説明

人体検知装置及び制御装置

【課題】一つのセンサで人体の位置及び状態を検知することができる人体検知装置を提供する。
【解決手段】 マイクロ波センサ11から出力される、人体の位置で強度の異なる周波数信号を、可変ハイパスフィルタ13、コンパレータ14、カウンタ15、ラッチ17、制御部21等で処理し、得られた情報に基づき、制御部21は、便蓋開閉装置22等に所定の制御信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の位置と状態を検知する人体検知装置と、該人体検知装置を用いた制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ設備の自動化に伴って、トイレ(化粧室;洗面所)内での人間の位置や状態を適切に判別することが望まれている。従来、人体の位置を検知するための装置として、赤外光を利用した測距センサや、焦電型熱式センサが用いられている。
【0003】
しかし、赤外光を利用したセンサは、センサ部分の汚れによる影響を受けやすいという問題点がある。また、測距センサを用いる場合、一つのセンサでの距離測定範囲が限定されるため、複数個のセンサが必要となるという問題点がある。一方、焦電型熱式センサを用いる場合、焦電型熱式センサは人体の動きのみを検知するため、例えば測距センサといった他の種類のセンサと併用しなければならない問題点がある。
【0004】
そこで、マイクロ波センサを利用した人体検知装置が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示されている装置は、2カ所に設けられたマイクロ波センサから得られる信号を利用し、人体の位置を検知するものである。センサにマイクロ波を利用することによって、センサ部分の汚れによる影響を除去することができる。
【特許文献1】特開2001−343466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、三角測量の原理に基づいて利用者の位置を特定しているため、複数のセンサが必要となる。複数のセンサを用いると、一つでも誤作動又は故障すると装置が正しく機能しない。また、複数のセンサの調整が煩雑であり、いずれかのセンサの向きがずれると全体としての測定値に大きな誤差が生ずる。このため、便蓋の開閉、洗浄のタイミングがずれる等の問題が発生する。
【0006】
同様の問題は、トイレのシステムに限らず人間・物体の位置や状態を検出して検出位置・状態に応じて様々な制御を行う場合に共通に存在する。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、一つのセンサで、人体の位置及び状態を検知することができる人体検知装置を提供することを目的とする。本発明は特にトイレ内において人体の位置及び状態を適切に検知し、各制御対象への制御信号を適切に出力しうる制御装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る人体検知装置は、
人体の位置と状態を検知するための人体検知装置であって、
人体に動きがあるときに、その位置に応じた強度の周波数信号を出力するセンサと、
前記周波数信号の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、
前記周波数信号の周波数成分を弁別する周波数弁別手段と、
前記信号レベル検出手段が検出した前記信号レベルと前記周波数弁別手段により弁別された前記周波数成分とに基づいて、人体の位置と状態とを判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
例えば、前記センサは、ドップラセンサから構成される。
【0010】
例えば、前記信号レベル検出手段と前記周波数弁別手段とは、所定周波数成分の信号が通過するフィルタと、前記フィルタを通過した信号の強度を判別する強度判別手段と、前記強度判別手段が判別した前記信号の強度に基づいて、前記フィルタを通過する周波数成分を切り替える切り替え手段と、を備える。
【0011】
例えば、前記切り替え手段は、前記信号レベル検出手段により検出された信号レベルに対応する位置で予定される人体の動作に対応する前記周波数成分が通過するように、前記フィルタを通過する周波数成分を切り替える。
【0012】
また、例えば、前記信号レベル検出手段は、互いに異なる基準レベルが与えられ、前記信号レベルと前記各基準レベルとを比較し、その比較結果を示す信号を出力する複数のコンパレータから構成され、前記周波数弁別手段は、前記センサからの周波数信号を弁別して前記複数のコンパレータの少なくとも1つに供給するフィルタから構成される、
【0013】
前記人体検知装置は、例えば、トイレにおける利用者の位置と状態を検知する装置である。この場合、前記信号レベル判別手段には、トイレにおける利用者の男子小用位置、着座位置に対応する少なくとも2つの信号レベルを判別し、前記周波数弁別手段は、前記各位置において予定される動作に対応する周波数成分を弁別する。
【0014】
人体が実質的に一次元方向にのみ移動可能な空間を規定する手段を更に配置し、前記センサは前記空間内の人体の移動方向にほぼ平行な方向での人体の位置に応じた周波数信号を出力する、ように構成してもよい。
【0015】
上記の人体検知装置と、前記人体検知装置の前記判別手段の出力に従って電子機器に制御信号を出力する制御手段と、から制御装置を構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一つのセンサで、人体の位置及び状態を検知することができる人体検知装置を提供することができる。本発明によれば、特にトイレ内において人体の位置及び状態を適切に検知し、各制御対象への制御信号を適切に出力しうる制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る人体検知装置10について、人体検知装置10をトイレシステムに応用した場合を例に挙げて説明する。
【0018】
人体検知装置10は、図1に示すように、マイクロ波センサ11と、アンプ12a、12bと、可変ハイパスフィルタ13と、コンパレータ14a〜14cと、カウンタ15a、15bと、OR回路16と、ラッチ(状態判定部)17a、17bと、制御部21と、から構成される。
【0019】
マイクロ波センサ(マイクロ波ドップラセンサ)11は、利用者が、図2に平面で示す配置の化粧室52に、ドア51を開けて、線a付近から進入し線d付近で着座するまで、及び、線d付近で着座している状態からドア51を開けて退室するまでの利用者の動きを検出するためのものである。
【0020】
マイクロ波センサ11は、例えば、図3に示すように、信号源111、パッチアンテナ112、分波器113、ミキサ114、検波回路115等から構成される。
パッチアンテナ112は、例えば、図2に示す化粧室52内の貯水タンク54の壁面(表でも裏でもよい)に入口方向を向いて取り付けられている。即ち、化粧室52内は比較的狭いため、利用者の動きは、ほぼ入口と便器53との間の一次元方向の動きとなるが、パッチアンテナ112はその指向方向が利用者の動線にほぼ平行で且つ動線上にマイクロ波を放射するように設置される。なお、他の部材は、パッチアンテナ112と一体に構成されていてもよいし、便座等他の箇所に設置されていてパッチアンテナ112に信号線を介して接続されていてもよい。
【0021】
信号源111から出力されたマイクロ波は、例えば、無変調で10GHzのキャリア信号であり、分波器113及びパッチアンテナ112を介して、化粧室52の入口方向に向けて放射される。放射されたマイクロ波は、任意の物体で反射して、パッチアンテナ112に到達する。反射したマイクロ波(以下、反射波)は、パッチアンテナ112で受信され、ミキサ114に入力される。ミキサ114は、反射波と放射マイクロ波とを混合し、それら周波数の差分に相当する周波数の信号を出力する。ミキサ114から出力された信号は、検波回路115に供給され、検波され、例えば、数Hz〜数十Hzの信号に変換されて、アンプ12a、12bに出力される。
【0022】
マイクロ波を反射した物体が移動している場合には、ドップラ効果によって、移動速度に応じて反射波の周波数がシフトする。このため、化粧室52内に動きがない場合には、ミキサ114の出力は0レベルとなり、一方、化粧室52内で利用者が移動したり動作したりすると、ミキサ114から信号が出力される。ミキサ114から出力される信号の強度は、反射波の強度に対応する。従って、一般に、利用者が、パッチアンテナ112が固定されている貯水タンク54に近い位置にいる程大きくなり、貯水タンク54から遠ざかってドア51に近づく程小さくなる。
【0023】
アンプ12aは、100倍程度の増幅率を有し、利用者がマイクロ波センサ11から比較的遠い場所にいるときにマイクロ波センサ11から出力された信号を以降の回路で処理できるレベルに増幅する。
アンプ12bは、10倍程度の増幅率を有し、利用者がマイクロ波センサ11から比較的近い場所にいる(例えば、便座に座っている)ときにマイクロ波センサ11から出力された信号を以降の回路で処理できるレベルに増幅する。
【0024】
可変ハイパスフィルタ13は、外部信号によりカットオフ周波数を変更できるハイパスフィルタである。可変ハイパスフィルタ13は、制御端子に供給される制御信号に応じて、カットオフ周波数を10Hzと6.6Hzと0.66Hzとの間で切り換える。即ち、可変ハイパスフィルタ13は、通常時は、そのカットオフ周波数を10Hzに設定し、状態判定部17aの出力信号(進入検出信号)がHレベルになると、カットオフ周波数を0.66Hzに設定し、状態判定部17bの出力信号(着座検出信号)がHレベルになると、カットオフ周波数を6.6Hzに設定する。
なお、10Hzは、10GHzのマイクロ波に対して、一般的な歩行速度(15cm/秒)を基準として設定され、6.6Hzは、10GHzのマイクロ波に対して、着座位置から立ち上がるときの速度(10cm/秒)を基準として設定され、0.66Hzは、10GHzのマイクロ波に対して、微動(1.0cm/秒)を基準として設定されている。
【0025】
コンパレータ14aは、アンプ12aで増幅され、可変ハイパスフィルタ13を通過した信号の信号レベルが、反転入力端子(−)に供給される基準レベルVaを超える場合にH(ハイ;High)レベルの信号を、超えない場合にL(ロー;Low)レベルの信号を出力する。
【0026】
コンパレータ14bは、アンプ12aで増幅され、可変ハイパスフィルタ13を通過した信号の信号レベルが、反転入力端子(−)に供給される基準レベルVbを超える場合にH(ハイ;High)レベルの信号を、超えない場合にL(ロー;Low)レベルの信号を出力する。
【0027】
コンパレータ14cは、アンプ12bで増幅された信号の信号レベルが、反転入力端子(−)に供給される基準レベルVcを超える場合にH(ハイ;High)レベルの信号を、超えない場合にL(ロー;Low)レベルの信号を出力する。
【0028】
図4(a)に示すように、基準レベルVa〜Vcは、それぞれ、増幅前のマイクロ波センサ11の出力する信号を基準にして考えると、Vc>Vb>Vaが成立するレベル関係に設定されている。
【0029】
基準レベルVaは、利用者が図2に示す化粧室52に入室して、移動又は何らかの動作をしていることを検出可能なレベルに設定され、図4(b)に示すように、増幅されたドップラ検出信号が基準レベルVaを超えている際に、Hレベルとなる信号を出力する。従って、コンパレータ14aは、一般に、利用者が、図2に示す化粧室52の線a―b間で移動(歩行)するとき、線b―c間で移動(歩行)するとき、線c―d間で移動(歩行)するとき、さらに、着座・離座動作を行っているときに、パルス信号を出力する。
【0030】
基準レベルVbは、利用者が図2に示す化粧室52内の線a―b間で移動又は動作をしていることを検出することはできないが、利用者が化粧室52内の線b―c間で移動又は動作をしていることを検出可能なレベルに設定され、図4(c)に示すように、増幅されたドップラ検出信号が基準レベルVaを超えている際に、Hレベルとなる信号を出力する。従って、コンパレータ14bは、一般に、利用者が、図2に示す化粧室52の線bの付近で移動(歩行)するとき、線cの付近まで移動(歩行)するとき、さらに、着座・離座動作を行っているときに、パルス信号を出力する。
【0031】
基準レベルVcは、利用者が図2に示す化粧室52内の線d付近で移動又は動作をしていることのみを検出可能なレベルに設定され、図4(d)に示すように、増幅されたドップラ検出信号が基準レベルVcを超えている際に、Hレベルとなる信号を出力する。従って、コンパレータ14bは、利用者が、便座に着座・離座動作を行っているときに、パルス信号を出力する。
【0032】
なお、コンパレータ14a〜14cは、便蓋の開閉に伴う動きを人間の動作と誤検知することを避けるため、便蓋が開閉動作中であることを示す便蓋開閉動作中信号(開閉モータオン信号)により出力が禁止され、Lレベルを維持する。
【0033】
カウンタ15aは、コンパレータ14aの出力するHレベルの数をカウントし、所定数(例えば、3)カウントするとHレベルの信号を出力する。即ち、カウンタ15aは、可変ハイパスフィルタ13の出力信号のピークが基準レベルVbレベル以上の状態が一定時間継続したか否かを判別する。また、カウンタ15aは、コンパレータ14bの出力がHレベルとなることで、リセットされる。
【0034】
カウンタ15bは、コンパレータ14bの出力するHレベルの数をカウントし、所定数(例えば、3)カウントするとHレベルの信号を出力する。即ち、カウンタ15bは、可変ハイパスフィルタ13の出力信号のピークが基準レベルVbレベル以上の状態が一定時間継続したか否かを判別する。また、カウンタ15bは、コンパレータ14cの出力がHレベルとなることで、リセットされる。
【0035】
カウンタ15aは、コンパレータ14bの出力がリセット端子に供給されているため、マイクロ波センサ11の出力信号が基準レベルVbを周期的に超えている期間は、Hレベル信号を出力しない。また、カウンタ15bは、コンパレータ14cの出力がリセット端子に供給されているため、マイクロ波センサ11の出力信号が基準レベルVcを周期的に超えている期間は、Hレベル信号を出力しない。
【0036】
OR回路16は、カウンタ15aの出力(入室検知)とラッチ17bの出力(着座検出)との論理和(OR)を取って出力する。
【0037】
ラッチ17aはSRラッチから構成される。ラッチ17aは、コンパレータ14bの出力がHレベルになるとセットされ、OR回路16の出力するHレベル信号によりリセットされる。従って、ラッチ17aは、1)化粧室52への入室が検知されると一旦リセットされ、2)利用者が図2の線bの位置近辺まで進んでくるとセットされて、進入検出信号を出力し、3)利用者が着座するとリセットされ、4)離座すると、セットされて進入検出信号を出力し、5)利用者が線bの位置近辺まで進んでくるとリセットされる。
【0038】
ラッチ17bはSRラッチから構成され、コンパレータ14cの出力がHレベルになるとセットされ、カウンタ15bの出力するHレベル信号によりリセットされる。従って、ラッチ17bは、1)利用者が図2の線dの位置近辺まで進んでくるとセットされ、2)利用者が着座するとセットされて、着座信号を出力し、3)離座すると、リセットされる。
【0039】
制御部21は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、CPU(Central Processing Unit)を内蔵する1チップマイクロプロセッサ(マイコン;Micro Computer)等から構成され、ラッチ17a、17bの出力に基づいて、便蓋開閉装置22、便蓋固定装置23、洗浄装置24を制御する、また、便蓋開閉中は、誤検知を防ぐため便蓋開閉信号をコンパレータ14a〜14cに出力し、コンパレータ14a〜14cの出力を禁止する。
【0040】
例えば、制御部21は、利用者が化粧室52に入室して線bの位置に達したと判定すると、便蓋開閉装置22に、便蓋開信号を出力して便蓋55を開かせ、さらに、着座したと判定すると、便蓋固定装置23に、固定信号を出力して便蓋55を開状態で固定させる。また、利用者が離座したと判定すると、便蓋固定装置23に、解除信号を出力して便蓋55の固定状態を解除し、利用者が退室のために線aの位置に達したと判定すると、洗浄装置24に、洗浄指示信号を出力して、便器53内に水を流させ洗浄を行い、便蓋開閉装置22に、便蓋閉成信号を出力して便蓋55を閉じさせる。
【0041】
便蓋開閉装置22は、モータ、モータドライバ等から構成され、制御部21からの開閉制御信号を受信し、便蓋55を開閉する。
便蓋固定装置23は、ロック機構から構成され、制御部21からの制御信号に基づき、便蓋55の開状態の固定又は固定の解除を行う。
洗浄装置24は、電磁バルブとそのドライバ等から構成され、制御部21からの制御信号に基づき、便器53内に一定量の水を流し、洗浄を行う。
【0042】
次に、上記構成の人体検知装置10が行う処理について、図5の状態遷移図と前述の図1〜図4を参照して説明する。
まず、図5に示すように、化粧室52内に利用者がいない状態では、マイクロ波センサ11の出力は0レベルであり、可変ハイパスフィルタ13のカットオフ周波数は10Hzに設定され、コンパレータ14aと14bの出力はローレベルを維持し、ラッチ17aと17bはローレベルを出力する。
【0043】
この状態で、化粧室52に利用者がドア51を開けて入室すると、線a付近に至り、マイクロ波センサ11はその動きに応じた周波数信号を出力する。この周波数信号は、アンプ12aで約100倍に増幅された後、可変ハイパスフィルタに出力される。このときの利用者の動き(歩行)は、比較的速いため、周波数信号の主成分は10Hz以上となり可変ハイパスフィルタ13を通過して出力される。ただし、入口付近に立ち止まって何らかの作業をしているような場合には、利用者の動きは比較的遅い(15cm/秒以下)ため、周波数信号の主成分は10Hz未満となり可変ハイパスフィルタ13で減衰される。
【0044】
利用者の動きが歩行の場合、図4(a)に示すように、可変ハイパスフィルタ13の出力信号の信号レベルは基準レベルVaよりも周期的に大きくなる。このため、図4(b)に示すように、コンパレータ14aは周期的にHレベル信号を出力する。カウンタ15aはHレベル信号の数をカウントし、所定値(例えば、3)に達すると、Hレベルの信号を出力する。この信号はOR回路を16を介してラッチ17aを(念のため)リセットする。
なお、この段階では、マイクロ波センサ11の出力信号の振幅が小さく、基準レベルVb、Vcに到達せず、コンパレータ14bと14cの出力はLレベルを維持し、ラッチ17bもリセットされたままである。従って、回路状態に変化は起きない。
【0045】
利用者がさらに進むと、可変ハイパスフィルタ13の出力信号の振幅が大きくなり、基準レベルVbを周期的を超えるようになる。このため、コンパレータ14bは周期的にHレベル信号を出力する。カウンタ15bはHレベル信号の数をカウントし、所定値に達すると、Hレベルの信号を出力する。このとき、カウンタ15aは、コンパレータ14bの出力によって周期的にリセットされ、カウンタ15aの出力はLレベルである。一方、この段階では、アンプ12bで増幅されたドップラ信号は基準レベルVcを周期的を超えることはなく、コンパレータ14cはLレベルを維持し、ラッチ17bはリセット状態を維持する。従って、OR回路16の2入力は共にLレベルで、その出力はLレベルとなる。従って、ラッチ17aは、リセット信号がLレベル、セット信号がHレベルとなり、セットされ、進入検出信号がHレベルとなる。
これにより、制御部21は、利用者が化粧室52内に進入したことを判別し、便蓋開閉装置22を制御して便蓋を開く。また、便蓋が開閉中は誤検知を防ぐために、便蓋開閉信号によりコンパレータ14a〜14cの各出力を禁止する。
【0046】
また、ラッチ17aからのHレベル信号に応答して、可変ハイパスフィルタ13は、そのカットオフ周波数を0.66Hzに下げ、男子小用位置での静止状態(微動)を検出可能とする。
【0047】
利用者がさらに進み、着座位置cに進むと、アンプ12bの出力信号の振幅が大きくなる。ただし、ドップラ信号が基準レベルVcを周期的を超えることはない。このため、回路は前の状態を維持する。
また、男性が小用のため、線cの位置に立ち止まっていても、可変ハイパスフィルタ13のカットオフ周波数が0.66Hzに設定されて、微小な動きが検出できる状態になっているため、コンパレータ14bは周期的にパルス信号を出力し続ける。このため、マイクロ波センサ11は直前の状態を維持する。
【0048】
利用者がさらに進み、着座すると、アンプ12bの出力信号の振幅が大きくなり、基準レベルVcを超える。このため、コンパレータ14cはHレベル信号を出力し、ラッチ17bをセットし、ラッチ17bの出力する着座検出信号はHレベルとなる。
なお、コンパレータ14cと共にコンパレータ14a、14bもパルス信号を出力するが、カウンタ15aと15bがドップラ信号の1周期毎にリセットされるため、カウンタ15a、15bはLレベルを維持する。
また、着座検出信号により、可変ハイパスフィルタ13をカットオフ周波数を6.6Hzに切り換え、また、ラッチ17aはリセットされる。
【0049】
利用者が着座状態から離座する、利用者がマイクロ波センサ11から離れるためアンプ12bの出力信号の振幅が小さくなり、基準レベルVcを超えなくなる。このため、カウンタ15bのリセット状態は解除される。
【0050】
可変ハイパスフィルタ13のカットオフ周波数が6.6Hzに切り換えられているので、離座に伴う動き(10cm/秒)による周波数信号が可変ハイパスフィルタ13を通過し、信号レベルがコンパレータ14bの基準レベルVbを周期的に超え、コンパレータ14bは周期的にHレベル信号を出力する。なお、これによりラッチ17aのセット端子にHレベル信号が供給されるが、着座信号がHレベルのままのため、ラッチ17aはリセット状態を維持する。
【0051】
コンパレータ14cが、ハイレベルの信号を出力しなくなってから、コンパレータ14bが周期的にHレベル信号を出力し、カウンタ15bがこれを一定数(例えば、3パルス)カウントすると、カウンタ15bがHレベル信号を出力し、ラッチ17bをオフする。
【0052】
これにより、OR回路16を介したラッチ17aへのリセット信号の供給が停止する。
その後、コンパレータ14bからHレベル信号が出力されると、ラッチ17aがセットされ、進入信号がHレベルとなる。このとき、利用者はほぼ線cの位置にいる。
【0053】
さらに、利用者がマイクロ波センサ11から遠ざかって、コンパレータ14bが、Hレベルの信号を出力しなくなると、カウンタ15aのリセットが解ける。
この状態で、コンパレータ14aが一定数のパルスを出力すると、カウンタ15aがHレベル信号を出力し、ラッチ17aをオフする。
【0054】
利用者が退室すると、マイクロ波センサ11の出力は0レベル、コンパレータ14a〜14cはLレベルとなって、カウンタ15a、15bはカウント値を更新しなくなり、ラッチ17a、17b共に出力信号がLレベルの状態になる。
【0055】
このような状況下で、制御部21が行う制御処理について図6のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
制御部21は、タイマ割り込みなどで、周期的に図6に示す割込処理を開始し、ラッチ17a、17bの出力信号を取り込んで、内部RAMに記憶する(ステップS01)。
制御部21は、ステップS01で記憶した情報と、一つ前に記憶した情報とに変化があるか否かを判別し(ステップS02)、変化が無い場合(ステップS02:No)、今回の割込処理を終了する。
【0057】
一方、ステップS01で記憶した情報と、一つ前に記憶した情報とに変化がある場合(ステップS02:Yes)、変化の内容に応じて、以下の処理を行う。
【0058】
直前の記憶データがSa=Sb=L(人間がいないか又は線aの位置)で、今回取り込んだ信号がSa=H、Sb=Lの場合、利用者が化粧室52に進入して線b近傍の位置に移動した状態であり、制御部21は、便蓋開閉装置22に開信号を出力して便蓋55を開かせる(ステップS11)。
【0059】
直前の記憶データがSa=H、Sb=Lで、今回状態判定部18から取り込んだ信号が、Sa=L,Sb=Hの場合、利用者が着座した状態であり、制御部21は、便蓋固定装置23に固定信号を出力して便蓋55を開状態で固定させる(ステップS12)。
【0060】
直前の記憶データがSa=L,Sb=Hで、今回のデータがSa=H、Sb=Lの場合、利用者が離座した状態であり、制御部21は、便蓋固定装置23に解除信号を出力して便蓋55の固定状態を解除する(ステップS13)。
【0061】
直前の記憶データがSa=L,Sb=Hで、今回のデータがSa=Sb=Lの場合、利用者が化粧室52を退室するために線b近傍に移動した状態であり、制御部21は、洗浄装置24に洗浄指示信号を送信して、便器53内に洗浄水を流させて便器53内を洗浄させ、さらに、便蓋開閉装置22に閉信号を出力して便蓋55を閉じさせる(ステップS14)。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態の人体検知装置10によれば、マイクロ波センサ11が、人体の動きや動作があるときに、その位置によって強度の異なる信号を出力する点を利用して、一つのセンサで人体の位置及び状態を判別することができる。
【0063】
本実施の形態において、マイクロ波センサ11の出力信号のレベルをコンパレータ14a〜14cで位置に対応した基準レベルVa〜Vcと比較することにより、利用者の位置を判別すると共に可変ハイパスフィルタ13のカットオフ周数を位置に応じて切り換えて予想される動きに応じた周波数を選択して検出する。従って、誤検出を防止できる。また、このようにして判別した人体の位置と状態との履歴に基づいて、利用者の現在の状況を適切に判別して、便蓋55や水洗の制御に利用することができる。
【0064】
また、マイクロ波センサ11が出力するマイクロ波は、樹脂やセラミックスを通過可能であるため、センサ部分を金属以外の材質の筐体内に納めることができ便蓋55や貯水タンク54の陰になる部分に配置することもできる。このため、耐薬品、防水構造を採ることができ、同時に、センサ部分の汚れやいたずらによる影響を削減することができる。また、筐体内に納まることによって、デザイン性の向上にも貢献することができる。従って、その取り扱いと取り付けが容易である。
【0065】
本発明は、上述した実施の形態に限られず、様々な修正及び応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態では、マイクロ波センサ11から出力された信号を、コンパレータ等で処理する例を示したが、これに限られず、図7に示す人体検知装置50のように、マイクロ波センサ11の出力をアンプ32で増幅し、フィルタ回路33でフィルタリングした後、A/Dコンバータ34によりディジタル信号に変換し、以後、制御部(マイクロプロセッサ)35によるディジタル処理で、利用者の位置等を判別してもよい。
【0066】
この場合、例えば、制御部35は、フィルタ回路33の特性を制御しながら、フィルタA/Dコンバータ34でA/D変換された信号レベルを順次内部メモリに記憶する。そして、記憶データに基づいて、上述の信号処理を内部で実行する。
【0067】
また、上述した実施の形態においては、人体の位置と動作を検出するためのセンサとして、マイクロ波センサを用いる例を説明したが、これに限られず、超音波ドップラセンサ等の、人体に動きがあるときに、その位置(距離)に応じた強度の信号を出力するタイプのセンサを広く利用可能である。但し、超音波センサに関しては、物体を通過できないため、人体を見通せる位置などに配置することが望ましい。
【0068】
さらに、上記実施の形態においては、標準的なサイズの化粧室52に洋式の便器53を設置した場合の例を説明したが、大型サイズの化粧室や和式便器の場合にも、同様に処理可能である。但し、化粧室や便器のタイプにより利用者の一般的な動きに変化が生し、マイクロ波センサ11の出力信号の典型的な波形が上述の説明から異なってくる場合がある。このような場合には、その波形に応じた数の基準レベルとレベル値を設定すればよい。
【0069】
また、周波数弁別用に可変ハイパスフィルタ13を使用したが、他の周波数弁別装置を使用してもよい。また、可変通過帯域フィルタなどを使用してもよい。さらに、特性の異なる複数のフィルタを用意し、切り替えて接続することにより、周波数を弁別してもよい。
【0070】
また、上述した実施の形態において、人体の状態を判別し、便蓋の開閉装置、洗浄装置等の制御信号を出力する場合を例に挙げて説明したが、これらに限られず、例えば、便蓋だけでなく便座も上下させる構成、脱臭装置、トイレ内の冷暖房装置、照明等、様々な装置に接続し、制御信号を出力する構成を採ることもできる。
【0071】
また、本発明は、トイレに限らず、人体の位置及び状態に応じて異なる制御信号が必要とされる装置一般に応用することができる。
【0072】
即ち、本発明は、化粧室における利用者の位置と状態を判別するだけでなく、動線が一次元、即ち、人間、動物、物がほぼ一次元方向にのみ動く場合に、それらの位置と状態を判別する場合に広く適用可能である。この場合には、マイクロ波センサからの放射波の放射方向を動線と平行で検出対象物に放射波が照射されるようにマイクロ波センサを設置することが望ましい。例えば、廊下などの比較的狭く長い(細長い)空間を定義する室内での人体の位置や状態を判別する場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態に係る人体検知装置の構成例を示す図である。
【図2】人体検知装置が設置されたトイレの上面図である。
【図3】マイクロ波センサの構成例を示す図である。
【図4】マイクロ波センサから出力される信号の推移の一例を示す図である。
【図5】利用者の動きの経過に合わせた各信号のレベルの論理値表である。
【図6】制御部の行う処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る人体検知装置の別の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
10 人体検知装置
21 制御部
22 便蓋開閉装置
23 便蓋固定装置
24 洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の位置と状態を検知するための人体検知装置であって、
人体に動きがあるときに、その位置に応じた強度の周波数信号を出力するセンサと、
前記周波数信号の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、
前記周波数信号の周波数成分を弁別する周波数弁別手段と、
前記信号レベル検出手段が検出した前記信号レベルと前記周波数弁別手段により弁別された前記周波数成分とに基づいて、人体の位置と状態とを判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
前記センサは、ドップラセンサから構成されることを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項3】
前記信号レベル検出手段と前記周波数弁別手段とは、所定周波数成分の信号が通過するフィルタと、前記フィルタを通過した信号の強度を判別する強度判別手段と、前記強度判別手段が判別した前記信号の強度に基づいて、前記フィルタを通過する周波数成分を切り替える切り替え手段と、から構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の人体検知装置。
【請求項4】
前記切り替え手段は、前記信号レベル検出手段により検出された信号レベルに対応する位置で予定される人体の動作に対応する前記周波数成分が通過するように、前記フィルタを通過する周波数成分を切り替える、ことを特徴とする請求項3に記載の人体検知装置。
【請求項5】
前記信号レベル検出手段は、互いに異なる基準レベルが与えられ、前記信号レベルと前記各基準レベルとを比較し、その比較結果を示す信号を出力する複数のコンパレータから構成され、
前記周波数弁別手段は、前記センサからの周波数信号を弁別して前記複数のコンパレータの少なくとも1つに供給するフィルタから構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の人体検知装置。
【請求項6】
前記人体検知装置は、トイレにおける利用者の位置と状態を検知する装置であり、
前記信号レベル判別手段には、トイレにおける利用者の男子小用位置、着座位置に対応する少なくとも2つの信号レベルを判別し、
前記周波数弁別手段は、前記各位置において予定される動作に対応する周波数成分を弁別する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人体検知装置。
【請求項7】
人体が実質的に一次元方向にのみ移動可能な空間を規定する手段を更に備え、
前記センサは前記空間内の人体の移動方向にほぼ平行な方向での人体の位置に応じた周波数信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の人体検知装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の人体検知装置と、
前記人体検知装置の前記判別手段の出力に従って電子機器に制御信号を出力する制御手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−275943(P2006−275943A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98848(P2005−98848)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】