付箋プリンタ
【課題】 簡単な構成によって、付箋紙束から印刷済みの付箋紙を剥がすこととヘッドと付箋紙束のギャップを一定に保つことの両方を実現できる、付箋プリンタを提供すること。
【解決手段】 付箋プリンタは、印刷ヘッド4に回転自在に設けられた第1ローラ5と、第1ローラ5が最表層の付箋紙10に接触するように、印刷ヘッド4を付箋紙束11に向けて付勢するバネ13と、第1ローラ5の回転を調整する回転調整装置15とを備えている。そして、回転調整装置15は、印刷後に印刷ヘッド4が付箋紙束11に対して糊付け端部10a側に移動する際に第1ローラ5の回転を調整することにより、最表層の付箋紙10の中央部10cを付箋紙束11から分離する。
【解決手段】 付箋プリンタは、印刷ヘッド4に回転自在に設けられた第1ローラ5と、第1ローラ5が最表層の付箋紙10に接触するように、印刷ヘッド4を付箋紙束11に向けて付勢するバネ13と、第1ローラ5の回転を調整する回転調整装置15とを備えている。そして、回転調整装置15は、印刷後に印刷ヘッド4が付箋紙束11に対して糊付け端部10a側に移動する際に第1ローラ5の回転を調整することにより、最表層の付箋紙10の中央部10cを付箋紙束11から分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付箋紙に印刷する付箋プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
付箋紙は、その一端部の裏面に糊付けがなされた状態で多数枚が積層されて付箋紙束を成している。そして、通常、このような付箋紙束から付箋紙を1枚ずつ剥がし、その剥がした付箋紙を別の場所に貼り付けるなどして使用する。従来から、このような付箋紙束を構成する付箋紙の1枚1枚の表面に印刷を行うことが可能な付箋プリンタが知られている。
【0003】
特許文献1には、インクジェット方式の付箋プリンタが開示されている。この付箋プリンタは、一方向(主走査方向)に往復移動可能なキャリッジと、このキャリッジに搭載されたインクジェット式の記録ヘッドと、付箋紙束を保持した状態でキャリッジの移動方向と直交する方向(副走査方向)に付箋紙束を移動可能な付箋紙トレイと、付箋紙トレイに保持された付箋紙束の外周を覆うカバー部材等を備えている。そして、この付箋プリンタは、付箋紙トレイとともに付箋紙束を副走査方向に搬送させつつ、主走査方向に往復移動する記録ヘッドから付箋紙束に向けて直接インクを噴射することにより、付箋紙束の最表層の付箋紙表面に印刷を行うように構成されている。
【0004】
尚、付箋紙束から付箋紙を1枚剥がしてから、その剥がした付箋紙に対して印刷を行うのではなく、上記のように付箋紙束に対して直接インクを噴射して印刷する場合、最表層の付箋紙に印刷を行った後、そのすぐ下の付箋紙にも続けて印刷を行うために、実際には、印刷済みの最表層の付箋紙を付箋紙束から剥がすための構成が必要であると考えられる。しかし、特許文献1には、印刷済みの付箋紙を付箋紙束から分離するための具体的な構成は特に開示されていない。
【0005】
その一方で、一般的に、インクジェット式のプリンタにおいては、印字精度を高めるために、ヘッドと被印刷媒体(ここでは付箋紙)との間の距離(ギャップ)を一定に保つことが好ましい。そこで、前記特許文献1の付箋プリンタにおいては、付箋紙トレイが、付箋紙束を記録ヘッド側へ付勢するホッパを備えており、このホッパにより付箋紙束の外周表面をカバー部材に押し当てることで、ヘッドと付箋紙束とのギャップを一定に保つようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−160475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1に開示されているような、付箋紙束に向けて直接インクを噴射する方式の付箋プリンタにおいては、印刷済みの最表層の付箋紙を付箋紙束から剥がすための構成が必須となる。一方で、印字精度の向上のために、ヘッドと付箋紙束とのギャップを一定に保つための構成がヘッドに付加されていることが好ましい。しかし、このような構成をそれぞれ別々に設けるとなると、部品数が多くなるなど、付箋プリンタの構成が複雑になる。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成によって、付箋紙束から印刷済みの付箋紙を剥がすこととヘッドと付箋紙束のギャップを一定に保つことの両方を実現できる、付箋プリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の付箋プリンタは、所定方向一端部における裏面に糊付けがなされた付箋紙が複数枚積層されて得られた付箋紙束の、最表層の前記付箋紙表面に印刷する付箋プリンタであって、
前記最表層の付箋紙表面に対向するインク噴射面を有し、前記所定方向に沿って前記付箋紙に対して移動しつつ前記インク噴射面から前記最表層の付箋紙表面に向けてインクを噴射して印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに、前記インク噴射面に平行で且つ前記所定方向と交差する方向に延びる回転軸を中心として回転自在に設けられるとともに、少なくともその一部が前記印刷ヘッドの前記インク噴射面よりも前記付箋紙束側に飛び出すように配置された第1ローラと、前記第1ローラが前記最表層の付箋紙表面に接触するように、前記印刷ヘッドを前記付箋紙束に向けて付勢する付勢手段と、前記印刷ヘッドの前記所定方向に関する移動の際に前記第1ローラの回転を調整することにより、前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部を前記付箋紙束から分離する分離手段と、前記分離手段によって前記付箋紙束から分離された前記最表層の付箋紙の前記所定方向他端部を跳ね上げる、跳ね上げ手段を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
印刷ヘッドに回転自在に設けられた第1ローラは、付勢手段によって付勢されて常に付箋紙束の最表層の付箋紙表面に接触している。従って、印刷中には、印刷ヘッドのインク噴射面と付箋紙表面との間のギャップが常に一定に保たれる。一方、印刷終了後に印刷ヘッドが付箋紙束に対して所定方向に移動する際には、分離手段は第1ローラの回転を規制する。これにより、第1ローラと最表層の付箋紙との間に摩擦力を生じさせることで、最表層の付箋紙を第1ローラによりひきずるようにして移動させて、付箋紙の途中部を付箋紙束から分離する。その後、跳ね上げ手段により、その途中部において付箋紙束から分離された最表層の付箋紙の他端部(自由端部)を跳ね上げる。
【0011】
この構成によれば、第1ローラにより、付箋紙束と印刷ヘッドのインク噴射面とのギャップを一定に維持でき、印字精度が向上する。さらに、この第1ローラを用いて最表層の付箋紙を付箋紙束から分離することができるため、この分離を行うための専用の構成を特別に設ける必要がなく、プリンタの構成が簡単になる。
【0012】
尚、本発明において、付箋紙を「分離する」とは、付箋紙を付箋紙束から剥がして完全に別体となるように分離することまでを指すのではなく、付箋紙の、印刷ヘッドの移動方向に関する途中部を、付箋紙束から離すことを意味している。
【0013】
第2の発明の付箋プリンタは、前記第1の発明において、前記分離手段は、前記印刷ヘッドが前記付箋紙束に対して移動しつつ前記最表層の付箋紙に対してインクを噴射するときには、前記最表層の付箋紙が前記付箋紙束から分離しないように、前記第1ローラの回転を規制せずに前記最表層の付箋紙表面において第1ローラを転動させ、
印刷終了後に前記印刷ヘッドが前記付箋紙の前記他端部から前記付箋紙の糊付け端部である前記一端部に向けて移動するときには、前記第1ローラの周速が前記印刷ヘッドの移動速度よりも遅くなるように前記第1ローラの回転を規制し、前記最表層の付箋紙の前記他端部を前記第1ローラとともに前記一端部側へ移動させて、前記最表層の付箋紙の前記途中部を前記付箋紙束から分離することを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、印刷ヘッドのインク噴射時(印刷時)には、第1ローラは分離手段によって回転が規制されておらず、印刷ヘッドの移動に伴って付箋紙表面を転動する。そのため、印刷時に、最表層の付箋紙が第1ローラに引きずられることはない。一方、印刷終了後に印刷ヘッドが付箋紙の他端部(自由端部)から糊付けされた一端部に向けて移動するときに、分離手段は、第1ローラの周速が印刷ヘッドの移動速度よりも遅くなるように第1ローラの回転を規制する。すると、第1ローラと最表層の付箋紙との間に生じる摩擦力によって、付箋紙の他端部が第1ローラに引きずられるように一端部側に移動するため、付箋紙の所定方向途中部が盛り上がって付箋紙束から分離する。
【0015】
第3の発明の付箋プリンタは、前記第1又は第2の発明において、前記跳ね上げ手段は、前記分離手段により前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部が前記付箋紙束から分離された状態で、前記最表層の付箋紙の前記所定方向他端部を前記一端部側に押し出す方向に、前記第1ローラを回転させることにより、前記付箋紙の前記他端部を跳ね上げることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、付箋紙の途中部が付箋紙束から分離した状態で第1ローラを回転させ、付箋紙の他端部(自由端部)を糊付け端部である一端部へ押し出すことで、付箋紙の他端部を跳ね上げることができるため、跳ね上げのための特別な構成が不要となり、プリンタの構成が簡単になる。
【0017】
第4の発明の付箋プリンタは、前記第3の発明において、前記跳ね上げ手段による跳ね上げ時に、前記最表層の付箋紙のすぐ下に位置する2枚目の付箋紙の前記所定方向他端部を押さえる、押さえ手段を有することを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、第1ローラを回転させて最上層の付箋紙を跳ね上げるときに、その下の2枚目の付箋紙がつられて付箋紙束からずれるように移動してしまうのを防止できる。
【0019】
第5の発明の付箋プリンタは、前記第4の発明において、前記押さえ手段は、前記印刷ヘッドに、前記第1ローラよりも前記所定方向他端側の位置において回転自在に設けられた第2ローラであることを特徴とするものである。
【0020】
押さえ手段が、第1ローラとは別に印刷ヘッドに設けられた第2ローラである場合には、この第2ローラを前記第1ローラと同じく、ギャップの維持に用いることができる。即ち、2つのローラにより、印刷ヘッドと付箋紙束とのギャップを安定的に確保できる。
【0021】
第6の発明の付箋プリンタは、前記第5の発明において、前記第2ローラは、前記第1ローラと比べて、前記付箋紙束との間に作用する摩擦力が大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
このように、第2ローラの付箋紙束との間の摩擦力が大きいと、最表層の付箋紙の跳ね上げ時に、その下の付箋紙がずれるのを防止する効果が高くなる。
【0023】
また、第2ローラの付箋紙束との間の摩擦力を大きくするために、前記第6の発明において、前記第2ローラの表面摩擦係数が、前記第1ローラよりも大きくなっていてもよい(第7の発明)。あるいは、前記付勢手段によって前記第2ローラに作用する、前記付箋紙束への押圧力が、前記第1ローラよりも大きくなっていてもよい(第8の発明)。
【0024】
第9の発明の付箋プリンタは、前記第3〜第8の何れかの発明において、前記跳ね上げ手段による跳ね上げ直前において、前記印刷ヘッドは、前記付箋紙束の前記一端から前記第1ローラに向けて延びる接平面よりも、前記付箋紙束側に位置していることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、付箋紙束から分離された最上層の付箋紙の他端部(自由端部)が、第1ローラの回転によって跳ね上げられたときに、この跳ね上げられた付箋紙と印刷ヘッドが互いに干渉するのを防止できる。
【0026】
第10の発明の付箋プリンタは、前記第1又は第2の発明において、前記跳ね上げ手段は、前記分離手段により前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部が前記付箋紙束から分離された状態で、さらに前記第1ローラが前記付箋紙の前記一端側に向かうように、前記印刷ヘッドを前記付箋紙束に対して前記所定方向に相対移動させることにより、前記最表層の付箋紙の前記他端部を跳ね上げることを特徴とするものである。
【0027】
この構成によれば、第1ローラによって付箋紙の途中部が付箋紙束から分離された状態で、印刷ヘッドを付箋紙束に対して付箋紙の一端側(糊付け端部側)に相対移動させることで、第1ローラを付箋紙の一端側に移動させて、最表層の付箋紙の他端部を跳ね上げることができる。
【0028】
第11の発明の付箋プリンタは、前記第1〜第10の何れかの発明において、前記跳ね上げ手段により跳ね上げた前記最表層の付箋紙を、前記付箋紙束から離した状態で保持する保持手段を有することを特徴とするものである。
【0029】
この構成によれば、跳ね上げた付箋紙が、付箋紙束の上に再び積層されてしまうのを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、印刷時においては、付箋紙束の表面に接触する第1ローラにより、付箋紙束と印刷ヘッドとのギャップを一定に維持できるため、印字精度が向上する。さらに、印刷後には、第1ローラを用いて付箋紙の付箋紙束からの分離を行うことができる。従って、印刷済みの最表層の付箋紙を付箋紙束から分離するための構成を特別に設ける必要がなく、プリンタの構成が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態の付箋プリンタの概略平面図であり、図2は、図1のII-II線断面図である。図1、図2に示すように、付箋プリンタ1は、プリンタ本体としてのケース2と、所定の走査方向(図1、図2の左右方向)に往復移動可能なキャリッジ3と、このキャリッジ3に設けられた印刷ヘッド4と、この印刷ヘッド4に回転自在に設けられた第1ローラ5及び第2ローラ6と、付箋紙束11を保持する付箋トレイ7等を備えている。
【0032】
ケース2内にはキャリッジ3を走査方向にガイドするガイド軸8が配置されている。また、キャリッジ3の端部には無端ベルト9が連結されている。そして、無端ベルト9がキャリッジ駆動モータ14により走行駆動されることにより、キャリッジ3がガイド軸8により案内されつつ走査方向に往復移動する。
【0033】
キャリッジ3の下端部にはバネ13を介して印刷ヘッド4が連結されており、印刷ヘッド4はキャリッジ3と一体的に走査方向に往復移動可能である。また、この印刷ヘッド4は図示しないインク供給源と接続され、さらに、印刷ヘッド4の下面には、インク供給源から供給されたインクをそれぞれ噴射する多数のノズル(図示省略)が配置された、インク噴射面4aが設けられている。
【0034】
また、印刷ヘッド4の走査方向に関する両端部には、インク噴射面4aを走査方向に関して挟むように、2つのローラ(第1ローラ5及び第2ローラ6)がそれぞれ回転自在に設けられている。尚、図1、図2には、ローラ5,6として、回転軸5a,6aの両端部にこの回転軸5a,6aよりも径の大きな2つの車輪を有するタイプのものが開示されているが、回転軸方向に関して径が一定のストレートな円柱状のローラであってもよい。また、図1に示すように、2つのローラ5,6の回転軸5a,6aは、それぞれインク噴射面4aに平行で、且つ、走査方向と直交する方向に延びている。さらに、図2に示すように、2つのローラ5,6の車輪は、インク噴射面4aよりも下側に一部飛び出している。
【0035】
キャリッジ3と印刷ヘッド4の間にはバネ13(付勢手段)が介装されており、このバネ13によって印刷ヘッド4が常時下方へ付勢されている。これにより、印刷ヘッド4の走査方向両端部にそれぞれ設けられた第1ローラ5と第2ローラ6が、次述の付箋トレイ7にセットされた付箋紙束11の表面に接触する。従って、相対向する印刷ヘッド4のインク噴射面4aと付箋紙束11(最表層の付箋紙10の表面)との距離(ギャップ)が一定に維持される。
【0036】
印刷ヘッド4の下側には付箋トレイ7が配置されており、この付箋トレイ7に複数枚の付箋紙10からなる付箋紙束11がセットされている。尚、本実施形態においては、個々の付箋紙10は平面視で矩形状に形成されており、その長手方向一端部の裏面に糊付けがなされた状態で複数枚積層されることによって、付箋紙束11が構成されている。また、本実施形態では、図2に示すように、付箋紙束11は、付箋紙10の糊付け端部10aが右側、付箋紙10の自由端部10b(糊付けされていない端部)が左側となるように、付箋トレイ7にセットされる。
【0037】
付箋紙束11の最表層の付箋紙10に印刷を行う際には、付箋プリンタ1は、印刷ヘッド4を、キャリッジ3とともに走査方向一方(図中左方:付箋紙10の自由端部10bに向かう方向)に移動させつつ、第1ローラ5と第2ローラ6を付箋紙束11の表面で転動させる。これにより、キャリッジ3の移動中における付箋紙束11とインク噴射面4aの間のギャップが一定に維持される。この状態で、インク噴射面4aの多数のノズルから付箋紙束11に向けてインクの液滴を噴射させることにより、最表層の付箋紙10の表面に印刷を行う。
【0038】
ところで、印刷ヘッド4により付箋紙束11の最表層の付箋紙10に印刷した後、すぐ下の付箋紙10に続けて印刷を行うためには、印刷済みの最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離して剥がす必要がある。ここで、印刷済みの付箋紙10を付箋紙束11から分離するための構成を付箋プリンタ1に別途設けてもよいが、そうするとプリンタ1の構成が複雑になり、また、製造コストも高くなる。
【0039】
そこで、図1、図2に示すように、本実施形態の付箋プリンタ1は、印刷済みの付箋紙10を付箋紙束11から分離するために、印刷ヘッド4の移動の際に、糊付け端部10a側(図中右側)に位置する第1ローラ5の回転を調整する回転調整装置15をさらに備えている。
【0040】
この回転調整装置15は、印刷ヘッド4が左方(付箋紙10の自由端部10bに向かう方向)に移動しながら印刷動作を行う際には、第1ローラ5を自由回転状態に維持する。一方、印刷後に、印刷ヘッド4が右方(付箋紙10の糊付け端部10aに向かう方向)に戻る際には、第1ローラ5の回転を調整することによって、印刷済みの最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離する。その後、さらに、第1ローラ5を回転駆動することにより、分離した最表層の付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる。尚、第2ローラ6についてはこのような回転調整装置は設けられておらず、第2ローラ6は常に自由回転可能な状態である。
【0041】
図3に回転調整装置15の一例を示す。図3に示すように、本実施形態の回転調整装置15は、駆動モータ20と、駆動モータ20の出力ギヤ21と噛合し、駆動モータ20により回転駆動される太陽ギヤ22と、太陽ギヤ22と噛み合うとともに回転しながら太陽ギヤ22の外周を周回する2つの遊星ギヤ23a,23bと、第1ローラ5の回転軸5aに設けられたギヤ24とを備えている。また、2つの遊星ギヤ23a,23bは太陽ギヤ22の回転軸を中心に回転可能な連結部材25によって互いに連結されている。
【0042】
以下、印刷ヘッド4や回転調整装置15を含む付箋プリンタ1の、最表層の付箋紙10に対する印刷から、印刷済みの付箋紙10の分離及び跳ね上げに至るまでの動作について説明する。
【0043】
(印刷動作)
図4は、印刷中における付箋プリンタ1の動作図である。印刷ヘッド4による印刷時には、図4(a)〜(c)に示すように、キャリッジ駆動モータ14(図1参照)によりキャリッジ3とともに印刷ヘッド4を図中右側(付箋紙10の糊付け端部10a側)から左側(自由端部10b側)へ移動させながら、印刷ヘッド4のインク噴射面4aから付箋紙束11に向けてインクを噴射させる。このとき、印刷ヘッド4の走査方向両端部にそれぞれ設けられた2つのローラ5,6がバネ13により付勢されて付箋紙束11の表面に接触していることから、インク噴射面4aと付箋紙束11とのギャップが一定に確保され、印字精度が向上する。
【0044】
また、この印刷時においては、最表層の付箋紙10が第1ローラ5に引きずられたりして付箋紙束11から分離する(ずれる)と印刷に悪影響が出るため、回転調整装置15は、第1ローラ5の回転調整は行わず、第1ローラ5を自由回転状態に維持する。従って、第1ローラ5と第2ローラ6は、印刷ヘッド4の左方への移動に伴って、共に最表層の付箋紙10の表面において図中矢印Aの方向に転動する。
【0045】
このときの回転調整装置15の作用を図3(a)を用いて具体的に説明する。印刷ヘッド4が停止している状態では、第1ローラ5と同軸回転するギヤ24と一方の遊星ギヤ23bとが噛み合っている。その状態から、第1ローラ5が付箋紙束11の表面に接触した状態で印刷ヘッド4が図中左方へ移動すると、それに伴って、図3(a)に示すように、第1ローラ5は矢印Aで示すように、反時計回りの方向に回転しようとする。このとき、破線矢印aで示すように、ギヤ24の回転に伴って遊星ギヤ23bも回転して、太陽ギヤ22の周りをギヤ24から離れる方向に移動し、ギヤ24と遊星ギヤ23bの噛合状態が解除される。従って、第1ローラ5は自由回転可能な状態となり、付箋紙束11の表面を転動することになる。
【0046】
(分離動作)
図5は、先の印刷動作によって印刷された最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離する際の付箋プリンタ1の動作図である。最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離する際には、キャリッジ駆動モータ14によりキャリッジ3とともに印刷ヘッド4を図中左側(自由端部10b側)から右側(糊付け端部10a側)へ移動させる。その際、回転調整装置15により、第1ローラ5が自由回転しないようにこの第1ローラ5の回転を規制する。ここで、第1ローラ5が全く回転しないようにロックしてもよいが、完全にロックしなくても第1ローラ5にある程度の回転抵抗(ブレーキ)をかけて回転を規制するだけでもよい。この回転規制により、転動方向(図中の矢印Bの方向)に関する第1ローラ5の周速V1を印刷ヘッド4の走査方向移動速度V2よりも遅くさせる。
【0047】
この回転規制を行う際の回転調整装置15の作用を図3(b)を用いて具体的に説明する。まず、駆動モータ20により出力ギヤ21を図中bの方向に回転させ、これにより太陽ギヤ22を図中cの方向に回転駆動する。すると、太陽ギヤ22と噛み合う遊星ギヤ23aが、太陽ギヤ22の周りを破線矢印aの方向に移動し、第1ローラ5と同軸回転するギヤ24と噛み合う。これにより、駆動モータ20のトルクがギヤ24を介して第1ローラ5に伝達され、このトルクは第1ローラ5に回転抵抗として作用するため、第1ローラ5の回転が規制されることになる。尚、駆動モータ20は、遊星ギヤ23aとギヤ24とを介して所定のトルク(回転抵抗)を第1ローラ5に付与する状態を、分離動作期間中に継続して維持する。
【0048】
このように、第1ローラ5の回転が規制されることにより、第1ローラ5の周速V1が印刷ヘッド4の移動速度V2よりも遅くなると、図5(b)に示すように、第1ローラ5と最表層の付箋紙10との間に摩擦力が生じ、最表層の付箋紙10の自由端部10bが第1ローラ5に引きずられて糊付け端部10a側に移動する。また、最表層の付箋紙10の自由端部10bと反対側の端部(糊付け端部10a)は付箋紙束11に固定された状態である。従って、付箋紙10の自由端部10bが第1ローラ5とともに図中右方に移動することで、図5(c)に示すように、その中央部10c(走査方向途中部)が盛り上がり、付箋紙束11から分離することになる。
【0049】
(跳ね上げ動作)
図6は、分離された最表層の付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる際の付箋プリンタ1の動作図である。最表層の付箋紙10の中央部10cが付箋紙束11から分離した状態で、図6(a)に示すように、回転調整装置15により、第1ローラ5を図中矢印Aの方向に回転させる。尚、この第1ローラ5の回転駆動は、印刷ヘッド4を停止させてから開始してもよいし、印刷ヘッド4を移動させたままで開始してもよい。
【0050】
具体的には、図3(c)に示すように、駆動モータ20は、先の分離動作時よりも大きなトルクで太陽ギヤ22を矢印cの方向に回転駆動する。すると、太陽ギヤ22と噛み合う遊星ギヤ23aが図中矢印dの方向に回転し、さらに、ギヤ24が図中矢印eの方向に回転する。これにより、ギヤ24と同軸回転する第1ローラ5が矢印Aの方向に回転駆動される。
【0051】
このように、第1ローラ5が矢印Aの方向に回転駆動されると、この第1ローラ5により、図6(b)に示すように、最表層の付箋紙10の自由端部10bが右側(糊付け端部10a側)へ押し出されて付箋紙束11から上方へ離れる。さらに第1ローラ5を矢印Aの方向に回転させ続けることで、最終的に、図6(c)に示すように、自由端部10bが上方に跳ね上げられ、付箋紙10が第1ローラ5の上に乗っかった状態となる。
【0052】
以上のようにして、第1ローラ5の上に跳ね上げられた最表層の付箋紙10は、例えば、モータ等によって駆動される排紙ローラ(図示省略)により所定の排紙位置まで搬送することが可能である。この場合には、排紙ローラによって下流側へ付箋紙10が送られる際に、付箋紙10の糊付け端部10aは付箋紙束11から自動的に分離する。尚、このような排紙ローラ等の排紙手段は必須の構成ではなく、図6(c)のように跳ね上げられた付箋紙10を、ユーザー自らが手で摘んで引き抜くようにして取り出すことも可能である。
【0053】
尚、本実施形態では、第1ローラ5の回転を調整する、上述した回転調整装置15が、印刷済みの最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離する分離手段と、その分離された付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる跳ね上げ手段の両方を兼ねている。
【0054】
ところで、図6のようにして第1ローラ5を回転させて最表層の付箋紙10を跳ね上げる際に、最表層の付箋紙10につられて、その下の2枚目の付箋紙10が移動して付箋紙束11からずれてしまう虞がある。しかし、本実施形態においては、図6に示すように、第1ローラ5による跳ね上げ時には、印刷ヘッド4に設けられた第2ローラ6が、2枚目の付箋紙10の自由端部10bを押さえている(押さえ手段)。従って、最表層の付箋紙10を跳ね上げ時に、2枚目の付箋紙10がつられて付箋紙束11からずれるように移動してしまうのを防止できる。
【0055】
さらに、2枚目の付箋紙10の付箋紙束11からのずれをより確実に防止するためには、第2ローラ6は、第1ローラ5と比べて、付箋紙束11との間に作用する摩擦力が大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0056】
このような構成の具体例として、例えば、第2ローラ6の表面摩擦係数が、第1ローラ5よりも大きくなっている形態が挙げられる。
【0057】
あるいは、バネ13によって第2ローラ6に作用する付箋紙束11への押圧力が、第1ローラ5よりも大きくなるように構成されてもよい。例えば、バネ13が第1ローラ5よりも第2ローラ6に近い位置に配置されることにより、第2ローラ6に大きな付勢力が作用するように構成されてもよい。または、第1ローラ5と第2ローラ6をそれぞれ付勢するための2つのバネ13が設けられた上で、第2ローラ6を付勢するバネ13として、第1ローラ5を付勢するバネ13よりも付勢力の大きいものが使用されてもよい。
【0058】
また、図6(a)に示すように、最表層の付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる直前の状態において、印刷ヘッド4(及びキャリッジ3)は、付箋紙束11の糊付け端部10a側の端から第1ローラ5に向けて延びる接平面Pよりも、付箋紙束11側(下側)に位置していることが好ましい。この場合には、付箋紙束11から分離された最上層の付箋紙10の自由端部10bが、第1ローラ5の回転によって跳ね上げられたときに、この跳ね上げられた付箋紙10と印刷ヘッド4が互いに干渉するのを防止できる。
【0059】
次に、上述した一連の動作を実現する付箋プリンタ1の電気的構成について、図7のブロック図を参照して簡単に説明しておく。付箋プリンタ1は、ユーザーにより印刷データ等の入力や各種設定がなされる操作入力部26と、この操作入力部26からの入力信号に基づいて、印刷ヘッド4、キャリッジ3を駆動するキャリッジ駆動モータ14、第1ローラ5の回転を調整する回転調整装置15等、付箋プリンタ1の各部をそれぞれ制御する制御装置27とを備えている。
【0060】
制御装置27は、例えば、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、付箋プリンタ1の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備え、ROMに格納されたプログラムがCPUで実行されることにより、以下に説明するような種々の制御を行うものであってもよい。あるいは、演算回路を含む各種回路が組み合わされたハードウェア的なものであってもよい。
【0061】
そして、制御装置27は、付箋プリンタ1の各部を制御して上述した一連の動作を実現するように構成されている。即ち、操作入力部26から入力された印刷データに基づいて、印刷ヘッド4とキャリッジ駆動モータ14を制御して、印刷ヘッド4を付箋紙10の自由端部10b側に移動させつつ、付箋紙束11に向けてインクを噴射させ、最表層の付箋紙10に画像や文字等を印刷する。また、最表層への付箋紙10への印刷終了後には、キャリッジ駆動モータ14を制御して、印刷ヘッド4を付箋紙10の糊付け端部10a側に移動させつつ、回転調整装置15により第1ローラ5の回転を規制して、最表層の付箋紙10の中央部を付箋紙束11から分離させる。その後、さらに、回転調整装置15により第1ローラ5を回転駆動して、付箋紙束11から分離した最表層の付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる。
【0062】
以上説明した付箋プリンタ1によれば、印刷ヘッド4に設けられた第1ローラ5と第2ローラ6により、付箋紙束11と印刷ヘッド4のインク噴射面4aとのギャップを一定に維持できるため、印字精度が向上する。さらに、ギャップ確保用の第1ローラ5を用いて、印刷済みの付箋紙10の付箋紙束11からの分離、及び、分離された付箋紙10の跳ね上げを行うことができる。従って、最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離するための構成や跳ね上げのための構成を特別に設ける必要がなく、付箋プリンタ1の構成が簡単になる。
【0063】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0064】
1]前記実施形態では、最表層の付箋紙10の分離後に、回転調整装置15により第1ローラ5を回転させることにより付箋紙10の自由端部10bを押し出して跳ね上げているが、以下に例示するような別の構成によって跳ね上げを行うことも可能である。
【0065】
(変更形態1)
図8(a)に示すように、第1ローラ5により最表層の付箋紙10の中央部10cが付箋紙束11から分離された状態で、さらに第1ローラ5が付箋紙10の糊付け端部10a側に向かうように、印刷ヘッド4を付箋紙束11に対して走査方向(図中右方)に移動させてもよい。この場合でも、図8(b),(c)に示すように、第1ローラ5により付箋紙10の自由端部10bが右方へ押し出されることにより、この自由端部10bが第1ローラ5の外周に沿って上方へ移動し、その結果、自由端部10bが跳ね上げられることになる。
【0066】
尚、印刷ヘッド4が図中右方に移動する際に、第1ローラ5が付箋紙束11の表面で転動してしまうと、付箋紙10の自由端部10bが第1ローラ5に巻き込まれる虞があるので、回転調整装置15により第1ローラ5の回転を規制しておくことが好ましい。つまり、付箋紙10の分離が完了した後、第1ローラ5の回転を規制した状態を維持したままで、さらに印刷ヘッド4を右方へ移動させて跳ね上げを行うことが好ましい。
【0067】
(変更形態2)
上述した変更形態1(図8)のように、第1ローラ5を走査方向と完全に平行な方向(真水平)に移動させると、最表層の付箋紙10の自由端部10bが完全に跳ね上げられる前に糊付け端部10aが付箋紙束11から剥がれたり、あるいは、水平に移動する第1ローラ5により最表層の付箋紙10が折り曲がってしまったりすることも考えられる。そこで、図9に示すように、キャリッジ3に、印刷ヘッド4を上下に駆動する、モータやシリンダ、あるいは、ソレノイド等のアクチュエータ等で構成されるヘッド駆動機構30が設けられている場合には、印刷ヘッド4を走査方向に移動させるとともに、ヘッド駆動機構30により、印刷ヘッド4を上方(付箋紙束11から離れる方向)にも移動させることが好ましい。つまり、印刷ヘッド4を図中右斜め上方に移動させることが好ましい。尚、この場合には、ヘッド駆動機構30が印刷ヘッド4を付箋紙束11に向けて付勢する付勢手段を兼ねている。
【0068】
(変更形態3)
印刷ヘッド4やこれに設けられた第1ローラ5等の、付箋紙10への印刷に用いられる構成を付箋紙10の跳ね上げに兼用する必要は必ずしもなく、付箋紙10の跳ね上げ専用の構成が設けられていてもよい。例えば、図10に示すように、付箋紙束11から分離された最表層の付箋紙10の中央部10c下側に通される棒状の部材31と、この棒状の部材31を回動又は上方に移動させることにより、付箋紙10を跳ね上げるモータ等の駆動手段32を備えていてもよい。
【0069】
2]第1ローラ5の回転を調整する回転調整装置(分離手段)は、前記実施形態のものには限られず、以下に例示するような他の構成を採用することも可能である。
【0070】
(変更形態4)
前記実施形態の回転調整装置15は、図3に示すように、印刷中における第1ローラ5の自由回転状態と、付箋紙10の分離時と跳ね上げ時におけるトルク伝達状態(回転規制及び回転駆動状態)とを、太陽ギヤ22と遊星ギヤ23a,23bによって切り替えている。しかし、モータやシリンダ等の適宜の駆動手段によって駆動モータ20と第1ローラ5のギヤ24とが離接可能に構成されている場合には、上述した太陽ギヤ22や遊星ギヤ23a,23bを省略することが可能である。即ち、印刷時には駆動モータ20の出力ギヤ21と第1ローラ5のギヤ24とが互いに噛み合わない位置関係にあって第1ローラ5の自由回転が維持される。一方、最表層の付箋紙10を分離する際には、駆動モータ20と第1ローラ5とが接近する方向に駆動されて、駆動モータ20の出力ギヤ21と第1ローラ5のギヤ24とが噛み合うことにより、第1ローラ5に駆動モータのトルクが伝達される状態となる。
【0071】
(変更形態5)
前記実施形態の回転調整装置15は、付箋紙10の分離時に、駆動モータ20からトルク(回転抵抗)を伝達することによって第1ローラ5の回転を規制するように構成されているが、このような駆動モータを使用せずに第1ローラ5の回転を規制することも可能である。例えば、回転体にブレーキパッドを押しつけて減速させるブレーキ機構(いわゆる、ディスクブレーキ)によって、第1ローラ5の回転を規制するものであってもよい。あるいは、ストッパーによって第1ローラ5の回転を機械的にロックするものであってもよい。
【0072】
3]前記実施形態においては、印刷ヘッド4に2つのローラ5,6が回転自在に設けられていたが、付箋紙10の分離や跳ね上げには直接使用しない第2ローラ6は省略することも可能である。その一例を以下に示す。
【0073】
(変更形態6)
図11に示すように、変更形態6の付箋プリンタ1Aは、ガイド軸8に沿って走査方向に移動可能なキャリッジ3と、このキャリッジ3の下部にバネ13を介して接続された印刷ヘッド4と、この印刷ヘッド4に回転自在に設けられた1つのローラ5(第1ローラ)とを備えている。この形態においても、適宜の構成を備えた回転調整装置によりローラ5の回転を調整することによって、印刷済みの最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離し、さらには、分離した付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げることが可能である。
【0074】
4]適宜の跳ね上げ手段によって跳ね上げた最表層の付箋紙10を、付箋紙束11から離した状態で保持する保持手段を備えていてもよい。その一例を以下に示す。
【0075】
(変更形態7)
図12に示すように、変更形態7の付箋プリンタ1Bは、付箋紙束11よりも上方の位置で、且つ、付箋紙束11の幅方向両側の位置にそれぞれ設けられた、2つの保持部材40(保持手段)を有する。2つの保持部材40は、平面視で付箋紙束11と重ならない退避位置(図12(a)の実線で示された位置)と、平面視で付箋紙束11と重なる保持位置(図12(a)の2点鎖線で示された位置)とにわたって、水平面内で回動可能に構成されている。
【0076】
最表層の付箋紙10への印刷中、あるいは、印刷済みの付箋紙10の分離中には、2つの保持部材40は退避位置で待機する。一方、付箋紙束11から分離された最表層の付箋紙10が、図12(b)の実線で示すように跳ね上げられたときには、2つの保持部材40は退避位置から保持位置まで回動し、これら2つの保持部材40により、最表層の付箋紙10が、図12(b)の2点鎖線で示すように、付箋紙束11の上方において保持される。これにより、跳ね上げた付箋紙10が、付箋紙束11の上に再び積層されてしまうのを確実に防止できる。
【0077】
尚、上述した変更形態7においては、付箋紙10を跳ね上げた後に、保持部材40で付箋紙10を保持するようにしているが、付箋紙10を付箋紙束11から分離した後であって、付箋紙10の跳ね上げ前に、保持部材で付箋紙10を保持するように構成されてもよい。例えば、付箋紙10の中央部10cが付箋紙束11から分離された状態(図6(a)参照)、この分離した中央部10cの下側に、棒状の保持部材を付箋紙10の幅方向(走査方向と直交する方向)から挿入するなどして、分離状態の付箋紙10を保持するようにしてもよい。
【0078】
5]前記実施形態においては、印刷ヘッド4が付箋紙束11に対して走査方向一方(付箋紙10の自由端部10bに向かう方向)に移動する際にのみ印刷を行い、走査方向他方(付箋紙10の糊付け端部10aに向かう方向)に移動して戻る際に、印刷した付箋紙10を分離するように構成されている。しかし、印刷ヘッド4が付箋紙束11に対して走査方向に何回も往復しながら印刷を行うものであってもよい。この場合には、印刷が終了していない状態で印刷ヘッド4が糊付け端部10a側に移動する際には、まだ印刷中であることから回転調整装置は第1ローラ5の回転は規制しないようにし、印刷が終了した後に印刷ヘッド4が糊付け端部10a側に移動する場合にのみ、回転調整装置は第1ローラ5の回転を規制し、印刷済みの付箋紙10を分離する。
【0079】
6]前記実施形態及びその変更形態においては、印刷ヘッド4が付箋トレイ7にセットされた付箋紙束11に対して走査方向に移動することにより、最表層の付箋紙10への印刷や印刷済みの付箋紙10の分離を行うようになっているが、固定された印刷ヘッドに対して付箋トレイが走査方向に移動することにより、印刷や分離が行われるように構成されてもよい。
【0080】
7]本発明の付箋プリンタにおいて取り扱いが可能な付箋紙束は、図1に示されるような平面視で矩形状のものに限られない。即ち、付箋紙がその一端部において糊付けされた状態で積層されたものであれば、どのような平面形状を有するものであろうとも、上述したような印刷動作、分離動作、跳ね上げ動作を行うことは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態に係る付箋プリンタの概略平面図である。
【図2】図1の付箋プリンタのII-II線断面図である。
【図3】回転調整装置を示す図であり、(a)は印刷時、(b)は付箋紙分離時、(c)は跳ね上げ時の状態をそれぞれ示す。
【図4】印刷時における付箋プリンタの動作を示す図であり、(a)は印刷開始時、(b)印刷中、(c)は印刷終了時の状態をそれぞれ示す。
【図5】付箋紙分離時における付箋プリンタの動作を示す図であり、(a)は分離開始時、(b)分離中、(c)は分離終了時の状態をそれぞれ示す。
【図6】跳ね上げ時における付箋プリンタの動作を示す図であり、(a)は跳ね上げ開始時、(b)跳ね上げ中、(c)は跳ね上げ終了時の状態をそれぞれ示す。
【図7】付箋プリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】変更形態1の付箋プリンタの跳ね上げ時における動作を示す図であり、(a)は跳ね上げ開始時、(b)跳ね上げ中、(c)は跳ね上げ終了時の状態をそれぞれ示す。
【図9】変更形態2の付箋プリンタの跳ね上げ時における動作を示す図であり、(a)は跳ね上げ開始時、(b)跳ね上げ中、(c)は跳ね上げ終了時の状態をそれぞれ示す。
【図10】変更形態3の付箋プリンタの、跳ね上げ動作を示す図である。
【図11】変更形態6の付箋プリンタの図2相当の断面図である。
【図12】変更形態7の付箋プリンタを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B 付箋プリンタ
4 印刷ヘッド
4a インク噴射面
5 第1ローラ
6 第2ローラ
10 付箋紙
10a 糊付け端部
10b 自由端部
10c 中央部
11 付箋紙束
13 バネ
15 回転調整装置
40 保持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、付箋紙に印刷する付箋プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
付箋紙は、その一端部の裏面に糊付けがなされた状態で多数枚が積層されて付箋紙束を成している。そして、通常、このような付箋紙束から付箋紙を1枚ずつ剥がし、その剥がした付箋紙を別の場所に貼り付けるなどして使用する。従来から、このような付箋紙束を構成する付箋紙の1枚1枚の表面に印刷を行うことが可能な付箋プリンタが知られている。
【0003】
特許文献1には、インクジェット方式の付箋プリンタが開示されている。この付箋プリンタは、一方向(主走査方向)に往復移動可能なキャリッジと、このキャリッジに搭載されたインクジェット式の記録ヘッドと、付箋紙束を保持した状態でキャリッジの移動方向と直交する方向(副走査方向)に付箋紙束を移動可能な付箋紙トレイと、付箋紙トレイに保持された付箋紙束の外周を覆うカバー部材等を備えている。そして、この付箋プリンタは、付箋紙トレイとともに付箋紙束を副走査方向に搬送させつつ、主走査方向に往復移動する記録ヘッドから付箋紙束に向けて直接インクを噴射することにより、付箋紙束の最表層の付箋紙表面に印刷を行うように構成されている。
【0004】
尚、付箋紙束から付箋紙を1枚剥がしてから、その剥がした付箋紙に対して印刷を行うのではなく、上記のように付箋紙束に対して直接インクを噴射して印刷する場合、最表層の付箋紙に印刷を行った後、そのすぐ下の付箋紙にも続けて印刷を行うために、実際には、印刷済みの最表層の付箋紙を付箋紙束から剥がすための構成が必要であると考えられる。しかし、特許文献1には、印刷済みの付箋紙を付箋紙束から分離するための具体的な構成は特に開示されていない。
【0005】
その一方で、一般的に、インクジェット式のプリンタにおいては、印字精度を高めるために、ヘッドと被印刷媒体(ここでは付箋紙)との間の距離(ギャップ)を一定に保つことが好ましい。そこで、前記特許文献1の付箋プリンタにおいては、付箋紙トレイが、付箋紙束を記録ヘッド側へ付勢するホッパを備えており、このホッパにより付箋紙束の外周表面をカバー部材に押し当てることで、ヘッドと付箋紙束とのギャップを一定に保つようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−160475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1に開示されているような、付箋紙束に向けて直接インクを噴射する方式の付箋プリンタにおいては、印刷済みの最表層の付箋紙を付箋紙束から剥がすための構成が必須となる。一方で、印字精度の向上のために、ヘッドと付箋紙束とのギャップを一定に保つための構成がヘッドに付加されていることが好ましい。しかし、このような構成をそれぞれ別々に設けるとなると、部品数が多くなるなど、付箋プリンタの構成が複雑になる。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成によって、付箋紙束から印刷済みの付箋紙を剥がすこととヘッドと付箋紙束のギャップを一定に保つことの両方を実現できる、付箋プリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の付箋プリンタは、所定方向一端部における裏面に糊付けがなされた付箋紙が複数枚積層されて得られた付箋紙束の、最表層の前記付箋紙表面に印刷する付箋プリンタであって、
前記最表層の付箋紙表面に対向するインク噴射面を有し、前記所定方向に沿って前記付箋紙に対して移動しつつ前記インク噴射面から前記最表層の付箋紙表面に向けてインクを噴射して印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに、前記インク噴射面に平行で且つ前記所定方向と交差する方向に延びる回転軸を中心として回転自在に設けられるとともに、少なくともその一部が前記印刷ヘッドの前記インク噴射面よりも前記付箋紙束側に飛び出すように配置された第1ローラと、前記第1ローラが前記最表層の付箋紙表面に接触するように、前記印刷ヘッドを前記付箋紙束に向けて付勢する付勢手段と、前記印刷ヘッドの前記所定方向に関する移動の際に前記第1ローラの回転を調整することにより、前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部を前記付箋紙束から分離する分離手段と、前記分離手段によって前記付箋紙束から分離された前記最表層の付箋紙の前記所定方向他端部を跳ね上げる、跳ね上げ手段を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
印刷ヘッドに回転自在に設けられた第1ローラは、付勢手段によって付勢されて常に付箋紙束の最表層の付箋紙表面に接触している。従って、印刷中には、印刷ヘッドのインク噴射面と付箋紙表面との間のギャップが常に一定に保たれる。一方、印刷終了後に印刷ヘッドが付箋紙束に対して所定方向に移動する際には、分離手段は第1ローラの回転を規制する。これにより、第1ローラと最表層の付箋紙との間に摩擦力を生じさせることで、最表層の付箋紙を第1ローラによりひきずるようにして移動させて、付箋紙の途中部を付箋紙束から分離する。その後、跳ね上げ手段により、その途中部において付箋紙束から分離された最表層の付箋紙の他端部(自由端部)を跳ね上げる。
【0011】
この構成によれば、第1ローラにより、付箋紙束と印刷ヘッドのインク噴射面とのギャップを一定に維持でき、印字精度が向上する。さらに、この第1ローラを用いて最表層の付箋紙を付箋紙束から分離することができるため、この分離を行うための専用の構成を特別に設ける必要がなく、プリンタの構成が簡単になる。
【0012】
尚、本発明において、付箋紙を「分離する」とは、付箋紙を付箋紙束から剥がして完全に別体となるように分離することまでを指すのではなく、付箋紙の、印刷ヘッドの移動方向に関する途中部を、付箋紙束から離すことを意味している。
【0013】
第2の発明の付箋プリンタは、前記第1の発明において、前記分離手段は、前記印刷ヘッドが前記付箋紙束に対して移動しつつ前記最表層の付箋紙に対してインクを噴射するときには、前記最表層の付箋紙が前記付箋紙束から分離しないように、前記第1ローラの回転を規制せずに前記最表層の付箋紙表面において第1ローラを転動させ、
印刷終了後に前記印刷ヘッドが前記付箋紙の前記他端部から前記付箋紙の糊付け端部である前記一端部に向けて移動するときには、前記第1ローラの周速が前記印刷ヘッドの移動速度よりも遅くなるように前記第1ローラの回転を規制し、前記最表層の付箋紙の前記他端部を前記第1ローラとともに前記一端部側へ移動させて、前記最表層の付箋紙の前記途中部を前記付箋紙束から分離することを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、印刷ヘッドのインク噴射時(印刷時)には、第1ローラは分離手段によって回転が規制されておらず、印刷ヘッドの移動に伴って付箋紙表面を転動する。そのため、印刷時に、最表層の付箋紙が第1ローラに引きずられることはない。一方、印刷終了後に印刷ヘッドが付箋紙の他端部(自由端部)から糊付けされた一端部に向けて移動するときに、分離手段は、第1ローラの周速が印刷ヘッドの移動速度よりも遅くなるように第1ローラの回転を規制する。すると、第1ローラと最表層の付箋紙との間に生じる摩擦力によって、付箋紙の他端部が第1ローラに引きずられるように一端部側に移動するため、付箋紙の所定方向途中部が盛り上がって付箋紙束から分離する。
【0015】
第3の発明の付箋プリンタは、前記第1又は第2の発明において、前記跳ね上げ手段は、前記分離手段により前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部が前記付箋紙束から分離された状態で、前記最表層の付箋紙の前記所定方向他端部を前記一端部側に押し出す方向に、前記第1ローラを回転させることにより、前記付箋紙の前記他端部を跳ね上げることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、付箋紙の途中部が付箋紙束から分離した状態で第1ローラを回転させ、付箋紙の他端部(自由端部)を糊付け端部である一端部へ押し出すことで、付箋紙の他端部を跳ね上げることができるため、跳ね上げのための特別な構成が不要となり、プリンタの構成が簡単になる。
【0017】
第4の発明の付箋プリンタは、前記第3の発明において、前記跳ね上げ手段による跳ね上げ時に、前記最表層の付箋紙のすぐ下に位置する2枚目の付箋紙の前記所定方向他端部を押さえる、押さえ手段を有することを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、第1ローラを回転させて最上層の付箋紙を跳ね上げるときに、その下の2枚目の付箋紙がつられて付箋紙束からずれるように移動してしまうのを防止できる。
【0019】
第5の発明の付箋プリンタは、前記第4の発明において、前記押さえ手段は、前記印刷ヘッドに、前記第1ローラよりも前記所定方向他端側の位置において回転自在に設けられた第2ローラであることを特徴とするものである。
【0020】
押さえ手段が、第1ローラとは別に印刷ヘッドに設けられた第2ローラである場合には、この第2ローラを前記第1ローラと同じく、ギャップの維持に用いることができる。即ち、2つのローラにより、印刷ヘッドと付箋紙束とのギャップを安定的に確保できる。
【0021】
第6の発明の付箋プリンタは、前記第5の発明において、前記第2ローラは、前記第1ローラと比べて、前記付箋紙束との間に作用する摩擦力が大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
このように、第2ローラの付箋紙束との間の摩擦力が大きいと、最表層の付箋紙の跳ね上げ時に、その下の付箋紙がずれるのを防止する効果が高くなる。
【0023】
また、第2ローラの付箋紙束との間の摩擦力を大きくするために、前記第6の発明において、前記第2ローラの表面摩擦係数が、前記第1ローラよりも大きくなっていてもよい(第7の発明)。あるいは、前記付勢手段によって前記第2ローラに作用する、前記付箋紙束への押圧力が、前記第1ローラよりも大きくなっていてもよい(第8の発明)。
【0024】
第9の発明の付箋プリンタは、前記第3〜第8の何れかの発明において、前記跳ね上げ手段による跳ね上げ直前において、前記印刷ヘッドは、前記付箋紙束の前記一端から前記第1ローラに向けて延びる接平面よりも、前記付箋紙束側に位置していることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、付箋紙束から分離された最上層の付箋紙の他端部(自由端部)が、第1ローラの回転によって跳ね上げられたときに、この跳ね上げられた付箋紙と印刷ヘッドが互いに干渉するのを防止できる。
【0026】
第10の発明の付箋プリンタは、前記第1又は第2の発明において、前記跳ね上げ手段は、前記分離手段により前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部が前記付箋紙束から分離された状態で、さらに前記第1ローラが前記付箋紙の前記一端側に向かうように、前記印刷ヘッドを前記付箋紙束に対して前記所定方向に相対移動させることにより、前記最表層の付箋紙の前記他端部を跳ね上げることを特徴とするものである。
【0027】
この構成によれば、第1ローラによって付箋紙の途中部が付箋紙束から分離された状態で、印刷ヘッドを付箋紙束に対して付箋紙の一端側(糊付け端部側)に相対移動させることで、第1ローラを付箋紙の一端側に移動させて、最表層の付箋紙の他端部を跳ね上げることができる。
【0028】
第11の発明の付箋プリンタは、前記第1〜第10の何れかの発明において、前記跳ね上げ手段により跳ね上げた前記最表層の付箋紙を、前記付箋紙束から離した状態で保持する保持手段を有することを特徴とするものである。
【0029】
この構成によれば、跳ね上げた付箋紙が、付箋紙束の上に再び積層されてしまうのを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、印刷時においては、付箋紙束の表面に接触する第1ローラにより、付箋紙束と印刷ヘッドとのギャップを一定に維持できるため、印字精度が向上する。さらに、印刷後には、第1ローラを用いて付箋紙の付箋紙束からの分離を行うことができる。従って、印刷済みの最表層の付箋紙を付箋紙束から分離するための構成を特別に設ける必要がなく、プリンタの構成が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態の付箋プリンタの概略平面図であり、図2は、図1のII-II線断面図である。図1、図2に示すように、付箋プリンタ1は、プリンタ本体としてのケース2と、所定の走査方向(図1、図2の左右方向)に往復移動可能なキャリッジ3と、このキャリッジ3に設けられた印刷ヘッド4と、この印刷ヘッド4に回転自在に設けられた第1ローラ5及び第2ローラ6と、付箋紙束11を保持する付箋トレイ7等を備えている。
【0032】
ケース2内にはキャリッジ3を走査方向にガイドするガイド軸8が配置されている。また、キャリッジ3の端部には無端ベルト9が連結されている。そして、無端ベルト9がキャリッジ駆動モータ14により走行駆動されることにより、キャリッジ3がガイド軸8により案内されつつ走査方向に往復移動する。
【0033】
キャリッジ3の下端部にはバネ13を介して印刷ヘッド4が連結されており、印刷ヘッド4はキャリッジ3と一体的に走査方向に往復移動可能である。また、この印刷ヘッド4は図示しないインク供給源と接続され、さらに、印刷ヘッド4の下面には、インク供給源から供給されたインクをそれぞれ噴射する多数のノズル(図示省略)が配置された、インク噴射面4aが設けられている。
【0034】
また、印刷ヘッド4の走査方向に関する両端部には、インク噴射面4aを走査方向に関して挟むように、2つのローラ(第1ローラ5及び第2ローラ6)がそれぞれ回転自在に設けられている。尚、図1、図2には、ローラ5,6として、回転軸5a,6aの両端部にこの回転軸5a,6aよりも径の大きな2つの車輪を有するタイプのものが開示されているが、回転軸方向に関して径が一定のストレートな円柱状のローラであってもよい。また、図1に示すように、2つのローラ5,6の回転軸5a,6aは、それぞれインク噴射面4aに平行で、且つ、走査方向と直交する方向に延びている。さらに、図2に示すように、2つのローラ5,6の車輪は、インク噴射面4aよりも下側に一部飛び出している。
【0035】
キャリッジ3と印刷ヘッド4の間にはバネ13(付勢手段)が介装されており、このバネ13によって印刷ヘッド4が常時下方へ付勢されている。これにより、印刷ヘッド4の走査方向両端部にそれぞれ設けられた第1ローラ5と第2ローラ6が、次述の付箋トレイ7にセットされた付箋紙束11の表面に接触する。従って、相対向する印刷ヘッド4のインク噴射面4aと付箋紙束11(最表層の付箋紙10の表面)との距離(ギャップ)が一定に維持される。
【0036】
印刷ヘッド4の下側には付箋トレイ7が配置されており、この付箋トレイ7に複数枚の付箋紙10からなる付箋紙束11がセットされている。尚、本実施形態においては、個々の付箋紙10は平面視で矩形状に形成されており、その長手方向一端部の裏面に糊付けがなされた状態で複数枚積層されることによって、付箋紙束11が構成されている。また、本実施形態では、図2に示すように、付箋紙束11は、付箋紙10の糊付け端部10aが右側、付箋紙10の自由端部10b(糊付けされていない端部)が左側となるように、付箋トレイ7にセットされる。
【0037】
付箋紙束11の最表層の付箋紙10に印刷を行う際には、付箋プリンタ1は、印刷ヘッド4を、キャリッジ3とともに走査方向一方(図中左方:付箋紙10の自由端部10bに向かう方向)に移動させつつ、第1ローラ5と第2ローラ6を付箋紙束11の表面で転動させる。これにより、キャリッジ3の移動中における付箋紙束11とインク噴射面4aの間のギャップが一定に維持される。この状態で、インク噴射面4aの多数のノズルから付箋紙束11に向けてインクの液滴を噴射させることにより、最表層の付箋紙10の表面に印刷を行う。
【0038】
ところで、印刷ヘッド4により付箋紙束11の最表層の付箋紙10に印刷した後、すぐ下の付箋紙10に続けて印刷を行うためには、印刷済みの最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離して剥がす必要がある。ここで、印刷済みの付箋紙10を付箋紙束11から分離するための構成を付箋プリンタ1に別途設けてもよいが、そうするとプリンタ1の構成が複雑になり、また、製造コストも高くなる。
【0039】
そこで、図1、図2に示すように、本実施形態の付箋プリンタ1は、印刷済みの付箋紙10を付箋紙束11から分離するために、印刷ヘッド4の移動の際に、糊付け端部10a側(図中右側)に位置する第1ローラ5の回転を調整する回転調整装置15をさらに備えている。
【0040】
この回転調整装置15は、印刷ヘッド4が左方(付箋紙10の自由端部10bに向かう方向)に移動しながら印刷動作を行う際には、第1ローラ5を自由回転状態に維持する。一方、印刷後に、印刷ヘッド4が右方(付箋紙10の糊付け端部10aに向かう方向)に戻る際には、第1ローラ5の回転を調整することによって、印刷済みの最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離する。その後、さらに、第1ローラ5を回転駆動することにより、分離した最表層の付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる。尚、第2ローラ6についてはこのような回転調整装置は設けられておらず、第2ローラ6は常に自由回転可能な状態である。
【0041】
図3に回転調整装置15の一例を示す。図3に示すように、本実施形態の回転調整装置15は、駆動モータ20と、駆動モータ20の出力ギヤ21と噛合し、駆動モータ20により回転駆動される太陽ギヤ22と、太陽ギヤ22と噛み合うとともに回転しながら太陽ギヤ22の外周を周回する2つの遊星ギヤ23a,23bと、第1ローラ5の回転軸5aに設けられたギヤ24とを備えている。また、2つの遊星ギヤ23a,23bは太陽ギヤ22の回転軸を中心に回転可能な連結部材25によって互いに連結されている。
【0042】
以下、印刷ヘッド4や回転調整装置15を含む付箋プリンタ1の、最表層の付箋紙10に対する印刷から、印刷済みの付箋紙10の分離及び跳ね上げに至るまでの動作について説明する。
【0043】
(印刷動作)
図4は、印刷中における付箋プリンタ1の動作図である。印刷ヘッド4による印刷時には、図4(a)〜(c)に示すように、キャリッジ駆動モータ14(図1参照)によりキャリッジ3とともに印刷ヘッド4を図中右側(付箋紙10の糊付け端部10a側)から左側(自由端部10b側)へ移動させながら、印刷ヘッド4のインク噴射面4aから付箋紙束11に向けてインクを噴射させる。このとき、印刷ヘッド4の走査方向両端部にそれぞれ設けられた2つのローラ5,6がバネ13により付勢されて付箋紙束11の表面に接触していることから、インク噴射面4aと付箋紙束11とのギャップが一定に確保され、印字精度が向上する。
【0044】
また、この印刷時においては、最表層の付箋紙10が第1ローラ5に引きずられたりして付箋紙束11から分離する(ずれる)と印刷に悪影響が出るため、回転調整装置15は、第1ローラ5の回転調整は行わず、第1ローラ5を自由回転状態に維持する。従って、第1ローラ5と第2ローラ6は、印刷ヘッド4の左方への移動に伴って、共に最表層の付箋紙10の表面において図中矢印Aの方向に転動する。
【0045】
このときの回転調整装置15の作用を図3(a)を用いて具体的に説明する。印刷ヘッド4が停止している状態では、第1ローラ5と同軸回転するギヤ24と一方の遊星ギヤ23bとが噛み合っている。その状態から、第1ローラ5が付箋紙束11の表面に接触した状態で印刷ヘッド4が図中左方へ移動すると、それに伴って、図3(a)に示すように、第1ローラ5は矢印Aで示すように、反時計回りの方向に回転しようとする。このとき、破線矢印aで示すように、ギヤ24の回転に伴って遊星ギヤ23bも回転して、太陽ギヤ22の周りをギヤ24から離れる方向に移動し、ギヤ24と遊星ギヤ23bの噛合状態が解除される。従って、第1ローラ5は自由回転可能な状態となり、付箋紙束11の表面を転動することになる。
【0046】
(分離動作)
図5は、先の印刷動作によって印刷された最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離する際の付箋プリンタ1の動作図である。最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離する際には、キャリッジ駆動モータ14によりキャリッジ3とともに印刷ヘッド4を図中左側(自由端部10b側)から右側(糊付け端部10a側)へ移動させる。その際、回転調整装置15により、第1ローラ5が自由回転しないようにこの第1ローラ5の回転を規制する。ここで、第1ローラ5が全く回転しないようにロックしてもよいが、完全にロックしなくても第1ローラ5にある程度の回転抵抗(ブレーキ)をかけて回転を規制するだけでもよい。この回転規制により、転動方向(図中の矢印Bの方向)に関する第1ローラ5の周速V1を印刷ヘッド4の走査方向移動速度V2よりも遅くさせる。
【0047】
この回転規制を行う際の回転調整装置15の作用を図3(b)を用いて具体的に説明する。まず、駆動モータ20により出力ギヤ21を図中bの方向に回転させ、これにより太陽ギヤ22を図中cの方向に回転駆動する。すると、太陽ギヤ22と噛み合う遊星ギヤ23aが、太陽ギヤ22の周りを破線矢印aの方向に移動し、第1ローラ5と同軸回転するギヤ24と噛み合う。これにより、駆動モータ20のトルクがギヤ24を介して第1ローラ5に伝達され、このトルクは第1ローラ5に回転抵抗として作用するため、第1ローラ5の回転が規制されることになる。尚、駆動モータ20は、遊星ギヤ23aとギヤ24とを介して所定のトルク(回転抵抗)を第1ローラ5に付与する状態を、分離動作期間中に継続して維持する。
【0048】
このように、第1ローラ5の回転が規制されることにより、第1ローラ5の周速V1が印刷ヘッド4の移動速度V2よりも遅くなると、図5(b)に示すように、第1ローラ5と最表層の付箋紙10との間に摩擦力が生じ、最表層の付箋紙10の自由端部10bが第1ローラ5に引きずられて糊付け端部10a側に移動する。また、最表層の付箋紙10の自由端部10bと反対側の端部(糊付け端部10a)は付箋紙束11に固定された状態である。従って、付箋紙10の自由端部10bが第1ローラ5とともに図中右方に移動することで、図5(c)に示すように、その中央部10c(走査方向途中部)が盛り上がり、付箋紙束11から分離することになる。
【0049】
(跳ね上げ動作)
図6は、分離された最表層の付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる際の付箋プリンタ1の動作図である。最表層の付箋紙10の中央部10cが付箋紙束11から分離した状態で、図6(a)に示すように、回転調整装置15により、第1ローラ5を図中矢印Aの方向に回転させる。尚、この第1ローラ5の回転駆動は、印刷ヘッド4を停止させてから開始してもよいし、印刷ヘッド4を移動させたままで開始してもよい。
【0050】
具体的には、図3(c)に示すように、駆動モータ20は、先の分離動作時よりも大きなトルクで太陽ギヤ22を矢印cの方向に回転駆動する。すると、太陽ギヤ22と噛み合う遊星ギヤ23aが図中矢印dの方向に回転し、さらに、ギヤ24が図中矢印eの方向に回転する。これにより、ギヤ24と同軸回転する第1ローラ5が矢印Aの方向に回転駆動される。
【0051】
このように、第1ローラ5が矢印Aの方向に回転駆動されると、この第1ローラ5により、図6(b)に示すように、最表層の付箋紙10の自由端部10bが右側(糊付け端部10a側)へ押し出されて付箋紙束11から上方へ離れる。さらに第1ローラ5を矢印Aの方向に回転させ続けることで、最終的に、図6(c)に示すように、自由端部10bが上方に跳ね上げられ、付箋紙10が第1ローラ5の上に乗っかった状態となる。
【0052】
以上のようにして、第1ローラ5の上に跳ね上げられた最表層の付箋紙10は、例えば、モータ等によって駆動される排紙ローラ(図示省略)により所定の排紙位置まで搬送することが可能である。この場合には、排紙ローラによって下流側へ付箋紙10が送られる際に、付箋紙10の糊付け端部10aは付箋紙束11から自動的に分離する。尚、このような排紙ローラ等の排紙手段は必須の構成ではなく、図6(c)のように跳ね上げられた付箋紙10を、ユーザー自らが手で摘んで引き抜くようにして取り出すことも可能である。
【0053】
尚、本実施形態では、第1ローラ5の回転を調整する、上述した回転調整装置15が、印刷済みの最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離する分離手段と、その分離された付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる跳ね上げ手段の両方を兼ねている。
【0054】
ところで、図6のようにして第1ローラ5を回転させて最表層の付箋紙10を跳ね上げる際に、最表層の付箋紙10につられて、その下の2枚目の付箋紙10が移動して付箋紙束11からずれてしまう虞がある。しかし、本実施形態においては、図6に示すように、第1ローラ5による跳ね上げ時には、印刷ヘッド4に設けられた第2ローラ6が、2枚目の付箋紙10の自由端部10bを押さえている(押さえ手段)。従って、最表層の付箋紙10を跳ね上げ時に、2枚目の付箋紙10がつられて付箋紙束11からずれるように移動してしまうのを防止できる。
【0055】
さらに、2枚目の付箋紙10の付箋紙束11からのずれをより確実に防止するためには、第2ローラ6は、第1ローラ5と比べて、付箋紙束11との間に作用する摩擦力が大きくなるように構成されていることが好ましい。
【0056】
このような構成の具体例として、例えば、第2ローラ6の表面摩擦係数が、第1ローラ5よりも大きくなっている形態が挙げられる。
【0057】
あるいは、バネ13によって第2ローラ6に作用する付箋紙束11への押圧力が、第1ローラ5よりも大きくなるように構成されてもよい。例えば、バネ13が第1ローラ5よりも第2ローラ6に近い位置に配置されることにより、第2ローラ6に大きな付勢力が作用するように構成されてもよい。または、第1ローラ5と第2ローラ6をそれぞれ付勢するための2つのバネ13が設けられた上で、第2ローラ6を付勢するバネ13として、第1ローラ5を付勢するバネ13よりも付勢力の大きいものが使用されてもよい。
【0058】
また、図6(a)に示すように、最表層の付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる直前の状態において、印刷ヘッド4(及びキャリッジ3)は、付箋紙束11の糊付け端部10a側の端から第1ローラ5に向けて延びる接平面Pよりも、付箋紙束11側(下側)に位置していることが好ましい。この場合には、付箋紙束11から分離された最上層の付箋紙10の自由端部10bが、第1ローラ5の回転によって跳ね上げられたときに、この跳ね上げられた付箋紙10と印刷ヘッド4が互いに干渉するのを防止できる。
【0059】
次に、上述した一連の動作を実現する付箋プリンタ1の電気的構成について、図7のブロック図を参照して簡単に説明しておく。付箋プリンタ1は、ユーザーにより印刷データ等の入力や各種設定がなされる操作入力部26と、この操作入力部26からの入力信号に基づいて、印刷ヘッド4、キャリッジ3を駆動するキャリッジ駆動モータ14、第1ローラ5の回転を調整する回転調整装置15等、付箋プリンタ1の各部をそれぞれ制御する制御装置27とを備えている。
【0060】
制御装置27は、例えば、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、付箋プリンタ1の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備え、ROMに格納されたプログラムがCPUで実行されることにより、以下に説明するような種々の制御を行うものであってもよい。あるいは、演算回路を含む各種回路が組み合わされたハードウェア的なものであってもよい。
【0061】
そして、制御装置27は、付箋プリンタ1の各部を制御して上述した一連の動作を実現するように構成されている。即ち、操作入力部26から入力された印刷データに基づいて、印刷ヘッド4とキャリッジ駆動モータ14を制御して、印刷ヘッド4を付箋紙10の自由端部10b側に移動させつつ、付箋紙束11に向けてインクを噴射させ、最表層の付箋紙10に画像や文字等を印刷する。また、最表層への付箋紙10への印刷終了後には、キャリッジ駆動モータ14を制御して、印刷ヘッド4を付箋紙10の糊付け端部10a側に移動させつつ、回転調整装置15により第1ローラ5の回転を規制して、最表層の付箋紙10の中央部を付箋紙束11から分離させる。その後、さらに、回転調整装置15により第1ローラ5を回転駆動して、付箋紙束11から分離した最表層の付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げる。
【0062】
以上説明した付箋プリンタ1によれば、印刷ヘッド4に設けられた第1ローラ5と第2ローラ6により、付箋紙束11と印刷ヘッド4のインク噴射面4aとのギャップを一定に維持できるため、印字精度が向上する。さらに、ギャップ確保用の第1ローラ5を用いて、印刷済みの付箋紙10の付箋紙束11からの分離、及び、分離された付箋紙10の跳ね上げを行うことができる。従って、最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離するための構成や跳ね上げのための構成を特別に設ける必要がなく、付箋プリンタ1の構成が簡単になる。
【0063】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0064】
1]前記実施形態では、最表層の付箋紙10の分離後に、回転調整装置15により第1ローラ5を回転させることにより付箋紙10の自由端部10bを押し出して跳ね上げているが、以下に例示するような別の構成によって跳ね上げを行うことも可能である。
【0065】
(変更形態1)
図8(a)に示すように、第1ローラ5により最表層の付箋紙10の中央部10cが付箋紙束11から分離された状態で、さらに第1ローラ5が付箋紙10の糊付け端部10a側に向かうように、印刷ヘッド4を付箋紙束11に対して走査方向(図中右方)に移動させてもよい。この場合でも、図8(b),(c)に示すように、第1ローラ5により付箋紙10の自由端部10bが右方へ押し出されることにより、この自由端部10bが第1ローラ5の外周に沿って上方へ移動し、その結果、自由端部10bが跳ね上げられることになる。
【0066】
尚、印刷ヘッド4が図中右方に移動する際に、第1ローラ5が付箋紙束11の表面で転動してしまうと、付箋紙10の自由端部10bが第1ローラ5に巻き込まれる虞があるので、回転調整装置15により第1ローラ5の回転を規制しておくことが好ましい。つまり、付箋紙10の分離が完了した後、第1ローラ5の回転を規制した状態を維持したままで、さらに印刷ヘッド4を右方へ移動させて跳ね上げを行うことが好ましい。
【0067】
(変更形態2)
上述した変更形態1(図8)のように、第1ローラ5を走査方向と完全に平行な方向(真水平)に移動させると、最表層の付箋紙10の自由端部10bが完全に跳ね上げられる前に糊付け端部10aが付箋紙束11から剥がれたり、あるいは、水平に移動する第1ローラ5により最表層の付箋紙10が折り曲がってしまったりすることも考えられる。そこで、図9に示すように、キャリッジ3に、印刷ヘッド4を上下に駆動する、モータやシリンダ、あるいは、ソレノイド等のアクチュエータ等で構成されるヘッド駆動機構30が設けられている場合には、印刷ヘッド4を走査方向に移動させるとともに、ヘッド駆動機構30により、印刷ヘッド4を上方(付箋紙束11から離れる方向)にも移動させることが好ましい。つまり、印刷ヘッド4を図中右斜め上方に移動させることが好ましい。尚、この場合には、ヘッド駆動機構30が印刷ヘッド4を付箋紙束11に向けて付勢する付勢手段を兼ねている。
【0068】
(変更形態3)
印刷ヘッド4やこれに設けられた第1ローラ5等の、付箋紙10への印刷に用いられる構成を付箋紙10の跳ね上げに兼用する必要は必ずしもなく、付箋紙10の跳ね上げ専用の構成が設けられていてもよい。例えば、図10に示すように、付箋紙束11から分離された最表層の付箋紙10の中央部10c下側に通される棒状の部材31と、この棒状の部材31を回動又は上方に移動させることにより、付箋紙10を跳ね上げるモータ等の駆動手段32を備えていてもよい。
【0069】
2]第1ローラ5の回転を調整する回転調整装置(分離手段)は、前記実施形態のものには限られず、以下に例示するような他の構成を採用することも可能である。
【0070】
(変更形態4)
前記実施形態の回転調整装置15は、図3に示すように、印刷中における第1ローラ5の自由回転状態と、付箋紙10の分離時と跳ね上げ時におけるトルク伝達状態(回転規制及び回転駆動状態)とを、太陽ギヤ22と遊星ギヤ23a,23bによって切り替えている。しかし、モータやシリンダ等の適宜の駆動手段によって駆動モータ20と第1ローラ5のギヤ24とが離接可能に構成されている場合には、上述した太陽ギヤ22や遊星ギヤ23a,23bを省略することが可能である。即ち、印刷時には駆動モータ20の出力ギヤ21と第1ローラ5のギヤ24とが互いに噛み合わない位置関係にあって第1ローラ5の自由回転が維持される。一方、最表層の付箋紙10を分離する際には、駆動モータ20と第1ローラ5とが接近する方向に駆動されて、駆動モータ20の出力ギヤ21と第1ローラ5のギヤ24とが噛み合うことにより、第1ローラ5に駆動モータのトルクが伝達される状態となる。
【0071】
(変更形態5)
前記実施形態の回転調整装置15は、付箋紙10の分離時に、駆動モータ20からトルク(回転抵抗)を伝達することによって第1ローラ5の回転を規制するように構成されているが、このような駆動モータを使用せずに第1ローラ5の回転を規制することも可能である。例えば、回転体にブレーキパッドを押しつけて減速させるブレーキ機構(いわゆる、ディスクブレーキ)によって、第1ローラ5の回転を規制するものであってもよい。あるいは、ストッパーによって第1ローラ5の回転を機械的にロックするものであってもよい。
【0072】
3]前記実施形態においては、印刷ヘッド4に2つのローラ5,6が回転自在に設けられていたが、付箋紙10の分離や跳ね上げには直接使用しない第2ローラ6は省略することも可能である。その一例を以下に示す。
【0073】
(変更形態6)
図11に示すように、変更形態6の付箋プリンタ1Aは、ガイド軸8に沿って走査方向に移動可能なキャリッジ3と、このキャリッジ3の下部にバネ13を介して接続された印刷ヘッド4と、この印刷ヘッド4に回転自在に設けられた1つのローラ5(第1ローラ)とを備えている。この形態においても、適宜の構成を備えた回転調整装置によりローラ5の回転を調整することによって、印刷済みの最表層の付箋紙10を付箋紙束11から分離し、さらには、分離した付箋紙10の自由端部10bを跳ね上げることが可能である。
【0074】
4]適宜の跳ね上げ手段によって跳ね上げた最表層の付箋紙10を、付箋紙束11から離した状態で保持する保持手段を備えていてもよい。その一例を以下に示す。
【0075】
(変更形態7)
図12に示すように、変更形態7の付箋プリンタ1Bは、付箋紙束11よりも上方の位置で、且つ、付箋紙束11の幅方向両側の位置にそれぞれ設けられた、2つの保持部材40(保持手段)を有する。2つの保持部材40は、平面視で付箋紙束11と重ならない退避位置(図12(a)の実線で示された位置)と、平面視で付箋紙束11と重なる保持位置(図12(a)の2点鎖線で示された位置)とにわたって、水平面内で回動可能に構成されている。
【0076】
最表層の付箋紙10への印刷中、あるいは、印刷済みの付箋紙10の分離中には、2つの保持部材40は退避位置で待機する。一方、付箋紙束11から分離された最表層の付箋紙10が、図12(b)の実線で示すように跳ね上げられたときには、2つの保持部材40は退避位置から保持位置まで回動し、これら2つの保持部材40により、最表層の付箋紙10が、図12(b)の2点鎖線で示すように、付箋紙束11の上方において保持される。これにより、跳ね上げた付箋紙10が、付箋紙束11の上に再び積層されてしまうのを確実に防止できる。
【0077】
尚、上述した変更形態7においては、付箋紙10を跳ね上げた後に、保持部材40で付箋紙10を保持するようにしているが、付箋紙10を付箋紙束11から分離した後であって、付箋紙10の跳ね上げ前に、保持部材で付箋紙10を保持するように構成されてもよい。例えば、付箋紙10の中央部10cが付箋紙束11から分離された状態(図6(a)参照)、この分離した中央部10cの下側に、棒状の保持部材を付箋紙10の幅方向(走査方向と直交する方向)から挿入するなどして、分離状態の付箋紙10を保持するようにしてもよい。
【0078】
5]前記実施形態においては、印刷ヘッド4が付箋紙束11に対して走査方向一方(付箋紙10の自由端部10bに向かう方向)に移動する際にのみ印刷を行い、走査方向他方(付箋紙10の糊付け端部10aに向かう方向)に移動して戻る際に、印刷した付箋紙10を分離するように構成されている。しかし、印刷ヘッド4が付箋紙束11に対して走査方向に何回も往復しながら印刷を行うものであってもよい。この場合には、印刷が終了していない状態で印刷ヘッド4が糊付け端部10a側に移動する際には、まだ印刷中であることから回転調整装置は第1ローラ5の回転は規制しないようにし、印刷が終了した後に印刷ヘッド4が糊付け端部10a側に移動する場合にのみ、回転調整装置は第1ローラ5の回転を規制し、印刷済みの付箋紙10を分離する。
【0079】
6]前記実施形態及びその変更形態においては、印刷ヘッド4が付箋トレイ7にセットされた付箋紙束11に対して走査方向に移動することにより、最表層の付箋紙10への印刷や印刷済みの付箋紙10の分離を行うようになっているが、固定された印刷ヘッドに対して付箋トレイが走査方向に移動することにより、印刷や分離が行われるように構成されてもよい。
【0080】
7]本発明の付箋プリンタにおいて取り扱いが可能な付箋紙束は、図1に示されるような平面視で矩形状のものに限られない。即ち、付箋紙がその一端部において糊付けされた状態で積層されたものであれば、どのような平面形状を有するものであろうとも、上述したような印刷動作、分離動作、跳ね上げ動作を行うことは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態に係る付箋プリンタの概略平面図である。
【図2】図1の付箋プリンタのII-II線断面図である。
【図3】回転調整装置を示す図であり、(a)は印刷時、(b)は付箋紙分離時、(c)は跳ね上げ時の状態をそれぞれ示す。
【図4】印刷時における付箋プリンタの動作を示す図であり、(a)は印刷開始時、(b)印刷中、(c)は印刷終了時の状態をそれぞれ示す。
【図5】付箋紙分離時における付箋プリンタの動作を示す図であり、(a)は分離開始時、(b)分離中、(c)は分離終了時の状態をそれぞれ示す。
【図6】跳ね上げ時における付箋プリンタの動作を示す図であり、(a)は跳ね上げ開始時、(b)跳ね上げ中、(c)は跳ね上げ終了時の状態をそれぞれ示す。
【図7】付箋プリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】変更形態1の付箋プリンタの跳ね上げ時における動作を示す図であり、(a)は跳ね上げ開始時、(b)跳ね上げ中、(c)は跳ね上げ終了時の状態をそれぞれ示す。
【図9】変更形態2の付箋プリンタの跳ね上げ時における動作を示す図であり、(a)は跳ね上げ開始時、(b)跳ね上げ中、(c)は跳ね上げ終了時の状態をそれぞれ示す。
【図10】変更形態3の付箋プリンタの、跳ね上げ動作を示す図である。
【図11】変更形態6の付箋プリンタの図2相当の断面図である。
【図12】変更形態7の付箋プリンタを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B 付箋プリンタ
4 印刷ヘッド
4a インク噴射面
5 第1ローラ
6 第2ローラ
10 付箋紙
10a 糊付け端部
10b 自由端部
10c 中央部
11 付箋紙束
13 バネ
15 回転調整装置
40 保持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向一端部における裏面に糊付けがなされた付箋紙が複数枚積層されて得られた付箋紙束の、最表層の前記付箋紙表面に印刷する付箋プリンタであって、
前記最表層の付箋紙表面に対向するインク噴射面を有し、前記所定方向に沿って前記付箋紙に対して移動しつつ前記インク噴射面から前記最表層の付箋紙表面に向けてインクを噴射して印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに、前記インク噴射面に平行で且つ前記所定方向と交差する方向に延びる回転軸を中心として回転自在に設けられるとともに、少なくともその一部が前記印刷ヘッドの前記インク噴射面よりも前記付箋紙束側に飛び出すように配置された第1ローラと、
前記第1ローラが前記最表層の付箋紙表面に接触するように、前記印刷ヘッドを前記付箋紙束に向けて付勢する付勢手段と、
前記印刷ヘッドの前記所定方向に関する移動の際に前記第1ローラの回転を調整することにより、前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部を前記付箋紙束から分離する分離手段と、
前記分離手段によって前記付箋紙束から分離された前記最表層の付箋紙の前記所定方向他端部を跳ね上げる、跳ね上げ手段を備えていることを特徴とする付箋プリンタ。
【請求項2】
前記分離手段は、
前記印刷ヘッドが前記付箋紙束に対して移動しつつ前記最表層の付箋紙に対してインクを噴射するときには、前記最表層の付箋紙が前記付箋紙束から分離しないように、前記第1ローラの回転を規制せずに前記最表層の付箋紙表面において第1ローラを転動させ、
印刷終了後に前記印刷ヘッドが前記付箋紙の前記他端部から前記付箋紙の糊付け端部である前記一端部に向けて移動するときには、前記第1ローラの周速が前記印刷ヘッドの移動速度よりも遅くなるように前記第1ローラの回転を規制し、前記最表層の付箋紙の前記他端部を前記第1ローラとともに前記一端部側へ移動させて、前記最表層の付箋紙の前記途中部を前記付箋紙束から分離することを特徴とする請求項1に記載の付箋プリンタ。
【請求項3】
前記跳ね上げ手段は、
前記分離手段により前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部が前記付箋紙束から分離された状態で、前記最表層の付箋紙の前記所定方向他端部を前記一端部側に押し出す方向に、前記第1ローラを回転させることにより、前記付箋紙の前記他端部を跳ね上げることを特徴とする請求項1又は2に記載の付箋プリンタ。
【請求項4】
前記跳ね上げ手段による跳ね上げ時に、前記最表層の付箋紙のすぐ下に位置する2枚目の付箋紙の前記所定方向他端部を押さえる、押さえ手段を有することを特徴とする請求項3に記載の付箋プリンタ。
【請求項5】
前記押さえ手段は、前記印刷ヘッドに、前記第1ローラよりも前記所定方向他端側の位置において回転自在に設けられた第2ローラであることを特徴とする請求項4に記載の付箋プリンタ。
【請求項6】
前記第2ローラは、前記第1ローラと比べて、前記付箋紙束との間に作用する摩擦力が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の付箋プリンタ。
【請求項7】
前記第2ローラの表面摩擦係数が、前記第1ローラよりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の付箋プリンタ。
【請求項8】
前記付勢手段によって前記第2ローラに作用する、前記付箋紙束への押圧力が、前記第1ローラよりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の付箋プリンタ。
【請求項9】
前記跳ね上げ手段による跳ね上げ直前において、前記印刷ヘッドは、前記付箋紙束の前記一端から前記第1ローラに向けて延びる接平面よりも、前記付箋紙束側に位置していることを特徴とする請求項3〜8の何れかに記載の付箋プリンタ。
【請求項10】
前記跳ね上げ手段は、
前記分離手段により前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部が前記付箋紙束から分離された状態で、さらに前記第1ローラが前記付箋紙の前記一端側に向かうように、前記印刷ヘッドを前記付箋紙束に対して前記所定方向に相対移動させることにより、前記最表層の付箋紙の前記他端部を跳ね上げることを特徴とする請求項1又は2に記載の付箋プリンタ。
【請求項11】
前記跳ね上げ手段により跳ね上げた前記最表層の付箋紙を、前記付箋紙束から離した状態で保持する保持手段を有することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の付箋プリンタ。
【請求項1】
所定方向一端部における裏面に糊付けがなされた付箋紙が複数枚積層されて得られた付箋紙束の、最表層の前記付箋紙表面に印刷する付箋プリンタであって、
前記最表層の付箋紙表面に対向するインク噴射面を有し、前記所定方向に沿って前記付箋紙に対して移動しつつ前記インク噴射面から前記最表層の付箋紙表面に向けてインクを噴射して印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに、前記インク噴射面に平行で且つ前記所定方向と交差する方向に延びる回転軸を中心として回転自在に設けられるとともに、少なくともその一部が前記印刷ヘッドの前記インク噴射面よりも前記付箋紙束側に飛び出すように配置された第1ローラと、
前記第1ローラが前記最表層の付箋紙表面に接触するように、前記印刷ヘッドを前記付箋紙束に向けて付勢する付勢手段と、
前記印刷ヘッドの前記所定方向に関する移動の際に前記第1ローラの回転を調整することにより、前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部を前記付箋紙束から分離する分離手段と、
前記分離手段によって前記付箋紙束から分離された前記最表層の付箋紙の前記所定方向他端部を跳ね上げる、跳ね上げ手段を備えていることを特徴とする付箋プリンタ。
【請求項2】
前記分離手段は、
前記印刷ヘッドが前記付箋紙束に対して移動しつつ前記最表層の付箋紙に対してインクを噴射するときには、前記最表層の付箋紙が前記付箋紙束から分離しないように、前記第1ローラの回転を規制せずに前記最表層の付箋紙表面において第1ローラを転動させ、
印刷終了後に前記印刷ヘッドが前記付箋紙の前記他端部から前記付箋紙の糊付け端部である前記一端部に向けて移動するときには、前記第1ローラの周速が前記印刷ヘッドの移動速度よりも遅くなるように前記第1ローラの回転を規制し、前記最表層の付箋紙の前記他端部を前記第1ローラとともに前記一端部側へ移動させて、前記最表層の付箋紙の前記途中部を前記付箋紙束から分離することを特徴とする請求項1に記載の付箋プリンタ。
【請求項3】
前記跳ね上げ手段は、
前記分離手段により前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部が前記付箋紙束から分離された状態で、前記最表層の付箋紙の前記所定方向他端部を前記一端部側に押し出す方向に、前記第1ローラを回転させることにより、前記付箋紙の前記他端部を跳ね上げることを特徴とする請求項1又は2に記載の付箋プリンタ。
【請求項4】
前記跳ね上げ手段による跳ね上げ時に、前記最表層の付箋紙のすぐ下に位置する2枚目の付箋紙の前記所定方向他端部を押さえる、押さえ手段を有することを特徴とする請求項3に記載の付箋プリンタ。
【請求項5】
前記押さえ手段は、前記印刷ヘッドに、前記第1ローラよりも前記所定方向他端側の位置において回転自在に設けられた第2ローラであることを特徴とする請求項4に記載の付箋プリンタ。
【請求項6】
前記第2ローラは、前記第1ローラと比べて、前記付箋紙束との間に作用する摩擦力が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の付箋プリンタ。
【請求項7】
前記第2ローラの表面摩擦係数が、前記第1ローラよりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の付箋プリンタ。
【請求項8】
前記付勢手段によって前記第2ローラに作用する、前記付箋紙束への押圧力が、前記第1ローラよりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の付箋プリンタ。
【請求項9】
前記跳ね上げ手段による跳ね上げ直前において、前記印刷ヘッドは、前記付箋紙束の前記一端から前記第1ローラに向けて延びる接平面よりも、前記付箋紙束側に位置していることを特徴とする請求項3〜8の何れかに記載の付箋プリンタ。
【請求項10】
前記跳ね上げ手段は、
前記分離手段により前記最表層の付箋紙の前記所定方向途中部が前記付箋紙束から分離された状態で、さらに前記第1ローラが前記付箋紙の前記一端側に向かうように、前記印刷ヘッドを前記付箋紙束に対して前記所定方向に相対移動させることにより、前記最表層の付箋紙の前記他端部を跳ね上げることを特徴とする請求項1又は2に記載の付箋プリンタ。
【請求項11】
前記跳ね上げ手段により跳ね上げた前記最表層の付箋紙を、前記付箋紙束から離した状態で保持する保持手段を有することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の付箋プリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−23993(P2010−23993A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188171(P2008−188171)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]