説明

位相差フィルムおよび位相差フィルムを形成するためのポリマーフィルムとその製造方法

【課題】 可視光領域において長波長であるほど高い位相差を有しかつ十分な位相差発現性を有する、透明度の高い単一フィルムからなる位相差フィルムを提供すること。
【解決手段】 セルロースの水酸基が炭素数4以下のアシル基によって置換されたセルロースアシレートを80重量部以上含有し、ガラス転移温度が125℃以上、145℃以下であることを特徴とするポリマーフィルムを用いて位相差フィルムを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステルを含有するポリマーフィルムに関するものである。より詳細には、本発明は、可視光領域において長波長であるほど位相差が大きい、液晶表示用装置などに利用可能なセルロースアシレートポリマーフィルムおよび該ポリマーフィルムを用いて形成される位相差フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルムは液晶表示装置などの表示装置に広く使用されている。位相差フィルムとしては一般に、ポリカーボネートまたは環状ポリオレフィンからなるポリマーフィルムが使用されている。
【0003】
位相差フィルムの用途は近年広がっており、それにつれてより高度な機能が要求されてきている。特に重要な機能として、可視光領域において長波長であるほど高い位相差を有することが挙げられる。例えば、位相差が波長の1/4である1/4波長板は、直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換する作用を有し、偏光板と組み合わせて反射型液晶表示装置などに用いることができる。
【0004】
1/4波長板として使用される位相差フィルムは、可視光の各波長に対してすべて1/4波長に相当する位相差を有することが望ましい。しかし、現在一般に広く用いられているポリカーボネート位相差フィルムでは、長波長であるほど位相差が小さく、このような波長依存を示す位相差フィルムを使った反射型TFT液晶表示装置で黒表示をする場合、バックライトからの光を完全に遮光することができないため、コントラストや階調表示の低下を招いてしまう。
【0005】
これに対して、2枚の位相差フィルムを所定の角度で貼合することにより、長波長であるほど高い位相差を示すポリカーボネート位相差フィルムが開示されている(例えば、特許文献1を参照のこと)。しかしながら、上述した方法においては2枚の位相差フィルムが必要となり、さらに2枚の位相差フィルムを所定の角度で貼合する必要があるため位相差フィルム2枚分のコストと貼合するための労力を必要とする。さらに、ポリカーボネートの位相差フィルムに適用した場合は、その光弾性係数が通常、70×10−12/Nと大きいため、位相差フィルムを貼合する際の張力により所望する位相差がずれてしまうばかりでなく、貼合後の偏光板の収縮などにより、位相差値が変化してしまうという問題がある。また、環状ポリオレフィン系高分子からなる位相差フィルムに適用した場合は、位相差発現性が小さいために、フィルムの膜厚が大きくなり、ハンドリング性に劣るなどの問題がある。
【0006】
これらを解決するために、長波長であるほど高い位相差を有する、セルロースアセテートの単一フィルムからなる位相差フィルムが提案されている(例えば、特許文献2を参照のこと)。セルロースアセテートの単一フィルムは、比較的光弾性係数が低く、長波長であるほど大きな位相差を有するため、好ましい。しかし、セルロースアセテート単体の位相差発現性は十分ではなく、さらに位相差発現性を上昇させることが要求されていた。また、セルロースアセテートの位相差発現性を上昇させるために、レターデーション上昇剤が提案されている(例えば、特許文献3を参照のこと)。
【0007】
さらには、これらのセルロース誘導体からなるポリマーフィルムの厚み方向の屈折率を制御することで、広い波長領域かつ広い視野角で1/4波長または1/2波長の位相差を示す方法が提案されている(例えば、特許文献4を参照のこと)。
【特許文献1】特開平5−100114号公報(平成5年4月23日公開)
【特許文献2】特開2000−137116号公報(平成12年5月16日公開)
【特許文献3】WO00/65384号(平成14年7月30日公開)
【特許文献4】特開2001−91743号公報(平成13年4月6日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載されるようなレターデーション上昇剤を用いて十分な位相差発現性を得ようとした場合、フィルムの透明性を損ない、ヘイズが上昇するといった問題があった。また、特許文献4に記載されているような延伸方法では、厚み方向の屈折率の制御に限界があり、十分に広い視野角で均一な位相差を得ることができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、可視光領域において長波長であるほど高い位相差と、十分な位相差発現性有し、かつ視野角による位相差の変化量が少なく、透明性の高い位相差フィルム、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のセルロースアシレートを特定量含有するフィルムを用いれば上記課題を克服し得るということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るポリマーフィルムは、セルロースの水酸基が炭素数4以下のアシル基によって置換されたセルロースアシレートを80重量部以上含有し、ガラス転移温度が125℃以上、145℃以下であることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて、上記アシル基はアセチル基またはプロピオニル基であり、アセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が2.0≦DSac+DSpr≦2.9でありかつDSpr/DSac≧2であることが好ましい。
【0013】
本発明に係るポリマーフィルムは、上記アセチル置換度またはプロピオニル置換度の少なくとも一方が異なるセルロースアシレートを、複数含有することが好ましい。
【0014】
本発明に係るポリマーフィルムは、セルロースの水酸基が炭素数4以下のアルコキシ基で置換されたセルロースエーテルを、1重量部以上、20重量部以下さらに含有することが好ましい。
【0015】
本発明に係るポリマーフィルムは、上記アルコキシ基がエトキシ基であり、エトキシ置換度(DSet)が2.0≦DSet≦2.8であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るポリマーフィルムは、可塑剤をさらに含有することが好ましい。
【0017】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて、上記可塑剤の含有量は、フィルム100重量部に対して0.5重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。
【0018】
本発明に係るポリマーフィルムは、塩化メチレンを溶剤として用いるソルベントキャスト法によって製造されることが好ましい。
【0019】
本発明に係るポリマーフィルムは、光透過率が85%以上であり、かつヘイズが2%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る位相差フィルムは、上記のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮してなることを特徴としている。
【0021】
本発明に係る位相差フィルムは、上記のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮し、その片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成し、その積層体を少なくとも一軸方向に加熱延伸または収縮処理して、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与してなることを特徴としている。
【0022】
本発明に係る位相差フィルムにおいて、上記収縮性フィルムは延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
【0023】
本発明に係る位相差フィルムにおいて、上記収縮性フィルムは延伸ポリカーボネートフィルムであることが好ましい。
【0024】
本発明に係る位相差フィルムは、波長λnmにおける正面位相差Re(λ)がRe(450)<Re(550)<Re(650)を満たし、かつ、波長550nmにおける、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzに対して、NZ=(nx−nz)/(nx−ny)としたとき、0.0≦NZ<1.0であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る位相差フィルムの製造方法は、上記のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮する工程を包含することを特徴としている。
【0026】
本発明に係る位相差フィルムの製造方法はまた、上記のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮する工程;該延伸または収縮させたポリマーフィルムの片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成する工程;および該積層体を少なくとも一軸方向に加熱延伸または収縮処理して、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与する工程、を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、長波長であるほど位相差が大きくかつ位相差発現性が大きい位相差フィルムを、透明度の高い単一のフィルムとして得ることができる。特に、本発明に係るフィルムを液晶ディスプレイに適用した場合は、広い視野角で高い色再現性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、セルロースアシレートを含有するポリマーフィルムを提供する。本発明に係るポリマーフィルムにおいて、セルロースアシレートは、ポリマーフィルム全体の80重量部以上を示すことが好ましく、セルロースの水酸基が炭素数4以下のアシル基によって置換されていることを特徴としている。好ましくは、本発明に係るポリマーフィルムのガラス転移温度は、125℃以上、145℃以下である。
【0029】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて使用されるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基が炭素数4以下のアシル基によって置換されたものであり、具体的にはセルロースの水酸基がアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基のいずれかによって置換されたものが好ましい。すなわち、本発明に係るポリマーフィルムにおいて好適に使用されるセルロースアシレートとしては、セルロースアセテート、セルロールプロピオネート、セルロースブチレートや、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートのような複数種のアシル基を有するものが挙げられる。セルロースアセテートまたはセルロースアセテートプロピオネートは安価に製造できるため、特に好ましい。
【0030】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて好適に使用されるセルロースアシレートは、特定の置換度を有する。具体的には、アセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(I)式:2.0≦DSac+DSpr≦2.9、及び(II)式:DSpr/DSac≧2、を満たすセルロースアシレートが好ましい。
【0031】
(I)式について、以下に説明する。
【0032】
セルロース分子は、基本単位であるD−グルコースがβ−1,4結合して直鎖状につながった多糖である。(I)式において使用されるDSac+DSprは、このD−グルコース分子中の2,3,6位に存在する3個の水酸基が、セルロース分子において平均してどれだけエステル化されているかを表し、それぞれの位置の置換度は均等でもよいし、いずれかの位置に偏っていてもよい。また、アシル基の置換度は、ASTM−D817−96記載の方法にて定量することができる。
【0033】
「置換度=3」は、セルロース分子中の全ての水酸基がエステル化されていることを示す。セルロース分子中の全ての水酸基がアセチル基またはプロピオニル基のいずれかでエステル化された、DSac+DSpr=3のセルロースアセテートプロピオネートからなるフィルムを一軸延伸すると、延伸方向と直交する方向が遅相軸となる負の光学異方性を有する位相差フィルムとなる。このフィルムの位相差の波長依存性は、長波長であるほど位相差(絶対値)が小さい傾向を示す。
【0034】
DSac+DSprを3より小さくしていくと、延伸による位相差の発現のしやすさは低下し、約2.8〜2.9で延伸しても位相差が殆ど出ないフィルムとなり、さらにDSac+DSprを小さくすると、延伸方向が遅相軸となり、正の光学異方性の位相差フィルムとなる。これに伴い、位相差の波長依存性は、長波長であるほど位相差(絶対値)が大きい傾向を示し、DSac+DSprをさらに小さくすると、この傾向は失われていき、波長に依らずに一定の位相差を示すようになる。このような波長に依らずに一定の位相差を示すDSac+DSprは、DSacとDSprの比によって異なるが、概ね2.0〜2.3の範囲にある。
【0035】
以上の理由により、DSac+DSprは3を超えることはなく、また、位相差の波長依存性の観点から、2以上が適当である。DSac+DSprのより好ましい数値範囲は2.3以上、2.9以下であり、さらに好ましくは2.5以上、2.8以下である。
【0036】
次いで、(II)式について、以下に説明する。
【0037】
波長依存性の観点によれば、特開2000−137116号公報に開示されているように、セルロース分子中の水酸基を、アセチル基で置換してもプロピオニル基で置換しても目的を達成することができる。しかしながら、ソルベントキャスト法で厚み精度の良いフィルムを製膜するためには、高濃度溶液の調製が可能であることが望まれ、さらには、単独の溶剤に高濃度で溶解することが望まれる。このような観点から、アセチル置換度(DSac)の高いセルロースアセテートプロピオネートよりも、プロピオニル置換度(DSpr)の高いセルロースアセテートプロピオネートの方が遙かに有機溶剤に対する溶解性が高く、特に塩化メチレンを用いる場合においては顕著な差が認められる。従って、プロピオニル置換度(DSpr)は高い方が好ましく、アセチル置換度(DSac)との比率(DSpr/DSac)は2.0以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは10.0以上である。
【0038】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて使用されるセルロースアシレートは、既知の方法で製造することができる。例えば、セルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これを酸無水物によりアシル化する。得られたセルロースアシレートの置換度はほぼ3であるが、これを加水分解することにより、目的の置換度を有するセルロースアシレートを製造することができる。
【0039】
セルロースアシレートの好ましい数平均分子量は5000〜100000であり、より好ましくは20000〜80000である。数平均分子量がこの範囲を下回ると、フィルムの機械強度が不十分となる傾向にあり、この範囲を上回ると溶剤に対する溶解性が低下し、ソルベントキャスト法にてフィルムを製造する際の生産性に劣る場合がある。
【0040】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて使用されるセルロースアシレートは、単一であっても置換度の異なる複数種であってもよく、置換度は、アセチル置換度またはプロピオニル置換度の少なくとも一方が異なっていればよい。セルロースアシレートの置換度は一般にケン化処理条件や時間によって制御されることが多く、樹脂の生産ロットによるバラツキが生じる場合がある。一方で、前記したとおり、ポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮してなる位相差フィルムは、セルロースアシレートの置換化度により、その位相差発現性や、位相差の波長依存性が異なるという性質を有している。そのため、位相差発現性や位相差の波長依存性が樹脂ロット毎に異なり、均一な特性を有する位相差フィルムを量産することに支障をきたす場合がある。これを解決するために、置換度の異なる複数種のセルロースアシレートを準備し、その混合比率を適宜調整することは、常に均一な特性を有する位相差フィルムを得ることができるため好ましい構成である。また、こらら複数種のセルロースアシレートのアシル化度、すなわち、アセチル置換度(DSac)とプロピオニル置換度(DSpr)の合計は0.1以上異なることが好ましい。
【0041】
本発明に係るポリマーフィルムはさらに、特定のセルロースエーテルを特定量含有してもよい。本発明に係るポリマーフィルムにおいて使用されるセルロースエーテルは、セルロースの水酸基が炭素数4以下のアルコキシ基で置換されたものであり、具体的には、セルロースの水酸基がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のいずれかまたは複数によって置換されたセルロースエーテルであることがより好ましく、特に、メトキシ基およびエトキシ基の単独または複数によって置換されたものが好ましい。
【0042】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて、セルロースエーテルの含有量の好ましい範囲は、セルロースアシレート100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下であり、さらに好ましくは2重量部以上、15重量部以下であり、さらに好ましくは、3重量部以上、10重量部以下である。セルロースエーテルの含有量が1重量部未満であると、延伸した際の位相差の発現性が十分でなくなる傾向にある。また、セルロースエーテルの含有量が20重量部より大きいと、波長による位相差が一定の値に近付く傾向にあり、長波長であるほど高い位相差を有するという本発明の目的から外れる場合がある。
【0043】
本発明に係るポリマーフィルムは、セルロースエーテルをさらに含有することにより、十分な位相差発現性を有し、かつ添加量を上記範囲とすることにより、長波長であるほど高い位相差を有するという特徴を保つことができる。また、さらに、樹脂のロット毎に添加量を調整することにより、前述したような樹脂の生産ロット間バラツキによる特性の不均一を解消することができる。
【0044】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて好適に使用されるセルロースエーテルは、特定の置換度を有する。具体的には、エトキシ置換度(DSet)が(III)式:2.0≦DSet≦2.8を満たすセルロースエーテルが好ましい。
【0045】
(III)式について、以下に説明する。
【0046】
DSetは、セルロース分子の基本単位であるD−グルコース分子中の2,3,6位に存在する3個の水酸基が、セルロース分子において平均してどれだけエトキシ化されているかを表し、置換度=3の時はセルロース分子中の全ての水酸基がエトキシ化されていることを示す。それぞれの位置の置換度は均等でもよいし、いずれかの位置に偏っていてもよい。また、また、エーテル置換度はASTM D4794−94に記載の方法にて定量することができる。
【0047】
セルロースエーテルは、その置換度により溶剤に対する溶解性が大きく変化することが知られているが、ソルベントキャスト法によって本発明に係るポリマーフィルムを製造する場合、セルロースエーテルと前述したセルロースアシレートとの両方を溶解する溶剤を選択する必要がある。置換度が2.0を下回ると単独で溶解する溶剤の種類が限定される上に、フィルムの吸水率が大きくなり、寸法安定性に欠ける傾向にある。また、置換度が2.9を超えても溶解する溶剤の種類が限定されるばかりでなく、樹脂自体が高価になる傾向にある。そのため、DSetの好ましい範囲は2.0以上、2.8以下であり、さらに好ましくは2.2以上、2.6以下である。
【0048】
本発明に係るポリマーフィルムにおいて使用されるセルロースエーテルは、既知の方法で製造することができる。例えば、セルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これをメチルクロリドまたはエチルクロリドと反応させてエーテル化することによって製造される。
【0049】
セルロースエーテルの数平均分子量は、好ましくは22000〜100000であり、より好ましくは30000〜80000、さらに好ましくは35000〜65000である。過度に高い分子量は、溶剤に対する溶解度を低下させる、得られた溶液の粘度が高過ぎて溶剤キャスト法に適さない、熱成形を困難にしてフィルムの透明性を低くするなどの問題を生じる場合がある。一方、過度に低い分子量は、得られたフィルムの機械的強度を低下させる傾向にある。
【0050】
このように本発明に係るポリマーフィルムは、単一のセルロースアシレートからなっても、置換度の異なる複数のセルロースアシレートからなってもよく、またセルロースアシレートとセルロースエーテルとの混合物であってもよい。
【0051】
本発明に係るポリマーフィルムは、フィルム形成時に存在する水分によるフィルム強度の低下を防止するために、フィルム化の際に用いる樹脂、ペレット、溶剤などを予め乾燥させてもよい。本発明に係るポリマーフィルムはまた、可塑剤、劣化防止剤などの添加剤をさらに含有してもよい。
【0052】
可塑剤は、延伸などの加工特性または靱性を改善する目的で用いられる。可塑剤としては、例えば、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルなどが挙げられ、リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルフォスフェートおよびトリクレジルホスフェートなどが挙げられる。カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが挙げられ、フタル酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレートなどが挙げられる。クエン酸エステルとしては、O−アセチルクエン酸トリエチルおよびO−アセチルクエン酸トリブチルが挙げられる。その他のカルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルなどが挙げられる。本発明に係るポリマーフィルムにおいて、フタル酸系またはリン酸系の可塑剤を用いることが好ましい。
【0053】
劣化防止剤として、酸化による劣化を抑制する酸化防止剤、高温下での安定性を付与する熱安定剤、および/または紫外線による劣化を防止する紫外線吸収剤が使用され得る。また、塩素化した樹脂類および/または可塑剤に対して、分解により発生する遊離酸を吸収させる酸吸収剤を用いることもできる。劣化防止剤としては、上述したリン酸エステル化合物以外に、フェノール誘導体、エポキシ系化合物、アミン誘導体などが用いられる。フェノール誘導体としては、オクチルフェノール、ペンタフェノン、ジアミルフェノールなどが挙げられる。アミン誘導体としてはジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0054】
可塑剤などの添加剤の添加量は、セルロースアシレートとセルロースエーテルの合計100重量部に対して、0.5〜5.0重量部であることが好ましく、1.0〜4.0重量部であることがさらに好ましい。添加量が5.0重量部を超える場合、その効果を得ることはできず、逆にフィルム表面へ滲み出したり、透明性が低下する傾向がある。また、添加量が0.5重量部未満であると、劣化防止剤の効果はほとんど得られない場合がある。
【0055】
さらに、本発明においては、可塑剤の添加により、ポリマーフィルムのガラス転移温度を適度に調整することができる。特開平5−157911号公報に示されるような特殊な二軸延伸を施し、フィルム厚み方向の屈折率が大きい位相差フィルムを得ようとする場合、ガラス転移温度は好ましくは、125℃以上、145℃以下、さらに好ましくは130℃以上、140℃以下である。このような厚み方向の屈折率が大きい位相差フィルムを得る方法の詳細に関しては後述するが、本発明に関わるポリマーフィルムは、可塑剤を添加しない状態でのガラス転移温度は概ね145℃を超えるのに対して、可塑剤を添加し、ガラス転移温度を前述した好ましい範囲内に低下させることで、厚み方向の屈折率が大きい位相差フィルムを得るための延伸方法に適したものとなる。また、ガラス転移温度を好ましい範囲とするための可塑剤の添加量は、可塑剤の種類によって異なるが、例えば、ジエチルフタレートを可塑剤として用いる場合は、0.5〜5.0重量部以下が好ましく、さらに好ましくは1.0〜4.0重量部である。可塑剤の添加量が少ないと、ガラス転移温度の変化が小さく、十分な効果が得られない場合がある。また、可塑剤を過度に添加すると、ガラス転移温度の低下により、フィルムの耐熱性や複屈折の発現性が低下する場合がある。
【0056】
本発明に係るポリマーフィルムは、公知のフィルム化方法(例えば、溶融押出し法、インフレーション法などの溶融成型法、ソルベントキャスト法など)により得ることができる。特に、位相差フィルムのように高い平面性が要求される場合には、ソルベントキャスト法によって製造されることが好ましい。
【0057】
ソルベントキャスト法に用いることのできる溶剤は、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素などの公知の溶剤から選択される。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチルなどが挙げられる。また、ハロゲン化炭素としては、塩化メチレン、クロロホルムなどが挙げられる。特に、塩化メチレンは、セルロースアシレートおよびセルロースエーテルの両者を溶解しやすく、沸点が低いために生産性が高くなるという利点を有する。さらに、塩化メチレンは、乾燥中に生じ得る火災などに関する安全性も高いので、本発明の位相差フィルムを製造する際に最も好適に用いられる。
【0058】
ソルベントキャスト法によりフィルム化する場合、樹脂および添加剤を溶剤に溶解し、ドープを調製したのち、支持体に流延し、乾燥してフィルムとする。また、ドープの調整に関しては、樹脂のみを先に溶剤に溶解した後、スタティックミキサー等を用いて添加剤を混合する方法を用いることもできる。
【0059】
ドープの好ましい粘度は1.0Pa・s以上、10.0Pa・s以下、さらに好ましくは1.5Pa・s以上、8.0Pa・s以下である。好ましい支持体としては、ステンレス鋼のエンドレスベルト、ポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのようなフィルム等が挙げられる。また、ポリイミドや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムを支持体として用いる場合は、支持体とセルロースフィルムとの付着性を首尾よく制御するために、支持体表面コーティングや放電処理を施してもよい。詳細には、コーティングや放電処理により、支持体とセルロースフィルムを適度に剥離できる程度に付着性を高めることができる。
【0060】
本発明に係るポリマーフィルムは、支持体に担持された状態で乾燥を行うことも可能であるが、必要に応じて、予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥には、一般にフロート法、テンター法またはロール搬送法を利用することができる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルム両端を支えているピンまたはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡縮制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のための張力は原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい。従って、フィルムの乾燥には、ロール搬送法を用いることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないよう、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度および透明度の高い本発明フィルムを得るには有効な方法である。
【0061】
液晶表示装置などに使用される位相差フィルムは、その透明性が重要となる。本発明に係るポリマーフィルムの光線透過率は85%以上が好ましく、より好ましくは、90%以上である。また、本発明に係るポリマーフィルムのヘイズは2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。通常、種類の異なる複数の高分子化合物を混合した場合は、その相溶性の問題から透明性の高いフィルムを得ることができないという問題が生じる。それに対して、本発明に係るポリマーフィルムに用いられるセルロースアシレートおよびセルロースエーテルは良好な相溶性を示し、光線透過率および/またはヘイズを上記範囲内とすることができるため、位相差フィルム材料として好ましい。
【0062】
本発明に係るポリマーフィルムの膜厚(厚み)は、10μm〜500μmであり、好ましくは30μm〜300μmであり、さらに好ましくは50μm〜130μmである。フィルムの膜厚が上記範囲を超えると、ソルベントキャスト法による生産性が劣る傾向にある。また、フィルムの膜厚が上記範囲を下回ると、フィルムのハンドリング性が劣るばかりでなく、延伸により十分な位相差を得られない場合がある。
【0063】
本発明に係る位相差フィルムを得るために、上記で得られたポリマーフィルムを公知の延伸方法により配向処理を行い(すなわち、少なくとも一軸方向に延伸または収縮させる)、均一な位相差を付与することができる。すなわち、本発明は、上記のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮する工程を包含する位相差フィルムの製造方法を提供する。本方法に従えば、単一のポリマーフィルムのみからなる位相差フィルムを得ることができる。
【0064】
本発明に係る位相差フィルムの正面位相差値は、5nmを超え1000nmまでの間で目的に応じて適宜選択することができる。(ただし、ここでいう「正面位相差値」とは、フィルムの法線方向で測定した位相差値を指し、以下本発明においては特に断りのない限り単に「位相差値」と記載する。)特に、本発明フィルムを1/4波長板として使用する場合、波長550nmにおける位相差値は、好ましくは120〜155nm、より好ましくは125〜150nm、さらに好ましくは130〜145nmである。位相差がこの範囲にあれば、直線偏光を円偏光に変換することができ、本発明に係る位相差フィルムを反射型液晶表示装置などに好適に用いることができる。また、1/4波長板では位相差の波長依存性が重要となり、長波長であるほど高い位相差を有することが求められる。言い換えると、波長λnmにおける正面位相差Re(λ)はRe(450)<Re(550)<Re(650)であることが好ましい。位相差の波長依存性がこの範囲から外れた場合は、可視光領域の直線偏光をこのフィルムに入射した際、得られる偏光状態はある特定の波長では完全な円偏光が得られるものの、それ以外の波長では大きく円偏光から外れてしまうといった問題が生じる場合がある。
【0065】
また、位相差の発現性の観点においては、波長550nmにおけるフィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、進相軸方向の屈折率をnyとした時(nx−ny)は0.0012以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.0014以上である。(nx−ny)がこの範囲を下回ると、1/4波長板のフィルムの膜厚は概ね130μmを超えることになり、モバイルなどの用途に適さないだけでなく、フィルムの生産性および/またはハンドリング性に劣る傾向にある。本発明フィルムではこれらの要件を満たすことができるため、可視光領域において長波長であるほど高い位相差を有しかつ十分な位相差発現性を有する位相差フィルムとして使用することができる。
【0066】
さらに、位相差フィルムの特性として、三次元方向の屈折率を制御できることが好ましい。三次元屈折率の制御に関しては、フィルム面内の屈折率をnx、進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした際、NZ=(nx−nz)/(nx−ny)で表すことができる。
【0067】
通常の一軸延伸フィルムのNZは概ね1.0〜1.1であり、二軸延伸フィルムのNZは2を超える場合が多い。それに対して、NZ<1.0のフィルムは斜め方向から見た場合の位相差変化が小さく、液晶ディスプレイの視野角補償フィルムとして広く用いられている。位相差フィルムを液晶表示装置の視野角を拡大する等の目的で用いる場合には、NZの範囲は好ましくは0.0≦NZ<1.0、より好ましくは0.0≦NZ≦0.6である。特に、NZ=0.5のフィルムでは、斜め方向から見た場合の位相差変化が0となるが、実際には用いる液晶セルの種類や、偏光板の持つ複屈折との組み合わせにより、所望とするNZの値が異なる。
【0068】
すなわち、波長λnmにおける正面位相差Re(λ)がRe(450)<Re(550)<Re(650)を満たし、かつ、波長550nmにおけるフィルム面内の遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzに対して、NZ=(nx−nz)/(nx−ny)としたときに0.0≦NZ<1.0とすることで、可視光領域において長波長であるほど位相差が大きくかつ十分な位相差発現性を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0069】
位相差値または三次元屈折率は、延伸方法、延伸温度、延伸倍率などにより所望の値に調整することができる。
【0070】
延伸方法としては、一軸または二軸の熱延伸法を採用することができる。さらに、特開平5−157911号公報や、特開平7−230007号公報、特開2001−91743号広報等に示されるような特殊な二軸延伸を施し、フィルム厚み方向の屈折率を大きくすることも可能である。
【0071】
本発明はまた、さらなる位相差フィルムの製造方法を提供する。本発明に係る位相差フィルムの製造方法は、前記のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮する工程;該延伸または収縮させたポリマーフィルムの片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成する工程;および該積層体を少なくとも一軸方向に加熱延伸または収縮処理して、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与する工程、を包含することを特徴としている。一般にポリカーボネートや環状ポリオレフィン樹脂からなるポリマーフィルムを自由端一軸延伸して得られる位相差フィルムのNZは1.0〜1.1であるのに対して、本発明に開示されているようなセルロース誘導体からなるポリマーフィルムは、特開2000−137116号広報の実施例に記載されているように、自由端一軸延伸を実施しても、NZは1.1〜1.2程度と大きい。そのため、特開平5−157911号公報や、特開2001−91743号広報に示されるような特殊な二軸延伸を実施するのみでは、NZが下がりにくい場合がある。それに対して、あらかじめ、ポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮する工程を経ることで、NZを所望の値にすることができる。この製造方法の実施形態を下記する。
【0072】
ポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮する工程においては、フィルムを加熱しながら延伸、または収縮する方法を好適に用いることができる。延伸または、収縮させる方法は特に限定されないが、自由端一軸延伸により、フィルムの製膜方向に延伸または収縮させる方法を好適に用いることができる。また、ポリマーフィルムの加熱温度は、フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、好ましくはTg以上、より好ましくは(Tg+10)℃以上、さらに好ましくは(Tg+15)℃以上である。温度の上限は該ポリマーフィルムの融点未満であれば特に制限されない。加熱温度を前記範囲内とすることで、NZをより小さい値まで制御することができる。
【0073】
該延伸または収縮させたポリマーフィルムの片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成する工程において、上記収縮性フィルムは、熱収縮性フィルムが好ましい。収縮性フィルムの材料は特に限定されないが、収縮開始温度が、前工程にて延伸または収縮させたポリマーフィルムのガラス転移温度Tgに対して、(Tg±30)℃の範囲にあることが好ましい。また、低コストで、かつ容易に入手できるという観点から、延伸ポリプロピレンフィルムまたは延伸ポリカーボネートフィルムがより好ましい。前工程にて一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムの接着方法は特に限定されないが、例えば、それぞれのフィルム自体の粘着力やアクリル系粘着剤等の粘着剤を用いることによって行うことができる。積層にあたっては、例えば、加圧式貼合ロ−ル、テ−ブルタイプ貼合機等を用いることができる。
【0074】
積層体を少なくとも一軸方向に加熱延伸または収縮処理して、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与する工程においては、自由端一軸延伸により、フィルムの製膜方向に対して、延伸または収縮させる方法を用いることができる。さらには、クリップテンターやピンテンター等を有する横延伸機や二軸延伸機を用いて、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮率を制御する方法を用いることもできる。この工程で収縮フィルムを収縮させる温度は、積層体が熱収縮を開始する温度以上で且つ用いたフィルムの融点未満であれば特に制限はなく、一般に温度を高くするに従い、NZの値は小さくなる傾向がある。
【0075】
また、これらの工程は連続で実施してもよく、各工程ごとに一旦フィルムをロール状に巻き取って実施してもよい。また、ポリマーフィルムと収縮性フィルムを接着して積層体を形成する工程と、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与する工程の間に、該積層体を加熱処理する工程を経ることもできる。積層体を加熱する工程により、ポリマーフィルムと収縮性フィルムの接着性が向上し、収縮処理を実施する際に積層体の剥がれや、積層体への空気の噛み込みを防止でき、結果として均一な位相差を有する位相差フィルムを得ることができる。積層体の加熱温度は収縮フィルムが熱収縮を開始する温度未満であれば、特に制限されないが、40℃以上、90℃以下が好ましく、50℃以上、70℃以下がさらに好ましい。加熱時間は特に限定されないが、10時間以上、100時間以下が好ましく、20時間以上、70時間以下がより好ましい。
【0076】
前記したように、本発明に係るポリマーフィルムは、予め少なくとも一軸方向に延伸または収縮処理を施してフィルム面内の配向を制御した後に、該延伸または収縮させたポリマーフィルムの片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成する工程;および該積層体を少なくとも一軸方向に加熱延伸または収縮処理して、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与する工程を経ることで、NZを所望の値に調整する、すなわち、フィルムの三次元屈折率を制御することができる。
【0077】
つまり、本発明の目的は、長波長であるほど位相差が大きくかつ位相差発現性が大きい位相差フィルムを製造するための、セルロースアシレートを含有する単一のポリマーフィルムを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した可塑剤および/または溶剤の種類、ポリマーフィルム形成方法、延伸方法などの条件に存するのではない。したがって、上記単一のポリマーフィルムのみからなる位相差フィルムだけでなく、上記単一のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮し、その片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成し、その積層体を少なくとも一軸方向に加熱延伸または収縮処理して、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与してなる位相差フィルムもまた本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
【0078】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0079】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
〔測定方法〕
本明細書中に記載の材料特性値などは、以下の評価法によって得られたものである。
【0082】
(1)位相差値
王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRを用いて、位相差の波長依存性を測定し、その測定値に基づいて装置付属のプログラムによりRe(450)、Re(550)、Re(650)を算出した。
【0083】
(2)NZ
王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRを用いて、平面方向位相差と、フィルム遅相軸を回転軸として45°傾けた際の位相差とを測定し、装置付属のプログラムにより、NZを算出した。
【0084】
(3)厚み
アンリツ製電子マイクロメーターを用いて測定した。
【0085】
(4) 全光線透過率
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aを用いて、JIS K7105−1981の5.5記載の方法により測定した。
【0086】
(5)ヘイズ
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aを用いて、JIS K7105−1981の6.4記載の方法により測定した。
【0087】
(6)ガラス転移温度
セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220Cを用いて、JIS K−7121に記載の方法により測定した。
【0088】
(7)光弾性係数
フィルム製膜方向を長辺方向とし、短辺が5cmとなるようにフィルムを長方形に切り出したフィルムを用いた。王子計測機器製位相差計 KOBRA−WRのステージ上にサンプルの一方の短辺をテープで固定し、測定波長590nmで位相差を測定した。(この時の位相差をR(0)とする。)ステージ上にテープで固定した短辺と逆のフィルム短辺に500gの錘をぶら下げ、長辺方向に張力をかけた状態で、590nmにおける位相差を測定した。(この時の位相差をR(W)とする。)位相差測定後にサンプルをレールから外し、位相差測定部分の厚み(d)を測定した。光弾性係数は次式
{(R(W)−R(0))/D}/{W×G/(50mm×D)}
にて算出される。ただし、Wは錘の質量、Gは重力加速度=9.8m/sを表す。
【0089】
〔参考例1〕
アセチル基の置換度が0.1、プロピオニル基の置換度が2.6、数平均分子量が75000であるセルロースアセテートプロピオネート(以下、化合物Aとする)を100重量部、塩化メチレンを670重量部含むドープを調製した。このドープを、室温(23℃)、湿度15%の環境下で、長辺方向に1.0×10N/mの応力を付与した状態の厚み125μmの二軸延伸PETフィルム上の長辺方向が流延方向となるように流延した後、室温で4分間、60℃で4分間、80℃で4分間乾燥を行った。得られたフィルムをPETフィルムから剥離した後、さらに流延方向に2.0×10N/mの応力を付与した状態で110℃にて40分乾燥し、厚さ140μmの透明フィルムを得た。
【0090】
〔参考例2〕
化合物Aを50重量部、アセチル基の置換度が0.1、プロピオニル基の置換度が2.4、数平均分子量が25000であるセルロースアセテートプロピオネート(以下、化合物Bとする)を50重量部、塩化メチレンを566重量部含むドープを調製した。このドープを、室温(23℃)、湿度15%の環境下で、長辺方向に1.0×10N/mの応力を付与した状態の厚み125μmの二軸延伸PETフィルム上の長辺方向が流延方向となるように流延した後、室温で4分間、60℃で4分間、80℃で4分間乾燥を行った。得られたフィルムをPETフィルムから剥離した後、さらに流延方向に2.0×10N/mの応力を付与した状態で110℃にて30分乾燥し、厚さ100μmの透明フィルムを得た。
【0091】
〔参考例3〕
化合物Aを97重量部、平均置換度が2.3、数平均分子量が51000であるエチルセルロース(以下化合物Cとする)を3重量部、塩化メチレンを746重量部含むドープを調製した。このドープを、室温(23℃)、湿度15%の環境下で、長辺方向に1.0×10N/mの応力を付与した状態の厚み125μmの二軸延伸PETフィルム上の長辺方向が流延方向となるように流延した後、室温で4分間、60℃で4分間、80℃で4分間乾燥を行った。得られたフィルムをPETフィルムから剥離した後、さらに流延方向に2.0×10N/mの応力を付与した状態で110℃にて30分乾燥し、厚さ100μmの透明フィルムを得た。
【0092】
〔参考例4〕
化合物Aを100重量部、ジエチルフタレートを2重量部、塩化メチレンを670含むドープを調製し、参考例1と同様に、厚さ140μmのフィルムを得た。
【0093】
〔参考例5〕
化合物Aを50重量部、化合物Bを50重量部、ジエチルフタレートを2重量部、塩化メチレンを566重量部含むドープを調製し、参考例2と同様に、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0094】
〔参考例6〕
化合物Aを50重量部、化合物Bを50重量部、ジエチルフタレートを10重量部、塩化メチレンを566重量部含むドープを調製し、参考例2と同様に、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0095】
〔参考例7〕
化合物Aを97重量部、化合物Cを3重量部、ジエチルフタレートを2重量部、塩化メチレンを746重量部含むドープを調製し、参考例3と同様に、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0096】
〔参考例8〕
芳香族2価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン成分を有するポリカーボネート系樹脂(帝人化成製パンライトC1400、以下化合物Dとする)を100重量部、塩化メチレンを400重量部含むドープを調製した。このドープを室温(23℃)、湿度15%の環境下で、長辺方向に1.0×10N/mの応力を付与した状態の厚み125μmの二軸延伸PETフィルム上の長辺方向が流延方向となるように流延した後、室温で3分間、60℃で2分間、80℃で2分間乾燥を行った。得られたフィルムをPETフィルムから剥離した後、さらに流延方向に2.0×10N/mの応力を付与した状態で80℃にて6分、90℃にて6分、100℃にて6分乾燥し、厚さ66μmの透明フィルムを得た。
【0097】
参考例1〜8で作製した透明フィルムのドープ組成、厚み、ガラス転移温度、全光線透過率、ヘイズ、正面位相差を、表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
〔参考例9〕
参考例5で得られたフィルムを、延伸温度150℃で自由端一軸延伸にてフィルム流延方向に延伸倍率40%で延伸し、位相差フィルムを得た。
【0100】
〔比較例1〕
参考例1で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度150℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向30%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと参考例1で得られたフィルムが剥離し、幅方向に蛇腹状となった。二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離し、得られた位相差フィルムも蛇腹状であった。この位相差フィルムをクロスニコルに配置した2枚の偏光板間に、延伸方向が偏光板の吸収軸と45°となるように配置し、バックライト下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラが観察され、位相差の均一な位相差フィルムを得ることはできなかった。
【0101】
〔比較例2〕
参考例2で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度150℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向30%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと参考例2で得られたフィルムが剥離し、幅方向に蛇腹状となった。二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して得られた位相差フィルムも蛇腹状であった。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラが観察され、位相差の均一な位相差フィルムを得ることはできなかった。
【0102】
〔比較例3〕
参考例3で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度150℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向30%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと参考例2で得られたフィルムが剥離し、幅方向に蛇腹状となった。二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して得られた位相差フィルムも蛇腹状であった。この位相差フィルムを比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラが観察され、位相差の均一な位相差フィルムを得ることはできなかった。
【0103】
〔実施例1〕
参考例4で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度143℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向30%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、蛇腹状とはならず、平坦な積層体となった。該積層体から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラはなく、位相差の均一な位相差フィルムであることがわかった。
【0104】
〔実施例2〕
参考例5で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度143℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向30%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、蛇腹状とはならず、平坦な積層体となった。該積層体から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラはなく、位相差の均一な位相差フィルムであることがわかった。
【0105】
〔実施例3〕
参考例5で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度148℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向38%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、蛇腹状とはならず、平坦な積層体となった。該積層体から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラはなく、位相差の均一な位相差フィルムであることがわかった。
【0106】
〔比較例4〕
参考例6で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度110℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向30%延伸しすることで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を試みたが、該延伸温度では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの熱収縮が十分でなく、幅方向の収縮を付与することができなかった。また、得られたフィルムはヘイズが上昇しており、光学補償用途としては不適当であることがわかった。
【0107】
〔実施例4〕
参考例7で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度143℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向30%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、蛇腹状とはならず、平坦な積層体となった。該積層体から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラはなく、位相差の均一な位相差フィルムであることがわかった。
【0108】
〔比較例5〕
参考例8で作製したフィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度143℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向13%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、蛇腹状とはならず、平坦な積層体となった。該積層体から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラはなく、位相差の均一な位相差フィルムであることがわかった。
【0109】
〔実施例5〕
参考例9で得られた位相差フィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度143℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向に3%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、蛇腹状とはならず、平坦な積層体となった。該積層体から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラはなく、位相差の均一な位相差フィルムであることがわかった。
【0110】
〔実施例6〕
参考例9で得られた位相差フィルムの両面に、厚さ60μm二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、延伸温度148℃で自由端一軸延伸にて、フィルム流延方向に10%延伸することで、流延方向には延伸処理、幅方向には収縮処理を施したところ、蛇腹状とはならず、平坦な積層体となった。該積層体から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを剥離し、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラはなく、位相差の均一な位相差フィルムであることがわかった。
【0111】
〔実施例7〕
参考例9で得られた位相差フィルムの両面に、厚さ55μmの二軸延伸ポリカーボネートフィルムを、アクリル系粘着層を介して接着して、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、クリップテンターを有する横延伸/収縮機にて、炉入口のフィルム幅(Wi)と、炉出口のフィルム幅(Wt)の比(Wt/Wi)=0.82となるように、温度150℃でフィルムを流延方向に搬送し、幅方向の収縮率が一定となるように収縮処理を施したところ、蛇腹状とはならず、平坦な積層体となった。該積層体から、二軸延伸ポリカーボネートフィルムを剥離し、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムを、比較例1と同様に偏光板クロスニコル下で観察したところ、位相差の不均一による色ムラはなく、位相差の均一な位相差フィルムであることがわかった。
【0112】
参考例9、実施例1〜7、比較例4〜5で得られた位相差フィルムのフィルム厚み、測定波長450nm、550nm、650nmにおける正面位相差値(それぞれ、Re(450)、Re(550)、Re(650)とする)、NZ係数、全光線透過率、ヘイズ、光弾性係数を、表2に示す。
【0113】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明を用いれば、可視光領域において長波長であるほど高い位相差を有し、かつ三次元屈折率制御可能な、透明度の高い単一フィルムからなる位相差フィルムを提供することができるので、液晶表示装置などの表示装置において幅広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースの水酸基が炭素数4以下のアシル基によって置換されたセルロースアシレートを80重量部以上含有し、ガラス転移温度が125℃以上、145℃以下であることを特徴とするポリマーフィルム。
【請求項2】
前記アシル基がアセチル基またはプロピオニル基であり、アセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が2.0≦DSac+DSpr≦2.9であり、かつDSpr/DSac≧2であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記アセチル置換度またはプロピオニル置換度の少なくとも一方が異なるセルロースアシレートを複数含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
セルロースの水酸基が炭素数4以下のアルコキシ基で置換されたセルロースエーテルを1重量部以上、20重量部以下さらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記アルコキシ基がエトキシ基であり、エトキシ置換度(DSet)が2.0≦DSet≦2.8であることを特徴とする請求項4に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
可塑剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記可塑剤の含有量が、フィルム100重量部に対して0.5重量部以上、5重量部以下であることを特徴とする請求項6に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
塩化メチレンを溶剤として用いるソルベントキャスト法によって製造されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
光透過率が85%以上であり、かつヘイズが2%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮してなることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮し、その片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成し、その積層体を少なくとも一軸方向に加熱延伸または収縮処理して、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与してなることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項12】
前記収縮性フィルムが延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項11に記載の位相差フィルム。
【請求項13】
前記収縮性フィルムが延伸ポリカーボネートフィルムであることを特徴とする請求項11に記載の位相差フィルム。
【請求項14】
波長λnmにおける正面位相差Re(λ)がRe(450)<Re(550)<Re(650)を満たし、かつ、波長550nmにおける、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzに対して、NZ=(nx−nz)/(nx−ny)としたとき、0.0≦NZ<1.0であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮する工程を包含することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマーフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮する工程;
該延伸または収縮させたポリマーフィルムの片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成する工程;および
該積層体を少なくとも一軸方向に加熱延伸または収縮処理して、フィルム製膜方向と直交する方向の収縮力を付与する工程
を包含することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−274135(P2006−274135A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97660(P2005−97660)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】