説明

付箋紙プリンタ

【課題】付箋紙の持つ特有の形態に鑑みてなされたものであり、多数枚の束で提供される付箋紙に適切に印刷を行うことができると共に、現有の付箋紙の取扱い形態をでき得るかぎり踏襲することができる付箋紙プリンタを提供すること。
【解決手段】付箋紙ホルダ11にセットした付箋紙束4の最上位の付箋紙4aから1枚ずつ引き剥がすと共に、付箋紙4aの自由端を先頭として印刷送りする付箋紙送り機構13と、付箋紙送り機構13により送られてゆく付箋紙4aに臨み、付箋紙4aに自由端側から印刷を行う付箋紙印刷機構12と、を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体に部分貼着される付箋紙に印刷を行うための付箋紙プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタとして、A4サイズ等の用紙やテープ状部材といった、部分糊付けをされていない記録媒体を印刷対象とするものは広く知られているが、付箋紙を印刷対象とする付箋紙プリンタとして公知のものはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、付箋紙は、用紙にテープ状部材の粘着特性を部分的に持たせた特殊な媒体である。そして、付箋紙は、通常、その一端を部分糊付けすることで多数枚を積層した付箋紙束の形態で市場に提供され、ユーザにより付箋紙束から1枚ずつ引き剥がされ、メモ書きされ、ファイルなどの被着体に貼着されている。したがって、プリンタとして付箋紙を印刷対象とする場合には、ユーザによる現在の取扱い性および利便性が少なくとも確保されることが望まれる。
【0004】
本発明は、付箋紙の持つ特有の形態に鑑みてなされたものであり、多数枚の束で提供される付箋紙に適切に印刷を行うことができると共に、現有の付箋紙の取扱い形態をでき得るかぎり踏襲することができる付箋紙プリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の付箋紙プリンタは、付箋紙ホルダにセットした付箋紙束の最上位の付箋紙から1枚ずつ引き剥がすと共に、付箋紙の自由端を先頭として印刷送りする付箋紙送り機構と、付箋紙送り機構により送られてゆく付箋紙に臨み、付箋紙に自由端側から印刷を行う付箋紙印刷機構と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この場合、付箋紙送り機構は、付箋紙に転接し、これを捲り上げるピックアップローラと、先端部にピックアップローラを回転自在に両持ちで保持すると共に、基端部を中心に回動自在に構成された一対の回動アームと、を有し、ピックアップローラは、一対の回動アームにより、付箋紙に転接する転接位置と付箋紙印刷機構のサーマルヘッドに当接する印刷位置との間で回動し、転接位置で付箋紙の捲り上げ動作を行うと共に、印刷位置で捲り上げた付箋紙をサーマルヘッドに押し付けると同時に印刷送りすることが、好ましい。
【0007】
この場合、付箋紙送り機構は、サーマルヘッドに近接し、印刷後の付箋紙をピックアップローラとの間に挟みピックアップローラの回転を受けて従動回転するガイドローラを、更に備え、ピックアップローラおよびガイドローラは、印刷後の付箋紙を付箋紙排出口に向かって送り出すことが、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る付箋紙プリンタについて説明する。この付箋紙プリンタは、パーソナルコンピュータ(以下、パソコン)と接続して、パソコンで作成し選択した文字、図形、Eメールの内容などの各種データを付箋紙に印刷するものである。具体的には、付箋紙プリンタは、多数枚の付箋紙を部分糊付けして成る付箋紙束をセットし、セットした付箋紙束から付箋紙を1枚ずつ捲り上げ、糊付け部分から引き剥がしながら先方へ送ると共に、これにパソコン上の各種データを印刷し、印刷済み付箋紙を作成するものである。
【0009】
図1は、付箋紙プリンタの全体斜視図であり、図2は、付箋紙プリンタの装置ケースを省略した内部の構造を示す斜視図である。両図に示すように、この付箋紙プリンタ1は、装置ケース2により外郭を形成したプリンタ本体3と、プリンタ本体3にセットした印刷対象物となる付箋紙束4とで構成されている。付箋紙束4は、多数枚の合同形状の付箋紙4aを、それらの同じ位置の裏面基端側の一部分を糊付けして積層したものである。付箋紙4aは、付箋紙束4から1枚ずつ剥離可能に構成されていると共に、剥離後に、この糊付け部分4bを介して、紙などの被着体に対し再貼着可能に構成されている。
【0010】
装置ケース2は、全体として小型であって且つマウス形に形成され、下面には付箋紙束4をケース内部に下方から導入するための付箋紙導入開口5と、前面中央には印刷済みの付箋紙4aをケース外部に送り出すための水平スリット状の付箋紙排出口6とが形成されている。また、装置ケース2には、外側の表面が装置ケース2の上面の一部を構成する開閉蓋7が取り付けられている。
【0011】
開閉蓋7は、後端部に内蔵したヒンジにより、上下方向に開閉自在に構成され、開閉蓋7の内側には、図3に示すように、インクリボンRを収容するリボンカートリッジ8が着脱自在に装着されている。この付箋紙プリンタ1は、付箋紙導入開口5から内部に導入しセットした付箋紙束4から、最上位の付箋紙4aを1枚ずつ捲り上げ、これを糊付け部分4bから引き剥がしながら斜め上方へ送ると共に、これにインクリボンRを介して印刷を行い、付箋紙排出口6から印刷面を上にした状態で排出する。
【0012】
プリンタ本体3の装置ケース2の内部には、プリンタフレーム10が配設されており、プリンタフレーム10には、下側に位置して付箋紙導入開口5に臨み付箋紙束4を着脱自在に保持する付箋紙ホルダ11と、付箋紙ホルダ11に対峙して上方に位置し付箋紙4aに印刷を行う付箋紙印刷機構12と、後述するピックアップローラ52の回転により付箋紙ホルダ11に保持された付箋紙束4から付箋紙4aを1枚ずつ捲り上げ且つ引き剥がすと共に、付箋紙印刷機構12に付箋紙4aを送りこれを付箋紙排出口6から排出する付箋紙供給機構13と、が支持されている。
【0013】
プリンタフレーム10は、鉛直方向に延びる平板状のメインフレーム14と、メインフレーム14の下部に取り付けられ、平面視「C」字状のサブフレーム15と、で構成されている。そして、メインフレーム14には、付箋紙供給機構13および付箋紙印刷機構12の各構成部品が、主に片持ちで支持されている。また、メインフレーム14とサブフレーム15とで囲まれた開口部には、付箋紙ホルダ11が不動に支持されている。
【0014】
サブフレーム15は、メインフレーム14に平行に対面する連結板部16と、連結板部16の両端部をメインフレーム14側に折り曲げて形成した一対の側板部17とで構成され、さらに側板部17の先端部をメインフレーム14と平行に内側に折り曲げた部分でメインフレーム14に固定されている。サブフレーム15の連結板部16には、計4箇所に付箋紙ホルダ11を支持する支持係合孔18が形成され、これに対応してメインフレーム14には、その下部に計4箇所の支持係合孔18が形成されている(図4参照)。
【0015】
付箋紙ホルダ11は、図4の分解斜視図に示すように、付箋紙束4を水平に載置する方形のセットステージ21と、セットステージ21を上下方向にスライド自在に案内する四周枠状の導入ガイド22と、付勢部材24を介してセットステージ21を下側から支持する蓋体23と、で構成されている(図5参照)。蓋体23は、導入ガイド22にセットステージ21を挿入した後、導入ガイド22の下面に固定され、且つこの状態で付箋紙導入開口5を閉塞する。
【0016】
導入ガイド22は、付箋紙4aの形状に対応して形成されており、その内面が付箋紙導入開口5に連通していて、付箋紙束4およびセットステージ21の導入を案内する。また、導入ガイド22は、セットされた付箋紙束4の長手方向前後を位置決めする。なお、導入ガイド22の左右の両側面には、それぞれ上記の4個所の支持係合孔18に対応する4つの係合突起39が形成され、これにより、付箋紙ホルダ11がプリンタフレーム10に固定されるようになっている。またなお、各支持係合孔18を前後方向に水平スリット状に延在するように形成し、付箋紙ホルダ11を前後方向に僅かに位置調整できるようにしてもよい。
【0017】
導入ガイド22の上側開口の前後には、付箋紙束4の前端部(自由端側)および後端部(糊付け部側)を相対的に押さえる一対の位置規制部26が内向きに突設されている。すなわち、位置規制部26は、セットステージ21との間で付箋紙束4を挟持するようにセットし、最上位の付箋紙4aを水平に且つ定位置に位置規制している。セットステージ21には、その載置面に付箋紙束4のセット方向を示す矢印状の表示部37が形成され、その矢先方向に付箋紙束4の自由端が向くようにすることで、付箋紙束4が適切にセットされるようになっている。
【0018】
なお、実施形態のセットステージ21は、幅の異なる複数種類の付箋紙束4をセット可能な幅を有している。このため、セットステージ21の載置面には、付箋紙束4をセットステージ21にセットする際の幅寄せ部材となるセット板25が設けられることが、好ましい(図4参照)。もっとも、付箋紙プリンタ1を上下反転させ、付箋紙束4を投入セットした後、セットステージ21を挿入するセット形態を執る場合には、セット板25は不要である。また、特に図示しないが、セットステージ21や付箋紙束4の導入を案内すべく、導入ガイド22の下端部が付箋紙導入開口5に向かって拡開形成されていることが、好ましい(図5参照)。
【0019】
蓋体23は、外形がセットステージ21とほぼ同形状に形成され、導入ガイド22の下側開口に嵌合するようになっている。そして、蓋体23の四辺に突出形成した突出固定部38により、導入ガイド22の下面にねじ止め固定されている。また、この状態で蓋体23は付箋紙導入開口5を閉塞し、その下面は装置ケース2の下面と面一になる。なお、かかるねじ止め固定式に代えて、フック形式の閉蓋構造を執ることも可能である。
【0020】
付勢部材24は、セットステージ21と蓋体23との間にあって、これらの四隅に配設した4つの加圧ばね24aで構成されている。各加圧ばね24aの一方の端部はセットステージ21の下面部に係止し、各加圧ばね24aの他方の端部は蓋体23の上面部に係止している。この4つの加圧ばね24aにより、蓋体23を受けとしてセットステージ21が上方にバランスよく付勢されている。
【0021】
すなわち、セットステージ21を介して付箋紙束4は、均一な力でセット位置(導入ガイド22の位置規制部26)に押し付けられている。このため、付箋紙束4は、付箋紙4aが1枚ずつ送り出され目減りしても、その最上位に位置する付箋紙4aの高さレベルは、常に定位置を維持する。なお、付勢部材24は、4つの加圧ばね24aに限るものでなく、複数個の加圧ばねをバランス良く分散配置してもよいし、特に部品点数およびそのコスト削減を図る場合には、大径からなる2個の加圧ばねで構成すればよい。
【0022】
付箋紙印刷機構12は、図2ないし図5に示すように、メインフレーム14に固定された部分フレーム27と、部分フレーム27に一体的に固定したサーマルヘッド28と、上記のリボンカートリッジ8のインクリボンRを巻き取るリボン巻取機構29と、を有している。サーマルヘッド28は、ヘッド本体30と、ヘッド本体30を支持するヘッドホルダ31とで構成され、ヘッドホルダ31は、部分フレーム27を水平に折り曲げることで形成されている。なお、ヘッド本体30に設けた発熱素子の列設長さは、最少幅或いは最大幅の付箋紙4aに対応させることが好ましい。実施形態のように最小幅とした場合には、最大幅の付箋紙4aの非印刷部分は、手書き用のスペース(余白)となる。
【0023】
また、部分フレーム27には、サーマルヘッド28に近接し且つこれと平行にガイドローラ32が取り付けられている。ガイドローラ32は、部分フレーム27に片持ちで支持固定されたガイドローラ軸33と、ガイドローラ軸33に自由回転可能に軸支されたガイドローラ本体34とで構成されている。ガイドローラ32は、印刷位置に上動したピックアップローラ52の回転を受けて従動回転し、ピックアップローラ52との間で付箋紙4aを挟んで回転送りする(詳細は後述する)。
【0024】
部分フレーム27は、一対の脚片35,35を介してメインフレーム14に固定されており、この両脚片35,35間の間隙に臨むように部分フレーム27には、円形の嵌合孔36が貫通形成されている。そして、両脚片35,35間に上記のリボン巻取機構29の主要部が内包され、且つこの嵌合孔36から、上記のリボン巻取機構29のリボン巻取軸40がサーマルヘッド28に平行に突出している。
【0025】
リボン巻取機構29は、リボンカートリッジ8のリボン巻取リール49に係合するリボン巻取軸40と、リボン巻取軸40に基部に一体に固着したリボン巻取ギヤ41と、リボン巻取軸40およびリボン巻取ギヤ41を回転自在に支持する第1ピン軸42と、リボン巻取ギヤ41に噛み合う巻取中間ギヤ43と、巻取中間ギヤ43を回転自在に支持する第2ピン軸44と、を備えている。
【0026】
第1ピン軸42および第2ピン軸44は、相互並行に且つ片持ちでメインフレーム14に固定されている。巻取中間ギヤ43は、リボン巻取ギヤ41に噛み合う小ギヤ45と後述するピックアップローラ52のローラギヤ63に噛み合う大ギヤ46とで一体に形成されている。詳細は後述するが、リボン巻取機構29への動力は、印刷位置に上動したピックアップローラ52のローラギヤ63から入力し、インクリボンRの巻き取りが行われる。
【0027】
リボンカートリッジ8は、平面視略長円形に形成された2分割構造のカートリッジケース47により外郭を形成されている。カートリッジケース47の内部には、インクリボンRを繰り出し自在に巻回したリボン繰出しリール48と、インクリボンRを巻き取るリボン巻取リール49とが回転自在に収容されている。リボン繰出しリール48は、自由回転可能に構成され、リボン巻取リール49は、リボン巻取軸40に係合して駆動回転し、リボン繰出しリール48から繰り出したインクリボンRを巻取走行させる。
【0028】
リボン繰出しリール48とリボン巻取リール49との間のカートリッジケース47の下面には、付箋紙ホルダ11の開口に対峙すると共に、サーマルヘッド28が臨むヘッド開口が形成されている(図示省略)。インクリボンRは、リボン繰出しリール48から繰り出され、サーマルヘッド28の下側を迂回するようにして一旦ヘッド開口に臨み、サーマルヘッド28の位置で付箋紙4aと重なって併走した後、リボン巻取リール49に巻き取られる。すなわち、ピックアップローラ52とサーマルヘッド28との間で、付箋紙4aとインクリボンRとを挟み込み、これらを同方向に送りつつ発熱素子の発熱駆動により付箋紙4aに印刷が行われる。
【0029】
ここで、この付箋紙プリンタ1をユーザが使用して、付箋紙4aに印刷をする場合について簡単に説明する。先ず、付箋紙プリンタ1とパソコンPCとをUSBあるいはケーブルで相互に接続する。これにより、付箋紙プリンタ1は、パソコンPCと通信接続状態となる。次に、付箋紙プリンタ1から蓋体23をセットステージ21と共に取り外し、セット方向の表示に従って、付箋紙束4をセット板25で位置決めしてセットステージ21に載せる。この状態で、付箋紙束4およびセットステージ21を鉛直下方から導入ガイド22に案内し、蓋体23で付箋紙導入開口5を閉塞することで、付箋紙束4は定位置にセットされる。
【0030】
また、付箋紙束4をセットするのに相前後して、開閉蓋7を開閉操作して、リボンカートリッジ8を装着する。このとき、リボンカートリッジ8のヘッド開口をサーマルヘッド28に案内して、リボンカートリッジ8を装着すると、ヘッド開口から幾分弛みをもって引き出しておいたインクリボンRがサーマルヘッド28の下側に位置し、且つリボン巻取リール49がリボン巻取軸40に係合する。これにより、付箋紙プリンタ1は、印刷待機状態となる。
【0031】
ここで、パーソナルコンピュータを操作して、所望の印刷データを作成・選択し、印刷実行を指令する。印刷実行が指令されると、最上位の付箋紙4aが付箋紙束4から捲り上がり、ピックアップローラ52に乗り上げる。続いて、ピックアップローラ52が上動し、その上動端位置でサーマルヘッド28との間で付箋紙4aおよびインクリボンRを挟み込むと共に、またピックアップローラ52は、ガイドローラ32との間で付箋紙4aを挟持する。ピックアップローラ52の回転により、付箋紙4aおよびインクリボンRが同時に送られると共に、適宜サーマルヘッド28が発熱駆動し、インクリボンRのインクが熱転写して付箋紙4aに印刷が行われる。
【0032】
印刷後のインクリボンRは、リボンカートリッジ8内で巻き取られるが、印刷後の付箋紙4aは、付箋紙束4から引き剥がされ、上面の印刷面を上にして付箋紙排出口6から送り出されてゆく。このとき、送り出される印刷済み付箋紙4aは、付箋紙排出口6でその送り出しが停止され、付箋紙排出口6から落下しないようになっている。
【0033】
具体的には、付箋紙排出口6には、送り出した付箋紙4aの基端側を下側から保持する付箋紙保持部が形成されており(図示省略)、付箋紙保持部は、付箋紙4aの先端を付箋紙排出口6から突出させた状態で印刷済み付箋紙4aを保持する。この付箋紙保持部を設けたことで、印刷済み付箋紙4aの落下による裏面糊付け部4b(粘着剤)へのゴミ付着を防止することができ、またユーザは、糊付け部4bに触れることなく付箋紙4aを先端側から把持して、付箋紙排出口6から取り出し、紙などの被着体に容易に貼り付けることができる。
【0034】
次に、付箋紙供給機構13について、図2、図4および図7を参照して説明する。付箋紙供給機構13は、駆動源となる駆動モータ51と、上記のピックアップローラ52(摩擦ローラ)と、駆動モータ51からピックアップローラ52に回転動力を伝達する減速ギヤ列53と、ピックアップローラ52を回転自在に保持しこれを上下動させるピックアップユニット54と、を備えている。
【0035】
駆動モータ51は、整流子型のDCモータで構成され、モータ収納ケース56に保持されてメインフレーム14の後部に支持されている。駆動モータ51の出力軸には、ウォームギヤ57と、ウォームギヤ57の先端側に位置してパルス円板58が固定されている。一方、モータ収納ケース56の上部には、パルス円板58に臨むフォトインタラプタ59が組み込まれている。フォトインタラプタ59とパルス円板58とでエンコーダが構成され、このエンコーダの検出するパルス信号に基づいて、サーマルヘッド28の発熱駆動を制御している。
【0036】
ピックアップローラ52は、上側から付箋紙束4の先端側(自由端側)に臨んでおり、両端部をピックアップユニット54に支持されるローラ軸61と、ローラ軸61に回転自在に装着され付箋紙4aに直接接触するローラ本体62と、ローラ本体62と一体回転するローラギヤ63と、で構成されている。ローラ軸61は、サーマルヘッド28と平行に延在し、ピックアップユニット54に両持ちで支持されている。ローラ本体62は、ローラ軸61の一方の半部に寄せて配設され、ローラ軸61に回転自在に装着した樹脂性のコア部64と、コア部64の外周面に巻装したゴムロール65とで構成されている。
【0037】
ゴムロール65は、シリコンゴムなどの耐熱性を有する高摩擦材料で構成されており、ピックアップローラ52は、付箋紙4aに転接してこれを捲り上げる機能と、サーマルヘッド28と協働するプラテンローラの機能とを併せ持っている。ローラギヤ63は、ローラ本体62のコア部64に隣接し、これと一体に形成されている。ピックアップローラ52は、このローラギヤ63が減速ギヤ列53を介して回転動力を伝達されることで、図2示において反時計周り方向に回転駆動する。
【0038】
減速ギヤ列53は、駆動モータ51側のウォームギヤ57に噛合する小伝達ギヤ66(ウォームホイールと小平歯車)と、小伝達ギヤ66に噛合する中伝達ギヤ67と、中伝達ギヤ67に噛合する大きな入力ギヤ68とで構成され、これら各ギヤのピン軸は、メインフレーム14に片持ちで固定されている。入力ギヤ68には、ピックアップローラ52のローラギヤ63が噛み合っており、駆動モータ51の動力は、ウォームギヤ57、小伝達ギヤ66、中伝達ギヤ67、入力ギヤ68の順で伝達され、ローラギヤ63を介してピックアップローラ52を回転させる。
【0039】
入力ギヤ68のメインフレーム14側の端面には、環状の端面カム溝80が形成されており、端面カム溝80との間で端面カム機構を構成するカムリンク部材55が、入力ギヤ68に重なるように配設されている(図7参照)。端面カム機構は、入力ギヤ68の回転動作を、カムリンク部材55を介してピックアップユニット54の回動動作に変換するものである(詳細は後述する)。
【0040】
ピックアップユニット54は、先端部にピックアップローラ52を回転自在に両持ちで保持すると共に、基端部を中心に回動自在に構成された一対の回動アーム70と、ピックアップローラ52を逃げて一対の回動アーム70の先端部を一体に連結する連結アーム71とで、逆「U」字状に構成されている。一対の回動アーム70は、メインフレーム14に回動自在に支持されたピックアップアーム72と、サブフレーム15に回動自在に支持された支持補助アーム73とで構成されている。
【0041】
支持補助アーム73は、基端部をサブフレーム15の連結板部16の上端軸部19に回転自在に軸支されている。一方、ピックアップアーム72は、基端部を入力ギヤ68のピン軸を介してメインフレーム14に回転自在に軸支されている。すなわち、ピックアップアーム72は、入力ギヤ68を軸支する共有のピン軸に基端部を回転自在に軸支されている。なお、このピン軸とサブフレーム15の上端軸部19とは、ピックアップローラ52に平行に且つ同一軸線上に配設されている。
【0042】
支持補助アーム73およびピックアップアーム72には、ピックアップローラ52のローラ軸61の両端部を支持する先端部に、上下方向(回動方向)に僅かに長孔状の軸受部74が形成されていると共に(図5参照)、各アームとローラ軸61との間には、ローラ軸61(ピックアップローラ52)を上方に付勢する支持ばね75が介設されている。したがって、ピックアップローラ52は、ピックアップユニット54に対し相対的に僅かに移動自在に支持され、これによりサーマルヘッド28を突当て方向に弾性的に押圧することができるようになっている。
【0043】
また、ピックアップアーム72には、延在方向の中間部から係合ピン76(入力部)が外側に突出しており、この係合ピン76がカムリンク部材55のアーム係合部94に係合している(図7参照)。これにより、ピックアップアーム72は、カムリンク部材55が作動することで、係合ピン76がアーム係合部94内を相対的に摺動して、回転方向に動力を伝達されて回動動作することとなる。そして、ピックアップアーム72が回動すると、連結アーム71を介して、支持補助アーム73も追従して同方向に回動する。すなわち、ピックアップアーム72が、基端部を支点とし且つ係合ピン76を力点として回動動作すると、ピックアップローラ52が、平行水平姿勢を保って回動動作、すなわち上下動することとなる。
【0044】
このとき、ピックアップローラ52は、ローラギヤ63と入力ギヤ68との噛合状態を維持する駆動回転状態のまま移動することとなる。すなわち、ピックアップローラ52は、ローラギヤ63が入力ギヤ68に対し衛星歯車的に機能(入力ギヤ68が太陽ギヤに、ローラギヤ63が衛星ギヤに、ピックアップアーム72がキャリアに対応)して、入力ギヤ68(ピックアップアーム72)のピン軸を中心として、駆動回転を維持しながらほぼ上下方向に円運動することとなる。そして、ピックアップローラ52の円運動は、端面カム機構により、往復の回動動作となるように規制されている。
【0045】
すなわち、ピックアップローラ52は、印刷待機状態における付箋紙束4上の付箋紙4aの表面に転接する転接位置と、付箋紙束4から離間しサーマルヘッド28に当接する印刷位置との間を、適宜、移動するように構成されている。より具体的には、ピックアップローラ52は、下動端位置である転接位置において付箋紙4aの捲り上げ動作を行い、続いて端面カム機構により上動し、その上動端位置である印刷位置において、付箋紙4aをサーマルヘッド28に押し付けると同時に印刷送りする。またそのとき、ローラギヤ63が巻取中間ギヤ43に噛合し、ピックアップローラ52とサーマルヘッド28との間に挟まれた付箋紙4aおよびインクリボンRは、印刷のために併走する。なお、ピックアップローラ52(ローラギヤ63)は、入力ギヤ68から回転動力を受け、上下動する際にも回転を続行している(但し、衛星ギヤとして幾分減速される)。
【0046】
カムリンク部材55は、ピックアップアーム72の基端側を入力ギヤ68との間で挟み込むようにして配設され、主要部を為すと共に長穴のアーム係合部94を貫通形成したドーナツ状のリンク本体90と、リンク本体90の前面側に凸設して入力ギヤ68の端面カム溝80に係合する案内ピン91とで構成されている。リンク本体90は、中央部に貫通形成した本体挿通穴92に、入力ギヤ68のピン軸が十分な遊びをもって挿通され、右下端部(図7示では、左下端部)をメインフレーム14に突設した回動支軸93に回転自在に軸支されている。
【0047】
アーム係合部94には、ピックアップアーム72の係合ピン76が遊びをもって係合している。これにより、係合ピン76が長穴内を無理なく微小移動し、ピックアップアーム72への力の伝達を円滑に行えるようになっている。一方、案内ピン91は、端面カム溝80内を摺動可能に構成されたいわゆるカムフォロアであり、端面カム溝80との間で上記の端面カム機構を構成している。
【0048】
端面カム機構は、カムリンク部材55に対し、リンク本体90の右下端部(回動支軸93)を支点として、案内ピン91に力点を構成させると共にアーム係合部94に作用点を構成させて、入力ギヤ68の回転力を、カムリンク部材55を介してピックアップアーム72の回動動作に変換して伝達している。端面カム溝80は、図8に示すように、内径円弧溝部81(転接溝部)と、外径円弧溝部82(印刷溝部)と、これら内径円弧溝部81および外形円弧溝部を結ぶ2つの移動溝部とで環状に連続させて形成されている(なお、図示では移動溝部の符号は省略)。
【0049】
端面カム機構は、案内ピン91が内径円弧溝部81内を相対的に摺動するときには、アーム係合部94の内側方向にピックアップアーム72の係合ピン76を引き付けて、ピックアップローラ52を転接位置に臨ませる。一方、案内ピン91が外径円弧溝部82内を相対的に摺動するときには、アーム係合部94の外側方向に係合ピン76を引き付けて、ピックアップローラ52を印刷位置に臨ませる。すなわち、端面カム溝80を有する入力ギヤ68の一回転で、ピックアップアーム72に一の往復回動動作を行わせ、ピックアップローラ52に転接位置と印刷位置との間で一の上下動作を行わせている。なお、後述するように、端面カム溝80からなるカム曲線は、ピックアップローラ52を付箋紙4aに対して離接移動させるタイミング、およびピックアップローラ52を印刷位置から転接位置に移行させるタイミングが、2つの移動溝部により巧みに保たれて形成されている。
【0050】
ここで、ピックアップローラ52の一連の動作について図9を参照して簡単に説明する。印刷待機状態において、ピックアップローラ52は、転接位置にあり、付箋紙ホルダ11にセットされた付箋紙束4の最上位の付箋紙4aの表面に転接している(同図(a))。駆動モータ51の駆動回転により、ピックアップローラ52は、駆動回転し始めて付箋紙捲り上げ動作を開始する。ピックアップローラ52が回転すると、最上位の付箋紙4a(の自由端側)のみ、先端側の位置規制部26から引き出され、その長手方向の中間部が次第に上方へと湾曲するように撓んでゆく(同図(b))。
【0051】
捲り上がってゆく付箋紙4aの先端がピックアップローラ52の下側を通過した直後に、ピックアップローラ52を回転させながら上動させ、付箋紙束4から離間させると、付箋紙4aは、ピックアップローラ52の回転力により、その上側に撥ね上げられ、ピックアップローラ52に乗り上げる(同図(c))。すなわち、付箋紙4aは、一旦撓んでから先端から撥ね上げられ、その先端部がピックアップローラ52の上側に回り込んでこれに載ることとなる。
【0052】
この捲り上げ動作の際に、ピックアップローラ52は、最上位の付箋紙4aにのみしか転接しないように、すなわち付箋紙4aの先端を撥ね上げる直前に移動するようにしている。より厳密には、回転するピックアップローラ52の下側を、撓んでゆく付箋紙4aの先端が通過し、その先端がピックアップローラ52の周面に引っかかったところで、ピックアップローラ52を移動させる。このようなピックアップローラ52の移動タイミングを端面カム機構で調整しているため、付箋紙4aを捲り上げると同時にその直下の付箋紙をも重ねて捲ることがないようになっている。
【0053】
付箋紙4aを載せたピックアップローラ52は、続いて印刷位置に上動(自転および公転しながら上動)し(同図(d))、サーマルヘッド28およびガイドローラ32との間に付箋紙4aを挟持するようにこれらに接触する。同時に、ローラギヤ63を介して付箋紙印刷機構12に動力が入力する(同図(e))。そして、ピックアップローラ52は、大きく傾動した付箋紙4aを、その糊付け部分4bから引き剥がすように先方に送り出してゆくと同時に(同図(f))、サーマルヘッド28と協働して印刷を行う。なお、付箋紙4aが糊付け部分4bから引き剥がされるときには、付箋紙4aの尾端側は位置規制部26から幾分引き出されるが(同図(g))、引き剥がしが完了すると元の位置に復帰する。
【0054】
印刷途中で完全に引き剥がされた付箋紙4aは、さらにピックアップローラ52およびガイドローラ32により、その印刷済み部分から付箋紙排出口6に向かって送り出されてゆく。印刷を完了した付箋紙4aが付箋紙排出口6から外部に送り出されると、次のタイミングでピックアップローラ52は、印刷位置から退避して転接位置に戻る(同図(h))。このとき、ピックアップローラ52が付箋紙印刷機構12から離間するため、歯車連結が解除されインクリボンRの走行も停止する。
【0055】
このように、本実施形態の付箋紙プリンタ1によれば、ピックアップローラ52の一連の回転駆動により、セットした付箋紙束4から付箋紙4aを1枚ずつ適切に捲り上げ、引き剥がしながら送ると共に、印刷を行い、その後、プリンタ外に排出することができる。これにより、所望の印刷データを印刷した付箋紙4aを、簡単に作成することができる。
【0056】
なお、ピックアップローラ52による付箋紙4aの重ね捲りを防止するため、ピックアップローラ52を、転接する付箋紙4aが僅かに撓んだ直後に、端面カム機構を調整することで、付箋紙束4に対しその糊付け部4b側に向かって移動させながら離間させてもよい。あるいは、ピックアップローラ52が付箋紙4aを撥ね上げた直後に、駆動モータ51の駆動を停止させ、ピックアップローラ52の回転を一旦停止させるようにしてもよい。
【0057】
また、図10に示すように、ピックアップローラ52を付箋紙束4の先端側に配置するのに代え、その長手方向の中間位置に配置してもよい。この場合には、転接位置でピックアップローラ52が回転すると、最上位の付箋紙4aは、次の付箋紙との間ですべりを生じながら、糊付け部4bに向かって大きく湾曲して撓んでゆく。すなわち、付箋紙4aは、略「ル」字状に撓み、この撓みに基づいてピックアップローラ52に突っ張るように接触する。そして、この状態で(「ル」字状に撓んだ直後に)、ピックアップローラ52を上動させることで、付箋紙4aを確実に捲り上げることができる。
【0058】
なお、付箋紙印刷機構12に設けたガイドローラ32は、ピックアップローラ52とサーマルヘッド28との間で、付箋紙4aを引き剥がして送り出すことができる十分な摩擦力を奏させることで省略してもよい。また、本実施形態の付箋紙束4に代え、付箋紙4aの基端側の端面のみを糊付けして積層した形式の付箋紙束であってもよい。さらに、付箋紙4aを感熱式のものとして構成し、リボンカートリッジ8を不要とする構成にしてもよい。また、本実施形態の付箋紙プリンタ1は、部分糊付けがなされていない一般的な用紙を積層した用紙束を、印刷対象物とすることができるのは、いうまでもない。
【0059】
次に、付箋紙プリンタ1とパソコンPCとからなる付箋紙印刷システムについて、図11ないし図13を参照して説明する。パソコンPCは、データを入力可能なキーボード100と、キーボード100により入力されたデータを表示するモニター101と、モニター101に表示されたデータを指定・選択するマウス102とを備えており、CD−ROM103等の外部記録媒体を挿入可能に構成されている。そして、USB等で入出力端子間をパソコンPCと接続した付箋紙プリンタ1は、パソコンPCでモニター101を参照しながらキーボード100で入力・編集して作成する印刷データに対し、あるいはインターネット情報やEメールの内容等の既存の作成済み印刷データに対し、マウス102により印刷領域を指定・選択して、印刷指令を出すことで、指定・選択した印刷データを付箋紙4aに印刷し、印刷済み付箋紙4aを作成する。
【0060】
パソコンPCの主制御部は、図12に示すように、各種の制御を行うCPU110と、ROM111と、RAM112と、外部記録媒体としてのCD−ROM103と、P−CON113とを備えており、これらは互いにバス114を介して接続されている。ROM111は、CPU110で処理する制御プログラムや制御データを記憶する領域を有している。RAM112は、制御処理のための各種作業領域として使用される。また、CD−ROM103には、付箋紙プリンタ1に関するアプリケーションソフトやデバイスドライバ等のデータが記憶されている。
【0061】
P−CON113には、CPU110の機能を補うと共に周辺回路との信号を取り扱うための論理回路が組み込まれており、キーボード100、モニター101、およびマウス102などがドライバを介して接続され、さらに付箋紙プリンタ1が接続されている。付箋紙プリンタ1との関係において、CPU110は、CD−ROM103内の付箋紙印刷のためのプログラムに従って、P−CON113を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、ROM111およびRAM112内の各種データ等を処理し、P−CON113を介して付箋紙プリンタ1に制御信号を出力する。すなわち、このパソコンPCからの制御信号により、付箋紙プリンタ1では、サーマルヘッド28および駆動モータ51が制御される。
【0062】
具体的には、この付箋紙プリンタ1をユーザがパソコンPCと通信接続して使用する場合、図13に示すように、モニター101の画面上に表示されたテキスト120aあるいはオブジェクト120bからなる印刷データ120のうち印刷したい必要な領域を、マウス102により選択すると共に、これをドラッグしてモニター101の画面上に予め設定したアイコン121にドロップする。すると、付箋紙4aへの印刷が指示され、付箋紙4aに熱転写による印刷が行われ、所望の印刷済み付箋紙4aが付箋紙排出口6から排出される。なお、パソコンPCでは、付箋紙プリンタ1におけるリボンカートリッジ8の有無、付箋紙束4の有無および種類の検出結果をモニター101で確認できるようになっている。
【0063】
次に、付箋紙供給機構13の第2実施形態について、図14を参照して説明する。本実施形態では、ピックアップローラ52は、上下動自在に構成されているが、プラテンローラを兼ねるものでなく、主として、付箋紙4aに対し捲り上げ、引き剥がし、および送りを行い、別に設けたプラテンローラ132に付箋紙4aを送り渡す構成としたものである。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明するが、符号は第1実施形態とできるだけ共通としている。
【0064】
ピックアップローラ52は、付箋紙束4の先端側に配設され、ローラ本体62のゴムロール65が付箋紙4aに転接していると共に、ローラ本体62の端部に形成したローラギヤ63が入力ギヤ68に噛合している。入力ギヤ68は、先端部にピックアップローラ52を回転自在に保持し且つ上下動させるピックアップアーム72の回動軸を同軸としていると共に、略「L」字状のカムリンク部材55との間で端面カム機構を構成している。端面カム機構は、入力ギヤ68の端面カム溝80と、端面カム溝80に係合するカムリンク部材55の案内ピン91とで構成され、カムリンク部材55を介して入力ギヤ68の回転動作をピックアップアーム72の回動運動に変換している。
【0065】
すなわち、カムリンク部材55の「L」字の先端部に貫通形成したアーム係合部94が、ピックアップアーム72の基端部に形成した係合ピン76を相対的に摺動させて、ピックアップアーム72を端面カム機構に従って回動動作させる。これにより、ピックアップローラ52は、付箋紙束4上の最上位の付箋紙4aに転接する転接位置と、転接位置の上側であって付箋紙印刷機構12との間に設けた受動ローラ130に当接する挟持位置との間で、付箋紙束4に対して離接移動する。
【0066】
受動ローラ130は、ゴムなどの摩擦材料で構成され、ピックアップローラ52と平行に回転自在にプリンタフレーム10(図示省略)に片持ちで軸支されている。受動ローラ130は、自由回転可能に構成され、上動して挟持位置にあるピックアップローラ52の駆動回転を受けて従動回転するようになっている。これにより、ピックアップローラ52により捲り上げられてこれに乗り上げた付箋紙4aは、挟持位置においてピックアップローラ52と受動ローラ130とに挟持された状態で回転送りされ、糊付け部分4bから引き剥がされてゆく。
【0067】
受動ローラ130に近接して付箋紙送り方向上方には、サーマルヘッド28に対峙するプラテンローラ132が配設されている。プラテンローラ132は、プリンタフレーム10に回転自在に軸支されており、付箋紙4aをその先端から受け取り、サーマルヘッド28と協働してこれに印刷を行う。プラテンローラ132は、その基端部にプラテンギヤ133が設けられており、プラテンギヤ133は、上方のリボン巻取機構29(リボン巻取ギヤ41あるいは巻取中間ギヤ43)に噛合している。
【0068】
また、プラテンローラ132に近接して、プラテンローラ132と受動ローラ130との間には、プラテン伝達ギヤ134がプリンタフレーム10に回転自在に軸支されている。プラテン伝達ギヤ134には、プラテンギヤ133が噛合していると共に、挟持位置にあるピックアップローラ52のローラギヤ63に噛合する。すなわち、プラテンローラ132は、ピックアップローラ52が挟持位置に達したときに動力を伝達されて回転し、リボン巻取リール49に動力を伝達してこれを回転させる。
【0069】
これにより、付箋紙4aは、さらに高い位置で挟持した状態となるため、一層その形態が急角度に傾斜する。このため、付箋紙4aは、十分な引き剥がし力を作用されて、糊付け部4bから引き出されて印刷に供され、プラテンローラ132により装置ケース2外に排出されてゆく。なお、ピックアップローラ52は、端面カム機構によりプラテンローラ132が印刷済み付箋紙4aを送り出し排出をした後、印刷位置から退避して転接位置に戻る。
【0070】
本実施形態の付箋紙供給機構13によれば、ピックアップローラ52で付箋紙4aを捲り上げた後、一旦これを受動ローラ130とで挟持し、さらに高さレベルの高いプラテンローラ132に対し付箋紙4aを搬送するため、付箋紙4aをその糊付け部分4bから適切に引き剥がすことができる。また、付箋紙4aを先端側からプラテンローラ132に送り渡しているため、付箋紙4aの先端から印刷することができるようになる。
【0071】
次に、付箋紙4aを捲り上げてこれを先方に供給する付箋紙供給方法について、説明する。本方法においては、上記両実施形態のピックアップローラ52を付箋紙4aに対し、転接させて捲り上げることには相違がないが、より付箋紙4aを捲り上げやすいものとしている。具体的には、図15(a)、(b)に示すように、付箋紙捲り上げ動作時に、付箋紙束4の先端に配設されたピックアップローラ52を、付箋紙4aの基端側へと転接移動させながら、付箋紙束4から離間移動させるようにしてもよい。あるいは、付箋紙束4を保持する付箋紙ホルダ11を、ピックアップローラ52に対し上述のように相対移動させてもよい。これにより、付箋紙4aの更なる撓みを促進して、付箋紙4aの捲り上げを円滑に行うことができる。
【0072】
また、図15(c)に示すように、ピックアップローラ52による付箋紙4aの捲り上げ動作に先立って、付箋紙束4がその中間部を水平姿勢から下側に撓ませた状態であってもよい。これにより、付箋紙4aは、自己の復元力により、先端が勢いよく撥ね上げられることとなる。この場合、付箋紙ホルダ11が、付箋紙束4の長手方向の両端を挟持して、その中間部を押し下げる構成とすればよい。
【0073】
なお、この付箋紙供給方法および上記各実施形態の付箋紙供給機構は、上記実施形態の印刷前のみに限らず、印刷後の付箋紙の捲り上げに適用してもよい。たとえば、本出願人が先に出願した特願2000−243609号に記載の付箋紙プリンタにおいて、ユーザに委ねた印刷済み付箋紙の引き剥がしを、上記各実施形態の付箋紙供給機構および付箋紙供給方法に適用することができる。これにより、ユーザに煩雑な作業を強いずにすむ。
【0074】
本発明の付箋紙プリンタによれば、付箋紙は、付箋紙束として、ケース内へ付箋紙導入開口から導入されて水平姿勢でセットされ、セットした付箋紙束に対する一連の機構動作により、1枚ずつ引き剥がされ、先方に水平姿勢状態を維持して送られてゆくと共に印刷が行われ、ケース外へと排出される。これにより、現有の付箋紙束の扱い方を踏襲した形態で、付箋紙束のセットおよび印刷済みの付箋紙を得ることができ、ユーザをして付箋紙を違和感なく扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る付箋紙プリンタの全体斜視図である。
【図2】付箋紙プリンタの装置ケースを省略して内部の構造を示す斜視図である。
【図3】図2において、リボンカートリッジを装着した付箋紙プリンタの斜視図である。
【図4】付箋紙プリンタの内部の構造を示す分解斜視図である。
【図5】付箋紙プリンタの装置ケースを省略して内部の構造を示す部分断面正面図である。
【図6】付箋紙プリンタの底面図である。
【図7】付箋紙供給機構廻りの斜視図である。
【図8】端面カム機構による動作を示す付箋紙供給機構廻りの正面図である。
【図9】付箋紙供給機構による一連の動作を示す流れ図である。
【図10】付箋紙供給機構の変形例を簡略化して示す説明図である。
【図11】パーソナルコンピュータと付箋紙プリンタとをリンクさせた状態を示す説明図である。
【図12】パーソナルコンピュータと付箋紙プリンタとをリンクさせた状態のブロック図である。
【図13】パーソナルコンピュータによるモニター画面上での操作を示す説明図。
【図14】第2実施形態にかかる付箋紙供給機構廻りの正面図である。
【図15】その他の付箋紙供給方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1…付箋紙プリンタ 4…付箋紙束 4a…付箋紙 4b…糊付け部分 6…付箋紙排出口 11…付箋紙ホルダ 12…付箋紙印刷機構 13…付箋紙供給機構 28…サーマルヘッド 32…ガイドローラ 52…ピックアップローラ 70…回動アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付箋紙ホルダにセットした付箋紙束の最上位の付箋紙から1枚ずつ引き剥がすと共に、前記付箋紙の自由端を先頭として印刷送りする付箋紙送り機構と、
前記付箋紙送り機構により送られてゆく前記付箋紙に臨み、前記付箋紙に自由端側から印刷を行う付箋紙印刷機構と、を備えたことを特徴とする付箋紙プリンタ。
【請求項2】
前記付箋紙送り機構は、前記付箋紙に転接し、これを捲り上げるピックアップローラと、
先端部に前記ピックアップローラを回転自在に両持ちで保持すると共に、基端部を中心に回動自在に構成された一対の回動アームと、を有し、
前記ピックアップローラは、前記一対の回動アームにより、前記付箋紙に転接する転接位置と前記付箋紙印刷機構のサーマルヘッドに当接する印刷位置との間で回動し、前記転接位置で前記付箋紙の捲り上げ動作を行うと共に、前記印刷位置で捲り上げた前記付箋紙を前記サーマルヘッドに押し付けると同時に印刷送りすることを特徴とする請求項1に記載の付箋紙プリンタ。
【請求項3】
前記付箋紙送り機構は、前記サーマルヘッドに近接し、印刷後の前記付箋紙を前記ピックアップローラとの間に挟み前記ピックアップローラの回転を受けて従動回転するガイドローラを、更に備え、前記ピックアップローラおよび前記ガイドローラは、印刷後の前記付箋紙を付箋紙排出口に向かって送り出すことを特徴とする請求項2に記載の付箋紙プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−175878(P2006−175878A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5208(P2006−5208)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【分割の表示】特願2001−202183(P2001−202183)の分割
【原出願日】平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】