説明

交通状況予測装置、方法及びプログラム、経路探索システム並びに交通状況提供システム

【課題】交通情報の提供を受けたドライバの判断を考慮して交通状況を高精度に予測する。
【解決手段】交通流シミュレーション部3は、OD交通量作成部1で作成された時間帯別のOD交通量と、交通環境作成部2で作成された交通環境データとに基づいて、交通流を予測する。ドライバ学習部4は、交通流シミュレーション上の各車両について、ノード単位毎に過去に通過した回数(ドライバの経験回数)xを出力する。交通状況提供部5は、交通流シミュレーション部3の予測結果をドライバに提供する。ドライバ判断部6は、ドライバ学習部4及び交通状況提供部5からの情報を用いて、ドライバの判断を考慮した旅行計画を作成する。OD交通量修正部7は、将来の交通需要である旅行計画から修正すべきOD交通量を修正する。交通流シミュレーション部3は、修正されたOD交通量を用いて再度交通流を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通状況予測装置、方法及びプログラム、経路探索システム並びに交通状況提供システムに係り、特に、交通情報を入手できるドライバの判断を考慮して交通状況を予測する交通状況予測装置、方法及びプログラム、経路探索システム並びに交通状況提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通状況を予測するものとして、広域道路ネットワークを対象とした交通流シミュレーションが提案されている(非特許文献1を参照。)。非特許文献1では、道路交通センサスやパーソントリップ調査といったアンケート調査、および1キロ平方メートル毎の人口分布に基づき、各ノード間のOD交通量を推定し、シミュレーションにより交通状況を予測している。
【0003】
このような道路交通センサスやパーソントリップ調査といったアンケート調査は、調査対象1日のみの需要データとして生成される。このため、交通流シミュレーション機能へ入力されるデータは固定値のままである。
【0004】
また、現在までの交通状況に基づいて将来の交通状況を予測する交通状況予測方法が提案されている(特許文献1を参照。)。特許文献1では、交通状況を予測するための最新のデータを収集し、収集されたデータを逐次時系列データとして蓄積し、収集された最新のデータを前記時系列データに付加して前記時系列データを更新し、前記更新された時系列データの最新値を予測値とし一定時間前の時系列データを当該時系列パターンとしたパターンセットを生成する。そして、時系列パターンを蓄積している時系列パターンテーブルを更新し、前記時系列パターンテーブルより、前記作成された最新の時系列データと同じパターンを持つパターンセット群中のパターンセットに保持されている予測値から交通状況の予測値を求めている。
【0005】
このように、特許文献1では、各リンクの日々の過去データより、渋滞状況の変化を時系列データとして捉え、統計的手法により予測を行っている。このような予測は過去データの数日分の交通変化に基づくものであり、例えば同じ曜日の平均値等をそのまま予測値としている。よって、交通情報や走行経験によるドライバの交通計画・行動の変化は反映されていない。
【非特許文献1】森、他2名、「広域道路ネットワークを対象とした交通流シミュレーションにおけるOD交通量のセントロイドへの割当てに関する検討」、第24回交通工学研究発表会論文報告集、pp.193−196、2004年10月
【特許文献1】特開2000−67363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、"交通状況は再現性がある"といわれている。このため、交通情報がない場合には、非特許文献1及び特許文献1に記載された技術によって、ある程度の交通状況の予測が可能であった。
【0007】
しかしながら、近年では、交通情報をリアルタイムで受信する情報受信車載器が急激に発達・普及しており、情報にかなり左右された交通変化が起きている。
【0008】
このため、非特許文献1及び特許文献1のような予測では、精度良く予測ができないし、交通情報によるドライバの変化が予測時点において反映されない問題がある。さらに、交通情報に対してどの程度信頼するかはドライバの走行経験によって異なるため、交通情報だけでなくドライバの走行経験も考慮した交通状況予測が必要である。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、交通情報の提供を受けたドライバの判断を考慮して交通状況を高精度に予測する交通状況予測装置、方法及びプログラム、経路探索システム並びに交通状況提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る交通状況予測装置は、所定区間毎のOD交通量と交通環境データとに基づいて前記交通環境データで生成される道路ネットワーク範囲の交通流を予測する前記交通流予測手段と、前記交通流予測手段により予測された交通流と、ドライバの所定区間毎の経験と、に基づいて、前記予測された交通流の情報を提供されたドライバの旅行計画を作成する旅行計画作成手段と、前記旅行計画作成手段により作成された旅行計画に基づいて所定区間のOD交通量を修正するOD交通量修正手段と、を備え、前記交通流予測手段は、前記OD交通量修正手段により修正されたOD交通量を更に用いて交通流を予測することを特徴とする。
【0011】
交通流予測手段は、所定区間毎のOD交通量と交通環境データとに基づいて道路ネットワーク範囲の交通流を予測する。ここで、予測対象となる起点及び終点は、それぞれ1つに限らず複数であってもよい。
【0012】
ここで、ドライバは、走行経験がない区間を走行する場合は、提供された情報をそのまま信頼する傾向があるが、走行経験がある区間を走行する場合は、提供された情報をそのまま信頼しないことがある。そこで、このようなドライバの判断を考慮すべく、旅行計画作成手段は、予測された交通流と、ドライバの所定区間毎の経験と、に基づいて、予測された交通流の情報を提供されたドライバの旅行計画を作成する。
【0013】
OD交通量修正手段は、旅行計画作成手段により作成された旅行計画に基づいて所定区間のOD交通量を修正する。そして、交通流予測手段は、OD交通量修正手段により修正されたOD交通量を更に用いて交通流を予測する。
【0014】
したがって、上記発明は、予測された交通流とドライバの所定区間毎の経験とに基づいて予測された交通流の情報を提供されたドライバの旅行計画を作成し、作成された旅行計画に基づいて所定区間のOD交通量を修正し、修正されたOD交通量を更に用いて交通流を予測することにより、交通情報の提供を受けたドライバの判断を考慮して交通状況を高精度に予測することできる。
【0015】
また、本発明に係る経路探索システムは、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の交通状況予測装置と、前記交通状況予測装置で予測された交通流の情報を送信する送信手段と、を備えた交通情報提供装置と、前記交通状況予測装置から送信された交通流の情報を受信する受信手段と、前記受信手段で受信された交通流の情報に基づいて現地点から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、経路探索手段で探索された経路を表示する表示手段と、を備えた経路探索装置と、を有している。
【0016】
交通情報提供装置は、交通情報の提供を受けたドライバの判断を考慮して交通流を予測し、その情報である交通情報を経路探索装置に送信する。そして、経路探索装置は、交通状況予測装置から送信された交通流の情報を用いて、現地点から目的地までの経路を探索する。
【0017】
したがって、上記発明は、交通情報の提供を受けたドライバの判断を考慮して予測された交通流の情報を受信し、受信された交通流の情報に基づいて現地点から目的地までの経路を探索し、探索された経路を表示することにより、将来の交通需要を考慮して最適な経路を探索することができる。
【0018】
なお、本発明は、交通状況予測方法及びプログラムにも適用可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、交通情報の提供を受けたドライバの判断を考慮して交通状況を高精度に予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
本発明の実施の形態に係る交通状況予測装置は、図1に示すように、OD交通量を作成するOD交通量作成部1と、交通環境を作成する交通環境作成部2と、交通流をシミュレートする交通流シミュレーション部3と、ドライバの経験を学習するドライバ学習部4と、交通状況をドライバに提供する交通状況提供部5と、旅行計画を作成するドライバ判断部6と、OD交通量を修正するOD交通量修正部7と、を備えている。
【0022】
以上のように構成された交通状況予測装置は、次の処理を行うことによって、道路ネットワーク範囲の交通流を予測する。
【0023】
OD交通量作成部1は、旅行に関するアンケート調査結果や実測交通調査結果(例えば道路交通センサス)に基づき、シミュレーションに必要なノード単位毎にOD交通量(OD:Origin-Destinationの略;出発地から目的地までの単位時間当たりの交通量)を作成する。
【0024】
道路交通センサス等の入手可能な既存OD表は、現在、時間的には1日単位で、地域的には区町単位で集計された粗いOD交通量データである。このため、既存OD表を時間帯および地域で分割する必要がある。そこで、OD交通量作成部1は、図2に示すように、ステップ1以下のOD交通量作成ルーチンを実行する。
【0025】
ステップS1では、OD交通量作成部1は、道路交通センサスBゾーン間OD表を、基本マスターデータ(集計前の個別調査データ)に基づき時間帯分割する。
【0026】
始めに、シミュレーション対象地域を中心とする広い範囲の道路ネットワークを対象とした日単位OD交通量データを、時間帯別OD交通量に分割する。ここでは、旅行目的別の発生時間パターンに基づいて、時間帯分割を行う。なお、旅行目的別の発生時間パターンは、図3に示すように、通勤・登校、自由、業務、帰宅の4種類の旅行目的毎に、基本マスターデータに含まれている旅行目的データ及び出発時間データより推定される。この結果、道路交通センサスBゾーン間OD表(広域)から時間帯別OD表(広域)が得られる。
【0027】
ところで、シミュレーション対象地域を走行する交通には、シミュレーション対象地域内を移動する交通(内々交通)の他に、シミュレーション対象地域内と地域外を出入りする交通(内外交通、外内交通)および地域内を通過する交通(通過交通)が含まれる。
【0028】
そこで、ステップS2では、OD交通量作成部1は、まずシミュレーション対象地域を中心とする広い範囲の道路ネットワークを対象として交通量配分計算を行う。そして、シミュレーション対象地域の境界線(コードンライン)上を通過する交通量を推計し、コードンライン上の境界ノードを起点及び終点とするOD交通量として取り扱う。この結果、時間帯別OD表(広域)から時間帯別OD表(対象地域)が得られる。
【0029】
ステップS3では、OD交通量作成部1は、図4に示す発生集中指標と、1kmメッシュの各人口分布とに基づき、メッシュ間OD表に地域分割する。ここでは、更に土地利用データを用いて1kmメッシュ以下の地域に分割可能である。例えば、メッシュ内で住宅地と大学とが道路等により境界を設定することが可能な場合、その境界線でメッシュを分割する。そして、交通量は、学生数や通勤通学の時間帯分布に基づき推定する。この結果、1kmメッシュ以下の地域に分割された時間帯ノード間OD表が得られる。
【0030】
ステップS4では、OD交通量作成部1は、起点及び終点をメッシュの代表ノードにそれぞれ割当てることによって、シミュレーションに必要なノード単位のOD交通量データを得る。なお、このようなOD交通量データの作成については、非特許文献1に開示されている。
【0031】
交通環境作成部2は、地図データや信号データに基づき交通流シミュレーション部3の入力フォーマットに合わせて交通環境データ(例えば、リンク、ノード、信号の有無・現示など)を作成する。
【0032】
交通流シミュレーション部3は、OD交通量作成部1で作成された時間帯別のOD交通量と、交通環境作成部2で作成された交通環境データとに基づいて、起点から終点まで、時間の経過に伴う道路ネットワーク上の交通流を1秒毎に計算し、各車両の走行経路および旅行時間、さらに各道路の交通量および渋滞長を算出する。
【0033】
シミュレーションモデルは、図5に示すように、スキャニングインターバル(=1秒)ごとに車両を移動させる交通流モデルと、個々の車両の経路選択を行う経路選択モデルと、から構成される。交通流モデルは、経路選択モデルで確率的に選択された各車両の経路に従って、車両をネットワーク上で移動させ、各リンクの旅行時間を計算し出力する。一方、経路選択モデルは交通流モデルで求めたリンク旅行時間を基に各車両の経路選択率を決定し、車両発生時に個々の車両に走行経路を与える。
【0034】
ドライバ学習部4は、交通流シミュレーション部3で走行したシミュレーション上の各車両について、出発地−目的地、旅行目的、出発時間毎に、渋滞状況や所要時間を集計する。そして、「○○から△△までにいく場合に、○時頃に出発すると渋滞に巻き込まれ、□時頃がすいている。」というドライバの経験を出力する。なお、ドライバの経験は、人間の持つ曖昧さを表現するために誤差を含めても良い。また、ドライバ学習部4は、交通流シミュレーション上の各車両について、ノード単位毎に過去に通過した回数(ドライバの経験回数)xを出力する。
【0035】
交通状況提供部5は、シミュレーションした交通状況をドライバに対して提供するために用いられるものであり、例えば、ディスプレイ、スピーカの他に、交通状況を蓄積するためのハードディスクドライブも含まれる。交通状況提供部5は、交通流シミュレーション部3の出力に基づき、地図上に渋滞箇所を色で表示したり、主要な出発地−目的地の所要時間をデータベース化したり、ドライバに提示する。また、交通状況提供部5は、各ドライバのニーズに応じて所要時間や渋滞等の交通情報を選択して提供することもできる。
【0036】
ドライバ判断部6は、交通状況提供部5から提供された交通情報と、ドライバ学習部4からのドライバの経験回数と、に基づいて旅行計画を作成する。本実施形態では、旅行計画として出発時刻Tを挙げて説明する
ここで、旅行計画は、例えば図6に示すように、旅行目的によって、重視する項目(出発時刻、到着時刻、所要時間のいずれか)が異なる。例えば、通勤目的の旅行のときは到着時刻を重視し、自由(日常)目的のときの旅行は出発時刻を重視する。また、自由(非日常:行楽等)目的の旅行は所要時間を重視する。
【0037】
以下に重要項目に応じた出発時刻の算出式を示す。(式1)は出発時刻重視、(式2)到着時刻重視、(式3)は所要時間重視の場合である。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、
sBase :ドライバの基準出発時刻
gBase :ドライバの基準到着時刻
Base(T) :時刻Tに出発した場合のドライバの基準所要時間
(T) :時刻Tに出発した場合の情報提供された所要時間
x :ドライバの経験回数
R(x) :経験に対する情報信頼度
P(i,R(x)):情報iおよび情報信頼度R(x)による行動変化率
α :パラメータ
である。よって、ドライバ判断部6は、例えば自由(日常)目的又は帰宅目的の旅行のときは(式1)、通勤(登校)目的又は業務目的の旅行のときは(式2)、自由(非日常)目的の旅行のときは(式3)を用いるとよい。
【0040】
なお、TsBase、TgBase、fBase(T)、f(T)は、交通流シミュレーション部3で使用され、交通状況提供部5を介して提供された情報である。xは、ドライバ学習部4から提供された情報である。情報iは、交通状況提供部5によってドライバに提供された情報の内容をいい、例えば、渋滞情報、所要時間情報などが該当する。また、R(x)及びP(i,R(x))の特性は、予めドライバ判断部6に記憶されている。
【0041】
経験に対する情報信頼度R(x)は、交通状況提供部5によって提供された交通情報をドライバがどの程度信頼するかの度合いを表す。よって、経験回数xが少ないときはR(x)の値は大きいが、経験回数xが多くなるとR(x)の値は小さくなる。
【0042】
また、R(x)は、経験回数xが同一であっても、ドライバが異なれば異なる値になる。さらに、R(x)は、経験回数x及びドライバが同一であっても、ドライバが重視する内容(ドライバの目的)によって異なる値になる。
【0043】
そこで、ドライバ判断部6には、例えば図7(a)に示すように、ドライバ(本実施形態ではドライバA、B、C)毎に異なるR(x)が記憶されている。さらに、ドライバ判断部6には、例えば図7(b)に示すように、同一ドライバの重視する内容毎に異なるR(x)が記憶されている。図7(b)において、R(x)は出発時刻重視、R(x)は到着時刻重視、Rsg(x)は所要時間重視を示している。
【0044】
さらに、ドライバ判断部6には、図8に示すように、情報i、情報信頼度R(x)、行動変化率P(i,R(x))の関係を示す3次元マップが記憶されている。行動変化率P(i,R(x))は、情報iおよび情報信頼度R(x)により行動が変化する割合を示す。それらの関係は,図8の3次元マップに示すように、一般に、情報iが大きいほど、情報信頼度R(x)が大きいほど、行動変化率P(i,R(x))は大きくなる。3次元マップの形状や値は、ドライバ毎、トリップ目的毎に異なる。情報iとは、旅行経路と同種別の道路(あるいは、日常的に通行している場合は特定区間)の渋滞長や所要時間を指す。
【0045】
図8の情報iを渋滞長(km)と仮定する。渋滞長が短い場合は、情報信頼度R(x)が高くても行動変化率P(i,R(x))は0に近い。渋滞長が長い場合は、情報信頼度R(x)が低ければ行動変化率P(i,R(x))は小さく、情報信頼度R(x)が高くなるほど、行動変化率行動変化率P(i,R(x))も大きくなる。なお、情報iは、渋滞長や旅行時間に限らず、交通量や車両密度など他の指標でもよいし、それらの組合せや合計量(数)でも良い。
【0046】
このように構成されたドライバ判断部6は、ドライバ学習部4及び交通状況提供部5からそれぞれ所定の情報が提供されると、最初に、経験回数x、ドライバ、そのドライバが重視する内容に対する情報信頼度R(x)を求め、次に、3次元マップを参照して情報i及び情報信頼度R(x)による行動変化率P(i,R(x))を求める。最後に、例えば(式1)に従って出発時刻Tを演算する。
【0047】
なお、出発時刻、到着時刻、所要時間のどれを重要するかは、旅行目的以外でも、ドライバの個人差や性格等、様々な要因によって異なる。また、どれか1つを重視するのではなく例えば出発時刻および所要時間の2つを重視する場合もある。このため、(式1)〜(式3)の算出する方法を組み合わせてもよい。例えば、ドライバ判断部6は、(式1)〜(式3)をそれぞれ演算し、重視する内容に応じて(式1)〜(式3)の演算結果にそれぞれ重み付けをして、出発時刻Tを求めてもよい。
【0048】
OD交通量修正部7は、ドライバ判断部6が出力した旅行計画を各出発地から各目的地までの単位時間当たりの交通量(OD交通量)として集計し、将来の交通需要を予測する。そして、修正が必要なノードのOD交通量を修正して、修正したOD交通量を交通流シミュレーション部3に供給する。交通流シミュレーション部3は、OD交通量修正部7で修正されたOD交通量を更に用いて交通流を予測する。これにより、交通流シミュレーション部3は、将来の交通需要であるドライバの旅行計画を反映して交通流をシミュレーションできる。
【0049】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る交通状況予測装置は、OD交通量を入力して1日分の時々刻々と変化する交通流をシミュレーションし、シミュレーション結果やドライバの走行経験に基づいて将来の交通需要であるドライバの旅行計画を作成する。そして、このような将来の交通需要からOD交通量を修正して、修正したOD交通量を交通流シミュレーションの入力データとする。交通状況予測装置は、このような処理を繰り返すことにより、交通状況やドライバの走行経験を考慮した交通状況予測が可能になり、交通状況をより精度良く予測できる。
【0050】
特に、上記交通状況予測装置は、シミュレーション結果やドライバの走行経験に基づきドライバの情報信頼度、更に行動変化率を演算して旅行計画を作成するので、交通情報を入手できるドライバの判断を考慮しながら交通流を高精度に予測することができる。
【0051】
[第2の実施形態]
つぎに、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
第2の実施形態に係るナビゲーションシステムは、図9に示すように、例えば交通情報センターに設置された交通情報提供装置10と、交通情報提供装置10から提供された交通情報を用いて現在地から目的地までの経路を案内するナビゲーション装置20と、を備えている。
【0053】
交通情報提供装置10は、交通状況を予測し、その予測結果を含む交通情報をドライバに提供するものである。交通情報提供装置10は、図1に示した交通状況予測装置の構成に、データ通信部8を更に備えたものである。
【0054】
データ通信部8は、交通状況提供部5からの交通状況(例えば渋滞情報など)を、アンテナ8aを介してナビゲーション装置20に送信する。また、データ通信部8は、アンテナ8aを介して、各車両のナビゲーション装置20から送信されたドライバ情報を受信し、そのドライバ情報をドライバ判断部6に供給する。
【0055】
ナビゲーション装置20は、例えば車両に搭載されており、交通情報提供装置10との間でアンテナ21aを介してデータ通信を行うデータ通信部21と、データ通信部21と後述の経路探索部23との間でデータの入出力を行う入出力(I/O)部22と、現在地から目的地までの経路を探索する経路探索部23と、探索結果を表示するナビゲーション表示部24と、データ通信部21で受信された情報や交通情報提供装置10に送信すべきドライバ情報を記憶するデータベース25と、を備えている。
【0056】
以上のように構成されたナビゲーションシステムは、次のような処理を実行する。
【0057】
交通情報提供装置10は、第1の実施形態の交通状況予測装置と同様に、OD交通量及び交通環境データに基づき、1日分の交通状況をタイムステップ毎に予測する。交通情報提供装置10は、さらに、予測結果に基づくドライバの経験及び交通情報から旅行計画を推定し、旅行計画からOD交通量を修正し、修正したOD交通量を用いて再び交通状況を予測する。このような処理を繰り返して、日々の交通状況を予測する。
【0058】
一方、ナビゲーション装置20は、交通情報センターの交通情報提供装置10に対して、ドライバの情報(例えば、過去の走行実績、現在地や目的地等の今後の計画など)を送信する。
【0059】
交通情報提供装置10は、ナビゲーション装置20からのドライバの情報に基づいて必要な日時や道路ネットワークの交通情報を絞り込み、必要な予測交通状況をナビゲーション装置20に送信する。この結果、ナビゲーション装置20は、交通情報提供装置10から送信された予測交通状況を用いて、現地点から目的地までの最適な経路を探索し、ドライバを目的地まで案内することができる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計上の変更をされたものにも適用可能であるのは勿論である。
【0061】
例えば第2の実施形態では、交通情報提供装置10がドライバの判断を考慮して交通状況を予測したが、ナビゲーション装置20がドライバの判断を考慮して交通状況を予測してもよい。すなわち、ナビゲーション装置20は、図1に示した交通状況予測装置の構成を備えてもよい。
【0062】
また、ナビゲーション装置20は、車両に搭載されているものとして説明したが、これに限定されず、家庭用情報端末や携帯電話に搭載されてもよい。
【0063】
また、予測可能な交通状況としては、渋滞状況や目的地までの所要時間に限らず、交通量、車両占有率、渋滞長などであってもよいのは勿論である。また、第2の実施形態では、ナビゲーション装置20は、交通情報提供装置10から送信された予測交通状況を用いて、現地点から目的地までの最適な経路を探索したが、最適な経路を探索することなく予測交通状況をそのままナビゲーション表示部24に表示することによって、交通情報表示装置として機能することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る交通状況予測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】交通状況予測装置のOD交通量作成部のOD交通量作成ルーチンを示す図である。
【図3】目的別時間変動パターンを示す図である。
【図4】目的別発生・集中指標を示す図である。
【図5】シミュレーションモデルの構成を示す図である。
【図6】旅行計画時の重点項目を示す図である。
【図7】(a)はドライバの個人差による情報信頼度、(b)は同一ドライバの重視内容の違いによる情報信頼度を示す図である。
【図8】情報i、情報信頼度R(x)、行動変化率P(i,R(x))の関係を示す3次元マップを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0065】
1 OD交通量作成部
2 交通環境作成部
3 交通流シミュレーション部
4 ドライバ学習部
5 交通状況提供部
6 ドライバ判断部
7 OD交通量修正部
8 データ通信部
10 交通情報提供装置
20 ナビゲーション装置
21 データ通信部
22 入出力部
23 経路探索部
24 ナビゲーション表示部
25 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定区間毎のOD交通量と交通環境データとに基づいて前記交通環境データで生成される道路ネットワーク範囲の交通流を予測する交通流予測手段と、
前記交通流予測手段により予測された交通流と、ドライバの所定区間毎の経験と、に基づいて、前記予測された交通流の情報を提供されたドライバの旅行計画を作成する旅行計画作成手段と、
前記旅行計画作成手段により作成された旅行計画に基づいて所定区間のOD交通量を修正するOD交通量修正手段と、を備え、
前記交通流予測手段は、前記OD交通量修正手段により修正されたOD交通量を更に用いて交通流を予測すること
を特徴とする交通状況予測装置。
【請求項2】
1日単位及び地域分割のOD交通量データを旅行目的毎に時間帯分割し、土地利用データおよびメッシュ単位の人口分布データに基づきメッシュ単位以下の地域に分割し、起点および終点を分割後の代表ノードに割り当てることによって前記OD交通量を作成するOD交通量作成手段を更に備えた
請求項1に記載の交通状況予測装置。
【請求項3】
前記旅行計画作成手段は、前記予測された交通流の情報に対する前記ドライバの信頼度を演算し、前記ドライバの信頼度に基づいて前記ドライバの旅行計画を作成する
請求項1または請求項2に記載の交通状況予測装置。
【請求項4】
前記旅行計画作成手段は、前記予測された交通流の情報と前記ドライバの信頼度とに対応付けられた行動変化率を演算し、前記行動変化率を用いて前記ドライバの旅行計画を作成する
請求項3に記載の交通状況予測装置。
【請求項5】
前記旅行計画作成手段は、ドライバ個人、ドライバの重視する内容の少なくとも1つに応じた旅行計画を作成する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の交通状況予測装置。
【請求項6】
所定区間毎のOD交通量と交通環境データとに基づいて前記交通環境データで生成される道路ネットワーク範囲の交通流を予測し、
前記予測された交通流と、ドライバの所定区間毎の経験と、に基づいて、前記予測された交通流の情報を提供されたドライバの旅行計画を作成し、
前記作成された旅行計画に基づいて所定区間のOD交通量を修正し、
前記修正されたOD交通量を更に用いて、道路ネットワーク範囲の交通流を予測する
交通状況予測方法。
【請求項7】
コンピュータに、
所定区間毎のOD交通量と交通環境データとに基づいて前記交通環境データで生成される道路ネットワーク範囲の交通流を予測させ、
前記予測された交通流と、ドライバの所定区間毎の経験と、に基づいて、前記予測された交通流の情報を提供されたドライバの旅行計画を作成させ、
前記作成された旅行計画に基づいて所定区間のOD交通量を修正させ、
前記修正されたOD交通量を更に用いて、道路ネットワーク範囲の交通流を予測させる
交通状況予測プログラム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の交通状況予測装置と、前記交通状況予測装置で予測された交通流の情報を送信する送信手段と、を備えた交通情報提供装置と、
前記交通状況予測装置から送信された交通流の情報を受信する受信手段と、前記受信手段で受信された交通流の情報に基づいて現地点から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、経路探索手段で探索された経路を表示する表示手段と、を備えた経路探索装置と、
を有する経路探索システム。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の交通状況予測装置と、前記交通状況予測装置で予測された交通流の情報に基づいて現地点から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、経路探索手段で探索された経路を表示する表示手段と、を備えた経路探索装置と、
を有する経路探索システム。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の交通状況予測装置と、前記交通状況予測装置で予測された交通流の情報を送信する送信手段と、を備えた交通情報提供装置と、
前記交通状況予測装置から送信された交通流の情報を受信する受信手段と、前記受信手段で受信された交通流の情報を表示する表示手段と、を備えた交通情報表示装置と、
を有する交通状況提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−164262(P2007−164262A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356254(P2005−356254)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】