説明

位置対応値のチェック方法及び位置対応値のチェックのための監視ユニット

【課題】誤差(エラー)のある位置対応値を検出する方法及び監視ユニットを提供すること。
【解決手段】動作確認時間差の時間間隔において位置測定装置20からの位置対応値が供給される監視ユニット200により位置対応値をチェックする方法であって、移動量対応値を少なくとも2つの位置対応値及びこれらの入力時間差により算出するステップと、少なくとも2つの位置対応値に続くチェックすべき位置対応値に対する期待値を、移動量対応値及びチェックすべき位置対応値の入力までの時間から得られる位置変化量と、少なくとも2つの位置対応値とを合計して算出するステップと、期待値と最大位置差から位置期待値差を決定するステップと、チェックすべき位置対応値を位置期待値差と比較するステップと、該比較の結果を示す信号を出力するステップとを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の位置対応値のチェック方法、請求項6に記載の位置対応値をチェックするための監視ユニット及び請求項10に記載の、本発明による監視ユニットを備えた駆動制御部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動化技術において、特に工具、生産設備、ロボットアームなどの機械の移動経過(運動軌道)を制御することができるよう、駆動制御部が用いられている。その機能は、移動目標値をモータの制御信号に変換するものである。ここで、モータによりなされた運動が実際値として位置測定装置により測定され、制御信号は、この実際値と目標値ができる限り一致するよう適合されるようになっている。
【0003】
このような駆動制御部は、絶対位置対応値を供給する位置測定装置に多く用いられている。これにより、例えば起動後に目盛マーカを計数して行う位置測定において基準点となる基準位置を見つけるためのホーミング処理が必要となるなどのいわゆるインクリメント式の位置測定装置の欠点が解消される。
【0004】
シリアルインターフェースは比較的短いデータ伝送ケーブルに適合しているとともに高いデータ転送率を有しているため、絶対的な位置対応値の伝達には主にこのシリアルインターフェースが用いられている。自動化技術においては多くの標準インターフェースが用いられており、位置測定装置用のシリアルインターフェースの主なものは、例えば本出願人によるEnDatインターフェースである。また、ほかにも、SSI(同期式シリアルインターフェース)が知られている。
【0005】
なお、EnDatインターフェースの基礎及びSSIの機能については、それぞれ特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0006】
位置測定装置によって測定され、シリアルインターフェースによってデジタル式に駆動制御部へ伝達される絶対位置対応値は最終的には機械の移動経過を決定するものなので、位置対応値の形成及び伝達における誤差(エラー)を防止したり、更に誤差が生じる可能性がある場合にこの誤差が移動経過に反映される前にできる限り高い可能性でこの誤差を発見することは、機械の確実な動作に対して大きな意義がある。また、位置対応値におけるエラーにより形成されたりエラーにより伝達されたデータは、機械の制御不能な動作、予測不能な動作及び突発的な動作を引き起こす可能性がある。これは、機械の大きな損傷をもたらすほかに、機械の動作範囲内にいる操作者の命を脅かす状況をももたらしかねないものである。したがって、誤差のある位置対応値を検出することは、自動化技術において高い優先度を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0660209号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0171579号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、誤差(エラー)のある位置対応値を検出する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、動作確認時間差の時間間隔において位置測定装置からの位置対応値が供給される監視ユニットにより前記位置対応値をチェックする方法であって、移動量対応値を少なくとも2つの前記位置対応値及びこれらの入力時間差により算出するステップと、前記少なくとも2つの位置対応値に続くチェックすべき位置対応値に対する期待値を、前記移動量対応値及び前記チェックすべき位置対応値の入力までの時間から得られる位置変化量と、前記少なくとも2つの実際の位置対応値とを合計して算出するステップと、前記期待値と最大位置差から位置期待値差を決定するステップと、前記チェックすべき位置対応値を前記位置期待値差と比較するステップと、該比較の結果を示す信号を出力するステップとを行うことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の他の目的は、誤差(エラー)のある位置対応値を検出する監視ユニットを提供することにある。
【0011】
この目的を達成するため、請求項6記載の発明は、位置測定装置から駆動制御部へ動作確認時間差の時間間隔で伝達される複数の位置対応値をチェックするための監視ユニットであって、前記位置対応値が供給され、少なくとも2つの前記位置対応値及びこれらの入力時間差から移動量対応値を算出するよう構成され、これら少なくとも2つの前記位置対応値に続くチェックすべき位置対応値に対する期待値を前記移動量対応値及び前記チェックすべき位置対応値の入力までの時間から得られる位置変化量と、前記少なくとも2つの実際の位置対応値とを合計して算出するよう構成され、該期待値と最大位置差から位置期待値差を決定するよう構成された処理ユニットと、前記チェックすべき位置対応値を前記位置期待値差と比較し、該比較の結果を示す信号を出力する比較ユニットとを備えることを特徴としている。
【0012】
また、前記位置期待値差の決定をチェックすべき位置対応値の入力前に完了するのが望ましい。こうすることで、比較ユニットにおける比較によるチェックの結果が、チェックすべき位置対応値の入力直後にすでに存在していることになる。
【0013】
本発明の他の利点及び詳細については、以下の図面を参照した本発明の方法及び監視ユニットの実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誤差(エラー)のある位置対応値を検出する方法及び監視ユニットを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】駆動制御のブロック図である。
【図2】本発明による監視ユニットのブロック図である。
【図3】移動経過(運動軌道)のグラフである。
【図4】本発明による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1には、駆動制御のブロック図が示されている。本実施の形態においては、モータ10による駆動が行われ、このモータ10のモータシャフト15が機械部分を駆動するようになっている。機械部分の移動量に対応するモータシャフト15の回転は、モータ回転センサとして形成された位置測定装置20により測定される。ここで、モータシャフト15は、相対回転しないようモータ回転センサに結合されている。
【0018】
また、位置測定装置20であるモータ回転センサの代わりに、例えばモータシャフト15の回転により生じる機械部分の直線運動を計測する長さ測定装置を用いてもよい。さらに、モータ10をリニアモータとして形成してもよい。
【0019】
また、位置測定装置20によって測定された位置対応値ψiを駆動制御部100へ伝送するために、この位置測定装置20は、データ伝送チャネル25を介して駆動制御部100に接続されている。
【0020】
駆動制御部100は、インターフェースユニット110、制御ユニット120及びトランスバータユニット130を含んで構成されており、制御ユニット120の役割は、特にNCプログラムであるコンピュータプログラムにより設定された動作を行うようモータ10を制御することである。そして、この制御ユニット120は、目標値を生成し、この目標値を実際値(位置測定装置により測定された位置対応値)と比較し、これに基づきトランスバータユニット130に対して制御信号を算出するものである。また、トランスバータユニット130は、この制御信号をモータ10へ供給されるモータ制御信号に変換するものである。そのため、モータ10は、ケーブル140を介してトランスバースユニット130に接続されている。
【0021】
位置測定装置20からの実際の位置対応値ψiを要求するために、制御ユニット120は、内部インターフェース115を介してインターフェースユニット110に接続されている。このインターフェースユニット110は、インターフェースプロトコルに合わせて、データ伝送チャネル25を介して位置測定装置20内の不図示のインターフェースユニットと通信するようになっている。この通信に必要なインターフェース信号は、特に、駆動制御部100から位置測定装置20へ送信される位置要求命令と、位置測定装置20から駆動制御部100へ送信される位置対応値ψiのようなデータとを含んでいる。さらに、このインターフェース信号は、データ伝送の同期化のためのサイクル信号も含んでいる。
【0022】
目標値と実際値の比較及びトランスバータユニット130に対する制御信号の算出は、連続的に行われるわけではなく、いわゆる制御サイクル時間により定められた不連続の時間差においてなされる。典型的な制御サイクル時間は、マイクロ秒より短い時間から数ミリ秒の範囲である。また、1つの制御過程において位置対応値ψiが位置測定装置20からインターフェースユニット110を介して要求される時間である動作(データ)確認時間差Δtがこの制御サイクル時間により設定される。
【0023】
本発明によれば、位置対応値ψiを含むインターフェース信号は、制御ユニット120のみではなく、誤差のチェックのために監視ユニット200にも供給される。これは、図1に示すように、監視装置200がインターフェースユニット110と平行にデータ伝送チャネル25に接続されていることにより達成される。また、これに代えて、監視ユニット200を内部インターフェース115に接続するようにしてもよい(不図示)。これらいずれの場合であっても、位置測定装置20から、データ伝送チャネル25、インターフェースユニット110及び内部インターフェース115を介した制御ユニット120へのデータの伝送は維持されるようになっている。
【0024】
このようにすることで、従来技術の駆動制御部を本発明のような監視ユニット200がなくとも動作させることが可能である。したがって、例えば操作者が機械において操作を行う場合など特に高い安全性が要求される場合にのみ使用される独立した追加モジュールとすることも考えられる。そして、この監視ユニット200は、前記チェックの結果を信号Sとしてトランスバースユニット130又はこれに加えて制御ユニット120にも送信する。そのため、例えば原動機の停止又は監視された駆動部において駆動される機械全体の停止などの適当な手段を把握することが可能である。
【0025】
図2には本発明による監視ユニット200のブロック図が示されており、データ伝送チャネル25又は内部インターフェース115を介して監視ユニット200において受信するインターフェース信号は、まず、受信ユニット210へ供給されるようになっている。特にRS−485規格の場合には比較的長いケーブル長さにより多くの場合にデータ伝送において誤差が生じてやすいため、この受信ユニット210は、データ伝送チャネル25が特にインターフェース信号の発信源として使用される場合に必要となる。そして、この場合には、受信ユニット210が誤差をその大きさに応じたインターフェース信号に変換する。なお、内部インターフェース115をデータ源として使用する場合には、受信ユニット210を、データ信号を分離するデータドライバ素子が含まれるように構成するか、又は完全に省略することができる。
【0026】
このように処理されたインターフェース信号は、プロトコル(記録)ユニット220へ供給される。このインターフェース信号は制御ユニット120あるいはインターフェースユニット110と位置測定装置20の間のデータ送受信を含むものであるため、プロトコルユニット220は、インターフェース信号から他の処理に必要な位置対応値ψiを分離し、これを処理ユニット230へ送信する。
【0027】
処理ユニット230は、少なくとも2つの位置対応値ψiとその受信時間差から移動量対応値ωを算出する。ここで、好ましく、かつ、簡易な場合において、受信した2つの位置対応値ψi−1,ψi−2及び動作確認時間差Δtの誤差率の形成により速度(本実施形態では角速度)の評価がなされる。他の適当な移動量対応値ωは、加速度値又は瞬間的な変化量すなわち加速度の時間変化である。移動量対応値ωの検出のために使用した位置対応値と位置変化の合計における最新のものと、移動量対応値ω及びチェックすべき位置対応値(ここでは動作確認時間差Δt)の入力までの時間に基づき算出される位置変化とを合計することで、処理ユニット230がチェックすべき位置対応値ψiの期待値ψEを算出する。
【0028】
監視ユニット200は単に制御ユニット120から要求された位置対応値ψiを有しているのみであるため、期待値ψEの算出は原則として不正確である。そのため、上述の例においては、計算に使用した位置対応値ψi−1とψi−2の間に一定の角速度が存在している場合にのみ移動量対応値ω(角速度)を正確に決定することが可能である。これに対して、これらの位置対応値の間に加速的な運動が生じている場合には、角速度の評価は、加速度が大きくなるのに伴い更に不正確となる。すなわち、位置測定装置20において生じ得る許容最大加速度αmaxにおいて誤差が最大となる。そして、許容最大加速度αmaxは、位置測定装置20自身の限界値であるか、又はモータシャフト15により駆動される機械部分の許容最大加速度に依存するモータ10の限界値である。
【0029】
さらに、期待値ψEの算出も、最後に検出された位置対応値ψi−1から予測すべき位置対応値ψiまでの運動(移動)において一定の角速度であることが前提となっている。そして、ここでも、許容最大加速度αmaxにおいて最大の誤差が生じる。なお、期待値ψEに基づきチェックすべき位置対応値ψiが存在する必要がある場合には、上記のような不正確さにかかわらず、極端な場合を重ね合わせることにより最大位置差Δψが示される。そして、この最大位置差Δψにより最大位置変化量が示され、この最大位置変化量は、誤差を考慮しつつ、移動量対応値ω及び駆動パラメータ(例えば最大加速度)により制限される位置対応値の最大変化量の決定時にチェックすべき位置対応値ψiの受信時までに生じるものである。
【0030】
処理ユニット230は、すでに知られた最大位置差Δψと算出された期待値ψEに基づき、位置期待値差ΔψEを算出するとともにこれを比較ユニット240へ供給する。
【0031】
チェックすべき現在の位置対応値ψiがプロトコルユニット220から比較ユニット240へ入力されると、この比較ユニット240はこの位置対応値ψiを位置期待値差ΔψEと比較し、比較結果を示す信号Sを出力する。
【0032】
入力された両位置対応値ψi−1,ψi−2の、これらの直後に続くチェックすべき位置対応値ψiの位置期待値差ΔψEの算出へ使用することは、各位置対応値ψiがチェックされるため、監視信頼性に関して最適である。監視信頼性についての要求が比較的小さい場合においては、第1の動作確認間隔の何倍もの時間間隔N1*Δtにおいて監視ユニット200へ入力される位置対応値ψiから移動量対応値ωを算出することも可能である。また、第2の動作確認間隔の何倍もの時間間隔N2*Δtにおいて入力される今後の位置対応値ψiに対する位置期待値差ΔψEを算出することも可能である。例えば、各10ごとの位置対応値ψi(N1=10)のみを移動量対応値ωの算出に使用し、各10ごとの位置対応値ψi(N2=10)に対して位置期待値差ΔψEを算出し比較を行うようにしてもよい。
【0033】
また、時間のかかるすべての計算をチェックすべき位置対応値ψiの入力(受信)までに終えるのが特に好ましい。そうすることで、チェックすべき位置対応値ψiの入力後に、比較ユニット240においては2つのデジタル比較処理を実行するのみで足りる。このようなデジタル比較処理はデジタル技術において最も迅速な処理に属するものであるため、制御ユニット120あるいはトランスバータユニット130は、信号S及び実際の位置対応値ψiを実際にかつ同時に使用することが可能である。したがって、誤差を有する位置対応値ψiの悪影響を確実に回避することが可能である。
【0034】
また、監視ユニット200にメモリユニット250を設けるのが好ましい。そして、このメモリユニット250には、処理ユニット230において必要となる、特に駆動に適切な最大位置差Δψや動作確認時間差Δtなどのデータがメモリされている。監視ユニット200をフレキシブルに形成するために、メモリユニット250は、揮発性メモリ(RAM)又は再書き込み可能な不揮発性メモリ(EEPROMやフラッシュメモリ)となっている。このメモリユニット250への書き込みは、例えば12Cインターフェースなどの独立したインターフェースを介して行われるか、又は内部インターフェース115あるいはデータ伝送チャネル25を介して行われる。
【0035】
また、監視ユニット200内に更に動作確認時間差Δtを計測する時間計測(タイマ)ユニット260を設けるのが好ましい。この場合には、監視ユニット200による動作確認時間差Δtに対する所定値の決定を省略することができるか、あるいは動作確認時間差Δtを監視ユニット200へ伝送し、そこにメモリすることが可能である。ただし、動作確認時間差Δtに対する目標値が監視ユニット200においてすでに分かっている場合でも、時間計測ユニット260により設定された動作確認時間差Δtの正確性をチェックすることができるとともに動作確認時間差Δtの処理ユニット230において許容される時間変化を計算において考慮することが可能であるため、この時間計測ユニット260により、誤った位置対応値ψiをカバーする可能性を改善することが可能である。
【0036】
図3には本発明の基本的な思想を明確にするための移動経過のグラフが示されており、横軸が時間軸、縦軸が位置対応値ψiとなっている。ここで、動作確認時間差Δtの間隔で位置対応値ψiが監視ユニット200に入力されるようになっている。また、図示のように、位置対応値ψi−4からψi−2にかけては一定速度での運動がなされている一方、位置対応値ψi−2からは加速運動に移行している。
【0037】
位置対応値ψiをチェックするために、まず、位置対応値ψi−1,ψi−2及び動作確認時間差Δtに基づき、誤差率を形成することにより角速度の推定値が算出される。この推定値は、移動量対応値ωとして、期待値ψEを算出するのに使用される。平均値としての期待値ψEと共に、すでに知られた位置差Δψにより、位置期待値差ΔψEが算出される。ここで、実際に入力されるチェックすべき位置対応値ψiが位置期待値差ΔψEの範囲内にあれば、誤差はなく、位置対応値ψiが正確に計測され伝達された可能性が高いものと判断することができる。一方、この位置対応値ψiが位置期待値差ΔψE(図3ではψi’)の範囲外にある場合には、誤差があり、位置対応値ψiが正確に計測又は伝達された可能性が高いものと判断することができる。
【0038】
図4には、本発明による方法のフローチャートが示されている。ここで、ステップ300〜330はスイッチ投入後あるいは制御工程の開始前にそれぞれ1回のみ行われるものとなっており、ステップ340〜370は駆動制御中における本発明による方法の主要部をなすものであり、ステップ380は位置対応値に誤差が生じている場合の誤差処理を行うステップである。
【0039】
スイッチ投入後、ステップ300において、まず、例えばメモリユニット250からの読み出しを行って、最大加速度αmax及び動作確認時間差Δtが算出される。ステップ310では、これらの値に基づき、最大位置差Δψが算出される。なお、これに代えて、最大位置差Δψをあらかじめメモリユニット250にメモリさせておいてもよい。スイッチ投入後には実際の位置対応値はまだ存在しないため、ステップ320において位置対応値ψi−2が入力され、ステップ330において位置対応値ψi−1が入力される。制御工程開始時点は、例えば制御ユニット12により信号化されて監視ユニット200へ送信される。なお、この制御工程開始時点から、位置対応値ψiが位置測定装置から監視ユニット200へ継続的に供給されることになる。
【0040】
本発明による方法の主要部はステップ340から開始され、このステップ340においては、位置期待値差ΔψEの算出が統合されている。本発明の好ましい実施形態においては、まず、位置対応値ψi−1,ψi−2及び動作確認時間差Δtに基づく誤差率の形成により移動量対応値ω(角速度)が算出される。次に、移動量対応値ω及び動作確認時間差Δtにより決定される位置変化を加算することで、位置対応値ψi−1に基づき期待値ψEが算出される。そして、この期待値ψE及び最大位置差Δψにより位置期待値差ΔψEが算出される。
【0041】
ステップ350においては、実際の、チェックされるべき位置対応値ψiが入力(受信)される。また、位置対応値ψiが位置期待値差ΔψEの範囲内にあるかどうかのチェックがステップ360においてなされる。なお、本実施の形態においては、実際の位置対応値ψiが入力された時点においてすでにすべての計算が終了しているとともに、誤差を検出するための簡易で迅速な位置対応値ψiと位置期待値差ΔψEの比較のみがなされるようになっている。
【0042】
位置対応値ψiが位置期待値差ΔψEの範囲内にあれば、ステップ370へ進み、位置対応値ψi−1,ψiがそれぞれ位置対応値ψi−2,ψi−1へ割り当てられる。そして、ステップ340を繰り返すようになっている。
【0043】
一方、位置対応値ψiが位置期待値差ΔψEの範囲内になければ、ステップ380において、例えば誤差を信号Sとして信号化し制御ユニット120又はトランスバースユニット130へ送信するなどの誤差処理が実行される。駆動制御における許容誤差に応じて、ステップ380が中断されるか、又はステップ370が実行される。
【0044】
本発明による監視ユニット200の機能を具体的な例において説明する。
【0045】
ここでは、最大の加速度が得られることから、位置測定装置20として回転センサを使用する。本例においては、最大加速度αmaxを10000rad/s2とする。また、動作確認時間差Δtを典型的な値である256μsとする。さらに、移動量対応値ωとして、推定した速度が使用され、この速度は、最後に入力された位置対応値ψi−2,ψi−1及び動作確認時間差Δtに基づく誤差率の形成により算出される。これにより、最大加速度αmaxにおける最大誤差が
Δψ1=±αmax×Δt2
により算出される。
【0046】
また、期待値ψEの算出について、最大加速度αmaxが発生している場合には、一定の速度の場合と異なり、更に
Δψ2=±0.5×αmax×Δt2
が加算される。
【0047】
したがって、誤差Δψ1とΔψ2を足し合わせると、位置差Δψは、
Δψ=±1.5×αmax×Δt2
となる。
【0048】
上記のような値によれば、位置差Δψは、±0.562°となる。したがって、最も不都合な場合でも、回転センサが完全に1回転につき、99.6%を超える診断範囲が得られる。モータ10あるいは運動する機械部分の慣性が最大加速度αmaxを減少させるため、実際にはより大きな診断範囲が得られる。
【0049】
上述の実施形態においては回転運動について説明したが、本発明による監視ユニットあるいは監視方法を直線運動に応用してもよい。
【0050】
ところで、監視ユニット200は単なるデジタル回路として形成することが可能であるため、この監視ユニット200は、プログラム可能な論理素子(例えばFPGA)やユーザ固有の集積回路(ASIC)内に設けるのに特に適している。さらに、マイクロコントローラを搭載したり、本発明による方法をコンピュータプログラムとして実行することも考えられる。また、監視ユニット200をソフトウェアモジュールで構成することも可能であり、こうすることで、このソフトウェアモジュールが制御ユニット120における制御コンピュータ内の他のプログラムと並行して、かつ、この他のプログラムから独立して動作することが可能である。
【0051】
また、監視ユニット200は、安全上重要なユニットである。監視ユニット200の内部エラーをカバーするために、算出された値(位置対応値ψi,期待値ψE,位置期待値差ΔψE,誤差信号S)の相互比較を行えるよう、ユニット全体又はその一部を冗長的に実行するのが好ましい。また、例えば強制的な誤差が確実に検出されたかどうかをチェックすること(強制動的サンプリング)などの公知の方法も応用可能である。
【0052】
上述の監視ユニット200及び位置対応値の監視方法について、本発明の範囲を逸脱しない限り、これを変更したり、他の実施形態により実施することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 モータ
15 モータシャフト
20 位置測定装置
25 データ伝送チャネル
100 駆動制御部
110 インターフェースユニット
115 内部インターフェース
120 制御ユニット
130 トランスバータユニット
140 ケーブル
200 監視ユニット
210 受信ユニット
220 プロトコル(記録)ユニット
230 処理ユニット
240 比較ユニット
250 メモリユニット
260 時間計測(タイマ)ユニット
300〜380 ステップ
S チェック結果信号
ω 移動量対応値
ψE 期待値
ψi 位置対応値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作確認時間差(Δt)の時間間隔において位置測定装置(20)からの位置対応値(ψi−2,ψi−1,ψi)が供給される監視ユニット(200)により前記位置対応値(ψi−2,ψi−1,ψi)をチェックする方法であって、
− 移動量対応値(ω)を少なくとも2つの前記位置対応値(ψi−2,ψi−1)及びこれらの入力時間差により算出するステップと、
− 前記少なくとも2つの位置対応値(ψi−2,ψi−1)に続くチェックすべき位置対応値(ψi)に対する期待値(ψE)を、前記移動量対応値(ω)及び前記チェックすべき位置対応値(ψi)の入力までの時間から得られる位置変化量と、前記少なくとも2つの実際の位置対応値(ψi−2,ψi−1)とを合計して算出するステップと、
− 前記期待値(ψE)と最大位置差(Δψ)から位置期待値差(ΔψE)を決定するステップと、
− 前記チェックすべき位置対応値(ψi)を前記位置期待値差(ΔψE)と比較するステップと、
− 該比較の結果を示す信号(S)を出力するステップ
とを行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記移動量対応値(ω)を、速度値、加速度値又は加速度の時間変化値とすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記移動量対応値(ω)を、最後に前記監視ユニット(200)に入力された2つの位置対応値(ψi−2,ψi−1)及び前記動作確認時間差(Δt)に基づく誤差率を形成することにより形成される推定速度値とすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記位置期待値差(ΔψE)の決定を前記チェックすべき位置対応値(ψi)の入力前に行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記監視ユニット(200)における前記動作確認時間差(Δt)の計測を時間計測ユニット(260)により行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
位置測定装置(20)から駆動制御部(100)へ動作確認時間差(Δt)の時間間隔で伝達される複数の位置対応値(ψi−2,ψi−1,ψi)をチェックするための監視ユニットであって、
前記位置対応値(ψi−2,ψi−1,ψi)が供給され、少なくとも2つの前記位置対応値(ψi−2,ψi−1)及びこれらの入力時間差から移動量対応値(ω)を算出するよう構成され、これら少なくとも2つの前記位置対応値(ψi−2,ψi−1)に続くチェックすべき位置対応値(ψi)に対する期待値(ψE)を前記移動量対応値(ω)及び前記チェックすべき位置対応値(ψi)の入力までの時間から得られる位置変化量と、前記少なくとも2つの実際の位置対応値(ψi−2,ψi−1)とを合計して算出するよう構成され、該期待値(ψE)と最大位置差(Δψ)から位置期待値差(ΔψE)を決定するよう構成された処理ユニット(230)と、
前記チェックすべき位置対応値(ψi)を前記位置期待値差(ΔψE)と比較し、該比較の結果を示す信号(S)を出力する比較ユニット(240)と
を備えることを特徴とする監視ユニット。
【請求項7】
インターフェイス信号を入力されるとともに、該インターフェイス信号に含まれる前記位置対応値(ψi−2,ψi−1,ψi)を分離可能であり、該位置対応値(ψi−2,ψi−1,ψi)を前記処理ユニット(230)及び前記比較ユニット(240)へ供給可能に構成したプロトコルユニット(220)を設けたことを特徴とする請求項6記載の監視ユニット。
【請求項8】
特に前記位置差(Δψ)及び前記動作確認時間差(Δt)である、前記処理ユニット(230)が必要とするデータをメモリ可能なメモリユニット(250)を設けたことを特徴とする請求項6又は7記載の監視ユニット。
【請求項9】
前記動作確認時間差(Δt)を計測するための時間計測ユニット(260)を更に設けたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の監視ユニット。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載の監視ユニットを含んで構成したことを特徴とする駆動制御部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−208935(P2012−208935A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72891(P2012−72891)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(390014281)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】