説明

代謝共役型グルタミン酸受容体−5のリガンドとしての5−フルオロ−、クロロ−、およびシアノ−ピリジン−2−イル−テトラゾール

本発明は、Z、Q、X、X、RおよびRを式Iにおいて定義したとおりとする式Iの新規化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは溶媒和した塩、それらの調製のための方法、前記化合物を含有する医薬製剤、および治療における前記化合物の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、新規化合物、前記化合物を含有する医薬組成物、および治療における前記化合物の使用に関する。本発明はさらに前記化合物の調製方法に関する。
【0002】
発明の背景
グルタミン酸は哺乳類の中枢神経系(CNS)における主要な興奮性の神経伝達物質である。グルタミン酸は細胞表面受容体に結合し、それによりこれを活性化することにより中枢神経にその効果を及ぼす。これらの受容体は、受容体タンパク質の構造上特色、受容体が細胞内へのシグナルを変換する手段、および薬学的プロフィールに基づいて、2つの主要なクラスである、イオン共役型グルタミン酸受容体および代謝共役型グルタミン酸受容体に分けられている。
【0003】
代謝共役型グルタミン酸受容体(mGluR)は、グルタミン酸の結合に続いて多様な細胞内セカンドメッセンジャーシステムを活性化するGタンパク質共役型受容体である。健常な哺乳類のニューロンにおけるmGluRの活性化は、以下の応答:ホスホリパーゼCの活性化;ホスホイノシチド(PI)の加水分解の増加;細胞内カルシウムの放出;ホスホリパーゼDの活性化;アデニルシクラーゼの活性化または阻害;サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)形成の増加または低減;グアニリルシクラーゼの活性化;サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)形成の増加;ホスホリパーゼAの活性化;アラキドン酸の放出の増加;ならびに電位依存性およびリガンド依存性のイオンチャネルの活性の増加または低減、の1つまたはそれより多くを引き起こす。Schoepp et al., Trends Pharmacol. Sci. 14:13 (1993), Schoepp, Neurochem. Int. 24:439 (1994), Pin et al., Neuro-pharmacology 34:1 (1995), Bordi and Ugolini, Prog. Neurobiol. 59:55 (1999)。
【0004】
mGluR1からmGluR8まで命名された8つの区別されるmGluRサブタイプが、分子クローニングにより同定された。Nakanishi, Neuron 13:1031 (1994), Pin et al., Neuropharmacology 34:1 (1995), Knopfel et al., J. Med. Chem. 38:1417 (1995)。さらなる受容体の多様性はある種のmGluRサブタイプの選択的スプライシングによる形の発現より起こる。Pin et al., PNAS 89:10331 (1992), Minakami et al., BBRC 199:1136 (1994), Joly et al., J. Neurosci. 15:3970 (1995)。
【0005】
代謝共役型グルタミン酸受容体サブタイプは、アミノ酸配列の相同性、受容体の用いるセカンドメッセンジャーシステムに基づいて、およびそれらの薬理学的特徴により、3つのグループであるグループI、グループIIおよびグループIIIのmGluRに細分してよい。mGluR5は、mGluR1、mGluR5およびそれらの選択的スプライシングのバリアントを包含する。これらの受容体へのアゴニストの結合は、ホスホリパーゼCの活性化およびその後の細胞内カルシウムの流動に至る。
【0006】
[神経学的、精神医学的および疼痛の障害]
グループImGluRの生理学的役割を解明する試みは、これらの受容体の活性化がニューロンの興奮を引き起こすことを示唆している。多様な試験は、グループImGluRアゴニストが、海馬、大脳皮質、小脳、および視床、ならびにその他のCNS領域のニューロンへの投与で、後シナプスの興奮を発生させることができることを実証した。エビデンスは、この興奮が後シナプスのmGluRの直接的な活性化によるものであることを示すが、前シナプスのmGluRの活性化が起こり、その結果増加された神経伝達物質の放出に至ることもまた示唆された。Baskys, Trends Pharmacol. Sci. 15:92 (1992), Schoepp, Neurochem. Int. 24:439 (1994), Pin et al., Neuropharmacology 34:1(1995), Watkins et al., Trends Pharmacol. Sci. 15:33 (1994)。
【0007】
代謝共役型グルタミン酸受容体は、哺乳類のCNSのいくつかの正常なプロセスにかかわっている。mGluRの活性化は、海馬の長期増強および小脳の長期抑制の誘導に必要であることが示されている。Bashir et al., Nature 363:347 (1993), Bortolotto et al., Nature 368:740 (1994), Aiba et al., Cell 79:365 (1994), Aiba et al., Cell 79:377 (1994)。侵害刺激受容および痛覚脱失におけるmGluRの活性化の役割もまた実証された。Meller et al., Neuroreport 4: 879 (1993), Bordi and Ugolini, Brain Res. 871:223 (1999)。加えてmGluRの活性化は、シナプスの伝達、ニューロンの発達、アポトーシスによるニューロンの死、シナプスの可塑性、空間学習、臭覚記憶、心臓の活動の中枢コントロール、目覚め、運動コントロール、および前庭動眼反射のコントロールを含む多様なその他の正常なプロセスにおいて調節の役割を担っていることが示唆された。Nakanishi, Neuron 13: 1031 (1994), Pin et al., Neuropharma-cology 34:1, Knopfel et al., J. Med. Chem. 38:1417 (1995)。
【0008】
さらにグループI代謝共役型グルタミン酸受容体は、CNSに影響を及ぼす多様な急性および慢性の病理生理学的なプロセスおよび疾患において役割を担っていることが示唆された。これらには、脳卒中、頭部外傷、低酸素性および虚血性傷害、低血糖症、癲癇、神経変性障害 例えばアルツハイマー病、精神医学的障害、および疼痛が含まれる。Schoepp et al., Trends Pharmacol. Sci. 14:13 (1993), Cunningham et al., Life Sci. 54:135 (1994), Hollman et al., Ann. Rev. Neurosci. 17:31 (1994), Pin et al., Neuropharmacology 34:1 (1995), Knopfel et al., J. Med. Chem. 38:1417 (1995), Spooren et al., Trends Phar-macol. Sci. 22:331 (2001), Gasparini et al. Curr. Opin. Pharmacol. 2:43 (2002), Neuge-bauer Pain 98:1 (2002)。これらの状態の病理の多くは、CNSニューロンの過剰なグルタミン酸誘発性の興奮によるものであると考えられている。グループImGluRは、後シナプスのメカニズム、および高められた前シナプスのグルタミン酸の放出を経て、グルタミン酸を介してのニューロンの興奮を増大させると思われるため、それらの活性化はおそらく病理の一因となる。したがってmGluR5受容体の選択的アンタゴニストは、CNSニューロンの過剰なグルタミン酸誘発性の興奮が根底となるすべての状態において、具体的には神経保護薬、鎮痛薬、または抗痙攣薬として、治療上有益であることが可能であった。
【0009】
一般に代謝共役型グルタミン酸受容体、そして得にグループI、とりわけmGluR5受容体の神経生理学的役割の解明における最近の進歩は、急性および慢性の神経学的および精神医学的障害、ならびに慢性および急性の疼痛障害の治療における有望な薬剤標的として、これらの受容体を確立したのである。
【0010】
[胃腸障害]
下部食道括約筋(LES)は、断続的に弛緩する傾向がある。その結果、メカニカルなバリアーがそのようなときに一時的になくなるため、胃からの流動物が食道内に入ることが可能となり、このイベントを本明細書では以下“逆流”と言う。
【0011】
胃食道逆流症(GERD)は、最も一般的な上部胃腸管の疾患である。今日の薬理学的治療は、胃酸の分泌を低減すること、または食道内の酸を中和することを目的とする。逆流の背後の主なメカニズムは、下部食道括約筋の低張に依存すると考えられた。しかし例えばHolloway & Dent (1990) Gas-troen-terol. Clin. N. Amer. 19, pp. 517-535は、一過性下部食道括約筋弛緩(TLESR)、すなわち嚥下が引き金とならない弛緩時にほとんどの逆流エピソードが起こることを示した。GERDの患者において胃酸の分泌が通常正常であることもまた示された。
【0012】
本発明に従っての新規化合物は、一過性下部食道括約筋弛緩(TLESR)の阻害、したがって胃食道逆流障害(GERD)の処置に有用であると推定される。
“TLESR”、すなわち一過性下部食道括約筋弛緩という用語は、Mittal, R.K., Holloway, R.H., Penagini, R., Blackshaw, L.A., Dent, J., 1995; Transient lower esophageal sphincter relaxation. Gastroenterology 109, pp. 601-610に従って、本明細書において定義する。
【0013】
“逆流”という用語は、メカニカルなバリアーが一時的にそのようなときになくなるために、食道内に入ることが可能である胃からの流動物として、本明細書において定義する。
【0014】
“GERD”、すなわち胃食道逆流症という用語は、van Heerwarden, M.A., Smout A.J.P.M., 2000; Diagnosis of reflux disease. Bailliere’s Clin. Gastroenterol. 14, pp. 759-774に従って、本明細書において定義する。
【0015】
それらの生理学的および病理生理学的重要性のため、mGluRサブタイプ、特にグループI受容体サブタイプ、例えばmGluR5受容体に高い選択性を示す、新規の効能あるmGluRアゴニストおよびアンタゴニストが必要とされている。
【0016】
[先行技術]
薬剤製品としてのその適性を決定する上で重要である化合物の多くの特性がある。非常に重要なのは、標的タンパク質での化合物の相互作用およびその薬物動態学的プロフィール、すなわち所望の治療効果を有するために十分な量を十分な時間、標的タンパク質に到達させるその能力である。本発明の目的は、以前に記載されたようにピリジン環の5の位置に他の置換基を有する類似の置換化合物と比較した時に、驚くほど改善された特徴を伴う新規5−置換ピリジンを提供することである。WO 03/077918およびWO 03/029210は、mGluR5受容体で活性を呈する2−(5−テトラゾリル)−5−置換ピリジンについて記載している。我々は、実験室の測定で効能および薬物動態の双方のプロフィールを比較した時に、ピリジン上の適当な5−置換基が、同じ位置での他の置換基を上回る劇的な改善をもたらしたことを発見した。
【0017】
(発明の概要)
本発明は式Iの化合物:
【0018】
【化1】

【0019】
[式中:
はNでありXはCであり、またはXはCでありXはNであり;
Zはフルオロ、クロロ、またはシアノであり;
およびRは独立して、水素、ヒドロキシ、ハロ、−C1−6アルキルハロ、−OC1−6アルキルハロ、−C1−6アルキル、−OC0−6アルキル、−C1−6アルキルOR、−OC2−6アルキルOR、−C0−6アルキルシアノ、−C0−6アルキルNR、および−OC2−6アルキルNRから成る群より選択され;
およびRは独立して、水素、および−C1−3アルキルから成る群より選択される];
またはその塩、溶媒和物もしくは溶媒和した塩、に関する。
【0020】
本発明のもう1つの側面において、治療における使用のため、特にmGluR5受容体を介しての障害の処置のため、そして神経学的障害、精神医学的障害、胃腸障害および疼痛障害の処置のため、式Iの化合物を提供する。
【0021】
本発明のさらなる側面において、1以上の医薬的に許容な希釈剤、賦形剤、および/または不活性な担体と共に、治療有効量の式Iの化合物を包含する医薬組成物を提供する。
本発明のなおもう1つの側面において、mGluR5受容体を介しての障害の処置における使用のため、ならびに神経学的障害、精神医学的障害、胃腸障害および疼痛障害の処置における使用のため、式Iの化合物を包含する医薬組成物を提供する。
【0022】
本発明のなおもう1つの側面において、式Iの化合物の調製方法を提供する。
本発明のさらなる側面は、機能的な胃腸障害、例えば機能的な消化不良(FD)の処置または予防のための医薬の製造に関する、式Iに従っての化合物の使用である。本発明のなおもう1つの側面は、過敏性大腸症候群(IBS)、例えば便秘を主症状とするIBS、下痢を主症状とするIBS、または交代性便通異常を主症状とするIBSのための医薬物の製造に関する、式Iに従っての化合物の使用である。
本発明のこれらおよびその他の側面を、より詳細に本明細書にて以下に記載する。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明の目的は、ピリジン環の5位に他の置換基を有する類似の置換化合物と比較した時に、驚くほど改善された特徴を有する5−置換ピリジンを提供することである。
本発明を記載するための明細書および請求項に使用する様々な用語の定義を以下に列記する。
【0024】
紛らわしさを避けるため、本明細書においてある群が“本明細書にて先に定義した”(“hereinbefore defined”もしくは“defined hereinbefore”)または“上に定義した”により条件付けられる場合、前記群は最初に提示された定義および最も広範囲な定義、ならびにその群に関するそれ以外の定義の各々およびすべてを包括的に含むことと理解されるものとする。
【0025】
紛らわしさを避けるため、本明細書において“C1−6”は1,2,3,4,5または6の炭素原子を有する炭素の基を意味することと理解されるものとする。
下付き文字が整数0(ゼロ)である場合、下付き文字を有する基はその基が存在しないことを示すことを言う。
【0026】
本明細書において他に記述していなければ、“アルキル”という用語は、直鎖および分枝鎖の双方のアルキル基を含み、メチル、エチル、n−プロピル、i−プルピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、neo−ペンチル、n−ヘキシル、またはi−ヘキシル、t−ヘキシルであってよいがこれに限定されない。C1−3アルキルという用語は、1から3の炭素原子を有し、メチル、エチル、n−プロピル、またはi−プロピルであってよい。
【0027】
本明細書において他に記述していなければ、“OC0−6アルキル”という用語は、直鎖および分枝鎖の双方のアルコキシ基を含む。C0−3アルコキシは、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、またはi−プロポキシであってよいがこれに限定されない。
【0028】
本明細書において他に記述していなければ、“ハロ”および“ハロゲン”という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであってよい。
本明細書において他に記述していなければ、“アルキルハロ”という用語は、上に定義したようなハロで置換されている、上に定義したようなアルキル基を意味する。
【0029】
“C1−6アルキルハロ”という用語は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、またはブロモプロピルを含んでよいが、これに限定されない。
【0030】
“OC1−6アルキルハロ”という用語は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フルオロエトキシまたはジフルオロエトキシを含んでよいが、これに限定されない。
【0031】
本発明の1つの態様において、XはNでありXはCであり、またはXはCでありXはNである。
本発明は、XがCでありXがNである式Iの化合物に関する。
本発明のもう1つの態様において、XがNでありXがCである。
【0032】
本発明のさらなる態様において、Zはフルオロ、クロロ、またはシアノである。
本発明は、Zがフルオロまたはシアノである式Iの化合物に関する。
本発明のなおもう1つの態様において、Zはクロロである。本発明の1つの態様において、Zはフルオロである。
【0033】
本発明のもう1つの態様において、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロ、−C1−6アルキルハロ、−OC1−6アルキルハロ、−C1−6アルキル、−OC0−6アルキル、−C1−6アルキルOR、−OC2−6アルキルOR、−C0−6アルキルシアノ、−C0−6アルキルNR、および−OC2−6アルキルNRから成る群より選択される。
【0034】
およびRは独立して、水素、ヒドロキシおよびC1−3アルキルから成る群より選択される。
本発明は、RおよびRが、水素、ヒドロキシ、ハロ、−C1−3アルキルハロ、−OC1−3アルキルハロ、−C1−3アルキル、−OC0−3アルキル、−C1−3アルキルOR、−OC2−4アルキルOR、−C0−3アルキルシアノ、およびC0−3アルキルNRから成る群より選択され;そしてRおよびRは独立して、水素、メチルおよびエチルから選択される、式Iの化合物に関する。
【0035】
本発明のさらなる態様において、RおよびRは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、メトキシメチル、メトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−メトキシ−エトキシ、エチルアミノ、およびアミンから成る群より選択される。
【0036】
本発明は、Rがフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシメチル、メトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−メトキシ−エトキシ、エチルアミノ、またはアミンである、式Iの化合物に関する。
【0037】
本発明のもう1つの態様において、Rはメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−メトキシ−エトキシ、またはエチルアミノである。
本発明のなおさらなる態様において、Rはクロロ、ブロモ、ヨード、またはメトキシメチルである。
【0038】
本発明のなおもう1つの態様において、Rはフルオロである。
本発明の1つの態様において、RはハロまたはC0−6アルキルシアノである。
本発明は、Rがフルオロまたはシアノである、式Iの化合物に関する。
【0039】
本発明はまた以下の化合物;
3−フルオロ−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル、
6−[2−(3−シアノ−5−フルオロフェニル)−2H−テトラゾル−5−イル]ニコチノニトリル、
3−[5−(5−クロロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−フルオロベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−テトラゾル−2−イル]−5−メトキシメチル−ベンゾニトリル、
3−フルオロ−5−[2−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−5−イル]ベンゾニトリル、
6−[5−(3−シアノ−5−フルオロフェニル)−2H−テトラゾル−2−イル]ニコチノニトリル、
3−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−5−イル]−5−フルオロベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−(メトキシメチル)ベンゾニトリル、
5−フルオロ−2−[2−(3−フルオロ−5−メトキシフェニル)−2H−テトラゾル−5−イル]ピリジン、
3−[5−(5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−メトキシベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−(トリフルオロメトキシ)ベンゾニトリル、
3−(ジフルオロメトキシ)−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−(2−メトキシエトキシ)ベンゾニトリル、
3−(エチルアミノ)−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル、
3−アミノ−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−ヨードベンゾニトリル、および
またはその塩、溶媒和物、もしくは溶媒和された塩に関する。
【0040】
本発明の化合物の適切な医薬的に許容な塩は、例えば酸付加塩、例えば無機酸または有機酸の付加塩である。加えて本発明の化合物の適切な医薬的に許容な塩は、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、または有機塩基を伴う塩である。
【0041】
その他の医薬的に許容な塩、およびこれらの塩を調製する方法は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences (第18版、Mack Publishing Co.) 1990 に見出してもよい。
式Iの一部の化合物は、キラル中心および/または幾何異性体の中心(E異性体およびZ異性体)を有してよく、本発明はそのような光学異性体、ジアステレオマーの異性体、および幾何異性体のすべてを包括的に含むことと、理解されるものとする。
本発明はまた、式Iの化合物の任意のおよびすべての互変異性体に関する。
【0042】
[医薬組成物]
本発明の1つの側面によれば、活性成分として式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは溶媒和した塩の治療有効量を、1以上の医薬的に許容な希釈剤、賦形剤、および/または不活性な担体と共に含む医薬組成物が提供される。
【0043】
当該組成物は、経口投与用に例えば錠剤、ピル、シロップ、粉末、顆粒もしくはカプセルとして、非経口注入(静脈内、皮下、筋肉内、血管内もしくは輸液を含む)用に滅菌した溶液、懸濁液もしくはエマルジョンとして、局所投与用に例えば軟膏、パッチもしくはクリームとして、または直腸投与用に例えば座剤として適する形であってもよい。
【0044】
一般に上記の組成物は、1以上の従来の賦形剤、医薬的に許容な希釈剤、および/または不活性な担体を用いて、従来の方法で調製されうる。
ヒトを含む哺乳動物の処置における式Iの化合物の適切な1日の用量は、経口投与でおよそ0.01から250mg/kg体重、そして非経口投与でおよそ0.001から250mg/kg体重である。
【0045】
活性成分の典型的な1日の用量は広い範囲内で変化し、多様な因子、例えば関連する適応、処置する病気の重篤度、投与経路、患者の年齢、体重および性別、ならびに使用する特定の化合物に依存することになり、担当医師により決定されうる。
【0046】
[医学的使用]
本発明の化合物、それらの塩、溶媒和物、もしくは溶媒和した塩は、個々の代謝共役型グルタミン酸受容体(mGluR)サブタイプに対して高い程度の効能および選択性を示すことが発見された。したがって本発明の化合物は、mGluR5受容体の興奮性の活性化に伴う状態の処置において、そしてmGluR5受容体の興奮性の活性化に起因するニューロンの損傷を阻害するために有用であると期待される。本化合物は、ヒトを含む哺乳動物においてmGluR5の阻害効果を生じさせるために使用されうる。
【0047】
mGluR5受容体は、中枢神経系および末梢神経系において、ならびにその他の組織において高度に発現される。したがって本発明の化合物は、mGluR5受容体を介しての障害、例えば急性および慢性の神経学的障害および精神医学的障害、胃腸障害、ならびに慢性および急性の疼痛障害の処置に、良好に適合する。
【0048】
本発明は、治療における使用のための、本明細書にて先に定義した式Iの化合物に関する。
本発明は、mGluR5受容体を介しての障害の処置における使用のための、本明細書にて先に定義したような式Iの化合物に関する。
【0049】
本発明は、アルツハイマー病、老人性痴呆、AIDS誘発性痴呆、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、偏頭痛、癲癇、統合失調症、鬱、不安、急性不安、眼科的障害(例えば網膜症)、糖尿病性網膜症、緑内障、聴神経障害(例えば耳鳴り)、化学療法誘発性のニューロパチー、ヘルペス後神経痛および三叉神経痛、耐性、薬物依存、脆弱X症候群、自閉症、精神遅滞、統合失調症およびダウン症候群の処置において使用するための、本明細書にて先に定義したような式Iの化合物に関する。本発明は、偏頭痛、炎症性疼痛、ニューロパチー(例えば糖尿病性ニューロパチー)による疼痛障害、関節炎およびリウマチの疾患、腰痛、術後疼痛、およびアンギナを含む様々な状態に伴う疼痛、腎臓または胆管の疝通、生理痛(menstruation)、偏頭痛および痛風に関連する疼痛の処置において使用するための、本明細書にて先に定義したような式Iの化合物に関する。
【0050】
本発明は、脳卒中、頭部外傷、低酸素性および虚血性傷害、低血糖症、心血管疾患、および癲癇の処置において使用するための、本明細書にて先に定義したような式Iの化合物に関する。
【0051】
本発明はまた、mGluR5受容体を介しての障害および上に列記したあらゆる障害の処置のための医薬の製造における、本明細書にて先に定義したような式Iの化合物に関する。
【0052】
本発明の1つの態様は、胃腸障害の処置における、式Iの化合物の使用に関する。
本発明のもう1つの態様は、一過性下部食道括約筋弛緩の阻害のため、GERDの処置のため、逆流の予防のため、吐き戻しの処置、喘息の処置、喉頭炎の処置、肺疾患の処置のため、および成長障害の管理のための医薬物の製造に関する、式Iに従っての化合物の使用に関する。
【0053】
本発明はまた、本明細書にて先に定義したような式Iの化合物の有効量を患者に投与することを包含する、mGluR5受容体を介しての障害および上に列記したあらゆる障害を患っているまたはリスクのある患者における、前記状態の処置法を提供する。
【0054】
特定の障害の治療的処置または予防的処置に必要な用量は、処置する対象、投与経路、および処置する病気の重篤度に依存して必然的に変えることになる。
本明細書の文脈において“治療”および“処置”という用語は、そうでないとの具体的な指示がなければ、予防(preventionおよび/またはprophylaxis)を含む。“治療の”および“治療的”という用語は、これに準じて解釈すべきである。
【0055】
本明細書において他に記述していなければ、“アンタゴニスト”および“阻害薬”という用語は、あらゆる手段により部分的にまたは完全に、リガンドによる応答の産生を導く伝達経路を遮断する化合物を意味するものとする。
【0056】
“障害”という用語は他に記述していなければ、代謝共役型グルタミン酸受容体の活性に伴うあらゆる状態および疾患を意味する。
【0057】
[医学以外の使用]
治療薬におけるそれらの使用に加えて、式Iの化合物、またはそれらの塩、溶媒和物、もしくは溶媒和した塩はまた、新規治療物質の探究の一部として、実験動物 例えばネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラットおよびマウスにおけるmGluRに関連する活性の阻害薬の効果を評価するための、in vitroおよび in vivoの検査システムの開発および標準化における、医薬的ツールとしても有用である。
【0058】
調製方法
本発明のもう1つの側面は、式Iの化合物、またはそれらの塩、溶媒和物、もしくは溶媒和した塩を調製するための方法を提供する。本発明の化合物の調製のための方法を本明細書に記載する。
【0059】
前記方法に関する以下の記載を通して、必要に応じて適切な保護基が、様々な反応物および中間体に、有機合成の当業者により容易に理解される様式で付加(そしてその後除去)されることと理解されるものとする。そのような保護基を使用するための慣用の方法、ならびに適切な保護基の例は、例えば”Protective Groups in Organic Synthesis”, T.W. Green, P.G.M. Wuts, Wiley-Intersciencs, New York, (1999)に記載されている。基または置換基の、化学的操作による別の基または置換基への変換は、最終生成物への合成経路におけるあらゆる中間体または最終生成物で行うことができ、その場合変換の可能なタイプは、変換に使用する条件または試薬に対してその段階の分子の持つ他の官能基(functionalities)の固有の不適合性によってのみしか限定されないこともまた、理解されるものとする。そのような固有の不適合性、および適当な変換および適切な順序での合成ステップを行うことによりそれらを回避する方法は、有機合成の当業者に容易に理解されるだろう。変換の例を以下に挙げるが、記載する変換は、変換を例示する一般的な基または置換基のみに限定されるのではないことと理解されるものとする。その他の適切な変換に関する参考文献および記載は、”Comprehensive Organic transformations - A Guide to Functional Group Preparations” R. C. Larock, VHC Publishers, Inc. (1989)に挙げられている。その他の適切な反応の参考文献および記載は、有機化学の教科書、例えば”Advanced Organic Chemistry”, March、第4版、McGraw Hill (1992)、または “Organic Synthesis”, Smith, McGraw Hill, (1994)に記載されている。中間体および最終生成物の精製のための技術は、例えばカラムまたは回転プレート上の順相および逆相のクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、および液相−液相または固相−液相間の抽出を含み、これらは当業者により容易に理解されるだろう。置換基および基の定義は、異なって定義された場合を除き、式Iにおけるとおりである。“室温”および“周囲温度”という用語は、他に具体的に示していなければ16および25℃の間の温度を意味する。
【0060】
式IIおよびIIIの化合物は、式Iの化合物の調製における中間体として有用である、または式Iの化合物を表してよいかのいずれかである(スキーム1)。
【0061】
【化2】

【0062】
式IIおよびIIIの化合物は、市販にて入手可能であるか、または市販にて入手可能な化合物からもしくは文献に記載されている化合物においてのいずれかにて調製することができるかのいずれかである。例えば、Z、Y、Y、RまたはRの1以上が式IIまたはIIIの定義に一致しない化合物は、置換基または基の変換または導入により式IIおよびIIIの化合物の調製のために使用することができる。
【0063】
以下に例を記載する。
1)YおよびYが各々CHOである式IIまたはIIIの化合物の調製。
1a)対応するニトリルから、例えば塩化メチレンもしくはトルエン中のDIBALを−78〜0℃で用いて、またはSnClを酸性水溶液の条件下で用いての還元による。
【0064】
1b)対応する臭化物またはヨウ化物から、触媒として例えばPd(PPhを1−10気圧CO下で、THFまたはトルエン中の例えばPhSnHの化学量論的量の存在下で室温から150℃までの温度で用いての、パラジウム触媒によるカルボニル化による(J. Am. Chem. Soc. 1983, 7175-7176)。
あるいは対応する塩化物、臭化物またはヨウ化物から、例えばnBuLi、nBuMgLiまたはMgで処理することにより求核性の有機リチウム、アート錯体、またはグリニャール試薬に最初に変換し、続いてDMFまたは別のホルミル化化合物でトラップすることによる(Tetrahedron Letters 2000, 4335-4338またはJ.Org. Chem. 2001, 6775-6786)。
【0065】
1c)ホルミル化試薬として、例えばPOClおよびDMF、またはCHClOCHおよびTiClを用いての、YがHである対応するベンゼン誘導体の求電子性芳香族のホルミル化による。
1d)対応するメチル誘導体から、Cr(VI)化合物 例えばHOAc中のCrO、または他の適切な酸化剤を用いての酸化による。
【0066】
2)YおよびYが各々NHである式IIまたはIIIの化合物の調製。
2a)1−10気圧Hで、触媒 例えば炭素担持Pd、PtOまたはラネーNiの存在下での水素化による、または還元物質 例えばMeOHおよびNHCl水溶液の混合液中のFe粉末、またはHCl水溶液中のSnClでの処理による、対応するニトロ誘導体の還元による。
【0067】
2b)対応するカルボン酸から、沸騰tBuOH中でNPO(OPh)およびトリエチルアミンで処理することにより開始するクルチウス転位を経て、続いて得られるN−BOCアミンから、例えばEtOAc中のHClを用いてBOC基を酸性で除去する(acidic removal)ことによる。
【0068】
2c)対応する塩化物、臭化物、ヨウ化物またはトリフレートから、マスキングした(masked)アンモニア等価体としてベンゾフェノンイミンを用いてのパラジウム触媒によるアミノ化による。触媒としてパラジウムの適切な原料、例えばPd(OAc)、Pd(dba)またはPd(dba)を、配位子として働く添加物、例えばBINAP、DPPFまたは1,3−ビス(2,6−ジイソプロピル−フェニル)イミダゾリウムクロリドと共に、化学量論的量の塩基 例えばCsCOまたはtBuONaと組み合わせて、溶媒 例えばTHF、トルエンまたはジオキサン中で、室温から120℃までの温度で使用する(Tetrahedron Letters 1997, 6367-6370; J. Org. Chem. 2001, 7729-7737 またはJ. Org. Chem. 2001, 6775-6786)。形成されたイミンを次に、例えば酸性での加水分解または水素化分解により開裂して、アミンをフリーにする。
【0069】
3)Z、RもしくはRまたはYおよびYが各々CNである、式IIまたはIIIの化合物の調製。
3a)対応する塩化物、臭化物またはヨウ化物から、シアン化物の様々な原料 例えばCuCNまたはKCNを用いて、溶媒 例えばピリジンまたはDMF中で、室温から200℃までの温度で置換することにより、または触媒量の例えばPd(PPhを、付加的な触媒量のCuIを含む化学量論的量の例えばZn(CN)またはNaCNと共に、溶媒 例えばDMF、アセトニトリルまたはプロピオンニトリル中で、50から150℃までの温度で従来技術のように加熱して、または100から200℃までの温度でのマイクロ波照射による、パラジウム触媒によるプロトコルによる。(J. Org. Chem. 1998, 8224-8228 またはJ. Org. Chem. 2000, 7984-7989)。
【0070】
3b)対応するアミンから、例えばHNOまたは亜硝酸アルキル 例えば亜硝酸tブチルを用いての、適切な溶媒 例えば水、アルコールまたはアセトニトリル中でジアゾ化(diazotation)を経て、続いて室温から100℃までの温度でCuCNおよびKCNの混合水溶液との反応による。
3c)対応するアルデヒドから、ヒドロキシルアミンとの縮合によるオキシムの形成を経て、続いての例えばAcOを用いての脱水による。
【0071】
4)Z、RもしくはRまたはYおよびYが各々Fである、式IIまたはIIIの化合物の調製。
4a)対応する塩化物、臭化物、ヨウ化物またはニトロ化合物から、溶媒として例えばDMF、DMA等の中で、室温から150℃までの温度で、求核性のフッ化物 例えばフッ化リチウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、または二フッ化水素テトラメチルアンモニウムを用いての置換による。
【0072】
4b)対応するアミンから、シーマン反応により、すなわち例えば対応するフルオロホウ酸ジアゾニウムへのジアゾ化を経て、続いてこの物質を30から150℃までの温度で熱分解することによる。シーマン反応の条件は、YがCNである式IIの化合物の場合には作用しないことが見出された。そのような化合物に関しては代わりの方法、すなわち70% HF−ピリジンを用いてジアゾニウム種を生成し、続いて高温 例えば80℃でin situで分解する方法を開発した。この方法を使用して、ZがFであり、そしてYがCNである式IIの所望の化合物を生成した。この化合物を、上のセクション1a)に記載したようにアルデヒドへの還元にて鍵となる中間体として使用し、続いてその後のヒドラゾンへの変換およびジアゾニウム塩上の環化の後、式Iの化合物を得た。この方法は高い収率(>90%)、およびクロマトグラフィーを用いずに純粋な生成物を提供する。形成される中間体は非常に用途が広く、多くの所望の最終生成物を作製するために使用することができる。
【0073】
【化3】

【0074】
5)YおよびYが各々B(OH)である、式IIおよびIIIの化合物の調製。
5a)対応する塩化物、臭化物、ヨウ化物またはトリフレートから、市販にて入手可能なビス(ピナコラト)ジボランとのパラジウム触媒によるカップリングにより、すなわち触媒として、付加的なトリシクロヘキシルホスフィンを伴う例えばPdCl(DPPF)またはPd(dba)を、化学量論的量のKOAcと共に、溶媒 例えばDMSO、DMF、DMAまたはジオキサン中で、室温から150℃までの温度で使用し、続いて酸性での加水分解による(Tetrahedron 2001, 9813-9816)。
5b)対応する塩化物、臭化物またはヨウ化物から、例えばnBuLi、nBuMgLiまたはMgで処理することにより求核性の有機リチウム、アート錯体、またはグリニャール試薬に最初に変換し、続いて例えばホウ酸トリイソプロピル等でトラップし、その後酸性での加水分解による。
【0075】
がCHOである式IIの化合物は、対応するメチル化合物から、例えばFrench ら(J. Med. Chem. 1970, 1124-1130)の方法に従って、酸化剤として例えばAcOOHまたはmCPBAを用いて、0℃から室温の温度で、溶媒として例えばクロロホルムまたは塩化メチレン中で、ピリジンを最初にN−酸化し、続いてピリジンN酸化物を、溶媒としてAcO中で80から120℃までの温度で転位させ、得られる2−ピリジルメタノールアセテートを酸性または塩基性で加水分解して、対応する2−ピリジルメタノール誘導体を得、これを次にクロロホルムまたは類似の溶媒中の例えば活性化MnOを用いて、室温から80℃までの温度で酸化する(スキーム3)ことにより調製してもよい。
【0076】
【化4】

【0077】
式Iの化合物は、溶媒として例えばピリジン、アルコールまたはDMF中で、0から100℃までの温度で、スキーム4に記載したように式IVまたはVIIのアリールスルホニルヒドラジドを、各々式VおよびVIのジアゾニウム化合物と、反応させることにより調製してもよい(Helv. Chim. Acta 1985, 1283-1300, WO 03/029210およびWO 03/077918)。ジアゾニウム化合物は対応するアミンから、例えばHNOまたは亜硝酸アルキル 例えば亜硝酸tブチルを用いて、適切な溶媒 例えば水、アルコールまたはアセトニトリル中で調製する。そのようにして形成されたジアゾニウム塩を“in situ”で使用してもよいし、またはHBFを酸およびフッ素の原料として使用する場合には、テトラフルオロボレートの塩として沈殿させてもよい。アリールスルホニルヒドラジド、例えばp−トリルスルホニルヒドラジドは、例えばメタノール、エタノール、DMFまたはジアルキルエーテル中で、0から100℃までの温度で、式IIまたはIIIのアルデヒド(YおよびYは各々CHOである)をアリールスルホニルヒドラジンとの間で縮合させることにより調製する、あるいは溶媒を用いずにマイクロ波照射下で調製する(J. Med. Chem. 1980, 631-634およびMonatshefte fuer Chemie 2001,430-406)。
【0078】
【化5】

【0079】
式Iの化合物はまたスキーム5に記載するように、遷移金属により仲介されるアリール化剤として、例えば式IIおよびIIIのボロン酸(YおよびYは各々B(OH)である)、または式IXおよびXIの対応するヨードニウム塩、または式XおよびXIIの対応するトリアリールビスマスジアセテートを用いて、式VIIIおよびIXのテトラゾールのN2−アリール化により調製してもよい(Tetrahedron Letters 2002, 6221-6223およびTetrahedron Letters 1998, 2941-2944 およびTetrahedron Lett 1999, 2747-2748)。ボロン酸と共に、化学量論的量の酢酸銅(II)およびピリジンを、溶媒 例えば塩化メチレン、DMF、ジオキサンまたはTHF中で、室温から100℃までの温度で使用する。ヨードニウム塩と共に、触媒量のPd(II)化合物、例えばPd(dba)またはPd(OAc)を、触媒量のCu(II)−カルボキシレート 例えばCu(II)−フェニルシクロプロピル−カルボキシレート、および二座配位子 例えばBINAPまたはDPPFと共に、溶媒 例えばt−BuOH中で50から100℃までの温度で使用する。トリアリールビスマスジアセテートと共に触媒量の酢酸第二銅を、適切な溶媒 例えばTHF中のN,N,N’,N’−テトラメチルグアニジンの存在下で、40−60℃の温度で加熱して使用してもよい。式IXおよびXIのヨードニウム塩は、例えば各々式IIおよびIIIのボロン酸(YおよびYは各々B(OH)である)から、超原子価のヨウ素で置換された芳香族 例えばヒドロキシ(トシルオキシ)ヨードベンゼンまたはPhI(OAc)x2TfOHと共にジクロロメタン等の中で処理することにより得てもよい(Tetrahedron Letters 2000, 5393-5396)。トリアリールビスマスジアセテートは、アリールマグネシウムブロミドから、適切な溶媒 例えば還流THF中の三塩化ビスマスを用いてトリアリールビスムタンを得、次にこれを酸化剤 例えば酢酸中の過ホウ酸ナトリウムを用いてジアセテートに酸化して、容易に手に入れることができる(Synth. Commun. 1996, 4569-75)。式VIIIおよびXIIIのテトラゾールは、例えば各々式IIおよびIIIのニトリル(YおよびYは各々CNである)から、アジド 例えばNaN,LiN、トリアルキルスズアジドまたはトリメチルシリルアジドを用いて、好ましくは触媒 例えばジブチルスズオキシドまたはZnBrと共に、溶媒 例えばDMF、水またはトルエン中で80から200℃までの温度で、従来の加熱またはマイクロ波照射により処理することにより得る(J. Org. Chem. 2001, 7945-7950; J. Org. Chem. 2000, 7984-7989 またはJ. Org. Chem. 1993, 4139-4141)。
【0080】
【化6】

【0081】
[実施例]
本発明を以下の非限定的実施例によりここで説明することにする。
【0082】
[一般的方法]
すべての出発物質は市販にて入手可能であるか、またはより早期に文献に記載されている。Hおよび13C NMRスペクトルは、Bruker 300、Bruker DPX400、またはVarian +400のいずれかの分光計にて、各々H NMRに対して300、400および400MHzで操作し、TMSまたは残渣の溶媒のシグナルをリファレンスとして使用し、他に示していなければ溶媒として重水素化クロロホルム中で記録した。すべての報告した化学シフトは、記録に表記するようなデルタスケールでの百万分率、およびシグナルの微細な分裂
(s: 一重線、br:幅広一重線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線)にて示す。
【0083】
液体クロマトグラフィーの分離、続いての質量スペクトルの検出という直列的な分析を、Alliance 2795 (LC)およびZQ シングル四重極質量分析計から成るWaters LCMSに記録した。この質量分析計には、正および/または負のイオンモードで操作するエレクトロスプレーイオン源を装備した。イオンスプレーの電圧は±3kVとし、質量分析計はm/z100−700、スキャン時間0.8秒でスキャンした。X-Terra MS, Waters, C8、2.1×50mm、3.5μmのカラムに、10mM酢酸アンモニウム水溶液、または0.1%TFA水溶液中の5%から100%アセトニトリルの直線的勾配をかけた。分取用逆相クロマトグラフィーは、カラムとしてXTerra MS C8、19×300mm、7μmを用いて、ダイオードアレイ検出器を伴うGilson 自動分取HPLCで行った。
【0084】
MSトリガー分取用逆相クロマトグラフィーは、カラムとしてXTwrra MS C8,19×100mm、5μを用いて、ダイオードアレイ検出器およびZQ質量検出器を伴うWaters自動精製LC−MSシステムで行った。
【0085】
クロマトトロンによる精製は、TC Research 7924T クロマトトロンを用いて、1、2または4mmのコーティング層の回転式シリカゲル/石膏(Merk, 60 PF-254 硫酸カルシウムを含む)コーティングガラスシート上で行った。
【0086】
生成物の精製はまた、Chem Elut Extraction Columns (Varian, cat#1219-8002)、Mega BE-SI (Bond Elut Silica)、SPE Columns (Varian, cat # 12256018; 12256026; 12256034)を用いて、またはシリカを充填したガラスカラムのフラッシュクロマトグラフィーにより行った。マイクロ波の加熱は、2450MHzで連続照射を行うSmith Synthesizer Single-mode マイクロ波のキャビティー内で行った。
【0087】
実施例1:3−フルオロ−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル
塩化ジアゾニウム溶液を、エタノール(2mL)中の3−アミノ−5−フルオロベンゾニトリル(0.10g)、水(1mL)中の亜硝酸ナトリウム(0.06g)、および10% HCl水溶液(2mL)から5℃で調製した。この溶液を、ピリジン(5mL)中のN’−[(1E)−(5−フルオロピリジン−2−イル)メチレン]−4−メチルベンゼンスルホノヒドラジド(0.15g)の溶液に10分間にわたり、温度を5℃未満に維持するようにして、撹拌しながら滴下させて加えた。この反応混合液を2時間撹拌した後、濃縮し、得られた生成物をCHCl(100mL)および水(50mL)間に分配した。有機相を水(50mL)および食塩水(50mL)で洗浄した後、乾燥(NaSO)、濾過および濃縮した。残渣をEtOAcから再結晶し、表題の化合物 40gを黄色固体として得た。
1H NMR:7.56 (m, 1H), 7.67 (m, 1H), 8.33 (m, 1H), 8.42 (m, 1H), 8.47 (m, 1H), 8.73 (m, 1H)。
【0088】
3−アミノ−5−フルオロベンゾニトリル
2−プロパノール(4mL)および濃HCl水溶液(2mL)中の3−フルオロ−5−ニトロ−ベンゾニトリル(J. Antibiot. 1994, 1456-1465)(0.20g)のスラリーに、塩化スズ(II)二水和物(1.1g)を加えた。この混合液を1時間還流した後、冷却および濃縮した。残渣を水に懸濁し、1N NaOH溶液でアルカリ性にした。生成物をCHCl(125mL)中に溶解し、食塩水(50mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)、濾過および濃縮し、表題の化合物 0.16gを白色固体として得た。
1H NMR:4.03 (br s, 2H), 6.58 (m, 1H), 6.71 - 6.75 (2H)。
【0089】
N’−[(1E)−(5−フルオロピリジン−2−イル)メチレン]−4−メチルベンゼンスルホノヒドラジド
5−フルオロピリジン−2−カルバルデヒド(0.18g)を、p−トルエンスルホニルヒドラジド(0.26g)のエタノール(10mL)溶液に加えた。触媒量の酢酸を加え、反応液を室温で1.5時間撹拌した後、0℃に冷却し、濾過した。沈殿物を高真空下で乾燥し、表題の化合物 0.23gを白色固体として得た。
1H NMR:2.44 (s, 3H), 7.33 (m, 2H), 7.44 (m, 1H), 7.82 (d, 1H), 7.88 (m, 1H), 7.96 (m, 1H), 8.17 (br s, 1H), 8.41 (m, 1H)。
【0090】
5−フルオロ−ピリジン−2−カルバルデヒド p.3600−35
DIBAL(1M トルエン溶液、8.2mL、8.2mmol)を、CHCl(50mL)中の5−フルオロ−ピリジン−2−カルボニトリル(1.0g、8.2mmol)の冷却(−78℃)溶液に滴下させながら加え、0.5時間後および1時間後に付加的な0.25等量のDIBALを加えて、得られる混合液を−78℃で3時間撹拌した。反応を1N HCl(20mL)で停止させ、2.5時間撹拌した。水相を固体NaHCOでアルカリ性にし、生成物をCHClで抽出した。(濾過の必要な形成されたエマルジョンは、抽出前に濾過することができた)。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)および濾過した。精製は、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにて、2% EtOAc/ヘキサンで溶出して行い、生成物を得た(200mg、20%、無色固体、この物質は室温より少しだけ高い温度で融解し、高真空下で揮発性であったため、予想より低い収率で得た)。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): d = 7.59 (ddd, J = 8, 2, 1 Hz, 1H), 8.04 (ddd, J = 8, 5, 0.5 Hz, 1H), 8.64 (d, J = 2 Hz, 1H), 10.00 (見かけ上dd, J = 1, 1 Hz, 1H)。あるいはこの化合物は、J. Med Chem. 1970, 1124-1130に記載されている方法により作製することができる。
【0091】
5−フルオロ−ピリジン−2−カルボニトリル
亜硝酸ナトリウム(8.7g、126mmol)を、70%フッ化水素−ピリジン(Aldrich、100g、3.5mol HF)中の5−アミノ−ピリジン−2−カルボニトリル(10.03g、84.2mmol)の氷−食塩水で冷却した溶液に、少しずつ加えた(注意:反応は所定のビン内で行った)。得られる暗赤色溶液を、氷食塩水浴中で45分間撹拌した後、氷食塩水浴をはずし、混合液を周囲温度で30分間撹拌し、続いて80℃で1.5時間加熱した。反応混合液を、分液ロート内の氷/水混合液(〜400g)に注ぐことにより反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出(6×150mL)し、乾燥(MgSO)、濾過し、真空中で溶媒を蒸発させた。組成生物(10.08g、98%、オレンジ色固体)は使用に当たってさらなる精製を必要とせず十分に純粋であった。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): d = 8.61 (d, 1H), 7.78 (m, 1H), 7.58 (m, 1H). GC-MS M+122。
【0092】
実施例2:3−[5−(5−クロロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−フルオロベンゾニトリル
表題の化合物は、3−アミノ−5−フルオロ−ベンゾニトリル(0.14g)およびN’−[(1E)−(5−クロロピリジン−2−イル)メチレン]−4−メチルベンゼンスルホノヒドラジド(0.22g)からの、3−フルオロ−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリルへの調製法と類似するように調製し、表題の化合物 67mgをオレンジ色固体として得た。
1H NMR: 7.56 (m, 1H), 7.95 (m, 1H), 8.31 - 8.37 (2H), 8.47 (m, 1H), 8.83 (m, 1H)。
【0093】
N’−[(1E)−(5−クロロピリジン−2−イル)メチレン]−4−メチルベンゼンスルホノヒドラジド
表題の化合物は、5−クロロピリジン−2−カルバルデヒド[J. Med. Chem. 1970, 1124-30](1.0g)およびp−トルエンスルホニルヒドラジド(1.0g)からN’−[(1E)−(5−フルオロピリジン−2−イル)メチレン]−4−メチルベンゼンスルホノヒドラジドへの調製法と類似するように調製し、表題の化合物 0.54gを白色固体として得た。
1H NMR: 2.44 (s, 3H), 7.34 (m, 2H), 7.69(m, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.86 - 7.91 (3H), 8.16 (br s, 1H), 8.51 (m, 1H)。
【0094】
実施例3:6−[2−(3−シアノ−5−フルオロフェニル)−2H−テトラゾル−5−イル]ニコチノニトリル
3− [5−(5−ブロモピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−フルオロベンゾニトリル(WO 03/029210)(0.03g)をDMF(3mL)に溶かし、アルゴンの気泡を15分間通した。シアン化亜鉛(0.01g)およびPd(PPh(0.03g)を加え、反応液を80℃で16時間撹拌した。反応混合液をCHCl(20mL)で希釈し、NHCl(10mL)および食塩水(10mL)で洗浄した後、乾燥(NaSO)、濾過および濃縮して黄色固体を得、これをEtOAc:ヘキサンからの再結晶により精製し、表題の化合物 7mgを白色固体として得た。
1H NMR: 7.59 (m, 1H), 8.25 (m, 1H), 8.34 (m, 1H), 8.47 (m, 1H), 8.53 (m, 1H), 9.13 (m, 1H)。
【0095】
実施例4:3− [5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−(メトキシ−メチル)ベンゾニトリル
塩化ジアゾニウム溶液を、エタノール(1mL)中の3−アミノ−5−メトキシメチル−ベンゾニトリル(45mg、0.28mmol)、水(0.5mL)中の亜硝酸ナトリウム(21mg、0.30mmol)および10%HCl水溶液(1mL)から、5℃で調製した。この溶液を、ピリジン(2.5mL)中のN’−[(1E)−(5−フルオロピリジン−2−イル)メチレン]−4−メチルベンゼン−スルホノヒドラジド(81mg、0.28mmol)の溶液に10分間にわたり、温度を5℃未満に維持するようにして、撹拌しながら滴下させて加えた。反応混合液を0℃で0.5時間、および室温で1.5時間撹拌した後、濃縮し、得られた生成物をEtOAc(10mL)および食塩水(10mL)間に分配した。水相をEtOAc(10mL)で洗浄し、合わせた有機相を乾燥(NaSO)、濾過および濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにて、EtOAc/トルエン(1:3)で溶出して精製し、続いてEtOAcから再結晶し、表題の化合物 14mgを黄色固体として得た。
1H NMR:3.51 (s, 3 H), 4.62 (s, 2 H), 7.65 (m, 1 H), 7.81 (s, 1 H), 8.41 (m, 1 H), 8.52 (s, 2 H), 8.72 (br. s., 1 H)。
【0096】
3−アミノ−5−メトキシメチル−ベンゾニトリル
TFA(0.56mL、7.2mmol)を、CHCl(5mL)中の(3−シアノ
−5−メトキシメチル−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(189mg、0.72mmol)に加えた。混合液を室温で1.5時間攪拌した後、濃縮した。残渣をCHCl(10mL)およびNaHCO(10mL)間に分配した。水相をCHCl(10mL)で洗浄し、合わせた有機相を乾燥(MgSO)、濾過および濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにて、CHCl/MeOH(98:2)で溶出して精製し、表題の化合物 82mgを得た。
1H NMR:3.38 (s, 3 H), 3.90 (br. s., 2 H), 4.35 (s, 2 H), 6.80 (s, 1 H), 6.84 (s, 1 H), 6.95 (s, 1 H)
13C NMR: 58.8, 79.9, 113.2, 117.1, 118.4, 119.6, 121.0, 141.4, 147.7
【0097】
(3−シアノ−5−メトキシメチル−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
EtN(0.61mL、4.4mmol)およびジフェニルホスホリルアジド(0.52mL、2.4mmol)を、アルゴン雰囲気下で3−シアノ−5−メトキシメチル−安息香酸(382mg、2mmol)に加えた。混合物を4.5時間還流、濃縮し、残渣の生成物をEtOAc(50mL)および食塩水(25mL)間に分配した。有機相を食塩水(25mL)で洗浄し、合わせた有機相を乾燥(MgSO)、濾過および濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにて、CHClからCHCl/MeOH(95:5)で溶出して精製し、表題の化合物 190mgを得た。
1H NMR:49 (s, 9 H), 3.37 (s, 3 H), 4.40 (s, 2 H), 7.19 (s, 1 H), 7.24 (s, 1 H), 7.52 (s, 1 H), 7.70 (s, 1 H)
13C NMR: 28.6, 58.8, 73.7, 81.7, 113.2, 119.0, 120.9, 121.7, 125.3, 140.1, 141.16, 153.0
【0098】
3−シアノ−5−メトキシメチル−安息香酸
0.5M LiOH水溶液(9.7mL、4.9mmol)を3−シアノ−5−メトキシメチル−安息香酸メチルエステル(1g、4.9mmol)に加え、混合液を室温で2.5時間攪拌した。1M HClをpH=2になるまで加え、続いてHO(25mL)およびCHCl(50mL)を加えた。混合液を抽出し、相分離した。水相をCHCl(10mL)で洗浄し、合わせた有機相を乾燥(MgSO)、濾過および濃縮し、表題の化合物 0.93gを得た。
1H NMR:3.47 (s, 3 H), 4.56 (s, 2 H), 7.87 (m, 1 H), 8.27 (m, 2 H), 10.64 (br. s., 1 H)
13C NMR: 58.6, 72.7, 113.1, 117.6, 132.7, 135.17, 140.8, 169.3
【0099】
3−シアノ−5−メトキシメチル−安息香酸メチルエステル
トリフルオロ酢酸無水物(16.8mL、119mmol)、続いてピリジン(16.9mL、210mmol)を、CHCl(500mL)中の5−メトキシメチル−イソフタルアミド酸メチルエステル(21g、95mmol)に0℃で加えた。混合液を0℃で20分間、そして室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させて、表題化合物 19gを得た。
1H NMR: 3.45 (s, 3 H), 3.97 (s, 3 H), 4.53 (s, 2 H), 7.84 (s, 1 H), 8.23 (d, 2 H)
13C NMR: 52.7, 58.7, 72.9, 113.5, 132.3, 132.3, 134.5, 140.7, 165.1
【0100】
5−メトキシメチル−イソフタルアミド酸メチルエステル
5−メトキシメチル−イソフタル酸モノメチルエステル(24.3g、108mmol)およびSOCl(60mL、760mmol)を60℃に2時間加熱した。混合液を冷却し、過剰なSOClを蒸発させた。MeOH(220mL、430mmol)中の2M NHを、THF(200mL)中の残渣に0℃で加え、0℃で1時間攪拌した。混合液を濾過し、溶媒を真空中で除去して、表題の化合物 24.2gを白色固体として得た。
1H NMR: 3.44 (s, 3 H), 3.95 (s, 3 H), 4.55 (s, 2 H), 6.22 (br. d., 2 H), 8.06 (s, 1 H), 8.17 (s, 1 H), 8.38 (s, 1 H)
13C NMR: 52.4, 58.5, 73.6, 127.4, 130.8, 130.9, 131.8, 133.8, 139.7, 166.2, 168.3
【0101】
5−メトキシメチル−イソフタル酸モノメチルエステル
1M NaOH水溶液(128mL、128mmol)を、MeOH(650mL)中の5−メトキシメチル−イソフタル酸ジメチルエステル(32g、134.3mmol)に加え、混合液を室温で一晩攪拌した。混合液を蒸発させ、残渣を水およびEtOAc間に分配した。10%HClをpH1になるまで水相に加え、この溶液からEtOAcで抽出し、有機相を乾燥(MgSO)、濾過および濃縮し、表題の化合物 28gを白色個体として得た。
1H NMR: 3.46 (s, 3 H), 3.97 (s, 3 H), 4.58 (s, 2 H), 8.28 (s, 2 H), 8.70 (s, 1 H)
13C NMR: 52.4, 58.5, 73.5, 129.9, 130.6, 131.0, 133.2, 133.6, 139.6, 166.0, 170.7
【0102】
5−メトキシメチル−イソフタル酸ジメチルエステル
5−ブロモメチル−イソフタル酸ジメチルエステル(44g、140mmol)、KCO(43g、308mmol)、MeOH(350mL)およびTHF(350mL)を60℃で2時間加熱した。混合液をHOおよびEtOAc間に分配し、有機相を食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)、濾過および濃縮し、表題の化合物 32gを白色個体として得た。
1H NNMR: 3.43 (s, 3 H), 3.96 (s, 6 H), 4.55 (s, 2 H), 8.21 (s, 2 H), 8.61 (s, 1 H)
13C NMR: 52.8, 58.9, 74.0, 130.4, 131.2, 133.2, 140.0, 166.6
【0103】
5−ブロモメチル−イソフタル酸ジメチルエステル
N−ブロモスクシンイミド(45g、238mmol)およびトリフェニルホスフィン(65g、238mmol)を、CHCl(700mL)中の5−ヒドロキシメチル−イソフタル酸ジメチルエステル(40g、159mmol)に0℃で加えた。混合液を0℃で1時間攪拌した後、CHCl(700mL)で希釈した。混合液を飽和NaHCOで、続いて食塩水で洗浄し、有機相を乾燥(MgSO)、濾過および濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにて、ヘプタンからヘプタン/EtOAc(4:1)で溶出して精製し、表題の化合物 44.5gを白色固体として得た。
1H NMR 1.43 (t, 6 H), 4.43 (q, 4 H), 4.56 (s, 2 H), 8.25 (d, 2 H), 8.61 (t, 1 H)
13C NMR: 14.3, 31.6, 61.6, 130.5, 131.6, 134.0, 138.7, 165.3
【0104】
[略語]
DIBAL 水素化ジイソブチルアルミニウム
THF テトラヒドロフラン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
HOAc 酢酸
nBuLi n−ブチルリチウム
MeOH メタノール
Ph フェニル
tBuOH t−ブタノール
BOC tert-ブトキシカルボニル
EtOAc 酢酸エチル
AcOOH 過酢酸
mCPBA 3−クロロペルオキシ安息香酸
AcO 無水酢酸
Ac アセテート
dba ジベンジルイデンアセトン
BINAP 2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル
DPPF 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
TfOH トリフルオロメタンスルホン酸
ppm 百万分率
【0105】
[薬理学]
本発明の化合物の薬理学的特性を、機能性の活性に関する標準的なアッセイを用いて分析することができる。グルタミン酸受容体のアッセイの例は、例えばAramori et al., Neuron 8: 757 (1992)、Tanabe et al., Neuron 8: 169 (1992)、Miller et al., J. Neuroscience 15: 6103 (1995)、Balazs et al., J. Neurochemistry 69: 151 (1997)に記載されているように、当業界において周知である。これらの公開文献に記載された方法論を本明細書にて参照として援用する。都合のよいことに本発明の化合物は、mGluR5を発現する細胞の細胞内カルシウム、すなわち[Ca2+]の流動を測定するアッセイにより試験することができる。
【0106】
FLIPR分析のため、WO 97/05252に記載されているようにヒトmGluR5dまたはリコンビナントmGluR1を発現する細胞を、コラーゲンコーティングした底の透明な96ウェルの側面の黒いプレートに植えつけ、植えつけ後24時間に[Ca2+]の流動の分析を行った。
【0107】
FLIPR実験は、レーザーの設定0.800Wおよび0.4秒CCDカメラシャッタースピードを用いて行った。各FLIPR実験は、細胞プレートの各ウェルに160μlのバッファーを注入して開始した。化合物を各々添加後、蛍光シグナルを1秒間隔で50回、続いて5秒間隔で3回測定した。応答は、測定時間内の応答のピークの高さとして測定した。EC50およびIC50の決定は、ダブルで行った8ポイントの濃度応答曲線(CRC)から得たデータから行った。アゴニストのCRCは、そのプレートで観察された最大の応答に対してすべての応答をスケーリングすることにより作成した。アゴニストの作用 (challenge)へのアンタゴニストの阻害は、同一プレート上の14のコントロールウェルにおけるアゴニストの攻撃の応答の平均値に対して標準化した。
【0108】
我々はmGluR5dまたはリコンビナントmGluR1に関する二次的機能のアッセイを、WO 97/05252に記載されたようにリン酸イノシトール(IP)の代謝回転に基づいて立証した。IPの蓄積を、受容体を介してのホスホリパーゼCの代謝回転の指標として測定した。ヒトmGluR5dまたはリコンビナントmGluR1の受容体を安定して発現するGHEK細胞を、[3H]myo−イノシトールと共に一晩インキュベーションし、HEPES緩衝化生理食塩水中で3回洗浄し、10mM LiClで10分間プレインキュベーションした。化合物(アゴニスト)を加え、30分間37℃でインキュベーションした。アンタゴニスト活性は、検査化合物を15分間プレインキュベーションした後、グルタミン酸(80μM)またはDHPG(30μM)の存在下で30分間インキュベーションすることにより決定した。反応は過塩素酸(5%)の添加により停止させた。サンプルを集め、中和し、リン酸イノシトールをGavity-Fed イオン交換カラムを用いて分離した。
本発明の化合物を検査するための詳細なプロトコルを、以下のアッセイに提供する。
【0109】
[グループI受容体アンタゴニストの活性のアッセイ]
FLIPR分析のため、WO 97/05252に記載されているようにヒトmGluR5dまたはリコンビナントmGluR1を発現する細胞を、コラーゲンコーティングした底の透明な96ウェルの側面の黒いプレートに植えつけ、植えつけ後24時間に[Ca2+]の流動の分析を行った。96ウェルプレート内の細胞培養に、蛍光カルシウム指示薬であるfluo−3(Molecular Probes, Eugene, Oregon)のアセトキシメチルエステルの形の、0.01% pluronic中の4μM溶液を加えた。すべてのアッセイは、127mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl、0.7mM NaHPO、2mM CaCl、0.422mg/ml NaHCO、2.4mg/ml HEPES、1.8mg/ml グルコース、および1mg/ml BSA Fraction IVを含有するバッファー(pH7.4)中で行った。
【0110】
FLIPR実験は各々、レーザーの設定 0.800Wおよび0.4秒CCDカメラシャッタースピードを用い、励起波長および発光波長 488nmおよび562nmにて行った。各FLIPR実験は、細胞プレートの各ウェルに160μlのバッファーを注入して開始した。アンタゴニストプレートから40μlの添加に続いて、アゴニストプレートから50μlを添加した。各々添加した後、蛍光シグナルを1秒間隔で50回、続いて5秒間隔で3回測定した。応答は、測定時間内の応答のピークの高さとして測定した。
【0111】
EC50/IC50の決定は、ダブルで行った8ポイントの濃度応答曲線(CRC)から得たデータから行った。アゴニストのCRCは、プレートで観察された最大の応答に対してすべての応答をスケーリングすることにより作成した。アゴニストの作用へのアンタゴニストの阻害は、サンプルプレートの14のコントロールウェルにおけるアゴニストの作用への応答の平均値に対して標準化した。
【0112】
健常な全細胞におけるリン酸イノシトールの代謝回転の測定
ヒトmGluR5dまたはリコンビナントmGluR1の受容体を安定して発現するGHEKを、1μCi/ウェル [3H]myo−イノシトールを含有する培地中に40×10細胞個/ウェルで、24ウェルのポリ−L−リジンコーティングしたプレートに植えつけた。細胞を一晩(16時間)インキュベーションした後、1ユニット/ml グルタミン酸ピルビン酸転移酵素および2mM ピルビン酸塩(pyruvate)を追加したHEPES緩衝化生理食塩水(146mM NaCl、4.2mM KCl、0.5mM MgCl、0.1% グルコース、20mM HEPES、pH7.4)で3回洗浄し、1時間37℃でインキュベーションした。細胞をHEPES緩衝化生理食塩水中で1回洗浄し、10mM LiClを含有するHEPES緩衝化生理食塩水中で10分間プレインキュベーションした。化合物(アゴニスト)を加え、37℃で30分間インキュベーションした。アンタゴニスト活性は、検査化合物を15分間プレインキュベーションした後、グルタミン酸(80μM)またはDHPG(30μM)の存在下で30分間インキュベーションすることにより決定した。反応は0.5ml 過塩素酸(5%)を氷上で添加して停止させ、4℃で少なくとも30分間インキュベーションした。サンプルを15ml Falcon試験管に集め、以下に記載するようにDowexカラムを用いてリン酸イノシトールを分離した。
【0113】
Gavity-Fed イオン交換カラムを用いてのリン酸イノシトールに関するアッセイ
イオン交換カラムの調製
イオン交換樹脂(Dowex AGI-X8 ギ酸型、200−400メッシュ、BIORAD)を蒸留水で3回洗浄し、4℃で保存した。1.6mlの樹脂を各カラムに添加し、3mlの2.5mM HEPES、0.5mM EDTA、pH7.4で洗浄した。
【0114】
a)サンプル処理
サンプルは15ml Falcon試験管に集め、0.375M HEPES、0.75M KOHで中和した。4mlのHEPES/EDTA(2.5/0.5mM、pH7.4)を加えて、過塩素酸カリウムを沈殿させた。上清を調製したDowexカラムに添加した。
【0115】
b)リン酸イノシトールの分離
グリセロホスファチジルイノシトールを、8mlの30mM ギ酸アンモニウムで溶出する。すべてのリン酸イノシトールを、8mlの700mM ギ酸アンモニウム/100mM ギ酸で溶出し、シンチレーションバイアル中に溶出液を集める。8mlのシンチラントと混合した溶出液をカウントする。
【0116】
本発明の1つの側面は、前記受容体を含有する細胞を式Iの化合物の有効量で処理することを包含する、mGluR5受容体の活性を阻害するため方法に関する。
[TLIEARに対する化合物の活性のスクリーニング]
Pavlov sling内で耐えるように訓練された雌雄の成犬ラブラドールレトリバーを使用した。粘膜から皮膚への食道瘻を造設し、あらゆる実験を行う前にイヌを完全に回復させた。
【0117】
運動性の測定
手短には、水は自由給餌としたおよそ17時間の絶食後、多孔型スリーブ/サイドホールのカテーテル(assembly)(Dentsleeve, Adelaide, South Australia)を、食道瘻を通して導入し、胃、下部食道括約筋(LES)および食道の圧を測定する。このカテーテルは、低コンプライアンスの圧力計の灌流ポンプ(Dentsleeve, Adelaide, South Australia)を用いて水を灌流する。空気を灌流したチューブを口方向から通して嚥下を測定し、LESの上3cmにpHをモニターするアンチモン電極を設置する。すべてのシグナルを増幅し、10回/秒でパソコンに記録した。
【0118】
絶食時の胃/LESのフェーズIIIの運動活性を含まないベースラインの測定を得たら、プラセボ(0.9% NaCl)または検査化合物を前肢静脈に静脈内(i.v.、0.5ml/kg)投与する。i.v.投与後10分で、栄養食(10% ペプトン、5% D−グルコース、5% Intralipid、pH3.0)を、カテーテルの中心管腔を通して胃内に100ml/分で最終容量30ml/kgまで注入する。栄養食の注入に続いて、空気の注入を500ml/分の速度で、胃内圧 10±1mmHgが得られるまで行う。その後、さらに空気を注入したりまたは胃から空気を排気したりするための注入ポンプを使用して、実験を通して圧をこのレベルに維持する。栄養食注入の開始から空気の排気の終了までの実験時間を45分とする。この方法は、TLESRを引き起こす信頼できる手段として立証されている。
【0119】
TLESRは、1mmHg/sより速い速度での下部食道括約筋の圧の(胃内圧を参照として)低下として定義する。弛緩が嚥下誘発性として分類される場合における弛緩の開始前2秒以内の食道のシグナルが、弛緩に先行していてはならない。LESおよび胃の間の圧の差は2mmHg未満であり、完全な弛緩時間は1秒より長くなければならない。
【0120】
[略語]
BSA ウシ血清アルブミン
CCD 電荷結合素子
CRC 濃度応答曲線
DHPG 3,5−ジヒドロキシフェニルグリシン
EDTA エチレンジアミン四酢酸
FLIPR 蛍光測定イメージングプレートリーダー
GHEK GLAST−含有ヒト胚性腎臓
GLAST グルタミン酸/アスパラギン酸トランスポーター
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(バッファー)
IP イノシトール三リン酸
【0121】
[代謝安定性]
本化合物を、特徴付けられプールされたヒト肝ミクロソーム(0.5mg ミクロソームタンパク質/mL インキュベーション培地)と共に、37℃でリン酸バッファー(50mM リン酸カリウム、pH7.4)中で(1μMで)インキュベーションした。インキュベーションは、補助因子(1mM NADPH(β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 還元型))の添加により開始し、アセトニトリルの添加(1:1)により停止させた。
【0122】
インキュベーションはLC/MSにより分析し、母化合物の消失に対する時間曲線を作成した。ミクロソームを含まないコントロール、または補助因子の添加前にアセトニトリルを添加したコントロールのインキュベーションを使用して、酵素による低下/消失でないものをチェックした。
【0123】
肝固有クリアランスを、以下の等式に従ってインキュベーションにおける半減期(分)から算出した:
【0124】
【化7】

【0125】
式中、xは50(mgミクロソームタンパク質/g肝臓)に設定し、yを1500(g肝臓)に設定し、体重 Bwを70kgに設定した。代謝による肝クリアランス CLは、固有クリアランス CLintから以下の等式:
【0126】
【化8】

【0127】
に従って、肝血流速度 Qとして1450mL/分を用い、f=1(したがってタンパク質の結合を無視した)を用いて算出した。%で表した肝クリアランスを受けない分画 Fを、以下の等式:
【0128】
【化9】

【0129】
に従って肝クリアランスから算出した。したがってFが高いほど、化合物は代謝的により安定である。
【0130】
[溶解度]
本発明の化合物、および本明細書におけるその他の関連する化合物の溶解度を決定するための詳細なプロトコルを以下に提供する。
【0131】
検査化合物 1−2mgをダブルで、2mLガラスバイアル内の0.1M リン酸バッファー、pH7.4中にて、プレートベッド震盪器(IKA(登録商標)- Schuttler MTS-4, IKA Labortechnik)上で300rpm、20から22℃の温度で24時間インキュベーションする。溶解しない材料を、飽和溶液から3000rpm、2×15分間、22℃で遠心(Multifuge(登録商標)3S-R, Heraeus)し、分離する。上清水溶液をガラスバイアルに移し、化合物の同定のMSによる確認を伴う逆相HPLCを用いての定量分析用に、アリコートを使用する。定量は、UVスペクトルの正の屈曲点の波長で、DMSO中に溶解した検査化合物 0−200μMの較正曲線に対してのクロマトグラムのUV軌跡により行う。報告した値(水溶液への溶解度)は、2つの独立したインキュベーションのダブルのHPLC分析の平均値である。
【0132】
[結果]
上に記載したFLIPRアッセイで測定した場合の典型的なIC50は、10μM以下である。本発明の1つの側面においてIC50は2μM未満である。本発明のもう1つの側面においてIC50は0.2μM未満である。本発明のさらなる側面においてIC50は0.05μM未満である。
【0133】
式XIIの構造のZ置換基のバリエーションにおける比較試験は、対応する類似体のmGluR5受容体での効能(FLIPR分析)、ヒトミクロソームの代謝安定性(h.mic.F)および水溶液への溶解度(aq.溶解度)を同時に考慮できるこの置換基の特質の予想外の重要性を明らかにした。例えば、3−フルオロ−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル(Z=F)について、対応するブロモ誘導体である3−[5−(5−ブロモピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−フルオロベンゾニトリル(Z=Br)と比較した時に、効能における21倍の増加、および溶解度における22倍の増加が観察された。同時に前者は、未置換類似体である3−フルオロ−5− (5−ピリジン−2−イル−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル(Z=H)と比較して、ヒトミクロソームと共にインキュベーションした(h.mic.F)時に有意により安定である。3−フルオロ−5− (5−ピリジン−2−イル−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル(Z=H)と比較しての、3−フルオロ−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル(Z=F)および3−[5−(5−ブロモピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−フルオロベンゾニトリル(Z=Br)の有意により高いヒト代謝安定性(h.mic.F)は、許容なヒト代謝安定性を抑制する水素以外の置換基Zを有する式Iの化合物の必要性を示す。式Iの化合物におけるZ置換基としてのフルオロ、クロロ、およびシアノは、mGluR5受容体を標的とする薬剤製品としての適性に関する重要性の多数のパラメータを考慮する時、Zがフルオロ、クロロ、およびシアノ以外のものである式Iの公知の化合物と比較して、改善を構築する。
【0134】
【化10】

【0135】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

[式中:
はNでありXはCであり、またはXはCでありXはNであり;
Zはフルオロ、クロロ、またはシアノであり;
およびRは独立して、水素、ヒドロキシ、ハロ、C1−6アルキルハロ、OC1−6アルキルハロ、C1−6アルキル、OC0−6アルキル、C1−6アルキルOR、OC2−6アルキルOR、C0−6アルキルシアノ、C0−6アルキルNR、およびOC2−6アルキルNRから成る群より選択され;
およびRは独立して、水素、ヒドロキシおよびC1−3アルキルから成る群より選択される];
またはその塩、溶媒和物もしくは溶媒和した塩。
【請求項2】
がCでありXがNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zがフルオロまたはシアノである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
およびRが、水素、ヒドロキシ、ハロ、−C1−3アルキルハロ、−OC1−3アルキルハロ、−C1−3アルキル、−OC0−3アルキル、−C1−3アルキルOR、−OC2−4アルキルOR、−C0−3アルキルシアノ、およびC0−3アルキルNRから成る群より選択され;そしてRおよびRが独立して、水素、メチルおよびエチルから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
がフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシメチル、メトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−メトキシ−エトキシ、エチルアミノ、またはアミンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
がフルオロまたはシアノである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
以下;
3−フルオロ−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル、
6−[2−(3−シアノ−5−フルオロフェニル)−2H−テトラゾル−5−イル]ニコチノニトリル、
3−[5−(5−クロロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−フルオロベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−テトラゾル−2−イル]−5−メトキシメチル−ベンゾニトリル、
3−フルオロ−5−[2−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−5−イル]ベンゾニトリル、
6−[5−(3−シアノ−5−フルオロフェニル)−2H−テトラゾル−2−イル]ニコチノニトリル、
3−[2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−5−イル]−5−フルオロベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−(メトキシメチル)ベンゾニトリル、
5−フルオロ−2−[2−(3−フルオロ−5−メトキシフェニル)−2H−テトラゾル−5−イル]ピリジン、
3−[5−(5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−メトキシベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−(トリフルオロメトキシ)ベンゾニトリル、
3−(ジフルオロメトキシ)−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−(2−メトキシエトキシ)ベンゾニトリル、
3−(エチルアミノ)−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル、
3−アミノ−5−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]ベンゾニトリル、
3−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−2H−テトラゾル−2−イル]−5−ヨードベンゾニトリル
からなる群より選択される化合物、
またはその塩、溶媒和物、もしくは溶媒和された塩。
【請求項8】
1以上の医薬的に許容な希釈剤、賦形剤、および/または不活性な担体と共に、活性成分として請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の治療有効量を含む医薬組成物。
【請求項9】
mGluR5受容体を介しての障害の処置における使用のための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
治療における使用のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
mGluR5受容体を介しての障害の処置における使用のための、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
mGluR5受容体を介しての障害の処置のための医薬剤の製造における、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の治療有効量を、mGluR5受容体を介しての障害の処置を必要とするヒトを含む哺乳動物に投与することを含む、処置方法。
【請求項14】
神経学的障害の処置における使用のための、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
精神医学的障害の処置における使用のための、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
慢性および急性の疼痛障害の処置における使用のための、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
胃腸障害の処置における使用のための、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物の有効量を用いて、mGluR5受容体を含有する細胞を処置することを含む、前記受容体の活性化を阻害する方法。
【請求項19】
以下のステップ
1)対応するシアノアミノピリジンを、適切なニトレート源の存在下でフッ化水素を用いて処理すること、そして
2)混合物を放置して所望の生成物に分解させること
を包含する、シアノ置換基およびフルオロ置換基を有するピリジル化合物を製造する方法。
【請求項20】
以下のステップ
1)対応するシアノアミノピリジンを、ピリジンおよび亜硝酸ナトリウムの存在下でフッ化水素を用いて処理すること、そして
2)混合物を熱して、in situで所望の生成物への分解を誘導すること
を含む、シアノ置換基およびフルオロ置換基を有するピリジル化合物を製造するための、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ1において70%フッ化水素−ピリジンを使用する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ピリジル化合物が5−フルオロ−ピリジン−2−カルボニトリルである、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
対応するシアノアミノピリジンが5−アミノ−ピリジン−2−カルボニトリルである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ1のシアノアミノピリジンをフッ化水素と合わせ、冷却した後、亜硝酸ナトリウムを加え、反応混合液を15分から1時間、低温で攪拌したまま放置し、続いて室温まで温め、ステップ2において反応混合液を約1時間加熱する、請求項21〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ2において反応液を80℃に加熱する、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2007−514790(P2007−514790A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545760(P2006−545760)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/041401
【国際公開番号】WO2005/066155
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【出願人】(506138029)エヌピーエス・ファーマシウティカルズ・インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】