説明

他車認識システム

【課題】周辺物検出装置で見失った監視対象車両と新たな検出車両との同一性判断。
【解決手段】自車の周辺の他車情報を受信する通信装置30と、自車の周辺の他車を検出する周辺物検出装置20と、を備え、前記他車情報の発信車両が前記周辺物検出装置20の検出範囲から離脱した際の離脱方向と、前記発信車両が前記検出範囲から離脱した後で車両が前記検出範囲に進入した際の進入方向と、に基づいて、前記検出範囲に進入した車両が前記発信車両と同一の車両か判断すること。その際、前記進入方向と前記離脱方向とが異なる場合に、前記検出範囲に進入した車両を前記発信車両とは異なる車両と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車の周辺を走行している他車の存在を認識する他車認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の他車認識システムに関して例えば下記の特許文献1に開示されている。その特許文献1には、自車のレーダ装置と車車間通信装置とから前方車両の位置情報を各々取得し、その夫々の車両位置の内、所定距離よりも近接しており、且つ、進行方向の一致度合いが大きい場合、同一車両の位置を示していると判断する技術が開示されている。尚、特許文献2には、他車の多重認識を廃するべく、車車間通信で送られてきた周辺他車の識別情報及び車情報(ナンバ、車種、車色)と自車で生成した周辺他車の識別情報及び車情報とに基づいて、同じ車両であるのか否かの判定を行う技術が開示されている。また、特許文献3には、制御対象領域(レーダ装置の検出範囲)から外れた先行車両を制御対象から解除し、その後、自車の移動方向が制御対象解除時の先行車両の移動方向に接近している場合、制御対象領域を制御対象解除時の先行車両の移動方向寄りに拡大補正する技術が開示されている。また、特許文献4には、レーダで検出している自車レーンの先行車両の走行状態情報を記憶しておき、その先行車両を検出できなくなった場合に、記憶してある走行状態情報から予測した先行車両の走行状態に基づいて先行車両を検出できるよう、自車を走行レーンから逸脱させない目標ヨーモーメントで自車の制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−115637号公報
【特許文献2】特開2005−141515号公報
【特許文献3】特開2008−068798号公報
【特許文献4】特開2007−001384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば前方車両がカーブに侵入した場合等においては、レーダ装置等のような周辺物検出装置の検出範囲から前方車両が外れることがある。この場合には、自車のカーブへの侵入や自車のカーブからの脱出等によって、その後、その周辺物検出装置で他車の存在が検出されることがある。後続車両においては、周辺物検出装置が一旦前方車両を見失うと、その後に検出された前方の他車が車車間通信装置で通信していた前方車両であるのか否かの判断が付き難い。例えば、上記特許文献1の技術では、車車間通信装置で前方車両の位置情報を取得できない場合、例えばGPS情報を受信できないトンネル内で他車が他車自身の走行位置を把握できず位置情報を送信できない場合、レーダ装置で検出した前方車両を車車間通信による通信車間制御の相手として認識させる必要がある。これが為、この特許文献1に記載の技術では、レーダ装置が一旦前方車両を見失うと、通信車間制御の相手を把握し難くなり、通信車間制御の継続が困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、通信車間制御の相手である他車が周辺物検出装置の検出範囲から外れた場合に、その後で周辺物検出装置の検出範囲に入ってきた他車が通信車間制御の相手として認識していた他車と同じであるのか否かを判別できる他車認識システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、自車の周辺の他車情報を受信する通信装置と、自車の周辺の他車を検出する周辺物検出装置と、を備え、前記他車情報の発信車両が前記周辺物検出装置の検出範囲から離脱した際の離脱方向と、前記発信車両が前記検出範囲から離脱した後で車両が前記検出範囲に進入した際の進入方向と、に基づいて、前記検出範囲に進入した車両が前記発信車両と同一の車両か判断することを特徴としている。
【0007】
ここで、前記進入方向と前記離脱方向とが異なる場合に、前記検出範囲に進入した車両を前記発信車両とは異なる車両と判断すればよい。
【0008】
また、上記目的を達成する為、本発明は、自車の周辺の他車情報を受信する通信装置と、前記他車情報に基づいて追従走行制御を行う走行制御装置と、自車の周辺の他車を検出する周辺物検出装置と、を備え、前記走行制御装置は、前記他車情報の発信車両が前記周辺物検出装置の検出範囲から離脱した後、該離脱方向から車両が前記検出範囲に進入した場合、前記追従走行制御を継続することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る他車認識システムは、自車の監視対象である他車情報の発信車両が周辺物検出装置の検出範囲から外れ、その後で新たな車両がその検出範囲に入ってきた場合に、その発信車両の検出範囲からの離脱方向に対して新たな車両がどちら側から検出範囲に入ってきたのかを観ることで、その新たな車両が発信車両と同一車両であるのか否かを精度良く判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る他車認識システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る他車認識システムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】図3は、先行車両を監視する後続車両から観た他車認識システムの動作説明図であって、新たな検出車両が検出範囲から離脱した監視対象車両とは別車両である場合を示す図である。
【図4】図4は、先行車両を監視する後続車両から観た他車認識システムの動作説明図であって、新たな検出車両が検出範囲から離脱した監視対象車両と同一車両である場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る他車認識システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
[実施例]
本発明に係る他車認識システムの実施例を図1から図4に基づいて説明する。
【0013】
本実施例の他車認識システムは、下記の車間自動制御システムに適用されるものとして例示する。
【0014】
車間自動制御システムは、設定した目標車間距離や目標車間時間となるように車間の制御を行う所謂ACC(Adaptive Cruise Control)と云われるものである。この車間自動制御システムは、その目標車間距離や目標車間時間となるように車間を詰めさせることで、後続車両の空気抵抗の低減が可能になるので、その後続車両の燃費を向上させることができる。また、この車間自動制御システムは、車間を詰めさせることで道路上の或る地点における単位時間内の通過車両の台数(所謂交通容量)を増加させることができるので、渋滞の緩和にも役立つ。
【0015】
ここで例示する車間自動制御システムの車間制御とは、先行する目の前の1台の車両に追従走行する際又は後続の1台の車両に追従走行される際の2台の車両間の車間制御のみならず、複数台の車両が一群の隊列(車群)を成して先行車両に追従しながら又は後続車両に追従されながら隊列走行する際の夫々の車両間の車間制御を含む。
【0016】
この車間自動制御システムにおいては、自動車向けの無線通信技術を利用して車両間で当該車両における各種情報の授受を行い、その情報又は当該情報における車間制御必要情報に基づいて車間制御の制御目標値を設定する。そして、この車間自動制御システムでは、その制御目標値に応じた車両制御を実行し、車間を制御目標値の1つである目標車間距離(目標車間時間)へと制御する。つまり、この車間自動制御システムにおいては、無線通信で受信した他車の情報に基づいて追従走行制御等の車間制御が実行される。この情報通信型の車間制御(ACC)については、走行制御装置(後述する制御装置10)によって実行される。
【0017】
その自動車向けの無線通信については、次の様な形態がある。例えば、この種の無線通信には、車両間で直接情報の授受を行うものや、車両間で車外に敷設された通信施設を介して間接的に情報の授受を行うものがある。前者の無線通信としては、車両同士が直接情報をやりとりする車車間通信がある。一方、後者の無線通信としては、車外に敷設された通信施設(路側機)を介して車両同士が情報のやりとりを行う車路車間通信、車外に敷設された通信施設(情報センタ等の基地局)を介するインターネット等の通信インフラを利用して車両同士が情報のやりとりを行うものがある。情報の授受が直接であると間接であるとに拘わらず、隊列走行時には、直前の先行車両だけでなく、それ以外の車群内における他の先行車両も、そして、直後の後続車両だけでなく、それ以外の車群内における他の後続車両も通信相手となり得る。
【0018】
上記の車路車間通信は、車両と車外に敷設された通信施設(路側機)とが情報をやりとりする路車間通信の応用例である。その路車間通信は、例えば前方の混雑状況や信号の状態等の情報を車両が受け取る際にも利用される。
【0019】
車両間で受け渡しされる各種情報としては、例えば、識別情報、走行情報、制御目標値情報、運転者による操作情報、車両の仕様情報、通信規格情報、走行環境情報等がある。
【0020】
識別情報とは、情報の送信元を特定及び識別する為の情報のことである。この車間自動制御システムにおいては、車両そのものを特定及び識別する為の車両識別情報が予め車両に設定されている。尚、その車両識別情報は、通信を行う際に付与してもよい。また、隊列走行時には、その車群を特定及び識別する為の車群識別情報も付与される。この車群識別情報は、例えば隊列走行開始時に、その車群に属する各車両の内の何れか(例えば先頭車)の制御装置が設定し、夫々の車両に対して無線通信を介して付与する。ここで、隊列走行時には、車両の増加や離脱等によって車群の所属車両が変化することがある。これが為、この車間自動制御システムにおいては、その変化が生じた際に新たな車群識別情報を再付与させてもよい。また、これに替えて、車両の増加時には、新規加入車両に対して既存の車群識別情報を付与するようにしてもよい。一方、車両の離脱時には、離脱車両の保持している車群識別情報を当該車両の制御装置が削除する。
【0021】
走行情報とは、自車の走行時における測定情報又は推定情報のことである。例えば、この走行情報には、自車の現在位置情報や進行方向情報がある。現在位置情報は、例えばGPS(Global Positioning System)による測定情報を利用すればよい。また、進行方向情報は、例えばGPSによる測定情報の変移から推定してもよく、下記のウィンカ操作方向やステアリング操舵角の情報に基づいて推定してもよい。これら現在位置情報や進行方向情報については、GPSによる測定情報と共にカーナビゲーションシステムの地図情報を併用してもよい。更に、走行情報には、自車の車速情報、自車の車両加速度情報(車両減速度情報)、自車の車両横加速度情報、自車のジャーク情報、自車のヨーレート情報、自車のピッチ角情報、自車のロール角情報がある。これらの走行情報は、自車に搭載されている車速センサや加速度センサ等の各種センサの検出値に基づいて得られる情報である。
【0022】
制御目標値情報とは、車間制御を行う際に必要な自車の制御目標値の情報のことである。この制御目標値情報には、前述した目標車間距離や目標車間時間の情報と、この目標車間距離や目標車間時間を実現させる為に設定する自車の目標車速、目標車両加速度(目標車両減速度)や目標ジャークの情報と、がある。
【0023】
運転者による操作情報には、運転者による自車の入力機器に対する操作量の情報及び当該入力機器に対する操作の有無の情報がある。前者の操作量の情報とは、アクセルペダルに対するアクセル操作量(アクセル開度等)の情報、ブレーキペダルに対するブレーキ操作量(ブレーキ踏力等)の情報、ウィンカスイッチに対する左右何れかへの操作方向の情報、ステアリングホイールに対するステアリング操舵角の情報、ヘッドライトスイッチに対する操作状態の情報(ヘッドライトがハイビームなのか、ロービームなのか、スモールなのかの情報)などである。一方、後者の操作の有無の情報とは、ブレーキ操作の有無(ブレーキランプスイッチのON/OFF)の情報、ウィンカスイッチ操作の有無の情報、ヘッドライトスイッチ操作の有無の情報、ワイパースイッチ操作の有無の情報、その他、空気調和機や音響機器等に対するスイッチ操作の有無の情報などである。
【0024】
車両の仕様情報には、予め車両の設計値として決まっている情報だけでなく、頻繁に変わることのない情報も含む。例えば、この仕様情報とは、車両重量、最大車両制動力(最大車両減速度:路面摩擦係数に依存)、最大加速力(最大車両加速度)、最大ジャーク、各種アクチュエータの応答性(制御指令に対する反応速度)、装備等の情報のことである。尚、そのアクチュエータとは、ブレーキアクチュエータ、スロットルアクチュエータ、変速機のアクチュエータ等である。また、装備の情報とは、例えば、タイヤのグリップ性能等のことである。
【0025】
通信規格情報とは、例えば、双方向無線通信の通信規格、無線LANの通信規格、ビーコンの通信規格等の情報のことである。自動車向けの無線通信における双方向無線通信には、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等がある。また、この通信規格情報には、送信先への挨拶情報、上記の各種アクチュエータにおける応答遅れを示す時定数の情報、転送情報を示すフラグ等も含まれる。
【0026】
走行環境情報とは、自車の走行している路面の情報のことである。この走行環境情報には、路面摩擦係数の情報、路面勾配の情報、路面温度の情報、路面がアスファルトなのか未舗装なのかの情報、ウエット路面なのかドライ路面なのか凍結路面なのかの情報がある。
【0027】
この車間制御において設定される制御目標値は、第1に車間制御における主要目標たる目標車間距離や目標車間時間である。この目標車間距離(目標車間時間)は、車両間における現在の相対速度、相対車間距離、相対車両加速度等に基づいて、例えば先行車両が急制動等を行ったとしても車間距離が零にならない値を設定する。この車間自動制御システムにおいては、その目標車間距離(目標車間時間)に基づいて、これを実現し得る車両に対する実際の制御目標値としての目標車速、目標車両加速度(目標車両減速度)、目標ジャークを設定する。
【0028】
例えば、この車間自動制御システムにおいては、先行車両との車間距離を目標車間距離に近づける比例制御と、その車間距離が目標車間距離よりも縮まらない又は目標車間距離よりも拡がらないよう先行車両との相対速度を零に近づける微分制御と、を実行させればよい(PD制御)。また、この車間自動制御システムでは、2つ以上の車両モデルを含む系で最適化が図られるように夫々の車両の制御目標値を設定する最適制御(LQ制御)を実行してもよい。
【0029】
ここで、上述した無線通信においては、相手先から情報を受信できないときがある。その情報を受信できないとき(通信途絶時)とは、相手先の通信装置が情報を送信し難くなっている又は自らの通信装置が相手先からの情報を受信し難くなっている通信異常時だけでなく、相手先から情報が送られてくるのを待っている通信待機時も含む。この車間自動制御システムでは、例えば所定の通信周期内における情報の受信失敗回数が所定回数(1分間に数回等)に達したときに通信異常と判定し、通信途絶との判断を行う。また、この車間自動制御システムでは、自車の通信装置が正常であるにも拘わらず、例えば所定時間の間(数秒間等)情報を受信できないときに通信待機時と判定し、通信途絶との判断を行う。尚、相手先の通信装置が情報を送信し難くなっているときには、その状況を自車側で判断し難いので、一旦通信待機時と判定し、その後の通信状態如何で通信異常と判定させればよい。
【0030】
情報通信型の車間制御においては、相手先から受信した先行車両の情報に基づいて制御目標値を設定するので、通信途絶になると先行車両の情報が得られず、目標車間距離等の制御目標値の設定が行えなくなる。そこで、この車間自動制御システムにおいては、通信途絶時に上記の情報通信型の車間制御を止めて、従来から行われている直前の先行車両との間の車間制御に切り替える。つまり、この車間自動制御システムにおいては、従来の情報検出型の車間制御(ACC)も実行される。その情報検出型の車間制御とは、自車に搭載している先行車情報測定装置で直前の先行車両との間の車間距離等の情報を測定し、その情報に基づき目標車速等の制御目標値を設定して行う車間制御のことである。
【0031】
その先行車情報測定装置には、例えば、ミリ波レーダ、安価なレーザレーダ、UWB(Ultra Wide Band)レーダ等の近距離用レーダ、可聴域の音波又は超音波を用いたソナー、撮像装置などを利用できる。その撮像装置としては、具体的に、可視光線カメラ、赤外線カメラ(赤外線投光機の有るもの又は無いもの)、単一カメラ、ステレオカメラ等が挙げられる。ミリ波レーダ、レーザレーダ、近距離用レーダ、ソナーの場合、自車の制御装置は、その検出信号に基づいて先行車両を検出し、その先行車両との間の車間距離、相対速度、相対加速度等を演算する。撮像装置の場合、自車の制御装置は、その撮像画像に基づいて先行車両を検出し、その先行車両との間の車間距離や相対速度等を演算する。尚、GPSから先行車両の位置情報についても取得できるのであれば、そのGPSによる先行車両の位置情報と自車の位置情報とに基づいて相対的な位置関係を求めさせてもよい。
【0032】
ところで、その先行車情報測定装置による測定結果は、情報通信型の車間制御において使用してもよい。つまり、この車間自動制御システムにおいては、情報通信型の車間制御の実行中に先行車情報測定装置の測定結果に基づく情報検出型の車間制御を実行させ、車間制御の制御精度を高めるようにしてもよい。また、情報通信型の車間制御の実行中には、そのような情報検出型の車間制御の併用まで行わずとも、自車の直前に先行車両が実際に存在しているのか否かという確認などの為に、先行車情報測定装置による先行車両の検出結果のみを利用させてもよい。更に、この車間自動制御システムにおいては、自車の単独走行時に先行車情報測定装置で先行車両が検出されたときに、その車両間で情報通信型の車間制御を開始させるようにしてもよい。
【0033】
ここで、その先行車情報測定装置と同様の装置で自車の後方を監視することによって、自車の後方に現れた車両を検出することができる。これが為、この車間自動制御システムにおいては、単独走行中の自車の後方にその装置で車両を検出したときに、その車両間で情報通信型の車間制御を開始させるようにしてもよい。一方、この車間自動制御システムにおいては、隊列走行中の自車の後方にその装置で新たな車両が検出されたときに、その検出を自車から車群内の他の車両に送信したり、その新たな後続車両に車群識別情報を送信したりして、新たな隊列での情報通信型の車間制御を実行させるようにしてもよい。尚、新たな車両が検出されたときとは、最後尾を走行している自車の後に新たな車両が追従してきたときだけでなく、隊列の中を走行している自車の後に新たな車両が入り込んできたときも含む。
【0034】
更に、先行車情報測定装置と同様の装置で自車の側方を監視させてもよい。この場合、車間自動制御システムにおいては、自車とは別の車線を併走等している車両の検出ができるので、その車両が自車の前方又は後方に入り込んでくる可能性を予測できるようになる。
【0035】
このような自車の前方、後方及び側方、つまり自車の周辺の車両の検出は、本実施例の他車認識システムで行う。
【0036】
本実施例の他車認識システムは、上述した車間自動制御システムの通信機能を利用し、受信した自車の周辺の他車の情報に基づいて、その他車の認識精度を向上させたものである。この他車認識システムは、図1に示す構成要素を車両に搭載することで実現させる。その図1に示す構成要素は、他車認識システムにおける自車と周辺の他車(例えば先行車両と後続車両)の双方に共通して搭載されるものとして例示する。この他車認識システムの制御動作は、図1に示す制御装置(ECU)10に実行させる。
【0037】
その制御装置10は、周辺物検出装置20の検出結果を用いて自車の周辺の車両の検出を行う。その周辺物検出装置20とは、自車の周辺の物体を検出する装置であり、先行車情報測定装置と同様のものを利用できる。従って、この周辺物検出装置20としては、上述したミリ波レーダ、レーザレーダ、近距離用レーダ、ソナー、撮像装置などを適用すればよい。この周辺物検出装置20は、自車に対する前方、後方又は側方の内の監視対象とする方向の他車を検出できる場所に設置する。つまり、この周辺物検出装置20は、自車の前方を監視対象とするならば車両の前部に設置し、自車の後方を監視対象とするならば車両の後部に設置し、自車の側方を監視対象とするならば車両の右側部及び左側部に設置する。この例示では、周辺全ての監視ができるよう周辺物検出装置20を4箇所全てに配設する。
【0038】
また、制御装置10には、通信装置30が接続される。この通信装置30は、上述した車間自動制御システムにおける通信装置と同じものであり、他車との間の車車間通信や車外の通信施設(路側機等)を介した車路車間通信等を行うことができるものである。この通信装置30は、制御装置10に制御され、車間自動制御システムにおいて車両間で受け渡しされる上述した各種情報(識別情報、走行情報、制御目標値情報、運転者による操作情報、車両の仕様情報、通信規格情報、走行環境情報等)をアンテナ31から送信する。
【0039】
この他車認識システムは、その受信した各種情報に基づく車間自動制御システムによる通信車間制御の実行中に、周辺物検出装置20の検出結果に基づいて通信車間制御の相手である他車を検出し続ける。例えば、自車が後続車両の場合には、先行車両の情報を受信して当該先行車両との通信車間制御を実行しながら、車両前部に配設した周辺物検出装置20で先行車両を検出する。また、自車が先行車両の場合には、後続車両に自車の情報を送信して当該後続車両との通信車間制御が実行されながら、車両後部に配設した周辺物検出装置20で後続車両を検出する。
【0040】
ここで、自車が後続車両の場合には、例えば先行車両がカーブに進入した際に、先行車両が自車の周辺物検出装置20の検出範囲から外れ、自車が一時的にでも周辺物検出装置20による先行車両の検出を行えなくなることがある。この場合には、その後、自車もカーブへと進入したとき又は自車がカーブから抜け出したときに、自車の周辺物検出装置20の検出範囲に同一車線上を先行する他車が入ってきて、その他車が自車の周辺物検出装置20によって検出されることがある。また、自車が先行車両の場合には、例えば自車がカーブに進入した際に、後続車両が自車の周辺物検出装置20の検出範囲から外れ、自車が一時的にでも周辺物検出装置20による後続車両の検出を行えなくなることがある。この場合には、その後、後続車両もカーブへと進入したとき又は後続車両もカーブから抜け出したときに、自車の周辺物検出装置20の検出範囲に同一車線上を追従する他車が入ってきて、その他車が自車の周辺物検出装置20によって検出されることがある。その周辺物検出装置20の検出範囲とは、周辺物検出装置20が物体(車両)の検出を行うことのできる最大限の範囲のことである。尚、その最大限の範囲とは、周辺物検出装置20の仕様としての最大限の範囲であるが、車両への搭載に伴い制御の上で範囲に制限が設けられている場合にはその制限された範囲のことである。
【0041】
しかしながら、周辺物検出装置20の検出範囲から外れた後に検出された他車が、その検出範囲から外れるまで検出されていた車両と同一であるとの確証はない。これが為、他車が周辺物検出装置20で再捕捉されたときには、その検出範囲から外れた後で検出された他車に対して、その検出範囲から外れるまで実行していた通信車間制御をそのまま継続すべきか否か判断し難い。つまり、周辺物検出装置20が見失う前と再捕捉した後の夫々の車両が同一車両であれば何ら問題はないが、これらが異なる車両の場合には、例えば車両識別情報や車両の仕様情報等が違うので、改めて車両間で通信車間制御の為の情報授受によるマッチングを行う必要がある。
【0042】
そこで、本実施例の他車認識システムは、通信車間制御の相手である他車が周辺物検出装置20の検出範囲から外れた場合に、その後で周辺物検出装置20の検出範囲に入ってきた他車が通信車間制御の相手として認識していた他車と同じであるのか否かを判別できるように構成する。
【0043】
制御装置10には、検出中の他車が周辺物検出装置20の検出範囲から離脱したときに、その他車の自車に対する離脱方向を例えば記憶装置等に記憶させる。そして、この制御装置10には、その離脱方向とは逆側から周辺物検出装置20の検出範囲に車両が入ってきたときに、その車両を離脱した他車とは認識させない一方、その離脱方向側から周辺物検出装置20の検出範囲に車両が入ってきたときに、その車両を離脱した他車と認識させるようにする。これにより、自車においては、周辺物検出装置20が他車を見失った後で再捕捉した車両について、見失う前に検出していた他車であるのか全く別の車両であるのかの判別が可能になる。
【0044】
具体的に、自車C1の制御装置10は、図2のフローチャートに示すように、通信車間制御の相手である監視対象車両C2たる他車を周辺物検出装置20によって検出しているのか否か判定する(ステップST5)。
【0045】
自車C1の制御装置10は、周辺物検出装置20で監視対象車両C2が検出されていなければ本演算処理動作を終わらせる一方、その監視対象車両C2が検出されていれば(例えば図3及び図4の左図)、その監視対象車両C2が周辺物検出装置20の検出範囲S1から離脱したのか否かの判定を行う(ステップST10)。
【0046】
ここで、この制御装置10は、その監視対象車両C2が周辺物検出装置20の検出範囲から離脱していなければ、つまりその監視対象車両C2が周辺物検出装置20で検出され続けていれば、本演算処理動作を終わらせる。一方、制御装置10は、その監視対象車両C2が周辺物検出装置20の検出範囲から離脱して、その周辺物検出装置20で検出できなくなったときに、その自車に対する離脱方向を記憶装置等に記憶させる(ステップST15)。例えば、図3及び図4の真ん中の図には、監視対象車両C2たる先行車両の右カーブへの進入により直進走行中の後続車両たる自車C1の周辺物検出装置20の検出範囲S1から先行車両が離脱した状態を示している。
【0047】
その後、自車C1の制御装置10は、周辺物検出装置20の検出範囲に他車が新たに入ってきたのか否かを判定する(ステップST20)。この制御装置10は、他車が新たに入ってきていないと判定した場合、監視対象車両C2が離脱してから所定時間が経過したのか否かを判定し(ステップST25)、その所定時間が経過するまで又は検出範囲に他車が新たに入ってくるまでステップST20の判定を繰り返す。その所定時間は、例えば、自車C1が監視対象車両C2を再度周辺物検出装置20で検出可能な走行時間(カーブの長さや曲率半径等の路面状態により異なる)、通信車間制御の制御解除条件として設定された通信途絶時間、自車C1と監視対象車両C2との間に別の車両が入り込むことが可能な時間、監視対象車両C2が隣の車線に移ることが可能な時間等に設定する。この所定時間が経過するまでに新たな車両が検出されなかった場合、制御装置10は、本演算処理動作を終わらせる。
【0048】
この制御装置10は、ステップST25で他車が新たに検出されたと判定した場合、監視対象車両C2の離脱方向と比較して、その他車がどちら側から周辺物検出装置20の検出範囲に入ってきたのかを判定する(ステップST30)。
【0049】
制御装置10は、その他車が監視対象車両C2の離脱方向とは逆側から周辺物検出装置20の検出範囲に入ってきたと判定した場合、その検出された他車は離脱した監視対象車両C2とは別の車両であると判断する(ステップST35)。この場合の判断は、例えば、自車C1と監視対象車両C2との間へと隣の車線から別の車両が入ってきたときに為される。図3の右図には、かかる状況下について例示している。本図では、後続車両たる自車C1も右カーブへと進入した際に、自車C1に対して右側に離脱した監視対象車両C2とは逆の左側から別の車両C3が周辺物検出装置20の検出範囲S1に出現している。
【0050】
一方、この制御装置10は、他車が監視対象車両C2の離脱方向側から周辺物検出装置20の検出範囲に入ってきたと判定した場合、その検出された他車は離脱した監視対象車両C2と同じ車両であると判断する(ステップST40)。図4の右図には、後続車両たる自車C1も右カーブへと進入した際に、自車C1に対して右側に離脱した監視対象車両C2と同じ右側から車両が周辺物検出装置20の検出範囲S1に出現しているときを示している。つまり、図4の各図は、周辺物検出装置20の検出範囲S1を変更せずに自車C1も同じカーブへと進入することで、その検出範囲S1が監視対象車両C2に対して徐々に近づいていって、監視対象車両C2が自身の離脱方向側から再び周辺物検出装置20の検出範囲S1に表れることを示している。
【0051】
このように、本実施例の他車認識システムは、自車C1の周辺物検出装置20の検出範囲から離脱した監視対象車両C2の離脱方向を記憶しておき、その後で周辺物検出装置20の検出範囲に表れた車両が監視対象車両C2の離脱方向に対してどちら側から表れたのか否かを観ることで、後で検出された車両が監視対象車両C2と同一車両なのか否かを判別する。つまり、ここでは、他車情報の発信車両である監視対象車両C2が周辺物検出装置20の検出範囲から離脱した際の離脱方向と、その監視対象車両C2が前記検出範囲から離脱した後で車両が前記検出範囲に進入した際の進入方向と、に基づいて、その検出範囲に進入した車両が前記発信車両と同一の車両であるのか否かを判断する。その際には、前記進入方向と前記離脱方向とが異なる場合に、周辺物検出装置20の検出範囲に進入した車両を前記発信車両とは異なる車両と判断する。これが為、この他車認識システムは、その判別を精度良く行うことができる。
【0052】
例えば、車間自動制御システムによる通信車間制御が実行中の場合には、制御中の夫々の車両がトンネルに入ると、各車両でGPS41の情報を得難くなり、夫々に自車位置情報の検出精度が低下する。故に、かかる状況下においては、通信による情報の授受を頼りにしている通信車間制御の制御精度が低下し、ときとして通信車間制御そのものを実行できなくなる可能性がある。その際、本実施例の車間自動制御システムは、従来の情報検出型の車間制御に切り替えて、周辺物検出装置20で監視対象車両C2を監視しながら車間制御を実行できる。ここで、そのトンネル内で情報検出型の車間制御を実行中の何れか一方の車両がカーブに進入し、自車C1の周辺物検出装置20の検出範囲から監視対象車両C2が外れたとしても、本実施例の他車認識システムは、上述したように、その後で新たに検出した車両が監視対象車両C2であるのか否かを精度良く判別できる。従って、車間自動制御システムは、その周辺物検出装置20を利用した監視対象車両C2との間における情報検出型の車間制御の継続が可能になる。
【0053】
また、本実施例の他車認識システムは、通信車間制御を実行中の何れか一方の車両がカーブに進入し、自車C1の周辺物検出装置20の検出範囲から監視対象車両C2が外れた場合でも、その後で新たに検出した車両が監視対象車両C2であるのか否かを精度良く判別できる。従って、車間自動制御システムには、新たに検出した車両が監視対象車両C2と同一車両であると判断した際に、その監視対象車両C2との間の通信車間制御を継続させることができる。その継続の際には、例えば、自車C1の識別情報を監視対象車両C2へと送信させ、その識別情報を受け取った監視対象車両C2の識別情報を自車C1に送信させる。つまり、本実施例の他車認識システムは、周辺物検出装置20が監視対象車両C2を見失ったとしても、通信車間制御の継続判断のときに通信車間制御に係る情報を速やかに調和させることができる。
【0054】
ここで、制御装置10には、他車情報の発信車両である監視対象車両C2が周辺物検出装置20の検出範囲から離脱した後、所定時間の経過前までに、新たな車両が周辺物検出装置20の検出範囲に監視対象車両C2も離脱方向から進入してきて、その車両が監視対象車両C2であると判断されたときに、無線通信による追従走行制御等の通信車間制御の継続を許可させることが好ましい。一方、その所定時間が経過したときには、通信車間制御を中止して、例えば運転者の操作による走行へと切り替えることが好ましい。このように時間制限を設けた理由は、一時的な周辺物検出装置20による監視対象車両C2のロストであるならば、改めて通信による識別情報等の授受から通信車間制御を開始させるよりも、そのまま現在の通信車間制御を継続させた方が通信車間制御の介入遅れ等も無く好ましいからである。これに対して、周辺物検出装置20による監視対象車両C2のロストが或る程度の時間続く場合には、完全に監視対象車両C2を見失ったと看做し、運転者の操作による走行等へと切り替えた方が例えば運転者に対して無用な違和感を与えずに済むからである。故に、その所定時間は、監視対象車両C2が周辺物検出装置20の検出範囲から離脱してからの経過時間であり、例えば上記ステップST25にて例示した「通信車間制御の制御解除条件として設定された通信途絶時間」と同等の時間に設定すればよい。
【0055】
ところで、本実施例においては自車C1たる後続車両が監視対象車両C2たる先行車両に通信車間制御で追従走行しているときを例に挙げたが、この他車認識システムによる上記の制御は、その逆、つまり先行車両としての自車C1が監視対象車両C2たる後続車両に通信車間制御で追従されているときに適用してもよく、同様の有用な効果を得ることができる。例えば、自車C1が右カーブに入ったときには、車両後部に配設した周辺物検出装置20の検出範囲から直進走行中の監視対象車両C2が外れる。このときには、車両後方に視線を向けたとすると、その監視対象車両C2が自車に対して左側に離脱する。その後、自車C1の制御装置10が周辺物検出装置20の検出範囲に新たに入ってきた車両を検出した場合には、その車両が検出範囲に監視対象車両C2の離脱方向と同じ左側から入ってきたならば、その車両が監視対象車両C2と同一車両であると判断する。例えば、かかる判断は、その監視対象車両C2も右カーブに進入したとき又は双方の車両ともカーブを抜け出したときに為される。
【0056】
また、本実施例においては通信車間制御中に自車の周辺物検出装置20が通信車間制御対象の他車を見失った場合の制御を例示しているが、この他車認識システムによる上記の制御は、通信車間制御の実行の有無に拘わらず、従来の情報検出型の車間制御の実行中に車間制御対象の他車を見失ったときに適用してもよく、同様の有用な効果を得ることができる。
【0057】
尚、この他車認識システムによる上記の制御については、他の車線を併走する他車に対して実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係る他車認識システムは、通信車間制御の相手である他車が周辺物検出装置の検出範囲から外れた場合に、その後で周辺物検出装置の検出範囲に入ってきた他車が通信車間制御の相手として認識していた他車と同じであるのか否かを判別させる技術に有用である。
【符号の説明】
【0059】
10 制御装置
20 周辺物検出装置
30 通信装置
41 GPS
C1 自車
C2 監視対象車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の周辺の他車情報を受信する通信装置と、
自車の周辺の他車を検出する周辺物検出装置と、
を備え、
前記他車情報の発信車両が前記周辺物検出装置の検出範囲から離脱した際の離脱方向と、前記発信車両が前記検出範囲から離脱した後で車両が前記検出範囲に進入した際の進入方向と、に基づいて、前記検出範囲に進入した車両が前記発信車両と同一の車両か判断することを特徴とした他車認識システム。
【請求項2】
前記進入方向と前記離脱方向とが異なる場合に、前記検出範囲に進入した車両を前記発信車両とは異なる車両と判断することを特徴とした請求項1記載の他車認識システム。
【請求項3】
自車の周辺の他車情報を受信する通信装置と、
前記他車情報に基づいて追従走行制御を行う走行制御装置と、
自車の周辺の他車を検出する周辺物検出装置と、
を備え、
前記走行制御装置は、前記他車情報の発信車両が前記周辺物検出装置の検出範囲から離脱した後、該離脱方向から車両が前記検出範囲に進入した場合、前記追従走行制御を継続することを特徴とした他車認識システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−25353(P2012−25353A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168635(P2010−168635)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】