説明

他のタイプの材料との熱可塑性材料の接合

熱可塑性材料は、金属およびセラミックスなどの他のタイプの材料に接合されるが、それは、凹凸面を有するシートを他の材料に結合する工程と、熱可塑性材料を凹凸面を有するシートに溶融結合する工程とによって接合される。このようなシートには、微孔性であるシートまたは不織布であるシートが挙げられる。得られた接合体は、熱可塑性材料と別の材料との組合せが有用である様々な目的のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を熱可塑性材料に接合することに関する。より詳しくは、本発明は、接着剤を使用して凹凸面を有するシートの一方の面を他の材料に付着するために接着剤を使用することと、金型内で溶融結合することによって熱可塑性材料をシートの他方の面に付着することとによって、金属およびセラミックスなどの他の材料に接合されうる熱可塑性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマー(TP)は重要な商品であり、多くの異なるタイプ(化学組成)およびそのブレンドが多数の用途向けに製造されている。TPを金属、セラミック、ガラス、または木材などの別のタイプの材料と一緒に結合することが望ましいことがある。これは、多くの方法、例えば機械的ファスナなどの多数の方法により行えるが、しばしば最も単純で最も安価な方法はある種の結合プロセスである。これはしばしば、接着剤の使用を必要とするが、多くの接着剤は、TPおよび別のタイプの材料の両方に十分に付着するわけではない。このため、TPを他のタイプの材料に結合する改良された方法が必要とされる。
【0003】
以下の開示内容は、本発明の様々な態様に関連し、簡単に言えば、以下のように要約することができる。
【0004】
米国特許公報(特許文献1)には、特定の組成の微孔性ポリオレフィン層をTPなどの非孔質材料と融解結合することにより形成された多層物品が記載されている。接着剤を用いてTPを別のタイプの材料に結合するためにポリオレフィン層材料を用いることは言及されていない。
【0005】
不織布(NWF)も木材やポリエチレンなどの他の材料を一緒に結合するのに用いられてきた。例えば米国特許公報(特許文献2)では、NWFを粉末接着剤で含浸して、次いで接着剤を溶融することによりNWFに結合している。このシートを用いて、NWF上の接着剤を溶融することにより、「ビニルおよび/または布地カバーおよび金属、プラスチック、ゴムおよび木材などの様々な表面」を結合してもよい。金型内で溶融結合することは言及されていない。
【0006】
米国特許公報(特許文献3)には、ゴムが微孔性シートの表面に「融着され」、この接合体が、露出された微孔性シートの非被覆面を有する射出金型内に置かれ、プロピレンが金型内に射出成形される、実施例(実施例19)がある。この特許は、接着剤を用いて熱可塑性材料を別のタイプの材料に接合することを開示していない。
【0007】
(特許文献4)および(特許文献5)には、微孔性シートを用いて熱可塑性材料を別のタイプの材料に結合することが記載されている。積層方法であると考えられる方法で熱可塑性シートを微孔性シートに結合し、次いで接着剤を用いて他の材料を微孔性シートの他の面に付着させる。これらの出願は、金型または成形を開示しない。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,892,779号明細書
【特許文献2】米国特許第6,136,732号明細書
【特許文献3】米国特許第6,544,634号明細書
【特許文献4】独国特許出願第1,569,324号明細書
【特許文献5】独国特許出願第1,569,325号明細書
【特許文献6】米国特許第3,351,495号明細書
【特許文献7】米国特許第4,698,372号明細書
【特許文献8】米国特許第4,867,881号明細書
【特許文献9】米国特許第4,874,568号明細書
【特許文献10】米国特許第5,130,342号明細書
【特許文献11】米国特許第4,892,779号明細書
【特許文献12】米国特許第4,118,372号明細書
【特許文献13】米国特許第4,892,779号明細書
【非特許文献1】S.L.ベルチャー(S.L.Belcher)著、「実用押出ブロー成形(Practical Extrusion Blow Molding)」、マルセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク(New York)、1999年
【非特許文献2】E.L.バックライトナー(E.L. Buckleitner)著、「プラスチックス・モールド・エンジニアリング・ハンドブック(Plastics Mold Engineering Handbook)」、第5版、チャップマン・アンド・ホール(Chapman & Hall)、ニューヨーク、1995年
【非特許文献3】H.リーズ(H.Rees)著、「モールド・エンジニアリング(Mold Engineering)」、ハンサー出版社(Hanser Publishers)、ミュンヘン(Munich)、1995年
【非特許文献4】J.フロリアン(J.Florian)著、「実用熱成形:原理と応用(Practical Thermoforming: Principles and Applications)」、マルセル・デッカー、ニューヨーク、1996年
【非特許文献5】I.バトラー(I.Butler)著、不織布ハンドブック、(The Nonwoven Fabrics Handbook)、ノースカロライナ州、ケーリーの不織布工業協会(Association of the Nonwoven Fabrics Industry,Cary,NC)、1999年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
簡潔にいうと、本発明の1つの態様によって、
(a)接着剤を用いて第1の物品の第1の表面を第1の面および第2の面を有するシートの前記第1の面に結合する工程であって、前記第1および第2の面が凹凸面を有する、工程と、
(b)前記第1の物品の前記第1の表面が樹脂を含まないことを条件として、金型内で熱可塑性材料を前記シートの前記第2の面に溶融結合する工程と、
第2の物品を製造する工程であって、前記第1の物品と前記熱可塑性材料とが一緒に結合される工程と、を含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(定義)
以下の定義は、本明細書および添付の特許請求の範囲の中でどのように用いられているかに従う基準として与えられている。
【0011】
「シート」とは、表面の2つが、他の外部表面のいずれかの表面積の少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約10倍である材料形状のことを意味する。この定義には、15cm×15cm×厚さ0.3cmの寸法のシート、および15cm×15cm×厚さ0.2mmのフィルムが含まれる。多くの場合、後者(フィルムと呼ばれることが多い)は可撓性で、ドレープ性がある場合があり、凹凸面に沿うようにできる。シートの最低厚さは、好ましくは約0.03mm、より好ましくは約0.08mm、特に好ましくは約0.13mmである。シートの最大厚さは、好ましくは約0.64mm、より好ましくは約0.38mm、特に好ましくは約0.25mmである。いずれかの好ましい最低厚さをいずれかの好ましい最大厚さと組み合わせて好ましい厚さ範囲を形成することができるものと考えられる。
【0012】
「凹凸面」とは、表面が、表面およびその凹凸中にまたはその上に流れ込む一切の溶融材料をそれに機械的に係止するのを補助する凹凸をその中にまたは上に有していることを意味し、溶融材料が後に固化すると、それによって材料が凹凸面に機械的に係止される(すなわち、結合される)。
【0013】
「樹脂」とは、天然または人造(合成)の一切の有機ポリマー材料を意味する。合成材料が好ましい。
【0014】
「凹凸面シート(ISS)」とは、2つの「凹凸面」を有するシートのことを意味する。
【0015】
「溶融結合」とはTPが溶融されることを意味し、「溶融される」とは、結晶TPが概ねその最高融点またはそれより高く加熱され、一方、アモルファス熱可塑性材料がその最高ガラス転移温度を超えて加熱されることを意味する。溶融される間、TPはISSの適切な面と接触配置される。この接触中、通常、若干の圧力(すなわち、力)がかかって、TPをISS表面の気孔または凹凸の一部の上に流し、しばしば浸透させる。次いでTPを冷却させるか、他の方法で固体にさせる。
【0016】
「熱可塑性材料(TP)」とは、ISSに溶融結合される前および溶融結合される間、溶融可能であるが、それらの最終形態において固体である材料であり、すなわち結晶またはガラス状(従って、一般的にはエラストマーは、それらの融点および/またはガラス転移温度がある場合には周囲温度より低く、TPには含まれないが、熱可塑性エラストマーはTPに含まれる)である。このように、これは、ポリエチレンなどの一般的(すなわち「典型的」)なTPポリマーを意味しうる。それはまた、熱硬化する(架橋する)前、すなわち、溶融可能で、溶融状態で流れる間、熱硬化性ポリマーのことも意味する。熱硬化は、溶融結合がなされた後、恐らく、溶融結合がなされたのと同じ装置で、恐らく熱硬化性樹脂を単にさらに加熱してガラス状および/または結晶質である樹脂を形成することによりなされる。有用な熱可塑性エラストマーとしては、ポリエーテル軟質セグメントを備えたブロックコポリエステル、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、および熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。
【0017】
本明細書において「結合された」とは、本明細書において多くの場合、永続的に、互いに付着された材料を意味し、および/または通常、材料の間にISSおよび接着剤を有する。
【0018】
「接着剤」とは、ISSを他の材料に結合するのを助ける材料を意味する。接着剤はどんな形態であってもよく、例えば溶融接着剤、触圧接着剤、両面接着テープ、熱活性化接着剤、または転写テープであってもよい。接着剤は例えば、エポキシ、ポリウレタンまたはアクリル樹脂、天然および合成ゴム、およびシリコーンをベースとしてもよい。
【0019】
「金型内」とは、概ねまたは完全に密閉されたチャンバ(TPを金型に添加することができるかまたは空気を金型から逃がす比較的小さなチャネルまたはランナーを除く)の内部を意味し、そこで特定の時点に、溶融ポリマーがISSの第2の面と接触する。典型的に、金型内に少なくとも若干の圧力が存在し、その結果、TPがISS表面に対して(中に)押し付けられる。好ましい金型は、射出成形、圧縮成形、圧縮射出成形、熱成形、および押出または射出ブロー成形など、ポリマー溶融成形作業において用いられる金型である。好ましい金型は、射出成形用の(そして、射出成形において用いられる)金型である。これらのおよび他のタイプの金型およびそれらの成形プロセスは本技術分野に公知であり、例えば(非特許文献1)、(非特許文献2)、(非特許文献3)、および(非特許文献4)を参照のこと。
【0020】
ISSシートは多くのやり方で形成された凹凸面を有してもよい。それは、布地、例えば、織布、編布または不織布、紙、発泡、特に、連続気泡および/または微孔質泡、例えば、サンドブラストや、紙やすりやサメ皮等の研磨材により形成された粗面を備えたシート、および微孔性シート(MPS)である。ISSの好ましい形態は、布地、特に不織布(NWF)および微孔性シート(MPS)である。
【0021】
「微孔性」とは、少なくとも約20体積パーセント、より好ましくは少なくとも約35体積%の気孔を備えた材料、通常、熱硬化性または熱可塑性ポリマー材料、好ましくは熱可塑性材料である。体積パーセンテージは高いことが多く、例えば、約60体積%〜約75体積%の気孔である。気孔率は次式に従って求められる。
「気孔率」=100(1−d1/d2
式中、d1は、試料を秤量し、その重量を、試料の寸法から求められる試料の体積で除算することにより求めた微孔性試料の実際の密度である。値d2は、試料に空隙や気孔がないと仮定する試料の「理論」密度であり、試料成分の量および対応の密度を用いて公知の計算により求められる。気孔率の計算の詳細については、米国特許公報(特許文献1)(その内容を参照によって本願明細書に援用するものとする)に見出すことができる。微孔性材料は相互接続気孔を有しているのが好ましい。
【0022】
本明細書においてMPSは、米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)、米国特許公報(特許文献9)、および米国特許公報(特許文献10)(その内容の全てを参照によって本願明細書に援用するものとする)に記載された方法により作製されてもよい。好ましい微孔性シートは、米国特許公報(特許文献11)(その内容を参照によって本願明細書に援用するものとする)に記載されている。多くの微孔性シートと同様に、この特許のシートは大量の微粒子材料(充填剤)を有している。この特定のタイプのシートは、ポリエチレンから作製されており、その多くは直鎖状超高分子量ポリマーである。
【0023】
「布地」とは、ファイバーでできたシート状材料である。ファイバーを作製する材料は、合成(人造)であっても天然であってもよい。布地は、織布、編布または不織布であってよいが、不織布が好ましい。布地に有用な材料としては、綿、ジュート、セルロース、ウール、ガラスファイバー、カーボンファイバー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン−6、ナイロン−6,6および芳香族−脂肪族コポリアミドなどのポリアミド、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)などのアラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、サーモトロピック液晶ポリマー、フルオロポリマーおよびポリ(フェニレンスルフィド)などが挙げられる。
【0024】
ここにおいて布地は、製織やニッティングなどの公知のいずれかの布地製造技術により製造することができる。しかしながら、好ましい布地タイプはNWFである。NWFは、(非特許文献5)(その内容を参照によって本願明細書に援用するものとする)に記載された方法により作製することができる。本発明のNWFを製造するのに有用なタイプのプロセスとしては、スパンボンドと溶融ブローンが挙げられる。一般的に、NWFのファイバーは、互いに特定の関係で固定される。NWFが溶融TPとして塗られると(例えば、スパンボンドされる)、ファイバーは、新しいファイバー層が前のファイバー層と接触する前に完全には固化せず、それによってファイバーの部分融着をもたらすことがある。布地を針で縫うかまたはスパンレースして、ファイバーを交絡および固定してもよいし、またはファイバーを一緒に熱結合してもよい。
【0025】
布地の特徴は接合されるTP間の結合の特徴をある程度決める。溶融TPが(使用される溶融結合条件下で)布地のファイバーおよびその周囲へと浸透するのが難しいほど、布地はきつく製織されていないのが好ましい。従って、布地は比較的微孔性であるのが好ましい場合がある。しかしながら、布地があまりに微孔性だと、弱すぎる結合を形成する恐れがある。布地(ひいては布地に用いられるファイバー)の強度および剛度は、形成された結合の強度および他の特性をある程度決める場合がある。カーボンファイバーやアラミドファイバーなどの高強度ファイバーが場合によっては有利であることがある。
【0026】
理論に拘束されるものではないが、熱可塑性材料は、TPのISSシートへの機械的ロッキングによりISSシートの表面(少なくとも一部)に結合することができると考えられる。溶融結合工程中、TPは表面の凹凸に、または気孔、空隙および/または他のチャネル(存在する場合には)を通して実際には表面の下または表面を通過して「浸透」すると考えられる。TPが固化すると、それはこれらの凹凸、および存在する場合には、気孔、空隙および/またはその他チャネルの中および/または上に機械的に係止される。
【0027】
TPに好ましい材料の1つのタイプとしては、「典型的な」TPがあり、これは、容易に架橋可能でなく、融点および/またはガラス転移温度が約30℃を超える材料である。好ましくは、かかる典型的なTPが結晶質の場合には、結晶融点が50℃以上であり、より好ましくは融解熱が2J/g以上、特に好ましくは5J/g以上である。TPがガラス状の場合には、ガラス転移点が50℃以上であるのが好ましい。場合によっては、融点またはガラス転移温度は、TPがその温度に達する前に分解するほど高いことがある。かかるポリマーもまたTPとしてここでは含まれる。融点およびガラス転移温度は、ASTM法ASTMD3418−82を用いて測定される。融点は、融解吸熱のピークとして取られ、ガラス転移温度は転移中点に取られる。
【0028】
このような典型的なTPには、ポリ(オキシメチレン)およびそのコポリマー;ポリエステル、例えばPET、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、およびポリ(1,3−ポロピレンテレフタレート);ポリアミド、例えばナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−11、および芳香族−脂肪族コポリアミド;ポリオレフィン、例えばポリエチレン(すなわち、低密度、線低密度、高密度、等の全ての形態)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレン/ポリ(フェニレンオキシド)ブレンド、ポリ(ビスフェノール−Aカーボネート)などのポリカーボネート;ペルフルオロポリマーおよび部分フッ素化ポリマー、例えばテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ポリ(フッ化ビニル)、およびエチレンとフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニルとのコポリマーなどのフルオロポリマー;ポリスルフィド、例えばポリ(p−フェニレンスルフィド);ポリエーテルケトン、例えばポリ(エーテル−ケトン)、ポリ(エーテル−エーテル−ケトン)、およびポリ(エーテル−ケトン−ケトン);ポリ(エーテルイミド);アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−スチレンコポリマー;熱可塑性(メタ)アクリルポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート);熱可塑性エラストマー、例えばテレフタレート、1,4−ブタンジオールおよびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールからの「ブロック」コポリエステル、およびスチレンと(水素化)1,3−ブタジエンブロックとを含有するブロックポリオレフィン;および塩素化ポリマー、例えばポリ(塩化ビニル)、塩化ビニルコポリマー、およびポリ(塩化ビニリデン)などがある。(メタ)アクリレートエステルポリマーなどのin situ形成されてもよいポリマーもまた、含められる。
【0029】
本明細書において「サーモトロピック液晶ポリマー」は、米国特許公報(特許文献12)(その内容を参照によって本願明細書に援用するものとする)に記載されているように、TOT試験またはそのいずれかの適当な変型を用いて試験される時に異方性であるポリマーを意味する。有用なLCPには、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)、およびポリ(エステル−イミド)などがある。ポリマーの1つの好ましい形は、「全て芳香族」であり、すなわち、ポリマー主鎖中の基の全てが芳香族であるが(エステル基などの結合基を除く)、芳香族でない側基が存在してもよい。
【0030】
有用な熱硬化性(すなわち容易に架橋可能な)TPには、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール類樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、および熱硬化性ポリエステル樹脂などがある。
【0031】
ここにおいて第1の物品は、第1の物品の第1の表面が樹脂を含まない限り、どんな材料から作製されてもよい。すなわち第1の物品は樹脂を含んでもよいが、接着剤で結合される第1の表面にある材料は樹脂を含まない。このように第1の物品(および第1の表面)は、金属、セラミック、ガラス、木材、紙、板紙であってもよい(を含んでもよい)。好ましくは第1の物品の第1の表面は金属を含む。金属には、合金鉄、例えば鋼、ステンレス鋼、および錬鉄、銅、ニッケル、アルミニウムの他、インコネル(Inconel)(登録商標)、およびハストアロイ(Hastalloy)(登録商標)などの様々な金属の合金が挙げられる。好ましい金属は鉄および鉄合金である。
【0032】
ISSシートの第1および第2の面をそれぞれ、第1の物品およびTPに結合する工程は、どんな順序で行われてもよい。例えば、ISSシートの第2の面をTPに溶融結合してもよく、次いで接着剤を用いてISSの第1の面を第1の物品に結合してもよい。好ましい手順において順序を逆にし、すなわちISSシートの第2の面を接着剤を用いて第1の物品に結合し、次いでISSと第1の物品とのこの接合体を金型内に置き、TPをISSの第1の面に溶融結合する。
【0033】
接着剤を用いて第1の面を第1の物品に結合するとき、その接着剤を使用するための製造元または供給元の推奨に従うのがよい。典型的に特定の時点でそれは、(連続的にまたは同時に)接着剤と接触している間、結合される表面に特定の圧力を加えることを必要とする。ISSまたは第1の物品は最初に接着剤によって接触されてもよく、またはそれらは同時に接触されてもよい。
【0034】
溶融結合は、数多くのやり方で実施されてもよい。例えば、ISSを射出成形金型の片側に押し付け、TPを金型内に射出成形してもよい。このプロセスは、熱架橋性樹脂、およびこれらの樹脂が架橋および/または固化(すなわち、熱硬化)するまで高温金型内に保持された部品に用いられてよい。ISSは、真空、静電荷、機械等といった様々な公知の技術により金型内の適所に保持されてもよい。別のプロセスにおいて、圧縮金型に第1のTPを充填し、ISSを第1のTPの上に置くか、金型の片側に押し付ける。金型を閉じ、加熱し(または既に熱い)し、圧力を加える。これらのプロセスの全てにおいて、ISSを第1の物品に既に結合することができ、その結果、ISSと第1の物品(と接着剤)との接合体を金型内に置き、これによりTPをISSの第2の面に溶融結合することができる。
【0035】
別のプロセスにおいて、TPのフィルムまたはシートをISSの第2の面と接触して置くことができ(また、ISSを第1の物品に既に結合することができ)、次に、接合体を熱成形機械金型内に置き、そこでTPをISSに溶融結合し、また、熱成形された造形製品を製造する。
【0036】
溶融結合プロセスにおいて、ISSの粗面特徴は何であろうとも常に完全には破壊されず、かなり無傷のまま残ることが多い。例えば、ISSがTPを含む場合には、溶融結合プロセスの温度によりそのTPが溶融して、ISSの凹凸が失われることがある。数多くの方法によりこれを回避することができる。TPを溶融させるのに必要とされる温度は、ISSを含む一切のTPの融点(ある場合には)および/またはガラス転移点が溶融結合プロセス温度より高くなるよう、十分に低くてもよい。表面凹凸の喪失を回避する他の方法は、ISSを架橋された熱硬化性樹脂または、例えば、金属などの高融点の他の材料から作製することである。ISSがTPを含む場合には、いくつかの場合、TPは、融点/ガラス転移温度を超えるなら殆んど流れないほど粘性であってもよい。粘性は、大量の充填剤を用いることによって、および/または、超高分子量のポリエチレンなどの非常に高分子量のTPを用いることによって増大させることができる。例えば、好ましいISSの1つのタイプにおいて、好ましくは、熱可塑性材料から製造されたMPSでは、熱可塑性材料の重量平均分子量は約500,000以上、より好ましくは約1,000,000以上である。かかる高分子量で得られるTPの1つの有用なタイプはポリエチレンであり、それはISS、好ましくはMPSについては好ましいTPである。より高い融点またはガラス転移温度のTPを結合するときに粗表面特徴の喪失を防ぐ他の方法は、ISSを高温に晒す時間を最小にすることであり、その結果、TPが短時間で粗面に「浸透」し、粗面が喪失する十分な熱伝達時間はない。これらの方法のいくつかを組み合わせて、ISSの表面凹凸の喪失をさらに遅らせることができる。
【0037】
結合した構造が形成されると、多くの場合、結合された界面は構造中で弱点にはならない。すなわち、多くの場合、TPを第1の物品から剥がそうとすると、TPまたはISSの凝集破壊をもたらし、材料の本来の強度が、結合された組立品の弱点であることを示す。
【0038】
本明細書に記載されたポリマー、TPおよび/またはISSのポリマーのいずれか、特に、TPは、例えば、充填剤、強化剤、酸化防止剤、顔料染料、難燃剤等、通常かかるポリマー中にある材料を、かかる組成物に通常用いられる量で含有していてもよい。
【0039】
結合された第2の物品は、組み合わせられる2つのTPと第1の物品との最良の属性を組み合わせることができるので有用であることが多い。例えばTPは化学的不活性、低摩擦、耐磨耗性、および靭性の1つまたは複数に寄与することができ、他方、例えば金属から作製された第1の物品は、強度、剛性、電気導電率および/または熱伝導率、および耐疲労性に寄与することができる。これらの接合体のための有用な部品には、コンベヤ部分、および電気または電子機器のための筐体、自動車および非自動車用途のための構造部品、金属および他の材料を用いるいずれかの用途が挙げられる。
【0040】
このプロセスは、実質的最小寸法を有する接合体を製造するために特に有用である。最小寸法とは、熱可塑性材料と他の材料との両方を通過する部品の最小寸法を意味し、典型的にこれはしばしば、厚さ(そこで熱可塑性材料および/または他の材料は小さな厚さに漸減することがあるその部品のエッジはこの測定に含まれない)と呼ばれてもよい。例えば、射出成形において溶融TPがISSの第2の表面と接触するので、TPをISSに結合させるために熱伝導に頼る必要はなく、従って、もっと厚い部品を形成することができる。これは、フィルムまたは薄いシートなどの薄い断面によって典型的に行われる、例えば、ロール積層またはプレスでの積層とは対照的である。好ましくは最小寸法は少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも5mmおよび特に好ましくは少なくとも10mm、非常に好ましくは少なくとも約1.0cmである。
【0041】
別の寸法は「結合熱可塑性材料の最大寸法」であり、ISSの第1の表面に結合される他の材料の表面に垂直に測定された熱可塑性材料の最大厚さである。好ましくはこれは少なくとも約1mm、より好ましくは少なくとも約5mm、特に好ましくは少なくとも約10mm、非常に好ましくは少なくとも約1.0cmである。
【実施例】
【0042】
(実施例1〜3)
これらの実施例において厚さ40×143×3mmの金属プラックを用いた。3Mコーポレーション(3M Corp.)(米国、55144ミネソタ州、セントポール(St.Paul,MN55144,USA))製の両面接着テープ、スコッチ(Scotch)(登録商標)9473、厚さ250μmのアクリル転写接着テープを金属プラックの一方の面に適用し、接着剤がプラック面に重ならないようにトリミングした。接着テープが適用される前にプラックの表面をイソ−プロパノールで清浄にし、表面をスコッチ・ブライト(Scotch−Brite)(登録商標)パッドでわずかに研磨した。次に、PPGコーポレーション(PPG Corp)(米国、ペンシルベニア州、ピッツバーグ(Pittsburgh,PA,USA)製のミスト(MiST)(登録商標)構造用結合フィルムの(金属プラックのサイズに)プレカットされたシートを接着テープの他方の表面に適用し、その結果、金属プラック、接着剤および次いで構造用結合フィルムの接合体が形成された。ミスト(登録商標)フィルムは、米国特許公報(特許文献13)に概して記載された微孔性超高分子量ポリエチレンフィルムである。
【0043】
次に、この接合体を溶融成形ポリマーのための射出型の面に対して押し付けた。構造用結合フィルムを有する面は、金型の空のキャビティに対向した。成形品の形状は、200×20×3mmの矩形のポリマーストリップを作製するようになっていた。前記ストリップは金属プラックより長く、プラックの一方の面の上に伸長した。金型を閉じた後、ドイツ、ハンブルグのポングス・アンド・ツァーンAG(Pongs & Zahn AG,Hamburg,Germany)製のポナフレックス(Ponaflex)(登録商標)S650A、スチレン系熱可塑性エラストマーを金型内に射出した。ポナフレックス(登録商標)S650Aの溶融温度は215℃であり、金型温度は80℃であり、高圧(射出)時間は18秒であり、冷却時間は10秒であった。冷却した後、金型を開け、部品を取り出した。
【0044】
最小限の48時間放置した後、(構造用結合フィルムおよび接着テープによる)金属へのポナフレックス(登録商標)S650Aの接着力を試験した。プラックを伸長試験機のジグにクランプした。プラックの平面は、試験機の伸長軸に垂直であった。ポナフレックス(登録商標)S650Aの伸長タブ(だけ)を試験機の他の工作物上のジョーにクランプした。次に、ポナフレックス(登録商標)S650Aを100mm/分のクロスヘッド速度においてプラックの平面に直角にプラックから引っ張った。剥離力は表1に示され、3つの試験の平均である。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1〜3の不良モードは接着剤であり、それは接着テープと構造用結合フィルムとの間に生じた不良である。ポナフレックス(登録商標)S650Aが金属の表面の上に直接に射出成形されるとき、剥離力はゼロであった。
【0047】
アセタール、ポリアミドまたはポリエステルなどの他の熱可塑性材料を同様に金属プラックに付着することができるが、それらの多くは非常に剛性であるので試験することができず、接着力はこの方法で定量化された。
【0048】
従って、上述した目的および利点を完全に満たす、熱可塑性材料を他のタイプの材料に接合する方法が本発明によって提供されたことは明らかである。発明がその特定の実施態様と共に記載されたが、多くの代替物、改良、および変型が当業者には明白であることは明らかである。したがって、添付した請求項の精神および広い範囲に含まれる全てのかかる代替物、改良、および変型を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)接着剤を用いて第1の物品の第1の表面を第1の面および第2の面を有するシートの前記第1の面に結合する工程であって、前記第1および第2の面が凹凸面を有する、工程と、
(b)前記第1の物品の前記第1の表面が樹脂を含まないことを条件として、金型内で熱可塑性材料を前記シートの前記第2の面に溶融結合する工程と、
第2の物品を製造する工程であって、前記第1の物品と前記熱可塑性材料とが一緒に結合される工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シートが不織シートまたは微孔性シートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金型が射出成形、圧縮成形、圧縮射出成形、熱成形、または押出もしくは射出ブロー成形において用いられる金型であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記金型が射出成形において用いられることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性材料が典型的な熱可塑性材料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性材料が、ポリ(オキシメチレン)およびそのコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン/ポリ(フェニレンオキシド)ブレンド、ポリカーボネート、フルオロポリマー、エチレンとフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニルとのコポリマー、ポリスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリ(エーテルイミド)、アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−スチレンコポリマー、熱可塑性(メタ)アクリルポリマー、熱可塑性エラストマー、および塩素化ポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性材料が未架橋熱硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)が最初に行われ、次に工程(b)が行われることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が最初に行われ、次に工程(a)が行われることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の表面が金属を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−518807(P2008−518807A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539307(P2007−539307)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/039552
【国際公開番号】WO2006/050391
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】