説明

位置検出システム、位置検出システムを用いた光学系と撮像装置

【課題】複数の磁気式の位置検出装置を近接して配置しても、磁場の位置検出精度への相互干渉を抑えることができ、高精度かつ小型である位置検出システムを提供する事にある。
【解決手段】各位置検出装置の磁石の着磁方向ベクトルが同一平面上になく、かつ着磁方向ベクトルが直交化方向成分を有する様に磁石を配置し、動く磁石の着磁方向ベクトルの移動方向が他方の磁石の着磁方向ベクトルの対称面に含まれる様にする。同時に磁気センサが他方の着磁方向ベクトルの直交成分を検出できるようにする事が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石と磁気センサを用いた位置検出装置を有する位置検出システム、位置検出システムを用いた光学系と撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なセンサがあらゆるところで用いられるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている様にデジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラの手ぶれが起きたときにレンズの位置を検出して補正する手ぶれ補正装置や自動焦点調整を行う光学系のレンズの位置検出装置では、瞬時に高精度な位置検出を行う機能を有するセンサが必要となると同時に、近年機器全体の小型化の要求が強いことから、位置検出装置自体の小型化が要求されている。さらには、長寿命化、埃や油(グリース)などの影響を受けにくい特性をもつセンサなど様々な要求がある。
【0004】
上記のような要求をみたすために、例えば、特許文献3に記載されているようにセンサとしてホールセンサ(磁気センサ対)を用いた位置検出装置が知られている。
【0005】
また、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラでは、位置検出装置の小型化に加え、変倍中の映像を鮮明に保つことや、オートフォーカスの高速応答のような、高性能化の要求もある。上記の様な要求を満たすため、特許文献2、特許文献3に記載されているように変倍レンズとフォーカスレンズのように複数のレンズの位置をホールセンサにより検出する方式が主流となりつつある。
【0006】
図1にこのようなホールセンサを用いた2つのレンズの位置検出装置を有するシステムの例を示した。図1では、ビデオカメラ100の内部において、磁石103が取り付けられた第1の変倍レンズ106の位置をホールセンサ101a、101bにより検出し、磁石104が取り付けられた第2の変倍レンズ107の位置をホールセンサ102a、102bにより検出する。そして、ホールセンサ101a、101bから変倍レンズ106の位置の情報を含む信号が、アンプ113に送られ、ホールセンサ102a、102bから変倍レンズ107の位置の情報を含む信号が、アンプ114に送られる。さらに、アンプ113とアンプ114とからA/Dコンバータ115に信号が送信され、A/Dコンバータ115から処理回路111に、信号が送信される。そして、処理回路111から駆動回路112へ信号が送られ、駆動回路112がモーター109と110を制御することにより、固定レンズ105と固定レンズ108との間で、変倍レンズ106、107の位置が制御される。
【0007】
【特許文献1】特開2002−229090号
【特許文献2】特開平6−014231号
【特許文献3】特開2005−331399号
【特許文献4】特開2004−348173号
【特許文献5】特願2005−364090号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載されているようなステッピングモーターの駆動ステップパルスをカウントする位置検出装置では、ステッピングモーターの脱調などにより高精度な位置検出ができない問題がある。さらにデジタルビデオカメラ等ではステッピングモーターの駆動音が音声ノイズとして記録されてしまうということも問題視されている。
【0009】
また、磁気式の位置検出装置であっても特許文献3の図1に記載されているような構成では、光学系レンズモジュールの小型化に伴って複数のレンズの位置検出装置が近接して配置されるため、一方の位置検出装置の磁石からの磁場の影響で、他方の位置検出装置の精度が悪化するという問題がある。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数の磁気式の位置検出装置を近接して配置しても、磁場の位置検出精度への相互干渉を抑えることができ、高精度かつ小型である位置検出システム、位置検出システムを用いた光学系と撮像装置を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1は、磁石と磁石の相対的移動による磁束の変化を検出する磁束検出手段とからなる位置検出装置を複数有し、複数の位置検出装置のうち近接する少なくとも一組の位置検出装置の磁石の着磁方向ベクトルが同一平面上にない事を特徴とする位置検出システムである。
【0012】
請求項2は、近接する少なくとも一組の位置検出装置の、磁石の着磁方向ベクトルが互いに直交方向成分を有する事を特徴とする請求項1に記載の位置検出システムである。
【0013】
請求項3は、位置検出システムにおいて、近接する少なくとも一組の位置検出装置のうち、少なくとも一方の位置検出装置が有する磁束検出手段が、他方の位置検出装置が有する磁石の着磁方向ベクトルの直交方向成分を検出する事が出来る事を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0014】
請求項4は、位置検出システムにおいて、近接する少なくとも一組の位置検出装置のうち、少なくとも一方の位置検出装置の有する磁石の相対的移動方向が、位置検出装置が備える磁束検出手段に対向する磁石面に沿って、かつ、他方の位置検出装置の有する磁石の重心を含む磁石対称面上にある事を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0015】
請求項5は、位置検出システムにおいて、近接する少なくとも一組の位置検出装置のうち少なくとも一方の位置検出装置において、磁束検出手段が他方の位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0016】
請求項6は、位置検出システムにおいて、近接する少なくとも一組の位置検出装置が有する各々の磁石の対称面が同一平面上にある事を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0017】
請求項7は、位置検出システムが有する近接する少なくとも一組の位置検出装置において、磁束検出手段がそれぞれに対向して配置された磁石の対称面に含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0018】
請求項8は、位置検出システムを構成する位置検出装置が1組であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0019】
請求項9は、近接する少なくとも一組の位置検出装置が有する磁石の着磁方向ベクトルの互いになす角が直交することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0020】
請求項10は、近接する少なくとも一組の位置検出装置のいずれかが有する磁束検出手段が、この磁束検出手段に対向して配置された磁石の着磁方向ベクトルに平行な磁束密度を検出できることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0021】
請求項11は、磁束検出手段は、2つ一組の磁気センサを有するホールセンサであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0022】
請求項12は、位置検出システムにおいて、位置検出システムが磁性体を備えたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0023】
請求項13は、磁束検出手段が同一基板上に実装されたことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の位置検出システムである。
【0024】
請求項14は、請求1乃至13のいずれかに記載の位置検出システムを用いたことを特徴とする光学系である。
【0025】
請求項15は、請求項14に記載の光学系を用いたことを特徴とする撮像装置である。
【0026】
以上の手段について以下詳しく説明する。
磁石とはエネルギーを静磁エネルギーの形で蓄えている物質であり、一度磁化したら残留磁化を保つ磁性材料であり、フェライト、アルニコ、希土類などが使われる。これら磁石は、N極S極をそれぞれ単極着磁した幾何学的に対称面を有するものであれば良い。具体的な磁石の形状の例を図2に示すが、磁石201は、図2に示すような幾何学的対称面203a、203b、203cを有していれば良くこれに制限されるものではない。
【0027】
着磁方向ベクトルとは磁石の重心位置での着磁(磁化)方向を示すだけのベクトルなので大きさは特に規定しないが、本発明では大きさを1とする。図2に、着磁ベクトル202の例が示されている。
【0028】
磁石の相対的移動とは、磁束検出手段に対する磁石の重心の相対的移動を言う。相対的な移動であるので磁石が動いても、磁束検出手段が動いても良い。
【0029】
磁束検出手段とは、ホールセンサ、磁気抵抗効果素子や、磁気インピーダンス素子、その他様々な磁気センサ及びそれらの組合せであり、これらの駆動、増幅、A/D変換器など、処理回路等の周辺回路を含めたものでもよい。
【0030】
ホールセンサとしては、磁気増幅を行うための磁性体チップなどを用いていないGaAs、InAs、InSbなどの化合物半導体からなるホールセンサ、又は、Si、GeなどのIV族半導体からなるホールセンサを用いることができる。当然、上記材料を複数個組み合わせたものでも構わない。磁性体チップなどの磁気増幅を行うための部材は、磁気ヒステリシスを持ち、磁石相対位置の検出精度を落とす要因になりうるが、検出精度がそれほど求められない用途においては、磁性体チップなどを用いたホールセンサを用いても問題にならない。
【0031】
磁気センサは、1つのパッケージに複数のセンサを一体に封入して構成することができる。
【0032】
位置検出装置とは、磁束発生源である磁石と磁束検出手段よりなる装置である。
【0033】
位置検出システムとは、複数の位置検出装置からなるもの乃至一つ以上の位置検出装置と一つ以上の磁石からなるものを言う。
【0034】
請求項1に記載の近接する少なくとも一組の位置検出装置とは複数ある位置検出装置において他方の磁場の影響を受けるほど近くに隣り合って位置する2つ位置検出を一組の位置検出装置と言う。また、一組を成す2つの位置検出装置の片側を一方、もう片側を他方と呼ぶ。例えば図14の様に3つの位置検出装置からなる位置検出システムは、位置検出装置AとBの近接する2つの位置検出装置で一組、位置検出装置BとCの近接する2つの位置検出装置で一組、合計2組の位置検出装置を有する。
【0035】
請求項1に記載の磁石の着磁方向ベクトルが同一平面上にない事とは、一組の位置検出装置の内で一方の磁石の着磁方向ベクトルを含む平面上に、他方の磁石の着磁方向ベクトルが含まれない事を言う。詳細を図3に示す。図3に一方の矩形磁石の重心303に着磁方向ベクトル302が示されている。着磁方向ベクトル302を含む面は複数あるが図3には代表として2つの面304a、304bを示す。また、図3に、この面に直交するベクトル305a、305bを各面に対し示した。一例としては、図3の着磁方向ベクトルと同一平面上にない着磁方向ベクトルとは、着磁方向ベクトルを含む面に対する直交成分を有すれば良い。
【0036】
具体的な例として、図4〜14に磁石の配置と磁石の着磁方向ベクトルを示す。図4〜8と、図13〜14は磁石の着磁方向ベクトルが同一平面内にない例を、図9〜12は磁石の着磁方向ベクトルが同一平面内にある例を示す。その他、様々な着磁方向ベクトルの組合せが考えられるが、これは先の条件を満たしていれば良く、図を用いて示した例に限定されるものではない。
【0037】
請求項2に記載の磁石の着磁方向ベクトルが互いに直交方向成分を有する事とは、本発明に於ける各磁石の着磁方向ベクトルは同一平面上に無い場合、直角に交わる事は無いが、それらを任意の同一平面上に投影した場合にそれぞれの着磁方向ベクトルの延長線が交わる場合を、直交方向成分を有すると言う。
【0038】
請求項3に記載の位置検出システムを構成する一組の位置検出装置のうち、少なくとも一方の位置検出装置が有する磁束検出手段が、他方の位置検出装置が有する磁石の着磁方向ベクトルの直交方向成分を検出する事が出来る事とは、一方の位置検出装置が有する磁束検出手段の磁気を検出する方向が、他方の位置検出装置が有する磁石の着磁方向ベクトルの直交成分を検出する方向にある事を言う。
【0039】
請求項4に記載の位置検出システムにおいて、近接する少なくとも一組の位置検出装置のうち、少なくとも一方の位置検出装置の有する磁石の相対的移動方向が、その位置検出装置が備える磁束検出手段に対向する該磁石面に沿って、かつ、他方の位置検出装置の有する磁石の重心を含む該磁石対称面上にある事とは、本発明では磁石の移動は重心の移動で代表させておりその重心の移動方向が、磁束検出手段に対向する磁石面に平行であると同時に他方の位置検出装置の有する磁石の重心を含む磁石の対称面に含まれる事を言う、この時の対称面は無限遠方に拡大した面である。
【0040】
請求項6に記載の近接する少なくとも一組の位置検出装置が有する各々の磁石の対称面が同一平面上にある事とは、請求項5に記載の各位置検出装置に備えられた各磁石が有する対称面を無限遠方に延長した場合互いに重なり合う事を言う。
【0041】
磁性体は外部からの磁気雑音を遮蔽したり、磁気を増幅したりするためのものであり、モーターなどで一般的に用いられるものである。材料としては鉄、パーマロイ合金、軟磁性アモルファス合金などがよく知られる。本発明の位置検出システムにおいて、各位置検出装置を磁気シールドで覆うことや、位置検出装置同士の間に磁気シールドを配置することや、一方の位置検出装置の磁石の他方の位置検出装置に対向する面に磁気シールドを貼り付ける事により、互いの位置検出装置が干渉しあわぬようにすることが可能である。また、磁性体を設けることで、磁気検出手段部での磁束密度を増幅することが可能である。ここで挙げた、磁性体材料、磁性体の使用方法はあくまでも1例であり、これに限定されるものではない。
【0042】
光学系とは、携帯電話用カメラやデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等の撮像装置や、プロジェクター等の投影装置や、ODD等に用いられる光ピックアップに用いられる、レンズ群、アクチュエータ、CCD等の部品からなるものである。上記で記載したものは、あくまで一例であり、当然これらに限定されるものではない。
【0043】
撮像装置とは、携帯電話用カメラやデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなど映像を記録または保存できる機器のことである。上記で記載したものは、あくまで一例であり、当然これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明は複数の位置検出装置よりなる位置検出システムであるが、他方が特に精度を要さない場合や他方の磁石が十分小さく実質影響が小さい場合は本発明の条件を全ての位置検出装置に課する必要は無い。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、複数の磁気式の位置検出装置を近接して配置しても、磁場の位置検出精度への相互干渉を抑えることができ、高精度かつ小型である位置検出システムと、位置検出システムを用いた光学系と撮像装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
<構成>
図25を用いて位置検出システムの概略構成を示す。磁石M1(2604)は位置検出装置1(2601)に取り付けられた磁石である。磁石M2(2609)は位置検出装置2(2602)に取り付けられた磁石である。
【0047】
位置検出装置1(2601)は、第1のホールセンサS1−1と第2のホールセンサS1−2を有している。位置検出装置2(2602)は第1のホールセンサS2−1と第2のホールセンサS2−2を有している。
【0048】
磁石M1(2604)、磁石M2(2609)は直方体で単極着磁されているものである。下記の具体例では、磁石はすべてネオジム焼結磁石で、残留磁束密度は1200mT(一般的なネオジウム焼結磁石の値)のものとする。当然、ここで示すのは1例であり、これに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0049】
図25において、位置検出装置1(2601)と位置検出装置2(2602)とは同様な構成をなす。以下で各位置検出装置の構成を説明する。磁石M1(2604)の着磁方向ベクトル2605と磁石M1の運動方向(2606)は矢印で示されている。位置検出装置1(2601)において、第1のホールセンサS1−1と第2のホールセンサS1−2は規定の間隔を隔てて基板2610上に実装され、直方体磁石M1(2604)はホールセンサS1−1、S1−2に対向するように配置される。同様に、磁石M2(2609)の着磁方向ベクトル2607と磁石M1の運動方向(2608)は矢印で示されている。位置検出装置2(2602)において、第1のホールセンサS2−1と第2のホールセンサS2−2は規定の間隔を隔てて基板2611上に実装され、直方体磁石M2(2609)はホールセンサS2−1、S2−2に対向するように配置される。ホールセンサの感度は2.4mV/mT(一般的なホールセンサの感度)であり、ホールセンサS1−1とホールセンサS1−2が検出した信号は、アンプ2613に送信され、ホールセンサS2−1とホールセンサS2−2が検出した信号は、アンプ2612に送信される。さらに、アンプ2613とアンプ2612とからA/Dコンバータ2614に信号が送信される。そして、A/Dコンバータ2614から処理回路2615に信号が送信され、信号が処理される。そして、処理回路2615は、駆動回路2616に信号を送信し、駆動回路2616は、磁石M1(2604)を有する駆動部品および磁石M2(2609)を有する駆動部品の位置を制御する。
【0050】
ここで、ホールセンサS1−1とS1−2は、直線2603a上にあり、ホールセンサS2−1とS2−2は、直線2603b上にある。
【0051】
位置検出システムの評価は、構成する個々の位置検出装置の分解能で行った。分解能は、実際の移動距離と位置検出装置が検出した移動距離の差を誤差とし、その誤差の最大値を磁石の可動範囲で除した値とする。単位は[μm/mm]である。
【0052】
次に、ホールセンサの出力から磁石の位置を求める手順を、図26を用いて説明する。ここでは、位置検出装置1(2601)のホールセンサS1−1、S1−2の出力から磁石M1(2604)の位置を求める手順を示す。位置検出装置2(2602)のホールセンサS2−1、S2−2の出力から磁石M2(2609)の位置を下記と同様な手順で求めることができる。図26には、磁石M1(2604)の移動範囲2701、磁石M1(2604)が移動する左端2702、磁石M1(2604)が移動する右端2704、磁石M1(2604)がホールセンサS1−1、S1−2に対して中心に位置しているときの磁石M1(2604)の中心位置2703が示されている。磁石M1(2604)が移動範囲2701を端から端に動く際のホールセンサS1−1、S1−2の出力は、センサ位置により異なる。磁石M1(2604)に対して最適な位置にホールセンサS1−1、S1−2を配置した場合、これら二つのホールセンサからの信号を、処理回路2615によって(出力信号A−出力信号B)/(出力信号A+出力信号B)の演算を行うと、磁石の移動に対し線形に近い信号を得る事ができる。この際、磁石とホールセンサの配置によっては、(出力信号A−出力信号B)の演算でも、磁石の移動に対し線形に近い信号を得ることができる。よって、配置関係によっては、磁石の位置を算出する時に(出力信号A−出力信号B)を用いても構わない。
【0053】
図26において、磁石の左端が可動範囲の左端2702に位置したとき、ホールセンサS1−1、S1−2はそれぞれ中段のグラフの△で示した値を出力する。その出力を処理回路で演算を行い、下段に示す線形化信号△を出力する。次に、磁石の右端が可動範囲の右端に位置した時も同様の処理を行う。磁石が右端2704に位置した時の出力信号A、Bと線形化信号は、それぞれ中段と下段のグラフにおいて□で示される。線形化信号△と線形化信号□の2点を直線補間したものを線形式として定義し、実際に磁石が動いた時は、この線形式に当てはめて磁石の位置を算出する。
【0054】
以上は、ホールセンサの信号は磁束密度に比例する事から、静磁場解析のコンピュータによる磁気シミュレーションを行い、その磁束密度を図26におけるホールセンサの信号に対応させ、位置検出装置の検出分解能の計算を行った。
【0055】
静磁場解析のコンピュータシミュレーションは磁場H[A/m]を求める事が可能であれば微分方程式法(有限要素法、差分法など)、積分方程式法(境界要素法、磁気モーメント法など)何れを用いても構わない。
【0056】
なお、以下で説明する本発明に係る実施形態に係る位置検出システムを、光学系において用いることができる。そして、上記光学系を撮像装置に用いることもできる。
【0057】
<位置検出システム>
以下で説明する本発明に係る実施形態に係る位置検出システムは、すべて2つの位置検出装置からなる。一方の位置検出装置を位置検出装置1、他方の位置検出装置を位置検出装置2とする。本発明の特徴である磁石の着磁方向、ホールセンサの感磁面方向、磁石の運動方向、磁石形状、センサ位置等の具体的な実施条件と比較条件を表1、2に示す。また、磁石配置図を図4〜14、構成図を図15〜24に示す。
【0058】
構成図において、磁石M1は位置検出装置1に取り付けられた磁石である。磁石M2は位置検出装置2に取り付けられた磁石である。長さMl1は位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の長さである。長さMl2は位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の長さである。幅Mw1は位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅である。幅Mw2は位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅である。厚みMh1は位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の厚みである。厚みMh2は位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の厚みである。以上では、x軸方向を長さ、y軸方向を幅、z軸方向を厚みと定義した。
【0059】
ホールセンサS1−1は位置検出装置1に取り付けられた第1のホールセンサである。S1−2は位置検出装置1に取り付けられた第2のホールセンサを示している。ホールセンサS2−1は位置検出装置2に取り付けられた第1のホールセンサである。ホールセンサS2−2は位置検出装置2に取り付けられた第2のホールセンサである。
【0060】
Sd1は位置検出装置1の第1のホールセンサS1−1の感磁面の中心と第2のホールセンサS1−2の感磁面の中心との距離である。Sd2は位置検出装置2の第1のホールセンサS2−1の感磁面の中心と第2のホールセンサS2−2の感磁面の中心との距離である。
【0061】
距離Mdは位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が、互いに移動して最も近接した時の、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離を示している。ただし、後に示す実施条件5、実施条件6、実施条件7、比較条件4のように位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が重心を支点として、X軸に対してX−Y平面で傾斜している場合においては、距離Mdは磁石M2がX−Y平面で傾斜していない状態での、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が、互いに移動して最も近接した時の磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離を示している。
【0062】
距離MS1は位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の二つのホールセンサS1−1、S1−2に対向する面から、二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面の中心までの距離を示している。
【0063】
距離MS2は位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の二つのホールセンサS2−1、S2−2に対向する面から、二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面の中心までの距離を示している。
【0064】
回転角度Mth2は位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2の線分を垂直二等分する直線のX軸に対するX−Y平面での回転角度を示している。
【0065】
距離Mcは位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の重心と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の重心のY軸方向の距離を示している。
【0066】
すべての実施条件と比較条件において、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を位置検出装置1に最も近接するように移動させた条件、つまり位置検出装置2に取り付けられた磁石M2から発生する磁束密度が位置検出装置1の分解能に最も影響を与える条件で位置検出装置1の分解能を算出している。また、すべての実施条件と比較条件において、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を位置検出装置2に最も近接するように移動させた条件、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1から発生する磁束密度が位置検出装置2の分解能に最も影響を与える条件で位置検出装置2の分解能を算出している。
【0067】
すべての実施条件、比較条件において、位置検出装置1の磁石M1の移動方向と、位置検出装置2の磁石M2の移動方向はX軸方向とした。
【0068】
位置検出装置1、2おける磁石の大きさ、ホールセンサの個数、配置関係は参考として載せたが実際の使用はこれに制限されるものではない。
【0069】
<実施条件1>
広い温度範囲において、位置検出装置1と位置検出装置2が、それぞれ分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0070】
以下で、図15における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
【0071】
実施条件1の構成の概略図を図4、15に示す。
【0072】
まず、実施条件1の位置検出装置1に関する各構成部品のパラメータの最適値について記載する。
【0073】
位置検出装置1の磁石M1の長さMl1=2.00mm、位置検出装置1の磁石M1の幅Mw1=1.00mm、位置検出装置1の磁石M1の厚みMh1=1.00mmとする。
【0074】
また、位置検出装置1の第1のホールセンサS1−1の感磁面の中心と第2のホールセンサS1−2の感磁面の中心との距離Sd1=0.8mm、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の二つのホールセンサS1−1、S1−2に対向する面から、二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面までの距離MS1=1.8mmとする。
【0075】
磁石M1の着磁方向ベクトルはZ軸方向とし、2個のホールセンサS1−1、S1−2の検出可能である磁束密度の方向はZ軸方向とする。また、2個のホールセンサS1−1、S1−2は、磁石M1の幅Mw1の線分を垂直2等分するX−Z平面上(磁石M1の対称面)に配置する。磁石M1の移動方向はX軸方向とする。
【0076】
上記設計の際、ホールセンサS1−1、S1−2をばらばらに実装基板に搭載するよりも、全てのホールセンサS1−1、S1−2を1つのパッケージ内に搭載する方が、ホールセンサS1−1,S1−2の配置誤差が小さくなり、位置検出装置の高精度化に貢献できる。また、例えば、Si基板上に全てのホールセンサS1−1,S1−2を設けることも可能である。従って、ホールセンサS1−1とホールセンサS1−2とを、1つのパッケージ内に封入することが望ましい。このことは、本発明が適応される位置検出システムの全てにおいて適応されることはいうまでもない。
【0077】
図27〜29は、直方体磁石M1の移動距離に対する磁束密度の変化を示す。図27は磁石M1の移動距離に対する第1のホールセンサS1−1の位置での磁束密度変化11を、図28は磁石M1の移動距離に対する第2のホールセンサS1−2の位置での磁束密度変化12を、図29は磁石の移動距離に対する、第2のホールセンサS1−2の位置での磁束密度から第1のホールセンサS1−1の位置での磁束密度を引いた磁束密度の差の変化13を、表している。
【0078】
これにより、磁石M1の移動に対して第2のホールセンサS1−2の位置での磁束密度から第1のホールセンサS1−1の位置での磁束密度を引いた差磁束密度が線形に近い曲線で変化することが分かる。
【0079】
ホールセンサの出力電圧は磁束密度の大きさに比例するので、第1のホールセンサS1−1の出力電圧Vaと、第2のホールセンサS1−2の出力電圧Vbとの差分値は、磁石M1の移動距離に対して線形に近い出力特性を持つことになる。
【0080】
図30は、上記パラメータでの構成例において、直方体磁石M1の移動に対する、ホールセンサS1−1の出力電圧Vaと、ホールセンサS1−2の出力電圧Vbとの差分値(Va−Vb)を、出力電圧の和(Va+Vb)で割った値を、磁気シミュレーションで求めた結果を示す。図30(b)は、図30(a)の領域22を拡大した図であり、理想直線21(線形式)と磁気シミュレーションの結果が示されている。
【0081】
磁気シミュレーションの前提として、2個のホールセンサS1−1,S1−2の感度を2.4mV/mT(一般的なホールセンサの感度)、直方体磁石の残留磁束密度Brを1200mT(一般的なネオジム焼結磁石の値)として行った。
【0082】
図27〜30に示した磁気シミュレーション結果より、位置検出装置1では、直方体磁石M1の移動に対する、ホールセンサS1−1の出力電圧Vaと、ホールセンサS1−2の出力電圧Vbとの差分値を、出力電圧の和で割った値が高い線形性を持ち、理想の直線(線形式)とよく一致することが分かる。
【0083】
ここで、図30(a)に記載した理想直線21は、直方体磁石M1の移動距離が+1mmにおける2個のホールセンサS1−1,S1−2の出力電圧の差分値(Va−Vb)を、出力電圧の和(Va+Vb)で割った値と、直方体磁石の移動距離が−1mmにおける2個のホールセンサS1−1,S1−2の出力電圧の差分値(Va−Vb)を、出力電圧の和(Va+Vb)で割った値とを結んだ直線と定義した。
【0084】
図30(b)より、第1のホールセンサS1−1の出力電圧Vaと、第2のホールセンサS1−2の出力電圧Vbとの差分値(Va−Vb)を、出力電圧の和(Va+Vb)で割った値は、少しではあるが理想直線21からずれているのが分かる。
【0085】
一般的には、この理想直線上の値を用いて位置検出を行うため、第1のホールセンサS1−1の出力電圧Vaと、第2のホールセンサS1−2の出力電圧Vbとの差分値(Va−Vb)を、出力電圧の和(Va+Vb)で割った値の理想直線21からのずれが大きければ、位置検出誤差が大きくなる。
【0086】
図31は、直方体磁石M1の移動距離が+1mmにおける2個のホールセンサS1−1,S1−2の出力電圧の差を和で割った値と、直方体磁石M1の移動距離が−1mmにおける2個のホールセンサS1−1,S1−2の出力電圧の差分値を和で割った値を結んだ直線を理想直線21として、理想直線21と図30に示した磁気シミュレーションの結果とのずれから換算した位置検出における誤差を示した図である。
【0087】
図31に示す結果より、位置検出装置1は単体であれば、位置検出誤差は最大でも4.4μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して4.4[μm]÷2[mm]=2.2[μm/mm](0.22%)と高精度な位置検出を達成していることが分かる。
【0088】
当然、図31で示した磁気シミュレーション結果から最小2乗法で求めた直線を理想直線21としてもかまわない。最小2乗法で求めた直線を理想直線21とすると、さらに位置検出誤差は小さくなり、分解能は高くなる。このことは、本発明が適応される位置検出システムの全てにおいて適応されることはいうまでもない。
【0089】
次に、実施条件1の位置検出装置2に関する各構成部品のパラメータの最適値について記載する。
【0090】
位置検出装置2の磁石M2の長さMl2=2.30mm、位置検出装置2の磁石M2の幅Mw2=2.1mm、位置検出装置2の磁石M2の厚みMh2=0.90mmとする。
【0091】
また、位置検出装置2の第1のホールセンサS2−1の感磁面の中心と第2のホールセンサS2−2の感磁面の中心との距離Sd2=0.8mm、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の二つのホールセンサS2−1、S2−2に対向する面から、二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面までの距離1.0mmとする。
【0092】
磁石M2の着磁方向ベクトルはY軸方向とし、2個のホールセンサS2−1、S2−2の検出可能である磁束密度の方向はY軸方向とする。また、2個のホールセンサS2−1、S2−2は、磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面上に配置する。磁石M2の移動方向はX軸方向とする。
【0093】
上記の構成で位置検出装置1と同様の計算を行ったところ、位置検出装置2は単体であれば、位置検出誤差は最大でも5.8μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して5.8[μm]÷2[mm]=2.9[μm/mm](0.29%)と高精度な位置検出を達成していることが分かる。
【0094】
次に、実施条件1の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0095】
ここで、実施条件1の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0096】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Z軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Y軸方向)が同一平面上になく、かつ直交するように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0097】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Z軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Y軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0098】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)が同一平面上かつ各々近接する位置検出装置のホールセンサを含むように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0099】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面が同一直線上(X軸に平行な直線)に載るように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0100】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0101】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行にX軸に沿って移動する。
【0102】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−1mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.1mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M2が位置検出装置1の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0103】
また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0104】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について、位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大でも4.4μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して4.4[μm]÷2[mm]=2.2[μm/mm](0.22%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能と全く同じ値を示している。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大でも5.8μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して5.8[μm]÷2[mm]=2.9[μm/mm](0.29%)となった。これは、位置検出装置2が単体で達成した分解能と全く同じ値を示している。
【0105】
これらの結果から、本発明の位置検出システムでは、比較条件に比べ位置検出装置を近接して配置しても磁場の位置検出精度への相互干渉を抑えることができ、高精度かつ小型である位置検出システムを実現できることが分かる。
【0106】
<比較条件1>
広い温度範囲において、位置検出装置1と位置検出装置2が、それぞれ分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0107】
図20における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
【0108】
比較条件1の概略構成を図9、20に示す。
【0109】
比較条件1の位置検出装置1は実施条件1の位置検出装置1と同じである。
【0110】
以下、比較条件1の位置検出装置2に関する各構成部品のパラメータの最適値について記載する。
【0111】
位置検出装置2の磁石M2の長さMl2=2.1mm、位置検出装置2の磁石M2の幅Mw2=1.1mm、位置検出装置2の磁石M2の厚みMh2=1.0mmとする。
【0112】
また、位置検出装置2の第1のホールセンサS2−1の感磁面の中心と第2のホールセンサS2−2の感磁面の中心との距離Sd2=1.6mm、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の二つのホールセンサS2−1、S2−2に対向する面から、二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面までの距離MS=1.0mmとする。
【0113】
磁石M2の着磁方向ベクトルはX軸方向とし、2個のホールセンサS2−1、S2−2の検出可能である磁束密度の方向はX軸方向とする。また、2個のホールセンサS2−1、S2−2は、磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面上に配置する。磁石M2の移動方向はX軸方向とする。
【0114】
上記の構成で実施条件1の位置検出装置1と同様の計算を行ったところ、比較条件1の位置検出装置2は単体であれば、位置検出誤差は最大でも1.49μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して1.49[μm]÷2[mm]=0.75[μm/mm](0.075%)と高精度な位置検出を達成している。
【0115】
次に、比較条件1の位置検出装置1と位置検出装置2を近接しておいた場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0116】
ここで、比較条件1の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0117】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Z軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Y軸方向)が直交するように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。比較条件1では、磁石M1の着磁方向ベクトル(Z軸方向)と磁石M2の着磁方向ベクトル(Y軸方向)は同一平面上にある。
【0118】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに直交する磁束密度を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに直交する磁束密度を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0119】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)が同一平面上かつ各々近接する位置検出装置のホールセンサを含むように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0120】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面が同一直線上(X軸に平行な直線)に乗るように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0121】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0122】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行にX軸に沿って移動する。
【0123】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−1mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.1mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0124】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M2が位置検出装置1の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0125】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大で90.2μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して90.22[μm]÷2[mm]=45.11[μm/mm](4.5%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能2.2[μm/mm](0.22%)と比較して一桁以上も位置検出精度が落ちたことになる。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大で105.1μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して105.1[μm]÷2[mm]=52.5[μm/mm](5.25%)となった。これは、位置検出装置2が単体で達成した分解能0.75[μm/mm](0.075%)と比較して一桁以上も位置検出精度が落ちたことになる。
【0126】
これらの結果から、比較条件1で示した磁石M1の着磁方向ベクトル(Z軸方向)と磁石M2の着磁方向ベクトル(Y軸方向)は同一平面上にあるような構成(本発明の請求項1に記載の条件を満たさない構成)では、本発明の位置検出システムと比較して位置検出装置1と位置検出装置2の精度が大幅に悪化することが分かる。
【0127】
<実施条件2>
広い温度範囲において、位置検出装置1と位置検出装置2が、それぞれ分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0128】
図16における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
【0129】
実施条件2の概略構成を図5、16に示す。
【0130】
実施条件2の位置検出装置1は実施条件1の位置検出装置1と同じ構成である。
【0131】
また、実施条件2の位置検出装置2は実施条件1の位置検出装置2と同じ構成で実施条件1との違いは位置検出装置間のZ方向の相対的な位置関係が異っている点である。
【0132】
実施条件1の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0133】
ここで、実施条件2の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0134】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Z軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Y軸方向)が同一平面上になく、かつ直交するように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0135】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Z軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Y軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0136】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)が同一平面上かつ各々近接する位置検出装置のホールセンサを含むように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0137】
また、位置検出装置1に取り付けられている2つのホールセンサS1−1とホールセンサS1−2を結ぶ直線(X軸方向)と、位置検出装置2に取り付けられている2つのホールセンサS2−1とS2−2を結ぶ直線(X軸方向)が平行になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0138】
ここで、位置検出装置1に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2の感磁面の中心が、位置検出装置2に取り付けられている磁石M2の高さMh2の線分の中点がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0139】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行にX軸に沿って移動する。
【0140】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−1mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.1mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0141】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M2が位置検出装置1の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。位置検出装置1と位置検出装置2における磁石M1、M2の移動方向はX軸方向である。
【0142】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大でも4.4μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して4.4[μm]÷2[mm]=2.2[μm/mm](0.22%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能と全く同じ値を示している。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大でも5.8μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して5.8[μm]÷2[mm]=2.9[μm/mm](0.29%)となった。これは、位置検出装置2が単体で達成した分解能と全く同じ値を示している。
【0143】
これらの結果から、位置検出装置1と位置検出装置2のZ方向の相対的な配置関係が実施条件1と変わっても、本発明を用いる事により位置検出装置を近接して配置しても、磁場の位置検出精度への相互干渉を抑えることができ、高精度かつ小型である位置検出システムを実現できることが分かる。
【0144】
<実施条件3>
実施条件3では、位置検出システムにおいて、実施条件1に於ける二つの位置検出装置が対称に入れ替えられている。本実施条件において、二つの位置検出装置を対称に入れ替えた場合は、実施条件3は、実施条件1と同等となることは自明である。
【0145】
<実施条件4>
広い温度範囲において、位置検出装置1と位置検出装置2のいずれかが分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。図18における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。このような条件では近接する二つの位置検出装置としてではなく、一つの位置検出手段と近接する磁石の組合せとして使用する。具体的にはスピーカやレシーバなど、磁石を有する部品に近接して位置検出装置を用いる場合があり、本実施条件はそのような場合を想定している。ここでは位置検出装置2も示し請求項4の効果を表した。
【0146】
実施条件4の概略構成を図7、18に示す。
【0147】
実施条件4の位置検出装置1は実施条件1の位置検出装置2と同じ構成である。
【0148】
また、実施条件4の位置検出装置2は、単体で見れば実施条件1の位置検出装置1と同じ構成である。
【0149】
以下で、実施条件4の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0150】
ここで、実施条件4の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0151】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Y軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Z軸方向)が同一平面上になく、かつ直交するように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0152】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Y軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Z軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0153】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M1と磁石M2がそれぞれ0mmの位置にあるとき、つまり位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M1と磁石M2がそれぞれの原点に位置する時に、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の長さMl2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)が同一平面上にあるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0154】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するY−Z平面磁石(磁石M2の対称面)はそれぞれのホールセンサを含むように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。位置検出装置1の磁束検出手段は位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の対称面に含まれるが、位置検出装置2の磁束検出手段は位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の対称面に含まれずそのような対称面は存在しない。従って、同一平面とはなりえない。
【0155】
位置検出装置1に取り付けられている2つのホールセンサS1−1とホールセンサS1−2を結ぶ直線(X軸方向)と、位置検出装置2に取り付けられている2つのホールセンサS2−1とS2−2を結ぶ直線(Y軸方向)が直交するように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0156】
位置検出装置1に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行かつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0157】
位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行かつこれらに対向する面及びY軸に沿って移動する。
【0158】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.1mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0159】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を0mmの位置に配置した状態で求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。位置検出装置1の磁石M1の移動方向はX軸方向とし、位置検出装置2の磁石M2の移動方向はY軸方向とした。
【0160】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大でも5.8μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して5.8[μm]÷2[mm]=2.9[μm/mm](0.29%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能と全く同じ値を示している。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大で548.3μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して548.3[μm]÷2[mm]=274.2[μm/mm](27.4%)となった。これは、位置検出装置2が単体で達成した分解能2.2[μm/mm](0.22%)と比較して二桁以上も位置検出精度が落ちたことになる。
【0161】
この結果より、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の移動方向(Y軸方向)が、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトルを含む対称面に含まれていない(請求項4に記載の条件を満たしていない)事により、位置検出装置2の精度が悪化していることが分かる。
【0162】
また、実施条件4では位置検出装置2の磁石M2を原点に固定する事により、位置検出装置1は請求項4に記載の条件を満たしているため精度は単体の時と同じである。比較条件6に記載しているように、M2が移動すれば位置検出装置1の精度も落ちる。このような場合は一つの位置検出装置と一つの磁石から成る位置検出システムとして使用する。
【0163】
<実施条件5>
広い温度範囲において、位置検出装置1と位置検出装置2が、それぞれ分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0164】
図19における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
【0165】
実施条件5の概略構成を図8、19に示す。
【0166】
実施条件5の位置検出装置1は実施条件1の位置検出装置2と同じ構成である。
【0167】
以下、実施条件5の位置検出装置2に関する各構成部品のパラメータの最適値について記載する。
【0168】
位置検出装置2の磁石M2の長さMl2=3.9mm、位置検出装置2の磁石M2の幅Mw2=0.6mm、位置検出装置2の磁石M2の厚みMh2=2.7mmとする。
【0169】
また、位置検出装置2の第1のホールセンサS2−1の感磁面の中心と第2のホールセンサS2−2の感磁面の中心との距離Sd2=0.8mm、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の二つのホールセンサS2−1、S2−2に対向する面から、二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面までの距離MS=0.5mmとする。
【0170】
位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2の線分を垂直二等分する直線のX軸に対するX−Y平面での回転角度Mth2=4°とする。
【0171】
磁石M2の着磁方向ベクトルはZ軸方向とし、2個のホールセンサS2−1、S2−2の検出可能である磁束密度の方向はZ軸方向とする。また、2個のホールセンサS2−1、S2−2は、磁石M2の重心を含むY−Z平面上に配置する。磁石M2の移動方向はX軸方向とする。
【0172】
上記の構成で実施条件1の位置検出装置1と同様の計算を行ったところ、実施条件5の位置検出装置2は単体であれば、位置検出誤差は最大でも0.18μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して0.18[μm]÷2[mm]=0.09[μm/mm](0.009%)と高精度な位置検出を達成している。
次に実施条件5の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0173】
ここで、実施条件5の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0174】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Y軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Z軸方向)が同一平面上になく、かつ直交するように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0175】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Y軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Z軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0176】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の重心と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の重心のY軸方向の座標が同じ値になるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)は磁石M2の重心を含む。一方、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)は磁石M1の重心は含まない。
【0177】
位置検出装置1に取り付けられている2つのホールセンサS1−1とホールセンサS1−2を結ぶ直線(X軸方向)と、位置検出装置2に取り付けられている2つのホールセンサS2−1とS2−2を結ぶ直線(Y軸方向)が直交するように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。各位置検出装置のホールセンサは近接する位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれない。
【0178】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0179】
位置検出装置1に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行かつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0180】
位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に垂直にかつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0181】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−1mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.1mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0182】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−1mmの位置に配置した状態で求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0183】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大でも7.1μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して7.1[μm]÷2[mm]=3.5[μm/mm](0.35%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能5.8[μm]÷2[mm]=2.9[μm/mm](0.29%)と比較して大きく違わない程度である。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大で5.56μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して2.78[μm/mm](0.278%)となった。これは、位置検出装置2が単体で達成した分解能0.09[μm/mm](0.009%)と比較して一桁以上も位置検出精度が落ちたことになる。
【0184】
この結果より、各位置検出装置の磁束検出手段が近接する位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれるという条件(請求項5に記載の条件)を満たしていないため、位置検出装置1、位置検出装置2共に位置検出精度が悪化していることが分かる。しかしながら、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2の線分を垂直二等分する直線のX軸に対するX−Y平面での回転角度Mth2=4°と小さく、上記の条件(請求項6に記載の条件)に近いため実用上問題のない程度(位置検出装置1、位置検出装置2共に全ストローク2mmを分解能10μm/mmで位置検出可能)しか精度が悪化していない。
【0185】
<実施条件6>
広い温度範囲において、位置検出装置1が分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出し、位置検出装置2が分解能25μm/mm以下で8mm(±4mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0186】
図19における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
【0187】
実施条件6の概略構成を図8、19に示す。
【0188】
実施条件6の位置検出装置1は実施条件1の位置検出装置2と同じ構成である。
【0189】
以下、実施条件6の位置検出装置2に関する各構成部品のパラメータの最適値について記載する。
【0190】
位置検出装置2の磁石M2の長さMl2=9.7mm、位置検出装置2の磁石M2の幅Mw2=1.4mm、位置検出装置2の磁石M2の厚みMh2=1.0mmとする。
【0191】
また、位置検出装置2の第1のホールセンサS2−1の感磁面の中心と第2のホールセンサS2−2の感磁面の中心との距離Sd2=0.8mm、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の二つのホールセンサS2−1、S2−2に対向する面から、二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面までの距離MS2=0.5mmとする。
【0192】
位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2の線分を垂直二等分する直線のX軸に対するX−Y平面での回転角度Mth2=4°とする。
【0193】
磁石M2の着磁方向ベクトルはZ軸方向とし、2個のホールセンサS2−1、S2−2の検出可能である磁束密度の方向はZ軸方向とする。また、2個のホールセンサS2−1、S2−2は、磁石M2の重心を含むY−Z平面上に配置する。磁石M2の移動方向はX軸方向とする。
【0194】
上記の構成で実施条件1の位置検出装置1と同様の計算を行ったところ、実施条件6の位置検出装置2は単体であれば、位置検出誤差は最大でも20.1μmであり、分解能は全ストローク8mmに対して20.1[μm]÷8[mm]=2.51[μm/mm](0.251%)と高精度な位置検出を達成していることが分かる。
次に、実施条件6の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0195】
ここで、実施条件6の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0196】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Y軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Z軸方向)が同一平面上になく、かつ直交するように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0197】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Y軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Z軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0198】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)は磁石M2の重心を含む。一方、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)は磁石M1の重心は含まない。
【0199】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の重心と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の重心のY軸方向の座標が同じ値になるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0200】
位置検出装置1に取り付けられている2つのホールセンサS1−1とホールセンサS1−2を結ぶ直線(X軸方向)と、位置検出装置2に取り付けられている2つのホールセンサS2−1とS2−2を結ぶ直線(Y軸方向)が直交するように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0201】
各位置検出装置のホールセンサは近接する位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれない。
【0202】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0203】
位置検出装置1に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行かつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0204】
位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に垂直にかつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0205】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−4mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.5mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0206】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−4mmの位置に配置した状態で求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0207】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大でも7.82μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して7.82[μm]÷2[mm]=3.91[μm/mm](0.391%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能5.8[μm]÷2[mm]=2.9[μm/mm](0.29%)と比較して大きく違わない程度である。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大で20.1μmであり、分解能は全ストローク8mmに対して20.1[μm]÷8[mm]=2.51[μm/mm](0.251%)となった。これは、位位置検出装置2が単体で達成した分解能と全く同じ値を示している。
【0208】
この結果より、各位置検出装置の磁束検出手段が近接する位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれるという条件(請求項5に記載の条件)を満たしていないが、実施条件6の位置検出装置2に取り付けられた磁石M2のように磁石の長さMl2が大きい場合は、位置検出装置2に取り付けられたホールセンサS2−1、S2−2が、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1から離れるために影響をほとんど受けないことが分かる。また、実施条件5と同様に位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2の線分を垂直二等分する直線のX軸に対するX−Y平面での回転角度Mth2=4°と小さく、上記の条件(請求項6に記載の条件)に近いため実用上問題のない程度(位置検出装置1は全ストローク2mmを分解能10μm/mm以下、位置検出装置2は全ストローク8mmを分解能25μm/mm以下で位置検出可能)しか精度が悪化していない。
【0209】
<実施条件7>
広い温度範囲において、位置検出装置1が分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出し、位置検出装置2が分解能25μm/mm以下で8mm(±4mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0210】
図19における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
【0211】
実施条件7の概略構成を図8、19に示す。
【0212】
実施条件7の位置検出装置1は実施条件1の位置検出装置2と同じ構成である。
【0213】
以下、実施条件7の位置検出装置2に関する各構成部品のパラメータの最適値について記載する。
【0214】
位置検出装置2の磁石M2の長さMl2=9.4mm、位置検出装置2の磁石M2の幅Mw2=1.4mm、位置検出装置2の磁石M2の厚みMh2=1.4mmとする。
【0215】
また、位置検出装置2の第1のホールセンサS2−1の感磁面の中心と第2のホールセンサS2−2の感磁面の中心との距離Sd2=0.8mm、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の二つのホールセンサS2−1、S2−2に対向する面から、二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面までの距離MS2=0.5mmとする。
【0216】
位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2の線分を垂直二等分する直線のX軸に対するX−Y平面での回転角度Mth2=8°とする。
【0217】
磁石M2の着磁方向ベクトルはZ軸方向とし、2個のホールセンサS2−1、S2−2の検出可能である磁束密度の方向はZ軸方向とする。また、2個のホールセンサS2−1、S2−2は、磁石M2の重心を含むY−Z平面上に配置する。
【0218】
磁石M2の移動方向はX軸方向とする。
【0219】
上記の構成で実施条件1の位置検出装置1と同様の計算を行ったところ、実施条件7の位置検出装置2は単体であれば、位置検出誤差は最大でも14.0μmであり、分解能は全ストローク8mmに対して14.0[μm]÷8[mm]=1.75[μm/mm](0.175%)と高精度な位置検出を達成していることが分かる。
次に、実施条件7の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0220】
ここで、実施条件7の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0221】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Y軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Z軸方向)が同一平面上になく、かつ直交するように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0222】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Y軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Z軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0223】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の重心と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の重心のY軸方向の座標が同じ値になるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)は磁石M2の重心を含む。一方、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)は磁石M1の重心は含まない。
【0224】
位置検出装置1に取り付けられている2つのホールセンサS1−1とホールセンサS1−2を結ぶ直線(X軸方向)と、位置検出装置2に取り付けられている2つのホールセンサS2−1とS2−2を結ぶ直線(Y軸方向)が直交するように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0225】
各位置検出装置のホールセンサは各々の磁石の対称面に含まれるが、近接する位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれない。
【0226】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0227】
位置検出装置1に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行かつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0228】
位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に垂直かつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0229】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−4mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.5mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0230】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−4mmの位置に配置した状態で求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0231】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大でも8.72μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して8.72[μm]÷2[mm]=4.36[μm/mm](0.436%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能5.8[μm]÷2[mm]=2.9[μm/mm](0.29%)と比較して大きく違わない程度である。
【0232】
また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大で14.2μmであり、分解能は全ストローク8mmに対して14.2[μm]÷8[mm]=1.77[μm/mm](0.177%)となった。これは、位位置検出装置2が単体で達成した分解能とほぼ同じ値を示している。
【0233】
この結果より、各位置検出装置の磁束検出手段が近接する位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれるという条件(請求項5に記載の条件)を満たしていないが、実施条件6の位置検出装置2に取り付けられた磁石M2のように磁石の長さMl2が大きい場合は、位置検出装置2に取り付けられたホールセンサS2−1、S2−2が、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1から離れるために影響をほとんど受けないことが分かる。しかしながら、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2の線分を垂直二等分する直線のX軸に対するX−Y平面での回転角度Mth2=8°と実施条件6より回転角度Mth2が大きいため、上記の条件(請求項6に記載の条件)から離れるので実施条件6よりも位置検出装置1の分解能が低下しているが実用上問題無い程度である。
【0234】
<比較条件2>
広い温度範囲において、位置検出装置1と位置検出装置2が、それぞれ分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0235】
図21における各構成部品のパラメータの設計例を説明する。
【0236】
比較条件2の概略構成を図10、21に示す。
【0237】
比較条件2の位置検出装置1、位置検出装置2は、双方とも実施条件1の位置検出装置2と同じ構成である。
【0238】
以下で、比較条件2の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0239】
ここで、比較条件2の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0240】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Y軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Y軸方向)が同一平面上にあり、かつ平行になるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0241】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに平行である磁束密度(Y軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに平行である磁束密度(Y軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0242】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)が同一平面上かつ各々近接する位置検出装置のホールセンサを含むように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0243】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面が同一直線上(X軸に平行な直線)に乗るように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0244】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0245】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行にX軸に沿って移動する。
【0246】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−1mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.1mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0247】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M2が位置検出装置1の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0248】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大でも62.3μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して62.3[μm]÷2[mm]=31.17[μm/mm](3.12%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能2.91[μm/mm](0.291%)と比較して一桁以上精度が落ちた事になる。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の分解能は位置検出装置1の結果と同様になることは言うまでもない。
【0249】
この結果より、比較条件2の位置検出システムでは、各位置検出装置の磁石の着磁方向ベクトルが同一平面上にあり(請求項1に記載の条件を満たしていない)、直交方向成分を有せず(請求項2に記載の条件を満たしていない)、一方の位置検出装置の磁束検出手段が他方の位置検出装置に取り付けられた磁石の着磁方向ベクトルの直交方向成分を検出する事が出来ないため(請求項3に記載の条件を満たしていない)、位置検出装置1と位置検出装置2の双方とも著しく精度が悪化していることが分かる。
【0250】
<比較条件3>
広い温度範囲において、位置検出装置1と位置検出装置2が、それぞれ分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0251】
図22における各構成部品のパラメータの設計例を説明する。
【0252】
比較条件3の概略構成を図11、22に示す。
【0253】
比較条件3の位置検出装置1、位置検出装置2は、双方とも実施条件1の位置検出装置1と同じ構成である。これは特許文献3に記載されている従来の位置検出システムと同様の構成である。
【0254】
以下で、比較条件3の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0255】
ここで、比較条件3の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0256】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Z軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Z軸方向)が同一平面上にあり、かつ平行になるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0257】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに平行である磁束密度(Z軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに平行である磁束密度(Z軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0258】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)が同一平面上かつ各々近接する位置検出装置のホールセンサを含むように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0259】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面が同一直線上(X軸に平行な直線)に乗るように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0260】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0261】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行にX軸に沿って移動する。
【0262】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−1mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.1mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0263】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M2が位置検出装置1の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0264】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大で41.8μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して41.8[μm]÷2[mm]=20.9[μm/mm](2.9%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能2.91[μm/mm](0.291%)と比較して一桁程度精度が落ちた事になる。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の分解能は位置検出装置1の結果と同様になることは言うまでもない。
【0265】
この結果より、比較条件3の位置検出システムでは、各位置検出装置の磁石の着磁方向ベクトルが同一平面上にあり(請求項1に記載の条件を満たしていない)、直交方向成分を有せず(請求項2に記載の条件を満たしていない)、一方の位置検出装置の磁束検出手段が他方の位置検出装置に取り付けられた磁石の着磁方向ベクトルの直交方向成分を検出する事が出来ないため(請求項3に記載の条件を満たしていない)、位置検出装置1と位置検出装置2の双方とも著しく精度が悪化していることが分かる。
【0266】
<比較条件4>
広い温度範囲において、位置検出装置1が分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出し、位置検出装置2が分解能25μm/mm以下で8mm(±4mm)の範囲を位置検出する場合について示す。図23における各構成部品のパラメータの設計例を説明する。
【0267】
比較条件4の概略構成を図12、23に示す。
【0268】
比較条件4の位置検出装置1は実施条件1の位置検出装置1と同じ構成である。
【0269】
比較条件4の位置検出装置2は実施条件6の位置検出装置2と同じ構成である。
【0270】
比較条件4の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0271】
ここで、比較条件4の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0272】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Z軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Z軸方向)が同一平面上にあり、かつ平行となるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0273】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに平行な磁束密度(Z軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに平行な磁束密度(Z軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0274】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の重心と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の重心のY軸方向の座標が同じ値になるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0275】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の幅Mw1を垂直2等分するX−Z平面(磁石M1の対称面)は磁石M2の重心を含む。一方、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の幅Mw2を垂直2等分するX−Z平面磁石(磁石M2の対称面)は磁石M1の重心は含まない。
【0276】
位置検出装置1に取り付けられている2つのホールセンサS1−1とホールセンサS1−2を結ぶ直線(X軸方向)と、位置検出装置2に取り付けられている2つのホールセンサS2−1とS2−2を結ぶ直線(Y軸方向)が直行する様に位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0277】
各位置検出装置のホールセンサは各々の磁石の対称面に含まれるが、近接する位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれない。
【0278】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0279】
位置検出装置1に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行かつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0280】
位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に垂直にかつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0281】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2とが、互いに移動して最も近接した時、つまり位置検出装置1に取り付けられた磁石M1が+1mmの位置に移動し、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2が−4mmの位置に移動したときに、磁石M1と磁石M2との対向する面どうしのX軸方向の距離Md=0.5mmとなるように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0282】
位置検出装置1の分解能を計算により求める際には、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2を−4mmの位置に配置した状態で求めた。また、位置検出装置2の分解能を計算により求める際には、位置検出装置1に取り付けられた磁石M1を+1mmの位置に移動させた状態、つまり磁石M1が位置検出装置2の分解能にもっとも影響を与える状態にして求めた。
【0283】
位置検出装置1の磁石M1の移動方向はX軸方向とし、位置検出装置2の磁石M2の移動方向はX軸方向とした。
【0284】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大で150.1μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して150.1[μm]÷2[mm]=75.05[μm/mm](7.505%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能2.2[μm/mm](0.22%)と比較して、一桁以上精度が落ちている。また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大で20.1μmであり、分解能は全ストローク8mmに対して20.1[μm]÷8[mm]=2.51[μm/mm](0.251%)となった。これは、位置検出装置2が単体で達成した分解能と全く同じ値を示している。
【0285】
この結果より、比較条件4の位置検出システムでは、各位置検出装置の磁石の着磁方向ベクトルが同一平面上にあり(請求項1に記載の条件を満たしていない)、直交方向成分を有せず(請求項2に記載の条件を満たしていない)、一方の位置検出装置の磁束検出手段が他方の位置検出装置に取り付けられた磁石の着磁方向ベクトルの直交方向成分を検出する事が出来ない(請求項3に記載の条件を満たしていない)。
【0286】
各位置検出装置の磁束検出手段が近接する位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれるという条件(請求項5に記載の条件)を満たしていないため、位置検出装置1の精度が著しく悪化していることが分かる。
【0287】
<実施条件8>
広い温度範囲において、位置検出装置1と位置検出装置2が、それぞれ分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。図24における各構成部品のパラメータの設計例を説明する。
【0288】
実施条件8の概略構成を図13、24に示す。
【0289】
実施条件8の位置検出装置1は実施条件1の位置検出装置1と同じ構成である。
【0290】
実施条件8の位置検出装置2は実施条件1の位置検出装置2と同じ構成である。
【0291】
実施条件8と実施条件1の違いは位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の重心と、位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の重心のY軸方向の距離Mc=0.1mmとなるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した事にある。
【0292】
実施条件8の位置検出装置1と位置検出装置2を近接して配置した場合の、位置検出装置1と位置検出装置2の分解能を求めた。
【0293】
ここで、実施条件5の位置検出装置1と位置検出装置2の配置関係を説明する。
【0294】
位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁方向ベクトル(Z軸方向)と位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁方向ベクトル(Y軸方向)が同一平面上になく、かつ直交するように、位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0295】
位置検出装置1に取り付けられた二つのホールセンサS1−1、S1−2の感磁面が位置検出装置2に取り付けられた磁石M2の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Z軸方向)を検出でき、位置検出装置2に取り付けられた二つのホールセンサS2−1、S2−2の感磁面が位置検出装置1に取り付けられた磁石M1の着磁ベクトルに直交する磁束密度(Y軸方向)を検出できるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0296】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2とS2−1、S2−2の各々で感磁面が同一直線上(X軸に平行な直線)に載りかつ距離Mcで平行になるよう位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0297】
各位置検出装置のホールセンサは磁石対称面に含まれるが、近接する位置検出装置が有する磁石の対称面には含まれない。
【0298】
位置検出装置1と位置検出装置2に取り付けられているホールセンサS1−1、S1−2、S2−1、S2−2の感磁面の中心がZ軸方向で同じ座標になるように位置検出装置1と位置検出装置2を配置した。
【0299】
位置検出装置1に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行かつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0300】
位置検出装置2に取り付けられている磁石の運動はホールセンサを結ぶ直線に平行かつこれらに対向する面及びX軸に沿って移動する。
【0301】
上記の条件で位置検出装置2が位置検出装置1に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置1の位置検出誤差は最大で12.8μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して12.8[μm]÷2[mm]=6.4[μm/mm](0.64%)となった。これは、位置検出装置1が単体で達成した分解能2.2[μm/mm](0.22%)と比較して、2.9倍程度性能が落ちているが分解能は10μm/m以下で高い分解能を有している。
【0302】
また、上記の条件で位置検出装置1が位置検出装置2に近接して配置されている場合について実施条件1の位置検出装置1のみの時と同様の計算を行った結果、位置検出装置2の位置検出誤差は最大で6.5μmであり、分解能は全ストローク2mmに対して6.5[μm]÷2[mm]=3.25[μm/mm](0.325%)となった。これは、位位置検出装置2が単体で達成した分解能2.9[μm/mm](0.29%)と比較して1.1倍程度精度が落ちているが分解能は10μm/m以下で高い分解能を有している。
【0303】
この結果より、実施条件8の位置検出システムでは、請求項1〜3を満たしている、一方の位置検出装置に取り付けられた磁石の相対的移動方向が、他方の位置検出装置に取り付けられた磁石の着磁方向ベクトルを含む対称面に含まれておらず(請求項4に記載の条件を満たしていない)、各位置検出で複数の磁束検出手段がそれぞれに対向して配置された磁石の対称面に配置されず、各位置検出装置の磁束検出手段を含む各磁石の対称面が同一平面上にないことにより(請求項6に記載の条件を満たしていない)、がその量が小さい事から位置検出装置1、位置検出装置2の双方とも位置検出精度を有している事が分る。
【0304】
<実施条件9>
図14に、広い温度範囲において、位置検出装置1〜3(位置検出装置A、位置検出装置B、位置検出装置C)が、それぞれ分解能10μm/mm以下で2mm(±1mm)の範囲を位置検出する場合について示す。
【0305】
図14において、位置検出装置Aの磁石1403aは、運動方向1401aで運動し、磁石1403aの位置は、基板1404aの上にあるホールセンサS1−1、S1−2によって検出される。図14では、一例として、磁石1403aの着磁方向ベクトル1402aが、図示されている。
【0306】
図14において、位置検出装置Bの磁石1403bは、運動方向1401bで運動し、磁石1403bの位置は、基板1404bの上にあるホールセンサS2−1、S2−2によって検出される。図14では、一例として、磁石1403bの着磁方向ベクトル1402bが、図示されている。
【0307】
図14において、位置検出装置Cの磁石1403cは、運動方向1401cで運動し、磁石1403cの位置は、基板1404cの上にあるホールセンサS3−1、S3−2によって検出される。図14では、一例として、磁石1403cの着磁方向ベクトル1402cが、図示されている。
【0308】
尚、本発明で示した実施条件1〜8は二つの位置検出装置を用いた位置検出システムのものであるが、二つの位置検出装置と同等の条件を有する位置検出装置を付加させる事で3つ以上の位置検出装置を有する位置検出システムとする事が出来ることは自明である。例えば、図14の様に実施条件1の位置検出装置1(位置検出装置A)と同等の位置検出装置3(位置検出装置C)を、位置検出装置2(位置検出装置B)を挟んで設ける事で、実質実施条件1を同時に二つ満たす事ができる。また、位置検出装置2を付加して位置検出装置1を挟む事も可能である。同様な事は他の実施条件でも可能である。
【0309】
本発明の実施条件の寸法、分解能等の一覧を表1に示し、比較条件の寸法、分解能等の一覧を表2に示した。また、実施条件および比較条件と請求項1、2、6との対応一覧を表3に示し、実施条件および比較条件と請求項3〜5との対応一覧を表4、5に示した。
【0310】
【表1】

【0311】
【表2】

【0312】
【表3】

【0313】
【表4】

【0314】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0315】
【図1】2つの位置検出装置を有するシステムの例を示した図である。
【図2】本発明で用いる磁石の例を示す図である。
【図3】本発明に於ける着磁方向ベクトルの条件を示す図である。
【図4】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図5】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図6】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図7】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図8】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図9】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図10】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図11】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図12】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図13】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図14】着磁方向ベクトルと磁石配置図を示す図である。
【図15】本発明に於ける実施条件の構成図を示す図である。
【図16】本発明に於ける実施条件の構成図を示す図である。
【図17】本発明に於ける実施条件の構成図を示す図である。
【図18】本発明に於ける実施条件の構成図を示す図である。
【図19】本発明に於ける実施条件の構成図を示す図である。
【図20】本発明に於ける比較条件の構成図を示す図である。
【図21】本発明に於ける比較条件の構成図を示す図である。
【図22】本発明に於ける比較条件の構成図を示す図である。
【図23】本発明に於ける比較条件の構成図を示す図である。
【図24】本発明に於ける比較条件の構成図を示す図である。
【図25】本発明の代表的な概略構成を示す図である。
【図26】線形化処理を説明する図である。
【図27】直方体磁石M1の移動距離に対する磁束密度の変化を示す図である。
【図28】直方体磁石M1の移動距離に対する磁束密度の変化を示す図である。
【図29】直方体磁石M1の移動距離に対する磁束密度の変化を示す図である。
【図30】磁気シミュレーションの結果と理想直線とを比較する図である。
【図31】理想直線21と図30に示した磁気シミュレーションの結果とのずれから換算した位置検出における誤差を示した図である。
【符号の説明】
【0316】
S1−1 ホールセンサ
S1−2 ホールセンサ
S2−1 ホールセンサ
S2−2 ホールセンサ
11 磁束密度変化
12 磁束密度変化
13 磁束密度の変化の差
21 理想直線
22 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石と前記磁石の相対的移動による磁束の変化を検出する磁束検出手段とからなる位置検出装置を複数有し、前記複数の位置検出装置のうち近接する少なくとも一組の位置検出装置が有する磁石の着磁方向ベクトルが同一平面上にない事を特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記近接する少なくとも一組の位置検出装置の、前記磁石の前記着磁方向ベクトルが互いに直交方向成分を有する事を特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記位置検出システムにおいて、前記近接する少なくとも一組の位置検出装置のうち、少なくとも一方の位置検出装置が有する磁束検出手段が、他方の位置検出装置が有する磁石の着磁方向ベクトルの直交方向成分を検出する事が出来る事を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記位置検出システムにおいて、前記近接する少なくとも一組の位置検出装置のうち、少なくとも一方の位置検出装置の有する磁石の相対的移動方向が、該位置検出装置が備える磁束検出手段に対向する該磁石面に沿って、かつ、他方の位置検出装置の有する磁石の重心を含む該磁石対称面上にある事を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記位置検出システムにおいて、前記近接する少なくとも一組の位置検出装置のうち少なくとも一方の位置検出装置において、磁束検出手段が他方の位置検出装置が有する磁石の対称面に含まれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記位置検出システムにおいて、前記近接する少なくとも一組の位置検出装置が有する各々の磁石の対称面が同一平面上にある事を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項7】
前記位置検出システムが有する前記近接する少なくとも一組の位置検出装置において、磁束検出手段がそれぞれに対向して配置された磁石の対称面に含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項8】
前記位置検出システムを構成する位置検出装置が2つであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項9】
前記近接する少なくとも一組の位置検出装置が有する磁石の着磁方向ベクトルの互いになす角が直交することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記近接する少なくとも一組の位置検出装置のいずれかが有する磁束検出手段が、該磁束検出手段に対向して配置された磁石の着磁方向ベクトルに平行な磁束密度を検出できることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項11】
前記磁束検出手段は、2つ一組の磁気センサを有するホールセンサであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項12】
前記位置検出システムにおいて、前記位置検出システムが磁性体(を備えたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項13】
前記磁束検出手段が同一基板上に実装されたことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項14】
請求1乃至13のいずれかに記載の位置検出システムを用いたことを特徴とする光学系。
【請求項15】
請求項14に記載の光学系を用いたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−76194(P2008−76194A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254867(P2006−254867)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】