説明

伝動装置

【課題】 スクリューナットの前後両側にプレートを介してダンパを簡単に取り付けることができる安価な伝動装置を提供する。
【解決手段】 リードスクリュー20と、リードスクリューの回転によって移動されるスクリューナット30と、スクリューナットが各ストッパ25に衝突する際にその衝撃を緩和させるダンパ40と、ダンパをスクリューナットの前後両側に保持するプレート50を備えた伝動装置10において、合成樹脂のスクリューナットの上下位置に互い違いに突出する各一対の係止突起34,35をスクリューナットの前後に設け、各ダンパの上下位置からそれぞれ突出する一対の係止腕部42,43を左右方向に一対突設し、金属板状の各プレートの上下位置から上下一対の係止凸部52,53を設け、各ダンパの係止腕部42,43をスクリューナットの各係止突起34,35及び各プレートの各係止凸部52,53に互い違いに係止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、モータにより自動車のシートを移動させるシート昇降機構やシートスライド機構に用いて好適な伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の伝動装置として、図5に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この伝動装置1は、図5に示すように、モータのアーマチュア軸により減速機構(いずれも図示省略)を介して回転駆動されるリードスクリュー2と、このリードスクリュー2に螺合されると共に、該リードスクリュー2の回転によって移動するスクリューナット3と、このスクリューナット3の前後両側に設けられ、該スクリューナット3がストロークエンドに達してリードスクリュー2の両端に配置された各ストッパ4に衝突する際にその衝撃を緩和させるリング状のゴム製で一対のダンパ5,5と、この各ダンパ5をスクリューナット3の前後両側の各円筒部3aに固定するリング状で一対のカバー6,6とを備えている。
【0004】
そして、リードスクリュー2が正転または逆転されることにより、スクリューナット3が往復動し、このスクリューナット3の往復動によりリンク機構等を介してシート(いずれも図示しない)の高さが調整されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】実開平6−68963号公報
【0006】
【特許文献2】特開2001−277915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の伝動装置1では、スクリューナット3の前後両側の各円筒部3aに各カバー6が図示しない複数の小ネジによって装着され、この各カバー6の内側にリング状でゴム製のダンパ5が回転自在に保持されているため、この部分の取付作業が煩雑であった。また、ネジ等の締結部材が必要不可欠なため、その分部品点数が増えてコスト高になった。さらに、ゴム製のダンパ5がリードスクリュー2に直に押し付けられているため、該ダンパ5に亀裂等が入って損傷し易くなり、その耐久性が劣った。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、スクリューナットの前後両側にプレートを介してダンパを簡単に取り付けることができる安価な伝動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、モータのアーマチュア軸により減速機構を介して回転駆動されるリードスクリューと、このリードスクリューに螺合されると共に該リードスクリューの回転によって移動されるスクリューナットと、このスクリューナットの前後両側に設けられ、該スクリューナットがストロークエンドに達して前記リードスクリューの両端に配置された各ストッパに衝突する際にその衝撃を緩和させる一対のダンパと、この各ダンパを前記スクリューナットの前後両側に保持する一対のプレートとを備えた伝動装置において、前記スクリューナットを合成樹脂形成すると共に、該スクリューナットの上下位置からそれぞれ左右互い違いに突出形成された一対の係止突起をスクリューナットの前後に設ける一方、前記各ダンパの上下位置からそれぞれ突出する一対の係止腕部を左右方向に一対突設し、かつ、前記各プレートを金属板状に形成すると共に、該各プレートの上下位置から前記スクリューナットの各一対の係止突起とは突出する位置が互い違いに上下一対の係止凸部をそれぞれ設け、前記各ダンパの各一対の係止腕部を前記スクリューナットの各一対の係止突起及び前記各プレートの上下一対の係止凸部にそれぞれ互い違いに係止自在にしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の伝動装置であって、前記スクリューナットの前面及び後面の両側に一対の凸部をそれぞれ形成する一方、前記各プレートを矩形板状に形成し、前記スクリューナットの前面及び後面の両側の一対の凸部間に前記各プレートをそれぞれ収納自在にしたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1記載の伝動装置であって、前記スクリューナットの前面及び後面の各中央に雌ネジ部を形成した円筒部をそれぞれ形成する一方、前記各ダンパのダンパ本体を円形リング状に形成し、この各ダンパのダンパ本体を前記スクリューナットの前面及び後面の各円筒部にそれぞれ嵌合自在にしたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3記載の伝動装置であって、前記各ストッパの前記スクリューナットの前面及び後面の各円筒部に対向する位置に該各円筒部が入り込む凹部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、各ダンパの各一対の係止腕部をスクリューナットの各一対の係止突起及び各プレートの上下一対の係止凸部にそれぞれ互い違いに係止自在にしたことにより、スクリューナットの前後にプレートを介してダンパをネジ等の締結部材を用いることなく簡単かつ低コストで取り付けることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、スクリューナットの前面及び後面の両側の一対の凸部間に各プレートをそれぞれ収納自在にしたことにより、スクリューナットの前面及び後面の両側の一対の凸部で各プレートの回転を確実に防止することができ、スクリューナットの前面及び後面と各プレートとの間で各ダンパを確実に挾持・固定することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、各ダンパの円形リング状のダンパ本体をスクリューナットの前面及び後面の各円筒部にそれぞれ嵌合自在にしたことにより、各ダンパにリードスクリューの回転力が直に伝わることなく、各ダンパの耐久性を向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、各ストッパのスクリューナットの前面及び後面の各円筒部に対向する位置に該各円筒部が入り込む凹部を形成したことにより、スクリューナットの移動有効範囲を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態の伝動装置を一部断面で示す側面図、図2は同装置の要部の分解斜視図、図3は同装置の要部の説明図、図4は同装置に用いられるリードスクリューとスクリューナットのネジピッチの関係を示す説明図である。
【0019】
図1〜図3に示すように、伝動装置10は、モータ11により自動車のシートを昇降動させるシート昇降機構(いずれも図示省略)に用いて好適なものである。即ち、伝動装置10は、モータ11のアーマチュア軸13により減速機構14を介して回転駆動される金属製のリードスクリュー20と、この金属製のリードスクリュー20の雄ネジ部21に螺合されると共に、該リードスクリュー20の回転によって往復移動されるスクリューナット30と、このスクリューナット30の前後両側に設けられ、該スクリューナット30がストロークエンドに達してリードスクリュー20の両端に配置された各ストッパ25に衝突する際にその衝撃を緩和させる一対のダンパ40,40と、この各ダンパ40をスクリューナット30の前後両側に保持する一対のプレート50,50とを備えている。
【0020】
図1に示すように、モータ11にはギヤボックス12が固定されており、該ギヤボックス12内にアーマチュア軸13の一端側に形成されたウオーム15が突出している。このウオーム15にリードスクリュー20の一端側に取り付けられたヘリカルギヤ16が噛合している。これらウオーム15とヘリカルギヤ16とにより減速機構14が構成され、この減速機構14を介してリードスクリュー20が回転駆動されるようになっている。
【0021】
図1〜図3に示すように、各ストッパ25は金属により段差を有した略円筒状に形成してある。即ち、各ストッパ25は、リードスクリュー20の各端に固定されて該リードスクリュー20と共に回転する小径筒部25aと、後述するスクリューナット30の前面30a及び後面30bの各円筒部32に対向する位置に形成されて該各円筒部32が入り込む大径で円筒状の凹部25bと、この凹部25bの基端より外側に円環状に突出する鍔部25cとを有している。
【0022】
図1,図2に示すように、スクリューナット30は合成樹脂で略直方体状に形成してあり、該合成樹脂製のスクリューナット30の中央には金属製のリードスクリュー20の雄ネジ部21が螺合する雌ネジ部31を形成してある。また、スクリューナット30の前面30a及び後面30bの各中央には雌ネジ部31が連続して形成された円筒部32をそれぞれ一体突出形成してある。図4に示すように、この合成樹脂製のスクリューナット30の雌ネジ部31のピッチEは金属製のリードスクリュー20の雄ネジ部21のピッチDに対して大きく設定してある(E>D)。
【0023】
また、図2に示すように、スクリューナット30の前面30a及び後面30bの両側には各一対の凸部33,33をそれぞれ一体突出形成してある。さらに、図1〜図3に示すように、スクリューナット30の上面30c及び下面30dにはそれぞれ左右互い違いに突出形成された一対の係止突起34,35をスクリューナット30の前後に矩形状に一体突出形成してある。
【0024】
さらに、スクリューナット30はシート昇降機構のレバーに連係されており、該スクリューナット30が一方のストッパ25(一方のストロークエンド)に達するまで、シート昇降機構のリフタがシート(いずれも図示省略)を上昇させると共に、該スクリューナット30が他方のストッパ25(他方のストロークエンド)に達するまで、シート昇降機構のリフタがシートを下降させるようになっている。
【0025】
図2に示すように、各ダンパ40はゴム製であり、その各ダンパ本体41は円形リング状に形成してある。この各ダンパ本体41はスクリューナット30の前面30a及び後面30bの各円筒部32にそれぞれ嵌め込まれるようになっている。さらに、各ダンパ本体41の上下位置からそれぞれ突出する一対の係止腕部42,43を左右方向に一対突設してあり、これら各一対の係止腕部42,43は矩形形状に一体形成してある。この各係止腕部42,43には矩形状の係止孔42a,43aをそれぞれ形成してある。そして、各ダンパ40のダンパ本体41の各一対の係止腕部42及び43をスクリューナット30の各一対の係止突起34,35及び各プレート50の後述する上下一対の係止凸部52,53にそれぞれ互い違いに係止されるようになっている。
【0026】
図1〜図3に示すように、各プレート50は金属板により矩形板状に形成してあり、その中央に円形の孔51を形成してある。また、各プレート50の上下位置からスクリューナット30の各一対の係止突起34,35とは突出する位置が互い違いに異なる上下一対の係止凸部52,53をそれぞれ一体突出形成してある。そして、各プレート50はスクリューナット30の前面30a及び後面30bの両側にそれぞれ形成された一対の凸部33,33間にそれぞれ収納されるようになっている。
【0027】
以上実施形態の伝動装置10によれば、各ダンパ40の各一対の係止腕部42,43の各係止孔42a,43aをスクリューナット30の各一対の係止突起34,35及び各プレート50の上下一対の係止凸部52,53に互い違いに係止自在にしたことにより、スクリューナット30の前面30a及び後面30bに各プレート50を介して各ダンパ40をネジ等の締結部材を用いることなく簡単かつ低コストで取り付けることができる。そして、スクリューナット30がストロークエンドに達してリードスクリュー20の端部に配置されたストッパ25に衝突する際に、ダンパ40が圧縮されてその衝撃を吸収する。
【0028】
また、スクリューナット30の前面30a及び後面30bの両側に形成された一対の凸部33,33間に各プレート50をそれぞれ収納自在にしたことにより、スクリューナット30の前面30a及び後面30bの両側の一対の凸部33,33で各プレート50の回転を確実に防止することができ、スクリューナット30の前面30a及び後面30bと各プレート50との間で各ダンパ40を確実に挾持・固定することができる。
【0029】
さらに、各ダンパ40の円形リング状のダンパ本体41をスクリューナット30の前面30a及び後面30bの各円筒部32にそれぞれ嵌合自在にしたことにより、各ダンパ40にリードスクリュー20の回転力が直に伝わることなく、その結果、各ダンパ40の損傷を確実に防止することができて、該各ダンパ40の耐久性を向上させることができる。
【0030】
さらに、各ストッパ25のスクリューナット30の前面30a及び後面30bの各円筒部32に対向する位置に該各円筒部32が入り込む凹部25bを形成したことにより、スクリューナット30の往復移動の有効範囲を可及的に広げることができる。
【0031】
尚、前記実施形態によれば、伝動装置を自動車のシートを昇降動させるシート昇降機構に適用した場合について説明したが、自動車のシートをスライドさせるシートスライド機構等に適用しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態の伝動装置を一部断面で示す側面図である。
【図2】上記伝動装置の要部の分解斜視図である。
【図3】上記伝動装置の要部の説明図である。
【図4】上記伝動装置に用いられるリードスクリューとスクリューナットのネジピッチの関係を示す説明図である。
【図5】従来の伝動装置のスクリューナット部分の縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 伝動装置
11 モータ
13 アーマチュア軸
14 減速機構
20 リードスクリュー
25 ストッパ
25b 凹部
30 スクリューナット
30a 前面
30b 後面
32 円筒部
33,33 一対の凸部
34,35 上下一対の係止突起
40,40 一対のダンパ
41 ダンパ本体
42,42 左右一対の係止腕部
43,43 左右一対の係止腕部
50,50 一対のプレート
52,53 上下一対の係止凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのアーマチュア軸により減速機構を介して回転駆動されるリードスクリューと、このリードスクリューに螺合されると共に該リードスクリューの回転によって移動されるスクリューナットと、このスクリューナットの前後両側に設けられ、該スクリューナットがストロークエンドに達して前記リードスクリューの両端に配置された各ストッパに衝突する際にその衝撃を緩和させる一対のダンパと、この各ダンパを前記スクリューナットの前後両側に保持する一対のプレートとを備えた伝動装置において、
前記スクリューナットを合成樹脂形成すると共に、該スクリューナットの上下位置からそれぞれ左右互い違いに突出形成された一対の係止突起をスクリューナットの前後に設ける一方、前記各ダンパの上下位置からそれぞれ突出する一対の係止腕部を左右方向に一対突設し、かつ、前記各プレートを金属板状に形成すると共に、該各プレートの上下位置から前記スクリューナットの各一対の係止突起とは突出する位置が互い違いに上下一対の係止凸部をそれぞれ設け、前記各ダンパの各一対の係止腕部を前記スクリューナットの各一対の係止突起及び前記各プレートの上下一対の係止凸部にそれぞれ互い違いに係止自在にしたことを特徴とする伝動装置。
【請求項2】
請求項1記載の伝動装置であって、
前記スクリューナットの前面及び後面の両側に一対の凸部をそれぞれ形成する一方、前記各プレートを矩形板状に形成し、前記スクリューナットの前面及び後面の両側の一対の凸部間に前記各プレートをそれぞれ収納自在にしたことを特徴とする伝動装置。
【請求項3】
請求項1記載の伝動装置であって、
前記スクリューナットの前面及び後面の各中央に雌ネジ部を形成した円筒部をそれぞれ形成する一方、前記各ダンパのダンパ本体を円形リング状に形成し、この各ダンパのダンパ本体を前記スクリューナットの前面及び後面の各円筒部にそれぞれ嵌合自在にしたことを特徴とする伝動装置。
【請求項4】
請求項3記載の伝動装置であって、
前記各ストッパの前記スクリューナットの前面及び後面の各円筒部に対向する位置に該各円筒部が入り込む凹部を形成したことを特徴とする伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−329246(P2006−329246A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150727(P2005−150727)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000181251)自動車電機工業株式会社 (87)
【Fターム(参考)】