続き第1交通情報D1を表示情報として選択する。次のステップS150において制御部11は、実行周期が経過するまで待機し、実行周期が経過するとステップS100に戻る。
【0054】
一方、ステップS120において、現在選択されている表示情報が第1交通情報D1である、または、なしであると判定されなかった場合、制御部11はステップS190を実行する。なお、現在選択されている表示情報が第1交通情報D1である、または、なしであると判定されなかった場合とは、現在選択されている表示情報が第2交通情報D2であることを意味する。ステップS190において制御部11は、第1イベント数N1と第2イベント数N2とがともに0個であるか否かを判定する。第1イベント数N1と第2イベント数N2とがともに0個である場合、制御部11はステップS140を実行する。ステップS140において制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2との双方ともを表示情報として選択しない。次のステップS150において制御部11は、実行周期が経過するまで待機し、実行周期が経過するとステップS100に戻る。
【0055】
一方、ステップS190において第1イベント数N1と第2イベント数N2がともに0個でないと判定された場合、制御部11はステップS200を実行する。ステップS200において制御部11は、第2イベント数N2が1個以上であるか否かを判定する。第2イベント数N2が1個以上である場合、ステップS170において制御部11は第2交通情報D2を表示情報として選択する。すなわち、第2交通情報D2が表示情報として選択されている状態において、第2イベント数N2が1個以上である場合には、継続して第2交通情報D2を表示情報として選択する。次のステップS150において制御部11は、実行周期が経過するまで待機し、実行周期が経過するとステップS100に戻る。
【0056】
一方、ステップS200において第2イベント数N2が1個以上であると判定されなかった場合、ステップS180において制御部11は第1交通情報D1を表示情報として選択する。すなわち、第2交通情報D2が表示情報として選択されている状態において、第2イベント数N2が0個となった場合には、第1交通情報D1を表示情報として選択する。次のステップS150において制御部11は、実行周期が経過するまで待機し、実行周期が経過するとステップS100に戻る。
【0057】
以上説明した交通情報表示処理の動作例を説明する。図3Bは、第1イベント数N1と第2イベント数N2と、選択される表示情報との関係を示すグラフである。同図の縦軸は第1イベント数N1と第2イベント数N2とを示し、横軸は時刻を示す。まず、原点の時刻においてナビゲーションシステム10の電源が投入されたこととする。ナビゲーションシステム10の電源投入直後において第1交通情報D1と第2交通情報D2との少なくとも一方の受信が開始されるまでの期間T0においては、第1イベント数N1と第2イベント数N2とが双方とも0個となり、第1交通情報D1と第2交通情報D2とが双方とも表示情報として選択されない(S130,S140)。
【0058】
期間T0の終期にて第1交通情報D1と第2交通情報D2との少なくとも一方の受信が開始されると、第1交通情報D1と第2交通情報D2とのうちイベント数Nが大きい方を表示情報として選択する(S130,S160,S170,S180)。なお、第1イベント数N1と第2イベント数N2とが同数である場合には、第2交通情報D2を優先して表示情報とする。図3Bの例では、期間T0の終期にて第1イベント数N1よりも第2イベント数N2の方が大きく、第2交通情報D2が表示情報として選択される期間T1が開始する。
【0059】
期間T1にて第2交通情報D2が表示情報として選択される状態においては、第2イベント数N2が1個以上である場合に、引き続き第2交通情報D2が表示情報として選択される(S200,S170)。そして、第1イベント数N1が0個なく、かつ、第2イベント数N2が0個となった場合に、表示情報が第2交通情報D2から第1交通情報D1へと切り替えられる(S200,S180)。すなわち、第2イベント数N2が0個となったタイミングで、第2交通情報D2が表示情報として選択される期間T1が終了し、第1交通情報D1が表示情報として選択される期間T2が開始する。図3Aに示すように第1イベント数N1と第2イベント数N2とがそれぞれ221個と53個であり、第1イベント数N1が第2イベント数N2よりも大きい場合であっても、期間T1においては第2イベント数N2が0個とならない限り、第2交通情報D2のTPEG−TECに基づくイベント画像(図3A下図の破線矢印)を地図上に重畳して表示させる。例えば、期間T1にて車両C(進行方向は紙面右側)が次の交差点で右折しようとしていた場合に、右折先の道路についての事象"渋滞"を表すイベント画像が、第2交通情報D2のTPEG−TECに基づくイベント画像(図3A下図の破線矢印)から、第2交通情報D2よりも低精度の第1交通情報D1に基づくイベント画像(図3A上図の一点鎖線矢印)へと切り替えられることが防止できる。これにより、右折後の道路における渋滞が現実よりも軽度であるとの誤認識を防止できる。
【0060】
期間T2にて第1交通情報D1が表示情報として選択される状態においては、上述の期間T0と同様に、第1交通情報D1と第2交通情報D2とのうちイベント数が大きい方を表示情報として選択する(S130,S160,S170,S180)。また、第1イベント数N1と第2イベント数N2とが同数である場合には、第2交通情報D2を優先して表示情報とする。図3Bの例では、期間T2の終期において、第2イベント数N2が第1イベント数N1と同数となっており、第2交通情報D2が表示情報として選択される期間T3が開始する。
【0061】
(4)他の実施形態:
イベント数取得部120の機能により制御部11は、交通情報Dが示すイベントの個数をイベント数Nとして取得すればよく、交通情報Dの所定の箇所(例えばヘッダ等)に記述された目次情報が示すイベントの数Nを取得してもよい。また、イベント数取得部120の機能により制御部11は、第1交通情報D1と第2交通情報D2とが示すイベントのうちすべての領域のイベントについての第1イベント数N1と第2イベント数N2とを取得してもよい。例えば、ユーザが任意に地図をスクロールさせた場合等、ユーザI/F部42に表示される地図の位置が、交通情報受信手段を備えた車両Cの位置とは無関係の位置となる場合も考えられる。このような場合、交通情報受信手段を備えた車両Cが位置する領域内ではなく、ユーザI/F部42に表示される地図の位置を含む領域内のイベントのイベントについての第1イベント数N1と第2イベント数N2とを取得してもよい。さらに、交通情報受信手段が車両C以外のサーバ等に備えられる場合、交通情報受信手段が位置する領域と、ユーザI/F部42に表示される地図上の位置を含む領域とが一致しない場合が生じ得る。このような場合にも、交通情報受信手段を備えるサーバ等が位置する領域内ではなく、ユーザI/F部42に表示される地図の位置を含む領域内のイベントのイベントについての第1イベント数N1と第2イベント数N2とを取得すればよい。
【0062】
さらに、イベント数取得部120の機能により制御部11は、所定の領域内のイベントについてのイベント数Nではなく、ユーザI/F部42に表示される地図に対応する範囲内のイベントについてイベント数Nを取得してもよい。これにより、実際に表示される交通情報Dの情報の量に基づいて表示情報を選択できる。
【0063】
図4は、他の実施形態にかかる第1送信元P1と第2送信元P2とを示す図である。同図において、第1送信元P1は情報源からの情報に基づいて生成したVICS情報VDに基づいて第1交通情報D1を生成し、当該第1交通情報D1をFM放送により送信する。一方、第2送信元P2は第1送信元P1が生成したVICS情報VDを取得し、当該VICS情報VDを格納したTPEG−TECを含む第2交通情報D2を生成する。なお、TPEG−TECにおいては、VICS情報VDにおけるイベントの位置情報(VICSリンクで特定される位置情報)を格納することができる。さらに、第2送信元P2は、例えば前記実施形態のTPEGと同様にDAB等を用いて第2交通情報D2を送信する。
【0064】
以上の構成において、第1交通情報D1が示すイベントと、第2交通情報D2が含むTPEG−TECとは、ともにVICS情報VDが示すイベントとなり、互いに同一の種類となる。ナビゲーションシステム10の構成は前記実施形態と同様である。すなわち、以上説明した第1送信元P1と第2送信元P2とがそれぞれ送信した第1交通情報D1と第2交通情報D2に対してナビゲーションシステム10は前記実施形態と同様の処理を行う。このように第1送信元P1と第2送信元P2とで情報源が共通する場合でも、通信方式が異なれば第1交通情報D1と第2交通情報D2との受信状況も異なることとなるため、第1イベント数N1と第2イベント数N2とに基づいて表示情報を選択することが望ましい。
【符号の説明】
【0065】
1…交通情報配信システム、10…ナビゲーションシステム、11…制御部、12…記録媒体、12a…地図情報、41…GPS受信部、42…ユーザI/F部、43a…第1受信部、43b…第2受信部、100…ナビゲーションプログラム、110…交通情報受信部、120…イベント数取得部、130…表示情報選択部、140…表示制御部,…キャリア、C…車両、D(D1,D2)…交通情報、N(N1,N2)…イベント数、P(P1,P2)…送信元。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送信元が送信した第1交通情報と、前記第1送信元と異なる第2送信元が送信した前記第1交通情報よりも高精度の第2交通情報と、を受信する交通情報受信手段と、
前記第1交通情報が示すイベントの数である第1イベント数と、前記第2交通情報が示すイベントの数である第2イベント数とを取得するイベント数取得手段と、
前記第1交通情報と前記第2交通情報とのいずれかを表示情報として選択するとともに、前記第2交通情報が表示部に表示されている状態において前記第2イベント数が前記第1イベント数よりも少なくなった場合でも、前記第2イベント数が所定の下限数以上である場合には、前記第2交通情報を継続して前記表示情報として選択する表示情報選択手段と、
前記表示情報を地図上に重畳させて前記表示部に表示させる表示制御手段と、
を備える交通情報表示システム。
【請求項2】
前記表示情報選択手段は、前記第1交通情報が前記表示部に表示されている状態において、前記第2イベント数が前記第1イベント数以上となった場合に、前記第1交通情報から前記第2交通情報へと前記表示情報を切り替える、
請求項1に記載の交通情報表示システム。
【請求項3】
前記イベント数取得手段は、前記第1交通情報と前記第2交通情報とが示すイベントのうち同一の種類のイベントについての前記第1イベント数と前記第2イベント数とを取得する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の交通情報表示システム。
【請求項4】
前記イベント数取得手段、前記第1交通情報と前記第2交通情報とが示すイベントのうち現在の道路状況に関するイベントについての前記第1イベント数と前記第2イベント数とを取得する、
請求項3に記載の交通情報表示システム。
【請求項5】
前記イベント数取得手段は、前記第1交通情報と前記第2交通情報とが示すイベントのうち前記交通情報受信手段が位置する領域内のイベントについての前記第1イベント数と前記第2イベント数とを取得する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の交通情報表示システム。
【請求項6】
前記イベント数取得手段は、前記第1交通情報と前記第2交通情報とが示すイベントのうち前記表示部に表示された地図上の位置を含む領域内のイベントについての前記第1イベント数と前記第2イベント数とを取得する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の交通情報表示システム。
【請求項7】
前記交通情報受信手段は、RDS(Radio Data System)規格に準じた前記第1交通情報と、TPEG(Transport Protocol Experts Group)規格に準じた前記第2交通情報とを受信する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の交通情報表示システム。
【請求項8】
第1送信元が送信した第1交通情報と、前記第1送信元と異なる第2送信元が送信した前記第1交通情報よりも高精度の第2交通情報と、を受信する交通情報受信工程と、
前記第1交通情報が示すイベントの数である第1イベント数と、前記第2交通情報が示すイベントの数である第2イベント数とを取得するイベント数取得工程と、
前記第1交通情報と前記第2交通情報とのいずれかを表示情報として選択するとともに、前記第2交通情報が表示部に表示されている状態において前記第2イベント数が前記第1イベント数よりも少なくなった場合でも、前記第2イベント数が所定の下限数以上である場合には、前記第2交通情報を継続して前記表示情報として選択する表示情報選択工程と、
前記表示情報を地図上に重畳させて前記表示部に表示させる表示制御工程と、
を含む交通情報表示方法。
【請求項9】
第1送信元が送信した第1交通情報と、前記第1送信元と異なる第2送信元が送信した前記第1交通情報よりも高精度の第2交通情報と、を受信する交通情報受信機能と、
前記第1交通情報が示すイベントの数である第1イベント数と、前記第2交通情報が示すイベントの数である第2イベント数とを取得するイベント数取得機能と、
前記第1交通情報と前記第2交通情報とのいずれかを表示情報として選択するとともに、前記第2交通情報が表示部に表示されている状態において前記第2イベント数が前記第1イベント数よりも少なくなった場合でも、前記第2イベント数が所定の下限数以上である場合には、前記第2交通情報を継続して前記表示情報として選択する表示情報選択機能と、
前記表示情報を地図上に重畳させて前記表示部に表示させる表示制御機能と、
をコンピュータに実行させる交通情報表示プログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−44628(P2013−44628A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182254(P2011−182254)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】